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第44回食とみどり、水を守る全国集会・分科会報告

2012年12月 1日

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  平和フォーラムは、農民団体、消費者団体などとともに、11月30日・12月1日の二日間にわたって、大阪府・大阪市の「大阪ガーデンパレス」において、「第44回食とみどり、水を守る全国集会」を開催しました(→既報)。
 集会2日目には分科会が開かれ、それぞれ活発な議論・学習が行われました。
 

第1分科会 「課題別入門講座」

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①「原発問題と今後の課題」 末田一秀さん
 
 前半は、はんげんぱつ新聞編集委員・自治労脱原発ネットワークアドバイザーの末田一秀さんから「原発問題と今後の課題」をテーマに講演を受けました。
 
 末田さんは「原子力発電の仕組みは、核分裂の熱でお湯を沸かし蒸気を発生させ、タービンを回して発電を行うこと」という説明から始まり、原発の問題点を解説しました。
 日本で地震が頻繁に起こる理由は、地殻の表面が絶えず動いていて、太平洋プレート及びフィリピン海プレートが陸側プレートに潜り込み、それに耐えきれなくなった陸側プレートのひずみで地震が起こる。欧米では大きな地震の発生しない場所に原発が立地しており、そもそも日本のような地震列島の上に原発を稼働させていいのか、と提起がありました。
 
 福島第一原発事故では、核燃料が溶融し格納容器内に留まっているのか漏れているのか未だにわからない状態で、当初20㎞圏内は避難指示で30㎞圏内は屋内退避であったが、1ヶ月過ぎてから避難指示に変わった。これは、戦争時に軍隊は国民を守らないと言われたことと同じで、原発事故でも国は国民の健康を守らなかったと言える。
 
 一方、放射性物質汚染対処特措法では、国が処理責任を持つと言うが、許可権者や検査指導者が定められておらず、法的規制もなく問題がある。放射能汚染では、外部被曝及び内部被曝により、特に子どもの甲状腺ガンや心臓病への影響が懸念され、成長期の人ほどリスクが高くなる。2012年4月から、食品・水等について、放射性セシウムの基準が決められ、一般食品ではキロ当たり100ベクレルになった。いまだに多くの魚介類は基準を超えているが、野菜は基準を超えるものはほとんど流通しておらず、何とか規制ができるようになってきた。
 
 使用済み核燃料の保管場所は近い将来満杯となる。六ヶ所村再処理工場で試験を行っているが、技術的な限界もあり、再処理工場周囲のヨウ素による環境汚染が危惧されている。直ちに原発を廃止すべきである。
 
 世界自然エネルギー白書によると、2009年に世界の自然エネルギーは8千万キロワットも伸び、そのうち中国が3千7百万キロワットを占めた。しかし、日本は原子力に固執して乗り遅れている。今年7月からの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度により、ビジネスチャンスが生まれている。自然エネルギーは、中小規模・分散型であり、地域に雇用を作って産業を生み出すことができる。
 
 このような説明がありました。なお、最新の情報は、末田一秀氏さんのホームページ「環境と原子力の話」を参照してください。
 
②「源流学的スローライフ」 辻谷達雄さん
 
  後半は、森と水の源流館(奈良県川上村)の館長を務め、現在、同館の自然観察指導員として活躍されている辻谷達雄さんから「源流学的スローライフ」をテーマに講演を受けました。
 
 辻谷さんはまず、「源流学」とは何かについて、次のように説明しました。
 
 源流は、私たちの暮らしに大いなる自然の恵みを授けています。例えば、源流の森は、恵みの雨を蓄え、土の流出を防止し、空気を浄化するとともに、谷筋から湧き出た水は、やがて川となり、大地を潤しています。また、源流は、あらゆる生命を育み支えてくれるかけがえのない自然の宝庫となっています。
 
