3月, 2025 | 平和フォーラム

2025年03月31日

2月24日「ウクライナに平和を!核兵器を使うな、原発に手を出すな」集会を開催

2月24日、東京・日比谷野外音楽堂で「ウクライナに平和を!核兵器を使うな、原発に手を出すな」集会が、さようなら原発1000万人アクション」実行委員会と「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」との共催で開かれ、各地から600人が集まりました。

詳しくは、上記報告動画(スライドショー)および、以下のさようなら原発1000万人アクションのウェブサイトをご覧ください。

「ウクライナに平和を!核兵器を使うな、原発に手を出すな」集会&デモ報告

2025年03月31日

海自護衛艦、2月上旬に台湾海峡通過-その前後の日米、そして多国間共同訓練

木元 茂夫

はじめに

 24年9月25日と25年2月上旬、海自護衛艦が台湾海峡を通過した。台湾海峡通過後、日米比、日米仏、日米韓などの共同訓練が連続して行われた。この訓練・演習の連続に、中国はどのように対抗したのか。「海洋進出を強める中国」という言葉がテレビの報道番組などで、当たり前のように使われるようになった。しかし、経済力を増強した中国を念頭において、日米はオーストラリア、フィリピン、韓国、それにNATO諸国を加えて軍事行動が拡大しつつある。それに、中国も軍事行動で対抗する姿が見えてくる。今年2月から3月にかけての一連の経過を追ってみたい。

1 防衛大臣の記者会見

 中谷防衛相が記者会見で、護衛艦の2度目の台湾海峡通過について明らかにしたのは、約1ケ月が経過した3月4日になってからであった。しかも、「お尋ねの内容につきましては、自衛隊の運用に関する事柄であることから、お答えは差し控えさせていただきます」と回答拒否、「中国軍の活動の活発化につきましては、中国は東シナ海において、力による一方的な現状変更、その試みを継続、また強化するとともに、艦艇や航空機を活発に活動させております。このような中国軍の軍事動向などは、我が国としては深刻な懸念事項となっております」(注1)と一般的な情勢を述べるのみであった。

 海自護衛艦の最初の台湾海峡通過は24年9月25日、記者会見は2日後の27日であった。「台湾海峡を海自の護衛艦がオーストラリア、ニュージーランドの艦艇と共に通航したとの報道がありました。事実関係を教えてください。その上で、台湾海峡の国際法上の位置づけについて、現在の政府見解を教えてください」との質問に対し、木原前防衛相は「お尋ねの内容につきましては、正に自衛隊の運用に関する事柄であることから、お答えを差し控えさせていただきます。特定の海域の国際法上の地位につきましては外務省にお尋ねいただければ幸いです。また、抗議等の点の御質問ございましたが、昨日来の報道に関連したものだと思われますが、こちらもまた自衛隊の運用に関する事柄であることから、お答えは差し控えさせていただきます」(注2)、この時も実質的には無回答であった。それでも、台湾海峡通過の2日後には、記者会見で答弁したのである。それが、今度は1ケ月後。万が一、日本と中国の艦艇が衝突した場合、公表されるのが1ケ月後であったら、私たちは衝突の原因を探る手立てがなくなってしまう。「自衛隊の運用に関する事柄」だから防衛省の判断で公表、非公表を決定するなどということは本来許されない。私たちの「知る権利」を否定し、自衛隊の暴走につながる。

2 日米豪比、日米仏共同訓練-原子力空母2隻と海自の実質空母「かが」が集結

 護衛艦「あきづき」(満載排水量6,800トン、全長151m、乗員約200名。以下、艦艇の排水量は、特に断りのない限り満載排水量で記す)は、護衛艦隊を構成する汎用護衛艦20隻(艦番101~120)の中で艦番115、2012年就役の新しい艦で高性能レーダーを搭載している。佐世保基地に所属。同艦は2月上旬、ヘリSH-60Kを搭載して台湾海峡を北から南へ通過。その後の2月5日、南シナ海で実施された「日米豪比4か国による海上協同活動」(共同訓練)に参加している(注3)。同訓練に米軍は横須賀に配備されているイージス艦「ベンフォールド」(8,364トン、全長154m、乗員286名)と対潜哨戒機P-8Aを、オーストラリアもイージス艦「ホバート」(6,350トン、147m、乗員205名)とP-8Aを参加させた。フィリピン海軍はフリゲート艦「ホセ・リサール」(2,600トン、全長108m、乗員65名)が参加。

 この訓練は24年4月11日の日米比首脳会談で合意された「共同ビジョンステートメント」を受けたものである。「我々は、東南アジアの地域パートナーとの共同訓練の機会を特定し、実施することを意図する。我々はまた、いかなる危機や偶発的事態にも備え、その対応にシームレスかつ迅速に協力できるよう、バリカタン2025を含む三か国又は多国間の活動に統合され得る、日比米の人道支援・災害対応訓練を立ち上げる」としている(注4)。バリカタンとは米比を中心とした多国間演習で24年には16,000人の兵士が参加している。航空自衛隊のミサイル部隊がはじめてオブザーバー参加した。米国主導の「抑止力」形成に協力するものである。米豪の対潜哨戒機の参加は、多分に中国海軍の潜水艦を意識したものであろう。

