憲法審査会 | 平和フォーラム

2026年04月10日

憲法審査会レポートNo.67

衆院憲法審で今国会初の自由討議

4月9日、今国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました。1回目は(今国会開会直後の)2月20日に開催され、会長と幹事の互選の手続きのみ行われたものですので、今回が2026年に入ってから初めての、実質的な憲法審査会の開催と言えます。

1月23日の通常国会冒頭解散、そして2月8日投開票の総選挙を経て、衆議院の構成が大きく変化しています。衆院憲法審査会の会長は枝野幸男・前衆院議員(立憲民主党)から、古屋圭司・衆院議員(自民党)へと移りました。

古屋新会長は過去に自民党憲法改正実現本部長を務め、高市首相の意を体する人物とみられています。この間のマスコミ各社のインタビューに対しても、改憲の機運が熟しているなどと述べ、改憲項目の意見集約をすすめたい意向を示しています。また、「条文起草委員会」設置にも前向きです。

今後、7月17日の国会会期末まで、この衆院憲法審査会がどのように動いていくのか、しっかりと注視していかなくてはなりません。いっぽう、参院憲法審査会は長浜博行会長(立憲民主党)以下、基本的には昨年同様の構成ですから、安易な改憲論議へとは進まないとは思われますが、こちらの動向もしっかりと見定めていく必要があります。

【参考】

衆院憲法審の討議、4月始動へ 改正項目「集約の時期来ている」
https://www.47news.jp/14062970.html

2026年4月10日(木)第221回国会(特別会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56150
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 今国会で初めての討議 各党が意見述べる
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015095661000

憲法改正、与党が加速狙う 「緊急事態」照準、中道は慎重論
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026040901093&g=pol

衆院憲法審会長、現状は「立法府の不作為」 早期改憲発議に意欲
https://mainichi.jp/articles/20260409/k00/00m/010/275000c

衆院選後初の憲法審論議 自民、改正条文起草検討を 中道「必要なら真摯に」
https://www.sankei.com/article/20260409-233LYFZ5GVKYJIULBBJLGJ5BHM/

憲法審査会 今国会で初討論、ホルムズ海峡派遣で「憲法9条」が再注目、星浩さん「2つの心配」【Nスタ解説】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2590269

【傍聴者の感想】

実質的な審議としては今国会では初回で、自由討議ということで各会派が基本的なスタンスを述べました。

自民党は従来の改憲4項目の推進と国民投票法の整理(改正公選法との平仄合わせ、および広報協議会のあり方)について発言し、中道改革は改憲そのものを目的とした議論には与しないが、新たな課題には目を背けず、必要と認められれば真摯に検討し、拙速な議論は避けつつも定例開催に賛成する旨を発言しました。中道はその上で今後取り組むべきテーマとして、①自衛隊の憲法上の位置づけ、②臨時国会の召集期限、③首相の解散権、④デジタル社会と人権、⑤国民投票法などを課題としてあげました。

以下、日本維新の会、国民民主は、これまでで論点は整理されていると主張、条文起草委員会設置に進まないことへの批判という従来の主張を展開し、参政党は憲法を一から作り直す、チームみらいは手続法の課題と本体改正議論は切り分けて考えるべきという意見を述べ、最後に共産党が審査会は開催すべきでない旨を主張しました。

改憲勢力が圧倒的多数ではありますが、9条および自衛隊の取り扱いについては各会派まちまちで、傍目には一致した条文の取りまとめは難しく思えます。その上で自民党が単独でも多数を占める状況なので、改憲推進他会派の合意を得られなくても自民党案を押し通すことまでするのか、何らかの他会派との調整が図られるのか、あるいは9条改憲で無理をすることを避けるのか、注視が必要だと思います。その上で緊急事態条項、とりわけ選挙困難時の議員任期延長は相対的に一致度が高く、改憲発議の具体化に進む危険性は高いと言えます。

しかし「自然災害など緊急事態だからしょうがない」という一見通りやすそうな理屈の裏には、戦争という緊急事態と、その時に国民の政治参加を制限するという重大な問題が含まれていることを見逃してはいけません。緊急時こそ国民の判断を求める制度をしっかり作るということが主権在民の意味です。

