2026 | 平和フォーラム

2026年06月24日

ニュースペーパー News Paper 2026.6

6月号もくじ

News Paper 2026.6

*5.3 憲法記念日 参加者の声
*各地の憲法集会 (北海道・兵庫・広島)
*第3 回国際連帯ハンマダン in 京都
*2026NPT 再検討会議 参加報告
*〔本の紹介〕『シン・ケンポウ』
*最西端の島・与那国で地方自治を考える

2026年06月19日

憲法審査会レポートNo.74

6月18日開催の衆院憲法審査会で「国民投票法改正案」が可決され、19日、衆院本会議を通過しました。参院については24日の参院憲法審査会をもっての審議入りが予定されています。

十分な審議時間もない、改憲それ自体を目的化した、ただただ前のめりな「改正」強行と言わざるを得ません。

【マスコミ報道から】

国民投票法改正案 衆院憲法審査会で賛成多数で可決
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015153261000

国民投票法改正案、衆院憲法審で可決 今国会中の成立めざし
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e3f246daa5641056c7dc60769e018dcf6de4572

改憲手続き定めた国民投票法改正案、衆院憲法審査会で可決…投票立会人の選任要件を公選法とそろえる
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260618-GYT1T00235/

憲法改正手続き定めた「国民投票法改正案」衆議院憲法審査会で可決
https://www.fnn.jp/articles/-/1061957

国民投票法改正案 衆院を通過 本会議で賛成多数で可決
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015154441000

【速報】国民投票法改正案が衆院を通過 24日から参院憲法審査会で審議入りへ
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2743210

【参考】

〈社説〉憲法の岐路 国民投票法改定 急がず根本から議論を
https://www.shinmai.co.jp/news/article/gf01d8ntvvksmgmh3n1u7re0

「お互いに顔を立てて」参院は憲法審見送り、巨大与党の衆院と温度差
https://www.asahi.com/articles/ASV6K32W4V6KUTFK00QM.html

2026年6月18日(木)第221回国会(特別会)
第10回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56339
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 9条をテーマに与野党が討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015153491000

【詳報】9条改正 各党の見解そろわず 衆院憲法審査会
https://www.47news.jp/14489114.html

9条改正巡る論点整理提案 自民、議論加速狙う―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061801025&g=pol

「9条」集中討議も各党見解に隔たり 衆院憲法審、自民は意見集約を呼びかけ
https://www.sankei.com/article/20260618-ZPAKAVGA5ZJBJLYLP6CBGYGMOI/

【傍聴者の感想】

今回の衆院憲法審査会は、国民投票法改正案の採決が、開始早々行われました。極めて淡々と、委員の緊張感もなく、ヤジもなく、傍聴席は見守る市民でいっぱいにはなってはいますが。

そもそも解せないのですが、3週間前の第7回審査会で、今後の議論のテーマは何にしましょうかと話し合っていました。そして2週間前の第8回審査会で国民投票をめぐる集中討議を行っています。その翌日の6月5日、自民、維新、国民、参政の4党が共同して国民投票改正案を国会に提出。6月11日の第9回審査会で、国民投票法改正案の趣旨説明と若干の質疑が行われたのにすぎません。

それなのに、今回の採決。あまりにも議論がなさすぎます。重要法案がたかだか数時間にも満たない審議時間でよいのでしょうか。議論が尽くされるべき課題については、可もなく不可もないような「次に掲げる事項について必要な措置を講じるものとする」付帯決議が付されたにすぎません。反対したのは共産党の委員のみ。

続いて行われたのが、憲法9条についての討議。まずは各会派が9条にかんしての見解を述べました。委員はほぼ改憲派ですから、特に目新しい議論はありません。国民の玉木さんが、与党の自民と維新の9条改正案で違いがあるのは良くないから、与党でまとめてくださいね、とはっぱをかけているのが印象的でした。

各会派の見解表明の後、数人の委員の発言もあったのですが、気になったのは、一人を除いてすべての委員が、「激変する安全保障環境」を枕詞にしている点です。そして、一人の委員を除いて、憲法前文および植民地主義、加害の歴史に関しての言及なり認識を全く示さない点です。国民やチームみらいが拙速な議論は避けるべきと述べたことがまだしもの救いでしょうか。

2026年06月12日

憲法審査会レポートNo.73

2026年6月10日(水)第221回国会(特別会)
第5回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9090

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 緊急事態対応などテーマに参考人質疑
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015146141000

緊急事態条項「不要」 参院憲法審で参考人質疑
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061000928&g=pol

緊急事態条項「必要ない」 有識者、参院集会で対応可
https://www.47news.jp/14447584.html

【参考】

(社説)「合区」の解消 改憲で対応する問題か
https://www.asahi.com/articles/DA3S16477817.html

【傍聴者の感想】

このところの衆院憲法審査会は、「緊急時の国会機能の維持」を理由とした緊急事態条項の創設、議員任期の延長について、議論は出尽くしたのだから発議に向けた手続きを進めるべきと改憲推進会派から声高に主張されています。

憲法第54条では、「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない」とされ、2項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とされています。

この日の参院憲法審査会は、早稲田大学法学学術院の長谷部恭男教授と専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授を参考人として招き、衆院憲法審査会で議論の中心となっている緊急事態時の対応について参考人との質疑が行われました。

長谷部教授は、衆院の解散後に大規模災害が起きても、現行憲法で参院の緊急集会での対応が規定されているのだから、参院で国会機能を暫定的に代替できると述べられました。その上で、「(憲法第54条1項による)参院緊急集会の70日限界説」について、70日と限定しているのは、時の政権の都合により国会を召集しないことを防ぐためであり、政権の居座りを許さないために設けられていると解するべきとしました。

専修大学大学院法務研究科の只野雅人教授は、あまりにも想定し難い緊急時を挙げて緊急事態条項を創設すると、例外的な対応を長期化させることになりかねず、例外を例外にとどめるための制度設計をすべきとし、緊急事態条項は強い手段と広い例外を認めることになりかねないと指摘しました。その上で、長期間衆議院選挙が実施できない場合も、参議院の緊急集会で対応することが許容されるという認識を示しました。

緊急事態条項は、緊急事態を名目に政権を批判する言論や運動が抑圧される危険性をもちます。権力側にことさら強力な権限を持たせることで差別や暴力、人権侵害が広がった歴史があります。東日本大震災や新型コロナなど、これまでの大災害や感染症の対応で、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという事例も示されていません。

現行憲法でも参議院の緊急集会などで対応可能法であることは、この日の参考人からの意見で理解が深まりました。まずは法律でできることを尽くしてから議論すべきで、「改憲ありき」の衆院憲法審査会の議論の進め方に違和感を覚えます。

憲法審査会の衆参両院の温度差や議論内容の乖離が明らかになっています。こうした議論の積み重ねこそ重要であることを感じます。「時は来ました!」とする高市首相の認識は決定的に誤りです。

2026年6月11日(木)第221回国会(特別会)
第9回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56323
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 自民など4党提出の国民投票法改正案 審議入り
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015147181000

自民、ネット広告に法制措置も 国民投票運動巡り
https://www.47news.jp/14451227.html

憲法9条で溝浮き彫りの自民と維新 「2項」維持巡り 衆院憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/859b6cde497aa1e543bf015c3f04b25eff3a9a5e

投票環境の整備など盛り込んだ国民投票法改正案が衆院憲法審査会で審議入り 来週採決の見通し
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2726462

国民投票法改正案18日採決へ 衆院憲法審で与野党合意 立会人要件緩和や離島開票規定など整備
https://www.fnn.jp/articles/-/1057557

国民投票法改正案が審議入り 野党は投票運動巡るネット規制主張 自民は採決に向け調整
https://www.sankei.com/article/20260611-532SM4ASPFJLFGBWFRKUBFJUO4/

【傍聴者の感想】

本日の審査会は、すでに施行されている公職選挙法の改正内容に国民投票法も平仄を合わせることを目的とした、改正国民投票法の改正案が議員立法で提出され、趣旨説明と質疑が行われました。

立会人の選出や選挙時のFM放送が主な内容で、このこと自体に反対する会派はほとんどありませんが、中道改革連合はそもそも宿題となっている附則4条をめぐる課題や、この間の審査会でもたびたび議論となってきたニセ情報対策、有料広告の資金規制、外国勢力の介入の課題などについて早急に解決することの約束を迫りました。

