憲法審査会 | 平和フォーラム - パート 3

2025年03月28日

憲法審査会レポート No.49

2025年3月27日(木) 第217回国会(常会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55630
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【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 大規模災害などでの国会機能維持で議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014762311000.html

緊急集会、自民「最大70日」=立民は期間限定に反対―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025032700894&g=pol

衆院憲法審、期間・権能の見解に隔たり 参院の緊急集会
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA271B40X20C25A3000000/

衆院解散後の「緊急集会」で見解割れる…自民は「例外」、立民は反論 衆院憲法審査会
https://www.sankei.com/article/20250327-YPEYK4VNZBMPZOXOLSCSSRWRVU/

【参考】

衆院憲法審査会が緊急事態条項を3月27日に採決? 採決の予定は無い【ファクトチェック】
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-emergency-clause-vote/
※右派のなかにも「緊急事態条項反対」を主張するグループがあり、そうした人びとの間で、SNSなどをつうじて「3月27日採決」との風説が流布していました。

【傍聴者の感想】

今国会2回目の衆議院憲法審査会は、枝野会長から進行の説明の後、衆議院法制局・衆議院憲法審査会事務局が提出した「『参議院の緊急集会』の射程に関する資料」の説明から始まりました。「一切の私見を挟まずに、客観的にご説明いたしました」といって法制局からの発言が終わると、場内に失笑が漏れていました。

憲法審査会の傍聴は、これまでたまたま参議院ばかりでしたので、初めての衆議院での傍聴となりました。過去の議論を見知る中で想像していたよりも盛り上がりに欠けていたというのが正直な感想です。「参議院の緊急集会」を念頭に発言が続いていましたが、「壊れたテープレコーダー」と揶揄されるように同じところを行ったり来たりしていました。その合間に言葉尻を捉えるような発言が挟まって時間が過ぎていってしまうような感じでした。

自民、立憲、維新…と各会派が順に発言していく中で、気になったのは維新の発言です。法制度設計について、これ見よがしに「大陸型」などの用語を使っていたことです。政治学の教科書にいくらでも書いてあるような言葉ですが、「もっともらしい」と感じられるということでしょうか。なんかすごい…と思わせることが、彼らのやり方なのだと再認識させられました。

実際に、日本が地震大国であることは疑いようもないことですし、自然災害に備えるということが主張されるのも理解が出来ます。でも、どうしてそれが憲法改正の話にまで及ぶのでしょうか。選挙が出来ないほどの事態を考えるのならば、なぜ原発再稼働なんて選択ができるのでしょう。やっていることと言っていることとの高低差に頭が痛くなりました。

【国会議員から】武正公一さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

前回、選挙困難事態に関する「立法事実」をテーマとしました。立憲民主党は、有権者の投票する権利の尊重並びに、選ばれる側の居座りを許さないという点から臨みました。本日のテーマ「参議院の緊急集会の射程」にも関係しますので、冒頭「選挙困難事態」に触れます。

北海道南西沖地震に際して壊滅状態の奥尻島で選挙は行われました。

東日本大震災の時に、福島県内の喜多方市議選、矢祭町長選、古殿町長選、玉川村長選、北塩原村議選、鮫川村議選では選挙が実施されました。

昨年9月の石川県豪雨災害直後、被災地石川3区も衆議院議員選挙が行われました。投票率は、輪島市で10%下がったものの、わが党の近藤和也衆議院議員など、選挙を経て復旧復興のために引き続き取り組んだことも事実です。

前回も、この場で申し上げたように、被災地の復旧復興のためにもできるだけ早く代表者を選ぶ必要があると考えます。

選挙実施が困難な場合は国政選挙でも繰り延べ投票で対応すべきと考えます。そして、国政選挙などでは「一体性」を憲法も要請はしていないこと。今仮に、東日本大震災と同じ規模の災害が衆議院議員選挙前に起きても8割以上の衆議院議員を選ぶことができることから、選挙困難時の立法事実とするのは難しいと前回立憲民主党議員より述べました。

取り組むべきは、いかに選挙困難時期にあっても選挙ができる体制を組むかです。

平時において、投票環境の整備が急務の課題です。選挙困難時を想定した「有権者名簿など選挙データのバックアップ体制」「インターネット投票」「郵便投票」の検討、拡充です。また、期日前投票所の拡充、共通投票所の実施などできることは今でもあるはずです。

特に、投票日に、指定された投票所以外にだれでも投票できる「共通投票所」は、令和6年衆院選時点で、15市、16町、6村の226ケ所の設置にとどまっています。災害時に選挙区を離れて投票所を設けるためにも、二重投票を防ぐ仕組みをもって各自治体が共通投票所を設置することは有効ではないでしょうか。

ちなみに、今、横浜市では各区内の投票所すべてを共通投票所にして、各投票所独自の有権者名簿を投票所間で共通化して無線で確認を行い二重投票を防ぐシステムづくりが進められていると聞いています。

そのうえで、憲法54条にいう緊急集会について述べます。

「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」(42条)とされていて、いわゆる二院制を採用しています。

もともと1946年2月13日に連合国最高司令官総司令部(GHQ)が日本政府に対して提示した総司令部案(マッカーサー草案)では一院制とされていました。これに対して、日本側が二院制の必要性を求め、現在の憲法の二院制になったという経緯があります。

その二院制の機能や役割分担のレベルを超えて、制度としてまったく独自のものとして存在しているのが参議院の緊急集会制度(54条)です。

これは、緊急事態に際して大日本帝国憲法時代には天皇の緊急勅令(明治憲法8条)や緊急財政処分(明治憲法70条)で対処するとされていたものを、国会中心主義の貫徹という趣旨から、参議院の緊急集会をもって対応することとしたものです。

金森国務大臣が制憲議会で「戦前の緊急政令」を認めないためにも参議院の「緊急集会」を設けたと言っています。大日本国憲法下1941年2月に法律をして1942年4月まで1年間選挙を延期したうえ、1941年12月には日米開戦に踏み切ってしまった反省にも立っていると考えます。

諸外国の憲法には緊急事態に関する規定があるのに日本国憲法にはないという趣旨の発言もあったかと思いますが、各種文献でも、この緊急集会の制度は世界に類例を見ないものと評価されていることからもわかるように、他の国々とは違う形で制度設計していることから、他の国々と同様の規定を探せば日本国憲法に規定がないというのは当然のことで、「緊急事態に際して対処すべき規定があるか」という観点から検討すれば、緊急集会の条文がこれに当たる、というのは明らかだと考えられます。先人たちはすでに「想定外」の事態の規定を設けていたというわけです。

憲法54条についてはその趣旨に基づいて参議院の緊急集会を適切に開催してゆくべきと考えます。特に、緊急集会70日限定説をとらないということを前回も申し述べています。

ところで、衆議院・参議院は相互に独立して審議・議決を行う機関ですから、他の機関や他の院の干渉を排して行動できる、いわゆる自律権を持っています(58条1項・55条)。

所掌事項という言葉が適切かどうかわかりませんが、参議院の緊急集会というのは参議院にのみ認められた独自の権能であるといえます。
したがって、参議院が「緊急集会で対応できる」と判断する可能性のある事項について、衆議院側で「緊急集会では対応できない」という判断をすべきできないのはもちろんのこと、そもそも参議院の緊急集会では対応できないことを前提にして議論を進めることは参議院の自律に対する干渉という評価もありうるところであり、衆議院側としては慎むのが二院制の下でのエチケットであると考えます。

仮に参議院側で、「緊急集会では対応が困難である」という院の意思が示されることがあったとして、その時点ではじめて衆議院側での議論がスタートされるべきと考えます。

さらに、緊急集会の機能などについては、参議院議長のもとの参議院改革協議会では昨年6月の選挙制度専門委員会の答申を受けて、参議院の在り方論の柱項目の一つとして、「緊急集会の機能の充実強化」について今後具体的な議論を進めていくと伺っています。

