11月, 2020 | 平和フォーラム

2020年11月30日

必要なのは敵基地攻撃能力保有ではなく、北東アジア非核兵器地帯構想だ

湯浅 一郎

急浮上した敵基地攻撃能力の保有問題

9月16日、安倍首相の病気を理由にして後継総裁選挙の結果、菅政権が誕生した。菅首相は、安倍政権を引き継ぐことを基本にして、学術会議の任命者のうち6人を政府が拒否し、一向に撤回しないことに示されているように陰湿な政治を進めようとしている。そうした中で、自民党内から安倍首相の退任直前に敵基地攻撃能力の保有に関する議論がにわかに浮上した。

話のきっかけは、20年6月24日、日本政府が、国家安全保障会議(NSC)において、山口・秋田両県への地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画の断念を決定したことに始まる。この決定を受け、イージス・アショアの代替策として「敵基地攻撃能力の保有を求める」議論が自民党内に沸き起こった。8月4日、自民党政務調査会は、「国民を守るための抑止力向上に関する提言」(注1)をまとめ、安倍首相に提出した。提言は、弾道ミサイルによる攻撃を防ぐため、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みが必要である」とした。敵基地攻撃能力という言葉こそ使っていないが、敵基地の攻撃を含む能力の保有を検討すべきだとしている。

しかし、この議論は今に始まった話ではない。自民党政務調査会が、2017年3月、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」(注2)で「北朝鮮の脅威が新たな段階に突入した今、……巡航ミサイルをはじめ、我が国としての『敵基地反撃能力』を保有すべく、政府において直ちに検討を開始すること」と述べていた。2018年防衛計画大綱とともに策定された中期防衛力整備計画には、相手の脅威が及ぶ距離の外から対処できるスタンド・オフ・ミサイルの導入が盛り込まれた。具体的には空自戦闘機F-15等に搭載するLRASMおよびJASSM、F-35Aに搭載するJSM(注3)が想定されていた。しかし、F-15へのJASSM搭載には、F15の機体改修が必要で、2019年度予算に2機分として機体改修費108億円がついている(注4)。これは、従来のF15購入に当たっては専守防衛の立場からスタンド・オフ・ミサイルなどを搭載できない形がとられていたことを意味する。これらのミサイルを搭載した戦闘機は、装備としては敵基地攻撃能力を持つことになる。しかし2018年防衛計画大綱では、スタンド・オフ・ミサイルの使用目的について、日本の島嶼部などへの侵攻を試みる艦艇や上陸部隊等に対しての使用を述べるに留まり、敵基地攻撃については述べていない。

これに対して、今回の自民党提言は、攻撃対象を敵国領域内のミサイルに関連する固定施設とするなどの方針を明確にしようとしている。提言は「憲法の範囲内で、国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下」としてはいるが、装備のみならず、政策や教義、運用において専守防衛を切り崩す意図が働いている。8月の提言を受け政府は、年内にもミサイル防衛体制の強化などを含む国家安全保障戦略の改定をもくろんでいる。

自民党および日本政府によるこれらの動きは、2016年から17年にかけて北朝鮮がミサイル・核実験を繰り返したことを理由としていた。2017年の自民党提言は、「北朝鮮による核実験及びミサイル発射は深刻な脅威であり、昨年の2度の核実験及び23発の弾道ミサイル発射……等、北朝鮮の挑発行為は我が国が到底看過できないレベルに達している」と述べている。その上で、それへの対処として以下の3点の検討を求めた。

  1. 弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
  2. わが国独自の敵基地反撃能力の保有
  3. 排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処

要求された1項の中心が、言うまでもなくイージス・アショアの導入によるミサイル迎撃体制の強化であった。したがって、それを断念した以上、代替として2項の「敵基地反撃能力の保有」論が強力に押し出されることは、ある意味で必然の経過と言ってよい。実際には、提言に「中国等の更なる国力の伸長等によるパワーバランスの変化が加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性が増している」と触れているように、中国を念頭においた軍事力強化の一環であるという側面もある。

この自民党提言には、2018年に始まった朝鮮半島をめぐる大きな情勢の変化への視点が根本的に欠けている。南北、米朝首脳会談を通じて朝鮮半島の非核化と平和を、外交により実現しようとする歴史的な動きが始まっている。残念ながら交渉は膠着状態が続き、米政権の交替でシンガポール米朝共同声明の位置づけがどうなるのか未知の側面はあるが、停滞を打開して米朝協議を再び動かすために、新しい政治的なモメンタムを作ることが求められている。そのなかで日本の役割は何か、と考えることこそ、日本の地域安全保障政策でなければならない。

