2026 | 平和フォーラム
2026年08月31日
安保三文書改定を問う:人的資源も財源も枯渇する日本は軍拡を続けるのか 「共通の安全保障」こそが合理的選択
渡辺洋介
1.はじめに
2025年10月、自民党と日本維新の会による連立政権が誕生し、高市政権が発足した。両党の連立合意および2026年6月に示された両党の安保提言、とりわけ軍拡方針を一段と前面に押し出した維新の提言には、防衛費増額や長距離ミサイルの配備、さらには非核三原則の再検討や原子力潜水艦の導入検討に至るまで、急速な軍拡路線が明記されている(注1)。
しかし、この急速な防衛力強化の陰で、中国、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「北朝鮮」)といった近隣諸国との対話を通じた緊張緩和や、軍拡競争のリスク管理が、著しく欠如している。対話なき軍拡路線は、周辺諸国との軍備競争を激化させ、不測の事態から武力紛争へと波及するリスクを高めるだけである。
また、中長期的視点から政策を考えることも大切である。30年後の日本は、継続的な少子高齢化により、人口およびGDPの減少に直面しているだろう。仮に防衛費の大幅増額を「安保三文書」に書き込んだとしても、人口減により現場の自衛官の不足は避けられない。また、GDPの減少は、税収の落ち込みを招きかねず、巨額の防衛費は大きな負担となるであろう。
いま日本が突き進もうとしている軍拡の道は、果して持続可能な合理的選択なのだろうか。本稿では、軍拡を続けることの非合理性を指摘し、対話と外交による「共通の安全保障」への転換を提言する。
2.人的資源も財源も確保できない軍拡路線
防衛省の最新資料によると、2026年3月31日の自衛官数は、定員24万7,154人に対して、現員は21万7,701人にとどまっている(充足率88.1%)。特に、現場を担う若手隊員の多い「士」階級は、定数5万3,166人に対して現員が3万729人にとどまり、充足率は57.8%と6割を下回っている。若年層の採用難は極めて深刻である(注2)。
自衛官の採用難は今後一層激化すると見通されている。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2023年推計)」によれば、若年人口(18~30歳)は2025年の約1,600万人から、2035年には約1,470万人、2045年には約1,230万人へと約23%減少すると予想されている(注3)。ごく単純に、2026年の充足率約58%から23%減少するとすれば、2045年の士の充足率は約45%にまで低下する。他産業との労働力争奪戦、進学率の上昇などを考慮すれば、実際の充足率はさらに下がるであろう。
日本維新の会の安保提言は、人員不足への対策として「ドローン等の無人化・自動化や業務効率化」を掲げているが、上記のような大幅な人員不足を補う解決策としては全く不十分である。さらに、無人アセットや高度な兵器体系の運用・維持・サイバー防衛には、IT分野に明るい専門人材が不可欠である。こうした人材は民間でも需要が高く、民間との争奪戦は免れない。人的資源の枯渇という構造的問題を無人化技術だけで覆すことは非現実的である。
少子化が進む日本では、巨額の防衛予算を投入して長射程ミサイルや潜水艦などの最新装備を揃えたところで、それを運用し、現場で維持・管理する「人」を集められる中長期的な見込みがない。日本はすでに人的側面における軍拡がほとんど不可能な国なのである。
さらに、日本経済研究センターの試算によれば、人口減少に伴い日本の実質GDP成長率は2032年から恒常的なマイナス成長へ転じると予想している(注4)。トランプ政権は同盟国に対してGDP3.5%まで防衛費を増やすことを求めているが(注5)、日本がこれに応じれば、例えば、社会保障費の大幅カットや増税など、他の分野において極めて大きな犠牲を生み出すことになりかねない。しかも、社会保障を犠牲にして巨額の予算で防衛装備を揃えても、それを運用する人が確保できない。中長期的な人口減少・経済縮小が予測される中で進める軍拡路線は、安全保障政策としても経済政策としても、合理的な選択とは言えないだろう。
3.人口動態から見る30年後の東アジア――軍拡競争は持続可能なのか
東アジアにおける安全保障環境を検討する際、中国、ロシア、北朝鮮といった周辺諸国の長期的な人口動態を見ることも不可欠である。各種研究は、これら3国もまた日本と同様に少子高齢化と人口減少の時代を迎えることを示している。
まず中国について、国連の「世界人口の展望 2024年」によると、中国の15~64歳人口は、2020年代の約9億8,000万人から2050年代には約7億5,000万人へ減少すると見込まれている。減少幅は約2億3,000万人、約24%に及ぶ(注6)。
ロシアでも少子高齢化による人口減少が進むと予測されている。国連の「世界人口の展望 2024年」によれば、ロシアの人口は2020年の約1億4,600万人から2050年には約1億3,500万人程度へ減少するとのことだ(注7)。
北朝鮮も例外ではない。韓国統計庁や国連の人口推計によれば、北朝鮮の合計特殊出生率は近年1.8前後まで低下しており、人口の高齢化も進んでいる。韓国銀行の推計によれば、北朝鮮では1990年代以降の出生率低下を背景に、2021~2030年中に生産可能人口および総人口が減少へ転じると予測されている。また、65歳以上人口の割合は1990年の4.5%から2030年には16.1%まで上昇し、2020~2030年中に「高齢社会」へ移行すると見込まれている(注8)。
一方、米国では、今後も移民による人口増加が続くものの、高齢化は進展すると予想されている。米国国勢調査局の2023年人口推計の中位シナリオによれば、米国の人口は2020年代から緩やかに増加し、21世紀後半にかけて増加が鈍化する。ただし、移民流入の水準が低い場合には人口減少への転換時期が早まると予想されている(注9)。
これらのデータが示すように、中国、ロシア、北朝鮮も、日本と同様に少子高齢化に伴う人口減少という問題に直面することが予想されている。生産人口が減少すれば、生産効率が上がらない限り、GDPは縮小することになる。GDPが縮小すれば、税収の維持が困難になり、高い防衛費は大きな負担となる。また、少子化が進めば、兵士の募集は困難になる。少子高齢化が進めば、軍事力を支える人的・経済的基盤が縮小するのである。
一方、米国は移民などによって人口動態が比較的有利であり、日中露などとは条件が異なるものの、米国についても、30年後の世界においては、少子高齢化が進み、今日より経済成長の制約は強まるであろう。そうした見通しがある中で、各国が相互に軍事力を増強し続けることは、合理的な安全保障戦略と言えるのだろうか。高市政権による軍拡路線は、こうした中長期的な趨勢を度外視して進められていないだろうか。