 「あきづき」は続いて2月10日から18日までの日米仏共同訓練(パシフィック・ステラー)に空母化改修工事をほぼ終えた大型護衛艦「かが」の随伴艦として参加した(注5)。訓練海空域は「フィリピン東方海空域」としか発表されていないが、23年4月5日には中国の空母山東が、24年10月13日には空母遼寧が通過した台湾とフィリピンの間のバシー海峡周辺での訓練であった可能性もある。同海峡は米中日の潜水艦にとっての重要海域である。訓練の広報には潜水艦の参加は基本的に掲載されないので、残念ながら確認できない。

 米国は原子力空母カール・ヴィンソン(93,000トン、全長333m、艦載機67機、乗組員3340人、艦載機要員2480人)、フランスも原子力空母シャルル・ド・ゴール(43,000トン、全長262m、艦載機40機、乗組員1400名、艦載機要員542名)を参加させた。この2隻の空母は多数の艦載機を搭載して訓練に参加した。自衛隊は空母化改修の第1次工事を終えた「かが」(26,000トン、全長248m、艦載機ステルス戦闘機、ヘリ等最大14機、乗組員520名、陸自隊員450名搭載可能)を参加させた。「かが」に搭載予定のステルス戦闘機F-35Bは3月までに宮崎県の新田原基地に配備予定であったが、同機に搭載されるコンピュータープログラムの開発遅延から、納期は4月以降に延期された。公開された写真で見る限り、「かが」はヘリコプターSH-60K数機のみを搭載して訓練に参加したようだ。カール・ヴィンソンは3隻のイージス艦とともに、シャルル・ド・ゴールも、3隻の駆逐艦、フリゲート艦と補給艦を従えて参加した。この訓練の特徴は米国が対潜哨戒機P-8A、海自が同P-3C、フランスが同アトランティックと、3ケ国とも大型の対潜哨戒機を参加させ、哨戒機と空母、イージス艦をデータ・リンクで情報交換・通信をする訓練(LINKEX)も行われた。哨戒機が潜水艦を発見すれば、その位置情報をただちに艦艇と共有するシステムを実際に確認したということだ。

 政治的に見れば、この訓練は24年10月19日の「G7防衛共同宣言」を受けたものである(注6)。「南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々は、中国による航行の自由に対する度重なる妨害、係争地形の軍事化及び威圧的かつ脅迫的な活動並びに南シナ海における海上保安機関及び海上民兵船舶の危険な使用に強く反対している」「地域の全てのパートナーとの対話を継続するとともに、地域の演習への参加を増やし、地域の運用面での更なる協力を行うことにコミットしている」。米軍も自衛隊も「地域の演習」への参加を増やしている。自衛隊は外洋練習航海中の「ありあけ」(6100トン、全長151m、乗員165名)と「はまぎり」(4,950トン、全長137m、220名)を2月27日から3月1日までマニラに寄港させ、親善訓練も実施した。また同期間、日米共同訓練が「西太平洋から東シナ海に至る海域」で実施され、空母カール・ヴィンソンとイージス艦ウィリアム・P・ローレンス、横須賀配備のイージス艦ラルフジョンソン、佐世保基地所属の「はるさめ」(「ありあけ」と同)が参加している。

3. 中国海軍の強襲揚陸艦、宮古海峡を通過

 日米仏訓練に合わせるように2月10日、中国海軍の3隻の艦艇が宮古海峡を南下した。駆逐艦南京(7500トン、全長157m、乗員280名)、フリゲート艦黄岡(4050トン、134m、乗員190人)、補給艦千島湖(23,000トン、全長179m、乗員130名)である。11日には駆逐艦紹興、フリゲート艦徐州、ドック型輸送揚陸艦四明山(25,000トン、全長210m)、強襲揚陸艦安徽 (36,000~40,000トン、全長232m、乗員人数不明、揚陸部隊1,600名)の4隻が宮古海峡を通過した(注7)。安徽は22年に就役した新鋭艦で、揚陸部隊の人数だけを比較すれば、米海軍の強襲揚陸艦とほぼ同等である。ただし、ステルス戦闘機の搭載予定はなく、ヘリ30機とホーバークラフト艇2隻のみである。中国海軍揚陸艦部隊の宮古海峡通過は極めて異例である。もっとも多いのは駆逐艦とフリゲート艦である。25年に入ってからは、1月に2隻、3月に3隻と、月1回のペースになりつつある。24日には中国軍の情報収集機1機が、26日に偵察型無人機(BZK-005)1機、28日には攻撃型無人機(TB-001)1機が宮古海峡を通過した。

 こうした中国軍の動向を見ると、日米、フランス、オーストラリア、フィリピンの共同訓練は、抑止力になるどころか、中国軍の反発と対抗措置を引き出してしまっている、というしかない。

4 日米共同訓練アイアン・フィスト

 続いて2月19日から3月2日までの日米共同訓練である(注8)。米海軍は佐世保に配備している強襲揚陸艦「アメリカ」(44,400トン、全長261m、乗組員1100名、揚陸部隊1687名、ステルス戦闘機等8機、大型ヘリ30機)、ドック型輸送揚陸艦「ラシュモア」(16,200トン、186m、乗組員413名、揚陸部隊402名)。この訓練は2月19日から3月7日までの「アイアン・フィスト25」と連動したもので、呉基地所属の大型輸送艦「くにさき」(13,000トン、178m、乗員137名、揚陸部隊330名)と横須賀基地所属の掃海艦「あわじ」(780トン、全長67m、乗員54名)、掃海艇「ちちじま」(660トン、60m、乗員48名)が参加した。

 防衛省が鹿児島県に配布した説明資料には、「演習の内容」として下記の項目が列記されている(注9)

