2012年、トップランク、集会等の報告

2012年11月11日

2500人参加し「『生命の尊厳』をもとに、原発も基地もない平和な社会へ 憲法理念の実現をめざす第49回大会(護憲大会)」

 

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上関原発建設や米軍岩国基地に対して長年とりくみを続けてきた山口県の山口市の地で、「『生命の尊厳』をもとに、原発も基地もない平和な社会へ 憲法理念の実現をめざす第49回大会(護憲大会)」を正式名称に、維新百年記念公園内の県スポーツ文化センターアリーナをメイン会場として11月9日から11日までの日程で第49回護憲大会が開催されました。全国47都道府県持ち回りで行われる護憲大会の、山口県での開催は初めてで、37番目の開催県となりました。
今回の大会は、衆議院解散目前の政治状況のなかで、1.未曾有の東日本大震災・福島原発事故被災からの復興と脱原発、2.沖縄基地・オスプレイ問題に示される民主党政権下でもつづく対米従属から脱却し東アジア地域の人びとの友好関係を確立すること、3.他方で日本の侵略戦争の歴史認識を欠落した「領土問題」などで煽られた偏狭なナショナリズムと有象無象の憲法理念を無視・敵視する改憲勢力の増長を許さないことが重要な焦点でした。
→大会呼びかけ文と開催要綱 ポスター

 

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街中も紅葉で映えるなか、11月9日の開会総会は、会場の県スポーツ文化センターアリーナに全国から2,500人の参加者を得て行われました。前段のオープニングは地元周防大島町出身のラッキー兄妹ユニット「マウンテンマウス」が生命を大事にすること、故郷が輝くように祈った歌を披露しました。その後、1982年に浮上した上関原発建設計画に対して、山口県在住の写真家・家那須圭子さんが綴った祝島島民の反対運動の写真をスライド上映し、生命と暮らしをかけたたたかいの歴史を振り返りました。
開会総会は、総合司会の瀧本司・日教組中央執行委員と、山口県実行委員会の河村典子さんのもとで進行。最初に、江橋崇・実行委員長の主催者あいさつ、つづいて、纐纈厚・山口県実行委員長の地元あいさつ、 高橋睦子・連合副事務局長、平岡秀夫・民主党衆議院議員、福島みずほ・社会民主党党首の連帯あいさつ、 渡辺純忠・山口市長の代理として、吉田正治・副市長の来賓あいさつが行われました。また、出席された服部良一・衆議院議員、杉本郁夫・連合山口会長、佐々木明美・社民党山口県連代表、西嶋裕作・民主党山口県連幹事長のみなさんが紹介されました。さらに、大会への連帯メッセージが衆議院議員26人と参議院議員17人の総計43人からよせられていることが報告されました。
このうち、江橋実行委員長は、「領土問題」をめぐる日韓・日中対立と各国内でのナショナリズムの高まりを憂慮し、各国が東アジアという地域のまとまりを意識して「大同団結し、相手を尊敬し合う関係をあらためて構儀しなければならない」と大会の課題を提起する。纐纈県実行委員長は、大会を山口で開催することの意義とともに、新たな改憲勢力の台頭を念頭に、もはや旧来の「護憲対改憲」の2項図式では情勢をつかめないと危機感を込めて指摘。「改憲のうねりを飲み込むがごとくの勢い、エネルギー、論議によって突き進む護憲のありようを足元から考えなければいけない」と述べ、「『護憲』を『愛憲』と置き換え、憲法を愛することが護憲運動の方向性であり、それを全国へ、国際社会へ発信していきたい」と述べました。高橋副事務局長からは「被災地では復興はまだまだの状態だが、今後も被災地と連携し、支援していく」こと、地元選出でもある平岡議員は、「この時期の護憲大会の開催地として、上関原発、岩国基地のオスプレイ問題などをかかえる山口県はもっとも適しているのではないか。山口県から全国に問題提起をしてくことで有意義な大会になると期待している。人権や環境、平和の問題に等としてしっかりとりくむことを誓う」、福島党首は、「脱原発、オスプレイ配備反対・沖縄基地撤去、憲法擁護の3点に力を注ぐ」とし、「第三極は脱原発、社会民主主義、憲法を生かす勢力でなければならない。憲法を生かす勢力をいっしょにつくろう」と呼びかけるとともに、「原発の新増設は断固反対。設置許可すら受けていない上関原発は即刻止めると政府は宣言すべき。国会で脱原発基本法を成立させたい。オスプレイの全国的な低空飛行訓練も阻止しよう」と訴えました。
これらを受けて、藤本泰成実行委員会事務局長の基調提案が行われました。米国でできないオスプレイの低空飛行訓練を日本全国で行う問題から、米国の傲慢な姿勢と何もしない日本政府の姿勢が沖縄をはじめわれわれの日々のくらしをの安全を脅かしていること。偏狭なナショナリズムを煽り、集団的自衛権の行使や現行憲法の廃止をねらう勢力が台頭していること。大震災・原発事故でも復興も被害者救済もおろそかにされていることを指摘し、「豊かさを平等に享受できる社会」「一人ひとりの命が尊重される社会」を憲法は希求しているとし、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言した憲法の原点を忘れてはならないとと提起しました。
→藤本事務局長の大会基調提案   →大会基調全文