立憲野党は少数ですが、稚拙、拙速、欺瞞的な議論にはそのつど的確に反論していくために今後も審査会ウォッチを継続していきます。

2025年12月17日

憲法審査会レポートNo.66

臨時国会が閉会、改憲機運高まらず

12月17日、今臨時国会の会期末を迎えました。同日、衆参ともに憲法審査会を短時間だけ開催し、閉会にあたっての手続き処理(付託された請願(署名)の取り扱い審査など)を行い、終了しています。

高市政権成立にあたっての自民・維新の「連立合意」に盛り込まれた両党による「条文起草協議会」は発足したものの、両党の主張が噛み合っていない状況があります。衆参憲法審査会の下への「条文起草委員会」設置に関しては、幹事懇談会での提案や自由討議での発言にとどまり、正式な議題にもなっていません。

自民・維新などの改憲政党・会派がこの間手を変え品を変え、さまざまな策動を続けてきましたが、世論はいたって冷静です。しかし、保守層を繋ぎとめるために、来年以降も「改憲実現」を旗印としていくことが予想され、引き続きの警戒・注視が必要です。

【参考】

自維政権下の憲法論議 改正急ぐ理由見当たらぬ
https://mainichi.jp/articles/20251216/ddm/005/070/076000c

2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56067
※「はじめから再生」をクリックしてください

2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8824

2025年12月05日

憲法審査会レポートNo.65

12月4日、衆院憲法審査会では自由討議が行われ、自民・維新は憲法審査会の下に「条文起草委員会」を設置することを主張しましたが、立憲・れいわ・共産は反対を表明、与野党で設置の合意が得られる状況にはありません。

12月17日が今臨時国会の会期末です。補正予算審議などもあることから、衆参ともに憲法審査会の実質的な開催機会も少ないものとみられ、今国会ではこれ以上の大きな動きはないものと思われます。

2025年12月4日(木)第219回国会(臨時会)
第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56022

【マスコミ報道から】

衆院憲法審 憲法改正 条文案起草の小委員会設置めぐり意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014993781000

自民、起草委設置へ理解求める 立民は否定的―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025120400120&g=pol

遠い憲法審の「起草委」設置 自民「合意を得られる状況ではない」
https://digital.asahi.com/articles/ASTD42SLCTD4UTFK00NM.html

「安全」巡る認識の違い表面化 衆院憲法審査会 緊急事態条項新設に立民は反対姿勢堅持
https://www.sankei.com/article/20251204-E4FL6I7SVVOEJASJIWSYEZYZ4M/

【速報】同性婚容認へ改憲提起 自民党の中谷氏「不利益解消」
https://www.47news.jp/13548764.html

憲法審査会 条文案作りに着手する段階だ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20251205-GYT1T00052/

【傍聴者の感想】

きょうは自由討議の形で、各党の委員が発言時間いっぱい持論を展開しました。

いわゆる「お気持ち表明」なのではないかと感じるような、それぞれが一方的に話しているような印象を覚えました。

また、「いつまでも同じことを繰り返していてはだめだ」「議論は尽くされた」と改憲ありきで発言する議員もいますが、憲法は国のあり方を示し、権力を「法の支配」で縛る国の最高法規です。落ち着いた環境で冷静な議論が必要ですし、少数会派の意見を封じてはいけません。

何よりも私たち市民は憲法を変えるべきだとは思っていません。それよりも物価高対策や社会保障の充実など生活に密接に関わる課題の解決に尽力してほしいものです。

傍聴券を手配していただいた議員の秘書の方から「今日は傍聴に小学生も参加する」と聞いていましたが、きっと小学生は憲法審査会を傍聴して「ぽかーん」としたと思います。発言内容が難しいというよりも、一方的に主張し、話がかみ合わない様子は、「会議」のイメージとかけ離れているからです。

