4月, 2026 | 平和フォーラム

2026年04月30日

高市政権の改憲・軍拡を止めるために自治体の平和力を活かそう―非核三原則堅持を含む非核・平和都市宣言―

湯浅一郎

1.改憲・軍拡へと暴走する高市連立政権

 自民・維新連立の高市政権は、憲法九条を捨てることを当面の最大の目標とし、安保三文書見直しを前倒しし、全面的な攻撃を仕掛けようとしている。具体的には以下の多くが含まれる危険性がある。

 ・防衛費GDP3.5%へ向けGDP比2%を前倒しで達成する。
 ・高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言は押し通す。
 ・非核三原則を見直す。
 ・原潜導入を検討する。
 ・スパイ防止法を制定する。
 ・国家情報局を創設する。
 ・武器輸出「五類型」ルールを撤廃する。

 このうち、最後の武器輸出「五類型」ルールの撤廃は、2026年4月21日、すでに閣議決定されてしまった。しかし五類型の撤廃は政府の裁量で変更できるとはいえ、撤廃の是非に加え、こうした重要事項を国会の関与なしに決定できる仕組みそのものについても今後、国会などでの追及が求められる。

 また、これらの動きの背景には「自民党・維新の会連立政権合意書」(2025年10月20日)(注1)がある。「12本の矢」で構成されるが、その三「皇室・憲法改正・家族制度等」には、以下のような、かつてない内容が持ち込まれている。

・日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』(注2)を踏まえ、憲法九条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。
・緊急事態条項(国会機能維持及び緊急政令)について憲法改正を実現すべく、令和7年
臨時国会中に両党の条文起草協議会を設置し、令和8年度中に条文案の国会提出を目指す
・憲法改正の発議のために整備が必要な制度(例:国民投票広報協議会の組織及び所掌事
務などに係る組織法等)について、制度設計を行う。

 ここで、踏まえるとされる日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』なるものは、憲法九条を抹殺し、捨て去ることをめざした文書である。「第1章 実力から戦力へ~憲法9条改正と国防条項の充実~」は、第1節で「憲法9条と二つの乖離」と題して、第1に、憲法9条は「安全保障環境と乖離」しているとし、第2に「国際法環境とも乖離」しているとする。その上で、第2節(1)で「憲法9条2項削除により集団的自衛権行使を全面的に容認する」。9条2項とは「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」である。それを削除し、防衛の基本方針を「専守防衛」から「積極防衛」に転換するとしている。憲法九条を捨て、自衛隊を軍隊として位置づけ、専守防衛を廃し日本軍として海外にも派兵できる根拠を作るというわけである。連立合意書は、この維新の会提言を踏まえて、憲法九条改正に関する「条文起草協議会を設置する」としている。これは、おそらく高市首相の意思にも符合するもので、安倍首相の憲法に自衛隊を明記する案より大きく踏み出し、憲法九条を亡きものにすると言っている。

2.岸田政権の「安保三文書」改訂の問題点

 高市政権の安保三文書改定を問ううえで、その前提となる2022年12月16日に改定された岸田政権の三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を把握しておくことは重要である。三文書で、「国家安全保障戦略」(注3)は安全保障に関する最上位の政策文書を名乗るものだが、同文書は第1の要素として外交力を挙げている。

 そのくせ外交の窓口をふさいでしまうような認識ばかりが目立っている。例えば中国との外交で基本となる1972年9月29日、日中国交正常化に際しての日中共同声明、1978年の日中平和友好条約について、その重要性を再確認する記述は全くない。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK北朝鮮)との関係でも、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ない」という旧態依然とした主張を強調するだけで、基礎にすべき1992年の日朝平壌宣言(注4)の精神である「諸困難を乗り超えて国交正常化の早期実現に向かう」を無視している。これでは、中国や朝鮮との関係が何一つ前進しないことは初めから明らかである。逆に当初は「敵基地攻撃能力」としていた反撃能力の保有や今後5年間で防衛費を43兆円へ倍増すると、専守防衛を超え、軍拡に進むことを表明している。

