2025年、集会等の報告
2025年12月19日
第62回護憲大会・分科会報告
第62回護憲大会の2日目には、様々な観点から人権問題を扱うため、5会場に分かれて分科会を開催しました。
分科会の進行は、平和フォーラム関係組織のみなさまに「運営委員」という形でご協力いただき、進行していただきました。感謝申し上げます。
第1分科会「外国人の人権確立、排外主義に抗して」
講師:安田 浩一(ノンフィクションライター)
石橋 学(神奈川新聞社川崎総局編集委員)
鳥井 一平(移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事)
保守政党の伸張とともに排外主義が社会問題となっています。共生社会を築くためには、国籍にかかわらず人権が保障されることが不可欠です。日本国憲法も基本的人権を定めていますが、差別や排除の事案が後を絶ちません。地域の実例を取り上げ、差別解消に向けて私たちはどうとりくむべきか、考えます。
【質疑応答の要旨】
Q.「ルール・秩序」の問題について、一部の人は「日本人の言うことを聞かない外国人は出ていけ」と考える傾向があるが、実際にはマナー違反やルール違反は日本人にも存在している。小さな違反や文化の違いを見て、すぐに差別やヘイトにつなげるのは問題ではないか。
A.日常生活での文化・習慣の違いについて、タバコのポイ捨てや釣った魚の扱いなど、外国人の行動が日本の慣習と異なる場合がある。こうした違いは交流や対話を通じて理解・調整できる。実際に話しかけたり、一緒に地域行事に参加することで、相互理解が生まれる。交流によって「私たちは同じ地域に住んでいる」という意識が育つ。
メディア報道の問題について、事件報道で外国籍を特別に強調することで、偏見が助長される。出身地や国籍を過剰に取り上げない報道の必要性。
秩序と民主主義について、秩序を守ることは重要だが、それは単に「外国人だから従え」というものではなく、戦後民主主義のルールに基づく社会の秩序である。移民や外国人にも、この民主的なルールや社会の仕組みを理解してもらうことが重要。
誤解や摩擦を減らすための方策として、小さなトラブルや習慣の違いを差別の根拠にしない。交流と教育を通じて相互理解を促すことが社会統合に不可欠。
第2分科会「混迷する世界秩序、憲法理念の実現に向けて」
講師:飯島 滋明(名古屋学院大学 経済学部教授)
役重 善洋(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員、特定非営利活動法人ピースデポ研究員)
憲法前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」とうたっていますが、現実は、戦争や対立、分断や差別によって混迷を深めています。国連安保理は機能せず、国際法も不遵守、日本政府も無策なままです。イスラエル・パレスチナの現状報告を受けるとともに、「敵対的相互依存」関係の中で進められる、日本の軍拡・基地強化の問題点について考察します。
【質疑応答の要旨】
Q.パレスチナ情勢について、ファタハとハマスの関係についてうかがいたい。
A.パレスチナの人たちの政治意識がとても高い。それは国際情勢、政治状況が生活に直結しているからだ。ファタハ、ハマスのコアな支持層は一部いるが、その時々の情勢や局面においてよりよきものを支持するという姿勢だ。ハマスを批判するのはパレスチナ総体の状況としてはよくないと判断しており、ハマス支持、武装解除も反対という姿勢に支持が集まる結果となっている。
Q.ゴラン高原の現状について教えてほしい。
A.具体な状況はわからないが、イスラエルが関与しているため、シリアもレバノンも危機感がある。とはいえ、今のイスラエルの動きにのっかかる方がいいという判断にはならない。慎重に判断するはずであり、イスラエルへの併合を支持するという動きが急に広がることはないだろう。