チームみらいは普通選挙も含めた投票環境の改革、共産党は投票全体を取り仕切る広報協議会が会派比率によって構成されることの不当性などを訴えましたが、法案提出議員は「速やかに議論する」「必要があれば検討する」という答弁に終始しました。

改憲にかかる投票は、「人・政党が自由に主張し、人・政党に投票する」選挙とは異なり、「改正」案の正否を問うものなので、発議にあたっては当然ながらその目的・理由や経過や影響などについて賛否双方の考え方が適切かつ公平に広報されなければなりません。

しかし現行法の規定では、資金力が大きいほど有利、ウソでもデマでも言ったもん勝ち、改憲推進派が投票全般を取り仕切るという状況になることは明らかです。加えて最低投票率の定めもないので、改憲派は改憲に賛成する人だけが投票すればよいという考えに流れるのは必至だと思います。

議論の中では改憲派もフェイク対策や資金規制を課題として発言をしてきていますが、真剣に取り組むつもりがあるかは極めて疑わしく思っています。

改憲発議や国民投票が、市民の中に分断と対立をあおり、社会の不安定化を招くようなことになれば、そのこと自体からして改憲は失敗です。投票制度のあり方は、投票の信頼度や納得性を高めるために極めて重要です。現状における「改憲反対派は敵である」という意識を隠さない改憲推進派の姿勢をみるにつけ、現行の投票法は断じて容認できません。

投票法改正案の質疑後は再び各会派からの「テーマ出し」となり、自民と維新の会は9条と自衛隊について、中道は政治広告に関する規制のあり方について意見を述べました。国民民主の玉木委員は、緊急時の議員任期延長と国会機能の維持に論点を絞り込まないと発議にたどり着けない(だから9条とか自衛隊とか他の課題はもう言うな?)旨の発言をし、参政、チームみらい、共産と発言をして審査会を終了しました。

2026年06月05日

憲法審査会レポートNo.72

【参考】

【速報】自民・維新・国民民主・参政の4党が投票環境の整備を盛り込んだ国民投票法の改正案を提出
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2712066

4党、国民投票法改正案を提出 改憲へ今国会成立期す
https://www.47news.jp/14419640.html

2026年6月3日(水)第221回国会(特別会)
第4回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9073

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 緊急事態対応と緊急集会テーマに意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015139851000

自民、任期延長「必要」 参院憲法審、立民は反対
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026060300972&g=pol

緊急事態条項創設を―自民 任期延長改憲に反対―立民
https://www.47news.jp/14410887.html

参院自民、緊急事態条項の必要性強調 衆院との温度差も 憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ae187a706c07227e59b0ab1adb06128db1cdbb5

歯止め利かない、緊急集会でできる 緊急事態条項、参院で反対続出
https://www.asahi.com/articles/ASV633DTXV63UTFK00QM.html

【傍聴者の感想】

今回のテーマは「緊急集会」、憲法第54条にある参議院の緊急集会について議論が展開されました。はじめに法制局局長からそもそも「緊急集会」とはどのような想定で何を行うかの説明があり、参議院憲法審査会事務局からこれまでの議論経過についての話がありました。

その後、各党・各会派からの意見表明と説明への質疑が行われ、概要についてのメモは以下の通りです。

自民・古賀さん:
・国民主権の原理からすると国会議員の任期延長の改憲は必要
・いわゆる「70日」という限定的な考えを画一的にするべきではない
・多くの国が何らかの緊急事態条項を制定している
立憲・小西さん:
・衆議院で議論されている「70日」はまったく根拠のない一つの考え方に過ぎない
・「良識の府」として参議院の機能がある、衆議院の議論には抗議の意を示す
国民・足立さん:
・衆参をまたぐ議論が必要であることから、衆参合同の憲法審査会の開催が必要
・衆議院の「イメージ案」について自民党は党として了解、了承しているのか
⇒自民党は党本部でこのことを議論していないとの返答
公明・谷合さん:
・選挙を行うことが第一であり、選挙困難事態をどう防ぐのかを議論すべき
・参議院の緊急集会があるが、極力早く二院制に戻す必要がある
・「合区解消」の議論(地元から代表者を選出する)とセットで議論すべき
維新・柴田さん:
・参議院の緊急集会の限界がある→近いうちに国会が開かれるという前提がある
参政・安達さん:
・緊急事態条項は必要だが、衆議院で出されたイメージ案には反対
・自衛=軍隊とセットで議論をすべき
・日本の建国の精神や歴史に学び、何を守りたいのか、情報戦、経済戦に備えるべき
共産・山添さん:
・戦前の反省から緊急事態時に政府の一存で決めてはならないというのが参議院の緊急集会の意味
・超法規的措置は悪用されることを歴史の事実から学ぶ必要がある
れいわ・奥田さん:
・戦争ビジネス、大企業のいいなりでは戦争への道が加速する
・日本国憲法99条の義務がある国会議員、議員の任期延長など憲法違反

その後、もう一巡ずつそれぞれの議員が意見表明や質問を行いました。

衆議院で言われている議員の任期延長を含む緊急事態条項による改憲の必要性を強く訴えたのは自民・国民・維新、明確に反対を述べたのは立憲・共産・れいわ・参政となりました。

ただし参政党は緊急事態条項など憲法の一部を変えることよりも憲法全体を「日本人」で創るべきとの主張です。

立憲の辻元さんは東日本大震災が起きた後に、衆議院解散を迫る内閣不信任案を出そうとした自民党、新型コロナパンデミックの渦中にある中で大阪都構想の住民投票を実施したのが日本維新の会という事実を忘れてはなりませんと話されました。

日本維新の会の浅田さんは「参議院議員がいる前提の緊急集会において、参議院議員の多くが命の危機に瀕したら…」といった話もありました。

そもそもの立法事実(現状を変えなくてはならない事実)がどこにあるのかという原点は、緊急事態条項には明確にはないと感じています。

「この先こういった困ったことが起こらないように…」「いざという究極的な状況になったときのために…」そう話す国会議員がまずは考えるべきことは、「困ったこと」や「究極的な状況」を作り出さない政策の実現であるはずです。

究極的な自己矛盾議論を聞かされながら、そもそも政治の役割とは何ぞやという、当たり前のことをずっと考えていました。

現在の世界情勢を引き合いに危機意識を煽り、この道しかないと狭義の「防衛」政策に陥り、勇ましい言葉で人気を得ようとする政治状況を見たときに、やはりいつか来た道を歩み始めている実感を持たずにはいられません。

私は私なりに、歴史の事実に学ぶという言葉の意味を、同じ間違いは繰り返さないという教訓であると思ってきました。

憲法は誰のためにあるのか、難しくなくシンプルに考えることで分かりやすく発信して言えるように心がけたいと考えています。

2026年6月4日(木)第221回国会(特別会)
第8回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56312
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【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 国民投票をテーマに与野党が集中的な討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015140911000

衆院・憲法審査会が国民投票テーマに集中討議 自民は国民投票法改正案を今国会提出の方針示し速やかな審議求める
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2709991

自民、国民投票法改正を提案 憲法審、改憲発議で環境整備
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026060400125&g=pol

自民、憲法改正国民投票法審議を 中道、CM規制の議論前提
https://www.47news.jp/14413599.html

ネット広告の規制、手つかずの「宿題」 改憲の国民投票、整わぬ土台
https://www.asahi.com/articles/ASV642SCRV64UTFK00HM.html

緊急事態条項 三つの論点 危うい緊急政令、どうする国会機能維持、創設不要論も
https://news.yahoo.co.jp/articles/f99834836503d9932960d51b606fdc1034df48ee

2026年05月31日

バリカタン26演習に1400名の自衛隊員を派遣 高まる米中、日中、そしてフィリピンとの緊張

木元茂夫

 平和国家としての日本のありようは、いま、重大な岐路に立たされている。4月21日の武器輸出の全面的な解禁。5類型に限定し殺傷能力の高い武器の輸出を禁じてきた重要な政策は、国会に諮ることもなく、高市内閣の一存で放棄された。

