12月, 2025 | 平和フォーラム
2025年12月26日
自衛隊統合演習―拡大したミサイルと弾薬の輸送
木元茂夫
自衛隊統合演習は2025年10月20日から31日までの12日間にわたって全国で実施された。2023年の実動演習(実動演習と図上演習が1年おきに行われる)と比較すると、
参加人員は30,800名から52,300名に21,500名も増加している。これは、何千人も隊員を集結させるという演習は発表されておらず、参加する駐屯地、基地等が全国的に増えたためであろう。
2023年の統合幕僚監部報道発表では「自衛隊施設、在日米軍施設及び区域」としか記載されていなかったが、今回は、「千歳、三沢、八戸、百里、入間、小松、美保、築城、芦屋、新田原、大村、厚木、浜松」の自衛隊飛行場、在日米軍の「三沢、岩国、嘉手納、伊江島」の各飛行場の名前があがっている。これは、今回の演習が航空輸送を重視したためであろう。海自の基地としては大湊、横須賀、呉、佐世保があがっている。
防衛省が沖縄県に提示した説明資料には、「陸上、海上、航空作戦及び統合輸送等の全てを包含した総合的な演習となります」とある。(注1)
また、今回の演習では自衛隊の飛行場だけではなく民間の空港が、とりわけ九州の空港が5ケ所も使われている。下記は、防衛省が12月3日の交渉に際して提出してきた資料である。(注2)
新潟県 佐渡空港 ヘリコプター(CH-47)2機が輸送訓練
和歌山県 南紀白浜空港 空自戦闘機(F-15)4機が離発着訓練
長崎県 福江空港 陸自オスプレイ(V-22)4機が飛行訓練、海自輸送機(C-130R)1機が輸送訓練
上五島空港 陸自オスプレイ(V-22)1機~4機が飛行訓練
鹿児島県 鹿児島空港 空自戦闘機(F-15)4機及び海自哨戒機(P-1)が弾薬搭載訓練
奄美空港 空自戦闘機(F-15)4機及び空自練習機(T-4)1機が離着陸訓練
徳之島空港 空自戦闘機(F-15)4機及び空自練習機(T-4)1機が離着陸訓練
こうした資料を見て感じるのは、自衛隊の人員と装備とりわけ弾薬を、北から南へ輸送する訓練に力点が置かれていることである。そして、与那国、宮古、奄美、石垣に配備された部隊と、九州に新設された第2特科団(大分県・湯布院駐屯地に2024年3月に新編、2025年3月に同駐屯地内に第8地対艦ミサイル連隊を新編)や佐賀駐屯地(2025年7月新編)が、離島における作戦を想定した訓練を実施したことが、大きな特徴である。
佐賀駐屯地のオスプレイ飛行訓練-五島列島・福江島
防衛省が長崎県に提示した説明資料(注3)には、
「陸上自衛隊オスプレイが相浦駐屯地から上五島空港又は福江空港に水陸機動団の隊員を輸送する訓練を実施します。長崎県では、相浦駐屯地、上五島空港又は福江空港での離着陸を実施します」とある。
オスプレイは7月に佐賀駐屯地が新たに開設されたため、「暫定配備先」であった千葉県の木更津駐屯地から移駐、8月までに17機のオスプレイすべての移駐が完了した。自衛隊統合演習では飛行訓練は2回行われた。10月23日には、佐賀駐屯地に隣接する「九州佐賀国際空港」を離陸したオスプレイは、上五島空港、福江空港まで飛行して、佐賀駐屯地にもどった。「県内の離島空港で陸自のオスプレイが飛行訓練を行うのははじめて」(「長崎新聞」25年10月24日)。10月27日には2機のオスプレイが、「離島奪還作戦」の中核部隊である水陸機動団が司令部を置く長崎県の相浦駐屯地まで飛行し、隊員20名ずつを載せて、約100km先にある福江空港まで輸送した。五島列島の福江島には空自の分屯基地あり、レーダーサイトが置かれている。
島民人口3万3000名で、福江空港(滑走路2000m)、空自のレーダーサイトのある福江島は、今回の演習の拠点として位置づけられていたようだ。長崎県に提示した説明資料によれば、「航空自衛隊の輸送機により築城基地から福江空港まで弾薬(模擬弾)の航空輸送訓練を実施します」「C-2輸送機は22日に福江空港に着陸し、模擬弾を卸し下げします。模擬弾は陸自部隊が空港外に輸送します」とされている。C-2輸送機は20トンの物資を搭載しても7600kmの航行が可能な大型輸送機である。
空自築城基地は福岡県にあり、戦闘攻撃機F2が配備され、基地機能を増強すべく滑走路の延長工事が行われている。輸送されたのは「中SAM」との略称で呼ばれる中距離対空ミサイルである。射程距離は60km以上とされている。「中SAM」の任務の一つは、地対艦ミサイル部隊を相手国の航空攻撃から防衛することである。奄美、宮古、石垣の各駐屯地には地対艦ミサイル連隊とともに、「中SAM」を装備する高射中隊が配備されている。
地対艦ミサイル連隊の輸送と奄美大島での展開
防衛省が鹿児島県に提示した説明資料には(注4)、
「民間船舶で装備品及び弾薬(実弾)を輸送する訓練を実施」「仙台港において民間船舶(壱岐対馬フェリー)に第4地対艦ミサイル連隊(八戸)及び88式地対艦誘導弾を搭載」、「大分港において同様に第5地対艦ミサイル連隊(熊本)、第8地対艦ミサイル連隊(湯布院)及び12式地対艦ミサイルを搭載」とある。
ミサイル連隊の輸送は今回の自衛隊統合演習の重要項目であった。地対艦ミサイル連隊が「安保3文書」の中で、どう位置付けられているかを、確認しておきたい。2022年に閣議決定された「国家安全保障戦略」では、「中国は、我が国の尖閣諸島周辺における領海侵入や領空侵犯を含め、東シナ海、南シナ海等における海空域において、力による一方的な現状変更の試みを強化し、日本海、太平洋でも、我が国の安全保障に影響を及ぼす軍事活動を拡大・活発化させている」「台湾海峡の平和と安全については、我が国をインド太平洋地域のみならず、国際社会全体において急速に懸念が高まっている」との情勢認識を示している。ここでは尖閣諸島の領有権をめぐっては日中間に主張の違いがあり、2011年に日本が一方的に国有化した経緯が忘れ去られている。
「防衛力整備計画」では、「我が国に侵攻してくる艦艇や陸上部隊に対して、脅威圏外から対処する能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)、島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾の開発・試作を継続する」とした。日本が保有する地対艦誘導弾(ミサイル)は3種類あり、1988年から配備された88式地対艦ミサイル、その改良型として2012年から配備された12式地対艦ミサイル、さらにその改良型として12式「能力向上型」が開発された。88式と12式は射程距離150km~200kmであったが、「能力向上型」は一気に1000kmになる。防衛省は8月29日、熊本県の健軍駐屯地に2026年3月までに配備することを決定した(注5)。
