憲法審査会 | 平和フォーラム

2026年06月12日

憲法審査会レポートNo.73

2026年6月10日(水)第221回国会(特別会)
第5回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9090

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 緊急事態対応などテーマに参考人質疑
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015146141000

緊急事態条項「不要」 参院憲法審で参考人質疑
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061000928&g=pol

緊急事態条項「必要ない」 有識者、参院集会で対応可
https://www.47news.jp/14447584.html

【参考】

(社説)「合区」の解消 改憲で対応する問題か
https://www.asahi.com/articles/DA3S16477817.html

【傍聴者の感想】

このところの衆院憲法審査会は、「緊急時の国会機能の維持」を理由とした緊急事態条項の創設、議員任期の延長について、議論は出尽くしたのだから発議に向けた手続きを進めるべきと改憲推進会派から声高に主張されています。

憲法第54条では、「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない」とされ、2項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とされています。

この日の参院憲法審査会は、早稲田大学法学学術院の長谷部恭男教授と専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授を参考人として招き、衆院憲法審査会で議論の中心となっている緊急事態時の対応について参考人との質疑が行われました。

長谷部教授は、衆院の解散後に大規模災害が起きても、現行憲法で参院の緊急集会での対応が規定されているのだから、参院で国会機能を暫定的に代替できると述べられました。その上で、「(憲法第54条1項による)参院緊急集会の70日限界説」について、70日と限定しているのは、時の政権の都合により国会を召集しないことを防ぐためであり、政権の居座りを許さないために設けられていると解するべきとしました。

専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授は、あまりにも想定し難い緊急時を挙げて緊急事態条項を創設すると、例外的な対応を長期化させることになりかねず、例外を例外にとどめるための制度設計をすべきとし、緊急事態条項は強い手段と広い例外を認めることになりかねないと指摘しました。その上で、長期間衆議院選挙が実施できない場合も、参議院の緊急集会で対応することが許容されるという認識を示しました。

緊急事態条項は、緊急事態を名目に政権を批判する言論や運動が抑圧される危険性をもちます。権力側にことさら強力な権限を持たせることで差別や暴力、人権侵害が広がった歴史があります。東日本大震災や新型コロナなど、これまでの大災害や感染症の対応で、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという事例も示されていません。

現行憲法でも参議院の緊急集会などで対応可能法であることは、この日の参考人からの意見で理解が深まりました。まずは法律でできることを尽くしてから議論すべきで、「改憲ありき」の衆院憲法審査会の議論の進め方に違和感を覚えます。

憲法審査会の衆参両院の温度差や議論内容の乖離が明らかになっています。こうした議論の積み重ねこそ重要であることを感じます。「時は来ました!」とする高市首相の認識は決定的に誤りです。

2026年6月11日(木)第221回国会(特別会)
第9回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56323
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 自民など4党提出の国民投票法改正案 審議入り
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015147181000

自民、ネット広告に法制措置も 国民投票運動巡り
https://www.47news.jp/14451227.html

憲法9条で溝浮き彫りの自民と維新 「2項」維持巡り 衆院憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/859b6cde497aa1e543bf015c3f04b25eff3a9a5e

投票環境の整備など盛り込んだ国民投票法改正案が衆院憲法審査会で審議入り 来週採決の見通し
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2726462

国民投票法改正案18日採決へ 衆院憲法審で与野党合意 立会人要件緩和や離島開票規定など整備
https://www.fnn.jp/articles/-/1057557

国民投票法改正案が審議入り 野党は投票運動巡るネット規制主張 自民は採決に向け調整
https://www.sankei.com/article/20260611-532SM4ASPFJLFGBWFRKUBFJUO4/

【傍聴者の感想】

本日の審査会は、すでに施行されている公職選挙法の改正内容に国民投票法も平仄を合わせることを目的とした、改正国民投票法の改正案が議員立法で提出され、趣旨説明と質疑が行われました。

立会人の選出や選挙時のFM放送が主な内容で、このこと自体に反対する会派はほとんどありませんが、中道改革連合はそもそも宿題となっている附則4条をめぐる課題や、この間の審査会でもたびたび議論となってきたニセ情報対策、有料広告の資金規制、外国勢力の介入の課題などについて早急に解決することの約束を迫りました。

チームみらいは普通選挙も含めた投票環境の改革、共産党は投票全体を取り仕切る広報協議会が会派比率によって構成されることの不当性などを訴えましたが、法案提出議員は「速やかに議論する」「必要があれば検討する」という答弁に終始しました。

改憲にかかる投票は、「人・政党が自由に主張し、人・政党に投票する」選挙とは異なり、「改正」案の正否を問うものなので、発議にあたっては当然ながらその目的・理由や経過や影響などについて賛否双方の考え方が適切かつ公平に広報されなければなりません。

しかし現行法の規定では、資金力が大きいほど有利、ウソでもデマでも言ったもん勝ち、改憲推進派が投票全般を取り仕切るという状況になることは明らかです。加えて最低投票率の定めもないので、改憲派は改憲に賛成する人だけが投票すればよいという考えに流れるのは必至だと思います。

議論の中では改憲派もフェイク対策や資金規制を課題として発言をしてきていますが、真剣に取り組むつもりがあるかは極めて疑わしく思っています。

改憲発議や国民投票が、市民の中に分断と対立をあおり、社会の不安定化を招くようなことになれば、そのこと自体からして改憲は失敗です。投票制度のあり方は、投票の信頼度や納得性を高めるために極めて重要です。現状における「改憲反対派は敵である」という意識を隠さない改憲推進派の姿勢をみるにつけ、現行の投票法は断じて容認できません。

投票法改正案の質疑後は再び各会派からの「テーマ出し」となり、自民と維新の会は9条と自衛隊について、中道は政治広告に関する規制のあり方について意見を述べました。国民民主の玉木委員は、緊急時の議員任期延長と国会機能の維持に論点を絞り込まないと発議にたどり着けない(だから9条とか自衛隊とか他の課題はもう言うな?)旨の発言をし、参政、チームみらい、共産と発言をして審査会を終了しました。

2026年06月05日

憲法審査会レポートNo.72

【参考】

【速報】自民・維新・国民民主・参政の4党が投票環境の整備を盛り込んだ国民投票法の改正案を提出
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2712066

4党、国民投票法改正案を提出 改憲へ今国会成立期す
https://www.47news.jp/14419640.html

2026年6月3日(水)第221回国会(特別会)
第4回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9073

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 緊急事態対応と緊急集会テーマに意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015139851000

自民、任期延長「必要」 参院憲法審、立民は反対
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026060300972&g=pol

緊急事態条項創設を―自民 任期延長改憲に反対―立民
https://www.47news.jp/14410887.html

参院自民、緊急事態条項の必要性強調 衆院との温度差も 憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ae187a706c07227e59b0ab1adb06128db1cdbb5

歯止め利かない、緊急集会でできる 緊急事態条項、参院で反対続出
https://www.asahi.com/articles/ASV633DTXV63UTFK00QM.html

【傍聴者の感想】

今回のテーマは「緊急集会」、憲法第54条にある参議院の緊急集会について議論が展開されました。はじめに法制局局長からそもそも「緊急集会」とはどのような想定で何を行うかの説明があり、参議院憲法審査会事務局からこれまでの議論経過についての話がありました。