 続いて米国とフィリピンを中心とするバリカタン演習に、自衛隊は1400人もの隊員を送り込んだ。

 小泉防衛相は5月3日から7日まで、インドネシアとフィリピンを訪問し、5日にはフィリピンのテオドロ国防相と「共同ステートメント」(注1)を発表した。

 「東シナ海及び南シナ海における、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを改めて表明するとともに、日本の尖閣諸島周辺における領海侵入や領空侵犯を含め、日本周辺の海空域における中国による威圧的な活動の規模及び頻度の増大について、深刻な懸念を表明した。また、両閣僚は中国によるフィリピンに対する危険かつ威圧的な活動の強化を含む、南シナ海における情勢に関する深刻な懸念を共有した」と中国を名指しで非難している。
確かに、中国のフィリピンに対する対応は乱暴で、至近距離からの放水等が繰り返され、フィリピン側に負傷者も出ている。しかし、南シナ海での両国の紛争と、尖閣諸島の日中の紛争とは原因をまったく異ににするものである。

 尖閣問題は2010年に野田内閣が実行した国有化が原因である。 平和的な交渉で中国と合意すべく努力するのが筋であろう。原因を異にする二つの事象を結び付け、中古護衛艦の輸出に持ち込もうとする高市内閣のやり方は、乱暴極まりないものである。

●演習の概要

 米インド太平洋軍司令部はバリカタン2026について、次のように解説している。

 「フィリピン軍と米軍は、4月20日から5月8日までフィリピン諸島全体で第41回演習バリカタンを実施します。 フィリピン、アメリカ、オーストラリア、日本、カナダ、フランス、ニュージーランドから17,000人以上の人員が肩を並べて訓練し、さらに17か国が国際オブザーバープログラムに参加します。この演習では、航空、陸、海、宇宙、サイバー分野にわたる最先端の訓練が行われます」(USINDOPACOM NEWS 2026年4月24日)。

 自衛隊の内倉浩昭統合幕僚長は4月17日の記者会見でバリカタン2026への参加について、その軍事的な目標を明確に述べた。

 「本訓練に参加する目的は、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力の維持・向上を図るとともに、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出に寄与することであります。本訓練では、日比円滑化協定(RAA)を適用し、フィリピン領域内において行う統合訓練としては、初めて装備品を使用した実動訓練を実施する等、米比をはじめとする3か国との協力関係を一層深化させる意義があります。また、本年3月に新編されました水陸両用戦機雷戦群及び所属艦艇が、水陸機動団と共に参加することは、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力を一層強化する点においても大きな意義があると考えております。

 次に、昨年度との相違点についてお答えいたします。自衛隊はこれまで、主にオブザーバーとして参加しておりました。昨年度は護衛艦「やはぎ」を参加させましたが、主として幕僚訓練や人道・民生支援への参加であり、実動訓練への参加は限定的なものにとどまっておりました。また、昨年度の参加規模は人員約150名でしたが、本年度は参加人員が一気に約10倍の約1,400名に加えまして、護衛艦「いせ」、そして「いかづち」、輸送艦「しもきた」、輸送機「C-130H」、救難飛行艇「US-2」、88式地対艦誘導弾等、参加アセット及び規模が大きく拡大いたしました」(注2)

 バリカタン2026に続いて、自衛隊は5月11日から20日まで、やはり米国、フィリピンとの合同演習である「サラクニブ26(タガログ語で「盾」の意味)」に参加した。訓練広報には「サラクニブ」の文字はなく、「米陸軍等との実動訓練(ジョイント・パシフィック・マルチ・ナショナル・レディネス・センター26)」となっている。第12旅団第2普通科連隊(上越市)、電子作戦隊(朝霞駐屯地)、対特殊武器衛生隊(東京・三宿駐屯地)などが参加と発表された。参加人員は記載されていないが、約420人と報道されている。(注3)

 「第12旅団は、総合訓練において米・豪・比・ニュージーランド陸軍と連携して、陣地攻撃、ヘリボン攻撃等を一連の状況下で演練し、作戦遂行能力の向上を図りました」(注4)

 米陸軍のHPには、16式機動戦闘車を使って戦闘訓練をする陸自の写真が掲載されている。バリカタン26の訓練広報と比較すると、発表されていない事項が多い。

●自衛隊の参加規模の増大

 大枠は内倉統幕長の発言のとおりであるが、自衛隊は昨年からこの演習に正式参加したが25年と26年の参加部署を、統幕が発表した訓練広報(2025年4月11日と2026年4月14日)によって比較してみる。

2025年参加部署   2026年参加部署  設立年月日と所在地等
統合幕僚監部    統合幕僚監部     2006年設置。
統合作戦司令部   統合作戦司令部    2025年3月発足。
陸上幕僚監部    陸上幕僚監部     1954年設置。
陸上総隊      陸上総隊       2018年創設。司令部東京・練馬区。
          北部方面隊      北海道に配備されている4つの師団で編成。
          陸自富士学校     静岡県。陸自開発実験団が置かれている。
陸自中央輸送隊              2018年に再編成。隊本部横浜。国内外の輸送を担当。
陸自武器学校               2026年3月廃止。後方支援学校に統合。
陸自需品学校               2026年3月廃止。後方支援学校に統合。
陸自輸送学校               2026年3月廃止。後方支援学校に統合。
自衛隊中央病院              1956年設立。東京都世田谷区。病床数500。
          入間病院       2022年3月発足。航空幕僚長が指揮監督。
自衛艦隊      自衛艦隊       1954年創設。司令部横須賀。艦艇航空機部隊を指揮。
          情報作戦集団     2026年3月発足。司令部市ヶ谷。海自の情報組織
航空幕僚監部    航空幕僚監部     1954年設置。
航空総隊      航空総隊       1958年創設。司令部東京・横田基地。
航空支援集団    航空支援集団     1989年創設。司令部東京・府中市。
航空システム通信隊 航空システム通信隊  2000年再編成。隊本部は東京・市ヶ谷。
海上輸送群                2025年3月発足。司令部呉。
          自衛隊サイバー防衛隊 2022年3月発足。隊本部は東京・市ヶ谷。

 まずは、統合作戦司令部。「4月18日から5月9日の間、情報発信分野に関する活動を米比を含む参加国と共同で実施しました。同盟国及び同志国関係者との対面による調整、認識の共有等により、信頼の醸成及び相互理解の促進を図りました。統合作戦司令部は、情報発信分野に関する活動を継続し、領域を横断した能力の更なる強化に努めます」と当たり障りのない記述をしているが、日米それぞれが統合運用をしている中で、情報の共有化を進めたことを示している。「更なる強化に」とあるのは、改善すべき課題がいくつもあるということだろう。(注5)

 次は北部方面隊と陸自富士学校。バリカタン26の特徴の一つは地対艦ミサイルの発射である。そのため、北海道に配備されている第1特科団から88式地対艦ミサイルをフィリピンに送り込んだ。1988年に正式配備されたので「88式」という呼称がつけられている。

 陸自富士学校の参加は、ミサイル発射の検証のためと推測される。富士学校には「陸上自衛隊開発実験団」が配備されている。第1特科団や第1空挺団と同じく団長は陸将補(陸軍少将)が担当する大組織である。開発団の中に装備実験隊があり、第1から第7実験科が置かれている。第2実験科が「火薬、ロケット及び弾薬」の担当で、第3実験科が「誘導武器」(ミサイル)の担当である。(防衛省「陸上自衛隊開発実験団の組織に関する訓令」最終改正2015年10月1日)

 次に、佐世保に配備されている上陸作戦が専門の水陸機動団。これは一覧表にある陸上総隊の一員である。地元のKTNテレビ長崎は4月14日、「佐世保から陸上自衛隊水陸機動団や海上自衛隊の輸送艦などが派遣されました。派遣されたのは陸上自衛隊相浦駐屯地の水陸機動団が持つ「水陸両用車・AAV7」や、海上自衛隊 水陸両用戦機雷戦群の輸送艦「しもきた」と護衛艦「いせ」です」「佐世保から派遣される部隊の隊員は合わせて約860人で、共同訓練では水陸両用作戦訓練などに参加する予定です」と報じた。「いせ」はヘリコプターを最大11機搭載するヘリコプター空母であり乗組員は約340人。すると約520人が水陸機動団の派遣人数ということになろうか。

 バリカタン25では、艦艇の派遣は、もがみ型護衛艦「やはぎ」1隻だけだった。この時はオーストラリアに売り込みを掛けている最中だったので、参加各国への「お披露目」という要素もあった。今回派遣された艦艇には、そうした要素はない。