〇日米共同での指揮機関訓練【キャンプ・コートニー】
〇 航空機を用いた日米共同での統合火力誘導訓練【出砂島射爆撃場】
〇 着上陸訓練 ・ 海上機動(偵察用ボート、水陸両用車(AAV)、ホーバークラフト(LCAC) 及び輸送艦・揚陸艦)による日米共同での着上陸訓練 【沖永良部島、金武ブルー・ビーチ訓練場及びキャンプ・ハンセン(久志クロッシング)】、
〇 空中機動による日米共同での着上陸訓練 【相浦駐屯地、沖永良部島、キャンプ・ハンセン及び金武ブルー・ビーチ訓練場】
〇 着上陸した部隊による日米共同での陸上戦闘訓練【沖永良部島、キャンプ・ハンセン】
〇 小火器を用いた日米共同での実弾射撃訓練【キャンプ・ハンセン】
〇 日米共同での兵站・衛生訓練及び水際障害処理訓練 【金武ブルー・ビーチ訓練場及び金武レッド・ビーチ訓練場】
〇 森林錯雑地における長距離機動、偵察等訓練【北部訓練場】
〇 陸自航空機の燃料補給訓練【鹿屋航空基地、奄美駐屯地、瀬戸内分屯地】
〇 滑走路復旧訓練【嘉手納弾薬庫地区】

 揚陸艦に乗りこんだ、陸自・水陸機動団と米海兵隊は、沖永良部島、金武ブルービーチ、キャンプ・ハンセンで上陸訓練を実施している。防衛省・自衛隊は、島嶼部を相手国の軍隊が占拠した場合、周辺海域に機雷を敷設し、自衛隊の接近を阻むことが予想され、島嶼部の奪回作戦には、機雷掃海が不可欠としている。だからこそ、掃海艦と掃海艇を参加させたのだろうが、その訓練内容の記載がないことは要注意である。

5 武器輸出の拡大狙う「豪州方面派遣訓練」

 2月12日、海上幕僚監部は2月17日から4月3日までの日程で、「豪州方面派遣訓練」を実施することを発表した。ミサイルや魚雷などの護衛艦としての兵装と、機雷の敷設と掃海能力をもつ「もがみ」型フリゲート3番艦の、「のしろ」(5,500トン、133m、乗員90名、佐世保)がオーストラリアとフィリピンに派遣された。オーストラリアの次期フリゲート艦導入をめぐって、日本が共同開発を持ちかけている艦艇で、ドイツと受注を争っている。「豪州方面派遣訓練」は、いわば売り込みのための訪問である。オーストラリア海軍(約1万5000人)にとっては、90人という少人数の乗員で運行できる「もがみ」型は確かに扱いやすい兵器と映るかもしれない。「のしろ」は2月25日にインドネシアのスラウェシ島に近いモルッカ海峡でインドネシア海軍(約6万7000人)の哨戒艇マディディハン(基準排水量250トン、全長46m)と親善訓練を行った。2月28日から3月3日までオーストラリアのダーウィンに寄港。出港後、フランス海軍のフリゲート艦ヴァンデミエール(2,950トン、全長96m、乗員100名)と共同訓練を実施した。3月26日にフィリピンのスービック海軍基地に入港、28日には南シナ海で、フィリピン海軍のホセ・リサール、横須賀基地所属のイージス艦シャウプ(9,880トン、全長155m、乗員329名)と共同訓練を行った。

 自衛艦隊司令部FBは、「護衛艦「のしろ」は、我が国の重要な海上輸送路の一つである南シナ海における訓練を通じて、各国海軍との連携強化を図りました」とし、在フィリピン日本大使館HPは、「我が国とフィリピンは、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)実現に向け、海洋協力の更なる強化に取り組んでいきます」とアピールしている。オーストラリア国防省は25年末には日本、ドイツ、どちらのモデルを選ぶかを決定すると報道されている。

6 米艦艇、石垣島に3年連続入港

 2月26日、石垣島に米海軍佐世保基地所属のドック型輸送揚陸艦「サンディエゴ」(2万6750トン、全長208m)、海上自衛隊呉基地第1訓練支援艦「くろべ」(2,200トン、全長101m、乗員約155名)が入港した。3月22日には佐世保基地所属の小型護衛艦「じんつう」(2,500トン、全長109m、乗員120名)が入港した(注10)(注10)。米海軍は陸上自衛隊石垣駐屯地開設の2023年から3年連続で、掃海艦-イージス艦-揚陸艦を入港させた。しかも、今回は初めて海自との同時入港である。入港の既成事実化を急速に進めるのは、補給拠点としたいという戦略からであろうか。

7 日米韓共同海上演習

 艦艇を中心とした訓練は、3月17日から20日にも「日米韓共同海上演習」として東シナ海で実施された。米国は再び原子力空母と3隻のイージス艦を参加させた。海自は護衛艦「いかづち」(6,100トン、全長151m、乗員165名、横須賀)を参加させた。尹錫悦大統領の弾劾裁判が継続するという緊迫した政治情勢の中、韓国海軍は2隻の軍艦を参加させた。イージス艦「セジョン・デワン」(10,290トン、全長166m、乗員387名)と駆逐艦「テ・ジョヨン」(5,500トン、全長154m、乗員200名)である。