4.人口減少時代における合理的選択:「共通の安全保障」
すでに述べた通り、30年後の世界では、各国で少子高齢化がさらに進み、軍事力を支える人的・経済的基盤がいっそう縮小することが予想されている。そうした中で軍拡競争を続け、軍事力に大きく依存した安全保障政策を取り続けることは、持続可能な「合理的選択」とは言い難い。
こうした状況が求めるのは、「1982年の軍縮と安全保障問題に関する独立委員会(通称パルメ委員会)報告書」(注10)が提唱した「相手国の安全を損なわずに自国の安全も高める」『共通の安全保障』への転換である。ヨーロッパにおいて「全欧安全保障協力会議(CSCE、現OSCE)」が東西冷戦期の対話と危機管理を担ったように、東アジアにおいても同様の多国間安全保障枠組みを再起動させねばならない。
,p> すでにこの地域には「ASEAN地域フォーラム」や「東アジア首脳会議」といった対話の枠組みが存在する。軍事的な抑止力のみに依存するのではなく、対話の枠組みを積極的に活用し、日本と中国、ロシア、北朝鮮などの周辺諸国との意思疎通を深め、無用な軍拡競争や緊張激化を防ぐことが、すべての関係国にとっての「合理的選択」である。中長期的に不可避な人口減少社会において、武力による抑止ではなく、対話と外交によって地域の安定を創り出すことこそが、最も持続可能で現実的な安全保障戦略ではなかろうか。
注1 日本維新の会「提言『危機の30年時代』の国家安全保障」(2026年6⽉17⽇)
https://o-ishin.jp/news/2026/images/0937ba3b98091a8db9536c6b98d3b6ba4af89fce.pdf
注2 防衛省「令和8年度版 日本の防衛 防衛白書(資料編)」(2026年7月)
https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2026/pdf/R08shiryo.pdf
注3 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2023年8月31日)
https://ipss.repo.nii.ac.jp/records/2000593
注4 日本経済研究センター「第47回中期経済予測」(2021年3月24日)
https://www.jcer.or.jp/economic-forecast/20210322.html
注5 2026年シャングリラ会合におけるピート・ヘグセス戦争長官の発言(実際の発言どおり)(2026年5月30日)
https://www.war.gov/News/Speeches/Speech/Article/4504755/remarks-by-secretary-of-war-pete-hegseth-at-the-2026-shangri-la-dialogue-in-sin/
注6 国連「世界人口の展望 2024年:データセット」
https://www.un.org/development/desa/pd/content/World-Population-Prospects-2024?utm_source=chatgpt.com
注7 同上
注8 イ・ジュヨン・キム・ソンジュン「北朝鮮脱出住民調査からみた北朝鮮の出生率低下傾向と南北朝鮮の人口統合への示唆」(2023年12月)
https://www.bok.or.kr/imer/bbs/P0002455/view.do?menuNo=500535&nttId=10081298&utm_source=chatgpt.com
注9 米国国勢調査局「2023年全国人口推計」
https://www.census.gov/data/tables/2023/demo/popproj/2023-summary-tables.html?utm_source=chatgpt.com
注10 パルメ委員会(編)『共通の安全保障: 核軍縮への道標パルメ委員会報告書』(NHK出版、1982年)
2026年08月25日
ニュースペーパー News Paper 2026.8
8月号もくじ
*NPT 再検討会議で大活躍した大学生にきく
*平和な世界を作るのは私たち 全国ブロック集会
*「私たちの憲法」とはどんな存在?
*呉を再び侵略の拠点にさせない
*『非核三原則-いま何が問われているのか』
*憲法理念の実現を求める全国署名を全力で
2026年08月19日
「戦後81年 戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」を開催しました
8月15日、平和フォーラムは千鳥ヶ淵戦没者墓苑において「戦後81年 戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」を開催し、約200人が参加しました。
正午に黙とうを行い、平和フォーラムから染裕之・共同代表が「平和への誓いと慰霊のことば」(本記事下部に掲載)を捧げました。
続いて、立憲民主党の吉田忠智・参議院議員、社会民主党の福島瑞穂・参議院議員、戦争をさせない1000人委員会の内田雅敏・事務局長がそれぞれ追悼のことばを述べました。
その後、平和フォーラム構成団体代表および参加者が墓前に献花を行いました。
平和フォーラムはすべての戦争犠牲者を追悼し、不戦の誓いをあらたにするとともに、いまなお解決していない戦争被害に対する謝罪や賠償などの問題の解決に向け、引き続きとりくみをすすめていきます。
平和への誓いと慰霊のことば
先の大戦から81年の歳月が過ぎ去りました。愛する家族を案じつつ心ならずも戦場に倒れ、あるいは戦後、異郷の地に亡くなられた三百万余の方々の無念や、犠牲となられた国内外すべての人々の悲しみや苦しみ、怒りを思うとき、先人たちの犠牲の重さは、敗戦から長い歳月を経た今もなお、私たちの心の碑に深く刻み込まれ、痛恨の思いが尽きることなく込み上げてまいります。犠牲となられました方々の御霊に謹んで哀悼の誠をささげるとともに、遺族の皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。
勝てるはずのない無謀な戦争に突入した日本は、「天皇陛下のために」多くの無辜の命を奪った結果、国家存亡の危機に立たされました。絶望の淵に立たされた人々に、明日を生きる勇気や希望を与えた新しい憲法は、自由権や社会権など幅広い基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として保障し、国家権力をそれに従属させる構造を取りました。これは、個人の尊厳を守るために国家が存在するという国家像への大きな転換でした。
