トップ  »  原水禁大会  »  分科会での質疑とそのことに対する梅林氏、スージー氏のコメントの詳細

分科会での質疑とそのことに対する梅林氏、スージー氏のコメントの詳細

2019年08月08日

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第2分科会   平和と核軍縮Ⅱ─朝鮮半島の非核化と日本

 

分科会での質疑とそのことに対する梅林氏、スージー氏のコメントの詳細

  

①8月2日にINF全廃条約が失効した。そのなかで日本の今の米軍基地およびイージスアショアなどの配備などの動きはアジアに対しての脅威が強調される時代が訪れてしまっている。昨年の沖縄の6月議会で核兵器禁止条約の批准と同時に非核三原則の法制化へということを政府に要請するということを決めていた。今後6カ国による地域安全保障機構を準備して北東アジアの安全保障改善の基礎とするということであるが、日本の果たすべき役割をもう少し具体的に時代に即した形で教えていただきたい。

・安倍政権が発している彼自身の持っている歴史観が非常に古い日本のナショナリズムに回帰するようなものがある。そしてメディアを通じて、安倍首相が現に言っていることよりも、彼自身がどういう考え方を持った人間であるかということが、アジアの方々に知られているということが非常に大きい。

・中国が最近、国防白書というものをだしたのだが、歴史認識から知っている日本の新しい政策で日本がもう一度軍事的な強国になろうとしているというようなトーンで語られていることは一つの表れである。

・日本ではアメリカに対して従属という側面で兵器をたくさん買わされているというような認識が同時に言われるが、そうではなく発せられるメッセージは日本自体がものすごく近代化し、軍事力を高めているというメッセージになっている。

・秋田と山口に設置されようとしているイージスアショアというのは、専らミサイル防衛のためのシステムというように日本では理解をしていると思うが、非常に高性能なレーダーであり、かつ非常に多様なミサイルを発射できる垂直発射システムでもある。なので、ミサイル防衛のためだけに設置をすると言っているが、それはいつでも攻撃的なミサイルを発射するものになりうるということである。

・政権の持っている性格というものに対して、日本人はあまりにも無関心すぎるということが問題であり、日本の軍拡が地域の緊張を高める役割を果たしており、これを何とかしないといけないということは、その通りだと思う。

・私はやはり非核地帯を作れというメッセージが一番だと思っている。非核三原則の法制化はもちろん、日本の決意を言葉にするということでは非常に重要であると思う。

・非核三原則の法制化によって日本の核武装をしないということをもう一度はっきりさせるということは大事であると思いますが、同時にアメリカの核の傘に依存するということをやめないと、核兵器禁止条約に参加できないということがあるので、非核兵器地帯になるということが日本のメッセージとして必要である。

 

②世界の非核兵器地帯が7か所において結ばれているということで、未来に希望を抱くことができた。やはり北東アジアでこれが実現するという可能性を感じ、そうなるように努めていかなければならないとも感じた。条約が結ばれてきたい背景や、どのようなことが推進力になったのかを教えてほしい。

・非核兵器地帯が今は条約としては5つあり、そして南極条約とモンゴル一国というものがある。5つの国が非核兵器地帯というものを選んだかというと、一つひとつ理由が違う。非核兵器地帯の多様性というものを強調したい。

・北東アジア非核地帯を作るというのは、独自の理由があって作るということである。

5つの国に直接的な動機がある。一つは核の脅威から自由になる。核の攻撃から逃れるということがある。最初にできたラテンアメリカの非核兵器地帯ということでは、キューバ危機が一つのきっかけで、アメリカとの核の戦争が起こるかもしれないということから、ラテンアメリカの地域がそういう風にならないようにというのが、一つの動機だった。

・南太平洋ができた時には、フランスとイギリスが太平洋で核実験を行っていて、核実験被害が直接の動機であり、直接的には草の根運動が核実験をさせないということで非核地帯に繋がっていった。

 

③梅林先生のレジメでは北朝鮮と日本ということで年表が示されている。1910年の日韓併合は教科書で教えているが、それまでの歴史が教えられていない。このことについてどう思いますか。

・最初に朝鮮半島との関係を考えるときに、まずは歴史認識をしっかり持つことが大事であることから、年表を資料として掲載している。このことを話題にすることによって、きっと歴史をもっとよく知っている人が発言をしてくれるだろうと思っていたので、うまくいったと思っている。

