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憲法理念の実現をめざす第54回大会(護憲大会)大会基調

2017年10月30日

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 1.はじめに

私たちは、10月22日投開票で行われた第48回衆議院選挙で、2012年12月26日からスタートした第二次安倍自公政権の5年間を厳しく批判するとともに安倍一強政治に終止符を打つことを求めてきました。

しかし、選挙結果は、森友・加計問題での批判や東京都議会議員選挙での大敗に続き、この選挙期間中も各種の世論調査でも不支持が支持を大きく上回り、拮抗する傾向が続いたにもかかわらず、自公両党で3分の2の313議席を確保する結果となりました。

この結果は、小選挙区における自民候補の得票率が約48%にもかかわらず、小選挙区の議席占有率が約74%という選挙制度自体の特性もありますが、これまでの野党共闘の体制が、民進党の希望の党への合流によって暗礁に乗り上げ、野党間の選挙区での競合・つぶし合いが大きな原因であることは明らかです。

この間、私たちは、2015年12月に発足した「市民連合」と連携し、憲法違反の安全保障関連法の廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回をはじめとした立憲主義の回復、そして、個人の尊厳を擁護する政治の実現に向け、「野党共闘」を積極的に進めてきました。

とりわけ、今回の衆議院議員総選挙では、「市民連合」として、立憲4党と市民の協力態勢を作るべく、9月26日に7項目の基本政策を内容とする要望書を4野党に提出し、基本的な合意を得てきたにもかかわらず、その直後、民進党の希望の党への合流が決定し、これまで構築してきた市民と立憲野党の協力の枠組みが大きく損なわれることとなりました。

この希望の党からの衆議院選挙での立候補にあたっては、「寛容な保守政党を目指すこと」や憲法違反の「安全保障法制の容認」、「憲法改正を支持すること」、「外国人の地方参政権付与に反対すること」など8項目の条件が付され、意見の相違を認めず民進党の一部議員を排除したことから大きな政治的混乱を生じ、新たに枝野幸男氏を代表とする立憲民主党が生まれることとなりました。

「市民連合」は、10月3日、立憲民主党との基本政策に合意するとともに、10月7日には、社会民主党、日本共産党と合わせた3党による選挙協力も実現するなど、短期間の中での不十分な取り組みでしたが、「野党共闘」を再生することができました。

衆議院選挙では、立憲民主党は野党第一党として55議席を、また社会民主党は現有2議席を獲得することとなりましたが、立憲民主党には、安倍政権との闘いで野党の中心的役割を担うことはもちろん、今後、市民と立憲野党の協力体制の中心的役割も強く期待するものです。

なお、今回の安倍政権による臨時国会冒頭解散は、6月22日に憲法53条に基づく野党4党による森友・加計学園問題の真相究明のための早期の臨時国会召集の要求が放置され続けた中での解散であり、首相自身の「丁寧に説明する」とした発言を覆し、臨時国会で森友・加計学園問題での疑惑追及から逃れることを意図した解散といえます。また、この解散は、内閣改造後内閣支持率に回復の兆しが見えてきたことや、野党の混乱や選挙態勢の遅れが理由とされ、まさに大義のない党利・党略による解散であり、安倍首相による解散権の私物化そのものであり、許すわけにはいきません。

今回の衆議院選挙では改憲問題が大きな争点となりました。

2017年5月3日、安倍晋三首相は、読売新聞のインタビュー記事と、日本会議と密接な関係にある「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが主催した会合に、ビデオメッセージで参加し、「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と表明し、改憲項目に戦争放棄を定めた9条に自衛隊の存在を明記した条文を追加することと、高等教育の無償化を定めた条文の新設を掲げました。

また、今回の衆議院選挙では、改めて、「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に議論を踏まえ初めての憲法改正を目指す」として、初めて国政選挙での重点項目に「憲法改正」が位置づけられることとなりました。

日本維新の会が「現実的な憲法改正」として、改憲項目に9条「改正」を初めて公約に盛り込むとともに、9月26日に設立された希望の党も、選挙公約に「憲法9条を含め憲法改正議論をすすめる」としています。

国会では、自公政権で3分の2を占め、日本維新の会や希望の党を加えると改憲を掲げる政党で80%を占める中、憲法調査会での議論をはじめ、かつてない改憲に向けた動きが加速することを警戒するとともに、平和憲法を守る院内外の取り組みの強化が求められてきています。

安倍政権の5年間で、「戦争できる国づくり」が一気に進められてきました。安倍政権は、2013年の特定秘密保護法、2015年には歴代内閣が違憲と解釈してきた集団的自衛権を盛り込んだ戦争法を強行成立させ、さらに、2016年は「盗聴法・刑事訴訟法」の改悪を行いました。

また、原則禁止されていた武器輸出を解禁し、防衛省による大学や研究機関での軍事研究推進が強められてきています。

とりわけ、2015年4月の「防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改訂以降、国内法を整備するとして戦争法の制定を強行しましたが、この安全保障政策の大転換によって、米国の戦争に日本が追従し、「戦争ができる国」そして「戦争ができる自衛隊」へと自衛隊の役割が大きく変質してきました。また、2017年6月15日、法務委員会採決を省略するという異例の手法で、参議院本会議で強行採決された「共謀罪」法案の成立は、いよいよ「戦争できる国づくり」に向けて、監視社会を強め、政府に反対する発言や活動を委縮させ弾圧していく以外の何物でもありません。

こうした国内法の整備と合わせ、北朝鮮のミサイル発射や核実験による東アジアの緊張を背景に、安倍政権は5年連続で防衛費を拡大し、日米共同軍事訓練の実施、北朝鮮によるミサイルの発射実験や中国の海洋進出に対抗するための装備やシステム導入を進めてきました。

とりわけ、北朝鮮のミサイル発射に際して、12道県に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発信されました。また、これまで各自治体や鉄道会社などが、ミサイル発射に伴って過剰な反応を繰り返し、さらに、教育現場においても効果の疑われる避難訓練が実施され、北朝鮮からのミサイル防衛として、中四国4県の陸上自衛隊駐屯地に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を新たに展開しています。

このように、日本政府が、北朝鮮の恐怖を煽り過剰な反応を繰り返すことは直ちに中止すべきであり、北朝鮮の核実験に伴い、その抑止力向上のためとして、日本国内への核兵器配備や非核三原則の見直しを求める議論の必要性が浮上していることへも警戒が必要です。

高まる東アジアの緊張の中で、日本が果たさなければならないのは、戦争できる国づくりではなく、非核三原則を掲げて核兵器禁止条約に積極的に参加するとともに東アジアの非核化へ努めることや、平和憲法を基本に東アジアの平和と安定を求めて、ありとあらゆる外交努力を進めていくことです。

また、これまでの安倍政権の民意を無視した国会運営も許してはなりません。戦争法の審議においては、6割の反対と8割を超える「今決めるべきではない」とする世論や、共謀罪法での「政府の説明が不十分」とする77%の世論を顧みることなく、強行採決した手法は、民意を無視したものであり、森友、加計学園や、南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊日報の隠蔽問題などで一切の議論を封殺してきた姿勢は、議会制民主主義を踏みにじる強権的な国会運営であり、断じて許すわけにはいきません。

さらに、2017年7月7日には、長年にわたるヒロシマ・ナガサキの被爆者の訴えにより、「核兵器禁止条約」が成立し、核兵器廃絶への歴史的一歩が刻まれました。

しかし、被爆国である日本政府は、核保有国と共に条約の交渉に参加せず、批准・発効に反対するとともに、核保有国におもねるように「斬新的アプローチ」を主張し被爆国としての積極的な役割を果たすことはありませんでした。

10月6日、核廃絶国際キャンペーン(ICAN)にノーベル平和賞が贈られました。このICANの活動は多くの日本人被爆者の方々の努力に支えられたものであり、今こそ日本政府は、核保有国を含めすべての国が「核兵器禁止条約」を批准するよう最大限の外交努力をするべきです。

