憲法審査会レポート、2026年
2026年10月23日
憲法審査会レポートNo.79
10月22日、今臨時国会初となる衆院憲法審査会が開催されました。政権与党の自民・維新は、今国会会期中に衆参憲法審査会の下に「条文起草委員会」を設置することを目標としていると考えられます。いっぽう、自民・維新による「憲法改正条文起草協議会」は10月6日・14日とくり返し開催されていますが、改憲項目などでいまだ両党には隔たりがある状況です。
今年4月の自民党大会では、高市首相が「改正の発議について、メドが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と広言しました。来年2027年の自民党大会は2月の予定であることもあり、与党は今国会で何らかの具体的成果をつくることに必死になるものと思われ、いっそうの警戒をもってこれらの動きに注視する必要があります。
【マスコミ報道から】
進むか改憲議論 与党は条文起草委の設置目指す 緊急事態条項軸に議論へ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1384750/
与党、9条改正議論を再開 現行法制への影響整理
https://www.47news.jp/15080637.html
2026年10月22日(木)第222回国会(臨時会)
第1回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56464
※「はじめから再生」をクリックしてください
【マスコミ報道から】
衆議院憲法審査会 ヨーロッパ訪問受けて与野党が討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261022de63454
衆院憲法審査会が再開 「意見集約に向け議論を」 古屋会長が呼びかけ
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000542112.html
改憲に与野党温度差、「めど」見通せず 今国会初の衆院憲法審
https://mainichi.jp/articles/20261022/k00/00m/010/207000c
改憲の緊急事態条項、維新が早期条文化を主張 欧州を引き合いに討議
https://www.asahi.com/articles/ASVBQ32FCVBQUTFK00TM.html
自民「今こそ改憲」、公明「内容と効果を慎重に検討」 今国会初の衆院憲法審、起草委焦点
https://www.sankei.com/article/20261022-IC4KQ7WSKRPW7G37WULV32B4IQ/
【傍聴者の感想】
衆議院では予算委員会の審議中は他の委員会はあまり動かさないという慣例があり、その流れで憲法審査会も開かないという不文律があるといわれますが、あくまでも慣例であって各会派が合意すれば開けるという柔軟な運用がされているようです。
10月5日に開会した第222回臨時国会は、簗前農水相の地元での「予算カット発言問題」で冒頭から紛糾し、憲法審査会の開会ももう少し先になるかと高をくくっていたのですが、前々日に「開かれそうだ」の一報が入り、急遽日程を調整して傍聴に駆けつけました。
この日の憲法審査会は9月2日から13日までの日程で、スイス連邦、ハンガリー及びイタリア共和国の憲法や国民投票制度について調査した調査議員団の報告と、報告に対する質疑でした。調査のポイントとしたのは、①国防、安全保障、②緊急事態条項、③国民投票の3項目を軸として、調査に訪れた3か国は何度も憲法改正が行われていることから対象としたとの説明でした。
視察に参加した自民党の新藤議員は、緊急事態時の議員任期延長についてハンガリーの例を挙げ、「国民による民主的統制を絶やさないための非常手段で、議員の地位を守るためではない」と説明しつつ、議論を深める必要性を強調しました。日本維新の会の馬場議員は、議員任期の延長について憲法に明文規定のないスイスの状況と比較して、「わが国の議論は大きく進み、議論は出尽くしている」と述べ、5月に衆院事務局が示した「条文素案」を基に、条文作成作業に速やかに入るよう主張するなど、調査報告というよりもこれまでの自身の主張を繰り返しました。
これに対し、民主改革の会の西村議員は、緊急事態への対応について「国民生活、経済、外交など課題は山積している。憲法改正が最優先の課題とは思えない。憲法改正までして行うべきなのか、説得力のある説明をいただけていない」と指摘して、「権力を持つ側が憲法改正を積極的に提案してくる場合、正当性や必要性を厳しく判断することは当然のことだ」と主張しました。
