2009年、集会等の報告

2009年08月01日

東京大空襲訴訟の勝利をめざす集会-日本の戦後処理を問う

 

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東京大空襲訴訟は、原告132人が国を相手取り、民間人被害者を救済せず放置してきたことへの謝罪と賠償を求めています。今秋にも一審東京地裁判決が出されます。それを前にした8月1日、「東京大空襲訴訟の勝利をめざす8・1」集会が、東京・台東区民会館で「日本の戦後処理を問う」をテーマに開かれ、330人が参加しました。主催は同訴訟原告団と「支援する会」。「戦争犠牲・損害は国民の等しく受忍しなければならないところのもの」だとする国の「戦争被害受忍諭」批判や、軍人・軍属と遺族には恩給など累計48兆円を支給する一方、民間の戦争被害者には一切の補償を行なってこなかった民間人差別の問題などをめぐり、パネルディスカッションが行われました。
開会あいさつで城森満原告団副団長は、受忍論について「憲法からは出てこない論理」と指摘。「戦争そのものを裁く視点で人類の未来に足を進めていかなければならない」と述べ、憲法の「平和的生存権」を掲げて裁判闘争に勝利する決意を示しました。
討論にはパネリストとして星野弘原告団長、田中煕巳日本原水爆被害者団体協議会(被団協)事務局長、ジャーナリストの前田哲男重慶大爆撃の被害者と連帯する会・東京代表、戦争報道の検証にとりくんできた藤森研朝日新聞記者、「無防備都市宣言」の請願に市議会で賛成表明した上原公子元国立市長が出席。司会・コーディネータは重慶爆撃訴訟の弁護も担う中山武敏弁護団長が務めました。
中山武敏弁護団長は、まず、侵略戦争の反省に立ってできた平和憲法のもとで「政府の第一の任務は戦争責任を果たすこと」とし、政府に対しどう責任を果たさせ、未来につなげるのかなどについて問題捏起。
星野原告団長も、受忍諭は「裁判の中でも最大の問題」と強調。国が原爆症認定拡大に消極的な理由として「一般戦災被害者との均衡」を挙げてきたことに触れ、空襲訴訟の闘いは被爆者の要求実現の力にもなるとしました。また、台湾など旧植民地の空襲被害者が置き去りになっている現状にも言及。軍人・民間差別に関しては、国民保護法の補償規定では法律に基づく動員や協力要請の対象以外の国民への補償はないことも指摘。「民間人を外しているのは主要参戦国で日本だけ。国は空襲の死者数も調べておらず、被害を風化させたいのでは」としました。
長崎の被爆者の田中事務局長は受忍論の背景について、「米国の核の傘に守られていることに気兼ねし、被害実態に合った施策が行われていない」と問題提起。
前田代表は、54年ビキニ環礁の米水爆実験による第5福竜丸被爆事件に言及。被爆乗組員らに支払われたのは米国の謝罪を踏まえた補償ではなく、責任の所在を明らかにしない「見舞い金」であり、しかも、その出所は日米MSA協定に基づく援助物資購入代金として日本側が積み立てていた資金であり、医療費は船員保険で賄われたと指摘し、米国の軍事政策容認と民間人差別がひと連なりの問題として表れた実態を告発。また、「冷戦で日本が西側諸国に組み込まれ、アジアに対する賠償がゆがんだ。アジアに対する責任を前提にし、戦争の体験を伝えていかなければ」と政府の戦後処理を批判しました。
藤森記者はアジアへの加害責任について発言。上原元市長は国民保護法などの有事関連法がすでに制定されてしまった現状などに言及するとともに、「きちんと戦後処理をしてこなかったのは政治の不作為。私たちは戦争被害者であると同時に加害者であったということも検証していくことが必要だ」と提起しました。

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