しかし、今日の日本の歩みは、憲法の理念に逆行し、戦前の「国体」が絶対視される国家へと踵を返そうとしています。戦後の日本は、専守防衛を防衛政策の基本とし、集団的自衛権行使の否定、武器輸出の禁止など、他国に脅威を与える軍事大国には決してならないと決意したはずです。軍備増強にひた走る今日の日本の姿は、アジアの周辺諸国に脅威を与え、軍事的緊張を増幅させるばかりです。
私たちは、先の大戦の反省から得た平和の尊さを後世に語り継ぐとともに、世界中の人々に「ヒロシマ・ナガサキを原爆による最後の被爆地に」と、訴え続けてまいりました。欺瞞に満ちた「核抑止力」の名の下の核拡張競争のジレンマは、いつかレッド・ラインを越えかねない、その瀬戸際にあることを強く危惧します。
今もなお世界の戦禍の中で、多くの尊い命が奪われ、街が破壊され、国際法違反の虐殺・拷問、暴行、略奪などの犯罪行為が続けられています。このことは、人間がひとたび戦争という極限状態に置かれたとき、想像を絶する残虐な行為にいたることを物語っています。
日本国憲法の前文では「全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」と謳われています。唯一の戦争被爆国である日本は、こうした国際協調の理念をしっかりと胸に刻むとともに、全世界の「恒久平和」の実現のために、その先頭に立たなければなりません。
あの壮絶な大戦を単に歴史的事実としての理解に留めるのではなく、二度と繰り返してはならないということを世代を超えて語り継ぎ、平和な社会を未来へ確実に引き継いでいくことが、今を生きる私たちに課せられた責務です。
本日、終戦の日を迎えるにあたり、私たち一人ひとりが、戦争の悲惨さと平和の尊さを改めて深く心に刻み、世界中からすべての戦争が無くなることを願い、自由で公正な社会を守るため、平和と民主主義を誓った戦後の原点を見つめ直します。
歴史の忘却を許さず、平和憲法の崇高な理念の下に、世界の恒久平和の実現に向けてこれからも不断の努力を続けていくことを堅くお誓い申し上げ、慰霊のことばといたします。
2026年8月15日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 染 裕之
2026年07月31日
《ガザ・イラン・レバノン戦争》に見るAI戦争の限界点 ~「スタートアップ・ネーション」と「ソサエティ5.0」の虚栄
役重善洋
1.はじめに
2023年10月に始まるイスラエルの対ガザ・ジェノサイド戦争と、2026年2月に本格始動する米・イスラエルの対イラン戦争は、いずれも、形式的には「停戦合意」がなされたにも関わらず、2026年7月末現在、ずるずると散発的な戦闘行為が続いている状況にある。とりわけ、戦力の非対称性が著しいガザにおいては、戦闘行為の継続といっても、イスラエルの攻撃がほぼ一方的に続いている状態である。
本稿では、この二つの「戦争」の背景にあり、また、それらが促進しつつあるグローバルな傾向について分析する。まず、軍事攻撃におけるAIシステム導入について論じる。次に、砲弾・ミサイル・ドローンの生産力競争に見られる「経済の戦争化」を取り上げ、最後に、これらの変化が日本に及ぼす影響と市民社会の課題について分析したい。
2.ガザとイランへの軍事攻撃におけるAIシステムの導入
2023年11月、イスラエルのオンラインメディア「+972マガジン」の記者ユヴァル・アブラハムは、軍・情報機関関係者への聞き取り調査にもとづき、イスラエル軍が対ガザ作戦で「ハブソラ」(福音)と呼ばれるAIシステムを用いて標的選定を行っていることが、これまでにない多数の民間人犠牲者が出ていることの原因となっていることを示す記事を発表した[1]。この記事によれば、イスラエル軍は2019年にAIによる標的生成を主目的とした「標的管理部」を設置したという。2023年10月7日以降、イスラエル軍は、「ハブソラ」を利用した攻撃の正確さを一報で宣伝しつつ、実際には、ダヒヤ・ドクトリンと呼ばれる戦略にもとづく事実上の無差別攻撃を行った。これは、2006年のレバノン攻撃に際し、ヒズブッラーに対する住民の支持を挫くことを主目的として、その拠点となっている町全体を徹底的に破壊した戦略の通称である。
無差別攻撃であるならAIによる標的生成は意味がないかというと、そうではないことがこの記事から分かる。イスラエル軍は、攻撃標的を①標準的軍事標的、②地下標的、③権力標的、④戦闘員の住宅に分類したという。権力目標というのは、高層ビルや大学、銀行、官公庁、電力施設などで、破壊が市民生活に甚大な影響を与える重要インフラを指す。イスラエル軍は、作戦初期に③と④を中心に攻撃することでガザ住民をハマースから離反させようとしたという。最終的にイスラエル軍はガザ地区にあった建築物の8割を破壊しており、もはや標的の優先順位など関係ない状況であるようにも思われるが、少なくとも作戦の早い段階において、一般的な軍事目標ではなく、むしろ効果的に民間人に被害を与えることを優先するような「標的生成」がなされていたのである。
2024年4月には、同じアブラハム記者の記事で、イスラエル軍が「ハブソラ」と連動させて用いている二つのAIシステム、「ラベンダー」と「パパはどこ?」の存在が報じられた[2]。前者は、ハマースの戦闘員など個人の標的リストを生成するプログラム、後者は、「ラベンダー」がリスティングした個人を自動追跡し、「ハブソラ」に登録された自宅に帰ったときに爆撃を行えるよう通知を行うプログラムである。一人の戦闘員につき15~20人、司令官であれば100人以上の「巻き添え殺人」が承認された。最終的な人間によるチェックは、1件につき数秒で、標的が男性か女性かを確認するのみだったという。標的が女性とされた場合は選定ミスの可能性が高いので排除されたが、男性の場合は、人間の判断を介在させずに攻撃が行われていたことになる。このようなシステムによって、これまでとは桁違いに多い一般住民の犠牲が引き起こされることになった。
これらのシステムが稼働する際、グーグルやアマゾンがイスラエル軍にクラウドサービスを提供する「プロジェクト・ニンバス」や、マイクロソフトのクラウドサービス「アジュール」の同軍への提供が、ジェノサイド戦争への加担として大きな批判を浴びるようになった。そうした中、マイクロソフトは、自社サービスがイスラエル軍によるパレスチナ人の通話監視に用いられていることを独自調査で確認した上で、2025年9月にイスラエル軍への一部サービス提供を停止した。
2026年1月3日の米軍によるマドゥロ大統領夫妻拉致と2月28日に始まる米・イスラエルによる対イラン攻撃では、米パランティア社が開発した「メイブン・スマート・システム」が大きな役割を果たしていることが広く報道された。イラン攻撃が開始されたのは、このシステムで用いられているAIシステム「クロード」を提供するアンソロピック社が、トランプ政権に対して完全自律型兵器システムや大規模国内監視での不使用を求め、同政権が同社製品の連邦政府機関からの排除を命じた数時間後のことであった。