そもそも、憲法で世の中を、世界を良くしたいという発想からの改憲議論ではなく、世界情勢が危険だから憲法を変えないといけないという発想自体が、ナンセンスで本末転倒です。どうしたら世界が良くなるか、そのために努力しましょうと憲法前文にも書かれています。
改憲ありきの委員の姿勢や発言は、努力すべき方法や方向を誤っているように見受けられました。

【国会議員から】山花郁夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

いうまでもなく憲法改正のためには、衆参両院の2/3以上の賛成が必要です。

近年与党だけで2/3を占めるということがありましたが、戦後80年間の歴史をみると、これは歴史的には稀有な事態といえます。一般的には野党第一党が賛成していなければ両院での2/3の合意形成は難しいといえます。法律と違って、憲法というのは、どんな考え方の内閣であっても、どの政党が政権を担っても、そのルールの下に政治を行うという、いわば与野党に共通のルールだけに、2/3要件というのは、与野党一致で共通認識が形成されることが求められているものといえます。

国民投票法を制定するに際しては、このような事情を意識しながら立案したものでした。すなわち、将来的に憲法の改正が発議されることがあるとすれば、与党・野党の垣根なく共通認識を形成して、成案を作成していくというプロセスが重要になるということを認識し、その手続法である憲法改正国民投票法も同様に、与野党で真摯な議論を行って共通認識を形成し、成案を得ていこうという努力がなされました。衆議院憲法審査特別委員会において、最終的には不本意な形での採決となりましたが、ギリギリまでその努力がなされたもので、船田会長代理はその当事者でもあられます。

国民投票法成立当時から、国民投票の賛否の勧誘にかかわるCM規制について議論がありました。私たちとしては、民放連が制定当時と異なる答弁が後になされたことから、問題意識を持っていたところです。

制定から時がたち、テレビ・ラジオはオールドメディアとよばれるようになり、テレビ・ラジオよりもSNSのほうが社会的影響力は大きくなっており、偽・誤情報対策については当審査会でも議論してきました。さらに、諸外国において選挙の際の外国からの干渉などの問題も、当審査会でも先日、衆議院の海外調査(枝野団長)において、報告を受けたところです。

広報協議会については幹事懇談会で議論が進んでいますが、国民投票法についてはその他にも議論すべき論点があると考えています。この点については、前回改正時に附則4条に盛り込まれているテーマもあります。附則4条には、「法律の施行後3年を目途に、……」「検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」ことになっているところ、すでに3年以上を経過しており、立憲民主党としては今後の審査会でも附則に規定されたことについて重点的に議論がなされるべきと考えます。

前回改正の時には、私と新藤筆頭との間で相当な時間をかけて折衝を行いました。当時も公選法並びの改正という比較的技術的な内容の改正の提案がなされていました。CM規制等の問題も同じ国民投票法の改正案であることから、採決を行うのであれば立憲民主党の問題意識を盛り込めるものは改正法に編入してほしいという当方の立場との乖離を埋めることに相当なエネルギーを費やしたことが思い出されます。最終的には附則に落とし込むことにより、双方の合意を形成することができました。対立した形での採決とならなかったことについては当時の新藤筆頭幹事にも敬意を表したいと思います。

ただ、その後に附則で規定した事項についての議論が加速化することはなかったというのは残念に思います。

国民投票法は手続について定めるものですが、どの党の案がベースになったものだという色がついてしまうと、「改憲派に有利なルールだ」とか、「護憲派に有利なルールだ」というレッテルを張られ、手続の正当性に疑義が生じるおそれがあります。その意味で、現在も立憲民主党として法案の形で党内的には整理しているところですが、これを対案的に提出しようというのではなく、論点についての考え方を提起しつつ、各党各会派にご理解をいただいてコンセンサスを作っていきたいと考えています。

将来的に多くの与野党のコンセンサスが形成されて「憲法改正が発議された」という事態を想定し、国民投票での過半数を視野に入れると、どの党の案がベースになったという色がつかないことが大事だと思います。

かつて、中山太郎憲法調査会長(当時)と、ルクセンブルクに国民投票の視察に行ったことがあります。EU憲法批准の可否に関する国民投票でした。議会では圧倒的多数が賛成していたにもかかわらず、国民投票の結果は僅差のものでした。政党色や内閣に対する審判のような色がつくと、思わぬ結果となることを中山先生と語り合ったことが思い出されます。

