7月, 2020 | 平和フォーラム

2020年07月31日

パンフレット『敵基地攻撃論批判 「専守防衛」の”見える化”を』


 敵基地攻撃については、1956年2月に政府見解が示されています。法理的に自衛の範囲に含まれるとした敵基地攻撃の要件は、①急迫不正の侵害が行われた ②必要最小限の措置をとる ③他に手段がないとしており、防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことは自衛の範囲に入らないとしています。これは旧武力行使の三要件を前提としていましたが、2014年7月に安倍政権が閣議決定した新武力行使の三要件(集団的自衛権の行使容認)に基づけば、米国等他国への武力行使や日本への直接的な攻撃がなくとも、先制攻撃による敵基地攻撃が法理的には可能となります。平和憲法の理念から当然逸脱するのはもちろん、「抑止力」を拡大させる軍拡競争の泥沼に陥り、他国との軍事的緊張を高めることになるのは明らかです。
 集団的自衛権の行使容認と安保法制(戦争法)が成立した状況の下、これまでの防衛政策の基本であった「専守防衛」の枠すらも超えて拡大する安倍政権の防衛政策は極めて危険です。
 軍事評論家でジャーナリストである前田哲男さんが「敵基地攻撃論」を徹底批判した、このパンフレットを活用していただき、敵基地攻撃能力の保有もめざした国家安全保障戦略(NSS)の初改定の動きに反対していく世論を盛り上げていきましょう。

編集・発行:立憲フォーラム
体裁:A4版 40頁
内容:どこから来たのか?「敵基地攻撃論」議論の沿革/21世紀初頭の逆転劇 法理上から政策へ/敵基地攻撃:どんな兵器が選定されるか?/どう対抗していくか
頒価:100円(送料別)
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2020年07月31日

増加する軍事支出へ批判を強める市民社会:銀行も核関連企業への投融資を抑制  森山拓也

年間1兆9170億ドルの軍事支出
今年4月にスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公開したファクトシート[1]によると、2019年の世界全体の軍事支出額は、冷戦終結後最大の1兆9170億ドルに上った。前年比では3.6%増加しており、年間増加率も2010年以降で最高となった。
冷戦終結後に一旦は減少した世界の軍事支出は、2000年頃から再び増加基調となり、金融危機の影響を受けた2011~2014年を除き、過去最高額の更新が続いている。2019年の軍事支出の伸びを牽引したのは、米国をはじめとする大国だ。軍事支出額の上位5か国に入った米国、中国、インド、ロシア、サウジアラビアで、世界全体の軍事支出の62%を占めた。上位15か国の軍事支出は合計で1兆5530億ドルに達し、世界全体の81%を占めた。
昨年の軍事支出が世界最大だったのは、7320億ドルを支出した米国である。米国だけで世界の軍事支出の38%を占め、軍事支出上位10か国までを合わせた額に匹敵する。前年比で5.3%増加しており、その増加額は2019年のドイツの軍事支出に相当する。SIPRIは米国の軍事支出増加の要因として、リクルートの拡大による人件費の増加と、兵器の近代化を挙げている。トランプ政権はロシアや中国を念頭に大国間の軍拡競争への回帰の姿勢を示しており、通常兵器・核兵器の近代化に取り組んでいる。また宇宙軍の創設や極超音速ミサイルの開発など、新たな軍事技術の開発が軍事支出の増加につながったと考えられる。
第2位の中国の軍事支出は2610億ドルで、世界全体の14%を占める。前年比で5.1%の増加で、2010年と比べると85%も増加している。中国の軍事支出は1994年以降25年連続で増加している。中国の軍事支出拡大は経済成長と並行しており、軍事支出の対GDP比率は2010年から2019年の間、約1.9%を維持している。ただ、中国は近年、南シナ海の軍事拠点化や空母建設、極超音速兵器の開発などを進めており、建国100年となる2049年までに経済から軍事のあらゆる分野で世界トップを目指している。米中派遣争いの中で、今後も軍事支出の増加が予想される。
軍事支出第3位には711億ドルを支出したインドがランクインした。前年比6.8%の増加で、インドが上位5か国に入るのは初である。インドは過去数十年にわたって軍事支出を増やしており、1990年と比べ259%増加している。SIPRIはインドの軍事支出拡大の背景として、隣国である中国とパキスタンとの軍拡競争を指摘している。中国に加え、インドと領土問題など対立を抱えるパキスタンも軍事費を2010年比で70%拡大させ、2019年には103億ドルを支出している。インド、パキスタン、中国の3か国の間では領土をめぐる衝突が起きるなど緊張が高まっており、軍拡競争に拍車がかかる恐れがある。
2019年はインドが軍事支出拡大により、上位5か国に初めてアジア・オセアニア地域から2か国がランクインした。アジア・オセアニア地域はSIPRIの地域別統計で1989年以降に軍事支出の増加が続く唯一の地域だ。2010年以降の増加率でも、アジア・オセアニア地域は最も高い51%である。アジア・オセアニア地域の2019年の軍事支出のうち中国がほぼ半分を占めるが、日本や韓国の軍事支出も大きい。日本の軍事支出は476億ドルで前年より0.1%減少したが、2010年と比べ2%増えている。韓国では軍事支出が急増しており、2019年は前年比7.5%増の439億ドルで、2010年と比べると36%の増加である。