 これは24年7月28日の「日米韓防衛相共同プレス声明」(注11)と24年に2回実施されたフリーダム・エッジ演習という流れの中にある(注12)(注12)。「日米韓3か国安全保障協力枠組みに関する協力覚書に署名し、これが有効となったことを宣言した。当該枠組みは、朝鮮半島、インド太平洋及びそれを超えた地域における平和と安定に寄与するため、高級レベルでの政策協議、情報共有、3か国訓練及び防衛交流協力を含む、防衛当局間の3か国の安全保障協力を制度化するものである」としている。「制度化した」という言葉を選択したのは、約4万5000人の海上自衛隊と約4万1000名(さらに海兵隊が2万人)の韓国海軍を協力させ、23万5000人の中国海軍に対抗させたい、米国の戦略に異議を唱えることは許さないということだろうか。しかし、対中国重視の米国の姿勢は「韓国防衛の軽視」とも受け止められており、今後の日米韓の軍事協力は波乱含みである。

まとめ

 2月、3月の日米共同訓練、日米仏、日米韓、そして、ASEAN諸国との訓練を整理してみた。しかし、これは防衛省が公開したデータに基づくものであり、非公開の訓練もあるから、実際にはもう少し回数は多いと推測される。「あきづき」も日米仏共同訓練終了後の動向は発表されていない。船舶位置情報ソフト・マリントラフィックによれば3月25日にホワイトビーチもしくは中城港出港となっているが、3月31日現在、母港の佐世保には帰港していない。

 24年に開催されたさまざまな首脳あるいは実務者会合が、インド太平洋地域での軍事協力の強化を打ち出した。2025年はこれまでにも増して軍事演習が連続することは確実である。フィリピンでの「バリカタン25」は24年よりも大規模なものとなるだろう。自衛隊の参加形態・参加規模も要注意である。横須賀への英空母プリンス・オブ・ウェールズの寄港、これはAUKUS(オーカス・米英豪)の大きな軍事演習となることが予想される。

 しかし、本来求められているのは中国との対話の促進と軍事行動の抑制である。中国の姿勢には強引な点がいくつもあるが、対話を重視していることは間違いない。軍事的な対応に終始するのは、根本的な誤りというしかない。

注1 中谷防衛大臣記者会見 25年3月4日
https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2025/0304a.html

注2 木原前防衛大臣記者会見 24年9月27日
https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2024/0927a.html

注3 統合幕僚監部報道発表資料 25年2月6日
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2025/p20250206_02.pdf

注4 日比米首脳による共同ビジョンステートメント 外務省HP
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100652839.pdf

注5 海上幕僚監部報道発表資料 25年2月6日
https://www.mod.go.jp/msdf/release/202502/20250206-1.pdf

注6 G7防衛共同宣言 24年10月19日
https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/2024/pdf/1019_g7-j_b.pdf

注7 統合幕僚監部報道発表資料 25年2月12日
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2025/p20250212_02.pdf

注8 海上幕僚監部報道発表資料 25年2月18日
https://www.mod.go.jp/msdf/release/202502/20250218.pdf
 
注9 鹿児島県HP 令和6年度第3海兵機動展開部隊との共同訓練(アイアン・フィスト25)について
https://www.pref.kagoshima.jp/aj01/bosai/kikikanri/torikumi/kikikannri/r6_if25.html

注10 「八重山日報」電子版 25年2月27日、「沖縄タイムス」25年3月25日
https://yaeyama-nippo.co.jp/archives/25011
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1550700

注11 日米韓防衛相共同プレス声明 防衛省HP
https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/2024/0728d_usa_kor-j.html

注12 統合幕僚監部報道発表資料 24年6月27日、11月13日
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2024/p20240627_01.pdf
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2024/p20241103_01.pdf

2025年03月28日

憲法審査会レポート No.49

2025年3月27日(木) 第217回国会(常会)
第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55630
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

衆議院憲法審査会 大規模災害などでの国会機能維持で議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014762311000.html

緊急集会、自民「最大70日」=立民は期間限定に反対―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025032700894&g=pol

衆院憲法審、期間・権能の見解に隔たり 参院の緊急集会
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA271B40X20C25A3000000/

衆院解散後の「緊急集会」で見解割れる…自民は「例外」、立民は反論 衆院憲法審査会
https://www.sankei.com/article/20250327-YPEYK4VNZBMPZOXOLSCSSRWRVU/

【参考】

衆院憲法審査会が緊急事態条項を3月27日に採決? 採決の予定は無い【ファクトチェック】
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-emergency-clause-vote/
※右派のなかにも「緊急事態条項反対」を主張するグループがあり、そうした人びとの間で、SNSなどをつうじて「3月27日採決」との風説が流布していました。

【傍聴者の感想】

今国会2回目の衆議院憲法審査会は、枝野会長から進行の説明の後、衆議院法制局・衆議院憲法審査会事務局が提出した「『参議院の緊急集会』の射程に関する資料」の説明から始まりました。「一切の私見を挟まずに、客観的にご説明いたしました」といって法制局からの発言が終わると、場内に失笑が漏れていました。

憲法審査会の傍聴は、これまでたまたま参議院ばかりでしたので、初めての衆議院での傍聴となりました。過去の議論を見知る中で想像していたよりも盛り上がりに欠けていたというのが正直な感想です。「参議院の緊急集会」を念頭に発言が続いていましたが、「壊れたテープレコーダー」と揶揄されるように同じところを行ったり来たりしていました。その合間に言葉尻を捉えるような発言が挟まって時間が過ぎていってしまうような感じでした。

自民、立憲、維新…と各会派が順に発言していく中で、気になったのは維新の発言です。法制度設計について、これ見よがしに「大陸型」などの用語を使っていたことです。政治学の教科書にいくらでも書いてあるような言葉ですが、「もっともらしい」と感じられるということでしょうか。なんかすごい…と思わせることが、彼らのやり方なのだと再認識させられました。