 源流に残る豊かな森と水の恵みを守りながら、自然そのものや、その地域の風土や歴史、森に息づく生き物、自然での遊びなどについて学び、実際にその自然にふれ合うことで、そこに暮らす人々とともに私たち一人ひとりが、自然との関わりの答えを考え、見つけていこうとする取り組みを川上村では「源流学」と名付けています。
 
 辻谷さんが森と水の源流館で行っている源流学の普及活動の様子に加え、自然と共生するための自然とのふれ合いの大切さを説き、自然で生き抜く知恵や技の伝承を通じた自然保護にかける熱意を話していただき、参加者の好評を得ました。
 
  さらに、川上村の山林に自生する草花やきのこ、山に生息する鳥獣などを写真パネルを用いて紹介するとともに、山とともに生活するなかでのユニークなエピソードを交えて、会場は笑いと和やかな雰囲気に包まれました。
 

第2分科会 「食の安心・安全・安定をめぐって」

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 分科会の助言者、報告者から次のような提起・報告があった。
 
田中真弥さん(京滋有機農業研究会代表幹事)
 家族7人で70アールの畑で葉物野菜を中心に有機農業をしている。好きな言葉に、京田辺市一休寺の碑文で「諸悪莫作。衆善奉行」がある。諸々の悪い事をやめて、良い事を行えば、おのずと自らが美しくなる。人間の生き方だが、畑の作物も同じだと思っている。
 良い野菜を育てるために心がけている事は、①害虫だからという理由だけで排除しない、②畑は自分にとって心地よい場所かを考えること、③お産は女性にとって生理現象であるのと同じに、農業でも野菜が自力で命をつなぐ力を持っていること、④自然というかけがえのないものを大切にすること。このような考えをもとに農業技術を構築している。
 
内田順子さん(岡山県和気学校給食共同調理場栄養教諭) 
 岡山県和気町は人口15000人。給食で使用されている米は100%和気町産である。幼稚園、小・中学校の給食に地元農産物を供給し、子供たちに農産物のおいしさと農業の必要性を知ってもらう食育と、町をあげて地産地消の推進に取り組んでいる。昨年、農協、生産者、町産業振興課、教育委員会、調理場職員で「学校給食地産地消推進協議会」が設置された。これにより、地元農産物が安定して給食に使用できるようになった。昨年度、岡山県産の農産物の使用割合が61.4%で、和気町が県下で1位となった。
 地元の食材を使用することで、子どもたちは、給食を感謝して残さず食べようとするようになり、農家からは、子どもたちへ収穫体験の誘いや一緒に給食を食べる機会ができるなど、学校と地域の連携が深まってきている。
 
山浦康明さん(日本消費者連盟共同代表運営委員)
 消費者庁は、食品表示一元化のための検討会を設置し、8月に報告書が出された。しかし、その内容は、加工食品の原料原産地表示の拡大や遺伝子組み換え食品、食品添加物の表示義務化などにおいて、事業者側に偏ったもので、期待はずれとなった。消費者のための食品表示を求めて、運動を継続させていく必要がある。
 また、4月からの食品の放射能の新たな基準値は、国際的に見ると高いものが多く、可能な限り低くさせるべきである。
 
小泉佳久さん(コープ自然派事業連合理事長)
 なぜ日本では有機農産物が1%もないのか。韓国は10%もある。有機農産物は低品質で高価格のイメージが強い。そこをどう覆していくのか。コープ自然派では、徳島県に「小松島有機農業サポートセンター」を開校し、地元行政とタイアップし、就農訓練準備センターを設立させた。
 私たちの有機農業は、高品質・多収穫を考えている。連作障害対策をし、野菜で年間3~4作連作すれば必ず儲かる。酪農では、1リットル245円の国産自給飼料の牛乳生産や、高知県で粗放的な山地酪農に取り組んでいる。
 
