憲法審査会レポート、2026年
2026年05月22日
憲法審査会レポートNo.70
先週は諸事情により本レポートの発行ができませんでしたので、2週分まとめた内容となります。
【参考】
高市首相は本気で憲法改正をやる気はない…身内すら「自民党はビジネス保守」と呆れる”無謀な計画”の中身
https://president.jp/articles/-/113098
改憲提案、必要性なく乱用の危険 東京都立大教授 木村草太 視標「高市政権下の憲法記念日」
https://www.47news.jp/14331415.html
高市首相「改憲論議推進を」 衆院憲法審会長は発議に意欲
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051501003&g=pol
【社説】憲法に緊急事態条項 政府に権限集中の危うさ
https://www.asahi.com/articles/ASV5H7TSYV5HUSPT009M.html
<主張>憲法改正 国家緊急権の規定必要だ
https://www.sankei.com/article/20260518-OYDYIOFCWFJZ5EC2LWW25FZZVM/
2026年5月14日(木)第221回国会(特別会)
第5回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56241
※「はじめから再生」をクリックしてください
【マスコミ報道から】
衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに各党が討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015121721000
緊急事態、自民「深化」主張 衆院憲法審でたたき台初討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051400098&g=pol
自民「論点集約近づく」 緊急条項、条文化加速狙う 衆院憲法審討議
https://mainichi.jp/articles/20260515/ddm/012/010/102000c
緊急事態条項 各党割れる主張 衆院憲法審、イメージ案基に討議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1311835/
【傍聴者の感想】
今回の審査会では、緊急事態条項に関する議論について、2022年頃からの経過が報告され、衆議院法制局および憲法審査会事務局から提示されたイメージ案をもとに議論が開始されました。
自民党の新藤義孝議員が「究極の事態に陥った時に備えて条項を設けることは必須だ」としてイメージ案をおおむね了承しました。日本維新の会の馬場伸幸議員も、イメージ案をベースにした条文起草委員会の設置を求めました。
一方で、中道改革連合の国重徹議員は立憲主義の観点から選挙実施優先原則に基づく選挙権の保障を主張。チームみらいは、憲法を改正した場合と改正しない場合のメリット、デメリットを比較することが重要で、平時の選挙制度の在り方についても議論する必要があると述べました。
今回の議論はイメージをもとにした議論であるが、仮に緊急事態が生じたとして、これに乗じた、時の政権による権力濫用があってはならないと思います。平時であれ非常時であれ、権力の暴走を食い止める力は、私たち市民の手にあるはずです。
今年2月の衆院選で圧勝した自民党が議席の多数を占めたのにともない、衆院憲法審査会の会長はじめ委員席の半数以上も自民党に入れ替わり、これまでと様相が変わってきました。
数の論理に押され安易な「改正」をめざすのではなく、憲法理念を実現させるための丁寧な議論を求めていきたいと思います。
2026年5月20日(水)第221回国会(特別会)
第3回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9026
【マスコミ報道から】
参議院憲法審査会 「1票の格差」テーマに各党が意見表明
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015126821000
参院憲法審査会「1票の格差」テーマに各党が意見表明 「合区」の解消の必要性を各党主張も憲法改正めぐっては見解分かれる
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2674561
参院憲法審、1票の格差をテーマに討議 「解消すべき」大勢
https://news.yahoo.co.jp/articles/a85c4382b789a5b24dc80d113e4974ef636b8a1a
参院憲法審「合区」解消めぐり各党意見表明 与党は憲法改正による解消 野党は慎重論
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000506531.html
参院選「合区」の解消、割れる改憲の賛否 参院憲法審
https://www.asahi.com/articles/ASV5N34LZV5NUTFK009M.html
【傍聴者の感想】
今回の参議院憲法審査会は、二院制における参議院のありかたおよび一票の格差問題について、各会派からの意見表明を述べるものでした。
都市部への人口集中、人口減と地域の衰退などで、隣接する県などとの合区による一票の格差の是正をはかる現行の制度の問題点について、多くの会派から指摘がありました。これらは傾聴には値するものの、改憲ありきの主張はちょっとね、という感じです。立憲民主党の吉田忠智議員の主張のように改憲によらない制度変更で十分対応できるのではないでしょうか。この点は公明党も同じような主張をしていました。
緊急事態条項の議論を一刻も早くすすめよという自民党、条文起草委員会までの流れを加速せよとする維新、何はともあれ一から憲法をつくりなおせと参政党、いつまで一票の格差問題の議論をやるのだ、とにもかくにも改憲反対のれいわまで、威勢のよい発言はあるものの、高市首相が述べたような「時が来た」とはとは思えない憲法審査会でした。
2026年5月21日(木)第221回国会(特別会)
第6回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56263
※「はじめから再生」をクリックしてください
【マスコミ報道から】
衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに2回目の討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015127691000