 それでも同文書はⅢ「我が国の安全保障に関する基本的な原則」で「3 平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」としている。安全保障に関する最上位の政策文書において、「専守防衛に徹する」としていること自体は極めて重要である。そう言わざるを得ない背景にあるのは、まぎれもなく憲法九条の存在である。この点が安保戦略には正直に述べられていると言っていい。「いずも」型護衛艦2隻の空母化、敵基地攻撃能力となるスタンド・オフ・ミサイル配備、空中給油機の保有などで、専守防衛はなし崩し的に壊され、「九条は風前の灯」と言われてから久しいが、2022年の安保三文書においても「専守防衛」をドクトリンとしては明記せざるを得なかったことは確認しておかねばならない。憲法九条はまだ立派に生きているのである。

 2026年2月、米国・イスラエルがイランへの先制攻撃を起こし、イランがこれに対抗してホルムズ海峡を封鎖したことに対して、米国は日本やNATO諸国に掃海艇の派遣などを求めたが、現状では、戦争が続いている限りにおいて自衛隊を派遣することができなかった。これは憲法九条が生きていることの証明ともなっている。だからこそ高市連立政権は、九条を葬むってしまおうとしているのである。

3.憲法九条を守るために「自治体の平和力」を活かそう

 政府が改憲へと暴走する状況にどう向き合うのか? 基本は「憲法九条は守らねばならない」という世論の広がりを作ることであり、一時は全国各地に自然発生的に沸き起こった「九条の会」の再興と街頭での大衆的な行動が求められる。このところ若い人も含めた新たな動きが出ていることは大きな希望である。筆者は、本稿で、これらに加えるもう一つの戦略として、住民に最も近い行政組織である「自治体の平和力」とでもいうべき蓄積を活かすことを提起したい。

 日本には47都道府県を含めて1788の地方自治体がある。そのうち全国1673自治体が非核平和宣言を挙げている(2025年12月31日現在)(注5)。これは全自治体の実に94%に当たる。例えば、日本で初めて非核宣言を挙げた広島県府中町の宣言(注6)は以下のとおりである(下線は筆者。以下同じ)。

「非核町宣言    
 世界の核をめぐる情勢はますます緊迫の度合いを強め、地域核戦争への不安から、ヨーロッパを初め世界の人々は、人類の生存のために核兵器の廃棄と絶滅を叫び立ち上がっている。
 原爆によって広島市とともに世界で最初に凄惨な被害を被った府中町は、 戦争放棄の日本国憲法の原理に基づき、 恒  久の平和を念願し、全世界の国民が平和に共存することを望むものである。
 全人類が絶滅の危機に立たされている現在、非核三原則の堅持とともに、あらゆる国の核兵器の使用に反対し、安全で住みよい街づくり実現のため、ここに全住民と共に府中町を「非核地域」とすることを宣言する。
   昭和57年3月25日             広島県安芸郡府中町
                          広島県安芸郡府中町議会」

 この宣言には、「非核三原則の堅持」を明記しているが、その前段で「府中町は、戦争放棄の日本国憲法の原理に基づき、恒久の平和を念願し、全世界の国民が平和に共存することを望む」としている点に注目しておきたい。「戦争放棄の日本国憲法の原理」を前提として、「非核三原則の堅持」をうたっているのである。ほとんどの自治体が同様の非核宣言を挙げている事実に依拠して、自治体なりの意思表示を求めていくことができるのではないか。

 いくつか要素があるが、第1が「非核三原則の堅持を求める意見書」の発出である。昨年、自民・維新の連立合意書が出され、高市首相が安保三文書の改訂を前倒しし、非核三原則の見直しを進めるかもしれないとの憶測が出る中で、2025年12月の地方議会において「非核三原則の堅持を求める」多くの議会決議が出た。真っ先に決議を出したのは広島県議会(注7)である。以来、半年弱の間に、広島県、長崎県、長野県、神奈川県、千葉県、宮崎県の少なくとも6県が同様の決議を挙げている。現時点での決議数の正確な数は把握できないが、全国市長会や町村議長会の検索などによると市町村レベルでも少なくとも42自治体が決議を挙げている。この後も順次、増えていくことが予想される。これは、ある意味で当たり前で、先に府中町で見たように非核宣言のほとんどは「非核三原則の堅持」に触れているからである。全国の94%もの自治体が、核兵器の持ち込みの疑惑を持ったうえで、非核三原則の堅持を求めている。今、その宣言に沿って、非核三原則の堅持を求める意見書を出すよう市民が求めていく取組みをひろげるべきであろう。