Q.教職員組合でもとりくみを考えていきたいが、アドバイスお願いしたい。
A.大学で平和学を担当しているが、学生は沖縄戦も知らないし、最近のことについても知らない。戦争・紛争すら話題にもあがってこない空気感だ。沖縄で日本軍が住民が虐殺をしたということも知らない。学生からそのまま教員になることが多いが、知らないというのが現状である。平和学を大学で教える際、1回めは広島、2回めは長崎の原爆の映像を見せる。初めて見る学生がほとんどだ。戦争や平和について開講している大学は少ない。先生たちにはぜひ学習してほしい。福岡でいえば、アジア太平洋戦争において、マレー半島コタバルへの上陸作戦が行われたが、その奇襲部隊は久留米の部隊だ。そういう身近なところでもとりくんでほしい。
Q.スパイ防止法について、2025年度中に出されるとも言われている。かつての治安維持法と絡めて、その危険性について取り組んでいく必要があると思うがいかがか。
A.11月中にパンフを作成する予定。「スパイ防止法」といえば、スパイ行為に反対するというイメージを持たれている。ネーミングが重要だ。学生にも問題点を示したうえで、法の名前を考えてもらうということをした。アメリカのスパイ防止法は、徴兵制反対、反戦運動を行った者も処罰の対象となる。最高刑は死刑。政府に背いたら処罰をうけるということがスパイ防止法のいきつく先だ。中国でスパイ容疑でつかまっている人が報道されるが、捕まった理由は明らかにされない。国防のため裁判でも出せないとなってしまう。政府にめざわりな人はつかまってしまう。
Q.文民統制について。台湾の緊張が高まっている。満州事変のように一触即発の統合司令部が先走る可能性もある。文民統制のありかたについて認識はいかがか。
A.極端に言えば国会は王の反対派。王に勝手なことをさせないために議会ができた。不逮捕特権はその歴史だ。文民統制の元々の意味はそこだが、日本では別の意味。満州事変では関東軍の暴走だったが、今の暴走は首相か防衛庁か。今の軍備拡大は政府主導だ。国民代表である国会議員が軍事費の大増額など政府を統制していくという本来の文民統制が必要だ。
Q.沖縄パレスチナ連帯委員会を作ってとりくんでいる。パレスチナナ支援のカンパ先があれば教えてほしい。
A.グッズもたくさん出されている。BDS運動のコーディネート、パレスティナ民族評議会などがある。ガザで緊急医療の方面の先がたくさんある。市民レベルで大きな課題といえば、自分たちのそれぞれの生活している政府に対して、いかにパレスチナ問題に対する公正な姿勢をみせる必要があると。
イスラエルに対しての軍事的関係、セキュリティ関係を断ち切っていく圧力をかける必要がある。
AFZ運動というひろがり。200ほど賛同している団体がある。店や映画などが主、組合、市民団体なども入っている。具体的には、イスラエル占領に加担する商品を扱っていない。というアピール。キャンペーンよびかけなどある。そういったところでチェックいただけたらと思う。
第3分科会「多様な性を受け入れ、誰もが尊重される社会の実現」
講師:神谷 悠一(LGBT法連合会 代表理事)
元山 琴菜(金沢大学 人間社会研究域地域創造学系 准教授)
社会にはさまざまな性が存在します。しかし、現実には偏見や差別によって生きづらさを抱える人々が少なくありません。性的多様性の理解を深め、だれもが安心して暮らせる社会をどのようにつくるのかを考えます。多様性を尊重する社会、誰もが公平に尊重される社会の実現に向けて、私たちができることを考えます。
【質疑応答の要旨】
Q.中学校の教員をしている。昨年、PTAから学年にあった性教育が要望され、校長に相談したが、性教育の実施は構わないがLGBTをすすめる講師を学校に入れたくないと発言され、言葉が間違っており、自分も感情的になってしまったが会話が平行線になったが、性教育自体は認められたので講師の選定を進めたが残念ながら時間と費用の関係で実施できなかった。
