龍山基地油流出事件を通じて見た韓米当局の問題点
李受庭 イ・スジョン (民主労働党 ソウル市議会議員)


 在韓米軍は、1945年の解放以降60余年間、首都であるソウルの真ん中に龍山基地を駐屯させた。
 龍山基地は、これまで米軍が起こした油流出により至る所の土壌と地下水が深刻に汚染された。油流出による龍山基地環境汚染は、米軍の故意的な隠ぺいにもかかわらず、基地に勤務している韓国人の情報提供と基地外流出で確認されてきた。明らかになった油汚染事件だけでも13件にのぼっている。
 しかし、米軍は油流出による龍山基地環境汚染が韓国民の生命を脅かす犯罪行為であることを認識できずにいる。
 米軍は、13件にのぼる環境汚染を起こしても、これまでたったの一度も心の底からの謝罪と再発防止、浄化費用負担という常識的な措置さえ拒否している。また米軍は、環境汚染事件に対する韓国民の怒りがおさまれば、当局間の合意さえ履行せずにいる。このような米軍の傲慢な態度は、韓米関係の不平等性からはじまっており、これを糾さなければならない韓国政府がそれを支えているためである。この文章では、龍山基地油流出による代表的な環境汚染事件を取り上げ、不平等な韓米関係の問題点とその対案を提示しようと思う。

龍山基地油流出によるノクサピョン駅地下水汚染事件
 2000年7月、McFarland・米8軍・霊安室副所長(現在霊安室所長)が、漢江に死体防腐剤のフォルムアルデヒトを無断放流し、ソウル市民に大きな衝撃を与えた事件があった。すでにMcFarland事件は、映画『グエムル-漢江の怪物-』を通じてよく知られているが、当時漢江に無断放流したフォルムアルデヒトは、人体に致命的な毒劇物だったため、ソウル市民の怒りは頂点に達した。
 ところが次の年である2001年1月に、ふたたび龍山基地近隣にあるノクサピョン駅(地下鉄6号線)トンネル内で油が発見されたが、続く悪材料にソウル市と政府はもちろん、疑惑に取り巻かれた米軍が慌てふためいただろうということは、十分に予測できる。
 不平等な韓米関係でいつも韓国政府と国民の上に君臨し、高圧的で傍若無人だった米軍が、急いでソウル市と政府の共同調査要求を受け入れ、論議のテーブルに座ることになったのも、まさにMcFarland事件に対するソウル市民の怒りに起因していたと見ることができる。
 結局韓米当局間の共同調査の末、2003年12月にノクサピョン駅周辺地下水油汚染は、龍山基地サウスポスト敷地内にあるガソリンスタンドから流出・発生した事件と結論づけられた。また、基地外はソウル市が、基地内は米軍側が汚染浄化を担うことにし、基地外の浄化費用は韓米SOFAの手続き(請求権条項)という条件をつけはしたが、米軍側が負担することで合意するに至った。

いつものように合意を破り、真実を隠ぺいする在韓米軍
 ソウル市は、韓米当局間合意によって2003年12月から現在まで韓国農村公社に依頼し基地外のノクサピョン駅周辺地下水汚染の拡散を防止している。ソウル市の汚染拡散防止作業は大きく2つで、地下水の上に浮かんだ浮遊油を除去し、ノクサピョン駅近隣交通安全地帯にくみ上げタンクを設置して油で汚染された地下水を除去し、地下水汚染による被害を最小化している。
 ソウル市が、2003年12月から2007年5月までくみ上げ排水処理した地下水は総750tであり、67.45Lの浮遊油を除去した。この作業で、2009年までに要した予算は、約20億であり、2009年には1億を割り当て、汚染拡散防止作業を推進中だ。
 しかし、このようなソウル市の努力にもかかわらず、トンネル内の油が発見されて9年、韓米当局の合意がなされて6年になる現在、地下水の汚染程度は全く改善されていない。これは地下水の汚染程度を確認し、浮遊油を除去するため作られた地下水観測井(observation well)BH-34のデータに克明に表れている。2004年3月の汚染調査結果、発がん物質であるベンジンが21.773mg/L(浄化基準値の1451.5倍)だったが、2008年8月には20.940mg/L(上下基準値の1,396倍)が検出された。

<表-1> 2008年8月 汚染数値現況(ソウル市資料)

区分

汚染地下水  浄化基準(r/L)