3.砲弾・ミサイル・ドローンの大量確保という問題
前節で紹介した記事などを通じて、イスラエル軍のジェノサイド作戦においてAIシステムが大きな役割を果たしたことが広く知られるようになった。しかし、先述した通り、このAI使用は、ハマース等の軍事目標を絞り込み、「付随的損害」(民間人殺害に対するイスラエル軍の呼称)を減らすためのものではない。イスラエル軍が重視しているのは、あくまでも効率や経済性、すなわち、武器・弾薬の消耗や兵士への負荷を抑制するという条件の下でガザ住民への打撃を最大化することである。
したがって、イスラエル軍は、大量の標的生成を行いつつ、高級司令官など重要軍事目標には高価な精密誘導弾を用い、末端の戦闘員や一般住宅に対しては、安価な無誘導爆弾や砲弾を多用してきた。ところが、イスラエルは、先端兵器の開発には力を入れてきたものの、例えば、陸対陸の砲撃で用いる155mm砲弾のような安価な兵器については量産能力に限界があり、特に戦時には主として米国からの輸入に依存してきた。
ウクライナ戦争によって155mm砲弾の供給不足が世界的に深刻化し、また米国を含む西側諸国でイスラエルに対する武器禁輸の議論が高まる中、イスラエルは同砲弾の国内供給体制の構築を急いだ。2023年8月には、イスラエル国防省はイスラエルのエルビット・システムズと155mm砲弾の購入契約を6000万ドルで契約した[3]。さらに「10・7」[4]を経た2024年5月には、イスラエル国防省は、2023年を通じて7億6000万米ドル相当の弾薬発注契約をエルビット社との間で締結し、今後2年にわたり履行することになると発表した[5]。レバノンへの地上侵攻を開始した2026年3月には、さらに4800万ドルの契約がされている[6]。その間、米国、さらにはインドからもイスラエルに大量の弾薬が供給され続けてきた[7]。
米国・イスラエルによる対イラン戦争が長期化すると、砲弾だけでなく、ミサイルやドローンの備蓄・供給が戦争の趨勢を決定する要因として焦点化した。見落とされがちなことは、こうした武器・弾薬の大量生産能力をめぐる競争というフェーズにおいて、イスラエルの産業構造は必ずしも有利ではないということである。イスラエルは1990年代初頭でGDPにおける製造業の割合が30%、サービス産業が40%程度であったが、現在は製造業10%、サービス産業70%であり、製造業の内容も技術集約的なハイテク分野に集中しつつある。米国の対イスラエル支援が今後減少していくことが予想される中、汎用性がない弾薬やミサイルの国内における大量生産は、長期的にはイスラエル経済にとって大きな負担となることは間違いない。
4.「スタートアップ・ネーション」と「ソサエティ5.0」
以上に述べたような状況は、日本の政治・経済にも大きな影響を及ぼしつつある。というのも、第二次安倍政権成立以降、日本はイスラエルとの二国関係を急速に緊密化させてきたからである。これまで筆者が「平和軍縮時評」に寄稿した「ガザ・ジェノサイドにおけるデュアルユース問題と日本の責任」(2025年4月30日付)や「サイバーテック東京2025とイスラエルの『ジェノサイド経済』」(2025年9月30日付)で書いてきたように、安倍政権とネタニヤフ政権の協調は、サイバーセキュリティを中心に展開してきた。そこでは、「スタートアップ・ネーション」としてのイスラエルが理想モデルとして位置付けられてきた[8]。それは、歴史的パレスチナの占領というイスラエル国家の存立条件の中で必然的にたどり着いたいびつな経済体制であり、極めて不安定なものだということが日本側ではあまり理解されていないように思われる。
第二次安倍政権は、2016年の第5期科学技術基本計画で「ソサエティ5.0」という概念を打ち出した。これは、現代が、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く人類史上第5番目の時代を迎えようとしているという歴史観を表現したもので、それは「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」だという。これは、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリらが弄ぶ「シンギュラリティ論」や上述の米パランティア共同創業者のピーター・ティールなどが唱える「加速主義」といった思想潮流に棹差すものだといえる。

「ソサエティ5.0」の概念図[9]とイスラエル軍8200部隊司令官の時代認識(『ヒューマン・マシーン・チーム』)
この思想潮流がイスラエルと深い親和性を持っていることは、2021年に匿名で出版された『ヒューマン・マシーン・チーム』という電子書籍を読むとよく理解できる[10]。後に、この本の著者が第2節で紹介した軍事AIシステムを開発したイスラエル軍の情報諜報部隊(8200部隊)の司令官を2021年から2024年まで務めたヨシ・サリエルであることを本人が認めた。
ハラリを多く引用しているこの本でサリエルは、AIを用いることによって、「ヒューマン・マシーン・チームは、戦闘開始前に何万もの標的を生成し、戦争中、毎日数千の新たな標的データを集めることができる。さらに、これらの、文脈から標的を生成する能力は、軍が正しい時に正しい標的を攻撃することができるということを意味する」と述べ、まさに「ハブソラ」や「ラベンダー」、「パパはどこ?」のようなシステムの必要性について語っている。
サリエルが、「ローン・ウルフ」の問題について述べていることも重要である。「ローン・ウルフ」とは、抵抗組織に所属しないパレスチナ人が、占領の圧迫に堪えられなくなり、突如イスラエル兵やイスラエル入植者などに対する攻撃を行うという、2015年頃に多発した事例である。AIおよび盗聴・監視システムによる個人データの収集・追跡・ディープラーニングにより、こうした「テロ行為」をも将来的には予知し、未然に防ぐことができるようになるはずだとサリエルは言う。イスラエル軍はこうしたことを本気で目指しているのである。
サリエルは2024年9月に、「10・7」が起こることを未然に防ぐことができなかったことの責任を取り、8200部隊の司令官を辞任した。2026年にはイスラエルのAIスタートアップ「デカルト」の取締役に就任した。イスラエルのスタートアップ企業の多くは、サリエルのようなイスラエル軍のIT関係部隊出身者が立ち上げに関わっている。
5.おわりに
第二次安倍政権発足以降、多くの日本企業が、セキュリティビジネスに関わるイスラエルのスタートアップ企業と業務提携・資本提携を行うようになった。そこにはジェノサイド加担という重大な倫理的な問題があることは間違いない。ここでは、さらに三つの問題を加えておきたい。