こうした事例などの教訓として、国民投票での過半数を視野に入れると、発議される憲法改正案はどこの党の主張であったというようなことが希釈されていることが必要で、起草委員会というアイデアはこのような文脈で語られてきたはずです。

現状はそのアイデアになじむ状態ではないというだけでなく、憲法改正の「わが党案」のようなものを主張されている党があるとすれば、これまでの憲法調査会以来の知見をふまえたものとはいえず、国民投票での過半数獲得の阻害要因となることは指摘しておきたいと思います。

なお、議員任期延長に関連して、総選挙を全面的に停止しなければならない立法事実を確認できない旨申し上げてまいりました。

少し角度を変えて説明したいと思います。

公立中学校で「男子生徒の髪型は丸刈りでなければならない」という校則があったとします。法の下の平等という観点からすると、この校則を違憲・無効なものであるとして、男子学生の髪型についての規制をなくす、というのが適切な是正策と考えられます。

これに対して、「女子生徒の髪型も丸刈りでなければならない」という校則を新たに作成して、男子学生・女子学生間の平等を解消するような方策をとるべきでないことは言うまでもありません。人権を侵害する方法で平等を実現することは「不正義を倍増」することにほかならないからです。

そこで、大規模災害の場合です。東日本大震災のようなケースでも、8割強の地域は選挙の執行が可能でした。1割強の地域で選挙の執行が困難であることを理由として衆議院選挙を全面的に不能だと論じることは、比率において上回る地域の選挙権行使の機会を停止することにより「平等」を確保しようとするもので、女子学生を丸刈りにするのと同じように投票の権利を侵害・制限する方法で平等を実現する方策といえます。繰延投票等の方法を活用することが適切な解決方法だということを改めて申し上げて発言といたします。

(憲法審査会での発言から)

2025年11月28日

憲法審査会レポートNo.64

11月26日、今臨時国会はじめての参院憲法審査会が開催されました。このなかで日本維新の会が憲法審査会の下に条文起草委員会を設置する提案をし、これに国民民主党から賛意が表明されたものの、自民党は積極的な反応を示しませんでした。

いっぽう、27日に行われた衆院憲法審査会幹事懇談会では、船田元・与党筆頭幹事が憲法審査会への条文起草委員会設置を提案、維新が同調、立憲・共産・れいわが反対しました。

これら「憲法審査会への条文起草委員会設置」の提案は自民・維新の「連立合意」に基づくものですが、自民党の衆参での対応には温度差がすでに表れています。

また、自民・維新両党による「条文起草協議会」の場においても、改憲に前のめりの維新の姿勢が際立ってきています。

【参考】

自民、条文起草委を提起 衆院憲法審査会、立民は反対
https://www.47news.jp/13514189.html

自民、条文起草委を提案 衆院憲法審、立民「時期尚早」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025112700573&g=pol

維新、憲法9条2項削除・国防軍を説明 自民「いきなりそこまでは」
https://digital.asahi.com/articles/ASTCW3J38TCWUTFK009M.html

2025年11月26日(水)第219回国会(臨時会)
第1回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8753

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 今国会で初の討議 憲法の考え方で意見交わす
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014986851000

維新、条文起草委を提案 参院憲法審、野党は反発
https://news.jp/i/1366324694204269207

条文起草委設置で足並みそろわぬ与党 今国会初の参院憲法審、「周回遅れ」挽回なるか
https://www.sankei.com/article/20251126-CECNUXJY4JIGHDPPWQPKIJWVLY/

臨時国会での改憲論議、自民なぜ抑え気味 初の参院憲法審査会から
https://digital.asahi.com/articles/ASTCV323DTCVUTFK00KM.html

【傍聴者の感想】

高市政権発足後、初の参議院憲法審査会が開催されました。今夏の参院選を経て会派の構成や委員も変わりました。初開催だからということか、各会派代表が「憲法に対する考え方」を表明し、その後委員の自由な発言を時間終了まで行いました。