最大濃度(r/L)

08年 8月

浄化基準対比

07年12月

08年6月

08年7月

08年8月

ベンゼン

0.015

6.589

(BH-7)

16.955

(BH-34)

15.445

(BH-34)

20.940

(BH-34)

1396倍

トルエン

1

8.292

(BH-34)

10.205

(BH-2)

8.520

(BH-2)

8.665

(BH-2)

8.66倍

エチルベンゼン

0.45

1.730

(BH-7)

1.328

(BH-7)

0.675

(BH-1)

1.266

(BH-2)

2.81倍

キシレン

0.75

7.578

(BH-7)

6.198

(BH-2)

4.833

(BH-2)

6.273

(BH-2)

8.36倍

TPH

1.5

50.5

(BH-6)

81.7

(BH-6)

16.5

(BH-6)

24.1

(BH-7)

16.1倍


油と重金属によって一度汚染された地下水の場合、浄化に必要な費用が莫大で長時間かかるのは事実だが、5年もかけた浄化作業を通じて汚染数値が改善されなかったのは、常識的に納得できないことだ。
 ところで、韓国農村公社が2004年から毎年ソウル市に提出している業務報告書で、汚染数値の改善がなぜ困難なのかを詳細に説明している。
 2006年6月の報告書では、「BH-34(地下水観測井)のベンジン濃度は、地下水汚染浄化基準値より大変高く現れており、油類の帯水層(地下水を含んだ地層)内流入時点がかなり経っているのではないと推定」されると、「米軍基地内の追加的な油類漏出可能性といくつかの地点に汚染源の残存可能性も看過できない」と指摘している。
 これは基地外汚染の程度が改善されていない根本原因が、当初の約束を覆し、龍山基地内浄化を米軍側がキチンとしなかったことにあるということを証明してくれるものである。

<表-2>ノクサピョン駅地下水汚染事件進行状況

区分

2003年12月 合意内容

現在進行経過

浄化主体

基地内 :米軍

基地外 :ソウル市

基地内:米軍浄化せず

基地外:汚染拡散防止(ソウル市)

浄化費用

基地外浄化費用米軍負担

現在までの所要額 : 20億以上

米軍拒否 → 韓国政府負担


 反面、米軍は2006年11月に基地内浄化は完了したと、韓国農村公社業務報告書とは相反する主張をしている。しかし、基地内浄化を完了したという米軍側の主張は嘘だと断言できる。その理由は、米軍が、ソウル市が要求していた基地内浄化関連資料提供と基地内調査を徹底して黙殺してきたということからもわかる。これは結局、米軍が2003年12月の韓米当局の合意事項を徹底して違反したもので、ソウル市民はもちろん韓国民を愚弄する以外の何物でもない。

2006年、再び発生したキャンプ・キム基地外油汚染事件
 地下鉄1号線ナミャン駅周辺には、キャンプ・キム基地がある。龍山基地の周辺の敷地でもあるキャンプ・キム基地の外で油流出が確認されたのは、2006年7月だった。
 ソウル市は、事件発生直後に基地外に流出した油が、米軍が使用するものだと明らかにすると、米軍に基地内共同調査を要求した。しかし、米軍は2006年8月にたった1度だけ会議に参加した後は、これまで一貫して沈黙し続けている。
 また米軍はこの過程で、証拠を隠滅する破廉恥な姿も見せた。米軍は、韓国政府とソウル市に知らせないまま、2006年9月に油流出が疑われていた基地内地下油類貯蔵タンクを掃除し、その年の12月には証拠隠滅のため地下油類貯蔵タンクを外部に搬出し除去する作業を推進した。米軍がこのように迅速に地下油類貯蔵タンクを除去したのは、大きく破損しこの間油が流出していた状況を消すためであった。
 このような状況で、2008年8月に龍山区庁が韓国農村公社に依頼し推進している基地外汚染精密調査過程で、地下水の上に浮いた油の厚さがなんと3m10cmということが確認された。これは事件発生直後より汚染程度がより深刻になったということを意味するものである。また、基地内油流出が現在進行形であり、基地外の土壌だけでなく地下水までも汚染されていることが推測できる。

<表-3> 2008年 8月 汚染数値現況(ソウル市資料)

日時

観測定地下水上に浮いた浮遊油の厚さ測定結果(m)

収去量(L)

