5月, 2013 | 平和フォーラム

2013年05月30日

TPP問題で5月29日、30日に国際シンポ。各地でも集会開く。

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フォーラム平和・人権・環境は、環太平洋経済連携協定(TPP)の問題を追及している「TPPを考える国民会議」(代表:宇沢弘文さん、原中勝征さん)と、市民団体の「TPPに反対する人々の運動」に協力して、5月29日と30日に海外ゲストを迎えての国際シンポジウムを開催しました。これは、日本のTPP交渉参加が想定されている7月を前に、TPPの問題点を国際的な観点も含めて捉え直そうと開かれたもので、各国の研究者や弁護士、運動団体代表などがTPPの抱える数多くの問題点を指摘しました。
5月29日に参議院議員会館で開かれた国際シンポには300人が参加し、TPP研究の第1人者であるニュージーランド・オークランド大教授のジェーン・ケルシーさんが「日本がTPP交渉に入ってもリーダーシップを発揮するとは思えない」とし、日本が7月の交渉会合では最後の3日間しか参加出来ず、それまで交渉内容を見ることが出来ないことや、日米の事前協議で自動車分野などで「異例の譲歩」をした点を理由に挙げました。
国際貿易交渉の問題点を調査している米国の市民団体「パブリック・シチズン」のローリー・ワラックさんは米国の通商代表部の代表が大手金融機関出身であることなどを指摘し、「TPPは貿易交渉の場を借りた大企業の侵略だ。どの国の人々にとってもよくない交渉だ」と強調しました。
TPPのモデルといわれる、米国と韓国との米韓自由貿易協定(FTA)に詳しい韓国の金鐘佑弁護士は、投資家が相手国の政府を訴えて制度政策の変更を求めるISD条項について「米韓FTAの締結の前には韓国政府はISDで訴えられることはないと説明していたが、1年も経たないうちにISDで訴えられている」として、「日本がTPPに入ることは、これ以上の結果になる」と警告しました。
その後、元外務省国際情報局長の孫崎享さんや元大蔵省官僚の榊原英資さんなどを交えて、討論が行われました。(写真左)

「TPPをとめる!韓米FTA・NAFTAからの警告」と題して、5月30日の夜に連合会館で開かれた国際シンポには市民など100人以上が参加しました。ジェーン・ケルシーさんや金鐘佑さんの他に、韓米FTAに反対する国民運動本部の共同代表を務めている朴錫運さんが、韓国でのFTA反対運動の経過を説明したうえで、「単純な経済協定ではなく、韓国の法律体系を米国化するものだ」と同FTAを批判。「TPPも本質は同じで、日本の主権が侵される」と述べました。
また、「韓国農漁村社会研究所」の権寧勤副理事長は、「韓米FTAによって今後、食料自給率が低下し、世界の飢餓問題をより深刻化させる。アジアとアメリカの農業体系は違う。水田は生物多様性を守っている」など、農業の大切さを訴えました。
さらに、20年前に、米国とカナダ、メキシコの間で締結された「北米自由貿易協定」(NAFTA)の問題を追求している、メキシコの労働組合活動者のマリカルメン・リャマスさんが、「NAFTAによって多くの分野の人々が影響を被った。労働者の実質所得は低下し、かつては一家は1人の労働で賄えたものが、今では3人が働かないと食べていけない。農産物価格も米国からの輸入で半分に下がり、農家は失業した」と、その厳しい現実を報告しました。
シンポジウムでは、これから各国の現状や情報を共有し合い、「TPPに象徴される新自由主義に基づくグローバリゼーションに対抗する運動も地域に根ざし、国境を超えてつながろう」と、アピールを確認しました。(写真右)
なお、海外ゲストは東京でのシンポに前後して、北海道、山形、新潟、栃木、愛知、大阪、鳥取、福岡、鹿児島、沖縄で、それぞれ集会に参加してTPPの問題を訴えました。
 

2013年05月30日

平和軍縮時評5月号 政府「武器輸出三原則」をさらに緩和―ロッキード社のビジネスモデルに追従 輸出先にはイスラエルも  田巻一彦

 