今後、衆議院憲法審査会では任期延長改憲の議論を行うことが憲法論的のみならず政治的にも妥当なのか、各党各会派で参議院側ともよく議論していただくことを求めて、私の意見を終わります。

(憲法審査会での発言から)

2025年03月14日

憲法審査会レポート No.48

2025年3月13日(木) 第217回国会(常会)
第1回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55583
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【マスコミ報道から】

議員任期延長、自・立に溝 衆院憲法審、今国会初の討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025031300215&g=pol

緊急時の議員任期延長を討議 今国会初めて、溝は埋まらず
https://nordot.app/1272758071879303356

衆議院憲法審査会 選挙の実施困難な事態想定し与野党が討議
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250313/k10014748721000.html

衆院憲法審査会、今国会で初討議 「緊急事態条項」がテーマ
https://news.ntv.co.jp/category/politics/6cb135484306470786007eb166c149cd

【傍聴者の感想】

今国会で初めてとなる衆議院憲法審査会が開かれました。先の衆議院選挙で議席を伸ばした立憲民主党の議員が委員会室の席を埋める光景は、これまでの憲法審査会とは違う雰囲気を醸し出していました。

今回のテーマは、緊急時に選挙をすることができなくなって、国会機能を維持できなくなるような立法事実があるのかどうかという点でした。

はじめに、衆議院法制局の方が、論点やこれまでの議論のポイントを説明したうえで、各党会派からの自由討議となりました。

船田元議員(自民)、山花郁夫議員(立民)、浅野哲議員(国民)などは、テーマに沿ってこれまでの論点を補強する発言をしていたのですが、日本維新の会の馬場伸幸議員は、発言冒頭から枝野幸男審査会長の議事運営を執拗に批判したうえに、今の議論を打ち切り、有志の会と維新で出した緊急事態条項を踏まえた改正条文案の議論をすべきだと迫っていました。この条文案は自公と大差ないものじゃないかと少数与党の自民に秋波を送ったかと思うと、今の石破自民党には改憲に向けた意気込みがないとはっぱをかける始末です。

法制度についての議論はさておいて興味深かったのは、柴田勝之議員(立民)が公明党の平林晃議員に対し、参議院憲法審査会での公明党理事の発言内容について問い質したところです。平林議員は、同じ公明党の同僚議員に対して、「あれ」よばわりして異例の発言だとし、「参議院での公明党の発言は党として公式のものではない」と釈明に追われていました。選挙困難事態の立法事実をめぐって「選挙としての一体感」を強調していたわりには、公明党としての一体感はまるでないところを浮き彫りにしていました。

最後に、あまりにも粗雑でわかりやすい馬場伸幸議員の同盟者とも言うべき、有志の会の北神圭朗議員の発言についてコメントします。

選挙困難事態の立法事実についての議論で、大規模災害の被災地の声を代表する議員がいないのはまずいから、選挙困難事態の立法事実はあるんだという改憲派の議論の補強で、北神議員は極めて冷静な口調で、「議員は全体の代表者ではありますが、地元の声を反映させるということも一般的にはあるのです」と主張されていました。公務員は全体の奉仕者でしたよね。法制度の立法事実の議論をしているときに、一般的な、なあなあでそうなっている事実を持ち出して補強の議論になるのでしょうか。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

「国会議員任期延長改憲論」に「国民固有の権利」(憲法15条1項)を奪う正当性があるか
~2025年3月13日衆議院憲法審査会を傍聴して~

戦争をさせない1000人委員会「壊憲・改憲ウォッチ(49)」より転載
https://www.anti-war.info/watch/2503171/

2025年3月13日、衆議院憲法審査会を傍聴しました。

国会議員の任期延長改憲論をめぐり議論されましたが、議論の分析が以下になります。

①改憲5会派(自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党・有志の会)からは主権者の権利である「選挙権」を奪う正当な事由が示されなかった
②改憲5会派は主権者の「国民固有の権利」である選挙権を軽視している
③議論が不十分
④改憲5会派が主張する「国会議員の任期延長改憲論」は「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」(れいわ新選組の大石あきこ議員発言)

【1】「国民固有の権利」(憲法15条1項)を奪う正当性があるか

日本国憲法では「国民主権」が基本原理とされており(憲法前文、1条)、国民主権の具体化として憲法15条1項では「選挙権」が「国民固有の権利」とされています。

改憲5会派が主張する「国会議員の任期延長改憲論」は、「選挙困難事態」と認定された際、国会議員の選挙を延期するという改憲論です。
改憲5会派は主権者の権利である「選挙権」を奪う改憲を主張していますが、「選挙権」という「主権者の権利」を奪う正当性があるのでしょうか?

れいわ新選組の大石あきこ議員は「自民の船田幹事と維新の馬場幹事に聞きたいんですけれども、選挙の一体性、選挙という国民固有の権利を奪うほどの正当性があるというのは憲法の何条に支えられているのでしょうか」と質問しました。

大石議員は「根拠条文は何条ですか」と聞いています。

にもかかわらず、日本維新の会の馬場伸幸議員は関係ない答弁を長々と発言し、「何条」という根拠条文を答えませんでした。

当然ながら大石議員は「答えになっていませんでした」と発言しました。

船田元自民党議員は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という憲法43条1項を挙げました。
43条1項を挙げたことに大石議員は「憲法15条、国民がまず選挙で選んで始まるんだというところに対して、それを上回るような理屈でなかった」と発言しています。

れいわ新選組の大石議員は「私たちの選定と罷免は国民固有の権利であると憲法15条は言っています。任期延長はこの国民の権利を奪うものですから、それに足りる理屈が必要ですけれども、それは存在しません」と主張しています。

東日本大震災で選挙ができない地域があったことを例に挙げ、全国民の選挙権の行使の制限を主張する改憲5会派に対し、立憲民主党の山花郁夫議員も以下の発言をしています。

「一部地域で選挙を行うことが困難であることをもってより多くの地域の選挙権を制限するというのは、比較考量、比例原則の観点からも明らかにバランスを失している」。

日本共産党の赤嶺政賢議員も以下の発言をしています。

「日本国憲法は、主権者が国民に存することを宣言し、国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動することとしています。その下で、衆議院の任期を4年、参議院を6年と定めて3年ごとの半数改選とすることで、定期的な民意の反映と権力の民主的統制を求めています。そのためにも、いかなる場合であっても選挙権は絶対に保障されなければなりません。ましてや、国民の選挙権行使の機会を奪う場合をあらかじめ定めておくなどということが許されるはずがありません」。

2005年9月14日、最高裁判所は「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」で以下の判示をしています。

「国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである」。

立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党が主張するように、選挙権は「主権者」の権利として極めて重要な権利です。

最高裁判所も、正当な事由もないのに選挙権の行使を制限することは許されないと判示しています。

しかし改憲5会派の議論からは、主権者の権利として重要な「選挙権」を制限するのが必要との説得的な主張がされませんでした。

「平等」という主張がまったく理由がないとまでは言えませんが、山花議員が主張するように、「比例原則」等を根拠としても、全国民の選挙権を一斉に奪う改憲論は正当ではありません。

改憲5会派は主権者の権利である「選挙権」を軽く見ています。

【2】議論が不十分

公明党ですが、衆議院の憲法審査会では議員任期延長改憲が必要と主張するのに対し、参議院では「衆議院の任期延長には民主的正統性の問題がある」旨(2023年6月7日参議院憲法審査会での公明党西田幹事)発言しています。

公明党が衆議院と参議院で異なる主張をしていることに対し、立憲民主党の柴田勝之議員は公明党にその整合性を質問しました。

この点に関しても公明党の回答は不十分でした。

『地平2024年12月号』73頁などで私は主張しましたが、2024年8月7日、自民党は国会議員の任期延長論議の前提となる「参議院の緊急集会」等について見解を変えました。

船田元氏は「選挙困難事態における選挙期日、議員任期延長の特例と前議員の職務権限行使については、自民、公明、維新、国民、有志の5会派において、ほぼ合意を得るに至っています」などと発言しました。