地対艦ミサイル連隊は、2024年に第7連隊が沖縄に、2025年に第8連隊が大分に新編されて7個連隊になった。1個連隊は約340名である。「防衛力整備計画」に定められた2032年までの整備目標は7個連隊であるから早々と達成されたことになる(第6は宇都宮にあったが2011年に廃止)。2025年6月には北海道の静内対空射撃場で、88式地対艦ミサイルの国内初の実射訓練がおこなわれている(注6)。
さらに射程距離の長い「島嶼防衛用高速滑空弾」を運用する部隊は、「連隊」より規模の小さい「大隊」を2個編成の予定で、2025年度中に、富士駐屯地の特科教導隊に取り敢えず配備するとしている。
さて、地対艦ミサイル部隊の、全国的な配置を確認しておこう。
第1特科団 第1連隊 北海道千歳市、第2連隊 同美唄市、第3連隊 同空知郡上富良野町、第4連隊 青森県八戸市
第2特科団 第5連隊 熊本県熊本市、第7連隊 沖縄県うるま市、第8連隊 大分県湯布院町
自衛隊統合演習では、このうち第2、第5、第8のミサイル連隊を、奄美大島に集結させた。
第2はあやまる岬観光公園、笠利崎灯台下、第8は旧奄美空港、宇宿漁港などに展開した。第5は奄美駐屯地に展開した。地対艦ミサイルは一発発射するとその位置を相手に特定されるため、移動しながら次々に発射することを基本とする。「戦闘においては広地域にわたり分散して陣地占領する」、「連隊の運用に関する計画には、部隊移動、陣地占領、通信、測量、情報、射撃、警戒、電子戦、兵站、衛生、人事、欺瞞等のうち必要な事項を定める」(陸自教範「地対艦ミサイル連隊」、小西誠『自衛隊の島嶼戦争』所収)。ミサイル連隊の業務は多岐にわたっており、今後も訓練が拡大していく可能性は大きい。
海上輸送-民間港への弾薬輸送訓練
次に海上輸送について見ていこう。防衛省が北海道に提示した説明資料には(注7)、
「北海道苫小牧港から大分県大分港(大分分屯地)まで、PFI船舶を使用した民間のコンテナトレーラーによる弾薬輸送訓練」「民間船舶(定期船フェリー)で北海道から鹿児島県奄美大島までの機動訓練を実施します。その際、陸自の第1特科団(北部方面隊)が苫小牧港から名瀬港まで、捜索レーダの海上輸送、機動訓練を実施します」とある。PFI船舶とは民間資金を活用して防衛省が年間契約している船舶のことである。
北海道 苫小牧港 PFI船舶2隻が輸送訓練。空自部隊(第9高射隊)及び装備品(役務トレーラー、実弾あり)、地対空誘導弾(発射機)、各種車両等を搭載し、大分港及び伊延港まで輸送する訓練を実施します。
愛知県 三河港 PFI船舶1隻が輸送訓練
高知県 須崎港 海自訓練支援艦「てんりゅう」に高速無人標的機及び燃料を搭載する訓練。燃料は海自呉基地から油槽船で輸送。
大分県 別府港 輸送艦(自衛隊海上輸送群所属の「にほんばれ」)1隻が荷役訓練。第5、第8地対艦ミサイル連隊を搭載。
鹿児島県 鹿児島港 PFI船舶1隻が輸送訓練、イージス艦「あしがら」がミサイル搭載訓練。
沖永良部島 伊延港 空自北部航空方面隊北部高射群がフェリーで移動し、発射機の展開。
奄美大島 名瀬港 第4、第5、第8地対艦ミサイル連隊を卸下げします。
沖縄島 中城湾港 蒲郡港から乗船した空自部隊(高射教導群)を卸下げします。
宮古島 平良港 蒲郡港から乗船した空自部隊(中部高射群第15教導隊)、発射機(LS)を卸下げします。
石垣島 石垣港 鹿児島港から乗船した陸自部隊(西部方面システム通信群)を卸下げします。
(防衛省が高知県、鹿児島県、沖縄県に提示した資料より作成)(注8)
陸上輸送-佐世保から鹿児島までの長距離弾薬輸送
防衛省が鹿児島県に提示した説明資料には(注4)、
「鹿児島港に係留した海上自衛隊の護衛艦に対し、佐世保弾薬補給所(佐世保市)から輸送した弾薬を搭載する訓練を実施します」とある。長崎-佐賀-福岡-熊本-鹿児島の5県におよぶ大輸送である。防衛省に「通過経路の各県警察には、事前の届け出をしたかどうか」と質問を出したが、「今回の弾薬輸送は自隊輸送のため通過経路の各県公安委員会への届け出は不要である」という回答であった(注9)。「自衛隊法第106条の規定により届け出義務が免除される」とのことであった。同条には「火薬類に因る災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない」との規定があった。そこで、防衛省には「佐世保から鹿児島への輸 送にあたっては、どのような必要な措置をとったかを明らかにされたい。どのような車列を組んだかを示されたい」と再度、質問を出した。
12月18日付の回答は「防水性及び防火性の被覆を行い、その他安全上の配慮として、各県警察本部及び西日本高速道路株式会社の連絡先を確認するとともに、輸送当日は経路上の天候及び道路状況を把握した。 運搬時の車列としては、運搬車両1台と見張り用の車両1台の計2台で構成した」。見張り用の車両は、わずか1台である。これでは安全を確保したとは言い難い。今後も火薬が装填された実弾の輸送は増加していくだろう。防衛省にもっとしっかりとした安全対策をとらせねばならない。
イージス艦「あしがら」のミサイル垂直発射装置(VLS)のセル数は96個、艦上に装備される艦対艦ミサイルは8発、つまり、100発以上を搭載して出動するわけだが、それを港にもどしてミサイルを補充しなければならない、中国海軍との戦闘になれば、そういう必要性が生じると防衛省・自衛隊は想定し始めたということだ。中国軍の最新ミサイル駆逐艦レンハイ級のミサイル垂直発射装置の数は112個で、自衛隊のイージス艦を上回る。これを8隻保有しており、さらに第2期の建造を開始している。
イージス艦「あしがら」の石川将司艦長(1等海佐)は、「近場で(弾薬を)再補給できると、作戦海域から離れる時間が減り、大きな意義がある」 とTBSのインタビューに応えている(注10)。佐世保から鹿児島港まで陸路で約350キロメートルあり、艦長の指摘は当たっている。しかし、鹿児島港と鹿児島空港は、2024年8月に「特定空港・港湾」に指定されたが、鹿児島県は国に回答するに当たって、「自衛隊や海上保安庁専用の施設を整備するものではないことを確認しました」と公表している(注11)。
一方、海上自衛隊の「幹部学校運用教育研究部未来戦・ロジスティクス研究室長」の柳田篤志1等海佐は、2025年10月31日に発表した「日米豪海軍ロジスティックス協定に関する考察」で、「RIMPAC、タリスマンセーバーなどの多国間共同演習を通じて、海上部隊の連携訓練を定期的に実施している。これらの訓練は、戦術・戦闘技量の向上を目的とした内容が中心であり、ロジスティクス支援、特に補給・整備分野の訓練は、依然として付随的な位置づけにとどまっている。また、港湾支援やドック整備といった実務的連携は、演習期間中や災害支援時などに限定されており、常設的・定常的な補給体制の形成には至っていない」と指摘する(注12)。港湾・空港の軍事利用の拡大を防衛省・自衛隊はこれからも拡大しようとするだろう。
指揮所訓練-嘉手納飛行場
防衛省が沖縄県に提示した説明資料には(注1)、
