運動方針

2008年04月25日

2008年度 主な課題

以下は2008年4月25日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第10回総会において決定された活動方針です。

1. 全体(2008~09年)の基調について

  1. 私たちをとりまく情勢は、世界的な規模で、政治・経済・社会の全領域で大きく揺れています。それは古い枠組みが崩壊し、新しい枠組みの形成をめざしての過渡期の時代を迎えていることを表しています。そして現在は冷戦体制終焉以降約20年が経過するなかで、最大の変革の時代であることを意味しています。また私たち人類の生命の基本である地球環境は深刻な危機を迎えています。「平和・人権・環境」の旗を掲げる私たちとして、こうした事態を明確に認識し、新しい枠組み形成の一翼を担う必要があります。
  2. 国際情勢の特徴は、a)中東では、イラク・アフガン侵略戦争は泥沼化し、紛争は全域へと拡大し、イランの核開発への動きなどをめぐり軍事的緊張が高まっています。こうした事態のなかで、米国の「単独行動主義」を基本とする軍事的戦略は崩壊・支配力の低下によって、国連を中心とする国際的平和秩序の再確立への動きが大きくなっていること、b)東北アジアでは、米国の中国包囲網政策の見直しと、6カ国協議の前進にみられる米朝関係の前進など非核・平和体制確立への動きが加速していること、c)米国における民主党大統領選出を前提とした政権交代への動きの加速、イギリスのブレアからブラウンへの首相の交代、オーストラリアにおける労働党政権の誕生など、ブッシュ・ネオコン路線とそれに追従する政権の終焉が始まり、新たな政権が拡大していること、d)市場万能主義路線のなかで、世界的な貧困の拡大が深刻化する事態に対応して、「人間の安全保障」に基づくとりくみが拡大しつつあること、e)米国の世界経済支配の崩壊と経済危機の進行とBRICS諸国の台頭にみられるように世界経済の混迷が継続していること、f)「環境サミット」に代表される「地球環境の深刻化」とそれへの対応の動きが緊急に求められていることなどです。
  3. 国内情勢の特徴は、a)参議院での与野党の逆転、国会での与野党対決激化、厚労省、防衛省などの腐敗に代表される戦後の自民党政権とそれを支えた官僚体制が崩壊過程へ入り、新たな枠組みを求めて、野党、労働団体、平和団体、市民団体、市民の力が、大きく結集し、政権交代への流れが加速していること、b)福田自公政権は、ブッシュ政権追従による「イラク・アフガン侵略戦争」への加担、米軍再編成の強行実施、ミサイル防衛の強行、教育への介入、自衛隊海外派兵の恒常化の動きなど日米軍事一体化・解釈改憲・憲法改悪路線・戦争する国づくり路線を継続し、その路線へ対抗して、平和団体、市民団体、野党などの平和運動が強化されていること、c)市場万能主義路線と公的規制・公的サービスの解体を継続し、貧困・格差社会をさらに進行させ、矛盾と国民生活の破壊がさらに拡大し、それに対抗して「生活重視・ストップ・ザ・格差社会」の運動が高揚しようとしていること、d)政府・電事連は、原発推進・プルトニウム利用路線を継続・強行するなかで、原発運営管理システムの揺らぎと事故の続出、地震による安全神話の崩壊などの事態が進行し、原発関連施設
    立地県の市民、団体、脱原発団体、消費者団体などが、路線転換を求めて運動が高揚しようとしていること、などです。
  4. 運動体をめぐる情勢の特徴は、a)平和・民主主義運動の分野は、自公政権の「戦争する国づくり」めざしての体制づくりへ流れ全体への歯止めをかけ切れていませんが、平和団体、人権団体、市民団体、野党などの継続したとりくみと参議院での与野党逆転の事態もあり、一時的とはいえインド洋からの自衛隊の引き上げ、改憲の動きの減速、米軍再編成に対する地元の抵抗などの部分では、歯止めをかけ、反撃への態勢が強化されていること。また平和・民主主義の課題は多様に存在し、それぞれの課題ごと、それぞれの組織と運動、またそれを繋ぐ全国組織の連携によってとりくまれ、運動が大きく高揚しようとしていますが、課題実現のためには、それぞれの諸団体の組織と運動の強化と全体としての連携強化が必須であること。また、課題も国際的に拡大しており、国際的な反戦・平和運動の連携も必須であること。b)労働運動分野は、労働団体・連合の組織率の低下、権利未確立労働者への影響力の低下の現状から、そうした事態打開に向け、連合を中心に、組織拡大、労働分配率の改善、非常勤・臨時・派遣労働者のたたかいなど大きく運動が高揚し、市民的支持も集まろうとしていること、c)政治運動の分野は、参議院選挙における与野党逆転、国会における野党の奮闘による自民党政権の末期的症状の露呈、深刻化する国民生活に対する無策の露呈などにより、マスコミ世論調査でも福田内閣支持率が急落し、支持率が不支持率を下回る逆転状況となっています。そうしたなかで、衆議院解散・政権交代に向け、民主党、社民党など野党の運動が大きく高揚し、政権交代への展望が確実なものになりつつあること、また政権交代へ向け、野党の主体性強化と連携強化、連合など労働団体、市民団体、平和団体などの支援体制の強化が必須であることなどです。
  5. そうした情勢のなかで、平和フォーラム・原水禁の果たす役割はますます重要となり、私たちの頑張りにより運動を前進させる可能性が大きく拡大しています。
    平和フォーラム・原水禁は、引き続き、めざすべき課題として、a)人間の安全保障の推進と憲法理念の実現、b)核兵器廃絶と脱原発、c)循環型社会作りなどを掲げ、政策転換、政権交代を意識し、最大の平和団体としての組織と運動の強化と、市民団体、平和団体、連合などの労働団体、民主党・社民党などの野党との連携強化、また国際的な連携強化をはかり、課題の前すすめざして、全力でとりくみます。
    平和フォーラム・原水禁は求められる役割に対応するため、目的意識的にセンター的役割を果たすと同時に組織と運動の改革・強化をめざします。そして、a)運動の重点化、b)組織の強化・拡大、c)組織・運動の改革と強化、d)事務局機能の改革・強化を実現します。