各会派の発言は概ねこれまでの主張を繰り返したもので、特に新しい課題提起はなかったように思います。参議院の緊急集会を積極的に活用する方向性は各会派共通するなど、衆院との違いも従来の論調が継続していると思いました。自民と維新の連立合意に触れた発言がいくつもあったのが、今までとの違いでしょうか。

初めて参加した参政党の発言が注目されましたが、「憲法は一から作り直す創憲」「憲法は権力を縛るものではなく、国のあり方を示すもの」「今の憲法には伝統的な文化や価値が記載されていない」「日本は古来から憲法を自主的に作ってきた(聖徳太子など?)のであって自分たちで作ることが大事」など、この間にマスコミなどでも報道されていた主張でした。

委員の自由討議でも参政党の委員の発言がありましたが、「子どもの権利を守らなければならない。長時間保育は子供の情緒をゆがめている。そのために3歳までは家庭で育てることを定めるべき。憲法で、『子供は国の宝』と明記すべき」との主張を展開。批判の仕方は幾通りも思いつきますが、問題はこのような発言が現代の国会において堂々となされることを可能にしている私たちの社会のあり様でしょう。私たちの日常において、分断と対立は乗り越えつつ、批判すべきことはきちんと批判するということが、今まで以上に大切なってくるのだと感じました。

【国会議員から】吉田忠智さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

1.戦後80年と日本国憲法の真価

今年は戦後80年ですが、かつての全体主義と軍国主義がもたらした世界史にも例のない甚大な戦争の惨禍の反省に基づき制定され、今日までの我が国の発展の礎となった日本国憲法の真価をしっかりと正当に評価しなければならないと考えます。

日本国憲法は、世界唯一の平和主義を掲げ、世界屈指の人権法典にして優れた民主制度を定めたものであり、私ども会派はこの日本国憲法を守り活かしていくための議論、すなわち、良識の府にふさわしい、法の支配と立憲主義、そして、憲法の基本原理に基づく憲法論議をこの審査会で求めて参ります。

2.憲法審で議論すべき事項

さて、本日は、今後の本審査会において議論すべき三つの事項について指摘したいと思います。

(1)緊急集会
一つは、参議院の緊急集会に関する議論です。参院憲法審では、2023年常会で緊急集会の制度、24年常会で災害時等の緊急集会の運用について大変充実した議論を行ってきました。今後は、緊急集会のあるべき機能強化などに関する論点を更に議論し、具体的な制度改善に結びつける必要があります。

特に、本年の常会で自民党の中西筆頭幹事が指摘されたように、参議院の「都道府県選挙区の合区」が緊急集会の制度趣旨に合致するものか検討が必要と考えます。この点、昨年6月の選挙制度専門委員会の報告書において、二院制における参議院の機能・役割として、災害対応について「緊急集会の機能の充実強化」が明記され、その答申を受けた参議院改革協議会報告が本年6月に纏められております。

今後は、改革協議会と本審査会との連携が極めて重要であり、まずは、この間の経緯等を聴取し、憲法問題を担当する憲法審査会の責任を果たしていく必要があると考えます。

なお、緊急集会を巡っては、任期延長改憲の根拠として、「総選挙の実施が可能な平時の制度であり、開催期限は70日間限定であり、二院制の例外制度としてその権能は大きく制約される」といった主張が衆院憲法審で任期延長改憲を主張する方々によってなされてきました。
ところが、参院憲法審では、自民、公明、そしてご勇退された大塚耕平先生などが会派代表意見において、衆議院の任期延長改憲を主張する方々とは異なる緊急集会に関する正しい見解を述べられてきました。昨年8月の自民党の党見解のWG報告にはそうした良識の府の見識が具体的に示され、かつ、本年の常会でも佐藤筆頭幹事を先頭に任期延長改憲を主張する方々の見解に汲みしない緊急集会の正しい主張がなされたことに敬意を表する次第です。