「陸自隊員が嘉手納飛行場へ展開し、連絡官として日米共同指揮所訓練等を実施します」とあり、「陸自の陸上総隊から約20名、米陸軍約20名、米海軍約20名、米空軍約15名」となっている。統合幕僚監部の10月3日付「報道発表資料」(注13)には、陸上総隊、自衛艦隊、航空総隊、の各司令部統合作戦司令部が参加することになっており、指揮所訓練は嘉手納以外でも実施されたと想定されるが、公開されている「説明資料」には記載されていなかった。
着上陸訓練-奄美大島と種子島
防衛省が鹿児島県に提示した説明資料には、「艦艇による海上機動及び航空機による空中機動と連携した着上陸訓練を奄美大島沿岸部で実施します」
着上陸とは「海又は空から地上部隊などを上陸又は着陸させる」作戦を指す。10月22日から25日まで、奄美大島の海岸で水陸機動団250名が参加して訓練が行われた。
海上自衛隊は輸送艦2隻を参加させている。1隻あたり水陸機動隊員330名とその装備を、水陸機動団の水陸両用装甲車、ゴムボートなどを搭載して、海上から上陸する作戦を支援した。さらに、ヘリコプター搭載護衛艦(ヘリ空母)も参加させ、大型輸送ヘリ(CH-47)による上陸作戦を支援した。また、上陸部隊を上空から掩護するために、攻撃ヘリ(AH-64D)2機を参加させている。航空自衛隊も早期警戒機E-2しかも、「昼間および夜間訓練を実施します」とある。
着上陸訓練は種子島の「中種子町の沿岸部」でも10月26日から29日まで、同じ陣容で実施されている。
最後に-米国家安全保障戦略と自衛隊統合演習
11月末にトランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」には台湾について次のように書いている。「台湾をめぐる紛争を抑止すること、理想的には軍事的優位性を維持することが優先課題である。また我々は台湾に関する従来の宣言的政策を維持する。すなわち米国は台湾海峡における現状の 一方的変更を支持しない。 我々は第一列島線全域における侵略を阻止できる軍隊を構築する。しかし米軍が単独でこれを担うこと はできず、また担うべきでもない。 同盟国は集団防衛のため、支出を増やすだけでなく、より重要なのは行動を起こすことで、はるかに多くの貢献をしなければならない。米国の外交努力は、第一列島線の同盟国・パートナーに対し、米軍の港湾その他の施設へのアクセス拡大、自国防衛費の増額、そして最も重要なのは侵略抑止能力への投資を強く促すことに焦点を当てるべきである。これにより第一列島線沿いの海上安全保障課題が相互に結びつけられると同時に、 台湾占領の試みを阻止する能力、あるいは防衛不可能なほど不利な戦力均衡を許容する事態を防ぐ能力を強化する」
今回の自衛隊統合演習では、米軍の艦艇が民間港で弾薬を補給するような訓練はなかった。しかし、台湾に近い、石垣島にイージス艦や揚陸艦を連続的に寄港させている現実をみれば、今後のエスカレートは不可避である。また、「防衛力整備計画」には、「特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化する施策に取り組む」としているが、そうした実戦を想定した訓練を重ねれば重ねるほど、中国との緊張は高まるであろう。日米と中国がお互いの軍事行動を抑制するための交渉をはじめるべきであろう。
注1 防衛省は大規模な演習では、その概要を防衛省HPに掲載し、詳細は各県に提示している。
防衛省沖縄県提示資料 https://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/files/pdf/071006R7JieitaiSogoEnshu.pdf
注2 2025年12月3日防衛省交渉 防衛省提出資料
注3 防衛省長崎県提示資料 https://www.pref.nagasaki.jp/object/kenkaranooshirase/oshirase/747714.html
注4 防衛省鹿児島県提示資料
https://www.pref.kagoshima.jp/aj01/bosai/kikikanri/torikumi/kikikannri/documents/123771_20251003172043-1.pdf
注5 2025年8月29日防衛省発表 国産スタンド・オフ・ミサイルの早期整備等について
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2025/08/29c.html
注6 「国内初の長射程ミサイル訓練、6月に北海道で 海上の標的に発射」(朝日新聞デジタル 2025年5月13日付)
https://www.asahi.com/articles/AST5F2JZPT5FUTIL00VM.html
注7 防衛省北海道提示資料 https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/files/00066900/00066982/20251003183700.pdf
注8 防衛省高知県提示資料 https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2025100200097/file_contents/R7tougouenshu_kochi.pdf
注9 防衛省よりの12月3日付回答
注10 「鹿児島空港で初 P-1哨戒機が魚雷搭載訓練「まさか飛んでくるとは」「訓練は当たり前」」(TBS NEWS DIG 2025年10月30日放送) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2259794?page=3
注11 鹿児島県HP https://www.pref.kagoshima.jp/ah09/infra/port/kanri/tokuteiriyou.htm
注12 『日米豪海軍ロジスティクス協定に関する考察』 https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/assets/pdf/column274_01.pdf
注13 「令和7年度自衛隊統合演習(実動演習)について」 https://www.mod.go.jp/js/pdf/2025/p20251003_01.pdf
2025年12月23日
ニュースペーパーNews Paper 2025.12
12月号もくじ
ニュースペーパーNews Paper 2025.12
表紙
*誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に向けて
*関西生コン事件・国賠訴訟 不当判決を許さない
*自衛隊に関する「言論封殺」に抗議する声明について
*百里基地の機能強化に抗して(下)
*憲法理念の実現をめざす第62回大会まとめ
*被爆から80年 川野浩一さんに改めて伺う
2025年12月19日
第62回護憲大会・分科会報告
第62回護憲大会の2日目には、様々な観点から人権問題を扱うため、5会場に分かれて分科会を開催しました。