 討論では、TPPに対してどう対処するかについて、田中さんは「TPPの市場原理に抵抗はあるが、それに負けないだけの自分の農業に自信がある」、内田さんは「輸入農産物の安全性と栄養価に問題があるし、食育の観点からも生産者の顔が見えず良くない。できるだけ地場のものを使いたい」、山浦さんは「デフレが進行し、非正規雇用がさらに増える。アメリカの緩い基準が押しつけられ、食の安全が奪われる」、小泉さんは「TPPに参加すれば日本農業は潰れる。あくまで反対だ。農家一戸当たりの耕地面積は日本は1.9ヘクタール、アメリカは200ヘクタール、オーストラリア3000ヘクタールと、大きく違う。TPPに備えて地域からどう反撃していくのか考える必要がある」とそれぞれ答えた。
 総選挙を控え、TPPによる農産物自由化問題に論点が集中した分科会となった。
 

第3分科会 「食料・農業・農村政策をめぐって」

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  はじめに助言者の大野和興さん(農業ジャーナリスト)が「グロ-バル化といわれる中で日本の食料・農業・農村政策はどのように対処したらいいのか。所得補償制度等だけで農業・農民を守れるのか。確かな農業政策とは何かが問われている。また、農村は高齢化・過疎化が進み、耕作放棄地も増加の現状にある。農村・農民政策も必要だ。しかし、経団連はTPPの推進を打ち出し、規模拡大、規制緩和をして、企業が参入して強い農業をつくるという動きになっている。地域から確かな農業、暮らしを積み重ねる実践が必要だ」と述べた。
 
 地域の具体的実践の報告として、京都府南丹市の「八木バイオエコロジーセンター」の施設長の清水由紀夫さんが「日本初の家畜・食品廃棄物を利用したメタン発酵施設」について報告した。家畜排泄物と食品残渣を原料とし、電気と熱と肥料と水に変える日本で初めての試みとなった施設の概要を説明し、開業から14年を経過した課題について報告した。
 
 地域報告の2つめに神戸市にある松本NGKグループ営農グループ事務局長で自治体農ネットOB会事務局長の奥井重柾さんが、冬に田んぼに花の種を蒔く「花田んぼ」で地域活性化を図っている事が報告された。この営農グループでは、お米のブランド化や都市住民との交流、地産地消の推進も図っているとの報告があった。
 
 農林水産省の大臣官房政策課上席企画官の大島英彦さんが「我が国の食料・農業・農村政策について」報告し、食料の需給状況、農業政策、TPPなどの動きについて説明した。
 
 質問や討論では、秋田県大潟村に入植した農民からは戦後の農業政策やTPP問題について意見が出されたほか、放射能による農作物汚染、営農組合や都市農業での後継者問題、農業が果たす環境保全などで、活発に意見や質問が出された。
 
 助言者の大野さんからは「グローバリゼーションやTPPなどが迫られる中で、どんな政策を求めていくかが問われている。規模拡大一辺倒ではなく、地域が自立できるように、それに見合った適切な規模を考えることが必要だ。また、地域の農民や農村問題を考えることから世界の食料や農業を見ていく視点も必要だ」と指摘があった。
 
 最後に「地域からの具体的実践がグローバリゼーション、TPP問題への対抗軸になる。次回の全国集会でも具体的な地域の実践を持ち寄って討議しよう」とのまとめを確認して終了した。
 
 

第4分科会 「森林・水を中心とした環境問題をめぐって」

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  「被災地では復興に向け水・持続可能な林業・農業のもとでの生活再建が大きな課題」との全水道管野副委員長の提起で開会。自治労の山本公営企業局長が「福島第2原発に水を供給している双葉広域水道局で委託者は全員避難し直営で職員が運転管理している。人口は10分の1に減少し、経営は厳しい状況だが、放射線に係わる労働安全確保で前進もある」との報告も交え、「次の国会で水循環基本法の成立を期したい」と挨拶した。
 