 大型揚陸艦「しもきた」(第1水陸両用戦隊、呉)には、陸自隊員330名分のベットがある。水陸両用戦機雷戦群の旗艦であるヘリ空母「いせ」(佐世保)、そして、横須賀配備の護衛艦「いかづち」の3隻となった。「しもきた」と「いせ」に水陸機動団の隊員を載せ、ホーバークラフト艇かゴムボート、大型ヘリで地上に上陸させる。艦砲射撃などで「いかづち」がこれを掩護する。揚陸作戦を想定した艦隊編成である。

 訓練内容の変化を見てみよう。バリカタン25では自衛隊が参加したのは「多国間海上機動」のみで、統合兵站訓練、水陸両用作戦、対艦戦闘の3つはオブザーバー参加に留めていた。

 それがバリカタン26では、①多国間海上訓練、②水陸両用作戦訓練、③対着上陸射撃訓練、④対艦戦闘訓練、⑤統合防空ミサイル防衛訓練、⑥サイバー攻撃等対処訓練、⑦統合衛生訓練,⑧滑走路被害復旧訓練の8つの分野の訓練が設定され、自衛隊は参加した。対艦戦闘訓練-地対艦ミサイルの発射訓練は大々的に報道された。対着上陸射撃訓練は、海岸線から上陸して来る相手に実弾射撃を加えて、撃退する訓練であるが、水陸機動団の隊員40名が海上に設置した目標に向けて射撃する様子も報道されている。

●バリカタン演習全体の特徴-ルソン海峡と台湾南部をにらみミサイルの重層的な配備

 自衛隊の訓練参加の態様を見てきた。次に米軍の演習参加のようすを見ていきたい。今回の演習の最大の特徴は、各種ミサイルの重層的な配備である。

 まずは、台湾と180kmしか離れていない、フィリピン最北部のイトバヤット島に米軍の高機動ロケット砲システム・ハイマースを搬入した。次にルソン島北部のカガヤン北空港に無人対艦ミサイル「ネメシス」(Navy Marine Expeditionary Ship Interdiction System の略。直訳すれば海軍・海兵隊遠征艦阻止システムだろうか)を搬入。陸自の88式地対艦ミサイルも加わる。そして、2024年のバリカタン演習以来、米軍がフィリピンに残置しているタイフォン・ミサイルシステム(トマホークと対艦・対空ミサイルSM-6を組み合わせたもの)を、ルソン島の後方にあたるレイテ島のタクロバン空港に配備して5月5日に発射、北西に約630km飛翔して、フォート・マグサイサイ基地に着弾している。(注6)

 また、今回の演習では補給物資の搬入と配送も重視された。

 後方拠点として重視されたのはミンダナオ島である。「艦から陸への装備の荷降ろしや移動を通じた、動的な海上維持と分散物流。バリカタン2026開始前に、フィリピン軍と米軍はカガヤン・デ・オロ港(ミンダナオ島)で海上前置部隊輸送船からの装備と物資の荷降ろしを行い、ルソン島全域に輸送・配布しました。訓練支援のため、物資や装備の移動・配布は演習中も継続されます」としている。

 また、第7艦隊広報部は艦艇の活動について、

 「オーストラリア、カナダ、米国は南シナ海で多国間作戦を実施しています 。 オーストラリア海軍、カナダ王立軍、アメリカ海軍の艦船が、4月12日から18日にかけて南シナ海で自由かつ開かれたインド太平洋を支援する多国間作戦を実施しました。 参加者には、オーストラリア海軍アンザック級フリゲート艦HMASトゥーンバ(FFH 156)、カナダ空軍のスーパーピューマヘリコプター、カナダ海軍ハリファックス級フリゲート艦HMCSシャーロットタウン(FFH 339)、そして海兵隊員を乗せたドック型揚陸艦USSアシュランド(LSD 48)が含まれていました」と述べている。

 この艦艇の動きとは別に、4月27日には「統合衛生訓練」の一環として、海自の救難飛行艇US-2が参加国兵士の救難輸送訓練を実施している。

●中国海軍の対抗演習

 「米海軍協会ニュース」は、バリカタン演習に対する中国軍の動きを次のように伝えている。

 「「現状の地域情勢」に応じて、人民解放軍南部戦区司令部はバリカタン作戦中にルソン島周辺で多数の軍艦と航空機を出撃させ、人民解放軍の演習を行いました。 先週、人民解放軍は、055型駆逐艦「遵義」(107)、052D型駆逐艦「合肥」(174)、054A型フリゲート「咸寧」(500)、補給艦「駱馬湖」(907)からなる中国人民解放軍海軍の水上作戦部隊「タスクフォース107」による実弾訓練を公開しました。司令部から公開された映像には、無人航空システムを発進させ、敵の航空・ミサイルの脅威に対する自衛訓練を行い、主砲の実弾射撃演習を行っている様子が映っています。また、中国人民解放軍は海上攻撃を専門とするH-6爆撃機も派遣しました。 水上戦闘群の2隻の駆逐艦は、HHQ-9地対空ミサイル、YJ-18巡航ミサイル、そして同軍の近年注目されているYJ-20極超音速対艦弾道ミサイルなどさまざまなミサイルに対応可能な垂直発射システムを176基搭載可能です。バリカタン演習に先立ち、南海艦隊司令部は、この高性能精密攻撃兵器の古い試験映像を合同空海戦闘演習の発表資料に含めて公開しました」「今年、バリカタン周辺の人民解放軍海軍の対抗演習活動は著しく強化されており、ルソン島東部で活動する水上行動部隊はその最も明確な表れです」(注7)

 バリカタン演習は米中間の、そして、日中間の緊張を、より激化させた。

●「あぶくま」型護衛艦と地対艦ミサイルの輸出問題

 日本とフィリピンの間で「あぶくま型」護衛艦のフィリピンへの輸出の話が進めば、日中間の緊張はさらに高まろう。「あぶくま」型は1988年から1993年に6隻が建造された旧式の護衛艦である。満載排水量2900トン、全長109mと小型であるが、76ミリ砲、ハープーン対艦ミサイル、アスロック対潜ロケット弾、魚雷と、基本的な武器は搭載している。レーダー等の装備は旧式であり、長射程ミサイルはもちろん搭載していない。これから、日本とフィリピンの間で、どこを改修するかが検討されるのではないだろうか。また、バリカタン演習で陸自が使用した地対艦ミサイルの輸出も俎上に上るかもしれない。しかし、武器輸出の拡大は何の問題解決にもならない。

 中国とフィリピンの対話の仲介役を担うこと、いやその前に、日中関係の改善こそが問われている。

 
注1 防衛省HP 2026年5月5日 日本・フィリピン防衛相 共同プレスステートメント
https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2026/20260505_phl-j_a.html
注2 統合幕僚長記者会見 2026年4月17日
https://www.mod.go.jp/js/about/message/2026/0417.html
注3 「USINDOPACOM NEWS] 2026年5月18日
https://www.pacom.mil/Media/News/News-Articles/Article/4495400/salaknib-2026-tropic-lightning-partners-forge-the-shield-in-the-crucible-of-jpm/
注4 陸上自衛隊FB 2026年5月20日
https://www.facebook.com/jgsdf.fp/posts/pfbid02TYL3ouJJYoGSR9tm3xqkFfHCmT9GhzRVzNvBrEZAhtUwAMzFSb1M2yjVJV16hKWVl
注5 統合作戦司令部HP
https://www.mod.go.jp/jjoc/about/topics.html
注6 GLOBAL DEFENSE NEWS 2026年5月6日
https://www.defensenews.com/global/asia-pacific/2026/05/05/us-army-fires-tomahawk-missile-from-new-typhon-launcher-during-philippines-drill/
注7「遵義」は大型のイージス艦。満載排水量13,000トン、全長180m、出力150,000馬力、垂直発射装置112セル。射程距離1500~2000kmの対地攻撃用巡航ミサイルCJ-10を搭載。中国海軍はこのタイプを10隻保有し、さらに建造中。艦艇の大きさ、性能を比較するために海自の最新鋭のイージス艦「はぐろ」の諸元をあげておく。10,250トン、170m、69,000馬力、96セル。射程距離約400kmの17式艦対艦ミサイルを海自のイージス艦で唯一搭載。他の海自イージス艦は射程150~200kmの艦対艦ミサイルを搭載。
「合肥」は満載排水量7,500トン、全長157m、出力67,050馬力、垂直発射装置64セル。「駱馬湖」は満載排水量23,000トン、全長178.5mで日米の補給艦と比較すると特に大型ではない。『中国・台湾の海軍力』海人社2025年参照。YJ-20は速度マッハ6以上、射程距離1500kmという情報もある。(https://www.vietnam.vn/ja/tau-chien-trung-quoc-trang-bi-ten-lua-yj-20-dang-cap-the-gioi)