特に、佐藤筆頭幹事の質問による川崎参院法制局長の答弁によって、予算や条約などの衆議院の優越事項も緊急集会の議案となることが明確に確認されたことは非常に重要です。

こうした、参院憲法審の論戦にもかかわらず、衆院憲法審では先の常会の会期末に緊急集会の誤った見解に基づく任期延長改憲の骨子案の議論が行われたことは誠に遺憾です。

ただ、その中で、「70日間は緊急集会の活動期間を厳格に限定するものではない」という見解が初めて示されています。この点、任期延長改憲の「選挙困難事態」の定義には70日間限定説に基づく「70日を超えて」という「長期性の要件」があり、この改憲骨子案の見解は、任期延長改憲の論拠の根幹の崩壊を意味するものと考えます。

先の自民・維新の連立合意には、任期延長の改憲条文の来年の常会提出等が記されています。緊急集会を巡る見解が衆参で深刻に分裂し、任期延長改憲を主張する方々の見解の正当性そのものが崩壊する中で、衆院での改憲条文の提出など断じて許されません。ましてや、そのための、衆参憲法審査会での条文起草委員会の設置など断じて許されようがないことを明確に指摘いたします。

(2)国会法102条の6に基づく憲法違反問題の調査審議
次に、国会法102条6が定める憲法審査会の法的な任務である憲法違反問題などの調査審議の実行も極めて重要であります。
先に、高市総理による存立危機事態条項の台湾海峡有事での適用答弁が日中の国際問題に至っていますが、そもそも、安倍政権の集団的自衛権行使は昭和47年政府見解の「外国の武力攻撃」という文言の曲解等によってなされた憲法違反であることが、2015年の安保国会では濱田邦夫元最高裁判事や宮﨑礼壹元内閣法制局長官らによって陳述されています。

また、それが故に、武力行使の新三要件が歯止めのない・無限定なものであることも国会質疑で論証されていますが、日本による米国のための集団的自衛権行使を法的に免責した日米安保条約3条など日米同盟との関係も含め、国家による戦争行為の発動である存立危機事態条項の憲法問題について、本審査会で冷静にしっかりと調査審議を行う必要があります。

なお、我が会派は自民・維新の連立合意にある、あらゆる武力行使を可能にしてしまう憲法9条そのものの改憲には明確に反対をいたします。

合わせて、多くの高裁で違憲判決が出ている同性婚禁止、あるいは、選択的夫婦別姓、さらには、臨時国会の召集義務違反など、国民の人権や民主主義の在り方に直結する重要な憲法問題もしっかりと審議する必要があります。

(3)国民投票法
更には、国民投票法について、附則4条が求めているテレビやネットのCM規制、ネット上のフェイク情報の対処などについて、引き続き議論を深めていく必要があります。

特に、インターネットについては、いわゆるフィルターバブル・システムや、再生回数稼ぎのビジネスモデルなど、「ネット社会の民主主義の在り方」という根本的な視座に立った検証が必要と考えます。

3.最後に

以上、良識の府にふさわしい、立憲主義に基づく憲法論議を求めて私の意見といたします。

(憲法審査会での発言から)

2025年11月21日

憲法審査会レポートNo.63

11月20日、今臨時国会2回目となる衆院憲法審査会が開催され、イギリス・ドイツ・EU本部の国民投票制度の調査団派遣(9月)の報告があり、偽情報対策などについて討議しました。なお、来週27日の幹事懇談会には船田元・与党筆頭幹事が、自民・維新の「連立合意」に基づき、憲法審査会への条文起草委員会設置を提案する可能性があります。

参院については幹事懇談会が19日に行われ、26日に今国会初の参院憲法審査会開催で合意しています。

【参考】

衆院憲法審、20日開催へ 偽情報対策の海外事例を報告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA132Z30T11C25A1000000/

参院憲法審、26日に初開催
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025111900475&g=pol

2025年11月20日(木) 第219回国会(臨時会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55984
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審 国民投票時の偽情報対策に規制の導入検討すべき
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014981811000

自・立、事業者規制の強化主張 衆院憲法審、偽情報対策巡り討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025112000129&g=pol