しかし議論は「不十分」「生煮え」であることが3月13日の審議でも明らかでした。

【3】ルールを守らない維新の問題点

2024年12月19日付の「壊憲・改憲ウォッチ47」で私は日本維新の会の「規範意識の欠如」も問題としました。

2025年3月13日の憲法審査会でも枝野幸男会長から「発言時間が終了しました。お約束はお守りください」と注意されても長々と発言を続けました。

馬場氏が発言を終えた後、枝野会長は再度、「お約束をお守りください」と馬場伸幸氏を注意しました。
当然の注意です。

最近でも2024年の兵庫県知事選挙に際し、非公開とされた百条委員会の音声を外部に提供するなど、日本維新の会の政治家には規範意識の欠如を感じることが多いですが、ルールを守らない馬場氏の対応にも「規範意識の欠如」を感じます。

内容的にも問題ですが、「規範意識の欠如」を感じる日本維新の会の政治家たちが憲法改正を主張するのを聞くと、彼ら・彼女たちが主張する改憲は危険との思いをますます強くします。

【4】「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」

上川陽子前外務大臣は「東日本大震災のような大規模災害が発生した場合、選挙運動ができると考えるのでしょうか。こうした場合、御自身が被災地でどのような選挙行動を行なうつもりなのか」などと立憲民主党に質問していました。

改憲が行われるのであれば、それはあくまで主権者である私たちのためであり、政治家のためであってはなりません。

選挙運動ができないことを改憲の理由に挙げた上川陽子発言を聞くと、自民党政治家は自分たちのために「議員任期延長改憲」を主張しているとの思いを強くします。

国会の機能維持のために国会議員の任期延長が必要だと改憲5会派は主張していますが、たとえば最近でも2024年11月の沖縄県北部豪雨災害、2025年2月の岩手県大船渡の山林火災に国会は本格的な対応をしてきたのでしょうか?

「緊急事態でも国会機能の維持が重要」などと発言していますが、改憲5会派は真剣に自然災害に対応しているのでしょうか?

法律で対応できないかどうかも十分に議論もしないのに憲法改正を主張するのでは、山花議員が主張したように、憲法改正の「立法事実」があると言えません。

2025年3月13日衆議院憲法審査会での改憲5会派の主張を前提としても、国会議員の任期延長改憲論は、選挙をしないで国会議員の地位に居座る改憲であり、「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」(2025年3月13日衆議院憲法審査会でのれいわ新選組大石あきこ議員の指摘)です。

【国会議員から】山花郁夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

憲法15条に選挙権についての規定がありますが、この選挙権は有権者団の構成員としての公務であるとともに、そのような公務に参与することを通じて国政に関する自己の意思を表明することができるという個人の主観的権利でもあるといういわゆる二元説が通説的見解です。そして、芦部教授も、「……選挙権がアメリカの判例・学説流にいえば、表現の自由と密接に関連し平等権保護条項等によって保障される『優越的権利』だということである」とされています(芦部信喜「参議院定数訴訟と立法府の裁量」『人権と憲法訴訟』243ページ(有斐閣・1994年))。この論文は、投票価値の平等に関するものではありますが、司法審査が行われる場合には「厳格な合理性」( strict rationality )基準によるべきとされています。

ところで、憲法45条で衆議院議員については解散がなければ任期は4年、46条で参議院については任期は6年で3年ごとの半数改選が規定されています。15条と45条・46条をあわせて読めば、衆議院については最長で4年以内に、参議院についは3年ごとに代表者を選出することが選挙権の主観的権利の内容となっているということができます。

選挙困難事態において議員任期を延長するということは、ルールを変更するというだけでなく、選挙権を行使しうる時期について制限を加えることになります。その意味で、議員任期延長問題というのは、ルールと原理が交錯する問題ということができるでしょう。

さて、選挙困難事態の具体例として東日本大震災、阪神淡路大震災などが議論されていました。この2つのケースで特例法を制定して実施したのは、形式的には地方の首長、議員の任期は憲法上のものではなく法律上のものであることから、特例法によったものですが、より重要な点は、首長は当該地方公共団体の有権者から直接公選されるものであること、地方議会議員については一般に大選挙区制度がとられていることなどから、選挙そのものが定数全部にわたってなしえないという事情です。

これに対し、これら2つの震災は災害としては甚大なものであったことは間違いありませんが、衆議院議員が1人も選出できないというような事態ではないことが地方選挙の例とは大きく異なるということができます。

東日本大震災に関しては、仮にこのタイミングで総選挙があったとしても、8割強の議員の選出はできると試算されておりますところ、このようなケースで任期延長を行うということは、8割強の有権者の選挙権を行使しうる機会を制限する、延期することを意味しています。
選挙の一体性を損なうというご意見も出ていますが、民主制のプロセスそのものである選挙権の意義・法的性質からすると、全部について選挙権行使の機会を停止する・制限するよりも、繰延投票等の方法により選挙の時期をずらすということのほうが「より制限的でない他の選びうる手段」だと考えられます。

もっとも、この議論は法律の違憲審査の局面でありません。立法論・憲法改正論としては比較衡量論や比例原則に従って考えることが適切かもしれません。それにしても、一部地域で選挙を行うことが困難であることをもってより多くの地域の選挙権を制限するというのは比較衡量・比例原則の観点からも明らかにバランスを失しているといわざるをえないと思われます。

このことから、大規模災害のケースを立法事実として想定することが難しいと考えられます。

これに対して、感染症の全国的な蔓延が深刻な事態となった場合を想定すると、投票所で密になる、不要不急の外出を控えるなどの状況は一部地域だけでなく、日本全国において選挙が困難になる可能性はゼロではないかもしれません。

しかしこれも、現行の公職選挙法を前提に議論されている、つまり下位の規範である法律の規定を根拠に上位の規範である憲法の説明をしてしまっているように思われます。すなわち、投票日を定めて、入場券を郵送し、その場所に足を運び、自書で候補者の氏名を記入するというやり方を前提に選挙が実施できないという結論を出してしまっているのではないかということです。

憲法が上位の規範であり、その規範が求めていることが現行法で難しいということであれば、順序としては、公職選挙法の改正などにより憲法の求める価値を実現するのか立法府の役割であると考えます。

避難所、避難場所でも投票ができるようにする方法を模索することや、インターネット投票などの方法で大規模災害などの時でも公正な選挙が確保できるような仕組みを追求することなどを検討することが論理的に先行すべきことと考えられます。そのような手を尽くしたうえで、いかんともしがたい事態があるのだ、ということが確認されてはじめて、そのことが立法事実となるはずです。その意味で、現時点で私どもとしては立法事実が確認できない、と申し上げて意見表明といたします。

(憲法審査会での発言から)

2025年03月07日

憲法審査会レポート No.47

衆院憲法審査会、3月13日に開催へ

3月6日に開催された衆議院憲法審査会の幹事懇談会で、3月13日に今国会1回目の審査会を開催することが合意されました。なお、2回目については3月27日開催となるもようです。

【マスコミ報道から】

衆院憲法審 13日に開催 緊急事態での国会機能の維持など議論へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250306/k10014741281000.html

衆院憲法審、初討議は13日開催 参院予算委に配慮し延期
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA063J50W5A300C2000000/

衆院憲法審は13日に先送り、予算案衆院通過も「参院へのマナー」 改憲派は主導権喪失
https://www.sankei.com/article/20250306-LS3BO5ONONIF5IHXVWAV6P4TMM/

2024年11月08日

憲法審査会レポート No.45

衆院憲法審会長に枝野議員が就任の見込み

10月27日投開票の衆議院総選挙で、与党が過半数割れし、また改憲勢力も3分の2を割りました。この結果を受け、与野党の国対間で委員長ポストをめぐる協議が行われていましたが、憲法審査会の会長ポストが立憲民主党に割り当てられ、枝野幸男・衆議院議員が就任する見通しです。