その後、各党・各会派からの意見表明と説明への質疑が行われ、概要についてのメモは以下の通りです。

自民・古賀さん:
・国民主権の原理からすると国会議員の任期延長の改憲は必要
・いわゆる「70日」という限定的な考えを画一的にするべきではない
・多くの国が何らかの緊急事態条項を制定している
立憲・小西さん:
・衆議院で議論されている「70日」はまったく根拠のない一つの考え方に過ぎない
・「良識の府」として参議院の機能がある、衆議院の議論には抗議の意を示す
国民・足立さん:
・衆参をまたぐ議論が必要であることから、衆参合同の憲法審査会の開催が必要
・衆議院の「イメージ案」について自民党は党として了解、了承しているのか
⇒自民党は党本部でこのことを議論していないとの返答
公明・谷合さん:
・選挙を行うことが第一であり、選挙困難事態をどう防ぐのかを議論すべき
・参議院の緊急集会があるが、極力早く二院制に戻す必要がある
・「合区解消」の議論(地元から代表者を選出する)とセットで議論すべき
維新・柴田さん:
・参議院の緊急集会の限界がある→近いうちに国会が開かれるという前提がある
参政・安達さん:
・緊急事態条項は必要だが、衆議院で出されたイメージ案には反対
・自衛=軍隊とセットで議論をすべき
・日本の建国の精神や歴史に学び、何を守りたいのか、情報戦、経済戦に備えるべき
共産・山添さん:
・戦前の反省から緊急事態時に政府の一存で決めてはならないというのが参議院の緊急集会の意味
・超法規的措置は悪用されることを歴史の事実から学ぶ必要がある
れいわ・奥田さん:
・戦争ビジネス、大企業のいいなりでは戦争への道が加速する
・日本国憲法99条の義務がある国会議員、議員の任期延長など憲法違反

その後、もう一巡ずつそれぞれの議員が意見表明や質問を行いました。

衆議院で言われている議員の任期延長を含む緊急事態条項による改憲の必要性を強く訴えたのは自民・国民・維新、明確に反対を述べたのは立憲・共産・れいわ・参政となりました。

ただし参政党は緊急事態条項など憲法の一部を変えることよりも憲法全体を「日本人」で創るべきとの主張です。

立憲の辻元さんは東日本大震災が起きた後に、衆議院解散を迫る内閣不信任案を出そうとした自民党、新型コロナパンデミックの渦中にある中で大阪都構想の住民投票を実施したのが日本維新の会という事実を忘れてはなりませんと話されました。

日本維新の会の浅田さんは「参議院議員がいる前提の緊急集会において、参議院議員の多くが命の危機に瀕したら…」といった話もありました。

そもそもの立法事実(現状を変えなくてはならない事実)がどこにあるのかという原点は、緊急事態条項には明確にはないと感じています。

「この先こういった困ったことが起こらないように…」「いざという究極的な状況になったときのために…」そう話す国会議員がまずは考えるべきことは、「困ったこと」や「究極的な状況」を作り出さない政策の実現であるはずです。

究極的な自己矛盾議論を聞かされながら、そもそも政治の役割とは何ぞやという、当たり前のことをずっと考えていました。

現在の世界情勢を引き合いに危機意識を煽り、この道しかないと狭義の「防衛」政策に陥り、勇ましい言葉で人気を得ようとする政治状況を見たときに、やはりいつか来た道を歩み始めている実感を持たずにはいられません。

私は私なりに、歴史の事実に学ぶという言葉の意味を、同じ間違いは繰り返さないという教訓であると思ってきました。

憲法は誰のためにあるのか、難しくなくシンプルに考えることで分かりやすく発信して言えるように心がけたいと考えています。

2026年6月4日(木)第221回国会(特別会)
第8回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56312
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 国民投票をテーマに与野党が集中的な討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015140911000

衆院・憲法審査会が国民投票テーマに集中討議 自民は国民投票法改正案を今国会提出の方針示し速やかな審議求める
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2709991

自民、国民投票法改正を提案 憲法審、改憲発議で環境整備
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026060400125&g=pol

自民、憲法改正国民投票法審議を 中道、CM規制の議論前提
https://www.47news.jp/14413599.html

ネット広告の規制、手つかずの「宿題」 改憲の国民投票、整わぬ土台
https://www.asahi.com/articles/ASV642SCRV64UTFK00HM.html

緊急事態条項 三つの論点 危うい緊急政令、どうする国会機能維持、創設不要論も
https://news.yahoo.co.jp/articles/f99834836503d9932960d51b606fdc1034df48ee

2026年05月29日

憲法審査会レポートNo.71

2026年5月28日(木)第221回国会(特別会)
第7回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56285
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 今後議論すべきテーマで討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015133851000

衆・憲法審査会で自民と維新“9条改正の議論早急に” 今後の議題について各党から意見表明
https://news.ntv.co.jp/category/politics/a369e9cea6a6453abeb4825d7b8bd93a

自民、緊急条項の条文起草提案 中道「解散権制限が必要」―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026052800094&g=pol

自民、自衛隊の9条明記に言及 中道「解散権制限の議論を」
https://www.47news.jp/14373294.html

衆院憲法審優先すべきは 自民「自衛隊明記」中道「解散権制約」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7cf4c25c0a915045d77b889a5a0e480174ce5530

【傍聴者の感想】

今回は、前回までに緊急事態条項のイメージ案が出され一定の「進展があった」との前提で、今後の議論に向けた「テーマ出し」という位置づけで7つの会派からの代表発言と、7人の委員個人の発言となりました。

改憲派からは9条と自衛隊、合区解消、国民投票法、条文起草委員会などについての意見が多く出されました。一方中道改革連合は、首相の解散権の乱用や臨時会が実質的に機能しない問題について、チームみらいは緊急事態でも対応できるような投票環境の構築やオンライン国会の検討を提起しました。

審査会の傍聴は何度もしているのですが、傍聴するたびに強まる感覚は、「この人たちは、本当は憲法『改正』はどうでもいいと思っているのではないか?」という思いです。議論が全く深まっていかない、丁寧に説得しようとか、共有する部分を探そうとか、譲り合って合意を作ろうという姿勢が感じられないのです。

これは推進派と反対・慎重派との間だけでなく、推進派同士の間でも同様です。とにかく自分の主張を言い続ける、何度も繰り返し発言したことをもって議論が尽くされたと強弁するのが実態です。憲法を変えたいと思っていること自体はそうなのでしょうが、やはり党派のアピールが最も重視されているように思えます。

思えば憲法審査会に限らず、国会の議論そのものが、言いたいことを言いあって、ただ聞き置いて、最後は数の力で決めるというものですから、憲法審査会にだけ「丁寧な合意形成の尊重」といっても無理なのかもしれません。

いずれにせよ、現状では緊急事態条項も9条と自衛隊も、推進派の間でもずれが多く、完全に一致できる部分は極めて限られています。意味のない改憲であること、必要性のない改憲であることを訴えていくポイントはたくさんあると思います。私たちにできることはまだまだあると思いますので、今後も頑張っていきましょう。

【国会議員から】階猛さん(中道改革連合・衆議院議員/憲法審査会委員)