実際に、日本が地震大国であることは疑いようもないことですし、自然災害に備えるということが主張されるのも理解が出来ます。でも、どうしてそれが憲法改正の話にまで及ぶのでしょうか。選挙が出来ないほどの事態を考えるのならば、なぜ原発再稼働なんて選択ができるのでしょう。やっていることと言っていることとの高低差に頭が痛くなりました。

【国会議員から】武正公一さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

前回、選挙困難事態に関する「立法事実」をテーマとしました。立憲民主党は、有権者の投票する権利の尊重並びに、選ばれる側の居座りを許さないという点から臨みました。本日のテーマ「参議院の緊急集会の射程」にも関係しますので、冒頭「選挙困難事態」に触れます。

北海道南西沖地震に際して壊滅状態の奥尻島で選挙は行われました。

東日本大震災の時に、福島県内の喜多方市議選、矢祭町長選、古殿町長選、玉川村長選、北塩原村議選、鮫川村議選では選挙が実施されました。

昨年9月の石川県豪雨災害直後、被災地石川3区も衆議院議員選挙が行われました。投票率は、輪島市で10%下がったものの、わが党の近藤和也衆議院議員など、選挙を経て復旧復興のために引き続き取り組んだことも事実です。

前回も、この場で申し上げたように、被災地の復旧復興のためにもできるだけ早く代表者を選ぶ必要があると考えます。

選挙実施が困難な場合は国政選挙でも繰り延べ投票で対応すべきと考えます。そして、国政選挙などでは「一体性」を憲法も要請はしていないこと。今仮に、東日本大震災と同じ規模の災害が衆議院議員選挙前に起きても8割以上の衆議院議員を選ぶことができることから、選挙困難時の立法事実とするのは難しいと前回立憲民主党議員より述べました。

取り組むべきは、いかに選挙困難時期にあっても選挙ができる体制を組むかです。

平時において、投票環境の整備が急務の課題です。選挙困難時を想定した「有権者名簿など選挙データのバックアップ体制」「インターネット投票」「郵便投票」の検討、拡充です。また、期日前投票所の拡充、共通投票所の実施などできることは今でもあるはずです。

特に、投票日に、指定された投票所以外にだれでも投票できる「共通投票所」は、令和6年衆院選時点で、15市、16町、6村の226ケ所の設置にとどまっています。災害時に選挙区を離れて投票所を設けるためにも、二重投票を防ぐ仕組みをもって各自治体が共通投票所を設置することは有効ではないでしょうか。

ちなみに、今、横浜市では各区内の投票所すべてを共通投票所にして、各投票所独自の有権者名簿を投票所間で共通化して無線で確認を行い二重投票を防ぐシステムづくりが進められていると聞いています。

そのうえで、憲法54条にいう緊急集会について述べます。

「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」(42条)とされていて、いわゆる二院制を採用しています。

もともと1946年2月13日に連合国最高司令官総司令部(GHQ)が日本政府に対して提示した総司令部案(マッカーサー草案)では一院制とされていました。これに対して、日本側が二院制の必要性を求め、現在の憲法の二院制になったという経緯があります。

その二院制の機能や役割分担のレベルを超えて、制度としてまったく独自のものとして存在しているのが参議院の緊急集会制度(54条)です。

これは、緊急事態に際して大日本帝国憲法時代には天皇の緊急勅令(明治憲法8条)や緊急財政処分(明治憲法70条)で対処するとされていたものを、国会中心主義の貫徹という趣旨から、参議院の緊急集会をもって対応することとしたものです。

金森国務大臣が制憲議会で「戦前の緊急政令」を認めないためにも参議院の「緊急集会」を設けたと言っています。大日本国憲法下1941年2月に法律をして1942年4月まで1年間選挙を延期したうえ、1941年12月には日米開戦に踏み切ってしまった反省にも立っていると考えます。

諸外国の憲法には緊急事態に関する規定があるのに日本国憲法にはないという趣旨の発言もあったかと思いますが、各種文献でも、この緊急集会の制度は世界に類例を見ないものと評価されていることからもわかるように、他の国々とは違う形で制度設計していることから、他の国々と同様の規定を探せば日本国憲法に規定がないというのは当然のことで、「緊急事態に際して対処すべき規定があるか」という観点から検討すれば、緊急集会の条文がこれに当たる、というのは明らかだと考えられます。先人たちはすでに「想定外」の事態の規定を設けていたというわけです。

憲法54条についてはその趣旨に基づいて参議院の緊急集会を適切に開催してゆくべきと考えます。特に、緊急集会70日限定説をとらないということを前回も申し述べています。

ところで、衆議院・参議院は相互に独立して審議・議決を行う機関ですから、他の機関や他の院の干渉を排して行動できる、いわゆる自律権を持っています(58条1項・55条)。

所掌事項という言葉が適切かどうかわかりませんが、参議院の緊急集会というのは参議院にのみ認められた独自の権能であるといえます。
したがって、参議院が「緊急集会で対応できる」と判断する可能性のある事項について、衆議院側で「緊急集会では対応できない」という判断をすべきできないのはもちろんのこと、そもそも参議院の緊急集会では対応できないことを前提にして議論を進めることは参議院の自律に対する干渉という評価もありうるところであり、衆議院側としては慎むのが二院制の下でのエチケットであると考えます。