武器貿易条約(ATT)、国連総会で採択
4月2日、国連総会では「武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty、原文)が採択された。第1条(目標及び目的)は次のように言う。
http://reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/att/negotiating-conference-ii/documents/L3.pdf

「この条約は、通常兵器の国際貿易の規制、あるいは規制の改善のための可能な限り最高の国際規準を確立し、武器の不正貿易と転用を防止、根絶することによって次の目的に資することを目指す;
… 国際の平和、安全保障及び安定に貢献すること。
… 人的被害を減少させること。
… 通常兵器の国際貿易における国連加盟国の協力、透明性及び責任ある行動を促進し、以て加盟国間の信頼を醸成すること。」

大は軍艦や航空機、小は拳銃や小銃に至るまで、ありとあらゆる種類の通常兵器が市場取引の対象となり、あるいは不正取引されて世界中を駆け廻っている。その結果、国際・国内紛争において毎日のように人々が命を失っている。ちなみに武器輸出国ランキングの上位を占めるのは、アメリカ、ロシア、フランス、中国、ドイツと言った国々だ。ドイツを除けば国連安保理の常任理事国、言いかえれば核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有が認められた国。ここでも彼らは「やりたい放題」なのである。
http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-96.html
この現実を何とかしようと、世界の有志国とNGOがATTの成立・発効を目指して熱心に活動してきた。しかし、武器輸入国・輸出国の両方からの抵抗にあい、ATT交渉は難航を強いられてきた。4月2日の総会での採択は、その一つの到達点であった。いくつもの「抜け穴」を残しながらも、国際社会が武器貿易を各国の裁量に任せられていた「無法状態」から「規制」の方向に動いている。
ところが、ATT成立に向けて熱心であり、今後も「この分野での国際的取組に引き続き主導的役割を果たしていく」(4月3日「外務大臣談話」)はずの日本政府が、国連総会の約1か月前に行った決定はこの国際潮流と真逆を行くものであった。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/page6_000033.html

F35の導入-機体、部品の輸出に「歯止め」なし
政府は3月1日、菅義偉官房長官による談話を発表、次期戦闘機F35の「部品等又は国内企業が提供する役務」を「武器輸出三原則」の例外とすることを明らかにした。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/96_abe/20130301danwa.html
2011年12月、政府は米ロッキード・マーチン(LM)社製のF35を、「対外有償軍事援助(FMS)プログラム」(米政府がメーカーから買い上げ、ユーザー国に売却する政府間取引。)の下で、2016年から計42機導入することを決定した。米国からライセンスを受け、国内企業が部品を製造することも計画されている。
F35は、LM社によって「自律的グローバル兵站持続(ALGS)」と名付けられた後方支援システムとパッケージで開発・販売されている。これはLM 社が運営する情報システムを介し、「F35を使用するすべての国のために管理される共通の部品プールから、各国が必要な時に速やかに部品の提供を受ける。」という仕組みである。つまり、ALGS に参画すれば、日本が製造・保管しているF35の部品が、LM社の判断でいかなるユーザーにも提供されることになる。ユーザーには同じくF35を導入予定のイスラエルが含まれる。近い過去にパレスチナ・ガザ地区、シリア、スーダンを空爆し、イランへの空爆計画があることも指摘されているイスラエルへの輸出は、後述のとおり国際紛争当事国への輸出を禁じた「武器輸出三原則」に違反する。
日本政府もこれを気にかけ、部品製造に参加した機体を第3国に譲渡する場合は事前に日本の同意を得るよう米政府に要請したが、部品の管理権限は米国にあるという理由から拒絶されたと報じられている(2013年2月16日「産経」)。

本来、F35の導入自体が不可能
1967年4月、当時の佐藤栄作首相が明らかにした「武器輸出三原則」は、1.共産圏諸国、2.国連決議により武器等の輸出が禁止されている国、3.国際紛争の当事国またはそのおそれのある国への武器輸出を禁止した。「三原則」は1976年2月に三木内閣で一定強化されたこともあったが、1980年代以降、政府によって次のような例外が導入され後退させられてきた。