このように、「安倍一強体制」のもとで、憲法が戦後最大の危機を迎え、戦争できる国づくりが進められています。また、安倍政権の「おごり」の中で、議論を封殺した強権的な国会運営が行われ、人びとの気持ちや要求と乖離した政策が進められてきています。

この間、私たちは平和主義をはじめとする憲法理念を実現する運動の中心に据えながら、「戦争をさせない1000人委員会」や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」のなかで大きな役割を果たすとともに、「市民連合」や「安保法制違憲訴訟の会」、さらには、超党派の議員連盟である「立憲フォーラム」や、地方議員による「立憲ネット」など、様々な団体との連携を広げ取り組みを展開してきました。

一方、安倍首相の改憲に対し、有馬頼底さん(臨済宗相国寺派管長)ほか19人の方々を発起人として、9条改憲阻止のために総がかりの枠組みを超えた実行委員会体制のもと、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」(「全国市民アクション」)が結成されました。9月8日には「キックオフ集会」も行われました。

私たちは、この「全国市民アクション」の中心的な役割を担うとともに、「全国市民アクション」が進める3000万署名運動を成功させなければなりません。また、こうした取り組みには、これまで培ってきた団体との連携強化はもちろんのこと、これまでの運動主体を超えた闘いを準備し、取り組みを進めていかなければなりません。

安倍一強体制継続と自公政権3分の2確保という厳しい選挙結果をしっかり受け止めるとともに、「改憲」を目論むあらゆる勢力にたじろぐことなく、平和と民主主義を求めて、新たな立憲野党やより広範の市民とともに取り組みを進めていこうではありませんか。

 

2.「テロ対策」の名のもと、民意を無視して共謀罪法案の強行採決

(1)6月15日、またもや強行採決によって共謀罪法案が成立

これまで三度廃案になった「共謀罪」の新設について、安倍政権は、2020年のオリンピック、パラリンピック開催のための「テロ対策の強化」を口実に、「テロ等組織犯罪準備罪」として3月21日に閣議決定しました。その後、具体的な審議は、衆議院法務委員会で4月14日から開始され、衆議院本会議で採決を強行、参議院に送られることとなりました。その後の参議院法務委員会の運営も、衆議院同様、政府・与党は、参議院法務委員会審議を一方的に打ち切るとともに、委員会採決を省略し、6月15日の参議院本会議で、「中間報告」によって強行採決を行うに至っています。

この「中間報告」という異例の手法を駆使してまで強引に法案の成立を図った背景には、世論調査で、国会審議に比例して「政府の説明が不十分」とする回答が77%に達したことや、森友学園及び加計学園の疑惑が国会審議の中で深まっていったこと、さらに、これらが原因で安倍内閣の支持率が大きく低下したことにより、政府・与党が会期延長することなく一刻も早く国会を閉会し、幕引きを目論んだ結果といえます。

国民の多くの疑問や批判に真摯に向き合うことなく、ひたすら数の力により押し切った安倍政権の姿勢は、断じて許されるものではありません。その後の各種世論調査でも軒並み安倍内閣の大幅な支持率低下としてあらわれたばかりか、東京都議会議員選挙で自民党は史上最低の当選者数を記録するという大敗を喫することとなりました。

 

(2)テロ対策とは無縁の「共謀罪」法案

この国会審議では、「共謀罪」法案の目的、またその対象やどのような場合に適用されるかが審議の焦点でした。しかし、審議を重ねるほどに明らかになったのは、「テロ対策」のためといわれた「共謀罪」法案が全く「テロ防止」の役に立たないということや、さらに、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結上の必要性はなく、それどころか市民の人権を抑圧する監視社会をつくりだし、これに反対する発言や活動を委縮させ弾圧するという内容であることが明白になりました。

また、不信任決議案が出された金田勝年法務大臣の答弁矛盾、答弁不能、答弁放棄にも見られるように、本人の資質もさることながら、法案そのものが矛盾だらけの不法・不当な内容でした。

そもそも、この「共謀罪」法案は、実行後の処罰を原則としてきたこれまでの刑法の体系を根底から覆し、共謀段階で処罰するというもので、その対象や、どのような場合に適用されるかは運用次第で刑罰権が恣意的に行使される恐れがある法案といえます。

それゆえに、反原発、反基地など、政府の重要施策に異論を唱える団体や市民に対し、捜査当局の恣意的な運用や過剰な取り締まりがなされる懸念を打ち消すことができません。

 

(3)国連・特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も懸念を表明

この共謀罪法案をめぐっては、世界最大の国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルからは、「民主主義の根幹である表現の自由を侵す恐れのあるもの」として強い懸念の表明と法案の成立に反対する声明が発表されました。

また、5月18日、国連のプライバシー権に関する特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大教授)は、日本の共謀罪法案について、「プラバシーや表現の自由を制約するおそれがある」「法案の成立を急いでいるために十分に公の議論がされておらず、人権に有害な影響を及ぼす危険性がある」との懸念を表明する公開書簡を安倍首相宛てに送付しています。

しかし、これに対して日本政府はジョセフ・ケナタッチ氏の質問には一切向き合うことなく、「特別報告者は個人の資格で、国連の立場を反映していない」「書簡の内容が明らかに不適切」(菅義偉官房長官発言)として抗議するなど、不誠実な対応に終始しています。

 

(4)引き続き、共謀罪廃止を求めて取り組みを継続

共謀罪法案の廃案を求める国会内外のたたかいは大きく広がりました。

総がかり行動実行委員会は共謀罪NO!実行委員会との共同行動を積み重ね、連日繰り広げられた集中的な国会前行動(昼の集会・午後の座り込み・夜の集会)は、立憲野党との協力のもとで進められました。

また、戦争をさせない1000人委員会としても独自リーフレット「こんなに危ない共謀罪」を発行するとともに、「『共謀罪』の創設に反対する緊急統一署名」(6月12日の第三次提出で153万4500筆、その後到着分を合計すると170万筆を超過)や5月19日の全国同時アクションなど、全国各地で共謀罪反対の行動にとりくみました。

こうした取り組みの中で、表現者団体やNGOとの連携が生まれ、この広範な協力関係のもとに「共謀罪廃止のための連絡会」も発足しています。また、法案成立に反対する署名運動は、「共謀罪廃止を求める全国統一署名」として継続しています。

7月11日には、共謀罪が施行されましたが、表現の自由を求め、捜査機関の恣意的な運用が行われないよう、法の廃止に向けてさらに闘いを継続していかなければなりません。

 

3.3分の2の改憲勢力を背景に憲法改正を急ぐ安倍政権

2012年4月27日に自民党の「憲法改正草案」が公表されて以来、同年12月の特定秘密保護法制定や2014年7月の「集団的自衛権」行使容認の閣議決定が行われ、そして2015年9月19日には「集団的自衛権」行使を可能とするための安全保障関連法(戦争法)が、また、2017年6月には3度廃案になった共謀罪法案が強行採決により成立させられました。

とくに、2012年に自民党が発表した「憲法改正草案」は、現憲法で「人類普遍の原理」とされた「国民主権」が軽んじられ、あくまでも国があっての「国民」へと変えられています。また、先の戦争への反省はなく、「戦争放棄」という題がついた9条は「安全保障」という題に置き換えられ、「国防軍」が創設されることにより、「集団的自衛権」が全面的に認められるほか、国内における治安維持が「国防軍」により展開されることにもなります。

さらに、「公益及び公の秩序」の名のもとに基本的人権が制限されるばかりか、立憲体制を一時停止させる「緊急事態宣言」という制度も設けられています。

これまで日本がめざしてきた「戦争しない国づくり」から、「戦争ができる国づくり」へと大きく舵が切られようとしています。

さらに、2015年7月10日投開票で行われた第24回参議院議員選挙は、自公政権を中心とした改憲勢力が非改選議席と合わせ3分の2を占める結果となり、2016年の臨時国会以降、安倍首相は改憲について、憲法審査会で具体的な議論を始めるなど強い意欲を示してきています。