[表1]上位15か国の」軍事費(2019年)

順位 国名 軍事費(10億米ドル) 比率(%)
1 米国 732 38
2 中国 261 14
3 インド 71.1 3.7
4 ロシア 65.1 3.4
5 サウジアラビア 61.9 3.2
6 フランス 50.1 2.6
7 ドイツ 49.3 2.6
8 英国 48.7 2.5
9 日本 47.6 2.5
10 韓国 43.9 2.3
11 ブラジル 26.9 1.4
12 イタリア 26.8 1.4
13 オーストラリア 25.9 1.4
14 カナダ 22.2 1.2
15 イスラエル 20.5 1.1

 

軍事支出削減を求める市民社会、核兵器産業へも厳しい視線

軍事費の増加に対し、市民社会からの批判が高まっている。国際平和ビューロー(IPB)をはじめ世界の100以上の団体が参加する「軍事支出に関するグローバル・キャンペーン」は5月、新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ、軍事支出と保健医療支出を比較し、保健医療体制を強化するために軍事費を削減する必要性を訴えた[2]。
新型コロナウイルスのパンデミックの危機は、保健医療体制の整備といった「人間の安全保障」の重要性を改めて示している。一方、世界の軍事支出額は、保健医療への支出と比べ桁違いに大きい。「軍事支出に関するグローバル・キャンペーン」によると、昨年の世界の軍事支出1兆9170億ドルに比べ、保健・医療、緊急支援、教育、難民支援、軍縮などに取り組む国連機関(UNODA、ICRC、WHO、UNICEF、UNHCR等)への人間の安全保障関連支出は211億7986万ドルに留まった(表2)。軍事支出額は人間の安全保障関連支出の100倍に近い大きさだ。
軍事支出の削減は、人々の健康や暮らしを守るために必要な医療機関や病院設備、医療従事者により多くの資金を提供することを可能にする。私たちは新型コロナウイルスのパンデミックに加え、気候変動など地球規模の危機に直面している。人間の安全保障のためにリソースを割くべき時に、軍事支出のこれ以上の拡大は正当化されない。軍縮を求める市民社会の訴えは、危機の今だからこそ説得力を増している。

[表2]世界の軍事支出と安全保障関連支出(2019年)