今年は、学校全体を対象とした性教育、包括的性教育をテーマに講師を迎えたが、資料を確認した校長がLGBTを進める教育は認めないと、LGBTを避けた包括的性教育となってしまった。
その校長は、過去にその講師を呼び出し、怒鳴りつけるなどの経過がある。また、LGBT教育は家族の分断、国家の在り方を揺るがすもの、性的マイノリティの生徒は自分を理解しない、受け入れないと発言するなど、組合の書記長や市の教育委員会課長にも相談して、対応してもらったが、考えが変わっていない。
今日の講義を伺い、子ども自身、生徒自身が知識を身につけて正しく理解する教育をつくることはとっても大事だと感じた。道徳の教科書でも、性的マイノリティを含めてマイノリティを扱うことになっているのに、どうしてこんなことになってしまうのか。できれば校長自身に考え方を変えて欲しい。なかなか難しいと思うが、きちんとした性教育が行われることで、救われる生徒、守られる生徒が増えていって欲しい。
A. 江東区で同様の発言を行い謝罪させられ、罷免された事例を紹介し、完全に認識が間違っていると指摘。理解増進法やこども基本法など、国家の方向性に反する発言であることから「なにを根拠に仰っているのか」と尋ねる中でこのようなことを指摘し、同時に教育委員会にも報告していくしかないのではないか。とアドバイス。
LGBTQの理解が及ばず、抑圧すれば治り、居なくなると考える人が居る。目に見えないだけで、どの国や地域、歴史、文化、にも存在する。当事者がメンタルヘルスの問題を抱え、教育の機会を奪われることに危惧を表明し、独立行政法人教職員支援機構の日高先生の動画を視聴するなど、お金をかけなくても学べる方法を紹介し、当事者のためにも保健室に駆け込める環境の整備、保健室や図書館への本の設置などがアドバイスされた。
Q.ホームレスの方を含めた相談活動をしている。「普通を書き換える」ことをやっていかなければならないと講演でお聞きし、どうしたらよいかと思った。レジメに答えが書いてあって、一つ一つ気をつけながらやっていければいいかと感じた。
LGBTQの方も部屋を借りるのに大変苦労していると伺った。深刻な問題だと思う。ホームレスの人もなかなか部屋を借りることができない。不動産屋に対してなにか対策はできないか。アドバイスなどをいただきたい。
A.世田谷区のパートナーシップ条約の際の保坂区長の取り組みを紹介し、不動産業界とは話ができるが、大家になると自由契約の話になり難しい現実に共感が示された。大家の権限の及ばない契約方法もあり活用が進められたが、講師自身、詳しくなく説明ができないが、そうした制度の利用も検討を。とアドバイス。
Q.根本的な話と考え方として、戸籍の中で、生まれた瞬間に男と女に別れ、それが一生ついて回る。それが成長し生きていく中で、自分の性がどうなのか、選択をし、ここにミスマッチが生まれていくことで色々な問題が起きる。入学や就職の時に性別欄を空白で押し通せる社会なのか。根本的な概念の考え方として、戸籍法上の男と女に対して、どう考えていけばいいのかご意見を伺いたい。
A.戸籍制度が差別の温床となっている。右派は、戸主制度の下、家族が国家の採用単位であり、戦前の天皇を頂点に皇后、皇太子、全ての国民は天皇の子どもと考えてきた。戦後、戸主制度はなくなったが、戸籍制度は存在するので、残っているとファンタジーの世界に居る。
戸籍上の男女の区分けを無くせば解決するかという議論もあるが、内面から出る問題なので、そう単純ではない。戸籍制度が差別の温床になっているのは、特に日本、家父長的という意味では世界共通の話であるが、特に日本の特徴的な病態だ。
履歴書については、今は男女の欄はなく、空白となっており、男女以外の記載、空白でも不利益を与える選考を行わないようにと指導が入っている。法的拘束力には疑問があるが、徐々に変わっていっている。