※米軍向けの武器技術供与を許容(1983年1月4日「内閣官房長官談話」。(後藤田正晴長官、中曽根内閣)。
※米国との弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産は「三原則」の対象外とする。(2004年12月10日「内閣官房長官談話」。(細田博之長官、小泉内閣)。

そして、2011年12月には、次の二つのケースについて「包括的例外措置」を講じることが決定されたことは記憶に新しい(12月27日「内閣官房長官談話」。藤村修長官、野田政権)
http://www.peace-forum.com/seimei/111228.html

 

  1. 平和貢献・国際協力に伴う相手国への武器移転:目的外使用、第3国移転は厳格に防止措置を講じることを条件とする。
  2. 武器共同開発・生産:安全保障で協力関係にある相手国であり、我が国の安全保障に資する場合。ただし、目的外使用や第3国移転について政府による事前同意を義務付ける。

 

2011年12月27日の「談話」には次のような項目が含まれていた。「(3)もとより、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであり、上記以外の輸出については、引き続きこれに基づき慎重に対処する。」留意するべきなのは、これに従えば、1967年4月の「武器出三原則」の項目3.(国際紛争の当事国又はそのおそれのある国への武器輸出の禁止)は、度重なる「例外措置」を経た引き続き生きていいたということだ。米国から「事前同意の要件化」を拒否された日本は、ALGSへの参画が条件となるF35導入自体を見直すべきであった。それにも拘わらず、政府が選んだのは、この基本原則を棚上げするという道であった。
しかも、2011年12月の「官房長官談話」にかろうじて残されていた「平和国家としての基本的理念」という表現は削除され、2013年3月1日の談話では「国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念」に差し替えられた。国連憲章さえ守っていれば「憲法平和理念」はどうでもよい、といわんばかりに。
日本にとっての「平和国家の基本的理念」は、憲法を離れて語りえないはずである。

日米防衛産業界が要求
過去の「例外措置」と同じように、今回も産業界からの圧力が強く働いていた。2012年7月17日の「日米防衛産業協力に関する共同声明」(経団連防衛生産委員会、在日米国商工会議所航空宇宙防衛産業委員会)は、2011年12月の「例外措置」を「画期的なもの」と評価しつつ、次の4つのモデルによる共同生産は「両国の防衛生産・技術基盤の強化、コストの分担を通じて防衛産業の競争力強化に貢献する」ものであると推奨した。
http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/059.html

(モデルA)
日米のBMD/SM-3共同開発プログラムのような、両政府間による正式な防衛装備品の共同開発・生産のプログラム。(略)
(モデルB)
将来の防衛技術に関する予備的な先行研究のための日米産業界の協力。(略)
(モデルC)
いずれか一方の国の政府のプログラムを支援するための防衛産業協力。(略)
(モデルD)
ライセンサー国からの要請に応じて、ライセンスを受けた国が防衛装備品を提供するケース。(略)

F35導入に伴うALGSへの参画は、上記のうち(モデルC)に該当する。もっともこの共同声明においても、「第3国移転の際の日本の事前同意取得のスキーム」の必要性が強調されていた。
ここでいう「事前同意取得のスキーム」が、米国から拒否されたのは前記のとおりである。今回の日本政府の判断は、元来決して大きいとはいえない国内市場に依存し、その結果コスト高と利幅の縮小に直面している日本の産業界にとっては好ましいことかもしれない。だがその立場から考えても、米国企業に支配されたALGSへの参画が国内産業の活性化につながるとの保証はどこにもない。それと引き換えに、国民は共通の公共財である平和国家の理念に基づく原則をまた手放したのである。