一つは、1人のパレスチナ人による「ローン・ウルフ型テロ」の予知を目指しながら、ガザにおける抵抗運動の命運をかけた「アル・アクサーの洪水作戦」さえをも予知できなかったという問題である。「他者」を「人間動物」として見下し[11]、自らを「人間機械」として「ホモ・デウス」に進化できるという人種主義/植民地主義には、かつて情勢認識を誤り続け最悪なかたちでの敗戦を招いた帝国日本と同様、「敵」認識に関する根本的な欠陥が内在している。
例えば、軍事AIは、敵の方がより合理的・包括的な戦略や理念を有している可能性を検討し、従来の敵認識を改め、戦争停止に向けて戦略を練り直す能力を持ち得るのであろうか。あるいは、「降伏」や和解交渉への目標切り替えを合理的選択として示すことができるのだろうか。つまり、イスラエル軍や米軍が開発するAIシステムには、ナショナリズムや戦争プロパガンダが必然的に引き起こす認識上の自家中毒という人間社会、とりわけ西洋近代の問題が引き継がれているのではないだろうか。
二つ目の問題は、戦争遂行における物質的条件に関する理解があまりに杜撰であるように思われる点である。どれだけAIシステムが標的生成を効率的に行ったところで、人間の尊厳を賭した民衆的抵抗を軍事力によって壊滅させることが極めて困難であることは歴史の証明するところである。軍事AIシステムを駆動するためのICチップや電力、データセンターや電力設備の安全、そして大量の「標的」を攻撃するための砲弾・ミサイル・ドローン等々の確保・開発は、一国に閉じた経済で安定的に維持することが不可能だということが、この間の中東における戦争を通じて明確になった。どれだけ軍事的・経済的に非対称な戦争であっても、国内外における広範な支持を欠いた状態で戦争を持続することには限界があるのである。これも、かつての侵略戦争において日本が直面し続けた問題であった。
三つ目の問題は、以上に述べた問題と関わることではあるが、「敵(標的)」を把握するための大量の個人データの収集・分析は、必然的に個人の尊厳を捨象し、究極的にはジェノサイドに結びつき得るものであるが、そのことが自国内における人権侵害に直結するという問題である。「自国民」を強固な排外主義で固め、「外国人」の存在を徹底管理しない限り、一般民衆の中から、国籍を越えて連帯し、人間の尊厳を尊重しなければという考えが消え去ることは考えにくい。だとすれば、戦争状態の中で自国の中から政府に対する批判や「敵」に対する共感を訴える一群の人びとが現れることは避けられず、そうした人々も「テロリスト」予備軍として「標的」にされることになる。それらの「標的」が実際に攻撃されれば、内部矛盾はさらに深まる。
これらの問題は、ガザへのジェノサイド攻撃においてもすでに明らかになっていたと言えるが、対イラン戦争の失敗によって、もはや否定しようのないかたちで世界に晒されてしまった。日本の政治も経済も、「ソサエティ5.0」のような「借り物」の欧米中心主義的近代性に頼るのではなく、自らの過去の近代化の歩みに対する精査・反省を行いつつ、人びとのニーズに即した草の根のネットワークの中から新たな文明の創造を目指すべきではないだろうか。
[1] Yuval Abraham, ‘A mass assassination factory’: Inside Israel’s calculated bombing of Gaza, +972 Magazine, November 30, 2023.
https://www.972mag.com/mass-assassination-factory-israel-calculated-bombing-gaza/
[2] Yuval Abraham, ‘Lavender’: The AI machine directing Israel’s bombing spree in Gaza, +972 Magazine, April 3, 2024.
https://www.972mag.com/lavender-ai-israeli-army-gaza/
[3] Elbit Systems Awarded Approximately $60 Million Contract to Supply Artillery Shells to the Israel Ministry of Defense, Elbit Systems, July 31, 2023.
https://www.elbitsystems.com/news/elbit-systems-awarded-approximately-60-million-contract-supply-artillery-shells-israel
[4] 2023年10月7日、イスラエル封鎖下ガザ地区におけるハマースを主力とする抵抗勢力はイスラエルに対する大規模な越境攻撃を行い、それに対し、イスラエルはガザ地区に対するジェノサイド作戦を開始した。
[5] Elbit Systems Awarded a Group of Contracts in an Aggregate Amount of Approximately $760 Million for the Supply of Ammunitions to the Israeli Ministry of Defense
https://www.elbitsystems.com/news/elbit-systems-awarded-group-contracts-aggregate-amount-approximately-760-million-supply, Elbit Systems, May 21, 2024.
https://www.elbitsystems.com/news/elbit-systems-awarded-group-contracts-aggregate-amount-approximately-760-million-supply
[6] Israel MOD signs $48M deal with for tens of thousands of land munitions, Israel’s government services and information website. March 30, 2026.
https://www.gov.il/en/pages/israel-mod-signs-48m-deal-with-for-tens-of-thousands-of-land-munitions-30-mar-2026
[7] Made in India: The Supply of Weapons and Ammunition to Israel, Amnesty International, July 29, 2026.