・日本の植民地支配に至る歴史というのはすごく細かく聞けば聞くほど、ひどいことをしたなということがある。年代的にいうと私の年表は江華島事件から初めていて、一般的にはそこが一番はじめに、訪韓外交と言われたが、まさに訪韓外交で日本の文化を江華島にやって、そして通商条約を迫ったということがあり、アメリカのやったことをそっくり同じことをしたということ。1876年の江華条約に至るその過程ですから、そういうことから始まったということを知る必要がある。

 

④ピースアクションの活動の一つとして、アメリカ大統領に対して、一方的に核の使用をさせないように一元的な権限を廃止する法案やアメリカが核攻撃を発射するまでの時間を延長することを提唱しているということで素晴らしいと感じた。実際にこの法案がどのくらい進んでいるのか?このことをトランプ氏は知っているのか?アメリカファーストの大統領なので自分の政策として目立つことやみんなに受けるということを狙っていると思うのですが、これを受けてピースアクションの方々の活動は届いているのか?ということが知りたい。日本では高校生が取り組みを強めているということはあるが、アメリカの高校生や子供たちはこういう問題に対してどのように考えているのかを教えてほしい。

・残念ながらアメリカでの平和運動は依然と比べると小規模で弱くなっている傾向がある。国の特徴として、アメリカ人は集中力が短いというか集中できる時間が短い。

・そのようになっている重要な理由としては、ほとんどのアメリカ人はアメリカ軍でどのようなことが起っているかということとかけ離れた生活をしている。アメリカでは徴兵もないし、強制的なものではない。軍で奉仕をしなければならないという義務もないので、ほとんどの人たちは米軍とは切り離された生活をしている。ただ、莫大な税金だけは軍のために支払っている。

・軍の活動に関わっている人たちはボランティアとしてかかわっている人たちと、軍で働いてお金を稼ぐという人とたちが関わっているだけである。一般の市民は関わらない状況にある。

・法案に対する質問は、幸いなことにピースアクションは議会のメンバーたちとのパイプができているため、その議会の人たちが法案を発議してそれを支持するということをされる。そういう面で働きかけている。しかし、残念なことなのですが、立法化に関する質問で先制攻撃を大統領が一方的に行えないようにする。それともうひとつのものもそうであるが、進捗状況ということでは、おそらく立法化することは難しいと考えられている。理由として、トランプ大統領は拒否権が憲法のもとで与えられているため、議会を通ったとしても拒否権で拒否されることが考えられるためだ。

・ただ、私が希望を抱いているのは、現在のアメリカの暴力的な文化に関する人々の懸念が拡大して、人々がよりそういった暴力の文化に対して、声を上げていくということを望んでいる。ここ2カ月の間にアメリカでは銃乱射事件が2件おこっているが、人々がそれに気づいて2020年の選挙において状況が変われば、この法案に関する状況も良い方向に変わると思う。そうなるまでに私たちはトランプ大統領が衝動的な行動をとらないように祈りたい。

・もうひとつ明るい状況としては、私には16歳の息子がいる。そしてその息子や息子の友達を見ていると、昔のティーンエイジャーよりも政治に対する関心が高まっているなということを感じていることである。

 

⑤3プラス3の構想というのは、それしか生き残りを実現する道はないと思う。そのなかで日本が果たすべき役割というものが迫られていると思う。逆にいうと日本がもっと真剣に考えるべき課題ではないかと思う。日本に届くミサイルを発射するということについて、精度を上げてきているということで、日本が北朝鮮との関係をどうするのかということを本来はもっと真剣に考えなければならない。

 

⑥今の日本の外交力は衰えているように感じる。スリー・プラス・スリーしか解決策がないということだが、それをうまく行う力が、今の私たちの国にあるのかということへの見解を伺いたい。

・今の日本の政権が朝鮮半島で短距離ミサイルを発射したりすることに真剣に考えていないと思う。

・安倍首相はこの前の選挙を国難だといっておこなった。朝鮮半島、有事が起っていて大変な状況になっている。北朝鮮の脅威が国難だと言って選挙をしたので、すごく関心があると言えばあるのだが、すごくゆがんだ関心を作って、それに対してアクションをとっている。

・今の状況についても日本政府がとっているのはやはり軍事的なリアクションが中心で、ミサイル防衛・イージスアショアなどを買うなどして、朝鮮半島問題に対応しているという、そういう関心にすごく偏って、世論を動かしている。

・外交力のことをいうと、一番弱いのはトータルビジョンである。アジアの一員として日本はどういう関係を朝鮮半島や中国を含めて、どういうビジョンを描くのかということを押し出す政治家というのが少ない。