分科会の進行は、平和フォーラム関係組織のみなさまに「運営委員」という形でご協力いただき、進行していただきました。感謝申し上げます。
第1分科会「外国人の人権確立、排外主義に抗して」
講師:安田 浩一(ノンフィクションライター)
石橋 学(神奈川新聞社川崎総局編集委員)
鳥井 一平(移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事)
保守政党の伸張とともに排外主義が社会問題となっています。共生社会を築くためには、国籍にかかわらず人権が保障されることが不可欠です。日本国憲法も基本的人権を定めていますが、差別や排除の事案が後を絶ちません。地域の実例を取り上げ、差別解消に向けて私たちはどうとりくむべきか、考えます。
【質疑応答の要旨】
Q.「ルール・秩序」の問題について、一部の人は「日本人の言うことを聞かない外国人は出ていけ」と考える傾向があるが、実際にはマナー違反やルール違反は日本人にも存在している。小さな違反や文化の違いを見て、すぐに差別やヘイトにつなげるのは問題ではないか。
A.日常生活での文化・習慣の違いについて、タバコのポイ捨てや釣った魚の扱いなど、外国人の行動が日本の慣習と異なる場合がある。こうした違いは交流や対話を通じて理解・調整できる。実際に話しかけたり、一緒に地域行事に参加することで、相互理解が生まれる。交流によって「私たちは同じ地域に住んでいる」という意識が育つ。
メディア報道の問題について、事件報道で外国籍を特別に強調することで、偏見が助長される。出身地や国籍を過剰に取り上げない報道の必要性。
秩序と民主主義について、秩序を守ることは重要だが、それは単に「外国人だから従え」というものではなく、戦後民主主義のルールに基づく社会の秩序である。移民や外国人にも、この民主的なルールや社会の仕組みを理解してもらうことが重要。
誤解や摩擦を減らすための方策として、小さなトラブルや習慣の違いを差別の根拠にしない。交流と教育を通じて相互理解を促すことが社会統合に不可欠。
第2分科会「混迷する世界秩序、憲法理念の実現に向けて」
講師:飯島 滋明(名古屋学院大学 経済学部教授)
役重 善洋(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員、特定非営利活動法人ピースデポ研究員)
憲法前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」とうたっていますが、現実は、戦争や対立、分断や差別によって混迷を深めています。国連安保理は機能せず、国際法も不遵守、日本政府も無策なままです。イスラエル・パレスチナの現状報告を受けるとともに、「敵対的相互依存」関係の中で進められる、日本の軍拡・基地強化の問題点について考察します。
【質疑応答の要旨】
Q.パレスチナ情勢について、ファタハとハマスの関係についてうかがいたい。
A.パレスチナの人たちの政治意識がとても高い。それは国際情勢、政治状況が生活に直結しているからだ。ファタハ、ハマスのコアな支持層は一部いるが、その時々の情勢や局面においてよりよきものを支持するという姿勢だ。ハマスを批判するのはパレスチナ総体の状況としてはよくないと判断しており、ハマス支持、武装解除も反対という姿勢に支持が集まる結果となっている。
Q.ゴラン高原の現状について教えてほしい。
A.具体な状況はわからないが、イスラエルが関与しているため、シリアもレバノンも危機感がある。とはいえ、今のイスラエルの動きにのっかかる方がいいという判断にはならない。慎重に判断するはずであり、イスラエルへの併合を支持するという動きが急に広がることはないだろう。
Q.教職員組合でもとりくみを考えていきたいが、アドバイスお願いしたい。
A.大学で平和学を担当しているが、学生は沖縄戦も知らないし、最近のことについても知らない。戦争・紛争すら話題にもあがってこない空気感だ。沖縄で日本軍が住民が虐殺をしたということも知らない。学生からそのまま教員になることが多いが、知らないというのが現状である。平和学を大学で教える際、1回めは広島、2回めは長崎の原爆の映像を見せる。初めて見る学生がほとんどだ。戦争や平和について開講している大学は少ない。先生たちにはぜひ学習してほしい。福岡でいえば、アジア太平洋戦争において、マレー半島コタバルへの上陸作戦が行われたが、その奇襲部隊は久留米の部隊だ。そういう身近なところでもとりくんでほしい。
Q.スパイ防止法について、2025年度中に出されるとも言われている。かつての治安維持法と絡めて、その危険性について取り組んでいく必要があると思うがいかがか。
A.11月中にパンフを作成する予定。「スパイ防止法」といえば、スパイ行為に反対するというイメージを持たれている。ネーミングが重要だ。学生にも問題点を示したうえで、法の名前を考えてもらうということをした。アメリカのスパイ防止法は、徴兵制反対、反戦運動を行った者も処罰の対象となる。最高刑は死刑。政府に背いたら処罰をうけるということがスパイ防止法のいきつく先だ。中国でスパイ容疑でつかまっている人が報道されるが、捕まった理由は明らかにされない。国防のため裁判でも出せないとなってしまう。政府にめざわりな人はつかまってしまう。
Q.文民統制について。台湾の緊張が高まっている。満州事変のように一触即発の統合司令部が先走る可能性もある。文民統制のありかたについて認識はいかがか。
A.極端に言えば国会は王の反対派。王に勝手なことをさせないために議会ができた。不逮捕特権はその歴史だ。文民統制の元々の意味はそこだが、日本では別の意味。満州事変では関東軍の暴走だったが、今の暴走は首相か防衛庁か。今の軍備拡大は政府主導だ。国民代表である国会議員が軍事費の大増額など政府を統制していくという本来の文民統制が必要だ。
Q.沖縄パレスチナ連帯委員会を作ってとりくんでいる。パレスチナナ支援のカンパ先があれば教えてほしい。
A.グッズもたくさん出されている。BDS運動のコーディネート、パレスティナ民族評議会などがある。ガザで緊急医療の方面の先がたくさんある。市民レベルで大きな課題といえば、自分たちのそれぞれの生活している政府に対して、いかにパレスチナ問題に対する公正な姿勢をみせる必要があると。
イスラエルに対しての軍事的関係、セキュリティ関係を断ち切っていく圧力をかける必要がある。
AFZ運動というひろがり。200ほど賛同している団体がある。店や映画などが主、組合、市民団体なども入っている。具体的には、イスラエル占領に加担する商品を扱っていない。というアピール。キャンペーンよびかけなどある。そういったところでチェックいただけたらと思う。
第3分科会「多様な性を受け入れ、誰もが尊重される社会の実現」
講師:神谷 悠一(LGBT法連合会 代表理事)
元山 琴菜(金沢大学 人間社会研究域地域創造学系 准教授)