2026年05月29日

憲法審査会レポートNo.71

2026年5月28日(木)第221回国会(特別会)
第7回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56285
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 今後議論すべきテーマで討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015133851000

衆・憲法審査会で自民と維新“9条改正の議論早急に” 今後の議題について各党から意見表明
https://news.ntv.co.jp/category/politics/a369e9cea6a6453abeb4825d7b8bd93a

自民、緊急条項の条文起草提案 中道「解散権制限が必要」―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026052800094&g=pol

自民、自衛隊の9条明記に言及 中道「解散権制限の議論を」
https://www.47news.jp/14373294.html

衆院憲法審優先すべきは 自民「自衛隊明記」中道「解散権制約」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7cf4c25c0a915045d77b889a5a0e480174ce5530

【傍聴者の感想】

今回は、前回までに緊急事態条項のイメージ案が出され一定の「進展があった」との前提で、今後の議論に向けた「テーマ出し」という位置づけで7つの会派からの代表発言と、7人の委員個人の発言となりました。

改憲派からは9条と自衛隊、合区解消、国民投票法、条文起草委員会などについての意見が多く出されました。一方中道改革連合は、首相の解散権の乱用や臨時会が実質的に機能しない問題について、チームみらいは緊急事態でも対応できるような投票環境の構築やオンライン国会の検討を提起しました。

審査会の傍聴は何度もしているのですが、傍聴するたびに強まる感覚は、「この人たちは、本当は憲法『改正』はどうでもいいと思っているのではないか?」という思いです。議論が全く深まっていかない、丁寧に説得しようとか、共有する部分を探そうとか、譲り合って合意を作ろうという姿勢が感じられないのです。

これは推進派と反対・慎重派との間だけでなく、推進派同士の間でも同様です。とにかく自分の主張を言い続ける、何度も繰り返し発言したことをもって議論が尽くされたと強弁するのが実態です。憲法を変えたいと思っていること自体はそうなのでしょうが、やはり党派のアピールが最も重視されているように思えます。

思えば憲法審査会に限らず、国会の議論そのものが、言いたいことを言いあって、ただ聞き置いて、最後は数の力で決めるというものですから、憲法審査会にだけ「丁寧な合意形成の尊重」といっても無理なのかもしれません。

いずれにせよ、現状では緊急事態条項も9条と自衛隊も、推進派の間でもずれが多く、完全に一致できる部分は極めて限られています。意味のない改憲であること、必要性のない改憲であることを訴えていくポイントはたくさんあると思います。私たちにできることはまだまだあると思いますので、今後も頑張っていきましょう。

【国会議員から】階猛さん(中道改革連合・衆議院議員/憲法審査会委員)

本審査会ではこのところ緊急時の議員任期延長のイメージ案を中心に議論が進んでいます。その眼目はいついかなるときも国会機能を維持することであると承知しています。

しかし、國重筆頭も指摘しているとおり、国会機能の維持については、発生確率が極めて低い緊急事態のみを想定するのではなくて、通常事態も想定して議論を深めるべきです。

この議論の必要性と重要性は、過去一年の国会の動きを見ても明らかです。昨年は、物価高が進む中で実質4か月も臨時国会が開かれず、自民党は党内政局に明け暮れていました。また、今年は、任期を2年8か月も残して通常国会の冒頭に衆議院が解散され、真冬の厳しい天候の中、800億円以上の巨額の経費と関係者の膨大な労力を費やして総選挙が執行されました。結果、本予算の審議入りが2月末と例年より1か月も遅れ、イラン情勢への対応も後手に回りました。この一年、国会は十分に機能したとは言えません。

このような国民の生活にとって望ましくない国会の空転を避け、国会の機能を十分に発揮するため、通常時の臨時国会の召集期限の設定や解散権の行使の制限については、緊急時の議員任期延長とセットで検討するべきです。

私からは、そのうち解散権の制限について議論を深めるべく、制限を要する4つの根拠と、考え得る3つの制限の方向性を述べたいと思います。

根拠その1。解散は首相の専権事項というちまたに流布する言説と憲法の明文規定との間には大きな乖離があること。

解散は首相の専権事項という言説は、1980年代から新聞等で見られるようになりました。ここから、解散について首相はうそをついていいとか、首相は最も効果があるときに解散してもいいというナラティブが生まれたようです。

しかしながら、憲法の明文規定を素直に読む限り、首相はもちろん、内閣の解散権すら明らかにされていません。69条は不信任案の可決等があった場合につき、内閣は衆議院が解散されない限り総辞職しなければならないとし、解散権の所在を定めてはいません。また7条は衆議院を解散することを天皇の国事行為としており、内閣にはその際の助言と承認権限を与えたにすぎません。

いついかなるときでも国会機能を維持したいのであれば、解散は首相の専権事項と強弁し、いついかなるときでも解散権を行使できるようにするのは矛盾です。この矛盾を解消するためにも、内閣の解散権を制限するための法規範を憲法又は法律に明記する必要があります。

根拠その2。解散権の濫用に対し、司法による事後的な是正が期待できないこと。

1960年の苫米地事件最高裁判決は、衆議院の解散は極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であると述べ、違憲審査権を放棄しました。以降、裁判によって解散が無効になるという社会的政治的混乱を恐れることなく、自由かつ大胆に解散権が行使されるようになりました。その分、解散権の濫用、乱発で国会機能が停止する危険が高まっています。

解散権の濫用に対する司法の事後的な是正ができない以上、裁判で争いようのない解散権の行使に関する明確なルールを憲法や法律で定め、解散権の濫用を牽制ないし抑止するべきです。

根拠その3。主要国においても、首相の解散権を制約する例が多いこと。

立命館大学法学部の小堀教授によれば、2021年時点で、コスタリカを除くOECD加盟の37か国中、解散権がない国が米国など7か国、解散を制限する国がドイツなど10か国、残りの20か国は大統領や首相に解散権限があるものの、制度として定着しているのは日本を含め僅か4か国にすぎません。民意で選ばれた議員の身分を尊重し国会を機能させる考え方が世界の主流であるということを指摘しておきます。

根拠その4。公平、適正な選挙を担保する規定がないこと。

さきの総選挙は、解散から投票まで戦後最短の16日間しかありませんでした。これでは、候補者は十分な選挙準備ができず、有権者も十分な判断材料を得て熟慮の末に投票先を選ぶことは困難です。憲法54条1項は、解散から40日以内の総選挙実施を定めますが、解散から投票まで最低何日の間隔を置くかについて定めがありません。公平、適正な選挙運動を担保するという意味で極めて不都合です。

また、議員任期延長のイメージ案では、選挙困難事態の事前承認のため、解散で全国に散らばった前の衆議院議員を国会に召集することになっています。さきの総選挙のように解散直後に総選挙が始まる場合、それが実務上可能なのか疑問です。緊急時の国会機能の維持という見地からも、解散から投票までの期間は一定程度間隔を空けるべきです。

以上を考慮しつつ、解散権の制限の方向性につき、幾つかの案を述べます。

方向性その1。憲法上衆院解散の場合を極力限定する。

衆議院の解散中に緊急事態が起き、国会が機能しないリスクを問題視するならば、そもそも衆議院が解散されるケースをできるだけ少なくするべきです。

そこで例えば、憲法に明文がある内閣不信任案可決等の場合に解散を限定する方向性があり得ます。

これに対し、国政の重要問題につき民意を問うという解散の民主的機能を重視する立場から批判が想定されます。

国会機能の維持と直接民主主義の両立を図る解決策として、国民の代表から成る国会が必要と判断した場合、特別多数の賛成によって自律的解散をできるようにしたり、憲法改正案以外の重要問題の賛否を問う一般的国民投票の制度を設けたりすることも考えられます。