このようなときに日本が敵基地攻撃能力の保有に走ることは、2018年に始まったプロセスから日本を一層遠ざけることしかもたらさない。それは日朝の対話の機会をいっそう困難にすることは必至である。

菅首相は、20年10月26日の臨時国会での所信表明演説で、「拉致問題は、引き続き、政権の最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、全力を尽くします。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。」とした。これは、安倍首相の方針と同じであるが、具体的なロードマップは何も示されていない。仮に「条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う」ことを優先するのであれば、相互の信頼醸成と敵視政策をやめねばならないが、一方で、政府として北朝鮮を念頭に敵基地攻撃能力の保有を検討していて、どのように対話の場を設定するというのであろうか。全く矛盾したことを平然と言い放っている。

今こそ北東アジア非核兵器地帯構想を打ち出すとき

この機に必要なことは、非核三原則や専守防衛という戦後日本に定着してきた平和理念を基礎に、朝鮮半島の非核化と平和の動きに合流する姿勢を示すことであろう。そう考えると、具体的には、北東アジア全域の非核兵器地帯化という構想が、現実味を帯びた政策案として浮上するはずである。

これまでにこの地域の政府が同地帯を提唱したことはないが、冷戦終結後、多くの研究者やNGOがさまざまな構想を提案してきた(注5)。梅林宏道が「スリー・プラス・スリー」構想――日本、韓国および朝鮮民主主義人民共和国(DPRK、北朝鮮)が非核兵器地帯を形成し、これに対し周辺の核兵器国である米国、中国、ロシアが消極的安全保証を供与するような6か国条約を作るという構想――を提案したが(注6)、それが分かりやすい構想として、広く知られている。

日本の市民社会には北東アジア非核兵器地帯の設立を支持する広範な世論が培われてきた。具体的スキームを含む北東アジア非核兵器地帯の構想が、日本のメディアに登場したのは、おそらく1995年6月の『朝日新聞』によるエンディコット・グループの研究を紹介する記事(注7)が最初であろう。そこには、朝鮮半島と日本列島をカバーする円形や楕円形の地帯案が紹介されていた。それ以後、日本のメディアには、梅林の「スリー・プラス・スリー」案や金子熊夫・外務省初代原子力課長の別の円形案などの提案を含め、北東アジア非核兵器地帯設立を促す記事や論説が、数多く、また繰り返し登場した。

地方自治体においても、北東アジア非核兵器地帯の設立を支持する声が幅広く存在している。長崎市長が会長を務める日本非核宣言自治体協議会(以下、非核協)(注8)は、2009年に北東アジア非核兵器地帯を支持するキャンペーンを開始した。非核協と平和市長会議の協力によって、ピースデポなど市民団体が呼びかけた「北東アジアの非核兵器地帯化を支持します」という声明に、日本の自治体首長の546名が署名するにいたった(2016年末現在)。

毎年8月6日と9日に出される広島、長崎市長による平和宣言は、日本政府に対して、北東アジア非核兵器地帯の設立を検討するようしばしば要請してきた。例えば長崎市長は、2018年の平和宣言で米朝協議が始まった新たな情勢を受け以下のように訴えている。

「南北首脳による『板門店宣言』や初めての米朝首脳会談を起点として、粘り強い外交によって、後戻りすることのない非核化が実現することを、被爆地は大きな期待を持って見守っています。日本政府には、この絶好の機会を生かし、日本と朝鮮半島全体を非核化する『北東アジア非核兵器地帯』の実現に向けた努力を求めます。」

宗教者の間に広がる支持の動きも見ておくべきであろう。2016年2月、4人の宗派横断的な宗教指導者が呼びかけ人となり、「私たち日本の宗教者は、日本が『核の傘』依存を止め、北東アジア非核兵器地帯の設立に向かうことを求めます」と題する声明(注9)を発表し、日本政府に政策検討を要請した。