自分で決めた三原則だから捨ててもよい?
日本政府は、「通常兵器の輸入、輸出及び移譲に際しては、自発的に厳しい基準を適用してきた」はずである。この「自発的に高い基準」こそが「武器輸出三原則」であった。それとも政府や財界は「自発的に適用してきた基準だから、自発的に撤廃してもよい」というのであろうか。これは、非核三原則「見直し」論や憲法96条改正策動とも通じる詭弁である。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/att/kenkai.html
国連総会の歴史的決定の1か月前になされた日本の「基準」緩和-いや「三原則」全体の撤廃に等しい-を、イスラエルによる非人道的な空爆の恐怖に晒されつづけているガザの住民は、どのように聞くであろうか。ATTの禁止事項には、「国際人道法への違反行為等に使用される恐れがあることを(当事国が)認識している場合の武器移転(第6条3)」が含まれる。ガザにおけるイスラエルの行為は「国際人道法への違反ではない」というのが米国の立場であることを想起しよう。日本の対米追従路線がここでも明らかである。

   このような決定をして恬として恥じない人々には、私たちと世界の「安全保障」を左右する地位から退場してもらう以外にないと、つくづく思うのである。

 

2013年05月27日

原水禁/インドのシン首相と安倍首相の原子力協力協定締結への会談に対する声明

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2013年05月22日

鎌田慧さん、飯島滋明さん講師に憲法問題連続学習集会第2回開く


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2012年12月総選挙は、改憲を掲げる安倍晋三総裁の自民党が294議席、石原慎太郎代表の日本維新の会が54議席をとり、合計で衆議院の3分の2議席を大きく超える結果となりました。7月の参院選で彼らの議席を増大させてしまえば改憲が政治日程に登場することは間違いなく、すでに改憲発議を3分の2から過半数に引き下げる憲法96条改定に、安倍首相は積極姿勢を見せ、「維新」やみんなの党と連携した動きもすすめられています。平和フォーラムは、自民党などの改憲論や衆参憲法審査会の動向に対するとりくみの一環として、毎月1回ペースで著名人の方が憲法に対する思いと考えを語るとともに、憲法学者が改憲論の問題点を指摘する連続学習集会を4月から開始しました。
その第2回目の学習集会が、5月22日、東京・連合会館で140人の参加者のもと、「さようなら原発1000万人署名」の呼びかけ人でルポライターの鎌田慧さんの「私と憲法」、名古屋学院大准教授の飯島滋明さんの「オスプレイと日本国憲法」の2つの講演が行われました。
このうち、鎌田さんは、国会の改憲発議要件を2分の1以上の賛成に緩める96条改憲について「50%を超えたら正しいというのは民主主義ではない」と強調。片や沖縄では圧倒的多数がオスプレイ配備に反対しても強行される現実にも触れ、「(沖縄の声を)聞かないのはどういうことか。完全に植民地支配だ」とも指摘しました。また、96条改憲は9条改悪のための地雷のようなものだとし、9条改憲の狙いは米国の戦争を助けることであり、集団的自衛権とは事実上「集団的他衛権」にほかならないとしました。
飯島さんは「オスプレイ配備は基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の(憲法)理念に(従来の安保より)いっそう反する」と述べ、平和的生存権や環境権などの観点も交えて問題点を具体的に指摘しました。また、野田前首相が配備について「事前協議の対象ではない」としたことを例に、「配備が国民の生命や健康などに危険だと考えるならば日本政府が米国に対してものを言うのは当然」と述べ、憲法より安保条約や日米地位協定が優位に立つという転倒した現実を批判しました。1959年の一審伊達判決が米軍駐留許容は違憲だとした砂川事件の最高裁判決への米国の介入や、米兵の公務外犯罪について重要事件以外は日本側が第1次裁判権を行使しないとした1953年の日米合同委員会の裁判権放棄密約などにも触れ、これらは「まさに主権侵害行為」だとするとともに、「押しつけ憲法だと言っている人たちは、実は押しつけ安保条約だということは批判しない」と改憲派の矛盾を突きました。
平和フォーラムは、つづいて第3回目の憲法学習集会を6月25日、東京大学教授の高橋哲哉さんと千葉大学教授の三宅晶子さんを講師に開きます。