方向性その2。憲法上、内閣が解散権を有することを前提に、行使できる場合を限定列挙する。

解散権の濫用、乱発を防ぐ上で一定の効果は期待できますが、司法府の事後的是正が期待できない以上、究極的にはやった者勝ちとなってしまい、国会機能の維持がないがしろにされる危険があることに留意が必要です。

方向性その3。法律上、内閣から国会への解散事由の事前説明義務と、解散日から投票日までの最短期間の定めを置くこと。

解散権の濫用、乱発を防ぐ上である程度の効果が期待できるとともに、公平、適正な選挙の実現にも資するものです。なお、この案は他の案と併存可能です。

以上で解散権の制限につき発言を終わりますが、本審査会で議論が深まることを期待して、私の発言を終わります。

(憲法審査会での発言から)

2026年05月29日

ニュースペーパー News Paper 2026.5

5月号もくじ

News Paper 2026.5

*半田滋さんインタビュー
*第41 回4・9 反核燃の日全国集会
*核軍縮時代の終焉 市民は戦争への道を阻めるか
*被爆81周年原水爆禁止世界大会にご参加を
*原水禁・脱原発への歩み④
*改憲や軍拡に暴走する高市政権にストップを

2026年05月22日

憲法審査会レポートNo.70

先週は諸事情により本レポートの発行ができませんでしたので、2週分まとめた内容となります。

【参考】

高市首相は本気で憲法改正をやる気はない…身内すら「自民党はビジネス保守」と呆れる”無謀な計画”の中身
https://president.jp/articles/-/113098

改憲提案、必要性なく乱用の危険  東京都立大教授 木村草太 視標「高市政権下の憲法記念日」
https://www.47news.jp/14331415.html

高市首相「改憲論議推進を」 衆院憲法審会長は発議に意欲
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051501003&g=pol

【社説】憲法に緊急事態条項 政府に権限集中の危うさ
https://www.asahi.com/articles/ASV5H7TSYV5HUSPT009M.html

<主張>憲法改正 国家緊急権の規定必要だ
https://www.sankei.com/article/20260518-OYDYIOFCWFJZ5EC2LWW25FZZVM/

2026年5月14日(木)第221回国会(特別会)
第5回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56241
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに各党が討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015121721000

緊急事態、自民「深化」主張 衆院憲法審でたたき台初討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026051400098&g=pol

自民「論点集約近づく」 緊急条項、条文化加速狙う 衆院憲法審討議
https://mainichi.jp/articles/20260515/ddm/012/010/102000c

緊急事態条項 各党割れる主張 衆院憲法審、イメージ案基に討議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1311835/

【傍聴者の感想】

今回の審査会では、緊急事態条項に関する議論について、2022年頃からの経過が報告され、衆議院法制局および憲法審査会事務局から提示されたイメージ案をもとに議論が開始されました。

自民党の新藤義孝議員が「究極の事態に陥った時に備えて条項を設けることは必須だ」としてイメージ案をおおむね了承しました。日本維新の会の馬場伸幸議員も、イメージ案をベースにした条文起草委員会の設置を求めました。

一方で、中道改革連合の国重徹議員は立憲主義の観点から選挙実施優先原則に基づく選挙権の保障を主張。チームみらいは、憲法を改正した場合と改正しない場合のメリット、デメリットを比較することが重要で、平時の選挙制度の在り方についても議論する必要があると述べました。

今回の議論はイメージをもとにした議論であるが、仮に緊急事態が生じたとして、これに乗じた、時の政権による権力濫用があってはならないと思います。平時であれ非常時であれ、権力の暴走を食い止める力は、私たち市民の手にあるはずです。

今年2月の衆院選で圧勝した自民党が議席の多数を占めたのにともない、衆院憲法審査会の会長はじめ委員席の半数以上も自民党に入れ替わり、これまでと様相が変わってきました。

数の論理に押され安易な「改正」をめざすのではなく、憲法理念を実現させるための丁寧な議論を求めていきたいと思います。

2026年5月20日(水)第221回国会(特別会)
第3回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=9026

【マスコミ報道から】

参議院憲法審査会 「1票の格差」テーマに各党が意見表明
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015126821000

参院憲法審査会「1票の格差」テーマに各党が意見表明 「合区」の解消の必要性を各党主張も憲法改正めぐっては見解分かれる
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2674561

参院憲法審、1票の格差をテーマに討議 「解消すべき」大勢
https://news.yahoo.co.jp/articles/a85c4382b789a5b24dc80d113e4974ef636b8a1a

参院憲法審「合区」解消めぐり各党意見表明 与党は憲法改正による解消 野党は慎重論
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000506531.html

参院選「合区」の解消、割れる改憲の賛否 参院憲法審
https://www.asahi.com/articles/ASV5N34LZV5NUTFK009M.html

【傍聴者の感想】

今回の参議院憲法審査会は、二院制における参議院のありかたおよび一票の格差問題について、各会派からの意見表明を述べるものでした。

都市部への人口集中、人口減と地域の衰退などで、隣接する県などとの合区による一票の格差の是正をはかる現行の制度の問題点について、多くの会派から指摘がありました。これらは傾聴には値するものの、改憲ありきの主張はちょっとね、という感じです。立憲民主党の吉田忠智議員の主張のように改憲によらない制度変更で十分対応できるのではないでしょうか。この点は公明党も同じような主張をしていました。

緊急事態条項の議論を一刻も早くすすめよという自民党、条文起草委員会までの流れを加速せよとする維新、何はともあれ一から憲法をつくりなおせと参政党、いつまで一票の格差問題の議論をやるのだ、とにもかくにも改憲反対のれいわまで、威勢のよい発言はあるものの、高市首相が述べたような「時が来た」とはとは思えない憲法審査会でした。

2026年5月21日(木)第221回国会(特別会)
第6回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56263
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 緊急事態条項イメージ案もとに2回目の討議
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015127691000

衆・憲法審で緊急事態条項をテーマに各党討議 内閣に暫定的に立法機能持たせる案も議論に
https://news.ntv.co.jp/category/politics/4a9663e595284257b0ab1f9e3cfd41ea

自民、緊急事態条項の整備主張 衆院憲法審、中道はけん制
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026052100150&g=pol

自民、内閣の緊急政令規定は必要 中道、議員の任期延長「慎重に」
https://www.47news.jp/14335948.html

内閣の「緊急政令」 自民は必要性主張、野党は慎重 憲法審
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c5e84355ab23d04f45392981e139f5bb5a9e90a

【傍聴者の感想】

今国会、第6回目の衆議院憲法審査会は、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(「『緊急事態条項』のイメージ(案)」)を案件として、開催されました。傍聴券を受け取る議員面会所のロビーには、傍聴希望者が長蛇の列をなし、荷物検査も込み合っていました。傍聴席は、後方にずらっと椅子が追加され、異様な雰囲気でした。拙速な改憲議論への危機感によるものと感じました。

今回、「毎週開催が定例化して以降の衆議院憲法審査会の議論の経過」と題する年表のほか、過去の資料もまとめて配布されました。

各会派からの発言を一巡して、希望者からの発言という流れはこれまでと変わりませんが、相変わらずという点では、自民党、日本維新の会の発言についても同じことが言えます。「緊急事態条項について、議論を尽くした」「ピン留めされたことは条文化をしていくべき」「制度としてまとめることが要請されている」と、同じような言い回しばかりです。

自民、中道、維新、国民、参政、みらい、共産と発言を聞いていく中で、気になった発言は、国民民主党・玉木委員の「国会も開けないような状態なのに、閣議は開けるのか」という趣旨のもの。閣議だけは行えるという保証は確かにない。一方で「緊急政令や財産処分について議論を蒸し返すな」「蒸し返したら、これまでの議論がご破算だ」という趣旨の発言をし、議論を狭めて改憲を進めたいという姿勢を強く感じました。

また、参政党・和田政宗委員からは「感染症」という文言が入っているから反対しているという趣旨の発言がありました。「運用が恣意的にされるのではないか」としきりに主張し、権利を守るために創憲が必要だという流れは、悪い意味で印象に残りました。感染症でなくても、時の内閣に任せること自体、恣意的に運用されかねません。