 第2に、宣言の多くは、非核だけにとどまらず、相当数が「非核・平和都市宣言」として、「平和」が含まれている点に注目したい。ざっと調べただけでも広島市、函館市、つくば市、小金井市、調布市、水戸市、藤沢市、長岡市、精華市、高槻市、長崎市、宮崎市、那覇市など枚挙にいとまがない。一例として函館市の宣言を紹介する。

「核兵器廃絶平和都市宣言
 わたくしたち函館市民は、美しい自然を誇り、すぐれた市民性をはぐくんできた函館を住みよい都市に発展させるため、市民と街の理想像を市民憲章に定めています。
 わたくしたちは、この理想が、世界平和の達成なくしてはありえないことを認識しています。
 わたくしたち函館市民は、核戦争の危機が叫ばれている今日、世界で唯一の被爆国の国民として、また、平和憲法の精神から も、世界の人々とともに、再びこの地球上に被爆の惨禍が繰り返されることのないよう、核兵器の廃絶を強く訴えるものです。
 わたくしたち函館市民は、非核三原則の堅持と恒久平和の実現を願い、明るく住みよい幸せな市民生活を守る決意を表明し、ここに核兵器廃絶平和都市の宣言をします。
昭和59年8月6日 函館市」

 第3に、広島県府中町の宣言が「戦争放棄の日本国憲法」に触れているように、非核・平和をめざす背景には「憲法の平和主義の下で戦争に反対する」という問題意識が前提にある。函館市の宣言にあるように「平和」だけでなく、「平和憲法の精神から」として現憲法の意義に触れている。これと同じものが、小金井市、調布市、藤沢市、宮崎市など相当数ある。

 さらに1983年に広島市・長崎市が中心になって「国境を越えて連帯し、ともに核兵器廃絶への道を切り開こう」と世界の都市に呼びかけてできた「世界平和連帯都市市長会議」を前身とした平和首長会議(Mayors for Peace(MfP))も重要なネットワークである。2026年1月1日現在、世界166か国・地域の8560自治体が加盟し、日本は1740自治体が参加している(注8)。日本の自治体で非加盟は佐世保市だけである。会長は広島市長で、副会長の一つが長崎市である。このMfPに向けて「非核三原則の堅持を求める意見書」、「平和憲法を守る意見書」などの運動を求めていくことは、世論の国際化にとって非常に大きな意義があるであろう。平和首長会議会長としての広島市へ、世界8560の加盟自治体に「日本政府に対して非核三原則と憲法9条の堅持を求める」行動を提起するよう要請していくことも重要である。

 1980年代後半から2010年にかけて広島で反核・反基地運動を進めていた際、私は「多くの自治体が非核宣言を挙げているが、ただ宣言をしているだけで、何もしていない」というように、もっぱら批判的に見ていた。しかしNPT再検討会議などでの国際的な議論の場にオブザーバー参加してみて、日本の非核自治体の存在感の大きさを実感してきた。今、憲法九条が危ない情勢を前に、90%を超えるほとんどの自治体が挙げている非核平和宣言を活かす視点を市民運動の重要な要素として打ち出すべきだと確信する。

 高市政権は、非核三原則の見直しには踏み出さない可能性が高いようにも思うが、憲法九条をめぐる論争は、国会で緊急事態条項などやり易そうなところから改憲の発議をしていく可能性が出てきている。そこで、本稿で筆者は、高市政権の改憲・軍拡を食い止めるために、市民と自治体がつながり、自治体の平和力を活かし、平和・非核化をめざしていく道筋を描くべきだという点を強調したい。

注:
1 自民・維新の連立政権合意書(2025年10月)
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/information/211626.pdf
2 日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』
https://o-ishin.jp/news/2025/images/ffb6c1d44a679a512165021651f6f62f12d52755.pdf
3 「国家安全保障戦略」(2022年12月16日)
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/nss-j.pdf
4 日朝平壌宣言(2002年9月17日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html
5 日本非核宣言自治体協議会HP
http://www.nucfreejapan.com/uploads/2026/04/20260409_%E9%9D%9E%E6%A0%B8%E5%AE%A3%E8%A8%80%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf
6 広島県府中町の非核宣言
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/site/soumuka/1097.html
7 広島県議会「非核三原則の堅持を求める意見書」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gikai/hatsugi07-15.html
8 「ピースアルマナック2025」(ピースアルマナック刊行委員会)掲載の平和首長会議に加盟する世界の自治体の図表参照