飯島滋明さんレジュメ   飯島滋明さん「オスプレイと日本国憲法」

2013年05月19日

3500人参加し「復帰41年 5・15平和とくらしを守る県民大会」


県民大会の様子

復帰41年の平和行進は、5月19日午後、東・南・西3コースの行進団が宜野湾市の宜野湾海浜公園屋外劇場に集結し、「復帰41年 5.15平和とくらしを守る県民大会」を3500人参加のもと開催しました。山城博治沖縄平和運動センター事務局長の司会のもと、最初に全員で力強くシュプレヒコール。崎山嗣幸実行委員長(平和センター議長)が「オスプレイ(普天間)再配備、辺野古新基地と、あらためて沖縄の基地の重圧、再編の強化が進んでいる」「憲法改悪をもくろみ、沖縄をまた戦争に引きずり込もうとする安倍内閣を、また侮辱発言を繰り返す橋下を、この県民大会の名において糾弾する」「沖縄では爆音被害による生活破壊が常に起きている。日本は果たして主権国家なのか。今後も平和への思いを高めていこう」と主催者あいさつ、藤本泰成平和フォーラム事務局長は「橋下発言に沖縄差別の言葉に腹の底から怒りが湧く。命としっかりと向き合う新しい国を出発させたい」と連帯あいさつ、新垣邦男中部市町村会副会(北中城村長)は「本土でも沖縄議論をしてほしい」との激励あいさつと出席した自治体首長の紹介、残念ながら土砂降り雨の荒天のためあいさつや報告を受けることはできませんでしたが、新里米吉社民党県連委員長(県議会議員)、糸数慶子社大党委員長(参議院議員)、照屋寛徳衆議院議員、山内徳信参議院議員の政党と国会議員、新川秀清第3次嘉手納基地爆音訴訟団会長、島田善次普天間から爆音をなくす訴訟団長、安次富浩へリ基地反対協代表委員が、紹介されました。鹿児島への原水禁・非核平和行進タスキ引き継ぎ式、韓国からのゲストとしてソン・ガクホさん(韓国「開拓者たち」代表)と日本軍「慰安婦」被害者のキム・ボクトン(金福童)さんのあいさつが行われました。米軍基地被害を受けるピョンテク(平沢)から来たソンさんは「米軍基地、出て行け」と日本語で力強く訴え、キムさんは、中国や東南アジアの日本軍占領地に連行されて8年間「慰安婦」としての生活を強いられ、最後は撤退する軍に見捨てられ米軍の収容所に入れられた過酷な体験を語り、「このような戦場にどうして民間人が行くことができるのか」「このような準備された所(慰安所)をどうして民間人が造ることができるのか」と、軍による強制の歴史的事実を否定する日本維新の会の橋下共同代表の発言を強く批判。「日本政府が、その政府を引っ張っていく政治家たちが妄言を吐くことができないよう皆さんが努力していただくことをお願いする」「戦争で国の力が弱ければ、皆さんも必ず被害に遭う。力を合わせ、戦争のない世界をつくろう」と訴え、結びに日本語で「頑張ってください」と話すと、会場から長く続く拍手が沸き起こりました。
そして、平和行進各コース本土代表、八重山・宮古・東・西・南の報告が行われました。東コース団長を務めた下地哲治さんは「ここに結集した皆さんの平和への思いを一つにまとめ大きな輪をつくろう」と呼びかけました。最後に、「沖縄を含む全国のアメリカ軍基地の強化への反対と日米地位協定の抜本的改正を強く要求する」などとした大会宣言が読み上げられたあと、崎山議長の音頭のもと全員でガンバロー三唱を行って集会を終えました。5月11日の宮古コースを皮切りに始まった5.15沖縄平和行進は、全行程を終了。沖縄県外からの1300人を含む6000人が参加しました。

県民大会宣言
沖縄タイムス速報    →沖縄タイムス(キム・ボクトンさん)    →沖縄タイムス(闘いの報告)    →琉球新報    →NHK沖縄    →琉球放送    →琉球朝日放送    →沖縄テレビ