戸籍の問題であるが、保険証やパスポートなど、日常の中で男女の区分けがあり、不必要な区分けが行われることで差別となってしまう。不必要な性別欄の使用をなくしていく動きがあり、できることからやっていく。
第4分科会「女性の権利とジェンダー平等の実現に向けて」
講師:竹信三恵子(ジャーナリスト、和光大学名誉教授)
伊藤 和子(弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長)
低賃金や不安定な雇用など、女性には経済的な格差が生じています。その背景には、社会の意識(ジェンダー規範)や、無意識の偏見によって女性を低く評価してしまう現実があります。
日本の現実はどうなっているのか、一方で国際的にはどのようにジェンダー平等へ動いているのか、そうした課題を具体的に取り上げ、一緒に考えます。
【質疑応答の要旨】
Q1.「『女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准を求める意見書』の採択を求める運動に取り組み、2年がかりで長野県議会と県内77市町村の全てで意見書の採択ができた。これを足掛かりに『選択的夫婦別姓の意見書』採択にも取り組み去年11月に県議会、今年9月にも塩尻市議会や安曇野市議会で採択された。これから県内全市町村を目指して取り組む」
「自分自身は3月から介護施設でパート職員として働いている。人権のない心を削られる職場だが、働き手は高齢者が大半で、非正規の待遇の悪さと年金の低さから我慢せざるを得ない。どうやってこの職場を変えていけばいいかヒントがほしい」
Q2.自分の勤める職場の具体的な問題について相談したい。正規員の賃上げは15,000円だったが非正規は500円からよくても2,000円。そして正社員でも女性は男性の70%程度の賃金だ。組合として男女の賃金格差是正を求めて交渉してきた。会社は「女性も交代勤務を受けたり管理職になってもらわないと」と言うが、会社に出させた資料を分析すると、賃金格差の最大の根幹は、人事評価の差だった。男女の職位のランクには平均で3段階ほど差がある。「これは女性差別だ」というと、会社が資料を出さなくなった。来春闘で是正に取り組みたいが、成功事例や手法があれば教えてほしい。
Q3.前日のシンポジウムでも、日本では人権侵害や差別に関する定義がなく、禁止法がなく、救済が難しいという構造が指摘されており、今日も講師の伊藤さんが法的基盤の強化の必要性をお話された。その点で長野から報告のあった選択議定書の意見書採択は一つの柱になるのではないか。遅ればせながら神奈川でも取り組み、33市町村の内21市町村で採択された。長年運動に携わってきた経験から、『法制度を具体的にどう変えるのか』と目標を立てて運動することが大事だと思う。男女共同参加をうたう自治体条例の仕組みを活用する方法も効果的だった」
「いま神奈川県立図書館で山川菊栄に関する展示が行われているのでぜひ見てほしい」
Q4. 日本のジェンダーギャップを解消するためには、ハラスメント対策も含めて女性候補者の立候補のハードルを下げなくては。また人事評価に男女差があることには、女性が家庭責任を持っているために貯時間残業ができず、成果を挙げにくいという構造もあるのではないか。結果だけでなく個々の働く人の背景を会社も職場の人も踏まえなくてはならない。単に「出ろ出ろ」と言っても困難な事情がある。女性の進出を可能にするための具体的な議論こそ必要だ。
Q5.「先ほど、山川菊栄の話があったが、今年は日本で最初に『婦人部テーゼ』が作られて丁度100年の年になる。山川菊栄は、先進的な項目を上げ『これは婦人の特殊要求として掲げているけれど、人間の社会生活にとって家庭にとって大変大事な項目で、ひいては労働者階級全体の項目。みんなで闘いましょう』と発言されている。だから皆さんと一緒に闘っていきたい」