本審査会ではこのところ緊急時の議員任期延長のイメージ案を中心に議論が進んでいます。その眼目はいついかなるときも国会機能を維持することであると承知しています。

しかし、國重筆頭も指摘しているとおり、国会機能の維持については、発生確率が極めて低い緊急事態のみを想定するのではなくて、通常事態も想定して議論を深めるべきです。

この議論の必要性と重要性は、過去一年の国会の動きを見ても明らかです。昨年は、物価高が進む中で実質4か月も臨時国会が開かれず、自民党は党内政局に明け暮れていました。また、今年は、任期を2年8か月も残して通常国会の冒頭に衆議院が解散され、真冬の厳しい天候の中、800億円以上の巨額の経費と関係者の膨大な労力を費やして総選挙が執行されました。結果、本予算の審議入りが2月末と例年より1か月も遅れ、イラン情勢への対応も後手に回りました。この一年、国会は十分に機能したとは言えません。

このような国民の生活にとって望ましくない国会の空転を避け、国会の機能を十分に発揮するため、通常時の臨時国会の召集期限の設定や解散権の行使の制限については、緊急時の議員任期延長とセットで検討するべきです。

私からは、そのうち解散権の制限について議論を深めるべく、制限を要する4つの根拠と、考え得る3つの制限の方向性を述べたいと思います。

根拠その1。解散は首相の専権事項というちまたに流布する言説と憲法の明文規定との間には大きな乖離があること。

解散は首相の専権事項という言説は、1980年代から新聞等で見られるようになりました。ここから、解散について首相はうそをついていいとか、首相は最も効果があるときに解散してもいいというナラティブが生まれたようです。

しかしながら、憲法の明文規定を素直に読む限り、首相はもちろん、内閣の解散権すら明らかにされていません。69条は不信任案の可決等があった場合につき、内閣は衆議院が解散されない限り総辞職しなければならないとし、解散権の所在を定めてはいません。また7条は衆議院を解散することを天皇の国事行為としており、内閣にはその際の助言と承認権限を与えたにすぎません。

いついかなるときでも国会機能を維持したいのであれば、解散は首相の専権事項と強弁し、いついかなるときでも解散権を行使できるようにするのは矛盾です。この矛盾を解消するためにも、内閣の解散権を制限するための法規範を憲法又は法律に明記する必要があります。

根拠その2。解散権の濫用に対し、司法による事後的な是正が期待できないこと。

1960年の苫米地事件最高裁判決は、衆議院の解散は極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であると述べ、違憲審査権を放棄しました。以降、裁判によって解散が無効になるという社会的政治的混乱を恐れることなく、自由かつ大胆に解散権が行使されるようになりました。その分、解散権の濫用、乱発で国会機能が停止する危険が高まっています。

解散権の濫用に対する司法の事後的な是正ができない以上、裁判で争いようのない解散権の行使に関する明確なルールを憲法や法律で定め、解散権の濫用を牽制ないし抑止するべきです。

根拠その3。主要国においても、首相の解散権を制約する例が多いこと。

立命館大学法学部の小堀教授によれば、2021年時点で、コスタリカを除くOECD加盟の37か国中、解散権がない国が米国など7か国、解散を制限する国がドイツなど10か国、残りの20か国は大統領や首相に解散権限があるものの、制度として定着しているのは日本を含め僅か4か国にすぎません。民意で選ばれた議員の身分を尊重し国会を機能させる考え方が世界の主流であるということを指摘しておきます。

根拠その4。公平、適正な選挙を担保する規定がないこと。

さきの総選挙は、解散から投票まで戦後最短の16日間しかありませんでした。これでは、候補者は十分な選挙準備ができず、有権者も十分な判断材料を得て熟慮の末に投票先を選ぶことは困難です。憲法54条1項は、解散から40日以内の総選挙実施を定めますが、解散から投票まで最低何日の間隔を置くかについて定めがありません。公平、適正な選挙運動を担保するという意味で極めて不都合です。

また、議員任期延長のイメージ案では、選挙困難事態の事前承認のため、解散で全国に散らばった前の衆議院議員を国会に召集することになっています。さきの総選挙のように解散直後に総選挙が始まる場合、それが実務上可能なのか疑問です。緊急時の国会機能の維持という見地からも、解散から投票までの期間は一定程度間隔を空けるべきです。

以上を考慮しつつ、解散権の制限の方向性につき、幾つかの案を述べます。

方向性その1。憲法上衆院解散の場合を極力限定する。

衆議院の解散中に緊急事態が起き、国会が機能しないリスクを問題視するならば、そもそも衆議院が解散されるケースをできるだけ少なくするべきです。

そこで例えば、憲法に明文がある内閣不信任案可決等の場合に解散を限定する方向性があり得ます。

これに対し、国政の重要問題につき民意を問うという解散の民主的機能を重視する立場から批判が想定されます。

国会機能の維持と直接民主主義の両立を図る解決策として、国民の代表から成る国会が必要と判断した場合、特別多数の賛成によって自律的解散をできるようにしたり、憲法改正案以外の重要問題の賛否を問う一般的国民投票の制度を設けたりすることも考えられます。

方向性その2。憲法上、内閣が解散権を有することを前提に、行使できる場合を限定列挙する。

解散権の濫用、乱発を防ぐ上で一定の効果は期待できますが、司法府の事後的是正が期待できない以上、究極的にはやった者勝ちとなってしまい、国会機能の維持がないがしろにされる危険があることに留意が必要です。

方向性その3。法律上、内閣から国会への解散事由の事前説明義務と、解散日から投票日までの最短期間の定めを置くこと。

解散権の濫用、乱発を防ぐ上である程度の効果が期待できるとともに、公平、適正な選挙の実現にも資するものです。なお、この案は他の案と併存可能です。

以上で解散権の制限につき発言を終わりますが、本審査会で議論が深まることを期待して、私の発言を終わります。

(憲法審査会での発言から)

2026年05月22日

憲法審査会レポートNo.70

先週は諸事情により本レポートの発行ができませんでしたので、2週分まとめた内容となります。

【参考】

高市首相は本気で憲法改正をやる気はない…身内すら「自民党はビジネス保守」と呆れる”無謀な計画”の中身
https://president.jp/articles/-/113098

改憲提案、必要性なく乱用の危険  東京都立大教授 木村草太 視標「高市政権下の憲法記念日」
https://www.47news.jp/14331415.html

高市首相「改憲論議推進を」 衆院憲法審会長は発議に意欲
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051501003&g=pol

【社説】憲法に緊急事態条項 政府に権限集中の危うさ
https://www.asahi.com/articles/ASV5H7TSYV5HUSPT009M.html

<主張>憲法改正 国家緊急権の規定必要だ
https://www.sankei.com/article/20260518-OYDYIOFCWFJZ5EC2LWW25FZZVM/

2026年5月14日(木)第221回国会(特別会)
第5回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56241
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【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに各党が討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015121721000

緊急事態、自民「深化」主張 衆院憲法審でたたき台初討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051400098&g=pol

自民「論点集約近づく」 緊急条項、条文化加速狙う 衆院憲法審討議
https://mainichi.jp/articles/20260515/ddm/012/010/102000c

緊急事態条項 各党割れる主張 衆院憲法審、イメージ案基に討議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1311835/

【傍聴者の感想】

今回の審査会では、緊急事態条項に関する議論について、2022年頃からの経過が報告され、衆議院法制局および憲法審査会事務局から提示されたイメージ案をもとに議論が開始されました。

自民党の新藤義孝議員が「究極の事態に陥った時に備えて条項を設けることは必須だ」としてイメージ案をおおむね了承しました。日本維新の会の馬場伸幸議員も、イメージ案をベースにした条文起草委員会の設置を求めました。