2026年04月24日

平和フォーラム第28回総会を開催しました

4月21日、東京・連合会館において、「フォーラム平和・人権・環境第28回総会」を開催し、2026年度の運動方針を討論・決定しました。その際、以下の総会決議を採択しましたので、ここに掲載します。

全世界の平和を希求し基本的人権が尊重される社会の実現をめざす決議

1947年施行の日本国憲法は、先の大戦の敗戦から80年余が経つ日本の政治と社会を形づくってきました。アジア・太平洋諸国の人々に多大な被害を与え、大きな犠牲を払った敗戦の焦土からの再出発に、多くの日本人は「基本的人権の尊重」、「主権在民」、「平和主義」の基本理念を掲げる新憲法を受け入れました。日本国憲法は敗戦後の混乱と絶望の時代から今日まで、人々の平和な社会と民主主義を求める希望と生きる勇気を示し続けてきたのです。

戦争や貧困、女性差別、LGBTQなど性的少数者の権利保障、外国籍の人々と共に生きる多文化共生社会の実現、働く者が尊重される社会などの問題は、人権がないがしろにされた結果、引き起こされます。匿名性を利用したSNSなどでの誹謗中傷、職場での無自覚な言動、世代間ギャップ、さまざまな場面で人権問題が生まれます。今あらためて「人権とは何か」を考える必要があります。

「憲法改正」を党是とする自民党の高市首相は、党大会で「改正の発議について目途が立った状態で来年の党大会を迎えたい」とあいさつしました。憲法改正を行う主体は、主権者である私たち市民です。ここに立憲政治の核心があります。長期政権による驕りや緩みで金権腐敗政治を産み、数の力を頼りに国会の議論を軽視する政治を続け、選挙至上主義とばかりにカルト教団との癒着で選挙を支えてもらった自民党に、世界に誇る気高く勇気あふれる日本国憲法を語る資格はありません。

平和主義を掲げる憲法第9条は、常に政治的対立の焦点となってきました。従属的な日米関係の下で、自衛隊の増強と米軍との一体化を加速させ、日本国憲法の平和主義が揺らいでいます。自由で公正な社会を守るため、平和と民主主義を誓った戦後の原点を見つめ直す時です。いま優先すべきは改憲ではなく、従属的な日米関係を解消する第一歩としての「日米地位協定」の改定です。

ロシア軍のウクライナ侵攻は5年目に入りましたが、ロシア軍の撤退や停戦合意の目途は立っていません。イスラエル軍のパレスチナ・ガザ地区への攻撃によるガザの死者数は、推計では8万5000人以上に達していると伝えられ、停戦交渉も先行きは見通せず人道危機は深まるばかりです。2026年初頭、アメリカはベネズエラに侵攻しマドゥーロ大統領を拘束しました。明確な根拠も示さず、国連安保理による決議も経ない軍事力の行使による他国への侵攻は明らかな国際法違反です。さらに核開発の阻止を理由としたイランへの軍事攻撃は世界に衝撃を与えました。こうしたアメリカの「力による支配」という対外姿勢は、世界の不安定要因となり、国際社会の秩序を揺るがしています。世界中で戦火は広がり、対立と分断が深まる一途です。強者が弱者を力でねじ伏せる時代に時計の針を戻してはなりません。

日本政府は、中国の軍拡や朝鮮半島の緊張の高まりなどを挙げ、この10年余りで安全保障政策を大きく変容させました。米軍と自衛隊の指揮統合も進み、その矢面に立たされているのが沖縄・南西諸島や九州です。台湾有事を日本の存立危機事態とした高市首相の国会答弁は、中国との緊張を高めるだけのあまりにも軽率な姿勢です。私たちが求めているのは、自由で安全なくらしと、すべての人たちの基本的人権が尊重される社会であり、立憲主義と法の支配により権力を縛る「主権在民」の民主主義社会です。