仮に参議院側で、「緊急集会では対応が困難である」という院の意思が示されることがあったとして、その時点ではじめて衆議院側での議論がスタートされるべきと考えます。

さらに、緊急集会の機能などについては、参議院議長のもとの参議院改革協議会では昨年6月の選挙制度専門委員会の答申を受けて、参議院の在り方論の柱項目の一つとして、「緊急集会の機能の充実強化」について今後具体的な議論を進めていくと伺っています。

今後、衆議院憲法審査会では任期延長改憲の議論を行うことが憲法論的のみならず政治的にも妥当なのか、各党各会派で参議院側ともよく議論していただくことを求めて、私の意見を終わります。

(憲法審査会での発言から)

2025年03月23日

ニュースペーパーNews Paper 2025.3

3月号もくじ
ニュースペーパーNews Paper 2025.3
表紙
*事故から14年 大熊町の今 大熊町職労執行委員長 愛場学さんに聞く
*鹿児島の「特定利用空港・港湾」
*福島原発事故から14年を迎えるにあたって
*韓国戒厳令について
*ずぶずぶと大浦湾に沈む2.5兆円、一人ひとりのオキナワ

2025年03月14日

憲法審査会レポート No.48

2025年3月13日(木) 第217回国会(常会)
第1回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55583
※「はじめから再生」をクリックしてください

【マスコミ報道から】

議員任期延長、自・立に溝 衆院憲法審、今国会初の討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025031300215&g=pol

緊急時の議員任期延長を討議 今国会初めて、溝は埋まらず
https://nordot.app/1272758071879303356

衆議院憲法審査会 選挙の実施困難な事態想定し与野党が討議
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250313/k10014748721000.html

衆院憲法審査会、今国会で初討議 「緊急事態条項」がテーマ
https://news.ntv.co.jp/category/politics/6cb135484306470786007eb166c149cd

【傍聴者の感想】

今国会で初めてとなる衆議院憲法審査会が開かれました。先の衆議院選挙で議席を伸ばした立憲民主党の議員が委員会室の席を埋める光景は、これまでの憲法審査会とは違う雰囲気を醸し出していました。

今回のテーマは、緊急時に選挙をすることができなくなって、国会機能を維持できなくなるような立法事実があるのかどうかという点でした。

はじめに、衆議院法制局の方が、論点やこれまでの議論のポイントを説明したうえで、各党会派からの自由討議となりました。

船田元議員(自民)、山花郁夫議員(立民)、浅野哲議員(国民)などは、テーマに沿ってこれまでの論点を補強する発言をしていたのですが、日本維新の会の馬場伸幸議員は、発言冒頭から枝野幸男審査会長の議事運営を執拗に批判したうえに、今の議論を打ち切り、有志の会と維新で出した緊急事態条項を踏まえた改正条文案の議論をすべきだと迫っていました。この条文案は自公と大差ないものじゃないかと少数与党の自民に秋波を送ったかと思うと、今の石破自民党には改憲に向けた意気込みがないとはっぱをかける始末です。

法制度についての議論はさておいて興味深かったのは、柴田勝之議員(立民)が公明党の平林晃議員に対し、参議院憲法審査会での公明党理事の発言内容について問い質したところです。平林議員は、同じ公明党の同僚議員に対して、「あれ」よばわりして異例の発言だとし、「参議院での公明党の発言は党として公式のものではない」と釈明に追われていました。選挙困難事態の立法事実をめぐって「選挙としての一体感」を強調していたわりには、公明党としての一体感はまるでないところを浮き彫りにしていました。

最後に、あまりにも粗雑でわかりやすい馬場伸幸議員の同盟者とも言うべき、有志の会の北神圭朗議員の発言についてコメントします。

選挙困難事態の立法事実についての議論で、大規模災害の被災地の声を代表する議員がいないのはまずいから、選挙困難事態の立法事実はあるんだという改憲派の議論の補強で、北神議員は極めて冷静な口調で、「議員は全体の代表者ではありますが、地元の声を反映させるということも一般的にはあるのです」と主張されていました。公務員は全体の奉仕者でしたよね。法制度の立法事実の議論をしているときに、一般的な、なあなあでそうなっている事実を持ち出して補強の議論になるのでしょうか。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

「国会議員任期延長改憲論」に「国民固有の権利」(憲法15条1項)を奪う正当性があるか
~2025年3月13日衆議院憲法審査会を傍聴して~

戦争をさせない1000人委員会「壊憲・改憲ウォッチ(49)」より転載
https://www.anti-war.info/watch/2503171/

2025年3月13日、衆議院憲法審査会を傍聴しました。

国会議員の任期延長改憲論をめぐり議論されましたが、議論の分析が以下になります。

①改憲5会派(自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党・有志の会)からは主権者の権利である「選挙権」を奪う正当な事由が示されなかった
②改憲5会派は主権者の「国民固有の権利」である選挙権を軽視している
③議論が不十分
④改憲5会派が主張する「国会議員の任期延長改憲論」は「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」(れいわ新選組の大石あきこ議員発言)

【1】「国民固有の権利」(憲法15条1項)を奪う正当性があるか

日本国憲法では「国民主権」が基本原理とされており(憲法前文、1条)、国民主権の具体化として憲法15条1項では「選挙権」が「国民固有の権利」とされています。

改憲5会派が主張する「国会議員の任期延長改憲論」は、「選挙困難事態」と認定された際、国会議員の選挙を延期するという改憲論です。
改憲5会派は主権者の権利である「選挙権」を奪う改憲を主張していますが、「選挙権」という「主権者の権利」を奪う正当性があるのでしょうか?