この間行われてきたほぼ毎週の開催をはじめ、改憲発議を目的化した衆院憲法審査会のありさまに一定の歯止めがかかることが期待できますが、石破首相自身は強固な改憲派であり、今後の改憲をめぐる動向に対しては引き続きの警戒と注視が必要です。

(一部修正・追記しました)

【マスコミ報道から】

立民が衆院憲法審査会長ポストを確保
https://nordot.app/1227475408232284609

【速報】衆院の憲法審査会長に立憲・枝野幸男元代表が就任へ
https://www.fnn.jp/articles/-/784295

【参考】

改憲勢力が衆院の3分の2割り込み、改憲機運の後退必至…日本国憲法公布78年
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20241103-OYT1T50083/

憲法改正が「冬の時代」へ 改憲勢力後退、石破茂首相への不信感も根強く
https://www.sankei.com/article/20241028-KOIN6KRSXFKNZBLUPV45ZCUSIM/

2024年06月28日

憲法審査会レポート No.44

衆院憲法審幹事懇の開催目論むも流会

衆院憲法審査会の森会長は閉会中審査開催に向けた幹事懇談会を、与野党筆頭幹事の合意ではなく職権をもって28日開催を決定しましたが、逢坂筆頭幹事をはじめ立憲民主党と共産党は欠席を表明、結局流会となりました。

25日には自民党役員会で岸田首相が「憲法は先送りできない課題の最たるものだ」などと発言してみたり、憲法改正実現本部のもとに衆参両院の議員による会議体の新設を決定するなどしています。

普通に考えれば、幹事懇を職権で強行することは今後の憲法審自体の開催にも悪影響を及ぼすだけであって、論外の行いです。岸田首相の発言や会議体新設云々もそうですが、パフォーマンスを繰り返すことで、なんとか求心力の維持に努めようとしているものと思われます。

自民党総裁選挙も控えていることから、今後もこうした「受け狙い」の動きが続くことが予想されます。警戒を緩めることなく、しっかりと注視していきましょう。

【参考】

衆院の憲法審査会幹事懇は開催できず 立憲や共産が欠席
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000357126.html

憲法の政治利用/逢坂誠二 7849回
https://ohsaka.jp/15514.html

岸田首相「憲法、最たる課題」 保守派を意識、自民に温度差
https://www.47news.jp/11109216.html

自民 憲法改正に向け 衆参議員参加の新たな会議体 検討加速へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240626/k10014491981000.html

2024年06月24日

【平和フォーラム声明】第213回通常国会閉会にあたって

平和フォーラムは6月24日付で、以下の声明を発表しましたので、お知らせします。

第213回通常国会閉会にあたって

23日に閉会した第213回通常国会は、自民党派閥の政治資金パーティー券収入による裏金づくりに国民の厳しい目が向けられる中、多くの問題法案が横暴な数の力により成立した。

政治への不信感を払しょくすると、岸田首相が意気込んだ政治資金規正法改正は、野党が求めた企業・団体献金の禁止は行われず、政治資金を監視する第三者機関の具体像も不明なままである。積み残された課題は今後の与野党協議に委ねられるが、議論の場さえ決まっていない。自民党議員からは「国会が閉会すればこの問題は終わり」と幕引きを目論む声も聞かれ、長期政権の緩みと驕りが端的に現れている。

1)憲法審査会について

第213回通常国会の最終局面の6月19日、岸田政権初となる党首討論が行われた。

立憲民主党・泉代表が、国民の政治不信を招いた岸田首相の責任を糾したことに対し、岸田首相は「(御党も)憲法改正について責任ある対応をお願いしたい。具体的な改正起案について議論を始めるよう協力をお願いしたい。」と応じた。憲法を守るべき国務大臣の長たる内閣総理大臣が、国会の党首討論の場で憲法改正に言及するなど決して許されるものではない。

参院憲法審査会は、緊急時における参院の緊急集会のあり方について議論が重ねられている一方、衆院憲法審査会では緊急事態条項の創設および議員任期の延長について、「議論は出尽くした。発議の条文化に着手するべき」と、改憲ありきの主張が改憲推進会派から主張されるなど、衆参の議論内容や温度差が明らかになっている。

13日、“首相、任期中の改憲断念”と報じられたが、衆院の改憲推進会派からは国会閉会中審査を求める意見が出されていることから、引き続き憲法審査会の動向を注視する必要がある。

2)防衛装備移転三原則の運用指針改定、次期戦闘機の第三国への輸出可能決定について

国家安全保障会議および閣議決定で防衛装備移転三原則の運用指針が改定されたことを踏まえ、日英伊共同開発の次期戦闘機の第三国への輸出を可能とすることが閣議決定された。

日本国憲法の平和主義を逸脱し、国際紛争を助長する恐れがある決定は、日本にとって取り返しのつかない選択となりかねない。軍需産業の存在感が強まれば、政治への影響力も大きくなり、さらなる武器輸出推進の声につながることも懸念される。

3)重要経済安保情報保護法について

経済安全保障上の機密情報を扱う民間人らを身辺調査する、適正評価制度の導入を柱とした重要経済安保情報保護法が成立した。

重要経済安保情報の漏洩は処罰の対象となるが、情報の範囲が不明確であるため様々な問題が生じ得る。適性評価については、本人の同意を得て実施するとされているが、同意しなければ人事考課や給与査定等で不利益を受ける可能性も否定できない。

公布から1年以内の同法の全面施行までに、同法の運用基準等の策定に向けた検討が始まり、パブリックコメントも実施されると言われている。同法の抜本的な見直しを求めつつ、同法による悪影響が最小限となるための具体的な方策が必要となる。

4)地方自治法の一部改正

感染症や災害など重大な事態が発生した場合に、国の自治体への指示権を拡大する地方自治法の一部改正が成立したが、指示権が発動できる基準が曖昧である。国会の承認も不要で、政府の閣議決定だけで指示権を行使できる。地方自治に対する国の不当な介入につながり、国と地方は対等とする地方分権改革に逆行し、上意下達的に国の考えに地方を従わせるものである。

問題点が明らかになるにつれて反対や批判の声は全国にひろがった。憲法をも逸脱する重大な問題を含んだ法案が、わずかな審議によって採決・成立が強行されたことに満腔の怒りをもって抗議する。

5)民法改正(共同親権の導入)について

法律の成立により離婚後も父母が共同で親権を持つことが可能になる。これまでは父母の一方だけに親権が認められていたが、話し合って共同親権にするか、どちらかの単独親権とするかを選ぶことが可能となり、合意できない時は家庭裁判所が決めるとされている。

配偶者からの暴力(DV)や子どもへの虐待がある場合、親権の行使を理由に接点が生まれ、被害が続く可能性が生じる。その結果、子どもに不利益が及ぶことが危惧される。子どもの利益が損なわれないような運用が行われなければならない。

6)自衛隊法の改正について

陸海空の各自衛隊を一元的に指揮する、常設の「統合作戦司令部」を設置することを盛り込んだ改正自衛隊法などが成立した。

4月の岸田首相のアメリカ訪問の共同声明では、「自衛隊と米軍の間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため」、「それぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」としている。

自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の創設は、米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれ、先制攻撃の一翼を担うことになる危険性をもつ。こうしたアメリカ追従の「岸田大軍拡」に対して、ストップをかけるたたかいを本格化させなければならない。

7)出入国管理法の改正について

出入国管理法改正案と外国人技能実習法改正案が成立した。

技能実習の在留資格を廃止し、就労を通じた人材育成及び人材確保を目的とする新たな在留資格である「育成就労」の創設を主としているが、永住許可制度の適正化を理由として、税金や社会保険料を支払わない場合に永住許可を取り消せる規定が設けられるなど、外国人差別を助長する重大な問題を抱えた内容である。