市民社会は年間1000億ドル以上が投資されているという核兵器産業にも厳しい目を向け始めている。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)やバーゼル平和事務所は2016年、核兵器予算の削減や核兵器製造に関与する企業からの投資撤退を奨励する「ムーブ・ザ・ニュークリア・ウェポン・キャンペーン」を発足させた[3]。同キャンペーンは、核兵器産業から撤退した資金を、貧困撲滅、気候変動対策、再生可能エネルギーの普及、雇用創出、医療、教育などの分野に再配分することを求めている。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)とオランダのNGO「PAX」は、核兵器産業に融資を行う各国の金融機関を調査する「核兵器にお金を貸すな」プロジェクトを行っている。同プロジェクトの2019年の報告書によると、2017年1月から2019年1月の間に、世界で325の金融機関が7480億ドル以上を核兵器製造企業18社に融資した。
一方、同調査では2017年以降に世界で94の金融機関が核兵器製造企業への投資をやめたことも明らかにされている。核兵器製造企業への投資から引き上げられた投資額は、少なくとも555億ドルに上るという。近年、より多くの金融機関が、投資において環境、社会、ガバナンスといった要素を考慮するようになっている。その中で、核兵器をはじめ非人道的兵器の開発に関わらないと明記する金融機関が増加している。
核兵器関連企業への投融資を控える取り組みは、日本の金融機関にも広がりつつある。今年5月、日本国内の16銀行が核兵器やその運搬手段の製造に関わる企業への投融資を自制する指針を定めていることが、共同通信のアンケートで明らかになった[4]。多くの銀行が核関連企業への投融資を自制する背景には、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を選別して投資する「ESG投資」の動きが世界的に広がっていることがある。より多くの銀行が、市民社会から厳しい目を向けられる軍事産業や環境負荷の高い産業との取引を避け、企業イメージの向上を図るようになっている。
共同通信のアンケートは今年2月~3月に計119行に対し文書で実施され、35行から回答があった。核関連企業への投融資自制指針があると回答したのは、北海道銀行、北洋銀行、東北銀行、埼玉りそな銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行、あおぞら銀行、住信SBIネット銀行、大垣共立銀行、りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行、肥後銀行、鹿児島銀行であった。
一方、公開されている指針で核兵器に直接言及しているのは、りそなホールディングスと三菱UFJフィナンシャル・グループのみであった(表3)。りそなホールディングスは2019年1月に核兵器や大量破壊兵器などの非人道的兵器の開発・製造・諸事に関与する企業に融資を行わないと宣言し、三菱UFJフィナンシャル・グループは今年6月に改訂した指針で核兵器の製造に対する融資禁止を明記した。
核兵器をはじめとする非人道兵器が使用されることを望む人々は、おそらく世界で少数のはずだ。それでもこうした兵器を製造する産業が成立する背景には、そこに投融資を行う金融機関の存在が不可欠だ。軍事産業に投融資される資金の出どころには、銀行を利用する私たち市民の預金も含まれる。こうした事実を知れば、多くの預金者は自身の預金が非人道兵器の製造に使われることを望まない。預金者として銀行を利用する市民の監視の目が強まり、欧州を中心に世界では非人道的兵器の製造に関わる企業への投融資を一切行わないと宣言する大手金融機関が増えている。
核兵器の非人道性を強調し、絶対悪ととらえる核兵器禁止条約の存在も、金融機関の核兵器関連企業からの投融資撤退をさらに促すだろう。共同通信のアンケートでは銀行12行が、核兵器禁止条約の成立を受け核関連企業への投資に将来的リスクがあると考えると回答している。先述のICANとPAXによる調査でも、核兵器禁止条約が採択された2017年以降に核兵器からの投資をやめた金融機関が増加している。こうした変化は、市民社会の主導で採択された核兵器禁止条約の成果の一つと言えるだろう。今後も市民社会が莫大な軍事支出や非人道兵器への投融資に厳しい目を向け続けることが変化の鍵となる。

[表3]国内2銀行の投融資指針における核兵器への言及箇所

三菱UFJフィナンシャル・グループ 戦争・紛争において使用することを目的に製造され、一般市民も含めて、無差別かつ甚大な影響を与える核兵器、生物・化学兵器、対人地雷は、クラスター弾と同様に人道上の懸念が大きいと国際社会で認知されています。核兵器、生物・化学兵器、対人地雷の非人道性を踏まえ、これら非人道兵器の製造に対するファイナンスを禁止しています。
りそなホールディングス 核兵器・化学兵器・生物兵器等の大量破壊兵器や対人地雷・クラスター弾等の非人道的な兵器の開発・製造・所持に関与する先や、国内外の規制・制裁対象となる先、またはその虞のある先への融資は行いません。


1 SIPRI, Military expenditure, https://www.sipri.org/research/armament-and-disarmament/arms-and-military-expenditure/military-expenditure
2 Global Campaign on Military Spending, http://demilitarize.org/resources/gdams-healthcare-not-warfare-infographic/
3 「ムーブ・ザ・ニュークリア・ウエポン・マネー」HP:http://www.nuclearweaponsmoney.org/
4 「核兵器関連企業へ投資自制」『神奈川新聞』2020年5月4日朝刊2面.

2020年07月31日

パンフレット『危険がいっぱい!止めよう日米FTA-グローバリズムの流れを変えよう-』

 
 2019年12月に日米貿易協定が国会で承認され、2020年1月1日に発効しました。日米FTAは日本の農林畜産業に甚大な打撃を与えることは明白です。さらに日米間で再交渉が行われることとなっており、医療・医薬品、投資、政府調達、労働、為替条項など多岐にわたる分野が課題に上ることが予想されます。
 このパンフレットは、日米二国間の通商交渉の危険な内容を分かりやすく解説したものとなっています。学習会等でご活用ください。