このような市民社会における関心の高まりが、政府の政策にほとんど反映されないことは、日本の民主主義の深刻な欠点である。しかし、少なくとも外務省の政策検討プロセスにおいて、北東アジア非核兵器地帯に関する認識に変化をもたらした。外務省が2002年から刊行している「日本の軍縮・不拡散外交」では、2008年発行の第4版まで、世界に存在する非核兵器地帯に触れながらも北東アジア非核兵器地帯構想には一言もなかった。それが、2011年の第5版が「日本を含む北東アジア非核兵器地帯を設立する計画については、……北朝鮮の核問題を解決するための努力が最初になされるべきと考えている」と構想の存在を初めて認めた。2013年の第6版では「近年、日本、韓国及び北朝鮮が非核兵器地帯となり、これに米国、中国、ロシアが消極的安全保証を供与する3+3構想が、一定の注目を集めている」と初めて「3+3」構想に言及した(注10)。とはいえ、「(北東アジア地域においては)非核兵器地帯構想の実現のための現実的な環境はいまだ整っているとは言えない。…まずは北朝鮮の核放棄の実現に向け、努力する必要がある」と否定的な態度をとっている。しかし、2018年にその「現実的な環境」が大きく変わったはずなのである。

いずれにせよ、この時期に、「敵地攻撃能力の保有」を持ち出すことは政治的な大きな誤りである。冒頭で述べたように、敵地攻撃論は、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する対抗構想として登場し、論じられてきた。米朝交渉が行き詰まる中で、2019年5月以来、北朝鮮の短距離ミサイルの実験が繰り返され、日本にとって脅威の状況は変わっていないという議論があるかも知れない。しかし、米朝、南北の対話の再開があれば、日朝をとりまく環境だけが悪いまま不変であるという議論は成り立たない。むしろ、現在は行き詰まっている対話の再開について、日本が果たすべき役割を検討することが、ミサイルの脅威を減じる現実的な道である。そのことによって拉致問題を含め、日朝間に存在する諸懸案の解決に向かって、新しい展望も開けると考えられる。菅首相が言う「日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します」を実践すべき時だ。政府は、市民社会に蓄積されている北東アジア非核兵器地帯の設立を支持する世論を、今こそ行き詰まり打開のために活かすべきである。

  • 注1 自由民主党政務調査会「国民を守るための抑止力向上に関する提言」(2020年8月4日)。
    https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200442_1.pdf
  • 注2 自由民主党政務調査会「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」(2017年3月31日)。
    https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/134586_1.pdf
  • 注3 JSM=Joint Strike Missileの略称。対艦/対地/巡航ミサイル。JASSM=Joint Air-to-Surface Standoff Missileの略称。長距離空対地巡航ミサイル。LRASM=Long Range Anti-Ship Missileの略称。長距離対艦巡航ミサイル。
  • 注4 『朝日新聞』2020年11月20日。
  • 注5 長崎大学核兵器廃絶研究センター「提言:北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」所収ボックス3「北東アジア非核兵器地帯への諸提案」参照。
    http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35475/1/Proposal_J_original.pdf
  • 注6 北東アジア非核兵器地帯に関する包括的な解説として、梅林宏道「非核兵器地帯」(岩波書店、2011年)がある。
  • 注7 『朝日新聞』1995年6月13日。
  • 注8 非核宣言自治体が宣言実現のための自治体間協力を目的として1984年に設立した。2020年4月現在、342地方自治体で構成。
  • 注9 4人の呼びかけ人は、小橋孝一(日本キリスト教協議会議長)、杉谷義純(元天台宗宗務総長、世界宗教者平和会議軍縮安全保障常設委員会委員長)、高見三明(カトリック長崎大司教区大司教)、山崎龍明(浄土真宗本願寺派僧侶)。肩書はいずれも当時のもの。
  • 注10 外務省「日本の軍縮・不拡散外交」(第6版)(2013年3月)、p.42。
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gun_hakusho/2013/pdfs/zenbun.pdf

2020年11月25日

「第52回食とみどり、水を守る全国活動者会議」を開催します

 「食とみどり、水を守る全国集会」については、昨年から運動の継続性を考慮し「食とみどり、水を守る全国活動者会議」と名称を変更して開催してきました。今年はコロナ禍にあることを考慮しWeb(Zoom)開催とすることにしました。
 
<講 演>
 演 題「新たな食料・農業・農村基本計画について(仮題)」
 講 師 谷口信和氏(東京大学名誉教授)