平和フォーラムは、常に一人ひとりの命の尊厳を基本に据えてとりくみを積み重ねてきました。今を生きる私たちには、未来の子どもたちに胸を張って民主的で平和な社会を引き継ぐ責任があります。

日本国憲法の理念のもと、これまでのとりくみの正しさに胸を張り、これまでの成果を引き継ぎ、私たちが歩んできた道をゆるぎない信念を持って進むことを、今総会の参加者で確認し宣言します。

2026年4月21日
フォーラム平和・人権・環境第28回総会

2026年04月24日

憲法審査会レポートNo.69

2026年4月22日(水)第221回国会(特別会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8977

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 参院選“1票の格差”テーマに参考人質疑
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015105651000

参院の在り方も議論を 憲法審、合区で参考人質疑
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026042200976&g=pol

改憲で合区解消「国民理解得やすい」「憲法照らし疑念」 参院憲法審
https://www.asahi.com/articles/ASV4Q3D6DV4QUTFK00MM.html

「合区」解消めぐり与野党が議論 自民は改憲、立民は法改正を主張 参院憲法審
https://www.sankei.com/article/20260422-WBE5WY36ZVMENOAUJFRS75DNIU/

【傍聴者の感想】

4月12日の自民党大会では、高市総裁(首相)から憲法「改正」に対する強い意欲が改めて示されたばかりか、次の自民党大会までに、つまり一年後には発議のめどを立てることを示唆 し、国会での改憲議論を加速するべきとの認識を示しました。

言うまでもなく憲法改正を行う主体は、主権者である私たち市民です。個人の権利・自由を保障するために最高法規である憲法で権力者は縛られます。ここに立憲政治の揺るがすことのできない核心があります。今後の憲法審査会の議論に注目が集まります。

多くの傍聴者が駆けつけた4月22日の参議院憲法審査会は、「参議院議員選挙における一票の較差」について、参考人の意見陳述を受け、参考人に対する質疑を中心に行われました。

参院選における「一票の較差」は、憲法が保障する「法の下の平等(投票価値の平等)」の観点から長年大きな論点となってきました。司法(最高裁)は、格差が3倍を超えていても直ちに「違憲」とはせず、「違憲状態」または「合憲」とする判決が続いていますが、是正を求める姿勢は崩していません。

この日の参考人の一人である上田健介・上智大学法学部教授は、一票の較差の過去の判例を「憲法は投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は唯一絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮できる他の政策的理由との関連で調和的に実現されるべき」と紹介し、参議院と衆議院の権限の関係性がポイントになると指摘しました。

もう一人の参考人である砂原庸介・神戸大学大学院法学研究科教授は、参議院を「地方の府」とするなら衆参の権限は非対称となり、その場合は「一票の較差」は許容されるのではないかと、地方自治の観点から現在の選挙制度について見解を述べられました。

2016年の参院地方選挙区選挙から、一票の較差解消の観点から「島根・鳥取」、「徳島・高知」が合区となっています。立憲民主党の山内佳菜子参院議員は、「選挙区選出議員は必ずしも都道府県の代表になっておらず、合区は制度として限界である。改憲に依らずに参院の特性を活かした改革こそ必要」と指摘しました。

枝野幸男・立憲民主党元代表が会長を務めた衆院憲法審査会は、「選挙困難時の立法事実」や「国民投票をめぐる諸問題」、「首相の解散権の制限」や「臨時国会の招集期限」など、これまで見過ごされてきたテーマにも焦点が当たりました。しかし、2026年2月の衆院選で圧勝したことから、自民党議員が圧倒的な人数を占める衆院憲法審査会は、再び「緊急事態条項」の発議に向けて起草委員会の設置を求める意見が出るなど、再びの堂々巡りの議論に陥ることを思わされます。

参院憲法審査会は立憲民主党の長浜博行議員が会長を務め、与野党委員が拮抗しています。緊急事態創設は、衆院解散時に参院だけで予算案や法案を議決できる「緊急集会」の規定があります。緊急事態の創設は、参院の役割を弱めかねません。参院憲法審査会の主体的な議論に期待します。

市民が求めるのは物価高対策や社会保障の充実など、市民生活に密着した政策の実現です。国のあり方を規定する「最高法規」である憲法は、国論を二分するどころか二分させてはいけない極めて重要な課題です。