 その後、5月3日、安倍首相は「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と発言しましたが、この安倍発言は、日本政策研究センターの伊藤哲也代表(日本会議常任理事や政策委員を務める人物で、自民党保守系国会議員と連携しつつここ数年は憲法改正に向けた活動を行う)が、同センターの機関誌「明日への選択」で「『3分の2』獲得後の改憲戦略」と題した論文で提起された内容そのものです。

その主張は、ようやく参議院で「3分の2の壁」が突破されたことを受けて、現実的な改憲戦略として、護憲派陣営への反転攻勢と改憲をさらに具体化していくために「改憲はまず加憲から」という思考の転換を図るというものです。

そして、その主張の中では、あくまでも現在の世論の現実を踏まえた苦肉の提案としながらも、まず、「公明党のみならず、むしろ護憲派に揺さぶりをかけ安保法制の時のような大々的な『統一戦線』を容易には形成させない。そのために、現憲法の平和・人権・民主主義そのものには当面問題はない」としたうえで、「憲法の足らざるところは補うという冷静な発想が必要だ」としています。

さらに、今回の選挙では、公明党は改憲については選挙公約に盛り込まず、自衛隊の明記についても慎重な姿勢ですが、日本維新の会が「現実的な憲法改正」として9条「改正」を初めて公約に盛り込むとともに、9月26日に設立された「希望の党」も選挙公約では、「憲法9条を含め憲法改正議論をすすめる」としてきたことから、選挙後の国会議論をふくめ、かつてない改憲に向けた動きが加速することを警戒しなければなりません。

国会情勢をにらみながら、中央・地方で「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」運動を推進し、その取り組みの中心である3000万筆を目標とした一大署名運動を成功させなければなりません。

 

4.日米ガイドライン改訂と戦争法成立により変質する安全保障政策

(1)朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射実験などを利用した自衛隊の変貌

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、2016年に2回の核実験を行うなど核開発やミサイル開発をすすめ、2017年に入って相次ぐミサイル発射実験でその性能を飛躍させ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功するまでに至っています。

北朝鮮の核やミサイル開発を助長するものとして、米国と日本の力による対応があることも否定できません。米国は「すべての選択肢がテーブルの上にある」と軍事力の行使も視野に入れた姿勢を示し、日本も海上自衛隊が米国空母との共同訓練を朝鮮半島の近海で展開し、グアムから飛来した米空軍戦略爆撃機B-1との共同訓練を航空自衛隊が九州北部沖で行うなど、挑発ともいえる行為を行っています。

また、2017年4月、政府は、北朝鮮のミサイル発射を想定し、各都道府県に弾道ミサイルを想定した住民の避難訓練開催を求め、その結果、各地で効果の疑われる避難訓練(具体的な被害想定が国からは示されず)が実施されています。とりわけ、8月29日の北朝鮮のミサイル発射に伴い、12道県に全国瞬時警報システム(Jアラート)が配信されるなど、「戦前の非常時」を思わせるかのような過剰な反応を煽り立てようとしています。

一方、中国は2017年度の国防費を過去最大の17兆7547億円と発表し、軍備増強を図り続けています。日本政府はこの中国の海洋進出に対抗するとして、与那国島に陸上自衛隊の沿岸警備部隊を配備したのをはじめ、宮古、石垣島にミサイル部隊を新設しようとするなど、南西諸島での自衛隊の強化を図っています。さらに、2018年初旬に日本版海兵隊といわれる「水陸機動団」が、陸自の佐世保基地に編成されますが、これも尖閣諸島をめぐる中国との攻防を意識したものと言えます。

安倍政権は「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力を強化し」、様々な検討を行っていくとしていますが、この方針に基づく自衛隊の変貌と日米の軍事一体の強化に警戒を強めなければなりません。

これまで安倍政権は、2015年4月に「日米がアジア・太平洋を越えた地域で連携し、平時から有事まで切れ目なく対処する」こととした「防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改訂を挟んで、2016年9月には、このガイドラインのための国内法整備とし戦争法(平和安全法制)の制定を強行しました。

この安全保障政策の大転換が、米空母や米戦略爆撃機との共同訓練、米艦防護の具体的実施となっています。米国を射程とした北朝鮮のミサイルを日本が迎撃することが可能であるとする小野寺防衛大臣の発言など、米国の戦争に日本が追従し、「戦争ができる国」そして「戦争ができる自衛隊」へと自衛隊の役割が大きく変質していくことが危惧されます。

また、「敵基地攻撃」について、従来の政府見解は「誘導弾等による攻撃が行われた場合、他に手段がないと認められる場合は、誘導弾等の基地をたたくことは法理的に自衛の範囲内」としてきました。

今日、朝鮮半島の緊張が高まる中、「敵基地攻撃能力の保有」に言及した自民党の政務調査局の提言も政府に提出されているところから、今後の議論の行方に注視していくとともに、こうした安倍政権の強引な取り組みによって、日本の防衛政策が、「専守防衛」から大きく逸脱していくことを許してはなりません。

 

(2)南スーダンからの自衛隊の撤収

 南スーダンPKOをめぐっては、南スーダンの治安状況が悪化して、PKO五原則に反する戦闘状態が発生しているにもかかわらず、日本政府は「戦闘」とは認めず、自衛隊の施設部隊を派遣し続けていました。そして、当の自衛隊の南スーダン派遣施設隊日々報告(いわゆる「日報」)では、「戦闘が生起」と記載があったのにもかかわらず、政府はこれを隠ぺいし、稲田朋美防衛大臣(当時)も隠ぺいの報告を了承していたとの疑惑が払拭されていません。

この隠蔽疑惑では、防衛省の組織改編で制服組の権限が強化され、シビリアンコントロールが機能していないことも問題を広げた一因となっています。

いずれにしても、無謀な戦争を駆り立てたかつての旧日本軍の反省から、軍隊を統制しようとするシステムが十分に確立していない状況を質していかなくてなりません。

安倍首相は南スーダンのPKO派遣部隊を2017年5月末までに撤収することを突如発表しましたが、その理由として治安状況の悪化については一切触れることなく、あくまでもPKO五原則を満たしていると強弁し続けました。戦争法の成立に伴い、「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」などの新任務を付与された第11次派遣隊は、結果として新任務を行使することなく、5月27日までに撤収を完了しました。

 

(3)オスプレイの配備と米軍基地機能強化に反対するとりくみ

沖縄・普天間基地に配備されている米海兵隊オスプレイ(MV-22)24機に加え、2017年末までに東京・横田基地に米空軍オスプレイ(CV-22)が配備されることになっていましたが、米当局は理由を明らかにすることもなく、その配備を3年ほど延長することを通告してきました。2016年12月に沖縄県名護市沖で発生したオスプレイの墜落事故が遠因にあるのではないかと思われますが、この墜落事故以降もオスプレイの緊急着陸などのトラブルが多発し、2017年8月には普天間基地所属のMV-22オスプレイがオーストラリア東北海岸で墜落事故を起こし死傷者を出しています。重大な事故にもかかわらず、事故原因すら明らかにせず、米軍はすぐさま飛行を再開させ、日本政府もそれを容認することが続いています。

オスプレイをはじめとした米軍機の飛行問題は、米軍基地周辺の問題だけではありません。第1に、米軍機は日本の航空法の適用が大幅に除外されており、第2に、日本政府は米軍機の訓練空域外の飛行訓練について『安全保障条約の当然の前提として、低空飛行訓練を含め、実弾射撃を伴わない飛行訓練は、「施設・区域」外の上空で行うことができる』と解釈しています。つまり全国津々浦々で航空法の適用もなく、米軍は飛行訓練ができる現状にあり、日本全土がオスプレイの騒音被害や墜落などの事故と隣り合わせにあるということです。

現在、沖縄の負担軽減を名目に(実際は沖縄の負担強化になっている)訓練移転と称して沖縄県外の在日米軍基地での訓練が増加しています。また、自衛隊基地を米海兵隊が訓練のため使用する事案も起きている他、米国以外の他国の軍隊が在日米軍基地で訓練することも法的な根拠がなく問題です。