https://www.amnestyusa.org/reports/made-in-india-the-supply-of-weapons-and-ammunition-to-israel/
[8] イスラエル軍のIT部隊出身者らによるスタートアップ企業の立ち上げを推進し、海外投資を呼び込む軍産官学連携による「エコシステム」の宣伝文句。2009年に出版された同名書籍が各国で翻訳され(邦訳書は『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』2012年)、広く認知されるようになった。
[9] 「Society 5.0 -ともに創造する未来-」日本経済団体連合会、2018年. なお、この節での「ソサエティ5.0」批判は、2018年7月16日に行われた板垣雄三の講演に着想を得ている(「変わりつつある世界とパレスチナ―ナクバ70年とこれから」主催・パレスチナの平和を考える会 会場・大阪ドーンセンター)。
[10] Bgigadier General Y.S., The Human-Machine Team: How to Create Synergy Between Human and Artificial Intelligence That Will Revolutionize Our World, eBookPro, 2021. 下記サイトで全文閲覧できる。
https://alkhanadeq.com/static/media/uploads/files/the-human-machine-team-how-to-create-synergy-between-human-amp-artificial-intelligence-that-will.pdf
[11] 2023年10月9日、イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は、「我々は人間動物と戦っている」と発言した。
2026年07月30日
ニュースペーパー News Paper 2026.7
7月号もくじ
*座談会 NPT 再検討会議を振り返って
*憲法審査会の動向と課題
*ヘイトにNO!差別と排外主義を許さない社会へ
*被爆81 周年 原水禁世界大会に多くの参加を
*『2026 核も戦争もない21 世紀へ 核問題入門』
*混迷を深める情勢、私たちのとりくみを確実に
2026年07月24日
憲法審査会レポートNo.78
7月22日、参院憲法審査会で「国民投票法改正案」が採決されたものの、24日・本号編集時点では参院本会議での採決には至っていません。国会延長により会期末は25日となっていますが、「副首都」構想法案の成立が見通せないことから、再延長などという動きが出ています。
これは政府・与党の国会軽視による「身から出た錆」であり、野党に責任転嫁できるものではありません。前号の繰り返しとなりますが、「このような政府・与党には憲法という根幹となるルールに手を出す資格などないことが、よりいっそう明白になっていると言えます」。
2026年7月22日(水)第221回国会(特別会)
第8回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9213
【マスコミ報道から】
国民投票法改正案 参議院憲法審査会で賛成多数で可決
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015182381000
国民投票法改正案を可決 参院憲法審、24日にも成立
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026072200136&g=pol
国民投票法案が可決 参院憲法審、24日成立へ
https://www.47news.jp/14664463.html
国民投票法改正案、参院憲法審で可決 ネット規制は「必要な措置を」
https://www.asahi.com/articles/ASV7Q1C2PV7QUTFK008M.html
「国民投票法」改正案が参院憲法審で可決、24日成立へ 賛成の立憲民主「これで完成するわけではない」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/502968
【傍聴者の感想】
7月22日、参議院憲法審査会は、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(衆第11号)(衆議院提出)に対する質疑、討論、採決(附帯決議含む)という流れで進行しました。発声した傍聴者に対して「出ていけ馬鹿野郎」などと怒鳴る委員の姿もあり、一時異様な雰囲気になりました。
事前の幹事会が長引いたため、予定より遅れて10時10分に開会しました。質疑は小西洋之委員(立憲)、原田大二郎委員(公明)、山添拓委員(共産)、奥田ふみよ委員(れいわ)の順に、9人の法案提案者(衆議院憲法審査会委員)に対して行われました。
そもそも憲法改正をするは必要ない、十分な議論がなされていない、ネット社会の状況に十分に照らし合わされていない、憲法改正は望まれていない、という趣旨の質疑者からの発言に対し、衆議院の憲法審査会で繰り返されたものと同様の回答をする法案提案者たち。「憲法審査会を通して議論を進めていきます」「議論を進めていく中で、中身が詰まった部分から形にしていく」という、見切り発車もいいところだと思いました。
今回の「改正手続き法を改正する法案」についても、曖昧な回答の仕方や言い切れない部分が多いところからも、議論途中で「もういいだろう」と採決に進んだように感じられます。
討論に進み、山添委員が反対意見を述べた後、小西委員が「賛成の立場で」と発言した一瞬、傍聴席からは声にならない声が聞こえました。「憲法解釈すらきちんとないまま暴論で毎週憲法審査会をやるなんて」「憲法が壊れたら国民を守れるものはなくなる」というまっとうな発言をしてきた姿が印象的だったこともあり、落胆した傍聴者がいたようでした。
採決は、賛成多数で可決。その後、吉田忠智委員が付帯決議を読みあげた後に、あわせて付帯決議も採決し、こちらも可決となりました。
立民会派が賛成に回った理由は、付帯決議で「ダメなものはダメ」としっかりやっていくからいいだろうということでしょうか。もちろんしっかりと議論ができるなら、問題はありません。しかし、衆議院ではそれが出来ないまま今日に至ったのに、これからの憲法審査会できちんと議論ができるのかは疑問です。
「いのちを見つめ 平和をつなぐ、憲法理念の実現を求める全国署名」にご協力ください!
私たちは、日本国憲法の基本理念「基本的人権の尊重」、「主権在民」、「平和主義」の実現を求めます。
私たちは、すべての人びとの人権が尊重される社会、差別のない社会、多様性を認め合う社会、違いを尊重し合い誰ひとり取り残されることのない社会を求めます。
私たちは、民主主義が守られ、権力の集中を許さない立憲主義に基づく政治を求めます。
私たちは、戦争放棄を宣言する日本国憲法9条を変えることに反対します。
私たちは、憲法前文で謳う「国際協調主義」の実現のために、日本政府が国際社会の先頭に立つことを求めます。
私たちは、政府・国会に次のことを求めます。
1.私たち市民が求めていない憲法「改正」はやめてください。
2.大軍拡路線を止めて、社会保障や教育の充実など市民生活を優先してください。
3.日本政府は、世界平和の実現のために国際社会の先頭に立ってください。
詳しくは→ https://www.peace-forum.com/info/kenpourinen-shomei.html
オンライン署名→ https://change.org/kenpourinenshomei
2026年07月21日
朝鮮戦争停戦73年 戦争終結を求める集会を開催しました