社会にはさまざまな性が存在します。しかし、現実には偏見や差別によって生きづらさを抱える人々が少なくありません。性的多様性の理解を深め、だれもが安心して暮らせる社会をどのようにつくるのかを考えます。多様性を尊重する社会、誰もが公平に尊重される社会の実現に向けて、私たちができることを考えます。
【質疑応答の要旨】
Q.中学校の教員をしている。昨年、PTAから学年にあった性教育が要望され、校長に相談したが、性教育の実施は構わないがLGBTをすすめる講師を学校に入れたくないと発言され、言葉が間違っており、自分も感情的になってしまったが会話が平行線になったが、性教育自体は認められたので講師の選定を進めたが残念ながら時間と費用の関係で実施できなかった。
今年は、学校全体を対象とした性教育、包括的性教育をテーマに講師を迎えたが、資料を確認した校長がLGBTを進める教育は認めないと、LGBTを避けた包括的性教育となってしまった。
その校長は、過去にその講師を呼び出し、怒鳴りつけるなどの経過がある。また、LGBT教育は家族の分断、国家の在り方を揺るがすもの、性的マイノリティの生徒は自分を理解しない、受け入れないと発言するなど、組合の書記長や市の教育委員会課長にも相談して、対応してもらったが、考えが変わっていない。
今日の講義を伺い、子ども自身、生徒自身が知識を身につけて正しく理解する教育をつくることはとっても大事だと感じた。道徳の教科書でも、性的マイノリティを含めてマイノリティを扱うことになっているのに、どうしてこんなことになってしまうのか。できれば校長自身に考え方を変えて欲しい。なかなか難しいと思うが、きちんとした性教育が行われることで、救われる生徒、守られる生徒が増えていって欲しい。
A. 江東区で同様の発言を行い謝罪させられ、罷免された事例を紹介し、完全に認識が間違っていると指摘。理解増進法やこども基本法など、国家の方向性に反する発言であることから「なにを根拠に仰っているのか」と尋ねる中でこのようなことを指摘し、同時に教育委員会にも報告していくしかないのではないか。とアドバイス。
LGBTQの理解が及ばず、抑圧すれば治り、居なくなると考える人が居る。目に見えないだけで、どの国や地域、歴史、文化、にも存在する。当事者がメンタルヘルスの問題を抱え、教育の機会を奪われることに危惧を表明し、独立行政法人教職員支援機構の日高先生の動画を視聴するなど、お金をかけなくても学べる方法を紹介し、当事者のためにも保健室に駆け込める環境の整備、保健室や図書館への本の設置などがアドバイスされた。
Q.ホームレスの方を含めた相談活動をしている。「普通を書き換える」ことをやっていかなければならないと講演でお聞きし、どうしたらよいかと思った。レジメに答えが書いてあって、一つ一つ気をつけながらやっていければいいかと感じた。
LGBTQの方も部屋を借りるのに大変苦労していると伺った。深刻な問題だと思う。ホームレスの人もなかなか部屋を借りることができない。不動産屋に対してなにか対策はできないか。アドバイスなどをいただきたい。
A.世田谷区のパートナーシップ条約の際の保坂区長の取り組みを紹介し、不動産業界とは話ができるが、大家になると自由契約の話になり難しい現実に共感が示された。大家の権限の及ばない契約方法もあり活用が進められたが、講師自身、詳しくなく説明ができないが、そうした制度の利用も検討を。とアドバイス。
Q.根本的な話と考え方として、戸籍の中で、生まれた瞬間に男と女に別れ、それが一生ついて回る。それが成長し生きていく中で、自分の性がどうなのか、選択をし、ここにミスマッチが生まれていくことで色々な問題が起きる。入学や就職の時に性別欄を空白で押し通せる社会なのか。根本的な概念の考え方として、戸籍法上の男と女に対して、どう考えていけばいいのかご意見を伺いたい。
A.戸籍制度が差別の温床となっている。右派は、戸主制度の下、家族が国家の採用単位であり、戦前の天皇を頂点に皇后、皇太子、全ての国民は天皇の子どもと考えてきた。戦後、戸主制度はなくなったが、戸籍制度は存在するので、残っているとファンタジーの世界に居る。
戸籍上の男女の区分けを無くせば解決するかという議論もあるが、内面から出る問題なので、そう単純ではない。戸籍制度が差別の温床になっているのは、特に日本、家父長的という意味では世界共通の話であるが、特に日本の特徴的な病態だ。
履歴書については、今は男女の欄はなく、空白となっており、男女以外の記載、空白でも不利益を与える選考を行わないようにと指導が入っている。法的拘束力には疑問があるが、徐々に変わっていっている。
戸籍の問題であるが、保険証やパスポートなど、日常の中で男女の区分けがあり、不必要な区分けが行われることで差別となってしまう。不必要な性別欄の使用をなくしていく動きがあり、できることからやっていく。
第4分科会「女性の権利とジェンダー平等の実現に向けて」
講師:竹信三恵子(ジャーナリスト、和光大学名誉教授)
伊藤 和子(弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長)
低賃金や不安定な雇用など、女性には経済的な格差が生じています。その背景には、社会の意識(ジェンダー規範)や、無意識の偏見によって女性を低く評価してしまう現実があります。
日本の現実はどうなっているのか、一方で国際的にはどのようにジェンダー平等へ動いているのか、そうした課題を具体的に取り上げ、一緒に考えます。
【質疑応答の要旨】
Q1.「『女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准を求める意見書』の採択を求める運動に取り組み、2年がかりで長野県議会と県内77市町村の全てで意見書の採択ができた。これを足掛かりに『選択的夫婦別姓の意見書』採択にも取り組み去年11月に県議会、今年9月にも塩尻市議会や安曇野市議会で採択された。これから県内全市町村を目指して取り組む」
「自分自身は3月から介護施設でパート職員として働いている。人権のない心を削られる職場だが、働き手は高齢者が大半で、非正規の待遇の悪さと年金の低さから我慢せざるを得ない。どうやってこの職場を変えていけばいいかヒントがほしい」
Q2.自分の勤める職場の具体的な問題について相談したい。正規員の賃上げは15,000円だったが非正規は500円からよくても2,000円。そして正社員でも女性は男性の70%程度の賃金だ。組合として男女の賃金格差是正を求めて交渉してきた。会社は「女性も交代勤務を受けたり管理職になってもらわないと」と言うが、会社に出させた資料を分析すると、賃金格差の最大の根幹は、人事評価の差だった。男女の職位のランクには平均で3段階ほど差がある。「これは女性差別だ」というと、会社が資料を出さなくなった。来春闘で是正に取り組みたいが、成功事例や手法があれば教えてほしい。