 

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開会総会に引き続いて開かれた「東アジアとの友好~日中韓関係をめぐって」と題したシンポジウムでは、民主党衆議院議員の平岡秀夫さん、中国大使館参事官の文徳盛さん、韓国のアジアの平和と歴史教育連帯で国際協力委員長をしているカン・へジョン[姜恵楨]さんの3人のパネリストとコーディネータ役の江橋崇平和フォーラム代表(法政大学教授)が討論しました。このシンポジウムは、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権をめぐる日中間対立が強められるなど、東アジア地域諸国の友好関係があらためて問われているなかで、友好関係促進のための課題を討議しようというもの。平岡さんは、政府が尖闇諸島を国有化した理由を「石原慎太郎都知事(当時)が現状を大きく変えることを防ぐため」と説明する一方、3国間でさまざまな問題が生じる背景に日本政府の①相手の立場を考えず自身の立場やメンツにこだわる②米国追随、いいなり-の姿勢があると話しました。文さんは「中日国交正常化40周年でいろいろな交流イベントを計画していた。勢いのある時に釣魚島の問題が起き、悲しい」と語り、「明るい兆しは見えていないが乗り越えなければ」と訴え、カンさんは、冒頭に「明治維新後、日本はアジアを抜け出して欧米諸国をめざした。『東アジアとの友好』という表題は日本がアジアの外に見える。日本もアジアの一員」と重要な提起をした上で、「日本と韓国の国民レベルで領土問題の認識のギャップは広がっている」と指摘。文化交流の重要性を強調しました。日中韓の異なる立場からの議論は、政治・経済・文化のすべての分野で、お互いを尊重・尊敬し、友好関係を構築することが将来にとって重要であり、何が必要か利害を超えて話し合おうとの認識で一致しました。最後にコーディネータの江橋代表は、この認識を広げ、今後は日本として憲法理念を実現する道を示していきたい、と締めくくりました。

 

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第2日の11月10日は、午前から「地球環境-脱原発に向けて」、「非核・平和・安全保障」、「歴史認識と戦後補償」、「教育と子どもの権利」、「人権確立」、「地方の自立・市民政治」、「憲法」の7分科会、「祝島ふれあいツアー(上関町祝島)」と「歴史と自然をめぐるツアー(萩~美祢)」の2つのコースのフィールドワーク、午後には 「男女共同参画の広場-原発とジェンダー」、「上関原発を考える~映画『祝の島』上映と現地からの報告」、「米軍岩国基地問題を考える~オスプレイ配備反対。沖縄・岩国だけじゃない。日本全国が訓練場に」の3つの「ひろば」、特別分科会「運動交流」が行われました。なお、本年は例年行っている関連企画「全国基地問題ネットワーク学習交流集会」は、ひろば「米軍岩国基地問題を考える」と同様の企画のため合流し、行われませんでした。