「私は長年『均等待遇アクション』という運動に取り組んで、いま選択議定書の採択に打開策を見つけようとしているが、もう一つ大事なのは、『女性の貧困への対策法』を具体化するための運動だと思う。女性が労働現場で差別されている構造そのものを変えて、きちんと生活できる仕事を得るために、もう一つお知恵を貸していただきたい」
A.竹信三恵子講師
「女性のやっている仕事だけ賃金が低い」ということは実際にあり、評価の仕組みを改める必要がある。政府は「職業トレーニングをしてもっと良い仕事に」と言っているが、皆が皆、そうしてしまえば、介護にせよ何にせよ女性がやってる重要な仕事(エッセンシャルワーク)は、もぬけの殻になってしまう。こういった仕事の価値を低くして賃金を安くしていることこそが問題だ。
ずっと非正規公務員の問題を取材しているが、人事評価と短期契約が大きなネックになっている。(使用者側が)声を上げた人を再任用しない根拠は、いつも「評価が悪かったから」。じゃあ「評価を開示してくれ」と求めて開示された中身を見ると、理由の欄が全て黒塗りになっていた。そんなことばかりだ。民間でも非正規がどれだけ正規より成果をだしても、正規以上に上がらないという階級制度もある。こういった問題の情報共有を進めなくては。学生さんなどは本当に知らない。
欧州型のスキル、責任、労働環境、負担度の4項目で点数化して客観評価しましょうという取り組みも殆ど進んでいないが、まず労働組合でそういった評価をしてみて自己卑下をなくすことも大事だ。そしてネットワークを作り、政治に働きかける取り組みも大切。
正直に言ってやることは多いが、皆でネットワークを作ってやれば元気が出る。今、初の女性首相が「夫婦別姓はいらない」と言って性差別に加担している状況は怪談やホラーに近いが、こんな時だからこそ元気を出してやりましょう。もちろん男性も含めて。
A.伊藤和子講師
人権が否定されている職場をどうするかというご質問があったが、私は実態調査をして報告書をまとめて、報道してもらって実態を明らかにすることが大事だと思う。日本でも芸能従事者の労働条件のひどさなどが話題になり、是正に向けた取り組みが進んでいる。介護職場の実態を明らかにしてジャーナリストや学者とつながって、世の中を変えていく手法は有効だ。「これだけひどいんだ」というショックは政治家も動かす。
男女の賃金格差に関しては、簡易迅速に改める制度がないので、日本では裁判になる。裁判ではかなり勝っている事例が多いが、それ以上に賃金差別を是正する仕組みが必要だと改めて思った。
また大企業は、賃金差別を公表しなければならない仕組みができてから、三菱東京UFJ銀行が総合職と一般職の区分をなくすなど良い方向に進んでいる。こういう動きが他の会社にも広がれば。
「差別を訴えていく場がない」という皆さんの声に私も勇気づけられた。私たちは政府から独立した国内の人権擁護機関を作るための運動を、1990年代から続けているが、政府や国会議員には「差別が是正されなくて困っている人が、そんなにいるんですか」と言う人もいる。人権擁護機関が大事だという声を広げていきたい。
選択的夫婦別姓を求める運動は、議員とのネットワークや国連への働きかけなど、すごいネットワークができている。今日上がった非正規雇用の差別的待遇を改めていくためにも今日のこの場の皆さんからネットワークを広げてほしい。
そしてジェンダーの問題は、やはり「男性中心主義からの脱却」であって、女性だけの問題ではなく、人間らしさを取り戻す闘い。様々な差別を受けている弱い属性の方たちと一緒に取り組んでいくことが必要で、男性の方にもぜひ参加してもらいたい。
第5分科会「憲法とともに歩んだ戦後80年(憲法入門編)」
講師:清水 雅彦(日本体育大学 体育学部 教授)
報告:染 裕之(平和フォーラム共同代表)
日本国憲法は、戦後の社会の土台となり、平和・人権・民主主義を守る確固たる指針として在り続けています。憲法が私たちの生活をどう支えてきたのか「平和憲法」の意義をあらためて学びます。あわせて、国会での憲法審査会の動きについても報告し、憲法をとりまく現状を共有します。