Q3.前日のシンポジウムでも、日本では人権侵害や差別に関する定義がなく、禁止法がなく、救済が難しいという構造が指摘されており、今日も講師の伊藤さんが法的基盤の強化の必要性をお話された。その点で長野から報告のあった選択議定書の意見書採択は一つの柱になるのではないか。遅ればせながら神奈川でも取り組み、33市町村の内21市町村で採択された。長年運動に携わってきた経験から、『法制度を具体的にどう変えるのか』と目標を立てて運動することが大事だと思う。男女共同参加をうたう自治体条例の仕組みを活用する方法も効果的だった」
「いま神奈川県立図書館で山川菊栄に関する展示が行われているのでぜひ見てほしい」
Q4. 日本のジェンダーギャップを解消するためには、ハラスメント対策も含めて女性候補者の立候補のハードルを下げなくては。また人事評価に男女差があることには、女性が家庭責任を持っているために貯時間残業ができず、成果を挙げにくいという構造もあるのではないか。結果だけでなく個々の働く人の背景を会社も職場の人も踏まえなくてはならない。単に「出ろ出ろ」と言っても困難な事情がある。女性の進出を可能にするための具体的な議論こそ必要だ。
Q5.「先ほど、山川菊栄の話があったが、今年は日本で最初に『婦人部テーゼ』が作られて丁度100年の年になる。山川菊栄は、先進的な項目を上げ『これは婦人の特殊要求として掲げているけれど、人間の社会生活にとって家庭にとって大変大事な項目で、ひいては労働者階級全体の項目。みんなで闘いましょう』と発言されている。だから皆さんと一緒に闘っていきたい」
「私は長年『均等待遇アクション』という運動に取り組んで、いま選択議定書の採択に打開策を見つけようとしているが、もう一つ大事なのは、『女性の貧困への対策法』を具体化するための運動だと思う。女性が労働現場で差別されている構造そのものを変えて、きちんと生活できる仕事を得るために、もう一つお知恵を貸していただきたい」
A.竹信三恵子講師
「女性のやっている仕事だけ賃金が低い」ということは実際にあり、評価の仕組みを改める必要がある。政府は「職業トレーニングをしてもっと良い仕事に」と言っているが、皆が皆、そうしてしまえば、介護にせよ何にせよ女性がやってる重要な仕事(エッセンシャルワーク)は、もぬけの殻になってしまう。こういった仕事の価値を低くして賃金を安くしていることこそが問題だ。
ずっと非正規公務員の問題を取材しているが、人事評価と短期契約が大きなネックになっている。(使用者側が)声を上げた人を再任用しない根拠は、いつも「評価が悪かったから」。じゃあ「評価を開示してくれ」と求めて開示された中身を見ると、理由の欄が全て黒塗りになっていた。そんなことばかりだ。民間でも非正規がどれだけ正規より成果をだしても、正規以上に上がらないという階級制度もある。こういった問題の情報共有を進めなくては。学生さんなどは本当に知らない。
欧州型のスキル、責任、労働環境、負担度の4項目で点数化して客観評価しましょうという取り組みも殆ど進んでいないが、まず労働組合でそういった評価をしてみて自己卑下をなくすことも大事だ。そしてネットワークを作り、政治に働きかける取り組みも大切。
正直に言ってやることは多いが、皆でネットワークを作ってやれば元気が出る。今、初の女性首相が「夫婦別姓はいらない」と言って性差別に加担している状況は怪談やホラーに近いが、こんな時だからこそ元気を出してやりましょう。もちろん男性も含めて。
A.伊藤和子講師
人権が否定されている職場をどうするかというご質問があったが、私は実態調査をして報告書をまとめて、報道してもらって実態を明らかにすることが大事だと思う。日本でも芸能従事者の労働条件のひどさなどが話題になり、是正に向けた取り組みが進んでいる。介護職場の実態を明らかにしてジャーナリストや学者とつながって、世の中を変えていく手法は有効だ。「これだけひどいんだ」というショックは政治家も動かす。
男女の賃金格差に関しては、簡易迅速に改める制度がないので、日本では裁判になる。裁判ではかなり勝っている事例が多いが、それ以上に賃金差別を是正する仕組みが必要だと改めて思った。
また大企業は、賃金差別を公表しなければならない仕組みができてから、三菱東京UFJ銀行が総合職と一般職の区分をなくすなど良い方向に進んでいる。こういう動きが他の会社にも広がれば。
「差別を訴えていく場がない」という皆さんの声に私も勇気づけられた。私たちは政府から独立した国内の人権擁護機関を作るための運動を、1990年代から続けているが、政府や国会議員には「差別が是正されなくて困っている人が、そんなにいるんですか」と言う人もいる。人権擁護機関が大事だという声を広げていきたい。
選択的夫婦別姓を求める運動は、議員とのネットワークや国連への働きかけなど、すごいネットワークができている。今日上がった非正規雇用の差別的待遇を改めていくためにも今日のこの場の皆さんからネットワークを広げてほしい。
そしてジェンダーの問題は、やはり「男性中心主義からの脱却」であって、女性だけの問題ではなく、人間らしさを取り戻す闘い。様々な差別を受けている弱い属性の方たちと一緒に取り組んでいくことが必要で、男性の方にもぜひ参加してもらいたい。
第5分科会「憲法とともに歩んだ戦後80年(憲法入門編)」
講師:清水 雅彦(日本体育大学 体育学部 教授)
報告:染 裕之(平和フォーラム共同代表)
日本国憲法は、戦後の社会の土台となり、平和・人権・民主主義を守る確固たる指針として在り続けています。憲法が私たちの生活をどう支えてきたのか「平和憲法」の意義をあらためて学びます。あわせて、国会での憲法審査会の動きについても報告し、憲法をとりまく現状を共有します。
入門編として、憲法の基本を中心に展開していきます。
【質疑応答の要旨】
第5分科会では、6人の方から質問をいただいたが、参加者が職場や地域に持ち返って拡げようとする観点からの質問であったように思う。職場や地域に伝える難しさがある反面、講演内容についても、そのような観点から理解を深めたいとの意欲が感じられる分科会であった。
Q.中道と言われる勢力でも「集団的自衛権」の違憲性について議論となっているが、改めて再確認する意味で、「集団的自衛権」の違憲性について聞きたい。また、国民投票法の基準の問題として、投票率との関係について、どう考えるか。重要な事柄だと思うがどうか。
A.日本国憲法は、軍隊の保持を認めず、必要最小限の実力組織であり、その前提は個別的自衛権となっていることから、2015年の安全保障法の解釈改憲により集団的自衛権を容認する法改正がされた。その違法性は明らかであるが、現在の形骸化する事実と理念の実現について認識する必要がある。
国民投票法を巡る諸問題も憲法審査会にて議論されているが、今国会においてもその論点も注視していかなければならない。
Q.「台湾有事」を存立危機事態と捉えることになれば、その後方のロシアの動きも懸念される事態になると思うがどうか。また、これまでの統一教会の活動などを見たとき、1日目シンポジウムの提起でもあった「スパイ防止法」や「外国人勢力代理人登録法」を注視し、運動を強化する必要があると思うがどうか。