2026年7月7日、連合会館で「朝鮮戦争停戦73年 戦争終結を求める集会 ーアメリカの横暴を許すなー」を開催し、
「覇権にしがみつく米国と、日本の責任」(乗松聡子さん)と「
以下にアーカイブ動画を掲載しますので、ぜひご覧ください。
2026年07月17日
憲法審査会レポートNo.77
本号編集時点では国会に会期延長の提案がされていませんが、7月25日までの小幅延長が見込まれています。こうした動きにより、15日の参院憲法審査会での「国民投票法改正案」の採決は見送られました。また、衆院憲法審査会では当初今国会中に目論まれていた「条文起草委員会」設置が見送られています。
衆院議員定数削減法案しかり、皇室典範改定案しかり、「副首都」構想法案しかり。まともな審議なしで強行しようとするも、国会運営上の最低限のルールすら守れずに空回りする様子が見て取れます。このような政府・与党には憲法という根幹となるルールに手を出す資格などないことが、よりいっそう明白になっていると言えます。
【マスコミ報道から】
国民投票法改正案、立憲が参院憲法審での採決見送りを自民へ伝達
https://mainichi.jp/articles/20260715/k00/00m/010/133000c
与党、条文起草委見送り 衆院憲法審、中道の反発強く
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026071400808&g=pol
2026年7月15日(水)第221回国会(特別会)
第7回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9171
【マスコミ報道から】
参議院憲法審査会 国民投票の課題めぐり意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015177841000
国民投票法案、採決を見送り 参院憲法審、野党が反発
https://www.47news.jp/14629034.html
国民投票法改正案、質疑と採決を見送り 会期延長に野党反発
https://mainichi.jp/articles/20260715/k00/00m/010/391000c
【傍聴者の感想】
15時10分開会と、通常の時間設定(13時ころ)とは異なる開催となった参議院憲法審査会。同時刻で開催された党首討論や国会会期延長といった状況との関係だと思われます。
今回は「改正国民投票法」(改憲手続き法)についての採決を見送るということが確認されての開催となりました。よって、各党各会派からこれについての意見を表明するということになり、一人8分の持ち時間の中で8人が話して散会となりました。
それぞれの発言内容については以下の通りです。
(自民)国民投票法を公職選挙法と同様にすることは、事務負担の観点から考えても必要。広報協議会の役割が重要になるので両院憲法審査会でそのルール作りを進めるべき
(立憲)世論は今、憲法改正を望んでいない。ネット広告規制等がないことは欠陥と言わざるを得ない。自由意志がゆがめられる可能性がある限り憲法改正発議は許されない
(国民)速やかに改憲手続き法を改正すべき。ネット規制については事業者のとりくみに期待する。国が直接ではなくてもファクトチェックする仕組みを整えることは重要
(公明)投開票事務の観点から考えると改憲手続き法は速やかに成立をはかるべき。ただこれで環境が整う訳ではないので、両院憲法審査会事務局は次の準備を始めてもらいたい
(維新)速やかに改憲手続き法を改正すべき。憲法改正に向けた条文起草委員会の常設が必要。参議院憲法審査会にも衆議院憲法審と同様にNHKの取材を入れて欲しい
(参政)もともと日本国憲法は占領下でつくられたもので、「改憲」の考えに「全面改正」の観点を入れるべき。街頭宣伝妨害を防止する国民投票運動の規制の追加も必要
(共産)「国民投票法」もともと安倍政権下で強行に作られた反民主的な内容。根本的に欠陥がある。公選法と性格が違うので並べて考えることは間違い。なぜ今必要なのか
(れいわ)今回は採決にならなかったが来週採決するのであれば意味がない。参院憲法審の会長権限で憲法審査会を開くな。最低投票率の規定がないなど問題が多くある。
各党各会派がそれぞれ自分たちの態度を表明するということに終始した1時間でした。れいわ関係者による傍聴行動、また議員会館前でのパブリックビューイングと報告集会に、支援者が多数駆けつけていました。その影響もあって傍聴席はいっぱいになり、一部入れ替えも実施されました。
今週「改憲手続き法」の採決を見送る決定を話し合った際、「来週は採決を実施する」とすでになっているのではないかと感じてしまいました。この一週間、国会の会期延長とあわせ、立憲を中心とした野党のがんばりをできるだけ後押ししたいと考えます。7月16日に開催される衆議院憲法審査会はNHKが入り、放送されます。そこでの議論も注視をしていきます。
今回の法改正は、立会人の要件緩和等が内容になっています。その根底にある「公職選挙法と国民投票法はできるだけ同じルール」が望ましいのか、「二つのそれぞれの違いを考えると異なっていること」が望ましいのか、その相違について議論を尽くす必要があると感じました。憲法「改正」の国民投票についてはもちろん実施したことがないのですから、そこに関わる事務作業の観点も含めた幅広い議論は必要だと考えます。憲法「改正」の中身の議論とは分けたうえで、手続きについても十分見通しを持つことができないのであれば、おのずと結論は、国民投票の実施はそう簡単ではないとなるはずです。拙速に進めると混乱や分断を招く危険性が高まります。
何をもって「時が来た」と判断したのか、今日の憲法審査会の各党各会派の意見表明を聞いていると、到底議論が深まった状態とは思えません。審査会を開くのであれば、その議論内容については「憲法が活かされた社会となっているか」「そうなっていないのであればどういった法改正が必要か」を考える必要があるのだと思います。憲法「改正」の結論ありきで、手続きをどうするかといった話を展開する審査会に、はじめからおわりまで「そうじゃないのだけど」と感じてしまう私の感覚が、間違っているのでしょうか……。
2026年7月16日(木)第221回国会(特別会)
第13回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56385
※「はじめから再生」をクリックしてください
【マスコミ報道から】
衆院憲法審査会 今国会の審議振り返る総括的な討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015178131000
自維国、緊急条項「議論加速を」 中道は慎重―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026071600107&g=pol
自民、早期の改憲案主張 審査会初中継、中道慎重対応を
https://www.47news.jp/14631304.html
改憲の起草委、今国会でも困難に 高市首相が「時は来た」と主張も
https://www.asahi.com/articles/ASV7J30XLV7JUTFK007M.html
憲法9条めぐり自民「自衛隊明記」維新「国防軍の創設」国民民主「優先度低い」…改憲勢力間でも違い鮮明に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/501868
憲法審査会、事実上最後の討議 改憲政党間の主張に隔たり顕著
https://www.sankei.com/article/20260716-JF7PESIOXVMB3FK4PTHUAGNNLM/
【傍聴者の感想】