 <報 告>
 報 告1 「森林労連の取り組み(仮題)」
  報告者 佐藤賢太郎氏(森林労連書記次長)
 報 告2 「蛇口の向こう側(仮題)」
  報告者 辻谷貴文氏(全水道書記次長)
 

2020年11月18日

オスプレイ問題で第9回防衛省要請行動

オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会とフォーラム平和・人権・環境は11月17日、衆議院第2議員会館会議室で、第9回目となる防衛省要請行動を行いました。

木更津駐屯地でのオスプレイの定期機体整備にかかわり、試験飛行等で日曜日に飛行しないよう覚書事項の遵守を求めたほか、陸上自衛隊オスプレイの暫定配備問題で、木更津市民に広く説明できるような場を設けることなどを要請しました。

また、防衛省に対し、オスプレイの構造上の問題、事故率の問題など懸念されている課題についてやり取りがおこなわれました。オスプレイから排出される排熱について、オスプレイの沖縄配備の際に米軍が出した文書「オスプレイ日本での運用に関する環境レビュー」で矛盾した記載がある点を質したほか、「オートローテーション機能があり安全に着陸できる」と防衛省が主張している一方で、シミュレーターによるオートローテーション訓練で着地時の時速が130km/hであると説明したことを踏まえ、とても「安全」に着陸できる速度ではない点を問いましたが、回答をはぐらかすことに努め、オスプレイの安全性に関する市民の懸念に応えようとする姿勢を見せることはありませんでした。

 

要請事項・質問項目はこちら(PDF)

2020年11月11日

動画「敵基地攻撃論と日米軍事同盟強化」のご紹介

第57回護憲大会開会総会の特別報告として、冒頭の提起部分のみ上映した「敵基地攻撃論と日米軍事同盟強化」のフルバージョン(約90分)を「 peaceforum channel 」にて配信していますので、ご紹介します。

https://www.youtube.com/watch?v=KILCjutr8Pg

安倍前首相が退陣直前に俄に持ち出した「敵基地攻撃論」。3人の専門家にお話を伺いながら、発端となったイージス・アショア配備計画の経緯や日米軍事同盟一体化に向けた動向、そして憲法上の検討を通じて、その問題性を明らかにしていきます。
※第57回護憲大会開会総会特別報告のフルバージョンです。

出演:半田滋さん(防衛ジャーナリスト)/前田哲男さん(軍事評論家)/飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)
聞き手:藤本泰成(平和フォーラム共同代表)

2020年11月09日

まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!第57回護憲大会を開催

11月7日・8日、滋賀県大津市・びわ湖ホールで、「まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!憲法理念の実現をめざす第57回大会(滋賀大会)」(第57回護憲大会)が開催されました。新型コロナウイルス感染症問題が終息していないことから、例年3日間の日程を短縮し、参加者を大きく絞ったうえ、オンライン中継を活用するという形式での開催となった本大会には、全国各地から約200人が参加したほか、多くの「リモート参加」がありました。

7日はまず開会総会が行われ、勝島一博・実行委員会委員長から開会にあたっての挨拶、続いて仲尾宏・実行委員会副委員長から開催地からの歓迎挨拶が行われました。続いて山本和代さん(連合副事務局長)、近藤昭一さん(立憲民主党企業・団体交流委員長)、福島瑞穂さん(社会民主党党首)、地元選出の嘉田由紀子さん(参議院議員)がそれぞれ連帯挨拶。滋賀県知事の三日月大造さんからは歓迎のビデオメッセージが届きました。

竹内広人・実行委員会事務局長が大会基調を提案し、全体で確認をしました。また、「遠藤三郎賞」の授賞式が行われ、松本修次さん(愛媛)に授与されました。特別報告として「敵基地攻撃論と日米軍事同盟強化」について、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)、前田哲男さん(軍事評論家)、半田滋さん(防衛ジャーナリスト)からの提起をビデオ形式で受けました。

引き続いて、メイン企画としてシンポジウム「新型コロナウィルス感染症と日本の人権状況」が開催されました。杉浦ひとみさん(弁護士)、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)のコーディネートのもと、パネリストとして鈴木雅子さん(弁護士)、宮子あずささん(看護師)、河かおるさん(滋賀県立大准教授)が登壇、ディスカッションが行われました。最後に内海善夫・実行委員会事務局次長が閉会の挨拶に立ち、7日のプログラムを終えました。