2013年05月19日

平和とくらしを守る5・15沖縄県民大会宣言

   1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効され、沖縄を日本から切り離し、そこから「県民の苦難の日」が始まった。それを置き土産に日本は国際社会に復帰した。それから、20年後の1972年5月15日に沖縄は復帰したが、「即時無条件全面返還、平和な島・沖縄」を強く望んだ県民の願いとは裏腹に米軍基地は居座り続け、戦後61年、そして、復帰41年たった今日、基地機能はさらに強化されてきた。こうしたなか、沖縄が「屈辱の日」としてきた4月28日に政府主催の「主権回復式典」を開催したことは、断じて容認できるものではない。米国追従・日米同盟を優先し.国民、県民の声に耳を傾けることのできない、今のこの国は主権国家と言えるはずもない。
   私たちは、昨年9月に10万3千人が結集し、「オスプレイ配備に反対する9・9県民大会」を開催した。さらに、今年1月には県内全41すべての市町村の長および議会議長、県議会の各会派の代表が署名、捺印したオスプレイ配備の撤回と普天間基地の県内移設に反対する「建白書」を安倍総理に手渡した。しかし、日米両政府は昨年10月1日に欠陥機オスプレイを普天間基地に強行配備し、両政府の合意に違反したオスプレイが連日、住宅地の上空を我が物顔で飛び回り、県民に大きな不安も与え続けている。本土においても、山口県岩国基地を拠点に低空飛行訓練が開始され、さらに全国で訓練を実施しようとしている。また、今年の夏以降には普天間基地に新たに12機を追加配備し、さらに空軍仕様のオスプレイを嘉手納基地に配備する計画も明らかにした。一方、沖縄防衛局は、3月22日に辺野古新基地建設に関する埋め立て申請書を姑息な手段で沖縄県に提出するとともに、東村高江では反対派住民を強制排除し、ヘリパット建設を推し進めている。このような、日米両政府による差別的な基地負担に県民の怒りは収まらない。
   他方、自民党安倍政権は、過去の植民地支配と侵略を認めた村山談話を否定するとともに、7月の参議院選挙で憲法96条の改正を公約にかかげ憲法9条を改正し、戦争する国づくりへ突き進もうとしている。防衛大綱の骨子では、島しょ防衛の強化の名のもと、沖縄の自衛隊の強化、オスプレイの導入を公表した。まさにアジア諸国の脅威になろうとしている。また、大阪橋下市長の従軍慰安婦の容認と米軍への風俗の活用発言は、女性に対する人権をあまりにも軽視し、不見識であり市長、政治家の資質はまったくなく、即刻辞任すべきである。
   このような米軍、自衛隊基地、憲法改悪が取り巻く状況の下、私たちは、復帰41年目の5・15平和行進を実施した。本島3コース、宮古、八重山コースを含め計5コースで3日間、力強い行進を展開した。政府の米国追従と差別的な沖縄政策によって押し付けられる不条理に厳しく抗議し、各地で、日米両政府に県民が一丸となって闘う決意を交換しあう実り多い行進となった。また、今回の行進にも全国各地から1,300人余の県外参加者があり、県内参加者と随所で交流、意見交換をし、反戦平和の創造を誓い合い、この平和行進を盛り上げる原動力となった。
   私たちは、今年の5.15平和行進を締めくくるこの大会において、平和行進と本大会の成功をともに確認しあうとともに、引き続き、日米両政府によって進められる米軍再編、それによってもたらされる沖縄ならびに全国の米軍基地の強化、拡大に反対することを表明する。さらに、続発する米兵による凶悪犯罪を糾弾し、日米両政府に対し米軍犯罪の温床になっている日米地位協定の抜本的改正を強く要求する。また、2年が経過した東日本大震災の早期の復興と原発の再稼動を許さず、脱原発社会の実現を確認する。最後に戦争への道に踏み出そうとする政府の戦争策動、憲法改悪に抗し、わが国とアジア近隣諸国、そして世界平和のために闘い抜くこと確認した。そして、このことを本大会において宣言する。

2013年05月18日

5.15沖縄平和行進、辺野古(東)・読谷(西)・那覇(南)を出発し、米軍基地に抗議し、戦跡地で犠牲者に思いをはせ、歩く

西コース行進

5月17日朝、第36回5.15平和行進は、東コースが名護市辺野古から、西コースが読谷村役場前から、南コースが那覇市役所前広場から出発しました。東西コースは嘉手納基地など米軍基地、南コースは南部戦跡地などを行進し、19日には普天間基地のある宜野湾市の海浜公園野外劇場の県民大会に集結します。南部コースでは、出発式で崎山嗣幸議長があいさつ。社民党の狩俣信子副委員長(県議会議員)、沖縄社大党の平良識子副書記長(那覇市議会議員)のあいさつ、当該地の県職労、那覇市職労のあいさつなどを受けて出発しました。