れいわ新選組の大石あきこ議員は「自民の船田幹事と維新の馬場幹事に聞きたいんですけれども、選挙の一体性、選挙という国民固有の権利を奪うほどの正当性があるというのは憲法の何条に支えられているのでしょうか」と質問しました。

大石議員は「根拠条文は何条ですか」と聞いています。

にもかかわらず、日本維新の会の馬場伸幸議員は関係ない答弁を長々と発言し、「何条」という根拠条文を答えませんでした。

当然ながら大石議員は「答えになっていませんでした」と発言しました。

船田元自民党議員は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という憲法43条1項を挙げました。
43条1項を挙げたことに大石議員は「憲法15条、国民がまず選挙で選んで始まるんだというところに対して、それを上回るような理屈でなかった」と発言しています。

れいわ新選組の大石議員は「私たちの選定と罷免は国民固有の権利であると憲法15条は言っています。任期延長はこの国民の権利を奪うものですから、それに足りる理屈が必要ですけれども、それは存在しません」と主張しています。

東日本大震災で選挙ができない地域があったことを例に挙げ、全国民の選挙権の行使の制限を主張する改憲5会派に対し、立憲民主党の山花郁夫議員も以下の発言をしています。

「一部地域で選挙を行うことが困難であることをもってより多くの地域の選挙権を制限するというのは、比較考量、比例原則の観点からも明らかにバランスを失している」。

日本共産党の赤嶺政賢議員も以下の発言をしています。

「日本国憲法は、主権者が国民に存することを宣言し、国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動することとしています。その下で、衆議院の任期を4年、参議院を6年と定めて3年ごとの半数改選とすることで、定期的な民意の反映と権力の民主的統制を求めています。そのためにも、いかなる場合であっても選挙権は絶対に保障されなければなりません。ましてや、国民の選挙権行使の機会を奪う場合をあらかじめ定めておくなどということが許されるはずがありません」。

2005年9月14日、最高裁判所は「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」で以下の判示をしています。

「国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである」。

立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党が主張するように、選挙権は「主権者」の権利として極めて重要な権利です。

最高裁判所も、正当な事由もないのに選挙権の行使を制限することは許されないと判示しています。

しかし改憲5会派の議論からは、主権者の権利として重要な「選挙権」を制限するのが必要との説得的な主張がされませんでした。

「平等」という主張がまったく理由がないとまでは言えませんが、山花議員が主張するように、「比例原則」等を根拠としても、全国民の選挙権を一斉に奪う改憲論は正当ではありません。

改憲5会派は主権者の権利である「選挙権」を軽く見ています。

【2】議論が不十分

公明党ですが、衆議院の憲法審査会では議員任期延長改憲が必要と主張するのに対し、参議院では「衆議院の任期延長には民主的正統性の問題がある」旨(2023年6月7日参議院憲法審査会での公明党西田幹事)発言しています。

公明党が衆議院と参議院で異なる主張をしていることに対し、立憲民主党の柴田勝之議員は公明党にその整合性を質問しました。

この点に関しても公明党の回答は不十分でした。

『地平2024年12月号』73頁などで私は主張しましたが、2024年8月7日、自民党は国会議員の任期延長論議の前提となる「参議院の緊急集会」等について見解を変えました。

船田元氏は「選挙困難事態における選挙期日、議員任期延長の特例と前議員の職務権限行使については、自民、公明、維新、国民、有志の5会派において、ほぼ合意を得るに至っています」などと発言しました。

しかし議論は「不十分」「生煮え」であることが3月13日の審議でも明らかでした。

【3】ルールを守らない維新の問題点

2024年12月19日付の「壊憲・改憲ウォッチ47」で私は日本維新の会の「規範意識の欠如」も問題としました。

2025年3月13日の憲法審査会でも枝野幸男会長から「発言時間が終了しました。お約束はお守りください」と注意されても長々と発言を続けました。

馬場氏が発言を終えた後、枝野会長は再度、「お約束をお守りください」と馬場伸幸氏を注意しました。
当然の注意です。

最近でも2024年の兵庫県知事選挙に際し、非公開とされた百条委員会の音声を外部に提供するなど、日本維新の会の政治家には規範意識の欠如を感じることが多いですが、ルールを守らない馬場氏の対応にも「規範意識の欠如」を感じます。

内容的にも問題ですが、「規範意識の欠如」を感じる日本維新の会の政治家たちが憲法改正を主張するのを聞くと、彼ら・彼女たちが主張する改憲は危険との思いをますます強くします。

【4】「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」

上川陽子前外務大臣は「東日本大震災のような大規模災害が発生した場合、選挙運動ができると考えるのでしょうか。こうした場合、御自身が被災地でどのような選挙行動を行なうつもりなのか」などと立憲民主党に質問していました。

改憲が行われるのであれば、それはあくまで主権者である私たちのためであり、政治家のためであってはなりません。

選挙運動ができないことを改憲の理由に挙げた上川陽子発言を聞くと、自民党政治家は自分たちのために「議員任期延長改憲」を主張しているとの思いを強くします。

国会の機能維持のために国会議員の任期延長が必要だと改憲5会派は主張していますが、たとえば最近でも2024年11月の沖縄県北部豪雨災害、2025年2月の岩手県大船渡の山林火災に国会は本格的な対応をしてきたのでしょうか?

「緊急事態でも国会機能の維持が重要」などと発言していますが、改憲5会派は真剣に自然災害に対応しているのでしょうか?

