東アジア基地環境問題国際シンポジウムの開催によせて
糸数慶子 (参議院議員)


 東アジアの国々に駐留する米軍等の軍隊の活動によってもたらされる生活環境や自然環境への影響を調査し、その防止策や環境回復への取り組みを地域住民の立場で考え、話し合うこの度の東アジア基地環境問題国際シンポジウムを韓国の地で開催されることを心から歓迎し、新たな方向性を見出していただけるようご期待いたします。
 ご承知のように駐留する在日米軍の75%が集中する沖縄県においては今、新基地建設をめぐる問題が重大な局面を迎えています。新基地とは、沖縄県宜野湾市の市街地の真ん中に居座り、世界一危険な基地とされる米海兵隊普天間飛行場の代替施設として建設されるもので、場所は沖縄県名護市の辺野古海域です。
 この海域はジュゴンが生息し、サンゴや海藻が豊富な生物多様性に富んだ極めて貴重な海で、県民の大多数が建設に反対しています。国が実施した環境アセスメントも不備が指摘され、新基地建設に反対する市民団体は去る8月19日、環境アセスメントの手続きやり直しと損害賠償を国に求める行政訴訟を起こしました。
 新基地建設には、さらに建設に伴う海砂採取の問題も指摘されています。沖縄県の海砂が消滅するのではないかと言われるほど膨大な1700万立方メートルの海砂が必要とされ、その自然環境や漁業へ与える影響は甚大だと考えます。
 新基地建設の問題に限らず、東村の高江集落では新たなヘリパッド(着陸帯)の建設も予定され、豊かな森とそこに生きる動植物が危機にさらされています。日常的には軍用機の訓練による爆音、演習による山火事や流弾、米軍人軍属による事件・事故等が起き、県民の安心、安全な暮らしはほど遠い現状にあります。
 今回の東アジア基地環境問題国際シンポジウムを通し、駐留する軍隊がいかに住民の暮らしを脅かし、自然環境を破壊しているか、その実態をつぶさに報告し、その防止策や情報を共有するためのネットワークづくり、自然環境の回復に向けた提案や運動のあり方等、実りある協議に期待を寄せています。共に基地、軍隊のいらない平和な東アジアをめざし連帯して取り組んでいきましょう。


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