憲法審査会レポート、2026年

2026年06月12日

憲法審査会レポートNo.73

2026年6月10日(水)第221回国会(特別会)
第5回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9090

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 緊急事態対応などテーマに参考人質疑
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015146141000

緊急事態条項「不要」 参院憲法審で参考人質疑
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061000928&g=pol

緊急事態条項「必要ない」 有識者、参院集会で対応可
https://www.47news.jp/14447584.html

【参考】

(社説)「合区」の解消 改憲で対応する問題か
https://www.asahi.com/articles/DA3S16477817.html

【傍聴者の感想】

このところの衆院憲法審査会は、「緊急時の国会機能の維持」を理由とした緊急事態条項の創設、議員任期の延長について、議論は出尽くしたのだから発議に向けた手続きを進めるべきと改憲推進会派から声高に主張されています。

憲法第54条では、「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない」とされ、2項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とされています。

この日の参院憲法審査会は、早稲田大学法学学術院の長谷部恭男教授と専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授を参考人として招き、衆院憲法審査会で議論の中心となっている緊急事態時の対応について参考人との質疑が行われました。

長谷部教授は、衆院の解散後に大規模災害が起きても、現行憲法で参院の緊急集会での対応が規定されているのだから、参院で国会機能を暫定的に代替できると述べられました。その上で、「(憲法第54条1項による)参院緊急集会の70日限界説」について、70日と限定しているのは、時の政権の都合により国会を召集しないことを防ぐためであり、政権の居座りを許さないために設けられていると解するべきとしました。

専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授は、あまりにも想定し難い緊急時を挙げて緊急事態条項を創設すると、例外的な対応を長期化させることになりかねず、例外を例外にとどめるための制度設計をすべきとし、緊急事態条項は強い手段と広い例外を認めることになりかねないと指摘しました。その上で、長期間衆議院選挙が実施できない場合も、参議院の緊急集会で対応することが許容されるという認識を示しました。

緊急事態条項は、緊急事態を名目に政権を批判する言論や運動が抑圧される危険性をもちます。権力側にことさら強力な権限を持たせることで差別や暴力、人権侵害が広がった歴史があります。東日本大震災や新型コロナなど、これまでの大災害や感染症の対応で、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという事例も示されていません。

現行憲法でも参議院の緊急集会などで対応可能法であることは、この日の参考人からの意見で理解が深まりました。まずは法律でできることを尽くしてから議論すべきで、「改憲ありき」の衆院憲法審査会の議論の進め方に違和感を覚えます。

憲法審査会の衆参両院の温度差や議論内容の乖離が明らかになっています。こうした議論の積み重ねこそ重要であることを感じます。「時は来ました!」とする高市首相の認識は決定的に誤りです。

2026年6月11日(木)第221回国会(特別会)
第9回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56323
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 自民など4党提出の国民投票法改正案 審議入り
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015147181000

自民、ネット広告に法制措置も 国民投票運動巡り
https://www.47news.jp/14451227.html

憲法9条で溝浮き彫りの自民と維新 「2項」維持巡り 衆院憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/859b6cde497aa1e543bf015c3f04b25eff3a9a5e

投票環境の整備など盛り込んだ国民投票法改正案が衆院憲法審査会で審議入り 来週採決の見通し
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2726462

国民投票法改正案18日採決へ 衆院憲法審で与野党合意 立会人要件緩和や離島開票規定など整備
https://www.fnn.jp/articles/-/1057557

国民投票法改正案が審議入り 野党は投票運動巡るネット規制主張 自民は採決に向け調整
https://www.sankei.com/article/20260611-532SM4ASPFJLFGBWFRKUBFJUO4/

【傍聴者の感想】

本日の審査会は、すでに施行されている公職選挙法の改正内容に国民投票法も平仄を合わせることを目的とした、改正国民投票法の改正案が議員立法で提出され、趣旨説明と質疑が行われました。

立会人の選出や選挙時のFM放送が主な内容で、このこと自体に反対する会派はほとんどありませんが、中道改革連合はそもそも宿題となっている附則4条をめぐる課題や、この間の審査会でもたびたび議論となってきたニセ情報対策、有料広告の資金規制、外国勢力の介入の課題などについて早急に解決することの約束を迫りました。

チームみらいは普通選挙も含めた投票環境の改革、共産党は投票全体を取り仕切る広報協議会が会派比率によって構成されることの不当性などを訴えましたが、法案提出議員は「速やかに議論する」「必要があれば検討する」という答弁に終始しました。

改憲にかかる投票は、「人・政党が自由に主張し、人・政党に投票する」選挙とは異なり、「改正」案の正否を問うものなので、発議にあたっては当然ながらその目的・理由や経過や影響などについて賛否双方の考え方が適切かつ公平に広報されなければなりません。

しかし現行法の規定では、資金力が大きいほど有利、ウソでもデマでも言ったもん勝ち、改憲推進派が投票全般を取り仕切るという状況になることは明らかです。加えて最低投票率の定めもないので、改憲派は改憲に賛成する人だけが投票すればよいという考えに流れるのは必至だと思います。

議論の中では改憲派もフェイク対策や資金規制を課題として発言をしてきていますが、真剣に取り組むつもりがあるかは極めて疑わしく思っています。

改憲発議や国民投票が、市民の中に分断と対立をあおり、社会の不安定化を招くようなことになれば、そのこと自体からして改憲は失敗です。投票制度のあり方は、投票の信頼度や納得性を高めるために極めて重要です。現状における「改憲反対派は敵である」という意識を隠さない改憲推進派の姿勢をみるにつけ、現行の投票法は断じて容認できません。

投票法改正案の質疑後は再び各会派からの「テーマ出し」となり、自民と維新の会は9条と自衛隊について、中道は政治広告に関する規制のあり方について意見を述べました。国民民主の玉木委員は、緊急時の議員任期延長と国会機能の維持に論点を絞り込まないと発議にたどり着けない(だから9条とか自衛隊とか他の課題はもう言うな?)旨の発言をし、参政、チームみらい、共産と発言をして審査会を終了しました。

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