与野党、偽情報巡り議論 衆院憲法審、高市政権で初
https://www.47news.jp/13480892.html
※タイトルには「高市政権で初」とありますが、本文にあるように「初の討議」です(開催自体は2回目)。

高市政権で初の衆院憲法審、与野党が偽情報やフェイクニュース対策めぐり議論
https://www.sankei.com/article/20251120-JVPLLFSR2BKORPQGR6HZKBJ4QY/

【傍聴者の感想】

衆議院憲法審査会が11月20日に開催され、会長は枝野幸男さん(立民)から武正公一さん(立民)になったほか、委員の顔ぶれも若干変わる新たな体制で始まりました。

さて、今回の審査会ではイギリス、EU及びドイツの憲法及び国民投票制度について、現地に赴いた調査報告にたいする各委員から質問や意見を述べ合う自由討議が行われました。

調査を行った議員団は3名で、調査団長の枝野さんが、調査の主たるテーマである「国民投票における偽情報対策及び外国勢力による介入への対応、政治広告規制」について各国の状況を報告し、会長代理の船田元さん(自民)と武正さんが補足の報告を行いました。

偽情報やSNSの拡散情報、政治広告による投票行動への影響、またそれらを規制することと表現の自由のバランスをどのように取りうるか、各委員の質問や意見が集中していましたが、一方で、行政側が一方的に新聞社をフェイク報道呼ばわりした事例や、特定野党を誹謗中傷したことで問題となったSNSアカウント「Dappi」と自民党との関係に触れたうえで、国民投票広報協議会がきちんと自浄作用を含めて機能させることができるのかと疑問を呈する意見が出ていました。それはその通りで、いくらSNS規制と表現の自由のバランスをとったすばらしい制度設計ができたとしても、肝心かなめの広報協議会が偏重したりフェイクしたりしては、お話にならないのでもっともなことでしょう。

その他一部委員からは憲法改正を前提とした議論はするなとの意見もありました。この間の永田町政治の状況を見ていると、どうも憲法の枠内で政治の運営を行うという立憲主義が十分に機能していないきらいがあるようです。「憲法について広範かつ総合的に調査を行う」ことも大切なのでしょうが、こうした政治状況の調査・分析も憲法審査会でされてはいかがかと思いました。

2025年11月14日

憲法審査会レポートNo.62

自・維、改憲に向けて動き強める

自民党と日本維新の会は13日、「連立合意」に基づいて改憲条文起草協議会を開催しました。まずは両党レベルで緊急事態条項や憲法9条の改憲条文案作成をめざすとともに、衆参憲法審査会への「条文起草委員会」設置提案を行うなどするもようです。

高市首相は4日の衆院本会議の代表質問で、内閣が国会に改憲案を提出することが可能との見解を示すも、12日の参院予算委員会では「高市内閣から提出することは考えていない」と述べています。

なお、13日に行われた衆院憲法審査会幹事懇談会で、20日に審査会を開催することが合意されています。

【マスコミ報道から】

自民と維新、9条改正へ議論開始 連立合意通りの進展見通せず
https://www.47news.jp/13450303.html

衆院憲法審20日に開催へ 与野党で合意 高市政権下で初の実質討議
https://www.sankei.com/article/20251113-H6YPH2AODJO3VLLGRE3LELIVMI/

「内閣も改憲案提出可能」高市首相が断言した政治的な理由とは… 持論が口に出てしまい危うさは加速する
https://www.tokyo-np.co.jp/article/449090

2025年10月24日

憲法審査会レポートNo.61

高市政権成立、改憲発議に意欲示す

10月21日、高市早苗・衆議院議員が首相に就任しました。今回公明党が政権から離脱、そのかわりに日本維新の会から「連立」と称する閣外協力を取り付けましたが、その際交わした「連立政権合意書」には憲法9条改正と緊急事態条項創設に向けた両党による条文起草協議会設置、「国旗損壊罪」や「スパイ防止法」制定などの項目が含まれています。

同日、衆議院憲法審査会が開催され、枝野幸男会長が辞任(予算委員会委員長に就任)、このかん野党筆頭理事を務めてきた武正公一・衆議院議員があらたに会長に就任しました。