出発式・1日目   →沖縄タイムス    →琉球新報    →NHK沖縄    →琉球放送    →琉球朝日放送    →沖縄テレビ

2日目   →沖縄タイムス    →琉球朝日放送

3日目   →琉球新報    →琉球放送

南コース出発

2013年05月17日

橋下徹日本維新の会共同代表の差別発言に対する抗議声明

2013年5月17日

橋下徹日本維新の会共同代表の差別発言に対する抗議声明

フォーラム平和・人権・環境
共同代表 福山真劫

   5月13日、橋本徹日本維新の会共同代表は、「戦場では慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」「当時はどこの国も持っていた」「韓国などの宣伝で日本はレイプ国家と見られているが、暴行・脅迫して拉致した事実は裏付けられていない」などと、戦争状態では「慰安婦」制度はやむを得ない旨の発言を行いました。その後、「慰安婦制度は今は認められないが、海兵隊などの猛者の性的エネルギーをコントロールするためには風俗業を利用すべき」と、在沖米軍司令官に勧めたことも明らかにしました。

   この発言は、女性を男性の性のはけ口としか捉えず、女性の人格や人権を否定するものです。日本が行った侵略戦争で「従軍慰安婦」とされた被害者を再び傷つけるもので決して許されません。また、売買春を容認するとともに、男性を自らの性的欲求のために女性の人権を侵害する下劣なものとしており、男性に対する冒涜でもあります。男女平等、ジェンダーフリー社会をめざす人間社会の普遍的とりくみに対する攻撃と考えられます。平和フォーラムは、満身の怒りを持ってこの発言を糾弾するものです。

   石原慎太郎日本維新の会共同代表は、立場を同じくする橋本発言を「間違ったことは言っていない」と擁護する発言を行っています。日本維新の会は、その責任と発言の重さに鑑み両代を辞任させるよう要求します。

   橋下共同代表は、国内外の批判に対し「『従軍慰安婦制度』を認めている訳ではない」「売買春を進めているわけではない」と釈明しましたが、当初の発言にはそのような解釈をとる余地はありません。また、「女性の人権を蹂躙したのは日本だけではなく、世界各国、米国も同じだ」と開き直る姿勢は自らの発言に責任を持たない政治家としての資質に欠ける行為であると断言せざる得ません。
   平和フォーラムは、橋下徹共同代表が、大阪市長を含めすべての公的・政治的立場から自らの意志で退くことを強く要求します。

   このような発言の背景には、「従軍慰安婦」問題など、侵略戦争と植民地支配の責任をないがしろにしてきた日本政府の姿勢があります。また、多くの人権課題を先送りし「人権後進国」のような状況を作り出してきた責任もあります。歴史認識や「従軍慰安婦」問題では、安倍晋三首相の発言も国内外から批判されています。この問題を契機に、日本社会が国際的に信頼されるべく戦後補償と人権確立に、真摯にとりくむことを強く要求します。