一方で、中道改革連合の国重徹議員は立憲主義の観点から選挙実施優先原則に基づく選挙権の保障を主張。チームみらいは、憲法を改正した場合と改正しない場合のメリット、デメリットを比較することが重要で、平時の選挙制度の在り方についても議論する必要があると述べました。

今回の議論はイメージをもとにした議論であるが、仮に緊急事態が生じたとして、これに乗じた、時の政権による権力濫用があってはならないと思います。平時であれ非常時であれ、権力の暴走を食い止める力は、私たち市民の手にあるはずです。

今年2月の衆院選で圧勝した自民党が議席の多数を占めたのにともない、衆院憲法審査会の会長はじめ委員席の半数以上も自民党に入れ替わり、これまでと様相が変わってきました。

数の論理に押され安易な「改正」をめざすのではなく、憲法理念を実現させるための丁寧な議論を求めていきたいと思います。

2026年5月20日(水)第221回国会(特別会)
第3回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9026

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 「1票の格差」テーマに各党が意見表明
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015126821000

参院憲法審査会「1票の格差」テーマに各党が意見表明 「合区」の解消の必要性を各党主張も憲法改正めぐっては見解分かれる
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2674561

参院憲法審、1票の格差をテーマに討議 「解消すべき」大勢
https://news.yahoo.co.jp/articles/a85c4382b789a5b24dc80d113e4974ef636b8a1a

参院憲法審「合区」解消めぐり各党意見表明 与党は憲法改正による解消 野党は慎重論
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000506531.html

参院選「合区」の解消、割れる改憲の賛否 参院憲法審
https://www.asahi.com/articles/ASV5N34LZV5NUTFK009M.html

【傍聴者の感想】

今回の参議院憲法審査会は、二院制における参議院のありかたおよび一票の格差問題について、各会派からの意見表明を述べるものでした。

都市部への人口集中、人口減と地域の衰退などで、隣接する県などとの合区による一票の格差の是正をはかる現行の制度の問題点について、多くの会派から指摘がありました。これらは傾聴には値するものの、改憲ありきの主張はちょっとね、という感じです。立憲民主党の吉田忠智議員の主張のように改憲によらない制度変更で十分対応できるのではないでしょうか。この点は公明党も同じような主張をしていました。

緊急事態条項の議論を一刻も早くすすめよという自民党、条文起草委員会までの流れを加速せよとする維新、何はともあれ一から憲法をつくりなおせと参政党、いつまで一票の格差問題の議論をやるのだ、とにもかくにも改憲反対のれいわまで、威勢のよい発言はあるものの、高市首相が述べたような「時が来た」とはとは思えない憲法審査会でした。

2026年5月21日(木)第221回国会(特別会)
第6回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56263
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに2回目の討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015127691000

衆・憲法審で緊急事態条項をテーマに各党討議 内閣に暫定的に立法機能持たせる案も議論に
https://news.ntv.co.jp/category/politics/4a9663e595284257b0ab1f9e3cfd41ea

自民、緊急事態条項の整備主張 衆院憲法審、中道はけん制
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026052100150&g=pol

自民、内閣の緊急政令規定は必要 中道、議員の任期延長「慎重に」
https://www.47news.jp/14335948.html

内閣の「緊急政令」 自民は必要性主張、野党は慎重 憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c5e84355ab23d04f45392981e139f5bb5a9e90a

【傍聴者の感想】

今国会、第6回目の衆議院憲法審査会は、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(「『緊急事態条項』のイメージ(案)」)を案件として、開催されました。傍聴券を受け取る議員面会所のロビーには、傍聴希望者が長蛇の列をなし、荷物検査も込み合っていました。傍聴席は、後方にずらっと椅子が追加され、異様な雰囲気でした。拙速な改憲議論への危機感によるものと感じました。

今回、「毎週開催が定例化して以降の衆議院憲法審査会の議論の経過」と題する年表のほか、過去の資料もまとめて配布されました。

各会派からの発言を一巡して、希望者からの発言という流れはこれまでと変わりませんが、相変わらずという点では、自民党、日本維新の会の発言についても同じことが言えます。「緊急事態条項について、議論を尽くした」「ピン留めされたことは条文化をしていくべき」「制度としてまとめることが要請されている」と、同じような言い回しばかりです。

自民、中道、維新、国民、参政、みらい、共産と発言を聞いていく中で、気になった発言は、国民民主党・玉木委員の「国会も開けないような状態なのに、閣議は開けるのか」という趣旨のもの。閣議だけは行えるという保証は確かにない。一方で「緊急政令や財産処分について議論を蒸し返すな」「蒸し返したら、これまでの議論がご破算だ」という趣旨の発言をし、議論を狭めて改憲を進めたいという姿勢を強く感じました。

また、参政党・和田政宗委員からは「感染症」という文言が入っているから反対しているという趣旨の発言がありました。「運用が恣意的にされるのではないか」としきりに主張し、権利を守るために創憲が必要だという流れは、悪い意味で印象に残りました。感染症でなくても、時の内閣に任せること自体、恣意的に運用されかねません。

希望者の発言の際に、中道改革連合・西村智奈美委員が「今の情勢では改憲議論をしている場合ではない」「イメージから抜け落ちた部分が多岐にわたっている」と指摘しました。場内を見回したとき、「改憲派は何か形をつくって(イメージを作らせて)そのあとは数の力でどうにかしたいでは」との不安をいっそう強くしました。

【国会議員から】西村智奈美さん(中道改革連合・衆議院議員/憲法審査会委員)

戦後日本の自由と平和の礎となってきた日本国憲法を尊重する立場から意見を述べます。

私たち中道改革連合としては、権力の濫用を防ぎ、個人の尊厳と自由を守るという基本政策の下、憲法議論に参画していくという立場です。

しかし、あえて申し上げれば、先週の審査会で、日本維新の会の馬場元代表は、憲法論議の核心であるべき権力の暴走につながるとの主張について、改憲反対ありきの常套句などと発言されました。権力の暴走は、ナチス・ドイツの例を始めとして現実的かつ真っ当な懸念です。こうした発言が相次ぐ中で、また中東情勢やその影響など深刻な課題が山積する今、それより優先して憲法の議論が進んでいくことに深刻な懸念を感じています。

また、自民党は衆議院では圧倒的多数かもしれませんが、参議院ではそうではありません。今回のテーマである緊急事態への対応に関しては、与野党の枠を超えて衆議院側と意見の開きがあります。そもそも、現在、法制局及び憲法審査会事務局にイメージ案を作成させるような段階ではなかったと私は考えます。百歩譲っても、昨年、衆議院法制局から提出された資料「緊急事態条項(国会機能維持)の主な論点(イメージ)」には記載のあった、平時も含めた臨時会招集期限、緊急時、平時における解散権制約など、多岐にわたる論点が今回抜けていることに納得がいきません。

その上で、先週提示されたイメージ案について幾つかの問題提起をさせていただきます。

第一に、緊急事態の際に議員の任期延長が必要との説のほぼ唯一の論拠である選挙の一体性とは何かという問題です。憲法的価値が本当にあるのかという指摘がこれまで重要な論点として複数なされてきました。ここがこの憲法改正が必要かどうかを判断する大きな鍵だと考えますので、しっかりとした議論が必要です。

第二に、想定される最も巨大な震災の際にも選挙を実施できない選挙区は限定されるので、選挙全部を延期するような立法事実はないという指摘がこれまで繰り返されてきました。まずは徹底的に選挙制度の強靭化を図り、その上で選挙全部を延期するような立法事実が残るのかを精査すべきです。