A.台湾有事と危機を騒ぎたてることがどうなのかという問題はあるが、これまでの憲法9条に制約をかけてきた、「専守防衛」「集団的自衛権行使の否定」「防衛費のGDP1%枠」などの立場をふまえ、日本の安全保障の立場をとる必要がある。
スパイ防止法に対する取り組みは、当面の行動企画も予定しており、どのような運動の展開ができるか、引き続き今後の取り組みについて検討を進めていきたい。
Q.保守勢力は、憲法は押し付けられたものとの主張があるが、起草過程や政府の承認という行為からしても批判に当たらないと、改めて理解ができた。そのうえで、職場や地域の周りに拡げていくために、「集団的自衛権」と「集団安全保障」があるが、違いをどのように理解すれば良いか。
A.憲法の制定経過はお話しした通りであるが、戦後80年・憲法制定後、憲法が社会・生活に根付いてきたということを捉えることが必要。「集団的自衛権」は、同盟国(米国)への戦争に参加できる道を開いたということだが、「集団安全保障」とは各国による協調により各国の安全を確保するということである。その機能を期待されるのが国連であるが、現在、国連も集団的自衛権を認めており、実際の枠組みとしては難しい。
Q.「非武装・平和」と言われることが多いが、「非武装・中立」という理念に立ち返えなければならないと考えるがどうか。
A.これまでの国会の議論経過と私たちの立場からすれば、「非武装・中立」ということになるが、憲法の問題と同様に、曖昧にせずにいかに理念を実現するかということが課題である。
Q.世界に軍隊が存在しない国が26か国とあったが、アイスランドはNATO(北大西洋条約機構)加盟国になっており、日本はどのような安全保障政策を選択すべきと考えるか。日本の「自衛のための必要最小限」とは、どのように考えるか。
A.日本は日本国憲法があり、憲法制定経過や憲法のもつ理念の基づいた安全保障政策に立ち返えること。「自衛のための最小限の実力」とは、警察以上軍隊未満ということ。現状は、確実に軍隊であることから軍隊を排除すること。
Q.職場・組合で平和運動を拡げようとしても、入口で拒否感を示されてしまうことが多い。広めていくうえで大切にしなければならないことがあれば教示願いたい。
A.職場や地域でも必要に応じて憲法で保障された権利・自由を具体的に行使していくことが必要。労働組合に加入する、学習会・集会・デモに参加する、「権利のための闘争」という視点が重要になっている。
2025年12月17日
憲法審査会レポートNo.66
臨時国会が閉会、改憲機運高まらず
12月17日、今臨時国会の会期末を迎えました。同日、衆参ともに憲法審査会を短時間だけ開催し、閉会にあたっての手続き処理(付託された請願(署名)の取り扱い審査など)を行い、終了しています。
高市政権成立にあたっての自民・維新の「連立合意」に盛り込まれた両党による「条文起草協議会」は発足したものの、両党の主張が噛み合っていない状況があります。衆参憲法審査会の下への「条文起草委員会」設置に関しては、幹事懇談会での提案や自由討議での発言にとどまり、正式な議題にもなっていません。
自民・維新などの改憲政党・会派がこの間手を変え品を変え、さまざまな策動を続けてきましたが、世論はいたって冷静です。しかし、保守層を繋ぎとめるために、来年以降も「改憲実現」を旗印としていくことが予想され、引き続きの警戒・注視が必要です。
【参考】
自維政権下の憲法論議 改正急ぐ理由見当たらぬ
https://mainichi.jp/articles/20251216/ddm/005/070/076000c
2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第4回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56067
※「はじめから再生」をクリックしてください
2025年12月17日(水)第219回国会(臨時会)
第2回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
2025年12月05日
憲法審査会レポートNo.65
12月4日、衆院憲法審査会では自由討議が行われ、自民・維新は憲法審査会の下に「条文起草委員会」を設置することを主張しましたが、立憲・れいわ・共産は反対を表明、与野党で設置の合意が得られる状況にはありません。
12月17日が今臨時国会の会期末です。補正予算審議などもあることから、衆参ともに憲法審査会の実質的な開催機会も少ないものとみられ、今国会ではこれ以上の大きな動きはないものと思われます。
2025年12月4日(木)第219回国会(臨時会)
第3回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=56022
【マスコミ報道から】
衆院憲法審 憲法改正 条文案起草の小委員会設置めぐり意見交換
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014993781000
自民、起草委設置へ理解求める 立民は否定的―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025120400120&g=pol
遠い憲法審の「起草委」設置 自民「合意を得られる状況ではない」
https://digital.asahi.com/articles/ASTD42SLCTD4UTFK00NM.html
「安全」巡る認識の違い表面化 衆院憲法審査会 緊急事態条項新設に立民は反対姿勢堅持
https://www.sankei.com/article/20251204-E4FL6I7SVVOEJASJIWSYEZYZ4M/
【速報】同性婚容認へ改憲提起 自民党の中谷氏「不利益解消」
https://www.47news.jp/13548764.html
憲法審査会 条文案作りに着手する段階だ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20251205-GYT1T00052/
【傍聴者の感想】
きょうは自由討議の形で、各党の委員が発言時間いっぱい持論を展開しました。
いわゆる「お気持ち表明」なのではないかと感じるような、それぞれが一方的に話しているような印象を覚えました。
また、「いつまでも同じことを繰り返していてはだめだ」「議論は尽くされた」と改憲ありきで発言する議員もいますが、憲法は国のあり方を示し、権力を「法の支配」で縛る国の最高法規です。落ち着いた環境で冷静な議論が必要ですし、少数会派の意見を封じてはいけません。
何よりも私たち市民は憲法を変えるべきだとは思っていません。それよりも物価高対策や社会保障の充実など生活に密接に関わる課題の解決に尽力してほしいものです。