希望者の発言の際に、中道改革連合・西村智奈美委員が「今の情勢では改憲議論をしている場合ではない」「イメージから抜け落ちた部分が多岐にわたっている」と指摘しました。場内を見回したとき、「改憲派は何か形をつくって(イメージを作らせて)そのあとは数の力でどうにかしたいでは」との不安をいっそう強くしました。

【国会議員から】西村智奈美さん(中道改革連合・衆議院議員/憲法審査会委員)

戦後日本の自由と平和の礎となってきた日本国憲法を尊重する立場から意見を述べます。

私たち中道改革連合としては、権力の濫用を防ぎ、個人の尊厳と自由を守るという基本政策の下、憲法議論に参画していくという立場です。

しかし、あえて申し上げれば、先週の審査会で、日本維新の会の馬場元代表は、憲法論議の核心であるべき権力の暴走につながるとの主張について、改憲反対ありきの常套句などと発言されました。権力の暴走は、ナチス・ドイツの例を始めとして現実的かつ真っ当な懸念です。こうした発言が相次ぐ中で、また中東情勢やその影響など深刻な課題が山積する今、それより優先して憲法の議論が進んでいくことに深刻な懸念を感じています。

また、自民党は衆議院では圧倒的多数かもしれませんが、参議院ではそうではありません。今回のテーマである緊急事態への対応に関しては、与野党の枠を超えて衆議院側と意見の開きがあります。そもそも、現在、法制局及び憲法審査会事務局にイメージ案を作成させるような段階ではなかったと私は考えます。百歩譲っても、昨年、衆議院法制局から提出された資料「緊急事態条項(国会機能維持)の主な論点(イメージ)」には記載のあった、平時も含めた臨時会招集期限、緊急時、平時における解散権制約など、多岐にわたる論点が今回抜けていることに納得がいきません。

その上で、先週提示されたイメージ案について幾つかの問題提起をさせていただきます。

第一に、緊急事態の際に議員の任期延長が必要との説のほぼ唯一の論拠である選挙の一体性とは何かという問題です。憲法的価値が本当にあるのかという指摘がこれまで重要な論点として複数なされてきました。ここがこの憲法改正が必要かどうかを判断する大きな鍵だと考えますので、しっかりとした議論が必要です。

第二に、想定される最も巨大な震災の際にも選挙を実施できない選挙区は限定されるので、選挙全部を延期するような立法事実はないという指摘がこれまで繰り返されてきました。まずは徹底的に選挙制度の強靭化を図り、その上で選挙全部を延期するような立法事実が残るのかを精査すべきです。

第三に、参議院緊急集会が一時的、限定的、暫定的とされている点です。これまで緊急集会の権限については様々な指摘がなされてきましたし、自民党も原則として国会の機能全てに及ぶとしています。改めて議論すべきです。

第四に、緊急事態の対象範囲に存立危機事態も含まれるのかです。昨年11月、高市総理は、法律の限定を逸脱したと思える答弁をされています。支持率低下のタイミングにおける衆議院任期満了選挙を避けるために、内閣の恣意的な判断で存立危機事態を認定するとともに、選挙困難事態の認定がなされ、選挙が停止され続けるという濫用が懸念されます。古今東西、自らの政治的な危機を乗り越えるために戦争を始めた指導者は少なくありません。こうした危険はないのか、今後も議論させていただきたいと思います。

最後に、緊急政令などという、国会としてはおよそ認められない条項が紛れ込んでいることは論外です。憲法改正してまで議員の任期延長をして、国会機能を維持しようという議論と同時に、国会が機能しない場合を想定した議論をすることは論理矛盾なのではないでしょうか。憲法改正に決して消極ではない国民民主党の玉木代表も、先週は、あえて蒸し返さない方が得策と、今日も同様の趣旨の発言がありました。通らないことを見越して、バッファーとして入れているとすら思えてきます。論外だと考えます。

(憲法審査会での発言から)

2026年04月30日

高市政権の改憲・軍拡を止めるために自治体の平和力を活かそう―非核三原則堅持を含む非核・平和都市宣言―

湯浅一郎

1.改憲・軍拡へと暴走する高市連立政権

 自民・維新連立の高市政権は、憲法九条を捨てることを当面の最大の目標とし、安保三文書見直しを前倒しし、全面的な攻撃を仕掛けようとしている。具体的には以下の多くが含まれる危険性がある。

 ・防衛費GDP3.5%へ向けGDP比2%を前倒しで達成する。
 ・高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言は押し通す。
 ・非核三原則を見直す。
 ・原潜導入を検討する。
 ・スパイ防止法を制定する。
 ・国家情報局を創設する。
 ・武器輸出「五類型」ルールを撤廃する。

 このうち、最後の武器輸出「五類型」ルールの撤廃は、2026年4月21日、すでに閣議決定されてしまった。しかし五類型の撤廃は政府の裁量で変更できるとはいえ、撤廃の是非に加え、こうした重要事項を国会の関与なしに決定できる仕組みそのものについても今後、国会などでの追及が求められる。

 また、これらの動きの背景には「自民党・維新の会連立政権合意書」(2025年10月20日)(注1)がある。「12本の矢」で構成されるが、その三「皇室・憲法改正・家族制度等」には、以下のような、かつてない内容が持ち込まれている。

・日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』(注2)を踏まえ、憲法九条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。
・緊急事態条項(国会機能維持及び緊急政令)について憲法改正を実現すべく、令和7年
臨時国会中に両党の条文起草協議会を設置し、令和8年度中に条文案の国会提出を目指す
・憲法改正の発議のために整備が必要な制度(例:国民投票広報協議会の組織及び所掌事
務などに係る組織法等)について、制度設計を行う。

 ここで、踏まえるとされる日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』なるものは、憲法九条を抹殺し、捨て去ることをめざした文書である。「第1章 実力から戦力へ~憲法9条改正と国防条項の充実~」は、第1節で「憲法9条と二つの乖離」と題して、第1に、憲法9条は「安全保障環境と乖離」しているとし、第2に「国際法環境とも乖離」しているとする。その上で、第2節(1)で「憲法9条2項削除により集団的自衛権行使を全面的に容認する」。9条2項とは「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」である。それを削除し、防衛の基本方針を「専守防衛」から「積極防衛」に転換するとしている。憲法九条を捨て、自衛隊を軍隊として位置づけ、専守防衛を廃し日本軍として海外にも派兵できる根拠を作るというわけである。連立合意書は、この維新の会提言を踏まえて、憲法九条改正に関する「条文起草協議会を設置する」としている。これは、おそらく高市首相の意思にも符合するもので、安倍首相の憲法に自衛隊を明記する案より大きく踏み出し、憲法九条を亡きものにすると言っている。

2.岸田政権の「安保三文書」改訂の問題点

 高市政権の安保三文書改定を問ううえで、その前提となる2022年12月16日に改定された岸田政権の三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を把握しておくことは重要である。三文書で、「国家安全保障戦略」(注3)は安全保障に関する最上位の政策文書を名乗るものだが、同文書は第1の要素として外交力を挙げている。

 そのくせ外交の窓口をふさいでしまうような認識ばかりが目立っている。例えば中国との外交で基本となる1972年9月29日、日中国交正常化に際しての日中共同声明、1978年の日中平和友好条約について、その重要性を再確認する記述は全くない。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK北朝鮮)との関係でも、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ない」という旧態依然とした主張を強調するだけで、基礎にすべき1992年の日朝平壌宣言(注4)の精神である「諸困難を乗り超えて国交正常化の早期実現に向かう」を無視している。これでは、中国や朝鮮との関係が何一つ前進しないことは初めから明らかである。逆に当初は「敵基地攻撃能力」としていた反撃能力の保有や今後5年間で防衛費を43兆円へ倍増すると、専守防衛を超え、軍拡に進むことを表明している。

 それでも同文書はⅢ「我が国の安全保障に関する基本的な原則」で「3 平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」としている。安全保障に関する最上位の政策文書において、「専守防衛に徹する」としていること自体は極めて重要である。そう言わざるを得ない背景にあるのは、まぎれもなく憲法九条の存在である。この点が安保戦略には正直に述べられていると言っていい。「いずも」型護衛艦2隻の空母化、敵基地攻撃能力となるスタンド・オフ・ミサイル配備、空中給油機の保有などで、専守防衛はなし崩し的に壊され、「九条は風前の灯」と言われてから久しいが、2022年の安保三文書においても「専守防衛」をドクトリンとしては明記せざるを得なかったことは確認しておかねばならない。憲法九条はまだ立派に生きているのである。