ドイツやイタリアなど米軍の海外拠点では、日本のような従属的な地位協定にはなっておらず、必要に応じて改定されています。この日米地位協定の改訂については、全国町村議長会が改訂を求めて決議するなど批判も高まっており、日本政府は、密室の日米合同委員会で運用の改善について米側にお伺いを立てるのではなく、日米地位協定の抜本的改定を求めた取り組みが求められています。

 

(4)政府主導で進められる武器展示と武器輸出

防衛装備移転三原則制定で武器輸出の拡大がもくろまれるなか、防衛省の後押しで、今回で2回目となる大規模な兵器展示会が2017年6月、幕張メッセで開催されました。また、日本経団連などは、政府系金融機関の「国際協力銀行」の支援など優遇処置を講じるよう政府に求め、武器輸出を原則認める政府を後押しています。具体的には、武器を輸入する側への低利融資と海外で武器を作る合弁会社や現地法人への出資が検討されているとされています。

この間、安倍首相はASEAN諸国との防衛技術協力に重点を置き、2017年3月には自衛隊練習機TC-902機をフィリピンに「武器輸出」しました。稲田防衛大臣(当時)は、こうした「武器輸出」について、「安全保障環境の改善に寄与し得る有効な政策手段」と評価していますが、とらえ方によっては、南沙諸島問題で一時対立していた中国・フィリピン間で、フィリピンだけを利することから、中国に対する敵視政策の一環とも映る行為です。

他国の紛争を日本のビジネスチャンスにしようとする安倍政権の姿勢を許すわけにはいきません。

 

5.2018年度概算で1300億円増額要求、過去最大となる防衛予算

(1)防衛省の2018年度概算要求

防衛省は、2018年度予算の概算要求で、過去最大となった今年度の当初防衛予算を1300億円上回る5兆1251億円を計上する方針を固めています。安倍政権が予算を編成した2013年から6年連続の増加となります。歯止めのない防衛費の増大は、市民の暮らしに直結する社会保障関連予算の削減につながりかねず、国会における予算審議に注視していく必要があります。

この防衛費の増大要因は、北朝鮮による相次ぐミサイルの発射実験および、中国の海洋進出に対抗するための装備やシステム導入によるものです。陸上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)は、8月に行われた日米2+2会議で、小野寺五典防衛大臣が導入する意向を米側に伝えていました。金額は明示されていないものの、1基700億円から800億円する米国製のものを2、3基構内に配備するとしています。また、イージス艦に搭載する新型ミサイル「SM3ブロック2A」の取得(472億円)の拡大、中国空軍のステルス機に対応するための新規警戒管制レーダー(196億円)が盛り込まれています。

 

(2)安全保障技術推進制度と学術会議の対応

防衛技術に応用できる先端技術を大学や企業に委託する目論みで2015年度に始まった防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は、初年度が3億円、2016年度6億円、2017年度が110億円と、予算が著しく拡大しています。

2017年度の「安全保障技術研究推進制度」は14件採択され、内6件については5年以内で計20億円を上限に助成する大規模研究課題(音速の5倍を超える航空機やミサイルの「極超音速飛行」に向けた基礎的研究など)が採用されました。

一方、科学者が戦争に協力した反省から、戦後2度にわたって「戦争目的の軍事研究はしない」とする声明を決議してきた日本学術会議は、内部に「基礎的な研究開発は許容されるべき」「平和を守るため抑止力を強化する」意見があったものの、2017年4月14日の総会で「軍事的安全保障研究に関する声明」を決定し、これまでの声明を継承することを確認しました。

特に「安全保障技術研究推進制度」に関しても「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と指摘しています。

また、軍学共同に異を唱える大学も多くあり、「軍事への関与を目的とする研究は行わない」(新潟大学)、「軍事研究の資金は受け付けない」(京都大学)という申し合わせが行われています。大学への研究助成金が削減されている現状が「安全保障技術研究推進制度」への期待として語られますが、そもそも防衛省資金に対する学術研究への助成に強い警戒感を持つことや、科学技術と軍事が密接なつながりの中で戦争の歴史を歩んできたことを忘れてはなりません。

 

6.「日本会議」の強い影響を受ける安倍政権

一連の安倍政権の「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」とした姿勢に少なからず日本会議が影響を与えていることを見逃すわけにはいきません。

内閣改造に伴い、8月3日に発足した内閣は、安倍首相を含む閣僚20人のうち、公明党の石井啓一国交相を除き12人が、「日本会議国会議員懇談会」、18人が「神道政治連盟国会議員懇談会」、17人が「みんなで靖国に参拝する国会議員の会」いずれかの議員連盟に所属しています。

「日本会議」は、元号法制化運動・建国記念日制定運動を担った右派組織が前身となり1997年に発足しました。この団体は、国旗国歌法制定、夫婦別姓反対、外国人参政権反対、教育基法改悪、愛国的教科書の採択、憲法改正のための国民投票法制定等の運動を展開していますが、現在は、重点課題に憲法改正を据えて国民運動として取り組んでいる極右団体です。

この「日本会議」による改憲運動は、憲法改正早期実現を求める地方議会での意見書採択(2015年12月現在33府県議会で採択)として進められてきましたが、注目すべきは、第2次安倍内閣成立後の2014年から一気に意見書採択の動きが加速し、広まってきているのが特徴です。

一方、憲法改正に向けた賛同署名活動が、「1000万人ネットワーク」(美しい日本の憲法をつくる国民の会が主体)を中心に、来るべき国民投票を視野に入れた取り組みとして「神社本庁」を巻き込んで公然と進められており、今年5月3日には922万筆を集約したと発表しており、意見書採択の動向と合わせて警戒していかなければなりません。

また、この日本会議の活動の特徴として育鵬社の教科書採択の運動もあります。安倍首相は、育鵬社版歴史・公民教科書が「改正教育基本法の趣旨に最もかなっているのが育鵬社の教科書」と述べていますが、その内容は、歴史学の研究成果より偏狭な思想に基づく主張が優先され、日本国家や日本人の「優位性」をことさら強調したうえで、日本の植民地支配や侵略戦争を美化するものとなっています。

この間、「日本会議地方議員連盟」を中心にその採択に向けて各自治体の教育委員会に対して圧力が強められており、国家主義的な育鵬社教科書の採択率の増加に警戒を強めなければなりません。

 

7.沖縄の民意を無視し進められる辺野古新基地建設

(1)最高裁判決をうけ再開された辺野古新基地建設と反対闘争

 国は、辺野古新基地建設をめぐって、2016年3月4日の代執行裁判での和解条項にあった県との協議を真摯に行うこともなく、ひたすら法的手続きを進め、「不作為の違法確認訴訟」の訴えを起こしました。

この裁判は、福岡高裁那覇支部の判断を不服として県により最高裁へ上告されましたが、2016年12月20日、最高裁で上告が棄却され県の敗訴となりました。

最高裁判決は、選挙のたびに示された「基地はいらない」とする民意を踏みにじり、沖縄県に集中し市民の生活と安全を脅かし、沖縄県の経済発展の大きな阻害要因になっている米軍基地については全く考慮しない内容となっています。さらに、1999年の「国と地方は対等な関係」とした地方自治の改正が行われたにもかかわらず、地方が国に従属するというかつての関係を踏襲したものとして、地方自治法の改正の流れに逆行したものと言わざるをえません。

そして、翁長雄志沖縄県知事が2015年10月13日に行った辺野古埋立ての承認の取り消しは、最高裁判決を踏まえて取り消されたことにより、新基地建設工事が再開されることとなりました。

現在、キャンプ・シュワブゲート前では、新基地建設に反対する市民が粘り強く座り込み闘争を続け、また海上ではカヌーやボートによるデモンストレーションが連日展開され、全国から集められた機動隊の弾圧に屈することなく阻止行動が繰り広げられています。しかし、機動隊による抗議行動の参加者への暴力や弾圧は日増しに強まり、不当な逮捕も後を絶ちません。また、2016年10月の大阪府警機動隊の高江における「土人」「シナ人」発言に続き、2017年8月の辺野古での沖縄防衛局職員の「日本語わかりますか」発言など、依然として、抗議行動に参加する沖縄県民に対し「侮蔑」「差別」する発言が浴びせられています。引き続き、沖縄と本土が一体となった強固な闘いが求められています。