MW-2

MW-6

MW-7

MW-8

MW-9

MW-10

MW-11

 

 

 

 

 

 

 

37.285

'08. 5. 2

● (0.150)

-

-

-

-

0.200

'08. 6. 24

 ○

● (0.020)

-

● (0.35)

● (0.004)

0.605

'08. 7. 15

● (0.192)

● (0.010)

-

● (2.778)

9.470

'08. 8. 21

-

-

● (0.030)

● (1.460)

● (0.616)

● (3.106)

20.500

'08. 9. 19

● (0.024)

-

● (1.439)

● (0.111)

● (0.994)

6.510

※ ○不検出,●検出, -未測定/ ‘08年 6月 新規観測井(MW-9, 10, 11)追加設置

龍山基地環境汚染現況暴露および持続的な後続対応
 韓米当局は、2004年に龍山基地と京畿北部地域の米軍基地をピョンテクに移転し、その敷地を返還することに合意している。その後、返還される米軍基地環境汚染問題をどのように処理するのかについての話し合いの末、2006年までに返還される土地を対象にした環境協商を終える。
 本議員は、2005年末からマスコミを通じて返還が予定された米軍基地が深刻に汚染されているということを知り、環境汚染浄化費用を韓国政府が負担することにした屈辱的な協商過程を見守りながら、米軍基地環境汚染問題を正しく解決することが、環境主権を守り不平等な韓米関係を改善する道であることを知るようになった。
 2006年に行われた地方選挙当選後、ソウル市議員になった本議員は、2001年に発生したノクサピョン駅地下水汚染がキチンと浄化されていなかったという事実と、当選した頃に発生したキャンプ・キム一帯の油汚染事件に接しながら、龍山基地環境汚染現況を分析し、汚染浄化費用を米軍が負担するようにすることに努力してきた。
 そのため、大きく3つの方向の活動を展開している。まず、ソウル市を相手にした議会活動、関連団体との連帯、ソウル市民に環境汚染を知らせるためのメディアへの寄稿や基地調査などだ。
 このような活動によって、多くのソウル市民がノクサピョン駅周辺地下水汚染事件の真実を知るきっかけを準備した。
 しかし、本議員だけでなく関連団体の努力にもかかわらず、依然として龍山基地環境汚染は改善されておらず、継続して拡大している。
 最も大きな問題は、韓米SOFA(在韓米軍駐屯軍地位協定)環境条項が米軍に一方的で有利になっており、韓国の環境主権を蹂躙しているという点である。
 環境汚染事件が発生しても、韓国政府はもちろんソウル市が米軍基地内調査活動をできずにおり、ノクサピョン駅周辺地下水汚染事件のように米軍が基地内を浄化したと嘘をついても、これを検証できないという点はSOFA環境条項が大変不平等だということを象徴している。またSOFA環境関連毒素条項によって、返還される米軍基地環境汚染浄化費用を韓国政府がそっくりそのまま負担することになっており、これを改定しないままでは米軍の環境犯罪を防ぐ方法はない。
 それにもかかわらず、韓国政府が韓国民と米軍基地がある自治体の不平等なSOFA環境条項改定要求を黙殺しており、憤りをおさえることができない。

イ・ミョンバク大統領が立ち上がって解決すべき
 イ・ミョンバク大統領は、ノクサピョン駅周辺地下水汚染事件当時、ソウル市長として在職しており、誰よりもこの事件の真実をよく知っている当事者である。
 それにもかかわらず、イ・ミョンバク大統領は、首都の真ん中で米軍によって引き起こされた環境汚染事件に口をつむんでいる。イ・ミョンバク大統領が当選した後、これまでたったの1度も事件解決の方案に言及しないのは、米軍の環境犯罪を放置することと同じだ。
 このような大統領と政府の態度によって、米軍は全国のいたるところで何の問題意識もなく米軍基地を汚染しており、浄化の全ての責任を韓国民に押し付けている。
 また龍山基地が2014年に返還される予定だが、傍観する政府の態度が変わらない限り、数千億ウォンに達するものと予定される浄化費用をそのまま韓国民が負担するとんでもない事態が発生するだろう。
 イ・ミョンバク大統領と政府は、韓米SOFA(在韓米軍駐屯軍地位協定)の環境条項を全面改定し、環境主権を守り米軍の環境汚染責任を問いたださなければならないだろう。


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