第三に、参議院緊急集会が一時的、限定的、暫定的とされている点です。これまで緊急集会の権限については様々な指摘がなされてきましたし、自民党も原則として国会の機能全てに及ぶとしています。改めて議論すべきです。

第四に、緊急事態の対象範囲に存立危機事態も含まれるのかです。昨年11月、高市総理は、法律の限定を逸脱したと思える答弁をされています。支持率低下のタイミングにおける衆議院任期満了選挙を避けるために、内閣の恣意的な判断で存立危機事態を認定するとともに、選挙困難事態の認定がなされ、選挙が停止され続けるという濫用が懸念されます。古今東西、自らの政治的な危機を乗り越えるために戦争を始めた指導者は少なくありません。こうした危険はないのか、今後も議論させていただきたいと思います。

最後に、緊急政令などという、国会としてはおよそ認められない条項が紛れ込んでいることは論外です。憲法改正してまで議員の任期延長をして、国会機能を維持しようという議論と同時に、国会が機能しない場合を想定した議論をすることは論理矛盾なのではないでしょうか。憲法改正に決して消極ではない国民民主党の玉木代表も、先週は、あえて蒸し返さない方が得策と、今日も同様の趣旨の発言がありました。通らないことを見越して、バッファーとして入れているとすら思えてきます。論外だと考えます。

(憲法審査会での発言から)

2026年04月17日

憲法審査会レポートNo.68

参院憲法審査会が今国会初の開催

4月15日、今国会初となる参議院憲法審査会が開催され、各党からの意見表明が行われました。来週22日の開催についてもすでに合意されており、「一票の格差」をテーマに参考人質疑が行われる予定です。また、16日には衆院憲法審査会も開催されています。

4月12日に行われた自民党大会では、自民党総裁である高市首相が「時が来た」などと発言し、来年の党大会までには国会での改憲発議の目途を立てる方針を打ち出しています。

しかし、改憲を最優先とすることを求めるような世論は、まったく存在していません。こうした政治主導で改憲ムードを煽り立てるようなやり方は、はっきりと批判されなくてはなりません。私たちとしても引き続きこうした動向に注視しながら、情報共有を図っていきます。

【参考】

高市首相「来年党大会までに改憲発議のメド立てる」 自民党大会で異例、具体的日程に言及「時は来た」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/481334

2026年4月15日(水)第221回国会(特別会)
第1回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8959

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会が今の国会で初めて開催 各党が意見表明
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015100061000

参議院で今国会初の憲法審査会開催 合区めぐり「解消をいち早く」「国民主権が侵害されている」と参考人陳述
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2601534

自民、合区解消訴え 参院憲法審が今国会初開催
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026041500938&g=pol

参院憲法審「合区解消を」 首相改憲姿勢に批判相次ぐ
https://www.47news.jp/14156739.html

参院は甘くない?…今国会初の参院憲法審査会 衆院より与党の勢力薄く、改憲に走る高市首相と温度差くっきり
https://www.tokyo-np.co.jp/article/482033

参院憲法審「合区解消」で周回遅れ挽回なるか 今国会初の開催、根強い護憲派の影響力
https://www.sankei.com/article/20260415-BO66XQQFCJJMND2HZCSGY6ZUMM/

2026年4月16日(木)第221回国会(特別会)
第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56183
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【マスコミ報道から】

衆憲法審 自民“緊急事態条項を” 中道“臨時国会召集期限を”
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015100861000

高市総理「時は来た」発言後、初の衆院憲法審査会 今後の議論の進め方について討議
https://www.fnn.jp/articles/-/1031217

「緊急条項」集中討議を提案 与党、改憲加速狙う―衆院審査会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026041600142&g=pol

自民「任期延長の集中討議を」 中道「国会召集期限が優先」
https://www.47news.jp/14160672.html

自民党、緊急事態条項の集中討議を提案 衆院憲法審査会
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1643K0W6A410C2000000/

衆院与野党、憲法審査会の進め方巡り討議 今国会2回目 論点整理済み項目から検討か
https://www.sankei.com/article/20260416-SQE44WFR4RL6PGWJRDIOJ5HTZM/

【傍聴者の感想】

全体で一時間半弱、各会派の発言が一巡したのち、自由討議に移り、希望者が発言するという流れで進行しました。

まず自民党からは、緊急事態条項について「すでに議論は尽くされている」との認識が示されつつ、「選挙困難時に全国の一体性が損なわれ広範性に関して議論を深める必要がある」として、速やかに具体的な検討を進めるべきだという主張が述べられました。

対して、中道改革連合は、前回の議論で指摘された内容を踏まえ、個別の論点ごとに丁寧に議論を重ねていく必要性を指摘し、拙速な議論の進行をけん制しました。

日本維新の会は、「“会議は踊るされど進まず”を繰り返している。可及的なテーマは緊急事態条項と時代の遺物である憲法9条に収斂されたことは事実で、さらに活発な議論を進めるべき」と主張しました。

チームみらいは、一括して議論を進めるのではなく、個別の論点を一つひとつ整理しながら議論すべきだと述べました。発言自体は整理され表現も容易なものでしたが、会派として憲法議論にどのような軸を持って臨んでいるのかはやや見えにくい印象も受けました。

最も強い違和感を覚えたのは国民民主党の発言でした。「改憲を実現するためには自分たちの提案に沿って進めるしかない」といった姿勢が前面に出ており、改憲そのものが目的化しているかのように感じられました。本来、憲法改正は「より良い社会を実現するための手段」であるはずですが、その前提が置き去りにされているのではないかという懸念を抱きました。

共産党の発言は、現在の国際情勢に触れつつ、改憲ではなく憲法理念の実現こそが重要であるという主張でした。本来であれば極めて重要で筋の通った指摘であるにもかかわらず、それまでの議論が「改憲ありき」で進んでいたために、あたかも異なる方向性の発言であるかのように受け止められてしまう空気があったことも否定できません。

自由討議に入ってからは、「少数意見も丁寧に拾い上げ、数の力で押し切ることがないようにすべきだ」との中道からの発言がありました。まさにその通りだと感じる一方で、各会派の発言後に起こる拍手、とりわけ自民党や日本維新の会の発言に対して大きな拍手が起こっていたことから、少数意見がかき消されていくのではないかという危うさも感じました。

また、緊急事態条項をめぐる議論において、時の総理大臣や内閣に対する根拠のない信頼を前提とする発言が散見されたことにも強い違和感を覚えました。国際情勢を見渡せば、多数の支持を得て選ばれた政権であっても、必ずしも常に適切な判断を行うとは限らない現実があります。国会の機能強化の議論ばかりを進めることは極めて危ういものです。

今回の審査会を傍聴したことで、拙速な改憲議論への懸念が、より強くなりました。

2026年04月10日

憲法審査会レポートNo.67

衆院憲法審で今国会初の自由討議

4月9日、今国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました。1回目は(今国会開会直後の)2月20日に開催され、会長と幹事の互選の手続きのみ行われたものですので、今回が2026年に入ってから初めての、実質的な憲法審査会の開催と言えます。

1月23日の通常国会冒頭解散、そして2月8日投開票の総選挙を経て、衆議院の構成が大きく変化しています。衆院憲法審査会の会長は枝野幸男・前衆院議員(立憲民主党)から、古屋圭司・衆院議員(自民党)へと移りました。