このうち第1分科会「地球環境~脱原発に向けて」では、原子力資料情報室共同代表の伴英幸さんから、生命の尊厳のため一日も早く原発をなくしていくことの提案があり、政策として「原発ゼロ」を確立すること、再稼動を認めず止め続けることの2点を課題として挙げられ、原発に関するパブコメ・世論調査の結果、原発ゼロを求めている人の多さをグラフで示してわかりやすく説明を受けました。また、環境エネルギー政策研究所の松原弘直さんからは3・11後のエネルギー戦略として再生可能なエネルギーの割合を増やしていくことを提案され、原発に依存しない再生可能エネルギーの目標値について、ヨーロッパ各国に比べて日本は低いことをグラフで示され、自然エネルギー市場は急成長しており、日本もエネルギー政策を転換していく必要があると話されました。質疑討論では、3・11以降の福島原発は現在、どういった状況なのか? 教育にはどう影響するのか? 反原発の市民運動はどのような取り組みがあるのか? 海外を含めて参考になる例はないか? 自然エネルギーへの転換について、どこが主体で進めていくべきか? 電気料金への影響、経済への影響はあるのかなどと発言があり、熱心な討論が行われました。

第4分科会「教育と子どもの権利」では、山梨学院大学大学院教授の荒牧重人さんから、「教育と子どもの権利~子どもの権利条約の視点から~」について講演を受け、いじめの問題を子どもの権利から考えてみた話などのあと質疑・問題提起などがあり活発な討議がおこなわれました。次に福島教職員組合相馬支部の大和田修さんから、東日本大震災・福島原発事故後の南相馬市の学校の現状の報告があり、放射線に対する不安と福島県民に対する差別が広がっており、子どもたちの将来のためにも人権教育としての視点を大切にしていかなければならないと訴えました。質疑・応答でも、差別・人権、子どもたちの権利について討議があり、最後に問題提起者よりまとめがあり閉会しました。

→分科会報告
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最終日の閉会総会は、会場をホテルかめ福に移して約600人の参加者のもと行われました。最初に、「オスプレイ配備阻止のとりくみ」について沖縄平和運動センター事務局長の山城博治さん、「震災・原発事故被災地からの訴えととりくみ」について福島県平和フォーラム代表の五十嵐史郎さん、「自衛官人権問題をめぐるとりくみ」について神奈川平和運動センター事務局長の小原慎一さん、「上関原発・岩国基地など山口におけるとりくみ」について山口県平和運動フォーラム事務局長の桝本康仁さんの4人の特別提起を受けました。
このうち、山城事務局長は、身体を張ったオスプレイの配備阻止のたたかいにふれながら、「もう一度沖縄戦をやろうとしているとしか思えない。前は対米戦争、今度は対中戦争として。12月には県内41自治体すべての市町村長が上京して配備撤回を野田首相に訴えることにしているし、沖縄現地でも普天間基地前に座り込む予定だ」と怒りを込めて語りました。また五十嵐代表は、原発事故から1年8カ月が経過した状況を報告。「新たな困難が次々に生まれている。避難していた人々が県内に戻り始めているが、これは家族がバラバラの二重、三重の生活では経済的に耐えられないためだ。政府や東電は放射能の影響を過小評価し、原発の再稼働をねらっている。差別や人権侵害も相次いでいる。核廃棄物をどこに持っていくのか、われわれも考える必要があるのではないか」と深刻な実態を述べるとともに問題提起しました。
次に、「大会のまとめ」を藤本事務局長が提案。大会議論の詳細に触れるとともに、最後に「次回は50回の節目。49回の大会の歴史と今をしっかりと総括することが求められている。半世紀にわたって私たちはどうか関わってきたのか、そこからの出発がどうあるべきか。脱原発の声のなかで、市民のあり方ととりくみは大きくスタイルを変えている。私たちの運動がどう向き合うのか問われており、しっかりと議論を続けていく」と締めくくりました。
→藤本事務局長の大会のまとめ
大会は、「遠藤三郎賞」を、山口県の「上関原発を建てさせない祝島島民の会」。「平和運動賞」を「山口県平和運動フォーラム」と「原水爆禁止福岡県民会議」で表彰。その後、大会アピールを参加者全体の拍手で採択し、山口県実行委員会委員長代行の岡本博之・県平和運動フォーラム議長の閉会あいさつで3日間の日程を終了しました。初めての大会の準備と参加のとりくみをした山口県実行委員会の尽力によって、参加者の心に強く残る大会となりました。
→大会アピール
→第6回実行委員会・経過と総括について
→山口県実行委員会・まとめ

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