・昔はアジアに対する日本の新しい在り方というものを政治家として新しいビジョンとして持っている人がそれなりにいたのだが、今は民主党系の人も含めてそういうアジアにおける日本をどういうふうにというビジョンが出せない。そういう弱さが外交力の弱さの根本だと思う。

・その議論の時に、日米安保基軸という世論があることは事実である。日米安保が現存していて、長い間続いて、それでアメリカとの関係を良く保つということの象徴として日米安保体制ということを前提にした議論をしているわけである。

・日米関係を壊さない、そのうえでアジアに対するビジョンはこうであるということを両立させることは十分可能だと思うし、それが出てこないと、日米安保基軸という外交路線しか言わない、今の野党も含めてであるが、そこをとにかく新しいビジョンを出すことをもとめないといけない。

・では日米安保はどうなるのだという話に必ずなるのだが、もう何十年も続いている日米安保体制というのが、壊すこと自体がアジアに対するマイナスのメッセージになってしまう。やはり日米安保があるから、日本の軍事力が抑えられているというアジアからの日本の見方というものが、昔ほど強くはないにしても、今もある。

・日米安保をいきなり無くすというよりも、アメリカとの関係は保つ、しかしアジアに対する新しいビジョンを打ち出していて、それによって日米関係は弱まっていくというか、今の軍事力一辺倒の従属的なアメリカの軍事力のもとにあるという関係ではなくなるというそういうビジョンを描くことは十分に可能であり、二者択一的に、日米安保かアジアかというのではなくで、新しいアジアに対する日本の関わり方というものを積極的に打ち出すことをまず、政治に求めないといけないと思う。

⑦日本がアジアからどう見られているかという話があったが、その話を聞いてピースアクションの方々が日本の東アジアにおける立場をどう感じておられるのかを聞きたい。先ほど安倍首相を評価されていたが、日本がどうあるべきということでも構わないので、スージーさんやピースアクションの方々が、日本の現政権などをどう評価されているかを教えてほしい。

・日本国内の政治、政策に関することについては、ご専門である梅林先生の方にお答えを求めていただきたいと思う。

・そしてピースアクションの立場として、日本が平和のためにどのような行動をとるべきかという提案、あるいは北東アジアの非核化を進めるためには、日本がどのような役割をするべきなのかということに対してのお答えも控えさせていただく。

・ただ、安倍首相の行動に関してみる限り、トランプ大統領のご機嫌うかがいをしているのではないかなと言える。

・私が今回学ばせていただいたことと、これまで行ってきた研究から言えることは、歴史のなかで北朝鮮と日本の間でそういう好ましくない関係があったのかなということ。そして私が感じるのは、民間レベルで、市民の個人レベルで韓国の方と日本の方が関係を深めていく、そういうことで信頼感を醸成していくということが、私たちにできる大事なことではないかと思う。

・日本と朝鮮半島の間には日本海がありますが、それを越えて、個人レベル、民間レベルでつながっていくことで、そしてその声を大きくしていくことで、政治にもそれが反映していくのではないかと考える。

・それから梅林先生やほかのスピーカーの方たちも話されていたが、日本が米国の核の傘から脱出していくということは、非常に大きなパラダイムシフトであるし、それを実行に移すのは難しいことであるとは思うが、日本と韓国が米国とは別に関係を作っていくということは大切なことだと思う。

 

⑧日本の外交が完全に行き詰っている。文政権が南北関係の経済交流を強化する。まもなく日本との貿易関係を超えるという自信をもった話をしていた。これは完全に日本との関係を断ち切ってでも韓国は朝鮮半島で生き残れるというふうになっているのではないかと思う。そこに対する日本政府の反応はまだ聞いていないが、中国・朝鮮を含めて日本の外交が行き詰まっているのだとこういう感想を持ったので、それでいいのかということを教えてもらいたい。

・行き詰っているというか、非常な困難に直面しているということである。次のビジョンも出ていないということである。韓国との関係で言うと、私たちはもっと文大統領となってから、一貫して行ってきたことに対して評価をした方がいいと思う。

・世界的な試みをしていて、そういう文脈のなかに、彼は今四苦八苦している。国内世論との関係もそんなに簡単なものではないと思うし、北朝鮮とアメリカとの関係も自分たちの思う通りにはいかない困難があるなかで、何とかして朝鮮半島の非核化ということを軸として歴史的転換をしようとしている一貫した彼の姿勢を後押ししなければならないと思う。

・そういうなかで、日韓関係を議論する時の文大統領に対する考え方は偏っていて、そこは世論として彼が行っていることをちゃんと見るということが必要だと思う。それが行き詰まりを突破する市民の力になると思う。

 

 

このページの先頭へ