2013年05月16日

韓国政府の入国拒否に断固抗議する声明

2013年5月16日

韓国政府の入国拒否に断固抗議する声明

フォーラム平和・人権・環境
共同代表 福山真劫

経過について
   フォーラム平和・人権・環境の共同代表の福山真劫は、5月15日、11時20分ごろ、韓国、キンポ空港出入国審査事務所で「あなたは韓国出入国管理法に基づく韓国に害を及ぼす恐れのある入国拒否者リストに掲載されているため、韓国入国を許可できません」と通告されました。私には身に覚えがなく、なぜ拒否者リストに掲載されているのか、その理由を尋ねても、ここではわからないと繰り返すばかりでした。その後、私への対応はアシアナ航空(入国に利用した航空会社)担当事務員に引き継がれ、その事務員から「15時30分の便で返すようにと入国管理事務所から文書で命令されている」と告げられました。私はこの経過について、「納得できないので拒否する」と抗議しました。
   またこの経過について、招待をしてくれた「5.18拘束負傷者会」、「東アジアに平和と歴史認識教育連帯」の2団体と、在韓日本大使館等に連絡し対応を要請しました。
   訪韓目的は、韓国政府主催の5.18記念式典への参加と韓中日3国の招待団体を含むNGO主催よる歴史認識についてと東北アジアの非核化のシンポジウムへの参加が目的でした。
   15時頃、出入国管理事務所の事務官から、「福山さんについては、現在入国について、保留で検討中である」と修正の通告がありました。そして最終的に19時ごろ同じ事務官から、「福山さんは、1.朝鮮民主主義人民共和国に入国している。2.朝鮮総連と関係がある。だから入国拒否者リストに載っている。それゆえ入国を許可できない」と説明があり、「お気持ちはわかるがこれが韓国法務部の最終判断である」と通告されました。理由を正式に告げられたのは今回が初めてです。また期間は6カ月間とのことでした。
   その後、15日は金浦空港で抗議を続け、翌16日、この時点での「この問題の解決には至らない」ということを招待してくれた団体と協議の上、決定し、8時30分の便で帰国しました。

   以上が簡単な経過ですが、この韓国法務部の決定は極めて重大な問題点を持っており、決して了解できない代物です。ひとつは北朝鮮入国者への入国を拒否することについてです。北朝鮮は現在162か国と国交があり、多くの人が交流しています。また平和フォーラム・原水禁は「在朝被爆者支援」・「日朝国交正常化」を取り組みの課題として掲げており、北朝鮮への訪問等はその活動に応じて当然なされるべき行動です。さらに福山は非合法に入国したわけでなく、合法的に入国しています。東アジアでの非核・平和の確立が求められており、南北の平和的自主的統一が求められているこの時代に、冷戦時代の思考を引きずってどうするのでしょう。北朝鮮に入国した事実を持って、入国を拒否している国など他にありません。
   また、朝鮮総連との関係のある者の入国を拒否するということについて、日本において人権運動の一環として、戦後補償、差別された在日朝鮮人の人権課題に取り組めば朝鮮総連との関係は生じるのは当然のことです。さらに「朝鮮高校への授業料の無償化排除に反対」する課題に取り組めば関係できるのはこれも当然のことです。朝鮮総連との関係があるということでいえば、日本の人権運動にかかわる団体、市民、在日の方々と地域での交流のある人々すべてが関係します。こうした事例を入国の拒否の理由とする国などなく国際的常識からかけ離れています。
   さらに福山が拒否をされるのは2011年5月に続いて2度目です。それ以前は問題なく入国できていましたが、李明博政権が誕生してから入国を拒否されました。ここに政治的意図を感じざるを得ず、入国管理事務が権力者によって恣意的に運用されてはなりません。
   また韓国政府は福山が北朝鮮に入国していること、朝鮮総連と関係があるということなど、どのようにして把握したのでしょうか。韓国の政府機関が日本でスパイ行為を働いていると勘繰られても仕方がないでしょう。また私と同じように入国を拒否された事例を最近よく耳にします。

   私はこうした点をふまえ、韓国政府に今回の措置に対する謝罪と撤回をただちに行うよう求めます。そして国際的常識と規範に基づく入管行政を行うよう求めます。さらに日本の平和・人権団体、市民への監視ただちにやめるよう求めます。
   また日本政府として、こうした政策をとる韓国政府とどう向き合うのか。日本では当然の合法行為が、そのことを理由に韓国で入国拒否にあうという事態にどう対処しようとするのかが問われており、日本政府に対しても事態改善に向けて最大限の努力を求めます。
   最後に今回の訪韓の招待団体である両団体が、韓国政府に対して強く抗議し、入管行政と韓国における民主主義の確立のため奮闘していただいたことに敬意を表すると同時に、心から感謝します。また多くの関係者にも努力をいただきましたことに心から感謝します。

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