2026年4月23日(木)第221回国会(特別会)
第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56206
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 緊急事態条項に関する集中的な討議を開催
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015106341000

「内閣権限強化」 賛同は広がらず 憲法審・緊急事態条項
https://mainichi.jp/articles/20260424/ddm/012/010/038000c

与党「緊急事態」改憲を加速 中道慎重、合区優先論も壁
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026042301053&g=pol

自民、緊急条項の具体案明示を 中道、参院含めた合意要求
https://www.47news.jp/14194902.html

「NHKで中継を」衆院憲法審査会で要望も…かつて示された局側の見解に議員から失笑ザワつき
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202604230000965.html

【傍聴者の感想】

今国会第4回目となる今回は、「緊急事態条項」にテーマを絞っての集中的な討議となりました。

自民党は参院の緊急集会の権限は限定的なので任期延長が必要との従来の主張を繰り返したうえで、議論は十分深まっているとして次回にも具体的なイメージの提出することを提案。維新の会もこれに同調し、条文起草委員会設置などのスケジュールや緊急事態条項に関する議論の取りまとめを要求しました。

中道改革連合は議論を深めること自体には賛同しつつ、国会機能維持の観点から、臨時国会の召集期限や解散権行使についての問題を議論する必要があるとしました。

国民民主党は昨年発表した5党派による「議員任期延長」の改憲骨子案に基づいて議論をすすめることを主張、チームみらいは選挙困難事態における国会機能維持に絞って議論を始めることを提案しました。日本共産党は「緊急事態条項」全般に反対する(従来の)主張でした。

参政党の主張が面白く(?)、曰く、「緊急事態条項」改憲はこれならやれるという改憲のための改憲論で、国を守れない現行憲法の本質的な改憲を行うべき、9条のみならず全体的な「創憲」を!とのことでした。

国民的議論を深めるために憲法審査会のNHK中継を求める主張(国民、維新)に対し、法制局がNHKに対するヒヤリング結果として「現状は通常の番組編成を変更して国会中継を行うほどには国民の関心が高くない」と述べたため、会場全体が思わず吹き出す事態に。

一所懸命、改憲ムードを煽り立てようという雰囲気が漂っていますが、けっしてそのような世論醸成はなく、むしろ目の前の物価高や石油不足をどうにかすべきというのが自然な意見だと思います。改憲頼りの政府与党は自らの政治責任に真摯に向き合うべきです。

2026年04月24日

ニュースペーパー News Paper 2026.4

4月号もくじ

News Paper 2026.4

表紙:フクシマ連帯キャラバン とめよう原発!3.7全国集会
*「原発事故から15年を迎えて」大賀あや子さんに聞く
*奄美大島に軍事基地はいらない
*NPT再検討会議参加にむけて
*“ ともに生きる ”とは何か
*百折不撓 最も大切なものは何か、「忘れない」代わりに「考え続けよう」

2026年04月17日

憲法審査会レポートNo.68

参院憲法審査会が今国会初の開催

4月15日、今国会初となる参議院憲法審査会が開催され、各党からの意見表明が行われました。来週22日の開催についてもすでに合意されており、「一票の格差」をテーマに参考人質疑が行われる予定です。また、16日には衆院憲法審査会も開催されています。

4月12日に行われた自民党大会では、自民党総裁である高市首相が「時が来た」などと発言し、来年の党大会までには国会での改憲発議の目途を立てる方針を打ち出しています。

しかし、改憲を最優先とすることを求めるような世論は、まったく存在していません。こうした政治主導で改憲ムードを煽り立てるようなやり方は、はっきりと批判されなくてはなりません。私たちとしても引き続きこうした動向に注視しながら、情報共有を図っていきます。

【参考】

高市首相「来年党大会までに改憲発議のメド立てる」 自民党大会で異例、具体的日程に言及「時は来た」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/481334

2026年4月15日(水)第221回国会(特別会)
第1回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8959

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会が今の国会で初めて開催 各党が意見表明
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015100061000

参議院で今国会初の憲法審査会開催 合区めぐり「解消をいち早く」「国民主権が侵害されている」と参考人陳述
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2601534