8日は憲法課題をめぐる課題について、滋賀における多文化共生のとりくみ、水俣病の解決をめざすとりくみ、女性のおかれた現状について、そして沖縄現地の情勢を、映像を活用して報告を受けたほか、各地からさまざまな課題についての報告がありました。

次回(第58回大会)の開催予定地である宮城からは成功に向けた意気込みをビデオメッセージとして寄せられました。大会アピールを採択したのち、2日間にわたって行われた提起や報告の内容について、竹内実行委員会事務局長が総括的なまとめを行い、全体の閉会挨拶を仁尾和彦・実行委員会副事務局長が行い、第57回大会を終了しました。

 

 

2020年11月04日

九州朝鮮高校「無償化」裁判の福岡高裁判決に対する事務局長見解

九州朝鮮高校「無償化」裁判の福岡高裁判決に対する事務局長見解

                                2020年11月4日
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 竹内広人

 10月30日、福岡高等裁判所(八尾渉裁判長)は、九州朝鮮高級学校生徒・卒業生68名が提訴した「無償化」裁判に対して、一審判決を追認し、控訴を棄却する不当判決を行った。

 福岡高裁は、「公安調査庁の調査結果等は、朝鮮総聯が、朝鮮高校と密接な関係を有し、・・・朝鮮高校を含む朝鮮学校が、その教育について朝鮮総聯から「不当な支配」を受けているとの合理的な疑念を抱かせるには十分なものであったと考えられる」としている。植民地支配の歴史から生まれた予断と偏見による根拠のない疑念を、子どもたちの権利侵害の理由に挙げるとは、司法判断として許しがたい。

 高校無償化法の適用によって支給される就学支援金は、「学校」に対してではなく、生徒「個人」に支払われるものである。学校はあくまでも受給権者である生徒に代わって支援金を受領する「代理受領」を行っているにすぎない。どこで学ぶかによって支給の可否が問われるべきではない。朝鮮学校の生徒を高校無償化制度から排除することは、「法の下の平等」を謳った憲法14条、人種によって教育上差別することを禁止している教育基本法4条に厳に反しており、人権侵害、民族差別である。

 また、朝鮮学校の指定根拠となる規定を削除したことは、国による「教育を受ける権利(憲法26条)」の侵害であるにもかかわらず、先の広島高裁判決と同様に、福岡高裁もまた削除の評価をせず、「削除がなされていなければ・・・指定がされた高度の蓋然性があった、とはいえない」と判断を避けている。「朝鮮学校の教育内容が朝鮮総連の影響を受けている」ということを口実に無償化の指定対象から排除することは、民族教育を否定するものであり、学習権の侵害といえ、社会的正義を守るべき司法の判断とはいえない。

 高校の授業料無償化から朝鮮学校だけを排除した国の判断に対して、これまで再三国連「子どもの権利委員会」から適用基準の見直しを求める勧告を出されている。さらに国連人種差別撤廃委員会、国連社会権規約委員会からも同様の指摘をされており、当然司法は国際的な見解をふまえ判断を行うべきである。

 平和フォーラムは、今回の福岡高裁判決に強く抗議するとともに、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するために、朝鮮学園を支援する全国ネットワークに結集し、全国の仲間ともに、粘り強くとりくみをすすめていく。

以上

2020年11月01日

民主主義へのあからさまな攻撃!戦前に戻すな

WE INSIST!

1930年2月、「天皇機関説」(注)を主張する憲法学者の美濃部達吉貴族院議員を、菊池武夫貴族院議員(予備役の陸軍中将)が、政党や軍部、国粋主義者の支持の中で、「皇国ノ国体ヲ破壊スルヨウナモノ」として国会で攻撃し、美濃部を辞任に追いやった。いわゆる天皇機関説事件だ。岡田啓介内閣は、2度の国体明徴声明を発出し、統治権は天皇にあるとして「天皇機関説」を排除した。「天皇機関説」は、ドイツの学説を基に、明治憲法の下での政治体制を説明する一般的な学説だった。その結果、立憲主義に基づく統治理論は否定され、「天皇は、陸海軍を統帥する」とした明治憲法第11条と相俟って、軍部独裁に途を開くこととなった。戦前は、様々な思想弾圧、学問の自由への弾圧があった。大逆事件や滝川事件は有名だが、その他様々な思想弾圧が日常のように行われていった。権力にあらがい戦争に反対する声は、暴力によってかき消されていく。戦後憲法は、そのことへの反省に立っているのではないか。