 

(2)民意を無視し進められる高江でのヘリパッド建設

 政府は、高江ヘリパッド建設で、「オール沖縄」の全面支援で伊波洋一さんが圧勝した参議院選挙の翌日、2016年7月11日に工事を再開し、全国から500名以上の機動隊と民間警備会社を使って、基地建設に反対して座り込む市民らを強制排除したうえで工事を強行しました。自衛隊のヘリを使って建設現場に重機を運び込み、貴重なやんばるの森の2万本にも上る木々を無許可伐採するなど、政府によって違法行為が日常的に起こされています。

2016年12月22日には、ヘリパッドの完成とともに、米軍北部訓練場の一部返還式が開催されましたが、一部返還は沖縄の負担軽減では決してなく、すでに危険なオスプレイの昼夜を問わない訓練が行われ、騒音などの被害が拡大しており、ヘリパッド近隣の高江住民の生活に重大な危機を及ぼしています。

 

(3)翁長県知事の差し止め請求スタート

2017年3月末、辺野古新基地建設工事での海底ボーリングや浚渫等で必要となる岩礁破砕の許可が期限切れとなりました。沖縄県は工事を進めるには知事の許可が必要であるとして、国に対して申請を求めていましたが、政府は許可の再申請は不要との見解を示して辺野古新基地建設を続行、4月25日には護岸工事に着手しました。こうした政府の攻撃に対して、翁長県知事は7月24日、ついに工事を差し止める訴訟を提訴しました。国と県の攻防は再び裁判での闘いとなりますが、この裁判を支えるためには、全国での支援のとりくみが重要になっています。

これまでの国と県の裁判では、地方自治を軽視し、基地が集中する沖縄の現状を何ら考慮することなく国の施策に追従する判決が繰り返されてきました。国の施策で民意が踏みにじられることは、地方自治の精神に反するものです。司法は政府の代弁者と化すのではなく、しっかり地方分権改革の意義に向き合うよう求めていかなくてはなりません。

また、辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設阻止行動の過程で、不当にも逮捕、長期拘束を余儀なくされた山城博治沖縄平和運動センター議長らの公判が続いています。山城議長の逮捕については、国際的な人権・環境団体から日本政府に対する批判が拡がり、国連人権高等弁務官事務所が、日本を調査したデービッド・ケイ氏の対日調査報告書を公表し、日本政府の過度な権力行使に懸念を示しています。

公判は、10月23日で14回を終えましたが、2018年3月14日まで裁判日程が組まれており、引き続き支援の取り組みを継続・強化していかなければなりません。

 

(4)踏みにじられる日米特別行動委員会(SACO)合意

 沖縄の米軍基地では、「負担軽減」とは名ばかりで、相次ぐ外来機の暫定配備、法的根拠がない他国軍の訓練が行われるなど基地機能の強化が図られています。加えて、SACO最終合意に反する米軍の訓練等が相次いでいます。嘉手納基地でのパラシュート降下訓練をはじめ、今年の1月に返還移転した旧海軍駐機場の使用、普天間基地では騒音規制措置に反する午後10時以降の米軍機の飛行が繰り返されています。

 パラシュート降下訓練は、米国内で実施されてきた特殊作戦の合同訓練を移転実施したものと米当局は説明していますが、日本政府は「訓練移転」を否定し、あくまでも在日米軍の訓練としたうえで、「例外的措置」として、嘉手納基地での実施を認めてしまうにいたっています。

1995年の少女暴行事件の結果生まれたSACO合意すら反故にする米軍に対して、容認姿勢を示す政府の対応は絶対に許せるものではありません。

 また、普天間基地の返還条件に関する政府の説明も極めてあいまいになっています。政府は「5年以内の運用停止」を県と約束しながら、「辺野古に反対ならば無理だ」と県に責任転嫁するとともに、普天間基地の返還は「辺野古が唯一」としながらも、「2013年4月に公表された8項目の返還条件が整わないと返還できない」と稲田元防衛大臣が答弁するなど、政府の返還に向けた姿勢は後退しており「5年以内の運用停止」を強く求めていかなければなりません。

 

8.核兵器禁止条約不参加の日本政府。原発再稼働許さず脱原発実現を

(1)核兵器禁止条約と日本の不参加

2016年10月27日、国連総会第一委員会(軍縮と安全保障)は「核兵器禁止条約などの核兵器の法的禁止措置について交渉する会議」を開催する決定を行いました。これをうけて今年3月27日から31日までと6月16日から7月7日まで2つの会期に分け「核兵器禁止条約交渉国連会議」が開催され、最終日の7月7日、国連加盟国193カ国中122カ国の賛成をもって「核兵器禁止条約」が成立しました。

この条約では、前文で被爆者や核実験被害者の「受け入れがたい苦痛と被害」に触れながら、核兵器が国際人道・人権法の原則と規則に反するとして、その製造や使用のみならず威嚇の行為なども法的に禁止する画期的な内容となっています。

この「核兵器禁止条約」成立にあたり、長年にわたるヒロシマ・ナガサキの被爆者の核兵器廃絶、被爆者援護への訴えが、この条約の大きな原動力になったことは疑いなく、被爆者が、そして人類が長年求め続けてきた核兵器そのものを法的に「禁止」する条約として、また、核兵器廃絶への歴史的一歩として評価できるものです。

しかし、本来、被爆国である日本政府は、核兵器廃絶に向けて積極的にリーダーシップを発揮すべきであるにもかかわらず、核保有国と共に条約の交渉に参加せず、批准・発効に反対するとともに、核保有国におもねるように「斬新的アプローチ」を主張し被爆国としての役割を果たすことはありませんでした。

さらに、8月6日、広島の平和祈念式典で、安倍首相は「唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力」を口にしながら、「核兵器禁止条約」に一言も触れることはありませんでした。

10月6日、核廃絶国際キャンペーン(ICAN)にノーベル平和賞が贈られることとなりました。

このICANの活動は2007年に発足し、数百のNGOが参加するとともに、多くの日本人被爆者の方々の努力によって運動が支えられてきました。

「核兵器禁止条約」が国連で採択され、さらに核廃絶を求める運動が国際的にも高く評価されたことに伴い、日本政府が核兵器廃絶に背を向けることなく、条約に批准するよう強く求めるとともに、日本政府自らが、核兵器保有国の条約への参加を促し、ヒバクシャの悲願である「核兵器禁止条約」を実効あるものにしていかなければなりません。

 

(2)進む原発輸出と日印原子力協定

日本では、福島の事故処理も進まず、また、福島第1原発事故以降、国内での原発建設が困難となるなか、安倍首相自ら原発を成長戦略と位置付け、国外へのセールスに力を注いできました。しかし、原発輸出は、重大事故の賠償責任や使用済み核燃料の処分先など、国内でも解決されていない課題を相手国に押しつけることにもなりかねません。

一方、日本政府は、核不拡散条約(NPT)にも加盟せず核兵器開発を続けるインドに対し、2017年5月に日印原子力協定を結びました。しかし、協定の中では、インドが核実験を行なった場合、協力を停止することは明記されず、また、岸田文雄外相が繰り返し表明した「協定でインドをNPTに実質的に取り込む」との決意も担保されていません。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名の約束や核分裂性物質の透明性確保も取り付けることもできていません。

さらに、IAEA(国際原子力機関)の査察が限定され、インド政府が民生用と認めない施設は、高速炉や再処理施設も含め査察の対象外となっています。また、日印原子力協定では、使用済み核燃料の再処理を認めており、生産されたプルトニウムが軍事転用される可能性を否定できません。