高市首相はもとより「憲法改正」「非核三原則見直し」などを主張してきた極右傾向の濃い人物です。今後の改憲をめぐる動向に対しては、強い警戒と注視が必要です。

【マスコミ報道から】

自維 連立政権合意書 要旨=2025年10月24日更新=
https://www.jiji.com/jc/v8?id=20251021jiirenritu
“▽日本維新の会の提言「21世紀の国防構想と憲法改正」を踏まえ、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。設置時期は、25年臨時国会中とする。”
“▽緊急事態条項(国会機能維持および緊急政令)について憲法改正を実現すべく、25年臨時国会中に両党の条文起草協議会を設置し、26年度中に条文案の国会提出を目指す。”

2025年10月21日(火)第219回国会(臨時会)
第1回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55952

【会議の内容】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/219-10-21.htm

2025年06月20日

憲法審査会レポートNo.60

6月18日の参議院憲法審査会は、国民投票法等についての意見交換が行われました。しかし、確認できる限りではいっさいニュース記事の配信がありません。国会会期末が迫り、また同日戦後初の「衆院財務金融委員長解任」があったとは言え、これは驚きです。改憲に向けた「機運」が相当後退していることの表れでしょうか。

19日には衆院憲法審査会幹事懇談会のみ開催されました。

なお、20日は衆参ともに憲法審査会が行われますが、これは閉会にあたっての手続きのためで、それぞれ数分で終了します。

【追記】20日の参議院憲法審査会開催はとりやめになりました。

2025年6月18日(水)第217回国会(常会)
第6回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8629

【主な発言項目】

https://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/keika/hatsugen_217.html#d6_hatsugen

2025年06月13日

憲法審査会レポート No.59

6月12日、衆院憲法審査会に先立って行われた幹事会に対し、改憲推進5会派が任期延長に関する改憲骨子案を提出しました。ただし、憲法審査会への提出ではないため、骨子案の内容は議事録に残りません。

2025年6月12日(木) 第217回国会(常会)
第9回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55864
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

自民など5党派が改憲骨子案 議員任期延長で―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025061200889&g=pol

災害やテロなどなどの緊急時に国会議員の任期延長、改憲骨子案を初提示…自民など5党派
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250612/k10014833321000.html

“選挙困難な緊急時は議員任期を延長” 自民など改憲骨子案
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250612/k10014833321000.html

改憲5党派、議員任期延長の改憲骨子案提示 憲法審では取り上げず
https://digital.asahi.com/articles/AST6D3Q05T6DUTFK009M.html

5党派が「議員任期延長」の改憲骨子案提示 自民内の「溝」が懸念材料 衆院憲法審幹事会
https://www.sankei.com/article/20250612-OPK6FA7GCZIVHMCZ6T2X7AVTKQ/

【傍聴者の感想】

今回は各会派の代表から今国会中の審査会の討論について総括を受け、自由討論が行われました。事前の幹事会では自民、維新、公明、国民、有志の会の5会派から改憲案の骨子が提出されたものの、自民党の総務会を経ていないなど自民党内で手続きが採られていないものとのことで、審査会に出席した議員や傍聴には配布はされませんでした。

討論では、あらためて「選挙困難事態」をめぐって意見が交わされました。自由民主党などが改憲の理由として示す「選挙困難事態」に対して、立憲民主党から「立法事実にあたらない」、日本共産党から「議員の任期延長は国民の選挙権の停止につながる」といった反論がありました。

日本維新の会からは「国民主権を具現化し、主権者である国民に判断を仰ぐためにも、国民投票の実施を」、国民民主党からは「憲法審査会の具体的成果を可視化すべき」といった意見が示され、憲法改悪に向けた一歩を踏み出したいという思惑が明白に見て取れました。

物価上昇や「コメ不足」などに象徴される、人々の苦しい生活をどう改善するかはあとまわしです。彼らの政治的思考のあり方は「国家」の下に「国民」をいかに従属させるかであり、有権者である「国民」の日々の生活の向上にはないということが強く感じられました。参院選勝利に向けたとりくみを強めたいと決意しました。

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