衆・憲法審で緊急事態条項をテーマに各党討議 内閣に暫定的に立法機能持たせる案も議論に
https://news.ntv.co.jp/category/politics/4a9663e595284257b0ab1f9e3cfd41ea
自民、緊急事態条項の整備主張 衆院憲法審、中道はけん制
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026052100150&g=pol
自民、内閣の緊急政令規定は必要 中道、議員の任期延長「慎重に」
https://www.47news.jp/14335948.html
内閣の「緊急政令」 自民は必要性主張、野党は慎重 憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c5e84355ab23d04f45392981e139f5bb5a9e90a
【傍聴者の感想】
今国会、第6回目の衆議院憲法審査会は、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(「『緊急事態条項』のイメージ(案)」)を案件として、開催されました。傍聴券を受け取る議員面会所のロビーには、傍聴希望者が長蛇の列をなし、荷物検査も込み合っていました。傍聴席は、後方にずらっと椅子が追加され、異様な雰囲気でした。拙速な改憲議論への危機感によるものと感じました。
今回、「毎週開催が定例化して以降の衆議院憲法審査会の議論の経過」と題する年表のほか、過去の資料もまとめて配布されました。
各会派からの発言を一巡して、希望者からの発言という流れはこれまでと変わりませんが、相変わらずという点では、自民党、日本維新の会の発言についても同じことが言えます。「緊急事態条項について、議論を尽くした」「ピン留めされたことは条文化をしていくべき」「制度としてまとめることが要請されている」と、同じような言い回しばかりです。
自民、中道、維新、国民、参政、みらい、共産と発言を聞いていく中で、気になった発言は、国民民主党・玉木委員の「国会も開けないような状態なのに、閣議は開けるのか」という趣旨のもの。閣議だけは行えるという保証は確かにない。一方で「緊急政令や財産処分について議論を蒸し返すな」「蒸し返したら、これまでの議論がご破算だ」という趣旨の発言をし、議論を狭めて改憲を進めたいという姿勢を強く感じました。
また、参政党・和田政宗委員からは「感染症」という文言が入っているから反対しているという趣旨の発言がありました。「運用が恣意的にされるのではないか」としきりに主張し、権利を守るために創憲が必要だという流れは、悪い意味で印象に残りました。感染症でなくても、時の内閣に任せること自体、恣意的に運用されかねません。
希望者の発言の際に、中道改革連合・西村智奈美委員が「今の情勢では改憲議論をしている場合ではない」「イメージから抜け落ちた部分が多岐にわたっている」と指摘しました。場内を見回したとき、「改憲派は何か形をつくって(イメージを作らせて)そのあとは数の力でどうにかしたいでは」との不安をいっそう強くしました。
【国会議員から】西村智奈美さん(中道改革連合・衆議院議員/憲法審査会委員)
戦後日本の自由と平和の礎となってきた日本国憲法を尊重する立場から意見を述べます。
私たち中道改革連合としては、権力の濫用を防ぎ、個人の尊厳と自由を守るという基本政策の下、憲法議論に参画していくという立場です。
しかし、あえて申し上げれば、先週の審査会で、日本維新の会の馬場元代表は、憲法論議の核心であるべき権力の暴走につながるとの主張について、改憲反対ありきの常套句などと発言されました。権力の暴走は、ナチス・ドイツの例を始めとして現実的かつ真っ当な懸念です。こうした発言が相次ぐ中で、また中東情勢やその影響など深刻な課題が山積する今、それより優先して憲法の議論が進んでいくことに深刻な懸念を感じています。
また、自民党は衆議院では圧倒的多数かもしれませんが、参議院ではそうではありません。今回のテーマである緊急事態への対応に関しては、与野党の枠を超えて衆議院側と意見の開きがあります。そもそも、現在、法制局及び憲法審査会事務局にイメージ案を作成させるような段階ではなかったと私は考えます。百歩譲っても、昨年、衆議院法制局から提出された資料「緊急事態条項(国会機能維持)の主な論点(イメージ)」には記載のあった、平時も含めた臨時会招集期限、緊急時、平時における解散権制約など、多岐にわたる論点が今回抜けていることに納得がいきません。
その上で、先週提示されたイメージ案について幾つかの問題提起をさせていただきます。
第一に、緊急事態の際に議員の任期延長が必要との説のほぼ唯一の論拠である選挙の一体性とは何かという問題です。憲法的価値が本当にあるのかという指摘がこれまで重要な論点として複数なされてきました。ここがこの憲法改正が必要かどうかを判断する大きな鍵だと考えますので、しっかりとした議論が必要です。
第二に、想定される最も巨大な震災の際にも選挙を実施できない選挙区は限定されるので、選挙全部を延期するような立法事実はないという指摘がこれまで繰り返されてきました。まずは徹底的に選挙制度の強靭化を図り、その上で選挙全部を延期するような立法事実が残るのかを精査すべきです。
第三に、参議院緊急集会が一時的、限定的、暫定的とされている点です。これまで緊急集会の権限については様々な指摘がなされてきましたし、自民党も原則として国会の機能全てに及ぶとしています。改めて議論すべきです。
第四に、緊急事態の対象範囲に存立危機事態も含まれるのかです。昨年11月、高市総理は、法律の限定を逸脱したと思える答弁をされています。支持率低下のタイミングにおける衆議院任期満了選挙を避けるために、内閣の恣意的な判断で存立危機事態を認定するとともに、選挙困難事態の認定がなされ、選挙が停止され続けるという濫用が懸念されます。古今東西、自らの政治的な危機を乗り越えるために戦争を始めた指導者は少なくありません。こうした危険はないのか、今後も議論させていただきたいと思います。
最後に、緊急政令などという、国会としてはおよそ認められない条項が紛れ込んでいることは論外です。憲法改正してまで議員の任期延長をして、国会機能を維持しようという議論と同時に、国会が機能しない場合を想定した議論をすることは論理矛盾なのではないでしょうか。憲法改正に決して消極ではない国民民主党の玉木代表も、先週は、あえて蒸し返さない方が得策と、今日も同様の趣旨の発言がありました。通らないことを見越して、バッファーとして入れているとすら思えてきます。論外だと考えます。
(憲法審査会での発言から)