日印原子力協定はインドを核保有国として認め、NPT体制を骨抜きにするばかりか、核不拡散体制そのものを崩壊させるものといえます。

現在、世界が、脱原発・再生可能エネルギーへの転換へと向かう中、世界銀行は、原発はリスクが未知数なため、投資の対象にはしないと決定する一方、火力発電のCO2排出量を制限するとともに、再生可能エネルギーへの転換を推奨しています。このことからも、日本の本来の使命は、原発輸出に奔走するのではなく、福島の原発事故の反省や被爆国としての経験をもとに、再生可能エネルギーへの転換や世界の反核運動を推し進めることにあるはずです。

 

(3)北朝鮮の核実験

 9月3日、北朝鮮は、6回目の核実験を実施しました。周辺各国の地震計による推定では従来の核実験出力の数倍から十倍程度で、北朝鮮の発表と同じく水爆実験と見られます。この核実験の実施は、緊迫した情勢の中で、軍事衝突を招きかねない危険な行為です。7月7日に成立した「核兵器禁止条約」のもと、世界各国が発効へ向けたとりくみを進めている中にあって、核実験を繰り返す暴挙は許されません。

 一方、1994年の米朝枠組み合意以降、国際社会は北朝鮮の核開発を止める機会が何度かあったにもかかわらず実現しないまま今日に至っています。この責任は世界各国が問われなければなりません。

他国との正常な外交関係を求める金正恩政権は、厳しい経済制裁の中で世界から孤立しています。急速な核・ミサイル開発は、金正恩政権が追い詰められていることの証左であり、さらに、イラク、リビアなどの独裁体制が崩壊するなかで、「核兵器こそ自国の体制維持に必要だ」と間違った結論に達しているとも言えます。

 米国・韓国は、北朝鮮首脳暗殺を目的とする「作戦5015」や、朝鮮有事を想定し核ミサイルにも対応する「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」などの大規模な合同軍事演習を繰り広げています。制裁措置の強化と軍事的圧力を強める米国・韓国、そして日本の政治姿勢は、北朝鮮を追い詰めるだけで平和への道をひらくものではありません。関係国の全てが、米朝対話や六カ国協議の即時再開など、外交と対話によって緊急事態を回避するよう強く求めるものです。

 

(4)本格的な原発推進路線に立ち返る安倍政権

すでに再稼働している川内原発(鹿児島県)、伊方原発(愛媛県)に続き、2017年5月17日には高浜原発4号機、6月6日には同3号機の再稼働が強行されました。また、玄海原発を含めて加圧水型原発12基で再稼働が認可され、うち美浜3号機と高浜1・2号機の3基では原則40年で廃炉にするルールが無視され、60年運転が認可されています。

福島原発事故から6年半が経過しましたが、いまだに5万以上の被災者が避難生活を余儀なくされ、子どもたちの甲状腺問題、原発労働者の被曝、中間貯蔵施設や帰還の促進と保障の打ち切りなど課題は山積しています。

多くの市民は脱原発社会を求め、再生可能エネルギーへの転換を求めています。にもかかわらず現在、再稼働に向けて、原子力規制委員会で新規制基準に基づいて10発電所14基の審査が行われています。また40年で廃炉という原則が形骸化されつつあります。

このように、安倍政権は、2030年度の電力供給における原発比率を20~22%にする計画を掲げながら原発推進路線へ突き進んでおり、脱原発社会を求める多くの市民の声とは真逆の方向へ進もうとしています。

 

(5)一刻も早い福島原発事故の収束と被災者の生活や権利の保障を

福島原発事故から6年半が過ぎた今も事故の収束作業は難航しています。汚染水問題では、「凍土遮水壁」が稼働しましたが、地下水の流入が止まらないばかりか、汚染水の流出の大幅低減とはならず当初期待された効果は現れていません。

また、廃炉に向けて最も難関と言われている溶融燃料(デブリ)の取り出しは、非常に高い放射線に阻まれています。41年~51年ごろ「廃炉完了」としていたこれまでのロードマップは見直しを迫られる可能性があります。

 また、経済産業省は、当初、福島原発事故に関わる廃炉など事故処理にかかる費用を11兆円と見積もっていましたが、試算結果を21.5兆円になると発表し直しています。

試算の度に原発事故の処理費用が増加し、経産省は、これらの費用の一部を安易に電気料金へ転嫁し、消費者に負担を強制しようとしていなす。

一方、避難区域外からの自主的避難者に対して、福島県は今年3月いっぱいでの住宅無償提供の打ち切りを行いました。自主避難者からは「一方的な切り捨てだ」との声があがっています。避難者は現在45都道府県に1万524世帯・2万6601人と推定されますが、「帰れるのになぜここにいるのか」との心ない非難の声も向けられています。住宅の無償提供の期間を延長したり、県営住宅に専用枠を設けたり、引っ越し費用を補助したりと様々な独自支援策を行う自治体もありますが、今村復興大臣の「自主避難は自己責任」との発言に象徴されるように、国の姿勢は避難者の切り捨てに終始しています。

「避難の権利を求める全国避難者の会」は、その設立趣意の中で「『被曝なき居住』と『貧困なき避難』は私たちの生きる権利であり基本的人権です」と主張しています。このような状況の中で、避難者の損害賠償請求訴訟は全国各地で行われており支援が重要となっています。

 

(6)「もんじゅ」の廃炉と共に原発政策の抜本的な見直しを

2016年12月20日に、関係閣僚会議で高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定されました。

しかし、政府は「もんじゅ」廃炉の決定後、フランスの高速実証炉「アストリッド」開発を共同で行うとともに、将来の商業炉の独自開発に繋げるとしています。

さらに今年に入って、安倍首相はオランド仏大統領と会談し、「高速炉実用化に向けて協力を加速する」として民生用原子力の共同研究を進めることで合意しましたが、運転時期や開発費総額など将来の見通しは立っていません。

「もんじゅ」の廃炉によりこれまで進めてきた高速炉計画の破綻は明確であり、これ以上危険で巨額の浪費につながる再処理・プルトニウム利用政策を放置することはできません。

原水禁および原子力発電に反対する福井県民会議の委託を受けてスタートした「もんじゅに関する市民検討委員会」(代表・伴英幸/原子力資料情報室共同代表)は、2016年5月9日にまとめた「もんじゅ」廃炉の提言書に続き、この秋までに「『もんじゅ』廃炉への過程と問題点」や「高速炉開発の問題点」などについての提言をまとめ関係諸官庁との交渉を予定しています。

「もんじゅ」廃炉を勝ち取った今こそ、再処理・プルトニウム利用の中止と核燃料サイクル政策の抜本的転換実現に向け取り組みを強化しなければなりません。

 

(7)「さようなら原発1000万人アクション」の取り組みを広げよう

 安倍政権は、「エネルギー基本計画」の見直しを2017年夏から始め、今年度中には新たな基本計画を出すとしています。しかし、内容は、これまでの原発再稼働の推進、核燃料サイクルの推進、原発輸出の推進などの原子力推進政策を堅持した小手先の変更にとどめようとしています。

また、7月28日、政府は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定で、「科学的特性マップ」を公表しました。これは、今日まで目途が立っていない高レベル放射性廃棄物処分場の立地を進めるために有望地なるものを示したもので、国は「マップの提示は調査の受け入れについて自治体に何らかの判断をお願いするものではない」として、「有望地」に「選定」されることにより調査や処分施設を押し付けるものではないとしています。

しかし、最終処分の主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)はマップの提示後は「より適性が高い地域」で立地に向けた対話活動を進めるとしており、今後、NUMOの動きに対し、警戒していかなければなりません。最終処分地を求める前に、政府は、再稼働による原発の継続を優先しながら廃棄物処分を後回しにする姿勢こそ正すべきです。

原発をめぐっては、経済性や安全性、廃棄物の最終処分など様々な問題があらわになり拡大しているにもかかわらず、安倍政権は原発推進に執着しており、脱原発を求める世論と大きく乖離しています。

こうした中、1000万人署名運動を中心に、原子力政策の転換や脱原発社会の実現に向けて取り組んできた「さようなら原発1000万人アクション」を、引き続き多くの市民とともに広げていくことが求められています。