自民、合区解消訴え 参院憲法審が今国会初開催
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026041500938&g=pol

参院憲法審「合区解消を」 首相改憲姿勢に批判相次ぐ
https://www.47news.jp/14156739.html

参院は甘くない?…今国会初の参院憲法審査会 衆院より与党の勢力薄く、改憲に走る高市首相と温度差くっきり
https://www.tokyo-np.co.jp/article/482033

参院憲法審「合区解消」で周回遅れ挽回なるか 今国会初の開催、根強い護憲派の影響力
https://www.sankei.com/article/20260415-BO66XQQFCJJMND2HZCSGY6ZUMM/

2026年4月16日(木)第221回国会(特別会)
第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56183
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆憲法審 自民“緊急事態条項を” 中道“臨時国会召集期限を”
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015100861000

高市総理「時は来た」発言後、初の衆院憲法審査会 今後の議論の進め方について討議
https://www.fnn.jp/articles/-/1031217

「緊急条項」集中討議を提案 与党、改憲加速狙う―衆院審査会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026041600142&g=pol

自民「任期延長の集中討議を」 中道「国会召集期限が優先」
https://www.47news.jp/14160672.html

自民党、緊急事態条項の集中討議を提案 衆院憲法審査会
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1643K0W6A410C2000000/

衆院与野党、憲法審査会の進め方巡り討議 今国会2回目 論点整理済み項目から検討か
https://www.sankei.com/article/20260416-SQE44WFR4RL6PGWJRDIOJ5HTZM/

【傍聴者の感想】

全体で一時間半弱、各会派の発言が一巡したのち、自由討議に移り、希望者が発言するという流れで進行しました。

まず自民党からは、緊急事態条項について「すでに議論は尽くされている」との認識が示されつつ、「選挙困難時に全国の一体性が損なわれ広範性に関して議論を深める必要がある」として、速やかに具体的な検討を進めるべきだという主張が述べられました。

対して、中道改革連合は、前回の議論で指摘された内容を踏まえ、個別の論点ごとに丁寧に議論を重ねていく必要性を指摘し、拙速な議論の進行をけん制しました。

日本維新の会は、「“会議は踊るされど進まず”を繰り返している。可及的なテーマは緊急事態条項と時代の遺物である憲法9条に収斂されたことは事実で、さらに活発な議論を進めるべき」と主張しました。

チームみらいは、一括して議論を進めるのではなく、個別の論点を一つひとつ整理しながら議論すべきだと述べました。発言自体は整理され表現も容易なものでしたが、会派として憲法議論にどのような軸を持って臨んでいるのかはやや見えにくい印象も受けました。

最も強い違和感を覚えたのは国民民主党の発言でした。「改憲を実現するためには自分たちの提案に沿って進めるしかない」といった姿勢が前面に出ており、改憲そのものが目的化しているかのように感じられました。本来、憲法改正は「より良い社会を実現するための手段」であるはずですが、その前提が置き去りにされているのではないかという懸念を抱きました。

共産党の発言は、現在の国際情勢に触れつつ、改憲ではなく憲法理念の実現こそが重要であるという主張でした。本来であれば極めて重要で筋の通った指摘であるにもかかわらず、それまでの議論が「改憲ありき」で進んでいたために、あたかも異なる方向性の発言であるかのように受け止められてしまう空気があったことも否定できません。

自由討議に入ってからは、「少数意見も丁寧に拾い上げ、数の力で押し切ることがないようにすべきだ」との中道からの発言がありました。まさにその通りだと感じる一方で、各会派の発言後に起こる拍手、とりわけ自民党や日本維新の会の発言に対して大きな拍手が起こっていたことから、少数意見がかき消されていくのではないかという危うさも感じました。

また、緊急事態条項をめぐる議論において、時の総理大臣や内閣に対する根拠のない信頼を前提とする発言が散見されたことにも強い違和感を覚えました。国際情勢を見渡せば、多数の支持を得て選ばれた政権であっても、必ずしも常に適切な判断を行うとは限らない現実があります。国会の機能強化の議論ばかりを進めることは極めて危ういものです。