発行:TPPプラスを許さない!全国共同行動
体裁:A4版 14頁
内容:グローバル化の深化を後追いする日米FTA/日本農業の根幹が揺らぐ/消費者が願う食の安全が脅かされる/暴利をむさぼる!?製薬会社/巨大IT企業の支配する世界がつくられる/「公共」の空洞化と疲弊する地域/世界の人たちと手を結んで新しい社会をつくろう!
頒価:100円(送料別)
問合せ先:全日農03-6233-9335/農民連03-5966-2224

2020年07月30日

沖縄だよりN0.104(PDF)

http://www.peace-forum.com/wp-content/uploads/2020/08/okinawa_No104.pdf

2020年07月30日

講演会案内 あなたが食べているパンは大丈夫?ー農薬グリホサート汚染の実態ー

食の安全・監視市民委員会講演会
あなたが食べているパンは大丈夫?~農薬グリホサート汚染の実態~

民間の食品分析センターが市販のパンを検査したところ、検査した15製品中、11製品から農薬グリホサートを検出しました。グリホサートは世界で最も多く使われている除草剤で、世界保健機関(WHO)の専門家機関である国際がん研究機関(IARC)が、「おそらく発がん性がある」と指摘しているものです。グリホサートがなぜパンから検出されるのでしょうか? 他の食品は大丈夫なのでしょうか? グリホサートの問題点も併せてお話しします。

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日時:2020年9月26日(土)13:30~15:30
会場:連合会館2階201会議室(東京都千代田区神田駿河台3-2-11)
[最寄駅]地下鉄「新御茶ノ水駅」B3出口すぐ/JR「御茶ノ水駅」聖橋口5分
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●講演「農薬グリホサート汚染から見えてきたもの」

天笠啓祐(ジャーナリスト)

●食塩中のマイクロプラスチック残留検査発表(予定)

守屋由紀枝(環境カウンセラー、当会運営委員)

参加費:1000円(会員500円)  要予約

※新型コロナウイルス感染症対策として完全予約制とします。定員は40名です。

※今後、緊急事態宣言発令等で会場施設が閉鎖された場合は、中止もしくは延期とします。

<予約先>
電話:03-5155-4765/Eメール:office@fswatch.org

主催:食の安全・監視市民委員会
協力:日本消費者連盟、フォーラム平和・人権・環境、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン

2020年07月13日

陸自オスプレイの木更津暫定配備に抗議


 陸上自衛隊が導入するオスプレイ17機のうち1機が7月10日、木更津基地に初めて配備されました。当初は6日に飛来する予定でしたが、悪天候を理由として延期となっていました。
 陸自のオスプレイについて防衛省は、長崎県佐世保の水陸機動団(日本版海兵隊)が運用し佐賀空港に配備することを目論んでいますが、地元の根強い反対があることから、5年以内の期限を目標に、木更津駐屯地に暫定配備することを、木更津市と合意。すでに陸上自衛隊輸送航空隊を3月26日木更津駐屯地に配置されています。
木更津駐屯地は、米軍海兵隊のオスプレイ(MV22)の定期機体整備の拠点としても運用されており、受注企業としてSUBARUが整備を行っています。2020年5月までに2機のMV22の整備が行われ、現在3、4機目の整備が行われています。今後、整備の拡充を求めている米軍当局に応じ、防衛省は整備のための格納庫を2棟新設し、3棟体制で整備を実施するとしています。米軍オスプレイ7機、陸自オスプレイ3機を同時に定期整備を行う体制を整えるというものです。

 平和フォーラムをはじめ、平和センター関東ブロック連絡会議、護憲・原水禁千葉県実行委員会、全国基地問題ネットワーク4団体は7月6日、木更津基地を臨む内港北公園(木更津市)で、地元団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」の緊急抗議集会に合流し、藤本泰成平和フォーラム共同代表、持田明彦平和C関東ブロック議長、小原慎一全国基地ネットワーク代表委員団体(神奈川)、石野一三多摩平和運動センター事務局長らが暫定配備に反対する発言を述べました。
 7月10日には、住民の会の監視・抗議行動に参加し、北村智之平和フォーラム副事務局長が暫定配備に抗議し、陸自のオスプレイと全国の米軍基地撤去に向けた連携を強化しようと訴えました。ヘリモードで東京湾を北上してきたオスプレイに対して、抗議のシュプレヒコールを行い、今後の連携を強化し暫定配備撤回に向けた意思を固めあいました。

 なお、4団体連名で陸自オスプレイの木更津暫定配備に対して抗議文を7月10日付で発信しました。
 抗議文はこちら

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