入門編として、憲法の基本を中心に展開していきます。
【質疑応答の要旨】
第5分科会では、6人の方から質問をいただいたが、参加者が職場や地域に持ち返って拡げようとする観点からの質問であったように思う。職場や地域に伝える難しさがある反面、講演内容についても、そのような観点から理解を深めたいとの意欲が感じられる分科会であった。
Q.中道と言われる勢力でも「集団的自衛権」の違憲性について議論となっているが、改めて再確認する意味で、「集団的自衛権」の違憲性について聞きたい。また、国民投票法の基準の問題として、投票率との関係について、どう考えるか。重要な事柄だと思うがどうか。
A.日本国憲法は、軍隊の保持を認めず、必要最小限の実力組織であり、その前提は個別的自衛権となっていることから、2015年の安全保障法の解釈改憲により集団的自衛権を容認する法改正がされた。その違法性は明らかであるが、現在の形骸化する事実と理念の実現について認識する必要がある。
国民投票法を巡る諸問題も憲法審査会にて議論されているが、今国会においてもその論点も注視していかなければならない。
Q.「台湾有事」を存立危機事態と捉えることになれば、その後方のロシアの動きも懸念される事態になると思うがどうか。また、これまでの統一教会の活動などを見たとき、1日目シンポジウムの提起でもあった「スパイ防止法」や「外国人勢力代理人登録法」を注視し、運動を強化する必要があると思うがどうか。
A.台湾有事と危機を騒ぎたてることがどうなのかという問題はあるが、これまでの憲法9条に制約をかけてきた、「専守防衛」「集団的自衛権行使の否定」「防衛費のGDP1%枠」などの立場をふまえ、日本の安全保障の立場をとる必要がある。
スパイ防止法に対する取り組みは、当面の行動企画も予定しており、どのような運動の展開ができるか、引き続き今後の取り組みについて検討を進めていきたい。
Q.保守勢力は、憲法は押し付けられたものとの主張があるが、起草過程や政府の承認という行為からしても批判に当たらないと、改めて理解ができた。そのうえで、職場や地域の周りに拡げていくために、「集団的自衛権」と「集団安全保障」があるが、違いをどのように理解すれば良いか。
A.憲法の制定経過はお話しした通りであるが、戦後80年・憲法制定後、憲法が社会・生活に根付いてきたということを捉えることが必要。「集団的自衛権」は、同盟国(米国)への戦争に参加できる道を開いたということだが、「集団安全保障」とは各国による協調により各国の安全を確保するということである。その機能を期待されるのが国連であるが、現在、国連も集団的自衛権を認めており、実際の枠組みとしては難しい。
Q.「非武装・平和」と言われることが多いが、「非武装・中立」という理念に立ち返えなければならないと考えるがどうか。
A.これまでの国会の議論経過と私たちの立場からすれば、「非武装・中立」ということになるが、憲法の問題と同様に、曖昧にせずにいかに理念を実現するかということが課題である。
Q.世界に軍隊が存在しない国が26か国とあったが、アイスランドはNATO(北大西洋条約機構)加盟国になっており、日本はどのような安全保障政策を選択すべきと考えるか。日本の「自衛のための必要最小限」とは、どのように考えるか。
A.日本は日本国憲法があり、憲法制定経過や憲法のもつ理念の基づいた安全保障政策に立ち返えること。「自衛のための最小限の実力」とは、警察以上軍隊未満ということ。現状は、確実に軍隊であることから軍隊を排除すること。
Q.職場・組合で平和運動を拡げようとしても、入口で拒否感を示されてしまうことが多い。広めていくうえで大切にしなければならないことがあれば教示願いたい。
A.職場や地域でも必要に応じて憲法で保障された権利・自由を具体的に行使していくことが必要。労働組合に加入する、学習会・集会・デモに参加する、「権利のための闘争」という視点が重要になっている。