古屋新会長は過去に自民党憲法改正実現本部長を務め、高市首相の意を体する人物とみられています。この間のマスコミ各社のインタビューに対しても、改憲の機運が熟しているなどと述べ、改憲項目の意見集約をすすめたい意向を示しています。また、「条文起草委員会」設置にも前向きです。

今後、7月17日の国会会期末まで、この衆院憲法審査会がどのように動いていくのか、しっかりと注視していかなくてはなりません。いっぽう、参院憲法審査会は長浜博行会長(立憲民主党)以下、基本的には昨年同様の構成ですから、安易な改憲論議へとは進まないとは思われますが、こちらの動向もしっかりと見定めていく必要があります。

【参考】

衆院憲法審の討議、4月始動へ 改正項目「集約の時期来ている」
https://www.47news.jp/14062970.html

2026年4月10日(木)第221回国会(特別会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56150
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 今国会で初めての討議 各党が意見述べる
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015095661000

憲法改正、与党が加速狙う 「緊急事態」照準、中道は慎重論
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026040901093&g=pol

衆院憲法審会長、現状は「立法府の不作為」 早期改憲発議に意欲
https://mainichi.jp/articles/20260409/k00/00m/010/275000c

衆院選後初の憲法審論議 自民、改正条文起草検討を 中道「必要なら真摯に」
https://www.sankei.com/article/20260409-233LYFZ5GVKYJIULBBJLGJ5BHM/

憲法審査会 今国会で初討論、ホルムズ海峡派遣で「憲法9条」が再注目、星浩さん「2つの心配」【Nスタ解説】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2590269

【傍聴者の感想】

実質的な審議としては今国会では初回で、自由討議ということで各会派が基本的なスタンスを述べました。

自民党は従来の改憲4項目の推進と国民投票法の整理(改正公選法との平仄合わせ、および広報協議会のあり方)について発言し、中道改革は改憲そのものを目的とした議論には与しないが、新たな課題には目を背けず、必要と認められれば真摯に検討し、拙速な議論は避けつつも定例開催に賛成する旨を発言しました。中道はその上で今後取り組むべきテーマとして、①自衛隊の憲法上の位置づけ、②臨時国会の召集期限、③首相の解散権、④デジタル社会と人権、⑤国民投票法などを課題としてあげました。

以下、日本維新の会、国民民主は、これまでで論点は整理されていると主張、条文起草委員会設置に進まないことへの批判という従来の主張を展開し、参政党は憲法を一から作り直す、チームみらいは手続法の課題と本体改正議論は切り分けて考えるべきという意見を述べ、最後に共産党が審査会は開催すべきでない旨を主張しました。

改憲勢力が圧倒的多数ではありますが、9条および自衛隊の取り扱いについては各会派まちまちで、傍目には一致した条文の取りまとめは難しく思えます。その上で自民党が単独でも多数を占める状況なので、改憲推進他会派の合意を得られなくても自民党案を押し通すことまでするのか、何らかの他会派との調整が図られるのか、あるいは9条改憲で無理をすることを避けるのか、注視が必要だと思います。その上で緊急事態条項、とりわけ選挙困難時の議員任期延長は相対的に一致度が高く、改憲発議の具体化に進む危険性は高いと言えます。

しかし「自然災害など緊急事態だからしょうがない」という一見通りやすそうな理屈の裏には、戦争という緊急事態と、その時に国民の政治参加を制限するという重大な問題が含まれていることを見逃してはいけません。緊急時こそ国民の判断を求める制度をしっかり作るということが主権在民の意味です。

立憲野党は少数ですが、稚拙、拙速、欺瞞的な議論にはそのつど的確に反論していくために今後も審査会ウォッチを継続していきます。

2025年12月17日

憲法審査会レポートNo.66

臨時国会が閉会、改憲機運高まらず

12月17日、今臨時国会の会期末を迎えました。同日、衆参ともに憲法審査会を短時間だけ開催し、閉会にあたっての手続き処理(付託された請願(署名)の取り扱い審査など)を行い、終了しています。

高市政権成立にあたっての自民・維新の「連立合意」に盛り込まれた両党による「条文起草協議会」は発足したものの、両党の主張が噛み合っていない状況があります。衆参憲法審査会の下への「条文起草委員会」設置に関しては、幹事懇談会での提案や自由討議での発言にとどまり、正式な議題にもなっていません。

自民・維新などの改憲政党・会派がこの間手を変え品を変え、さまざまな策動を続けてきましたが、世論はいたって冷静です。しかし、保守層を繋ぎとめるために、来年以降も「改憲実現」を旗印としていくことが予想され、引き続きの警戒・注視が必要です。

【参考】

自維政権下の憲法論議 改正急ぐ理由見当たらぬ
https://mainichi.jp/articles/20251216/ddm/005/070/076000c

2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56067
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2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8824

2025年12月05日

憲法審査会レポートNo.65

12月4日、衆院憲法審査会では自由討議が行われ、自民・維新は憲法審査会の下に「条文起草委員会」を設置することを主張しましたが、立憲・れいわ・共産は反対を表明、与野党で設置の合意が得られる状況にはありません。

12月17日が今臨時国会の会期末です。補正予算審議などもあることから、衆参ともに憲法審査会の実質的な開催機会も少ないものとみられ、今国会ではこれ以上の大きな動きはないものと思われます。

2025年12月4日(木)第219回国会(臨時会)
第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56022

【マスコミ報道から】

衆院憲法審 憲法改正 条文案起草の小委員会設置めぐり意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014993781000

自民、起草委設置へ理解求める 立民は否定的―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025120400120&g=pol

遠い憲法審の「起草委」設置 自民「合意を得られる状況ではない」
https://digital.asahi.com/articles/ASTD42SLCTD4UTFK00NM.html

「安全」巡る認識の違い表面化 衆院憲法審査会 緊急事態条項新設に立民は反対姿勢堅持
https://www.sankei.com/article/20251204-E4FL6I7SVVOEJASJIWSYEZYZ4M/

【速報】同性婚容認へ改憲提起 自民党の中谷氏「不利益解消」
https://www.47news.jp/13548764.html

憲法審査会 条文案作りに着手する段階だ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20251205-GYT1T00052/

【傍聴者の感想】

きょうは自由討議の形で、各党の委員が発言時間いっぱい持論を展開しました。

いわゆる「お気持ち表明」なのではないかと感じるような、それぞれが一方的に話しているような印象を覚えました。

また、「いつまでも同じことを繰り返していてはだめだ」「議論は尽くされた」と改憲ありきで発言する議員もいますが、憲法は国のあり方を示し、権力を「法の支配」で縛る国の最高法規です。落ち着いた環境で冷静な議論が必要ですし、少数会派の意見を封じてはいけません。

何よりも私たち市民は憲法を変えるべきだとは思っていません。それよりも物価高対策や社会保障の充実など生活に密接に関わる課題の解決に尽力してほしいものです。

傍聴券を手配していただいた議員の秘書の方から「今日は傍聴に小学生も参加する」と聞いていましたが、きっと小学生は憲法審査会を傍聴して「ぽかーん」としたと思います。発言内容が難しいというよりも、一方的に主張し、話がかみ合わない様子は、「会議」のイメージとかけ離れているからです。

そもそも、憲法で世の中を、世界を良くしたいという発想からの改憲議論ではなく、世界情勢が危険だから憲法を変えないといけないという発想自体が、ナンセンスで本末転倒です。どうしたら世界が良くなるか、そのために努力しましょうと憲法前文にも書かれています。
改憲ありきの委員の姿勢や発言は、努力すべき方法や方向を誤っているように見受けられました。