税の滞納等へのペナルティは日本人と同様に扱うべきである。国籍や人種などで差別されない、真の多文化・共生社会の実現こそ求められている。

8)食料供給困難事態対策法について

異常気象や紛争などの影響で、米や小麦、畜産物など重要な食料が不足した場合への対応を盛り込んだ新たな法律が成立した。

食料が大幅に不足する予兆があった場合、内閣総理大臣をトップとする対策本部を設置し、関係する事業者に生産や出荷などに関する計画の提出や変更を指示できるとしているが、計画を提出しない事業者には20万円以下の罰金を科すことに懸念が残る。

(まとめ)

憲法前文には「国政は国民の厳粛な信託によるもの」と謳われている。「国民の厳粛な信託」とは、衆院の資料によると「国民からの信託に背かないように権力を行使する責任を負う」と説明されている。「国民の厳粛な信託」による政治とあまりにもかけ離れた、口先だけの政権運営を続ける自公政権には一刻も早く退陣してもらわなければならない。

抜け穴だらけで中途半端な政治資金規正法改正は、国民の政治不信をさらに高めただけである。かかる政治状況を招いた自民党政治を糾弾するとともに、一刻も早く国民の信を問うための衆院の解散・総選挙を強く求める。

第213回通常国会の閉会にあたって、平和フォーラムは生活者の視点で、国民が主役となる政治を取り戻すために、引き続き国会対策や大衆運動の展開を追求することを表明する。

2024年6月23日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 染 裕之
共同代表 丹野 久

2024年06月21日

憲法審査会レポート No.43

国会は23日に閉会、閉会中審査開催要求の動きも

今通常国会は延長せず、このまま閉会する見込みです。

19日に行われた党首討論では、岸田首相は立憲民主党の泉代表に対し、衆院憲法審査会の「定例日」の木曜日が翌20日であることを引き合いに出しつつ、条文案起草作業への協力を求めましたが、憲法審査会の開催は現場の(幹事間の)判断であり「総理がするような質問ではない」と断じられています。

「岸田首相の自民党総裁任期中の改憲」という目標はひとまず潰えましたが、それでもなお自民党や公明党などからは、閉会中審査開催を求めていく意向が語られています。

しかし、裏金にまみれてきた自分たちの政治腐敗の有様は棚に上げながら、憲法に手をつけようなどとは、言語道断です。こうした動きを許さないために、引き続きの注視を呼びかけます。

【参考】

立民、首相の改憲発言に反発 党首討論で条文化を呼びかけ
https://nordot.app/1176727387321582189

憲法審、閉会中も開催を 自民
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024062000924&g=pol

憲法改正 公明 北側副代表“条文案の作成へ閉会中審査を”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240620/k10014486841000.html

国会閉会へ…自民不記載事件で改憲論議進まず 「閉会中審査」が焦点
https://www.sankei.com/article/20240620-7CA6CWAV7NLK3JVXLHOD5XTNMU/

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編集:フォーラム平和・人権・環境
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2024年06月14日

憲法審査会レポート No.42

岸田首相の自民党総裁任期中の改憲は事実上不可能に

今国会は会期延長がないまま、23日に閉会するとみられています。そうなると、日程的には憲法審査会の「定例日」は衆参それぞれ残り1回ですが、19日の党首討論後の不信任案提出も検討されていることから、開催されるかは流動的です。

今国会中に改憲条文案作成が進まなかったことで、このかん岸田首相が掲げてきた「自民党総裁任期中の改憲」それ自体が、現実的には不可能になったわけですが、今後も閉会中審査などを強行してくる可能性も十分ありますので、動向を注意深く監視していく必要があります。

【参考】

(社説)憲法審査会 丁寧な合意形成優先を
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15956355.html

自民、改憲原案の今国会提出見送りへ 首相、総裁任期中の実現を断念
https://mainichi.jp/articles/20240611/k00/00m/010/296000c

首相、任期中の改憲を断念 自民原案、今国会の提出見送り
https://www.47news.jp/11049501.html

2024年6月12日(水) 第213回国会(常会)
第5回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8056

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

国民投票運動規制で平行線 自民「自由」、立民「支出上限を」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061200900&g=pol

【傍聴者の感想】

今日の参議院憲法審査会で印象的だった話は投票率の話でした。国民投票法について、例え実施されたとしても現状の低投票率のなか、果たして「過半数」とみなされてもいいものか、という指摘を沖縄の風、高良鉄美議員がしていました。投票率を50%だと仮定すると、その過半数はもともとの主権者の25%ということになります。

世論調査において、「憲法改正」の必要性を感じている市民は決して多くありません。そのような中で国民投票を強行して実施したところで、投票率が上がることは考えにくいと言えます。そもそも、投票率が高くなるなら良いという問題ではないことは、もちろんのことだとして、議論の観点として、納得する部分がありました。

憲法審査会の意見にもあったように、まずすべきことは政治への期待を回復させることにあるように思います。今の大きな課題である投票率が低いという事実にこそ、各議員は向き合うべきです。政治の信頼回復は喫緊の課題です。

参議院は衆議院と違い、論点の整理であるとか原案のとりまとめであるとかといった話にはなっていません。二院制が確固たるものとして確立されている限り、それぞれの議論がそれぞれに存在することは当たり前のことです。自民党議員からは衆議院から送られてきた場合の審議を速やかに行うべきという発言が相次ぎました。

国民投票に関わるCM規制等についての意見が今回の主な内容でした。「公平・公正」について各党からさまざまな意見が出ていましたが、主権者に正しい情報が偏りなく届けられることが重要であるとも述べられていました。憲法にかかわらず常日頃からの情報公開について、透明性が求められていることは言うまでもありません。

「どうせ」「またか」とあきらめることなく、政治は私たちのくらしに直結する重要な存在であることを繰り返し訴えていきたいと思います。

なお、今回傍聴していたなかで、改憲派の特定の政党の意見表明に合わせて遅れて入り、終わると出ていった20人を超す男性グループの動きが異様に感じました。特定の政党の発言のみを傍聴し、全員が一矢乱れぬ整列のまま退場する姿は、思わず何事かと目を引く瞬間でした。

【国会議員から】辻元清美さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会幹事)

国民投票法の改正と広報協議会の在り方について、会派を代表して発言をいたします。
私からは、特に令和3年改正附則4条2号の検討条項に規定されております国民投票の公平及び公正を確保するための事項について意見を述べます。

まず、第2号のイのテレビCMとネットCMの制限についてですが、国民投票法は、テレビCMについてのみ勧誘広告の投票日前2週間の禁止の制限を設け、ネットCMについては何ら制限がございません。しかも、私も立法に関わった国民投票法制定からはや17年が経過し、制定当時と比べ、いわゆるネット社会は著しく進歩、進化、拡大しております。

博報堂の研究所の調査、2023年によりますと、1日当たりの接触時間、ネットは、パソコン、タブレット、スマホ合計すると256分、スマホ単独でも152分。テレビの135分をはるかに上回っております。また、電通の調査によると、2023年の広告費も、ネットは3兆3,330億円であり、テレビの1兆7,347億円を上回っております。

このような現状を踏まえますと、国民投票法制定時のテレビCM中心の制度は社会の実情と完全にそごを来しており、ネットCMについてテレビCMと同様に何らかの法規制は必要になると考えます。というのは、テレビは2週間は禁止と決めておりますので、ネットをどうするか、これは検討事項として重要だと思われます。

立憲民主党は、政党等によるネットCMを禁止し、その他のものによるネットCMについてはネット広告事業者にCM掲載基準の策定等の努力義務を課す国民投票法改正案をまとめています。

次に、第2号のハのインターネットの適正な利用の確保についてですが、例えば、ゼレンスキー大統領が市民らに投降を呼びかける内容の偽動画とか、アメリカ国防総省の近くで爆発が起きたかのように見せかけた偽動画とか、岸田総理大臣が卑わいな言葉で語りかけているように見せかける偽動画など、世界でも我が国でもいわゆるフェイクニュースが大変問題になっております。フェイク情報によって国民投票の判断が狂わせられることは決してあってはなりません。ネットの適正利用の確保は喫緊の課題と言えます。