2. 憲法改悪に反対し、憲法理念を実現するとりくみ

  1. 極端なタカ派右寄り姿勢を示した安倍首相(当時)は、憲法施行60年を迎えた2007年5月に「改憲手続法」を不十分な審議のもと強行成立させました。しかし、7月の参議院選挙で、選挙民は安倍内閣に対して明確な不信任を突きつけました。突如、政権を投げ出した安倍首相に代わって9月に誕生した福田康夫内閣は、「自立と共生」「野党との協調」を打ち出し、「低姿勢」を示しています。安倍政権・自民党が目論んでいた憲法審査会を発足させ、早ければ2011年にも自民党案に基づいて改憲案を発議するという路線は破たんし、自民党ペースによる明文改憲の政治日程は困難となりました。参院選後2回の臨時国会で憲法審査会は発足しないなか、「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は、衆参両院議長に、審査会の構成、運用を定める「審査会規程」の早期制定を求める衆参国会議員318人の署名を提出したり、新役員に民主党要人を加えたりしています(その後署名議員は353人に。自民282、民主26、公明35、無所属10)。「改憲手続法」は、参議院の憲法調査特別委員会で18項目にもおよぶ附帯決議が行われたように、制定を急いだ側自身が問題点が多いことを認めています。憲法審査会の設置に反対し、改憲手続法について、立憲主義に基づいた一からの審議やり直しをさせることが必要です。
    問題は、参議院選挙で大敗しても、福田内閣になってからも、なし崩し的な解釈改憲の動きは止まっていないことです。米軍再編、新テロ特措法・イラク特措法などの自衛隊の海外派兵、教育基本法「改正」に続く教育の国家統制や監視社会化の強まり、戦争美化の歴史の歪曲、生存権をはじめとした人権軽視など、福田自公政権は依然として「戦争する国づくり」をすすめています。「集団的自衛権の行使」を実行可能にするため設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」も存続されています。
    平和フォーラムは、憲法の前文・第9条の平和主義、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で定めた憲法の核心の改悪に反対するとともに、憲法理念の実現をめざすことに基本的なスタンスをおきます。参議院における与野党逆転、さらに予想される衆議院選挙での政権交代をも見据えながら、変革の時代に適した憲法の理念に基づく政策実現を図っていきます。東アジアの緊張緩和の進展という状況をも活かして、平和環境醸成のとりくみや、人々の「命」や生活を重視する「人間の安全保障」の政策実現のとりくみを広げていくために、「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」をすすめます。
  2. さらに、憲法前文・9条改悪の動きに対抗して、憲法理念を実現し立憲主義を確立するには、日米軍事同盟・自衛隊の縮小・改変を展望することが不可欠です。そのため、a)非核三原則(原子力推進艦艇の寄港をふくめた非核証明要求)、b)武器輸出三原則(対米武器技術供与をふくめた厳格運用)、c)宇宙の平和利用限定原則(ミサイル防衛からの撤退)、d)集団的自衛権(軍事同盟と海外派兵)の禁止、e)攻撃的兵器と攻撃的軍事戦略の不保持、f)文民統制および市民監視の徹底(オンブズマン制度導入など)、g)非軍事的国際貢献の積極的推進、h)人間の安全保障の具体的展開などを基本政策の原則とした「平和基本法案要綱」を作成・具体化する作業が必要です。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 憲法前文・9条改悪を許さず、平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざすとりくみ

  1. 「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」を、戦争被害の悲惨な実相などを明らかにしながら「軍事力による平和」という逆行した流れを許さず、人々の「命」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていくキャンペーンとしてすすめます。毎月の定例行動(9の日行動)や全国共同行動などを通じて、地域の運動と組織・財政づくりを図ります。キャンペーン・グッズとして、ワッペン、パンフレット、リーフ、ポスター(9条ポスター)などの作成、増刷し、各地で活用します。
  2. 憲法理念にもとづく現時点での安全保障を確立するとりくみとして、日米安全保障条約の持つ問題点(とくに新ガイドライン以後、現在の米軍再編など)、国連中心の安全保障、「人間の安全保障」などに関わる課題を整理するとともに、別項の平和課題をはじめ運動方針全体と連携したとりくみをすすめます。
  3. 衆参両院の憲法審査会の設置に反対し、改憲手続法案の参院特別委での18項目特別決議などを生かし、初めからの審議やり直しを求めるとりくみをすすめます。
  4. 5月3日の「憲法施行61周年記念集会」(東京・日本教育会館大ホール)をはじめ、憲法記念日を中心に5月を憲法月間とした全国各地で多様なとりくみをすすめます。また、ピースボートなどが中心になってすすめている「9条世界会議」(5月4-5日)に参加・協力します。
  5. 自治体などに対して、憲法月間にその理念を生かした行事などの実施を求めます。
  6. 憲法問題の論点・問題点整理を行うため、適宜、課題に応じて「憲法学習会」を行います。9条キャンペーン・プロジェクトと連携して、中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。。
  7. 「憲法問題資料集」(コピー集)やホームページでの資料集積を引きつづきすすめます。よりリアルタイムで豊富なものとして、月1回発行・提供をめざします。
  8. 積極的に民衆自らの憲法理念を育て築いていくとりくみをしてきた「市民版憲法調査会」などの学習会を紹介し、連繋を強めます。

2) 平和基本法の確立に向けたとりくみ

  1. 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し立憲主義を確立するとりくみとして、日米軍事同盟・自衛隊縮小、平和基本法の確立、日米安保条約については、平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
  2. 「平和基本法案要綱」を作成と討議をすすめます。そのため、民主党・社民党など政党への要請をすすめます。
  3. パンフレット「平和基本法」(提案の意味、要綱本文、解説・補足)を発行し、各地で活用します。

3) 憲法理念実現をめざす第45回大会(第45回護憲大会)の開催について

  1. 本年度の「憲法理念実現をめざす大会」(護憲大会)は、憲法をめぐる動きが重要な局面にあることを踏まえて香川県高松市で下記日程で開催します。
    11月1日(土)午後 開会総会(香川県民ホール)
    11月2日(日)午前 分科会(高松市内)
    11月3日(月)午前 閉会総会(香川県民ホール)