 2026年2月、米国・イスラエルがイランへの先制攻撃を起こし、イランがこれに対抗してホルムズ海峡を封鎖したことに対して、米国は日本やNATO諸国に掃海艇の派遣などを求めたが、現状では、戦争が続いている限りにおいて自衛隊を派遣することができなかった。これは憲法九条が生きていることの証明ともなっている。だからこそ高市連立政権は、九条を葬むってしまおうとしているのである。

3.憲法九条を守るために「自治体の平和力」を活かそう

 政府が改憲へと暴走する状況にどう向き合うのか? 基本は「憲法九条は守らねばならない」という世論の広がりを作ることであり、一時は全国各地に自然発生的に沸き起こった「九条の会」の再興と街頭での大衆的な行動が求められる。このところ若い人も含めた新たな動きが出ていることは大きな希望である。筆者は、本稿で、これらに加えるもう一つの戦略として、住民に最も近い行政組織である「自治体の平和力」とでもいうべき蓄積を活かすことを提起したい。

 日本には47都道府県を含めて1788の地方自治体がある。そのうち全国1673自治体が非核平和宣言を挙げている(2025年12月31日現在)(注5)。これは全自治体の実に94%に当たる。例えば、日本で初めて非核宣言を挙げた広島県府中町の宣言(注6)は以下のとおりである(下線は筆者。以下同じ)。

「非核町宣言    
 世界の核をめぐる情勢はますます緊迫の度合いを強め、地域核戦争への不安から、ヨーロッパを初め世界の人々は、人類の生存のために核兵器の廃棄と絶滅を叫び立ち上がっている。
 原爆によって広島市とともに世界で最初に凄惨な被害を被った府中町は、 戦争放棄の日本国憲法の原理に基づき、 恒  久の平和を念願し、全世界の国民が平和に共存することを望むものである。
 全人類が絶滅の危機に立たされている現在、非核三原則の堅持とともに、あらゆる国の核兵器の使用に反対し、安全で住みよい街づくり実現のため、ここに全住民と共に府中町を「非核地域」とすることを宣言する。
   昭和57年3月25日             広島県安芸郡府中町
                          広島県安芸郡府中町議会」

 この宣言には、「非核三原則の堅持」を明記しているが、その前段で「府中町は、戦争放棄の日本国憲法の原理に基づき、恒久の平和を念願し、全世界の国民が平和に共存することを望む」としている点に注目しておきたい。「戦争放棄の日本国憲法の原理」を前提として、「非核三原則の堅持」をうたっているのである。ほとんどの自治体が同様の非核宣言を挙げている事実に依拠して、自治体なりの意思表示を求めていくことができるのではないか。

 いくつか要素があるが、第1が「非核三原則の堅持を求める意見書」の発出である。昨年、自民・維新の連立合意書が出され、高市首相が安保三文書の改訂を前倒しし、非核三原則の見直しを進めるかもしれないとの憶測が出る中で、2025年12月の地方議会において「非核三原則の堅持を求める」多くの議会決議が出た。真っ先に決議を出したのは広島県議会(注7)である。以来、半年弱の間に、広島県、長崎県、長野県、神奈川県、千葉県、宮崎県の少なくとも6県が同様の決議を挙げている。現時点での決議数の正確な数は把握できないが、全国市長会や町村議長会の検索などによると市町村レベルでも少なくとも42自治体が決議を挙げている。この後も順次、増えていくことが予想される。これは、ある意味で当たり前で、先に府中町で見たように非核宣言のほとんどは「非核三原則の堅持」に触れているからである。全国の94%もの自治体が、核兵器の持ち込みの疑惑を持ったうえで、非核三原則の堅持を求めている。今、その宣言に沿って、非核三原則の堅持を求める意見書を出すよう市民が求めていく取組みをひろげるべきであろう。

 第2に、宣言の多くは、非核だけにとどまらず、相当数が「非核・平和都市宣言」として、「平和」が含まれている点に注目したい。ざっと調べただけでも広島市、函館市、つくば市、小金井市、調布市、水戸市、藤沢市、長岡市、精華市、高槻市、長崎市、宮崎市、那覇市など枚挙にいとまがない。一例として函館市の宣言を紹介する。

「核兵器廃絶平和都市宣言
 わたくしたち函館市民は、美しい自然を誇り、すぐれた市民性をはぐくんできた函館を住みよい都市に発展させるため、市民と街の理想像を市民憲章に定めています。
 わたくしたちは、この理想が、世界平和の達成なくしてはありえないことを認識しています。
 わたくしたち函館市民は、核戦争の危機が叫ばれている今日、世界で唯一の被爆国の国民として、また、平和憲法の精神から も、世界の人々とともに、再びこの地球上に被爆の惨禍が繰り返されることのないよう、核兵器の廃絶を強く訴えるものです。
 わたくしたち函館市民は、非核三原則の堅持と恒久平和の実現を願い、明るく住みよい幸せな市民生活を守る決意を表明し、ここに核兵器廃絶平和都市の宣言をします。
昭和59年8月6日 函館市」

 第3に、広島県府中町の宣言が「戦争放棄の日本国憲法」に触れているように、非核・平和をめざす背景には「憲法の平和主義の下で戦争に反対する」という問題意識が前提にある。函館市の宣言にあるように「平和」だけでなく、「平和憲法の精神から」として現憲法の意義に触れている。これと同じものが、小金井市、調布市、藤沢市、宮崎市など相当数ある。

 さらに1983年に広島市・長崎市が中心になって「国境を越えて連帯し、ともに核兵器廃絶への道を切り開こう」と世界の都市に呼びかけてできた「世界平和連帯都市市長会議」を前身とした平和首長会議(Mayors for Peace(MfP))も重要なネットワークである。2026年1月1日現在、世界166か国・地域の8560自治体が加盟し、日本は1740自治体が参加している(注8)。日本の自治体で非加盟は佐世保市だけである。会長は広島市長で、副会長の一つが長崎市である。このMfPに向けて「非核三原則の堅持を求める意見書」、「平和憲法を守る意見書」などの運動を求めていくことは、世論の国際化にとって非常に大きな意義があるであろう。平和首長会議会長としての広島市へ、世界8560の加盟自治体に「日本政府に対して非核三原則と憲法9条の堅持を求める」行動を提起するよう要請していくことも重要である。

 1980年代後半から2010年にかけて広島で反核・反基地運動を進めていた際、私は「多くの自治体が非核宣言を挙げているが、ただ宣言をしているだけで、何もしていない」というように、もっぱら批判的に見ていた。しかしNPT再検討会議などでの国際的な議論の場にオブザーバー参加してみて、日本の非核自治体の存在感の大きさを実感してきた。今、憲法九条が危ない情勢を前に、90%を超えるほとんどの自治体が挙げている非核平和宣言を活かす視点を市民運動の重要な要素として打ち出すべきだと確信する。

 高市政権は、非核三原則の見直しには踏み出さない可能性が高いようにも思うが、憲法九条をめぐる論争は、国会で緊急事態条項などやり易そうなところから改憲の発議をしていく可能性が出てきている。そこで、本稿で筆者は、高市政権の改憲・軍拡を食い止めるために、市民と自治体がつながり、自治体の平和力を活かし、平和・非核化をめざしていく道筋を描くべきだという点を強調したい。

注:
1 自民・維新の連立政権合意書(2025年10月)
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/information/211626.pdf
2 日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』
https://o-ishin.jp/news/2025/images/ffb6c1d44a679a512165021651f6f62f12d52755.pdf
3 「国家安全保障戦略」(2022年12月16日)
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/nss-j.pdf
4 日朝平壌宣言(2002年9月17日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html
5 日本非核宣言自治体協議会HP
http://www.nucfreejapan.com/uploads/2026/04/20260409_%E9%9D%9E%E6%A0%B8%E5%AE%A3%E8%A8%80%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf
6 広島県府中町の非核宣言
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/site/soumuka/1097.html
7 広島県議会「非核三原則の堅持を求める意見書」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gikai/hatsugi07-15.html
8 「ピースアルマナック2025」(ピースアルマナック刊行委員会)掲載の平和首長会議に加盟する世界の自治体の図表参照

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