成立間もない菅内閣は、あろうことか独立した機関とされる「日本学術会議」の人事に介入し、会が作成した会員推薦名簿にある6人の任命を拒否した。あからさまな学問への攻撃であり、民主主義への真っ向からの挑戦だ。6人は、戦争法や共謀罪法など安倍政権の暴挙に抗議の姿勢を示してきた。菅首相は、任命拒否の理由を明らかにしないが、批判が理由なのは明白だ。気に入らないから排除する、戦前と同じ途に入らんとするのか。

この姿勢が、共謀罪法と一緒になったらと思うと背筋が寒くなる。批判されることのない政治は、政治とは言えない。批判を受け入れ、議論を重ねる姿勢が政治家に必須ではないか。安倍政権も菅政権も、懐の狭い、知恵の浅い政権にしか見えない。法を無視し力で意を通そうとするのは、暴力団まがいだ。将来の社会から、「あの時に」とのそしりを受けないようにしなくては。(藤本 泰成)

(注)天皇機関説とは、天皇は、統治権を持つ国家の最高機関として内閣などの輔弼を受けて統治権を行使するとするもので、統治権は天皇にあるとする天皇主権説と対立するもの。

2020年11月01日

〔本の紹介〕『元徴用工和解への道』

内田 雅敏 著 (ちくま新書)

元徴用工和解への道

アジア・太平洋戦争中に日本で強制労働をさせられた韓国人の元徴用工4人が、雇用者であった新日本製鐵に損害賠償を求めた訴訟で、2018年10月30日に韓国の大法院は、原告の主張を認め、新日本製鐵に対しひとりあたり1億ウォン(約1,000万円)の損害賠償を命じました。この判決を受け日本政府は、「1965年の日韓基本条約・請求権協定で解決済」と、裁判当事者の企業よりも声高に批判をしました。弁護士として、中国人強制連行・強制労働問題で、受難者と企業との和解交渉を成立させた著者は、その経験から、韓国人元徴用工問題解決の鍵はこのあたりにあると指摘します。日本は国交正常化時に植民地支配の責任を認めませんでしたが、法のないところでも条理に従った判断が和解を可能にし、裁判でだめだから和解交渉ということではなく、歴史の問題は和解によって解決していくことに積極的な意味を持ちうるのではないかと説きます。

花岡事件の和解が西松建設和解につながり、さらに三菱マテリアルでは、花岡・西松をはるかに超えた和解が成立しています。≪加害者は忘れても、被害者は忘れない≫、歴史問題の解決のためには、被害者の「寛容」と加害者の「節度・慎み」が不可欠で、私たちはこのことを肝に銘じて、加害の事実と向き合い続けなればならない。隣国すべてが友人になることが究極の安全保障で、歴史問題の解決こそが日本の安全保障につながると、著者は繰り返し訴えます。重いテーマの本書ですが、心が熱くなるエピソードも多数紹介されています。建設当時の発電所が現在も稼働していると知った遺族のひとりが「父たちが造ったこの発電所を末永く使ってほしい」と、案内の中国電力の担当者に話しかけ、担当者は即座に「はい、大切に使わせていただきます」と答えたという話もそのひとつです。

先日、都内大手老舗書店の新書コーナーにこのタイトルが平積みされていました。長く書店で働いてきた経験では、出版日から1箇月を過ぎても新刊として平積みになる書籍はなかなかありません。このことはこの本の関心の高さを示しているものだと思います。いま人権擁護と社会正義のために闘う弁護士は200人にひとりの割合だそうですが、弁護士としての通常業務の他に、戦後補償問題、靖国問題などに率先して取り組み、行動している、闘う内田弁護士の最新刊です。お薦めの1冊です。(市原 まち子)

2020年11月01日

木更津基地がオスプレイの一大拠点に

護憲・原水禁君津、木更津地区実行委員会 原田 義康

多くの反対の声を無視し「暫定配備」強行

横断幕を掲げ配備1号機飛来に抗議 2020.7.10

本年7月10日、150名あまりが反対の声を上げる中、陸上自衛隊が導入したオスプレイの第1号機が陸上自衛隊木更津駐屯地に着陸した。2号機は16日に飛来。当初1号機は6日に飛来してくるとしていたが、悪天候でこの日となった。2号機も当初の10日が16日に変更された。風に弱いといわれるオスプレイを象徴するような初飛来となった。