紙幅の都合で調査の報告内容や質疑のすべてを紹介できませんが、憲法にはその国の歴史、政治体制の変化、戦争や革命の経験、社会が大切にしてきた価値観が強く反映されることが海外調査で明らかになることを感じました。
すべての国に通底している近代憲法の精神は、憲法で国家権力をしばり、自由や権利を守る考え方が土台となっていることです。憲法議論は、日々の政局対応や感情的な応酬から距離を置き、落ち着いた環境で合意点と対立点を整理しながら進めるべきです。「議論は出尽くした」と声高に主張する馬場議員の姿勢には眉をしかめるばかりです。
今臨時国会でも、財源が明らかになっていない飲食料品の消費税減税や民意の切り捨てになりかねない議員定数削減など、市民生活に直結し民主主義のあり方を脅かしかねない重要な課題が山積しています。慣例による不文律の申し合わせなのかもしれませんが、改憲ありきの拙速な審査会の開催には最大限の注意を要します。
【国会議員から】西村智奈美さん(民主改革の会・衆議院議員/憲法審査会委員)
最近の憲法議論について、私の基本的な考え方を改めて申し上げながら、調査報告に関して意見を述べます。
現在、憲法「改正」が最優先の課題と私には思えません。逆に「国旗損壊罪」のように、憲法違反の疑念が各方面から示されている法律が、多数の力で成立していることに強い危機感を感じます。国民生活、経済、外交など、憲法改正以外に課題は山積しています。こうした中、例えば緊急事態の対応についても、参議院選挙の合区解消についても、憲法改正以外に方法がないのか。憲法改正までして行うべきなのかについて、説得力ある説明をいただけていません。
権力者が勝手な政治を行わないよう憲法によって国家権力を制限し、国民の自由や人権を守るべきだと考えるのが立憲主義です。憲法改正を権力を持つ側である政府や与党が積極的に提案してくる場合、その理由の正当性、必要性を厳しく判断することは当然だと考えます。こうした私の立場から、改憲の旗を振る高市総理大臣の最近の発言には強い違和感があります。
9月24日、総理は日本会議の会合へのメッセージで、「憲法は時代の要請に合わせて、本来定期的な更新が図られるべきだ」と述べています。改正の中身に触れず、定期的な更新などと述べるのは、憲法をソフトウェアのアップデートか何かと同列に考えているかのような表現で、適当とは思いません。また先週16日の参議院予算委員会での辻元清美議員との質疑で、「憲法はあくまで国家権力を制限するもの」とする辻元議員に対し、総理は例えば「現行日本国憲法の前文にも、当時日本が目指そうとした理想の姿が書かれています」と、現行憲法前文に理想について書かれていることを引き合いに出し、国家権力の制限のみでなく、国家の理想についても書き込むことに強いこだわりを示しました。こうした総理のこだわりにも私は強い違和感を持ちます。さらに、この総理答弁、非常に問題です。日本国憲法前文について「当時日本が目指そうとした理想」と、勝手に過去形にされているのですが、全部の理念は現在でも日本が目指すべき理想なのではないでしょうか。いつから過去の理想になったのでしょうか。こうして現行憲法の理念を補足にねじ曲げる答弁に強い憤りを感じます。
本日、本審査会の海外調査の報告をお聞きしました。やはり海外調査には意義があると感じる重要な指摘を複数お聞きすることができました。団長報告のハンガリーについての部分が特に重要だと感じましたので繰り返し読み上げます。「2010年選挙で3分の2超の議席を獲得したオルバン政権による2011年基本法の制定と、その後の「時に権力維持のため」との評価もある15次にわたる改正等憲法改正が、時の権力の維持に恣意的に利用された様子が述べられ、このように頻繁な改正を重ねているためか、ハンガリーの要人からは一様に、制定後80年にわたり改正を経ることなく、現在に至っている日本国憲法の安定性に対して羨望の念が示されました」と、わが国にとって大変名誉なコメントもいただいたようです。これらを受けた古谷団長の所見でも、「国家の姿が定まらない中で、憲法もその波に翻弄されるように17次にわたる改正を繰り返し、制度的、国家的な安定を欠いてきた歩みは、憲法改正のあり方を考える上で極めて示唆に富むと感じたところです」と、大変意義深い学びを得られたようです。私も強く共感いたします。
海外調査データ、これらの学び、所見を今後の審査会の運営にしっかり生かしていただくことを強く希望して、私の発言といたします。
(憲法審査会での発言から)
「いのちを見つめ 平和をつなぐ、憲法理念の実現を求める全国署名」にご協力ください!
一人ひとりの人権が尊重され、立憲主義に基づく市民が主役となる社会、すべての国の人々がお互いを尊重し合い、戦争を放棄する国際社会の実現のために、「いのちを見つめ 平和をつなぐ、憲法理念の実現を求める全国署名」に参加して声を上げましょう。