 

9.民主教育を推進する取り組み

2017年3月24日、文部科学省は、2018年度から実施される「特別の教科・道徳」の使用教科書および主に高校2・3年生用教科書の検定結果を公表しました。小・中学校で初めて正式の教科となる道徳の教科書は、8社24点で合計66冊が検定を合格しましたが、修正意見に対応してパン屋が和菓子屋、アスレチックの公園が和楽器店に修正されるなど、字面の判断で06教育基本法にある「わが国の郷土と文化」を強調する視点が目立つものとなっています。

とりわけ、東書、光村、日文、学研、学図、教出、光文、廣済の8社の教科書の内容は、表面的で一律の道徳観・倫理観、愛国心や郷土愛の押しつけ、科学的根拠を欠く題材、一方的な人物観や単純化された評価など、多くの面で問題の多いものとなっており、一律的な価値観の強制にならないよう、子どもたちの感性を大切にする教育実践が求められます。

また、小学校の道徳の教科書へは、育鵬社は参入しませんでしたが、教育出版の道徳の教科書の編著者に、安倍首相の道徳教育政策のブレーンで日本教育再生機構の理事である貝塚茂樹武蔵野大学教授が参加しています。また、安倍首相が「これぞ理想の道徳教科書」と絶賛した「13歳からの道徳教科書」(2013年:育鵬社発行)の編著者を務めた柳沼良太岐阜大学准教授も名を連ねています。さらには、育鵬社版歴史・公民教科書を採択した東京都武蔵村山市の牧一彦市立第八小学校長と教諭2名が執筆に参加するなど、日本教育再生機構と一体となった道徳教科書といえます。

教育出版の道徳教科書を採択した地区は、8月15日現在、北海道第7(留萌市・増毛町・小平町・苫前町・羽幌町・遠別町・天塩町・初山別村)、埼玉県さいたま市、埼玉県第17(深谷市・寄居町)、神奈川県足柄下地区(箱根町・真鶴町・湯河原町)、浜松市、名古屋市、松山市、沖縄県那覇地区(那覇市・浦添市・久米島町・北大東町、南大東村)の8採択区22市町村となっています。前回育鵬社版歴史・公民教科書を採択した横浜市(学図)、大阪市(日文)などは教育出版を採択しませんでした。教育出版の道徳教科書や育鵬社版歴史・公民教科書などに反対する市民の運動が大きな効果を上げたと同時に、運動の見えない地区で教育出版の採択を許したともいえ、今後の運動に課題を残しました。

このように、日本教育再生機構・教科書改善の会は、自らの道徳の教科書を全国で採択させるため、教育出版をダミーとして利用しています。中学校の道徳の教科書でも、同様の手法で検定・採択に参入することが予想され、採択阻止の取組みが求められます。

また、この間進められてきた市民による教科書問題検討会では、道徳の教科書の内容について、「型にはまった愛国心や郷土愛の押し付け」「平和教材では表面的なとらえ方が多く戦争の実相に触れていない」「動植物が主人公の題材では科学的な観点から問題があるものが多い」「固定された倫理観で型にはめるものが多い」「一方的な人物評価や、日本人を単純化し自慢する内容が多い」などの意見が出され、これまで懸念されてきた教科書の内容が明らかになりました。

 一方、中学校用歴史教科書で、唯一日本軍慰安婦問題を記載する学び舎版教科書を採択した学校へ激しい抗議行動は、日本会議とその影響下にある安倍政権の姿勢と結びついたものであることを忘れてはなりません。  

 引き続き、政権の意図に偏った恣意的な教科書検定の実態を明確にし、バランスのとれた教科書の記述内容を求めるとともに、特別の教科道徳の教科書の内容の検証を行い、一方的・画一的な規範の強制になることのないよう取り組みを進めていかなければなりません。

 

10.東アジアの連帯と非核・平和の取り組み

(1)アメリカと北朝鮮の軍事的挑発行為の連鎖により高まる東アジアの緊張

8月29日、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことに対し、国連安全保障理事会が強く非難する議長声明を全会一致で採択しましたが、こうした国際社会の警告を無視し、9月4日、北朝鮮は、爆発規模は過去最大とみられる6回目の核実験を実施しました。

 一方、アメリカも3月から4月にかけて、原子力空母カール・ビンソンを投入した過去最大規模の米韓軍事演習を行い、8月21日からは北朝鮮が再三中止を求めてきた米韓合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」が行われるなど、米朝相互の軍事的挑発行為が繰り返され、東アジアの緊張がこれまでになく高まってきています。

北朝鮮の核実験を含めた軍事的挑発は当然強く批判されるべきですが、このような北朝鮮の強硬姿勢の背景に、国連安保理による制裁に加え、日米韓三国による軍事的圧力があることも事実です。

南北関係の改善に軸足を置き、北朝鮮との対話の道を探ると期待される文在寅新大統領も、北朝鮮のICBM発射後にTHAADミサイルの追加配備を決定し、日本政府も、「敵基地攻撃能力」に関する議論を進める中、北朝鮮のミサイル発射を口実に、米軍原子力空母と自衛艦の合同演習を実施し、8月12日には、中四国4県の陸上自衛隊の駐屯地に、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開しています。

 このような状態が続くことにより、偶発的な出来事によって大規模な軍事衝突が発生する可能性も否定できません。今こそ軍事的な力による解決ではなく、対話による解決を追求していくことが求められています。

北朝鮮の核問題を解決するためには、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定へ転換させることをめざしながら、まずは米朝間での対話のなかで緊張緩和をつくりだすことです。朝鮮半島と北東アジア地域全体の平和と安定に向けて進められた(しかし2008年以降開会されていない)「6か国協議」のような多国間協議をはじめ、あらゆる外交手段を使って実現させていくことが重要です。

 

(2)日本は、戦争する国づくりから東アジアの平和と安定に向けた努力を

北朝鮮の29日のミサイル発射に際して、12道県に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発信されましたが、これより先、8月21日には、北朝鮮のミサイル発射に対し、内閣官房の「国民保護ポータルサイト」で「弾道ミサイル落下時の行動について」と題した一枚のPDFが公開されています。さらに、同日、都道府県の危機管理担当者を対象に説明会を開き、ミサイルが落下したときに住民がとるべき行動などを周知するように指示するとともに、24日には首相官邸のメールマガジンで、「身を守るためにとるべき行動」を確認するよう発信しています。

これまで各自治体や鉄道会社などが、ミサイル発射に伴って過剰な反応を繰り返し、さらに、教育現場においても効果の疑われる避難訓練が実施されています。また、日本政府は北朝鮮のミサイルからの防衛として、中四国4県の陸上自衛隊駐屯地に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を新たに展開しています。

このように、日本政府が、北朝鮮の恐怖を煽り過剰な反応を繰り返すことは直ちに中止すべきであり、同時に、植民地支配などの歴史的経過のなかで、日本社会で生活してきた在日朝鮮人への差別や憎悪が増長することのないよう警戒しなければなりません。

また、9月4日の北朝鮮の核実験に伴い、その抑止力向上のためとして、日本国内への核兵器配備や非核三原則の見直しを求める議論の必要性が浮上していることへも警戒が必要です。

このように、日本は、高まる東アジアの緊張を背景に、安倍政権のもとで進められてきた特定秘密保護法、戦争法、そして今年の共謀罪の成立、さらに「2020年の新しい憲法」を目指した改憲発議という法体系の整備と合わせ、日米共同軍事訓練の実施や、北朝鮮によるミサイルの発射実験および、中国の海洋進出に対抗するための装備やシステム導入による防衛予算の拡大など、いよいよ戦争できる国づくりへと向かっています。

しかし、日本が果たさなければならないのは、戦争できる国づくりではなく、非核3原則を掲げて核兵器禁止条約に積極的に参加するとともに東アジアの非核化へ努めることや、平和憲法を基本に東アジアの平和と安定を求めて、ありとあらゆる外交努力を進めることです。

 