傍聴券を手配していただいた議員の秘書の方から「今日は傍聴に小学生も参加する」と聞いていましたが、きっと小学生は憲法審査会を傍聴して「ぽかーん」としたと思います。発言内容が難しいというよりも、一方的に主張し、話がかみ合わない様子は、「会議」のイメージとかけ離れているからです。
そもそも、憲法で世の中を、世界を良くしたいという発想からの改憲議論ではなく、世界情勢が危険だから憲法を変えないといけないという発想自体が、ナンセンスで本末転倒です。どうしたら世界が良くなるか、そのために努力しましょうと憲法前文にも書かれています。
改憲ありきの委員の姿勢や発言は、努力すべき方法や方向を誤っているように見受けられました。
【国会議員から】山花郁夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)
いうまでもなく憲法改正のためには、衆参両院の2/3以上の賛成が必要です。
近年与党だけで2/3を占めるということがありましたが、戦後80年間の歴史をみると、これは歴史的には稀有な事態といえます。一般的には野党第一党が賛成していなければ両院での2/3の合意形成は難しいといえます。法律と違って、憲法というのは、どんな考え方の内閣であっても、どの政党が政権を担っても、そのルールの下に政治を行うという、いわば与野党に共通のルールだけに、2/3要件というのは、与野党一致で共通認識が形成されることが求められているものといえます。
国民投票法を制定するに際しては、このような事情を意識しながら立案したものでした。すなわち、将来的に憲法の改正が発議されることがあるとすれば、与党・野党の垣根なく共通認識を形成して、成案を作成していくというプロセスが重要になるということを認識し、その手続法である憲法改正国民投票法も同様に、与野党で真摯な議論を行って共通認識を形成し、成案を得ていこうという努力がなされました。衆議院憲法審査特別委員会において、最終的には不本意な形での採決となりましたが、ギリギリまでその努力がなされたもので、船田会長代理はその当事者でもあられます。
国民投票法成立当時から、国民投票の賛否の勧誘にかかわるCM規制について議論がありました。私たちとしては、民放連が制定当時と異なる答弁が後になされたことから、問題意識を持っていたところです。
制定から時がたち、テレビ・ラジオはオールドメディアとよばれるようになり、テレビ・ラジオよりもSNSのほうが社会的影響力は大きくなっており、偽・誤情報対策については当審査会でも議論してきました。さらに、諸外国において選挙の際の外国からの干渉などの問題も、当審査会でも先日、衆議院の海外調査(枝野団長)において、報告を受けたところです。
広報協議会については幹事懇談会で議論が進んでいますが、国民投票法についてはその他にも議論すべき論点があると考えています。この点については、前回改正時に附則4条に盛り込まれているテーマもあります。附則4条には、「法律の施行後3年を目途に、……」「検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」ことになっているところ、すでに3年以上を経過しており、立憲民主党としては今後の審査会でも附則に規定されたことについて重点的に議論がなされるべきと考えます。
前回改正の時には、私と新藤筆頭との間で相当な時間をかけて折衝を行いました。当時も公選法並びの改正という比較的技術的な内容の改正の提案がなされていました。CM規制等の問題も同じ国民投票法の改正案であることから、採決を行うのであれば立憲民主党の問題意識を盛り込めるものは改正法に編入してほしいという当方の立場との乖離を埋めることに相当なエネルギーを費やしたことが思い出されます。最終的には附則に落とし込むことにより、双方の合意を形成することができました。対立した形での採決とならなかったことについては当時の新藤筆頭幹事にも敬意を表したいと思います。
ただ、その後に附則で規定した事項についての議論が加速化することはなかったというのは残念に思います。
国民投票法は手続について定めるものですが、どの党の案がベースになったものだという色がついてしまうと、「改憲派に有利なルールだ」とか、「護憲派に有利なルールだ」というレッテルを張られ、手続の正当性に疑義が生じるおそれがあります。その意味で、現在も立憲民主党として法案の形で党内的には整理しているところですが、これを対案的に提出しようというのではなく、論点についての考え方を提起しつつ、各党各会派にご理解をいただいてコンセンサスを作っていきたいと考えています。
将来的に多くの与野党のコンセンサスが形成されて「憲法改正が発議された」という事態を想定し、国民投票での過半数を視野に入れると、どの党の案がベースになったという色がつかないことが大事だと思います。
かつて、中山太郎憲法調査会長(当時)と、ルクセンブルクに国民投票の視察に行ったことがあります。EU憲法批准の可否に関する国民投票でした。議会では圧倒的多数が賛成していたにもかかわらず、国民投票の結果は僅差のものでした。政党色や内閣に対する審判のような色がつくと、思わぬ結果となることを中山先生と語り合ったことが思い出されます。
こうした事例などの教訓として、国民投票での過半数を視野に入れると、発議される憲法改正案はどこの党の主張であったというようなことが希釈されていることが必要で、起草委員会というアイデアはこのような文脈で語られてきたはずです。
現状はそのアイデアになじむ状態ではないというだけでなく、憲法改正の「わが党案」のようなものを主張されている党があるとすれば、これまでの憲法調査会以来の知見をふまえたものとはいえず、国民投票での過半数獲得の阻害要因となることは指摘しておきたいと思います。
なお、議員任期延長に関連して、総選挙を全面的に停止しなければならない立法事実を確認できない旨申し上げてまいりました。
少し角度を変えて説明したいと思います。
公立中学校で「男子生徒の髪型は丸刈りでなければならない」という校則があったとします。法の下の平等という観点からすると、この校則を違憲・無効なものであるとして、男子学生の髪型についての規制をなくす、というのが適切な是正策と考えられます。
これに対して、「女子生徒の髪型も丸刈りでなければならない」という校則を新たに作成して、男子学生・女子学生間の平等を解消するような方策をとるべきでないことは言うまでもありません。人権を侵害する方法で平等を実現することは「不正義を倍増」することにほかならないからです。
そこで、大規模災害の場合です。東日本大震災のようなケースでも、8割強の地域は選挙の執行が可能でした。1割強の地域で選挙の執行が困難であることを理由として衆議院選挙を全面的に不能だと論じることは、比率において上回る地域の選挙権行使の機会を停止することにより「平等」を確保しようとするもので、女子学生を丸刈りにするのと同じように投票の権利を侵害・制限する方法で平等を実現する方策といえます。繰延投票等の方法を活用することが適切な解決方法だということを改めて申し上げて発言といたします。
(憲法審査会での発言から)