立憲民主党は、ネットで国民投票運動等をする際のメールアドレスの表示義務、広報協議会によるネットの適正利用のためのガイドラインの作成などが必要だと考えております。さらに、フェイクニュース対策として、広報協議会による客観的かつ中立的な情報の積極的な提供、広報協議会とファクトチェック団体との連携、国民投票についてネット検索した際には広報協議会の情報が表示されるようにすることなども積極的に検討するべきです。

次に、第2号ロの資金規制についてです。

ネット社会の進展と弊害などを踏まえて、資金力の多寡による公平性への悪影響を検討し、必要な法的措置を検討する必要があると考えます。

立憲民主党は、国民投票運動等の支出上限の設定、収支報告書の提出などが必要と考えています。立法府として、時代の変化に即して、国民投票の在り方と広報協議会の役割を再検討しなければならない時期に来ていると考えております。

最後に、国民投票法制定時、民放連はテレビCMの自主規制を行うと国会に約束をし、これ、私もこの目の前でそういう発言を聞いております。平成26年の参議院附帯決議第19項もそれを前提とした規定になっています。テレビCMについて、民放連の対応がその後どのような変遷、結論となっているのかについて事務局に説明を求め、国民投票法などの改正なくして改憲発議はあり得ないと申し上げ、私の意見を終わります。

(加賀谷ちひろ・参院憲法審事務局長)

平成30年9月に民放連が量的自主規制はしない旨を表明し、その後、先ほど御説明申し上げました配付資料の22ページ、23ページに掲載の考え方等が公表されました。

令和4年4月の衆議院憲法審査会においては、参考人の民放連専務理事より、自主規制について、量を全く考慮しないわけではなく、あらゆることを総合判断する旨の答弁がされております。

(憲法審査会での発言から)

2024年6月13日(木) 第213回国会(常会)
第10回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55299
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【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

自民、改憲の論点整理提示 緊急事態時に国会議員任期延長
https://www.47news.jp/11053217.html
“自民党の中谷元氏は13日の衆院憲法審査会で、緊急事態時の国会議員任期延長に関する論点整理を提示した。改憲条文案作成の土台との位置付け。立憲民主党が条文化に反対していることを踏まえ「個人的メモ」にとどめた。”

衆院憲法審査会 自民 緊急事態での議員任期延長で条文案作成を
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240613/k10014479771000.html
“中谷氏は「今後、これをもとに条文化を進めたい。審査会で憲法改正の原案を作り国会に提出して3分の2以上の賛成をもらう必要がある」と述べ、各党に協力を呼びかけました。”
“その上で、今月23日の会期末で今の国会が閉会したあとも閉会中審査を行うべきだという考えを示しました。”

衆院憲法審、自民が国会機能維持の論点整理を発表
https://www.sankei.com/article/20240613-WTQ632ZY7JIARMOIH6XLYBVX4A/
“自民党は13日の衆院憲法審査会で、選挙困難時に国会議員の任期延長を可能にする憲法改正案の「たたき台」となる論点整理を提示した。必要性を共有する公明党や日本維新の会、国民民主党など5党派で調整した上で取りまとめられた。今国会の会期末が23日に迫っており、憲法改正の機運を盛り上げる狙いがある。”

【傍聴者の感想】

冒頭、この間の討論を踏まえた「中谷の個人的メモ」なるコピーが配布されました。そこには、「選挙困難事態」として「自然災害」「感染症まん延」「武力攻撃」「テロ・内乱」に加えて「その他これらに匹敵する事態」が挙げられています。

これらの想定はいずれも「ためにする」ものです。まず、「自然災害」については、そもそも合理化で自治体や企業の体力がそがれて大規模災害に対応できなくなっている状況が問題です。被災した鉄道の線路が何年も放置されたり、道路・水道・電力といったインフラの復旧が進まなかったり、あるいは劣悪な環境の避難所での長期間の生活に象徴される日本の災害行政の後進性や無策を放置したままでは、いくら大規模災害時に「国会機能が維持」されたとしても、復旧・復興に何らかの役割を果たせるはずがありません。そもそも福島では原発事故の発生から13年が経っても多くの人々が避難生活の継続を強いられています。原発が動き続けている限りは大規模災害時の被害は大きくなり、そして長期化するばかりです。国会議員の任期延長の前に脱原発が必要です。

「感染症まん延」についても、2020年以降の3年間の政府による「コロナ対策」が適切、適当だったのかの検証がないままになっています。国会議員の任期を云々する前に、子どもたちの「休校」や、「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」が本当に感染防止に適当だったのか、社会や生活への影響はどうだったのかなど、振り返るべき点があるはずです。

「武力攻撃」は、今回の討論で共産党の赤嶺議員が指摘していたように平和的な外交で回避すべきものです。「武力攻撃」を受けるような事態を招いた国会議員の任期の延長など市民にとっては悪夢そのものです。さっさと退任・引退してもらうしかありません。日本が「テロ」の標的になるような事態についての国会議員の責任についても同様でしょう。

「内乱」を「選挙困難事態」の口実にするのは、そもそも国会議員が自国民を信頼していないことの表れだと感じます。もし「内乱」が実際に起きたとしても、それは逆に市民による政治への極度の不信の延長線上にあるはずですから、こちらもとっとと国会議員など退任すべきであり、任期の延長など不要です。さっさと選挙を実施すべきです。

【国会議員から】逢坂誠二さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

先週、憲法五十三条に関し発言がありました。憲法五十三条には、いつまでに臨時国会を召集しなければならないのかの期限の定めがありません。我々は、この期限は法律で定めることができるとの認識の下、臨時国会の召集期限を定める国会法の改正案を、日本維新の会など五党一会派共同で衆議院に提出をしました。

一方、この期限の定めについては、先週、玉木委員が指摘されましたとおり、憲法で定めるべきとの考えもあります。この指摘も踏まえ、法律でよいのか、憲法でよいのか、この点について、今後更に議論を深めたいと考えております。

次に、国民投票に関し、憲法審査会事務局にお尋ねします。

国民投票法に関連し、今後、法律、規程の制定、改正など、どのような法整備が必要となるのか、お知らせいただきたいと思います。

(橘幸信・衆院法制局長)

国民投票実施のための法整備としては、まず挙げられるのは、令和三年の国民投票法改正案、いわゆる七項目案の改正法附則四条に規定されております二つの事項、すなわち、一つ、投票環境整備に関する事項と、二つ、国民投票の公平公正の確保に関する事項、これらについて検討し、その結果、法整備が必要と判断された場合には、そのための措置を講ずることが想定されております。

もう一つ、国民投票実施のために最低限必要な法整備としては、憲法改正の発議がなされた場合に国会に設置される国民投票広報協議会に関する諸規程の整備が挙げられます。

国民投票法において具体的に明示されている規程としては、広報協議会とその事務局の組織に関する広報協議会規程と事務局規程、そして広報協議会が行う放送CMや新聞広告等に関する広報実施規程、この三つのものがあります。

なお、これらの規程の整備に併せて、その事務局職員を国会職員に追加するための国会職員法や国会職員育児休業法などの法律改正も必要となるかと存じます。

これらの法改正や規程の整備、これは、衆議院の憲法審査会のみで議論し決定するものではなく、別の場での議論や決定が必要なものがあるというふうに承知をしておりますが、これらの法改正や規程の整備に関し必要な手続とはどのようなものか、事務局としての見解をお示しください。

(橘法制局長)

まず、国民投票法や国会職員法等といった法律の改正につきましては、通常の議員立法の立案、審議手続と変わるところはございません。その法案の所管については、国会法第百二条の六の規定によりまして、国民投票法改正案は憲法審査会、本審査会の所管となりますが、国会職員法等の改正案につきましては議院運営委員会との御協議が必要となるかと存じます。