【国会議員から】山花郁夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

いうまでもなく憲法改正のためには、衆参両院の2/3以上の賛成が必要です。

近年与党だけで2/3を占めるということがありましたが、戦後80年間の歴史をみると、これは歴史的には稀有な事態といえます。一般的には野党第一党が賛成していなければ両院での2/3の合意形成は難しいといえます。法律と違って、憲法というのは、どんな考え方の内閣であっても、どの政党が政権を担っても、そのルールの下に政治を行うという、いわば与野党に共通のルールだけに、2/3要件というのは、与野党一致で共通認識が形成されることが求められているものといえます。

国民投票法を制定するに際しては、このような事情を意識しながら立案したものでした。すなわち、将来的に憲法の改正が発議されることがあるとすれば、与党・野党の垣根なく共通認識を形成して、成案を作成していくというプロセスが重要になるということを認識し、その手続法である憲法改正国民投票法も同様に、与野党で真摯な議論を行って共通認識を形成し、成案を得ていこうという努力がなされました。衆議院憲法審査特別委員会において、最終的には不本意な形での採決となりましたが、ギリギリまでその努力がなされたもので、船田会長代理はその当事者でもあられます。

国民投票法成立当時から、国民投票の賛否の勧誘にかかわるCM規制について議論がありました。私たちとしては、民放連が制定当時と異なる答弁が後になされたことから、問題意識を持っていたところです。

制定から時がたち、テレビ・ラジオはオールドメディアとよばれるようになり、テレビ・ラジオよりもSNSのほうが社会的影響力は大きくなっており、偽・誤情報対策については当審査会でも議論してきました。さらに、諸外国において選挙の際の外国からの干渉などの問題も、当審査会でも先日、衆議院の海外調査(枝野団長)において、報告を受けたところです。

広報協議会については幹事懇談会で議論が進んでいますが、国民投票法についてはその他にも議論すべき論点があると考えています。この点については、前回改正時に附則4条に盛り込まれているテーマもあります。附則4条には、「法律の施行後3年を目途に、……」「検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」ことになっているところ、すでに3年以上を経過しており、立憲民主党としては今後の審査会でも附則に規定されたことについて重点的に議論がなされるべきと考えます。

前回改正の時には、私と新藤筆頭との間で相当な時間をかけて折衝を行いました。当時も公選法並びの改正という比較的技術的な内容の改正の提案がなされていました。CM規制等の問題も同じ国民投票法の改正案であることから、採決を行うのであれば立憲民主党の問題意識を盛り込めるものは改正法に編入してほしいという当方の立場との乖離を埋めることに相当なエネルギーを費やしたことが思い出されます。最終的には附則に落とし込むことにより、双方の合意を形成することができました。対立した形での採決とならなかったことについては当時の新藤筆頭幹事にも敬意を表したいと思います。

ただ、その後に附則で規定した事項についての議論が加速化することはなかったというのは残念に思います。

国民投票法は手続について定めるものですが、どの党の案がベースになったものだという色がついてしまうと、「改憲派に有利なルールだ」とか、「護憲派に有利なルールだ」というレッテルを張られ、手続の正当性に疑義が生じるおそれがあります。その意味で、現在も立憲民主党として法案の形で党内的には整理しているところですが、これを対案的に提出しようというのではなく、論点についての考え方を提起しつつ、各党各会派にご理解をいただいてコンセンサスを作っていきたいと考えています。

将来的に多くの与野党のコンセンサスが形成されて「憲法改正が発議された」という事態を想定し、国民投票での過半数を視野に入れると、どの党の案がベースになったという色がつかないことが大事だと思います。

かつて、中山太郎憲法調査会長(当時)と、ルクセンブルクに国民投票の視察に行ったことがあります。EU憲法批准の可否に関する国民投票でした。議会では圧倒的多数が賛成していたにもかかわらず、国民投票の結果は僅差のものでした。政党色や内閣に対する審判のような色がつくと、思わぬ結果となることを中山先生と語り合ったことが思い出されます。

こうした事例などの教訓として、国民投票での過半数を視野に入れると、発議される憲法改正案はどこの党の主張であったというようなことが希釈されていることが必要で、起草委員会というアイデアはこのような文脈で語られてきたはずです。

現状はそのアイデアになじむ状態ではないというだけでなく、憲法改正の「わが党案」のようなものを主張されている党があるとすれば、これまでの憲法調査会以来の知見をふまえたものとはいえず、国民投票での過半数獲得の阻害要因となることは指摘しておきたいと思います。

なお、議員任期延長に関連して、総選挙を全面的に停止しなければならない立法事実を確認できない旨申し上げてまいりました。

少し角度を変えて説明したいと思います。

公立中学校で「男子生徒の髪型は丸刈りでなければならない」という校則があったとします。法の下の平等という観点からすると、この校則を違憲・無効なものであるとして、男子学生の髪型についての規制をなくす、というのが適切な是正策と考えられます。

これに対して、「女子生徒の髪型も丸刈りでなければならない」という校則を新たに作成して、男子学生・女子学生間の平等を解消するような方策をとるべきでないことは言うまでもありません。人権を侵害する方法で平等を実現することは「不正義を倍増」することにほかならないからです。

そこで、大規模災害の場合です。東日本大震災のようなケースでも、8割強の地域は選挙の執行が可能でした。1割強の地域で選挙の執行が困難であることを理由として衆議院選挙を全面的に不能だと論じることは、比率において上回る地域の選挙権行使の機会を停止することにより「平等」を確保しようとするもので、女子学生を丸刈りにするのと同じように投票の権利を侵害・制限する方法で平等を実現する方策といえます。繰延投票等の方法を活用することが適切な解決方法だということを改めて申し上げて発言といたします。

(憲法審査会での発言から)

2025年11月28日

憲法審査会レポートNo.64

11月26日、今臨時国会はじめての参院憲法審査会が開催されました。このなかで日本維新の会が憲法審査会の下に条文起草委員会を設置する提案をし、これに国民民主党から賛意が表明されたものの、自民党は積極的な反応を示しませんでした。

いっぽう、27日に行われた衆院憲法審査会幹事懇談会では、船田元・与党筆頭幹事が憲法審査会への条文起草委員会設置を提案、維新が同調、立憲・共産・れいわが反対しました。

これら「憲法審査会への条文起草委員会設置」の提案は自民・維新の「連立合意」に基づくものですが、自民党の衆参での対応には温度差がすでに表れています。

また、自民・維新両党による「条文起草協議会」の場においても、改憲に前のめりの維新の姿勢が際立ってきています。

【参考】

自民、条文起草委を提起 衆院憲法審査会、立民は反対
https://www.47news.jp/13514189.html

自民、条文起草委を提案 衆院憲法審、立民「時期尚早」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025112700573&g=pol

維新、憲法9条2項削除・国防軍を説明 自民「いきなりそこまでは」
https://digital.asahi.com/articles/ASTCW3J38TCWUTFK009M.html

2025年11月26日(水)第219回国会(臨時会)
第1回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8753

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 今国会で初の討議 憲法の考え方で意見交わす
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014986851000

維新、条文起草委を提案 参院憲法審、野党は反発
https://news.jp/i/1366324694204269207

条文起草委設置で足並みそろわぬ与党 今国会初の参院憲法審、「周回遅れ」挽回なるか
https://www.sankei.com/article/20251126-CECNUXJY4JIGHDPPWQPKIJWVLY/