 福井直幹さん(連合社会政策局部長)が「水基本法(仮称)」の制定に向けて」と題し講演した。世界の水事情と日本の水問題、連合のめざす水基本法の目的や「良好な水環境を享受する権利や地下水含め水は公共財、流域・広域的な水政策は国土保全の要であり公共の福祉」等の基本理念や基本施策、民主党マニフェストに水基本法制定が掲げられたことなど、法制定に向けた最近の動向についても紹介し、「水政策は連合のめざす『働くことを軸とする安心社会』の基盤をなすもの」と訴えた。
 
 続いて、安井健太さん(自治労和歌山県本部田辺市職員組合)より、「台風12号の記録」と題して報告を受けた。昨年8月に襲来した台風12号は紀伊半島を中心に豪雨被害をもたらしたが、田辺市本宮町における人的被害や家屋損壊に加え、道路の寸断、停電、電話・水道の不通などライフラインの寸断といった被害状況について、写真を交えて迫真の説明が行われた。さらに、この被害を踏まえて、支援物資の効率的な配布や非常持出品のリストアップとともに、弱者の避難介助や防災意識の町内自治会単位での共有など、災害への備えについての提言を受けた。この提言に対しては、地震や津波など他の災害時の対応についても示唆に富んだものであるとの意見が出された。
 
 助言者の神田浩史さん(AMネット理事、西濃環境NPOネットワーク副会長)から「1990年代の欧州での水の民営化を契機に国際的な水の議論が動き出したが、NGOや労働組合の働きかけもあって、2010年に国連の場で水は基本的人権であるとの合意が得られた。今後、水問題など様々な課題を検討する場合は、住民参画促進を通じて政策立案の過程で関わっていくべきだ。TPP問題は、農業、医療ばかりでなく、地域づくりが困難になるものだ」とコメントを受けた。
 
 最後に篠原明森林労連副委員長から「集会での討論だけに終わらせず、できることから取り組みを始めよう」というまとめをもって終了した。
 
 

フィールドワーク 「水上バスから見る水都大阪、大阪の環境について考えよう」

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 フィールドワークは「水上バスから見る水都大阪、大阪の環境について考えよう」というテーマで行われ、75人の参加者がありました。淀屋橋港から乗船し、大阪市中心部を流れる大川(旧淀川)を周航、大阪城港までの約1時間のコースで行われました。約4キロ下流が河口なので、川面の高さは海の干満に大きく影響されます。満潮時の橋を安全にくぐり抜けることができるように、乗船した水上バス「アクアライナー」は屋根の高さを上げ下げできるようになっています。
 
 はじめに浅尾公一さん(大阪市立環境学習センター「生き生き地球館」館長)よりレクチャーを受けました。大川は一時期「日本一汚い川」とも言われたそうですが、今では水質がかなり改善し、多くの魚類が棲んでいます。ただしブルーギルなどの外来種による生態系破壊の問題があるそうです。「生き生き地球館」では、子どもたちが楽しく環境について学べる展示のほか、「毎日何か環境についてええことやってる地球館」をスローガンに、さまざまなイベントを行っているとのことです。未来によりよい環境を残していくために身の回りからのとりくみを、とお話しになりました。
 
 コースの周辺に、「桜の通り抜け」で有名な造幣局大阪本局や、高層ビルの林立する大阪ビジネスパークを見ることができます。江戸時代には京・大坂を結ぶ三十石船などが行き交い、重要な水路として利用されていました。明治時代にはここ一帯に旧陸軍の砲兵工廠が建設され、約6万人が働く東洋一の軍需工場となりました。製造された兵器を運ぶためにこの大川が利用されましたが、もとの砲兵工廠からの水路は戦後埋め立てられ、トンネル入口を残すのみです。また、淀川水系は豊臣の時代から良質の飲料水として知られ、ここから汲んだ水を「水屋」が街で売り歩き、大坂の人々に好んで飲まれていたそうです。
 
 「天下の台所」として大きく栄えた大阪の歴史の一端に触れ、さまざまなかたちでその発展を支えた水環境の重要性を考えるきっかけとなるフィールドワークでした。

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