会期通りであれば今国会最後となる審査会は、国会が延長されるかどうか定まらない中でしたが、「今日で終了」の雰囲気が色濃く漂いつつも、審査会始まって以来初のNHKの実況中継が入る(ネット中継は今までもやっていましたが)ということで、少し「まじめ」さを増して始まりました。
本日の課題は総括的な討議ということで、7つの会派がそれぞれ10分ずつ、会派の主張を行うというもの。したがって相互の質疑応答や新たな知見の提示もありませんでしたが、NHK中継ということもあり、あらためて各会派の姿勢をわかりやすく示すものでした。
自民党の(新藤幹事の)スタンスは「現行憲法の未完成部分を補う」というもので、今の憲法を基本的にあまり悪く言わないというもの。悪しざまに「みっともない憲法」などと発言していた安倍元首相に比べればトーンが変わっていますが、この辺がテレビ中継を意識したものなのでしょうか。
維新の会は、審査会の定例化や「議論が進捗した」ことは自身が成し遂げた成果であると強弁することに半分を費やし、残りの半分は国民民主党・玉木代表の「9条は後回しに」という主張をやり玉にあげ、改憲を主張しつつも与党との違いを目立たせようとする国民民主党の姿勢を批判しつつ自らの「革新性」を主張するというものでした。
その国民民主党の主張は、憲法改正は「護憲・改憲」「保守・リベラル」という二項対立を乗り越えて進まねばならず、議論の幅が大きい9条は急がずに、緊急状態条項と合区解消にしぼって進めるべきで、そうしないと再来年の参議院選に間に合わないから夏休み返上で審査会をやるべきだというもの。本質的な議論を避けつつ改革派のポーズを示し続ける、いかにも玉木代表らしいというのが筆者の感想です。
これらに対して中道改革連合は、改憲そのものを目的とした議論には与しないということを前提としつつ、3つの原則を堅持するために必要があれば検討することは拒まないという姿勢。その上でアメリカとの同盟関係の維持、防衛力の強化は必要であり、安保法制によって相互防衛関係が整備されているから憲法改正は必要がない、一方で自衛隊の民主的統制のために73条に書き込むことは検討の余地があると表明。また緊急事態条項よりも平時の国会機能の充実・強化が重要としつつ、万万が一のための緊急事態に備えるなら、その際に権力の乱用を防ぐための要件の検討こそすべきという見解を示しました。従来の立憲民主党の考え方と変わってきていると個人的には感じる部分もありますが、主張そのものが変わったのか、強調するポイントが変わったのか、目指すものまで変わったのかなどは、審査会での意見表明から軽々に判断はできません。
憲法について議論をすること、テレビ中継を含めて少しでも多くの人が知る機会を得ることは、筆者は悪いことだとは思いません。仮に改憲発議ということになれば、多くの人があらためて憲法に興味、関心を持ち、このことが憲法の価値をさらに高めることになるかもしれません。
ある意味最悪なのは、改憲などしなくても憲法理念が骨抜きにされ、憲法が守られていようがどうだろうが関係ないという事態でしょう。
改憲阻止を声高に叫ぶだけでなく、日常的に個人を尊重すること、主権者としての権利を守ること、他国であっても戦争の犠牲に胸を痛めることを当たり前のことにしていくことが憲法を実践することだろうと思います。
「いのちを見つめ 平和をつなぐ、憲法理念の実現を求める全国署名」にご協力ください!
私たちは、日本国憲法の基本理念「基本的人権の尊重」、「主権在民」、「平和主義」の実現を求めます。
私たちは、すべての人びとの人権が尊重される社会、差別のない社会、多様性を認め合う社会、違いを尊重し合い誰ひとり取り残されることのない社会を求めます。
私たちは、民主主義が守られ、権力の集中を許さない立憲主義に基づく政治を求めます。
私たちは、戦争放棄を宣言する日本国憲法9条を変えることに反対します。
私たちは、憲法前文で謳う「国際協調主義」の実現のために、日本政府が国際社会の先頭に立つことを求めます。
私たちは、政府・国会に次のことを求めます。
1.私たち市民が求めていない憲法「改正」はやめてください。
2.大軍拡路線を止めて、社会保障や教育の充実など市民生活を優先してください。
3.日本政府は、世界平和の実現のために国際社会の先頭に立ってください。
詳しくは→ https://www.peace-forum.com/info/kenpourinen-shomei.html
オンライン署名→ https://change.org/kenpourinenshomei
2026年07月10日
憲法審査会レポートNo.76
衆院議員定数削減法案・「副首都」構想法案をめぐる与党の横暴をめぐり、野党が対決姿勢を打ち出したため、この間、衆参ともに憲法審査会の開催がありませんでした。
衆院議員定数削減法案の見送りによって「国会正常化」が図られた結果、7月9日、2週間ぶりに衆院憲法審査会が開催、16日にはテレビ入りの開催が合意されています。
いっぽう、参院憲法審査会も8日開催の幹事懇談会で、15日の開催とそこでの「国民投票法改正案」審議と採決で合意しています。
したがって今国会中の「国民投票法改正案」成立が見込まれています。このことが改憲発議そのものと直結しているわけではありませんが、今後も改憲に向けた策動を強めていくことが予想されることから、こうした動きにしっかりと対峙していくことが重要です。
【マスコミ報道から】
国民投票法改正案、15日採決 参院憲法審、今国会成立へ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026070800808&g=pol
参議院憲法審査会 国民投票法改正案 15日採決で大筋合意
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015171931000
2026年7月9日(木)第221回国会(特別会)
第12回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56368
※「はじめから再生」をクリックしてください
【マスコミ報道から】
衆院憲法審査会 「合区」や自治体テーマに2回目の討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015172671000
自民「改憲で地方自治明確化」 中道は慎重姿勢―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026070900150&g=pol
合区、地方自治で各党討議 9条改正も、衆院憲法審
https://www.47news.jp/14596580.html
衆院憲法審、2週間ぶり開催 参院選「合区」巡り討議も与党内に考えの隔たり
https://www.sankei.com/article/20260709-AVFQ2PEDNFL3DECZN2E65ODPDA/
「いのちを見つめ 平和をつなぐ、憲法理念の実現を求める全国署名」にご協力ください!
私たちは、日本国憲法の基本理念「基本的人権の尊重」、「主権在民」、「平和主義」の実現を求めます。
私たちは、すべての人びとの人権が尊重される社会、差別のない社会、多様性を認め合う社会、違いを尊重し合い誰ひとり取り残されることのない社会を求めます。
私たちは、民主主義が守られ、権力の集中を許さない立憲主義に基づく政治を求めます。
私たちは、戦争放棄を宣言する日本国憲法9条を変えることに反対します。
私たちは、憲法前文で謳う「国際協調主義」の実現のために、日本政府が国際社会の先頭に立つことを求めます。
私たちは、政府・国会に次のことを求めます。
1.私たち市民が求めていない憲法「改正」はやめてください。
2.大軍拡路線を止めて、社会保障や教育の充実など市民生活を優先してください。
3.日本政府は、世界平和の実現のために国際社会の先頭に立ってください。