次に、広報協議会に関する諸規程につきましては、両院の議長が協議して定める、いわゆる両院議長協議決定と呼ばれる法形式で定めることとされております。これは、原則として、両院の議長がそれぞれの議院運営委員会又はその理事会に諮って定めることとされているものでございます。したがいまして、これらの規程の制定に当たっては、衆参の憲法審査会の間での御協議、そしてそれぞれの議院運営委員会との調整、これが必要となってくるものと思料いたします。

なお、この両院議長協議決定は、通常の法律案の制定手続とは異なり、衆議院と参議院が先議、後議の関係に立つものではございません。それぞれの議院で同一の案文を決定し、それを両院議長が決裁するという手続になってくる点にも御留意が必要かと存じます。

それでは次に、常々私が指摘しております災害に強い選挙の確立については総務大臣や政治改革特別委員長に、また、あらゆる場面における国会機能の維持強化については議院運営委員長に、これらの検討について憲法審査会としてお願いすべきではないかと考えております。今後、これらの点に関しても議論を深めてまいりたいと思います。

(憲法審査会での発言から)

2024年06月07日

憲法審査会レポート No.41

今週は衆議院憲法審査会のみの開催でした。

衆院憲法審をめぐっては、先週、自民党の中谷元・与党筆頭幹事から改憲条文案の起草作業のための幹事懇談会開催の提案がありましたが、4日に撤回されました。政治資金規正法改正案をめぐる審議日程への影響を避ける思惑だと指摘されています。

また、自民党の衆参国対委員長からは、条文案の起草作業より法案審議を優先すべきだ、岸田首相の自民党総裁任期中の改憲は難しい、といった表明が相次ぎました。

しかしいっぽう、起草委員会設置の強行、あるいは閉会中審査の開催などもじゅうぶん考えられることから、参院国対間の会談では立憲民主党が審議拒否の姿勢を示してけん制しています。いずれにせよ会期末に向け山場が続きますので、引き続きの警戒を呼びかけます。

【参考】

自民、憲法審幹事懇の開催を撤回 国会日程への影響避けたか
https://nordot.app/1170270347119952172

首相の自民総裁任期中の改憲「厳しい」 浜田靖一国対委員長が言及 規制法への影響懸念か
https://www.sankei.com/article/20240605-4TFOEC6GIVOA3MHOVQ4P36O6NY/

「政権延命に憲法使ってはならない」 改憲勢力での条文案に慎重論
https://digital.asahi.com/articles/ASS653T9VS65UTFK00SM.html

改憲作業強行なら全法案審議拒否 参院立民国対委員長、自民に伝達
https://nordot.app/1171354140554740657

2024年6月6日(木) 第213回国会(常会)
第9回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55291
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 自民“条文案を” 立民“総裁任期関係ない”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014472711000.html

自民、改めて幹事懇開催提案 緊急事態条項巡り 衆院憲法審
https://mainichi.jp/articles/20240606/k00/00m/010/207000c

自民、改憲論点を提示方針 立民は国民投票法改正を優先
https://nordot.app/1171281886035755620

改憲発議へ論点整理 自民提案に立民慎重
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024060600828&g=pol

【傍聴者の感想】

今回の審査会は、国民投票法(改憲手続法)および緊急事態の考え方を中心に自由討議が行われました。

改憲手続法については、各会派から、放送広告の資金規制、ネット広告をめぐる課題、ファクトチェックの問題、外国からの関与の規制、国民投票広報協議会の役割、投票用紙の記載の仕方など様々な課題が提起されました。維新、国民、有志の3会派の議論は改憲を急ぐ立場からのものですが、ある意味具体的で、真っ当な指摘も多いと感じました。

しかし例えば、インターネット社会におけるフェイクへの対応やプラットフォーマーの規制、様々な経済活動における外国資本への向き合い方などは、すでに現在の社会課題になっており、改憲議論があろうとなかろうと新たなルール作りに政治が努力をしなければならない課題です。

改憲手続法の不備を正していくことはもちろん必要ですが、それ以前に政府や国会がやるべきことは多く、いざことに挑もうとして課題を洗ったら日ごろのさぼりが浮き彫りになった、そんな印象を持ちました。

選挙を延期する(議員任期を延長する)期間や範囲、参院緊急集会との関連がもう一つの課題でした。各会派が自分たちの問題意識を主張しあうという点は今までとあまり変わりませんが、他会派を攻撃するという場面はほとんどなく、会派間のあるいは委員間の質疑応答という場面が従来より増えたという印象を持ちました。

議論の仕方としては望ましいことかもしれませんが、これをもって熟議を尽くしたと言えるほどの内容ではないことは、傍聴者として報告しておきたいと思います。

国会の会期末も近いことから、条文案が作成されないことに国民、維新からは強い口調での自民党への批判がされ、自民党の中谷筆頭幹事は「(国会)閉会中の開催」にも言及しました。改憲派は少しでも具体的な実績を積み上げたいということでしょうが、改憲理由事実の基本的な認識の一致すらできていないこと、手続法にも相当の課題があること、加えて政治資金で自民党の信頼は大きく失墜していることをふまえれば、発議などできないはずです。

しかしあらゆる常識が通用しないのが現政権ですので、今後も厳しい監視と、適時の反撃をし続けることが必要です。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

いま、沖縄大学での内地留学のために沖縄に滞在しているので常に憲法審査会は傍聴できません。ただ、6月6日は衆議院憲法審査会を傍聴しました。憲法審査会の議論を聞いていると、改憲を主張する政治家たちには「憲法の基本理念」と「立憲主義」が定着していないのとの思いを持ちました。いろいろ問題がありますが、紙幅の関係で以下の指摘をします。

(1)議論は煮詰まっていません

2023年11月30日衆議院憲法審査会で公明党北側一雄議員は「議論は相当に詰まっていることは間違いないというふうに思うんですね」などと発言し、立憲民主党抜きの改憲条文案作成を進める意向を示唆しました。しかし「選挙困難事態」に関して日本維新の会は憲法裁判所の事後審査、国民民主党は最高裁判所の事後審査、自民党は裁判所の関与不要という立場にたっています。法を専門にする人からすれば、こうした状況で「議論が煮詰まった」とは考えないでしょう。こうした見解の相違一つとっても、「議論は相当に詰まっている」という北川議員の認識は「間違い」です。

(2)玉木雄一郎議員のフェイクに関する発言

玉木雄一郎議員は「今の自民党の9条改正案によって、違憲論がすべて解消され、自衛隊の権限が大きく拡大し、新たにできることが増え、パワーアップした自衛隊が搭乗するかのような説明も、これもフェイクです」と発言しました。憲法改正国民投票でも「フェイクニュースへの法的対応」は必要です。フェイク対策がなされないのであれば改憲の国民投票は「デマから生まれた憲法改正」になる危険性があり、正当化できません。ただ、玉木議員が紹介した見解は「フェイク」ではありません。自衛隊が憲法に明記されれば自衛隊を「憲法違反」とは言えなくなりますし、「徴兵制」「民間人の戦地派遣」も憲法的にも正当化されます。「自衛のために自衛隊を保持する」等の文言で自衛隊が憲法に明記されれば、安保法制の内容を超える「全面的な集団的自衛権」の行使も可能になる可能性があり、「自衛隊の権限が大きく拡大」します。自分の意見と相容れない見解を「フェイク」とする玉木議員の発想は民主政国家では極めて危険です。