臨時国会での改憲論議、自民なぜ抑え気味 初の参院憲法審査会から
https://digital.asahi.com/articles/ASTCV323DTCVUTFK00KM.html

【傍聴者の感想】

高市政権発足後、初の参議院憲法審査会が開催されました。今夏の参院選を経て会派の構成や委員も変わりました。初開催だからということか、各会派代表が「憲法に対する考え方」を表明し、その後委員の自由な発言を時間終了まで行いました。

各会派の発言は概ねこれまでの主張を繰り返したもので、特に新しい課題提起はなかったように思います。参議院の緊急集会を積極的に活用する方向性は各会派共通するなど、衆院との違いも従来の論調が継続していると思いました。自民と維新の連立合意に触れた発言がいくつもあったのが、今までとの違いでしょうか。

初めて参加した参政党の発言が注目されましたが、「憲法は一から作り直す創憲」「憲法は権力を縛るものではなく、国のあり方を示すもの」「今の憲法には伝統的な文化や価値が記載されていない」「日本は古来から憲法を自主的に作ってきた(聖徳太子など?)のであって自分たちで作ることが大事」など、この間にマスコミなどでも報道されていた主張でした。

委員の自由討議でも参政党の委員の発言がありましたが、「子どもの権利を守らなければならない。長時間保育は子供の情緒をゆがめている。そのために3歳までは家庭で育てることを定めるべき。憲法で、『子供は国の宝』と明記すべき」との主張を展開。批判の仕方は幾通りも思いつきますが、問題はこのような発言が現代の国会において堂々となされることを可能にしている私たちの社会のあり様でしょう。私たちの日常において、分断と対立は乗り越えつつ、批判すべきことはきちんと批判するということが、今まで以上に大切なってくるのだと感じました。

【国会議員から】吉田忠智さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

1.戦後80年と日本国憲法の真価

今年は戦後80年ですが、かつての全体主義と軍国主義がもたらした世界史にも例のない甚大な戦争の惨禍の反省に基づき制定され、今日までの我が国の発展の礎となった日本国憲法の真価をしっかりと正当に評価しなければならないと考えます。

日本国憲法は、世界唯一の平和主義を掲げ、世界屈指の人権法典にして優れた民主制度を定めたものであり、私ども会派はこの日本国憲法を守り活かしていくための議論、すなわち、良識の府にふさわしい、法の支配と立憲主義、そして、憲法の基本原理に基づく憲法論議をこの審査会で求めて参ります。

2.憲法審で議論すべき事項

さて、本日は、今後の本審査会において議論すべき三つの事項について指摘したいと思います。

(1)緊急集会
一つは、参議院の緊急集会に関する議論です。参院憲法審では、2023年常会で緊急集会の制度、24年常会で災害時等の緊急集会の運用について大変充実した議論を行ってきました。今後は、緊急集会のあるべき機能強化などに関する論点を更に議論し、具体的な制度改善に結びつける必要があります。

特に、本年の常会で自民党の中西筆頭幹事が指摘されたように、参議院の「都道府県選挙区の合区」が緊急集会の制度趣旨に合致するものか検討が必要と考えます。この点、昨年6月の選挙制度専門委員会の報告書において、二院制における参議院の機能・役割として、災害対応について「緊急集会の機能の充実強化」が明記され、その答申を受けた参議院改革協議会報告が本年6月に纏められております。

今後は、改革協議会と本審査会との連携が極めて重要であり、まずは、この間の経緯等を聴取し、憲法問題を担当する憲法審査会の責任を果たしていく必要があると考えます。

なお、緊急集会を巡っては、任期延長改憲の根拠として、「総選挙の実施が可能な平時の制度であり、開催期限は70日間限定であり、二院制の例外制度としてその権能は大きく制約される」といった主張が衆院憲法審で任期延長改憲を主張する方々によってなされてきました。
ところが、参院憲法審では、自民、公明、そしてご勇退された大塚耕平先生などが会派代表意見において、衆議院の任期延長改憲を主張する方々とは異なる緊急集会に関する正しい見解を述べられてきました。昨年8月の自民党の党見解のWG報告にはそうした良識の府の見識が具体的に示され、かつ、本年の常会でも佐藤筆頭幹事を先頭に任期延長改憲を主張する方々の見解に汲みしない緊急集会の正しい主張がなされたことに敬意を表する次第です。

特に、佐藤筆頭幹事の質問による川崎参院法制局長の答弁によって、予算や条約などの衆議院の優越事項も緊急集会の議案となることが明確に確認されたことは非常に重要です。

こうした、参院憲法審の論戦にもかかわらず、衆院憲法審では先の常会の会期末に緊急集会の誤った見解に基づく任期延長改憲の骨子案の議論が行われたことは誠に遺憾です。

ただ、その中で、「70日間は緊急集会の活動期間を厳格に限定するものではない」という見解が初めて示されています。この点、任期延長改憲の「選挙困難事態」の定義には70日間限定説に基づく「70日を超えて」という「長期性の要件」があり、この改憲骨子案の見解は、任期延長改憲の論拠の根幹の崩壊を意味するものと考えます。

先の自民・維新の連立合意には、任期延長の改憲条文の来年の常会提出等が記されています。緊急集会を巡る見解が衆参で深刻に分裂し、任期延長改憲を主張する方々の見解の正当性そのものが崩壊する中で、衆院での改憲条文の提出など断じて許されません。ましてや、そのための、衆参憲法審査会での条文起草委員会の設置など断じて許されようがないことを明確に指摘いたします。

(2)国会法102条の6に基づく憲法違反問題の調査審議
次に、国会法102条6が定める憲法審査会の法的な任務である憲法違反問題などの調査審議の実行も極めて重要であります。
先に、高市総理による存立危機事態条項の台湾海峡有事での適用答弁が日中の国際問題に至っていますが、そもそも、安倍政権の集団的自衛権行使は昭和47年政府見解の「外国の武力攻撃」という文言の曲解等によってなされた憲法違反であることが、2015年の安保国会では濱田邦夫元最高裁判事や宮﨑礼壹元内閣法制局長官らによって陳述されています。

また、それが故に、武力行使の新三要件が歯止めのない・無限定なものであることも国会質疑で論証されていますが、日本による米国のための集団的自衛権行使を法的に免責した日米安保条約3条など日米同盟との関係も含め、国家による戦争行為の発動である存立危機事態条項の憲法問題について、本審査会で冷静にしっかりと調査審議を行う必要があります。

なお、我が会派は自民・維新の連立合意にある、あらゆる武力行使を可能にしてしまう憲法9条そのものの改憲には明確に反対をいたします。

合わせて、多くの高裁で違憲判決が出ている同性婚禁止、あるいは、選択的夫婦別姓、さらには、臨時国会の召集義務違反など、国民の人権や民主主義の在り方に直結する重要な憲法問題もしっかりと審議する必要があります。

(3)国民投票法
更には、国民投票法について、附則4条が求めているテレビやネットのCM規制、ネット上のフェイク情報の対処などについて、引き続き議論を深めていく必要があります。

特に、インターネットについては、いわゆるフィルターバブル・システムや、再生回数稼ぎのビジネスモデルなど、「ネット社会の民主主義の在り方」という根本的な視座に立った検証が必要と考えます。

3.最後に

以上、良識の府にふさわしい、立憲主義に基づく憲法論議を求めて私の意見といたします。

(憲法審査会での発言から)

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