今回の審査会を傍聴したことで、拙速な改憲議論への懸念が、より強くなりました。

2026年04月10日

憲法審査会レポートNo.67

衆院憲法審で今国会初の自由討議

4月9日、今国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました。1回目は(今国会開会直後の)2月20日に開催され、会長と幹事の互選の手続きのみ行われたものですので、今回が2026年に入ってから初めての、実質的な憲法審査会の開催と言えます。

1月23日の通常国会冒頭解散、そして2月8日投開票の総選挙を経て、衆議院の構成が大きく変化しています。衆院憲法審査会の会長は枝野幸男・前衆院議員(立憲民主党)から、古屋圭司・衆院議員(自民党)へと移りました。

古屋新会長は過去に自民党憲法改正実現本部長を務め、高市首相の意を体する人物とみられています。この間のマスコミ各社のインタビューに対しても、改憲の機運が熟しているなどと述べ、改憲項目の意見集約をすすめたい意向を示しています。また、「条文起草委員会」設置にも前向きです。

今後、7月17日の国会会期末まで、この衆院憲法審査会がどのように動いていくのか、しっかりと注視していかなくてはなりません。いっぽう、参院憲法審査会は長浜博行会長(立憲民主党)以下、基本的には昨年同様の構成ですから、安易な改憲論議へとは進まないとは思われますが、こちらの動向もしっかりと見定めていく必要があります。

【参考】

衆院憲法審の討議、4月始動へ 改正項目「集約の時期来ている」
https://www.47news.jp/14062970.html

2026年4月10日(木)第221回国会(特別会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56150
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 今国会で初めての討議 各党が意見述べる
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015095661000

憲法改正、与党が加速狙う 「緊急事態」照準、中道は慎重論
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026040901093&g=pol

衆院憲法審会長、現状は「立法府の不作為」 早期改憲発議に意欲
https://mainichi.jp/articles/20260409/k00/00m/010/275000c

衆院選後初の憲法審論議 自民、改正条文起草検討を 中道「必要なら真摯に」
https://www.sankei.com/article/20260409-233LYFZ5GVKYJIULBBJLGJ5BHM/

憲法審査会 今国会で初討論、ホルムズ海峡派遣で「憲法9条」が再注目、星浩さん「2つの心配」【Nスタ解説】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2590269

【傍聴者の感想】

実質的な審議としては今国会では初回で、自由討議ということで各会派が基本的なスタンスを述べました。

自民党は従来の改憲4項目の推進と国民投票法の整理(改正公選法との平仄合わせ、および広報協議会のあり方)について発言し、中道改革は改憲そのものを目的とした議論には与しないが、新たな課題には目を背けず、必要と認められれば真摯に検討し、拙速な議論は避けつつも定例開催に賛成する旨を発言しました。中道はその上で今後取り組むべきテーマとして、①自衛隊の憲法上の位置づけ、②臨時国会の召集期限、③首相の解散権、④デジタル社会と人権、⑤国民投票法などを課題としてあげました。

以下、日本維新の会、国民民主は、これまでで論点は整理されていると主張、条文起草委員会設置に進まないことへの批判という従来の主張を展開し、参政党は憲法を一から作り直す、チームみらいは手続法の課題と本体改正議論は切り分けて考えるべきという意見を述べ、最後に共産党が審査会は開催すべきでない旨を主張しました。

改憲勢力が圧倒的多数ではありますが、9条および自衛隊の取り扱いについては各会派まちまちで、傍目には一致した条文の取りまとめは難しく思えます。その上で自民党が単独でも多数を占める状況なので、改憲推進他会派の合意を得られなくても自民党案を押し通すことまでするのか、何らかの他会派との調整が図られるのか、あるいは9条改憲で無理をすることを避けるのか、注視が必要だと思います。その上で緊急事態条項、とりわけ選挙困難時の議員任期延長は相対的に一致度が高く、改憲発議の具体化に進む危険性は高いと言えます。

しかし「自然災害など緊急事態だからしょうがない」という一見通りやすそうな理屈の裏には、戦争という緊急事態と、その時に国民の政治参加を制限するという重大な問題が含まれていることを見逃してはいけません。緊急時こそ国民の判断を求める制度をしっかり作るということが主権在民の意味です。

立憲野党は少数ですが、稚拙、拙速、欺瞞的な議論にはそのつど的確に反論していくために今後も審査会ウォッチを継続していきます。

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