(3)「社会学的代表」から議員任期延長改憲を正当化する公明党大口善徳議員

大口善徳議員は「全国民の代表の要請は選挙の一体性の原則とリンクしている」と発言しました。憲法43条1項の「全国民の代表」はフランス憲法学でいう「半代表」、大口議員が引用した芦部信喜先生の教科書では「社会学的代表」とされています。ただ、公明党議員たちが「社会学的代表」としての議員活動をしてきたと言えるのでしょうか? 「社会学的代表」とは、「議会は建前として人民の意思(民意)をできるだけ正確に反映して代弁すべきだという、直接民主制的な要素を加味した代表の考え方」とされます。特定秘密保護法、安保法制、原発再稼働、マイナンバー制度の強行導入等でも、公明党は国民意志に反する政治に加わってきたようにしか私には見えません。「国民の意思と代表者の意思の事実上の類似を重視するという社会学的代表の考え方」から、「全国津々浦々の全国民の多様な意思をできる限り公正かつ忠実に、いわばその縮図のように国会に反映させることを要請する憲法上の原理」とも大口議員は発言しています。「全国津々浦々の全国民の多様な意思」などと言っていますが、たとえば米軍人の犯罪や軍事訓練等で大変な思いをしてきた沖縄県民、辺野古新基地建設に反対する沖縄県民の民意に公明党は耳を傾けてきたのでしょうか? 辺野古新基地建設の代執行を強行した斉藤鉄夫国土交通大臣は公明党所属議員です。

公明党大口善徳議員は芦部先生の「社会学的代表」に関する見解を引用して、国会議員の任期延長改憲論を主張します。それこそ芦部先生の見解に依れば、「国民主権原理」は憲法改正の限界とされます。投票権は国民主権を実現するための権利であり、投票権を剥奪する改憲は「国民主権」を空洞化する危険性があります。芦部先生の教科書をきちんと読めば、憲法43条1項の「全国民の代表」を根拠に、選挙もしないで国会議員が地位に居座ることを可能にする「国会議員の任期延長改憲論」が正当化されるとの結論は出ないはずです。公明党大口善徳議員は、国民意志を代弁する政治をしてこなかった公明党の実態を踏まえないことに加え、極めて不正確な憲法論を展開しています。
最後に、改正政治資金規正法をめぐる自民党・公明党・日本維新の会の対応を見れば、やはり国会議員の任期延長改憲は国会議員の利益を守るための「保身」「居座り」を認める改憲になるとの思いを持ちました。

(4)国会議員の保身のためになる国会議員任期延長改憲論

本来であれば国会議員を辞職、あるいは逮捕・起訴されてもおかしくない裏金問題を起こしながら、再び悪質な裏金問題を起こさせない政治資金規正法の改正をしなかった自民党や公明党。「改正政治資金規正法」では企業・団体献金は禁止されず、政策活動費も温存されました。「身を切る改革」と口先では調子のよいパフォーマンス的発言をしながら自民党にすり寄り、日本維新の会派「改正政治資金規正法」に賛成しました。政治家の利権を温存する「改正政治資金規正法」に賛成した自民党・公明党・日本維新の会が国会議員の任期延長改憲論を主張するのをみると、さまざまな口実を設け、選挙もしないで国会議員に居座る改憲を主張しているとの思いを強くしました。

選挙もしないで国会議員に居座るための改憲、みなさんは賛成しますか?

【国会議員から】本庄さとしさん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

本日の議題の前に、前回、前々回と、国民民主党の玉木委員からたくさんご質問をいただいていますので、その回答から始めたいと思います。

第一に、長期かつ広範に選挙が実施できない選挙困難事態において、選挙管理委員会が繰延投票の選挙期日(投票日)を正しく定めることが可能か、また、繰延は何日間までなら可能か、とのお尋ねがありました。

まず、公職選挙法第57条第1項において、天災等により、投票所で投票ができないときは、都道府県の選管は、直ちに繰延投票とする旨を告示し、更に定めた期日を少なくとも投票2日前に告示しなければならないとされています。

つまり、選挙期日の繰延と繰延後の期日は、玉木委員がおっしゃるように同時に判断、決定される必要はなく、発災時と投票前の2段階で判断され、決定されるということです。したがって、選挙困難事態であっても、選管が別の選挙期日を正しく定めることは十分可能であると考えます。

その上で、繰延投票は、公選法上、何日以内に行われなければならないという定めはありませんが、都道府県の選管が投票を適正に行わせることが可能であると判断した時点で、更に期日を定めて投票を行わせるものとされています。

憲法上、何日間まで繰延可能かは一概には言えませんが、例えば、公選法第33条の2により、衆議院議員の補欠選挙では、任期満了にかかる場合は最長で1年間、任期満了にかからない場合でも最長で7カ月強、欠員が生じ得ることを想定しています。したがって、憲法上も、少なくとも7カ月強ないし1年は、繰延投票が認められるものと解せられます。

第二に、繰延投票では、期日前投票や選挙運動が公示日から繰延された投票日まで長期間可能となり、かつ、その間、選管は職員被災で機能しないのではないか、とのお尋ねがありました。

まず、期日前投票については、公選法第48条の2第3項において、天災等により、期日前投票所で投票ができないときは、期日前投票所を開かず、又は閉じるものとされています。したがって、天災等による繰延投票の場合には、必然的に期日前投票もできないと考えられます。

他方、繰延投票における選挙運動期間については、これは玉木委員ご指摘の通り、公選法第129条により、公示日から繰延投票の期日の前日まで選挙運動ができると解されており、この点は私も制度上の不備だと思います。ただ、これは法律改正事項であり、憲法改正事項ではありません。

被災地の選管は職員も被災していて機能しないとのご指摘は、1993年の北海道南西沖地震の際に予定通り衆議院総選挙が実施された奥尻町の例などもあり、一概には言えませんが、仮に、ご指摘のようなことがあれば、繰延投票によって対応するものと考えます。

第三に、繰延投票によって、憲法違反の可能性のある議員不在の状況を生み出す判断を選管に委ねることの是非について、お尋ねがありました。

選挙期日が議員任期内に公示されていれば、その後の繰延投票によって、選挙期日が任期を超えたとしても、そのことが直ちに憲法違反であるとは言えません。したがって、選管に繰延投票の判断を委ねるとしても、問題があるとは考えていません。

最後に、いわゆる「スーパー緊急集会」創設の場合の憲法改正の要否について、お尋ねがありました。

まず、参議院の緊急集会が70日超を想定していないとの見解には、根拠がありません。衆議院の解散から40日以内の総選挙実施、その後30日以内の国会召集を憲法が義務付けているのは、時の政権が衆議院を解散したまま恣意的に総選挙を実施しない、国会を召集しないといった権力濫用を防止するためであり、選挙困難事態のような緊急事態を前提としたものではありません。

また、緊急集会が有する権能の範囲は、憲法第54条第2項の規定により、「国に緊急の必要がある」と内閣が判断し、提案された案件である限り、法律の制定や予算の議決、更には条約の締結の承認についても別段の制約はないと解されています。

したがって、「スーパー緊急集会」なるものは「創設」するまでもなく、憲法改正の必要もないと考えます。なお、議員任期延長とは異なり、後日正当に選挙された衆議院の同意を必要とすることで、緊急時から通常時への復元力(レジリエンス)も確保されており、制度的バランスも取れていると考えています。

最後に、本日の議題である国民投票法に触れて、私の発言を終えたいと思います。

ご存じのとおり、岸田総理は自身の自民党総裁任期中の憲法改正を掲げています。維新の会や国民民主党もこれに同調し、総裁任期中の憲法改正を求めています。しかし、総裁任期と憲法改正に一体何の関係があるのでしょうか。この審査会の中でも、合理的に説明できる議員はいないと思います。

岸田総裁の任期は今年9月30日です。しかし、それより先に期限が来るのが、国民投票法の附則第4条に規定された諸課題です。この期限は、目途ではありますが、9月18日です。岸田総理が掲げる政治日程と、法律に明記された期限と、どちらが優先されるべきかは論を俟ちません。

かねて私たちが最優先課題としてきた附則第4条第2項、放送CM、ネットCM、資金規制、ネット等の適正利用、更には、広報協議会規程、事務局規程、広報実施規程など、国民投票法及び手続き上の課題は依然として残されたままです。

今の状況では、いくら条文化作業や改正発議をしても、国民投票の実施は見通せません。議論の順序が全くアベコベです。まず附則第4条について議論を深め、結論を得ることを提案します。森会長、ご検討をお願いします。私からは以上です。

(憲法審査会での発言から)

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