そもそも防衛省は陸自オスプレイについては、佐賀空港への配備を予定していたが、有明海漁協等との話し合いが膠着状態になっていた。そこへ昨年12月25日、それまで「定期整備もままならないのに、配備など話しにならない」と言っていた渡辺芳邦木更津市長が防衛省に赴き、佐賀空港建設に5年を要したというだけの、全く根拠のない暫定配備期間を5年以内とするなどの条件を提示し、河野太郎前防衛大臣が「努力する」と答えたことで、一転配備への協力表明行うという助け船を出した。その前段の12月、木更津市議会では、5年以内の配備を求める意見書を防衛大臣に提出した。市議会でオスプレイに反対する議員は24名中4名のみで、多くの議員は暫定配備を早く受け入れ、特定防衛施設周辺整備調整交付金等を増額させようという、市民の暮らしの安全よりも金や物を取ることを優先する、あさましい思惑がある。

こうした動きを察知した地元でオスプレイ反対を訴える、「オスプレイ来るないらない住民の会」は他団体と共催で昨年12月1日に2000名あまりが結集し「オスプレイ暫定配備反対県民大集会」を開催した。また年開け以降4月からは首相、防衛大臣宛と木更津市長宛の署名運動を開始。首相、防衛大臣宛の署名は平和フォーラムの協力要請もあり、全国の労組、平和運動センターから32万筆を超える署名が短期間に集まった。住民の会では6月5日に1万筆、7月9日には24万筆の署名を携え、配備反対を求めて防衛省交渉を行った。しかし、防衛省は「オスプレイはCH-47と比べても速度は2倍、航続距離で3倍ある優れた飛行機だ。配備を見直すつもりはない」と言ってのけた。また木更津市も1万筆余りの署名を提出して行われた住民の会との交渉で「協力をやめるつもりはない」と臆面もなく答えた。コロナ禍で国民の多くが雇用、生活を脅かされ、あらゆる行動の自粛を求められている中、既定路線を強行する防衛省の姿勢は、沖縄の辺野古新基地建設に端的に示されているように、民意など一顧だにしない政府の姿勢、そしてそれに追随する自治体の対応に、憤りさえ覚える。

オスプレイの定期機体整備に新たな展開

一方、2017年2月から木更津駐屯地で始まった普天間基地オスプレイの定期整備は、当初の「1機あたりの整備期間は3、4か月」という説明に対し、1機目は25か月、2機目は19か月かかって終了した。現在2機が整備をしているが、整備が始まって3年8か月も経過しているにもかかわらず、未だ2機しか整備が終わっていないという状況にある。そこに本年5月に米軍から新たな整備計画が発表された。それは現在のSUBARUによる定期整備は2020年度までで、その後に整備する企業を本年7月に改めて公募する。公募の条件は普天間から1000マイル以内の基地で、一度に10機整備できるようにする。1機当たりの整備期間は1年4か月とし、2023年からは米空軍オスプレイCMV-22の整備も行うというものだ。これらは千葉県や木更津市には事前説明すらなかった。

11月以降陸自オスプレイの教育訓練が開始され、その後17機が配備されると、房総半島全域はもちろん、関東全域、日本全土で陸自オスプレイが飛び回ることが想定される。そこに米海兵隊、米海軍のオスプレイの定期整備が行われるとなれば、木更津基地が日米オスプレイの一大拠点と化してしまう。加えて、「5年の暫定配備」など防衛省にとって何ら拘束力はなく、安全保障環境が変わったなどと理由をつけて、恒久配備へとつなげていく懸念は大きい。

なぜオスプレイはこれほど嫌われるのか。それは紛れもなく安全性に欠く類いまれな構造的欠陥機であるからだ。県内でも木更津市以外の木更津基地周辺3市長を始め、飛行が予想される習志野駐屯地周辺の3市長が連名で、防衛省に説明や情報提供を求める要望書を提出している。私たちは、日米の軍事一体化を許さないとともに、何よりも人々の暮らしと安全を守るために、オスプレイの整備拠点廃止、陸上自衛隊オスプレイ導入中止に向けて、全国のオスプレイ反対、反基地の取り組みに学び、連帯して、一層取り組みを強めていかなければならない。(はらだ よしやす)

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