(3)歴史の事実を共有することから友好関係の構築を

 また東アジアの平和と安定のために欠かせないのは、歴史認識を巡る問題です。2015年12月28日の「慰安婦」問題を巡る日韓合意に対して、韓国の文大統領は「韓国国民が受け入れられないのが正直な現実」「なによりも当事者である被害者のハルモニ方が受け入れずにおられる。このような点を韓日両国が直視する必要がある」と語ってきました。そして7月31日には日韓合意を検証する作業をスタートさせたと発表しました。さらに文大統領は8月17日、徴用工の問題についても個人の賠償請求権を認める立場を表明するなど、日本の戦争責任・植民地支配責任を巡る問題はいまだに解決の糸口が見えていません。

日本軍「慰安婦」や徴用工が存在した事実を両政府・国民が理解し共有する中で、友好と協調の相互関係を構築し両国政府だけでなくすべての被害者や支援団体が納得できるような解決の仕方を追求していかなければなりません。

 

11.人権確立に向けたさまざまなとりくみ

(1)朝鮮学校無償化訴訟の中で、差別を許さないたたかいをすすめよう

第2次安倍政権の下、朝鮮学校に対する差別が深刻化しています。2016年3月29日、文科省は「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」を通知し、そのため、2016年度予算に補助金を計上していた自治体の多くがその支出に躊躇する結果となりました。

また、これまで全国5つの朝鮮学校が「高校授業料無償化」制度から朝鮮学校が除外されていることは違法であるとして国を提訴し裁判闘争を行ってきました。そして今年7月には広島(19日)と大阪(28日)で、9月13日には東京でそれぞれ地裁判決が出されました。広島地裁は「朝鮮総連による不当な支配が行われている」という根拠の乏しい国側の主張をそのまま受け入れ原告の請求を棄却するという不当判決を言い渡し、東京地裁も概ね同じような判決となりました。国家による差別を司法が容認するものであり、到底受け入れることはできません(広島の原告側は8月1日、判決を不服として控訴)。

一方、大阪では朝鮮学校排除は外交・政治的判断に基づいて行われたものであり違法であるとする画期的判決となりました。教育の機会均等を実現するという法の趣旨に基づいて判断した場合、大阪地裁の判決こそが公平公正なものであることはだれの目にも明らかです。

愛知・福岡でも同様の裁判が行われており、今後はさらに控訴審も控えております。今後も国内外における運動の連携・交流をさらに拡大させながら、裁判闘争への支援と合わせ「無償化」の適用や補助金支給を求めて取り組みをすすめなければなりません。

 

(2)実効性あるヘイトスピーチ対策を

2016年6月3日には、ヘイトスピーチ規制法(正式名称「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)が公布されました。

そして、この公布に伴い川崎市は他の利用者の迷惑になることが明白な場合に限り施設利用の不許可や許可取り消しができるガイドライン案を発表、来年3月の施行を目指しています。

しかし、いまだにヘイトデモが繰り返されているというのが現状です。また国に先立ってヘイトスピーチ規制を条例で定めた大阪でも、インターネット上での匿名性という壁にぶつかるなど試行錯誤が続いています。引き続き法律や条例をより実効性のあるものへと修正していくための努力が求められます。

そもそも日本において、アジアに対する差別が深刻化している背景には、戦後一貫して差別が放置されてきたこと、過去の植民地支配責任を真摯に反省するような教育が徹底されてこなかったことなどが挙げられます。とりわけ在日コリアンへの敵意・偏見に満ちた認識を改める教育活動が求められています。そのためにも人権救済機関の創設など、マイノリティー全般の法的人権擁護に向けたとりくみも進めていかなければなりません。

 

(3)部落差別解消推進法の成立と障害者差別解消法の施行

2016年12月9日、部落差別解消推進法案が参院本会議で可決成立しました。法案は「現在もなお部落差別が存在する」との認識を示したうえ、「基本的人権の享有を保証する憲法理念にのっとり、部落差別は許されない。解消することが重要な課題」と規定、国や地方公共団体の責務として相談体制の充実や教育・啓発、実態調査を実施するように明記しています。

今後はこの法律をより実効性のあるものにしていく努力が求められます。

また、2016年4月より障害者差別解消法が施行されました。しかし、この1年間に障がい者や家族から寄せられた差別に関する訴えのうち、法務省が人権侵犯事件として救済手続きを行った件数が292件(東京新聞)に上るといわれています。また足の不自由な車いすの男性が飛行機への搭乗を拒否され自力でタラップを上がらせられるなど、法律の趣旨が社会に浸透していないのも問題です。障がい者差別をなくすための法律が実体を伴うものとなるよう、今後も当事者団体とともに運動を広めていく必要があり、同時に、障がい者への差別を批判し共生社会の実現を訴える教育活動も推進していかなければなりません。

 

(4)外国人労働者の働く権利の確立を

一方、2016年11月18日の臨時国会で可決成立した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、技能実習法)が、今年11月から施行されます。この法律に対しては、低賃金構造を改善するための合理的な基準がないこと、実習生が実習先を移動する自由が十分に担保されていないこと、そして送り出し機関に対する罰則規定がないことなどの欠陥が指摘されており、技能実習制度を根本から解決するものとはなっていません。

厚生労働省は外国人技能実習生を受け入れている国内の事業所のうち去年1年間に通報や相談が寄せられた全国5672の事業所を対象に労働基準監督署による立ち入り調査を行なった結果、去年1年間に違法な長時間労働などで是正指導を受けた事業所は4004か所と過去最多となっています。 

 具体的には、労働時間の違反が1348か所、労働安全衛生法違反が1097か所、残業代の未払いが771か所などで、外国人労働者の働く権利を保障する法制度の構築に向けて、真摯に議論していくことが求められます。

 

(5)刑事司法改革関連法の成立に伴い取り調べの全面可視化の取り組みの強化を

刑事司法改革関連法案が2016年5月24日の衆院本会議で可決・成立しました。これによって「司法取引制度」が導入され通信傍受の範囲の拡大されることになりましたが、こうした法律は取り調べの可視化を義務付けることで捜査機関の権力を制限し、冤罪事件が二度と起こらないようにしようとしてきたわたしたちの運動とは真っ向から対立するものです。今後、取り調べの全面可視化を求める取り組みを強化していかなければなりません。

 

12.貿易交渉と食料・農林業をめぐる動き

環太平洋経済連携(TPP)協定は、2016年12月に、多くの反対を押し切り、国会批准が強行されましたが、アメリカのトランプ政権の誕生で発効の見込みがなくなりました。しかし、残る11ヵ国は協定の延命をはかって交渉を続けています。また、日本とヨーロッパ連合(EU) との間でも、経済連携協定の交渉が進められ、2017年7月6日に「大枠合意」が発表されました。さらに、今年秋から本格化すると見られる日米の二国間の自由貿易協定に向けた交渉な日本は多くの貿易交渉を進めています。交渉は、農産物などの市場開放ばかりでなく、各国の独自の規制や基準を撤廃して均一化を図ろうとするものであり、国の主権を損なうものです。

しかし、これらの交渉の内容や市民生活への影響などはほとんど明らかにされず、秘密のうちに交渉が進められ、TPP以上の譲歩が行われる恐れがあります。引き続き、徹底した情報公開を求め、交渉の問題点を明らかにさせることが必要です。

一方、安倍政権は企業のための規制緩和や、加計学園問題で明らかになった国家戦略特区などを押し進めています。特に農業分野では、急速に改革が進められてきましたが、その実態は「規制改革推進会議」が主導する企業のための規制改革や自由化です。

特に、食料(カロリー)自給率は昨年度38%になり、1993年の冷害の年に次ぐ最低を記録しました。世界中で食料の自給向上が叫ばれる中で、逆行する政策が行われています。これは食料の安定・安全にも大きな影響を与えるものであり、安倍政権の食料・農業政策を厳しくただしていかなければなりません。食料自給率引き上げや所得補償制度の拡充、食品の安全性向上など、食料・農林業・農村政策に向けた法制度確立が必要です。

 

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