法律で対応できないかどうかも十分に議論もしないのに憲法改正を主張するのでは、山花議員が主張したように、憲法改正の「立法事実」があると言えません。

2025年3月13日衆議院憲法審査会での改憲5会派の主張を前提としても、国会議員の任期延長改憲論は、選挙をしないで国会議員の地位に居座る改憲であり、「内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案」(2025年3月13日衆議院憲法審査会でのれいわ新選組大石あきこ議員の指摘)です。

【国会議員から】山花郁夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

憲法15条に選挙権についての規定がありますが、この選挙権は有権者団の構成員としての公務であるとともに、そのような公務に参与することを通じて国政に関する自己の意思を表明することができるという個人の主観的権利でもあるといういわゆる二元説が通説的見解です。そして、芦部教授も、「……選挙権がアメリカの判例・学説流にいえば、表現の自由と密接に関連し平等権保護条項等によって保障される『優越的権利』だということである」とされています(芦部信喜「参議院定数訴訟と立法府の裁量」『人権と憲法訴訟』243ページ(有斐閣・1994年))。この論文は、投票価値の平等に関するものではありますが、司法審査が行われる場合には「厳格な合理性」( strict rationality )基準によるべきとされています。

ところで、憲法45条で衆議院議員については解散がなければ任期は4年、46条で参議院については任期は6年で3年ごとの半数改選が規定されています。15条と45条・46条をあわせて読めば、衆議院については最長で4年以内に、参議院についは3年ごとに代表者を選出することが選挙権の主観的権利の内容となっているということができます。

選挙困難事態において議員任期を延長するということは、ルールを変更するというだけでなく、選挙権を行使しうる時期について制限を加えることになります。その意味で、議員任期延長問題というのは、ルールと原理が交錯する問題ということができるでしょう。

さて、選挙困難事態の具体例として東日本大震災、阪神淡路大震災などが議論されていました。この2つのケースで特例法を制定して実施したのは、形式的には地方の首長、議員の任期は憲法上のものではなく法律上のものであることから、特例法によったものですが、より重要な点は、首長は当該地方公共団体の有権者から直接公選されるものであること、地方議会議員については一般に大選挙区制度がとられていることなどから、選挙そのものが定数全部にわたってなしえないという事情です。

これに対し、これら2つの震災は災害としては甚大なものであったことは間違いありませんが、衆議院議員が1人も選出できないというような事態ではないことが地方選挙の例とは大きく異なるということができます。

東日本大震災に関しては、仮にこのタイミングで総選挙があったとしても、8割強の議員の選出はできると試算されておりますところ、このようなケースで任期延長を行うということは、8割強の有権者の選挙権を行使しうる機会を制限する、延期することを意味しています。
選挙の一体性を損なうというご意見も出ていますが、民主制のプロセスそのものである選挙権の意義・法的性質からすると、全部について選挙権行使の機会を停止する・制限するよりも、繰延投票等の方法により選挙の時期をずらすということのほうが「より制限的でない他の選びうる手段」だと考えられます。

もっとも、この議論は法律の違憲審査の局面でありません。立法論・憲法改正論としては比較衡量論や比例原則に従って考えることが適切かもしれません。それにしても、一部地域で選挙を行うことが困難であることをもってより多くの地域の選挙権を制限するというのは比較衡量・比例原則の観点からも明らかにバランスを失しているといわざるをえないと思われます。

このことから、大規模災害のケースを立法事実として想定することが難しいと考えられます。

これに対して、感染症の全国的な蔓延が深刻な事態となった場合を想定すると、投票所で密になる、不要不急の外出を控えるなどの状況は一部地域だけでなく、日本全国において選挙が困難になる可能性はゼロではないかもしれません。

しかしこれも、現行の公職選挙法を前提に議論されている、つまり下位の規範である法律の規定を根拠に上位の規範である憲法の説明をしてしまっているように思われます。すなわち、投票日を定めて、入場券を郵送し、その場所に足を運び、自書で候補者の氏名を記入するというやり方を前提に選挙が実施できないという結論を出してしまっているのではないかということです。

憲法が上位の規範であり、その規範が求めていることが現行法で難しいということであれば、順序としては、公職選挙法の改正などにより憲法の求める価値を実現するのか立法府の役割であると考えます。

避難所、避難場所でも投票ができるようにする方法を模索することや、インターネット投票などの方法で大規模災害などの時でも公正な選挙が確保できるような仕組みを追求することなどを検討することが論理的に先行すべきことと考えられます。そのような手を尽くしたうえで、いかんともしがたい事態があるのだ、ということが確認されてはじめて、そのことが立法事実となるはずです。その意味で、現時点で私どもとしては立法事実が確認できない、と申し上げて意見表明といたします。

(憲法審査会での発言から)

2025年03月07日

憲法審査会レポート No.47

衆院憲法審査会、3月13日に開催へ

3月6日に開催された衆議院憲法審査会の幹事懇談会で、3月13日に今国会1回目の審査会を開催することが合意されました。なお、2回目については3月27日開催となるもようです。

【マスコミ報道から】

衆院憲法審 13日に開催 緊急事態での国会機能の維持など議論へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250306/k10014741281000.html

衆院憲法審、初討議は13日開催 参院予算委に配慮し延期
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA063J50W5A300C2000000/

衆院憲法審は13日に先送り、予算案衆院通過も「参院へのマナー」 改憲派は主導権喪失
https://www.sankei.com/article/20250306-LS3BO5ONONIF5IHXVWAV6P4TMM/

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