3. 米軍再編・戦争する国づくり・対テロ戦争に反対するとりくみ

  1. 米国はいま、世界的規模での国防態勢の見直しをすすめています。その目的はa)米軍の組織運用に柔軟性を持たせて少ない軍隊で広範な領域をカバーできるようにする、b)そのために同盟国の軍隊を積極的に活用する―にあります。日本における米軍再編の内容はa)在日米軍基地を再編・強化する、b)在日米軍基地と自衛隊基地を一体化して使用する、c)米軍と自衛隊が一体となって活動する、d)対テロ戦争・弾道ミサイル防衛・大量破壊兵器拡散防止に日米が共同でとりくむ―というものです。日米両国政府は2007年に入り、在日米軍再編の具体的な動きを開始しました。沖縄県名護市のヘリ基地建設では5月に、防衛省が海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を投入して、基地建設の前提となる環境調査のための機材設置を強行しました。キャンプ座間では12月に、米陸軍第1軍団前方司令部が発足しました。米戦闘機の訓練移転は、7回実施されました。民間港に入港した米軍艦船は28隻です。
    2007年度に入り、日本政府はミサイル防衛システムの配備を開始しました。航空自衛隊はPAC3を3基地に配備し、海上自衛隊はイージス艦「こんごう」にSM3ミサイルを搭載しました。米国ミサイル防衛局のホームページには米国がミサイル防衛を推進するにあたって、a)日本がミサイル防衛システムを購入すること、b)日本が生産コストを負担すること―が重要であると記載されています。日本に対してミサイル防衛の導入を勧める米国のねらいが、自国負担の軽減にあることは明らかです。
  2. 在日米軍ジェームス・ケリー司令官は、横須賀市民の多くの反対を無視し、退役する通常型空母キティホークの後継艦として原子力空母ジョージワシントンを、2008年8月19日横須賀を母港として配備すると表明しています。横須賀の蒲谷市長は、在日米軍の問題は国の専権事項であるとの立場で、原子力空母母港化を追認し、2008年の三浦半島地域連合でのあいさつで、「財政赤字に悩む横須賀市には、市民のサービス向上の上で原子力空母母港化にともなう補助金は重要」との認識を明らかにしています。
    このようななかで、「原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会(以下全国連絡会)」「原子力空母の横須賀母港化を止めよう神奈川実行委員会(以下神奈川実行委員会)」「原子力空母の横須賀母港化を考える市民の会(以下市民の会)」が結集する「原子力空母の横須賀母港化を問う住民投票を成功させる会(以下成功させる会)」は、2006年11月から2007年2月にかけてとりくんだ、「原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例」の制定のための署名に再度とりくむこととし、前回を上回る6万筆を目標に3月6日から4月6日の1ヶ月を署名期間としてとりくみをすすめました。
    前回のとりくみ後、横須賀市議会では、議員による住民投票条例制定の勉強会が続けられています。市民の65%が原子力空母母港化反対、74%が住民投票条例は必要と考えているとの民間機関調査結果もあり、国が原子力空母の安全性について住民を納得させる説明ができない以上、住民の命と生活を守る地方自治の立場からも「原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例」を制定し、市民の意見を明確にする責任が横須賀市議会にあると考えます。また、原子力空母の停泊する横須賀港の12号バースは、通常型空母を前提に延長工事が行われ、原子力空母が使用するには横須賀市との再協議が必要となっています。このことは国も認めており、蒲谷市長の去就が注目されます。空母問題が国の専権事項であっても、蒲谷市長には、地方自治体の長として住民の生命と安全を守る義務があり、そのことを国に求める責任があります。市長がその責任をまっとうするよう、住民投票も含めさまざまなとりくみをすすめる必要があります。
    また、予定される衆議院議員選挙にむけても、原子力空母の母港化が争点にされるよう、政府・国への撤回要請、議員への働きかけを強化しなければなりません。
    安全性が確立されないなかで、国の専権事項と言うだけで強行配備されようとする原子力空母問題は、地方自治そして民主主義の根幹に触れるものと考えます。平和フォーラムは、原子力空母横須賀母港化阻止のたたかいを、今年度のとりくみの中核とし、全国連絡会、神奈川実行委員会と連携し、「現地闘争本部」を設置するとともに7月19日に予定する「原子力空母横須賀母港化阻止全国集会」を中心に、総力をあげた行動を配置してたたかいをすすめます。空母の交代式などを利用した米国本国に対する情宣・配備見直しの要請、重要課題となる住民投票条例制定へは、横須賀市長・市議会への要請を趣旨とした全国署名を中心にとりくみをすすめます。6月に予定されるキティーホークとジョージ・ワシントンの交代式に現地ハワイに要請団を派遣するなど、政府・衆参両院議員などへの要請、アメリカ大使館および在日米軍司令部などへの要請行動を配置するとともに、海外メディアへのとりくみも強化します。原水禁世界大会国際会議の横須賀開催(8月2日を予定)を追求するとともに、8月19日に入港が強行される場合は、座り込み行動や抗議集会などを配置し徹底したとりくみを展開します。
  3.  政府は2007年4月、米軍再編特措法を成立させました。在沖海兵隊のグアム移転のための費用支出と、米軍再編を受け入れた自治体への再編交付金の支出を定めたものです。法律の運用にあたり政府は、名護市・座間市・岩国市など、再編反対の自治体には交付金を支出しないと決定を下しました。2008年1月には新テロ特措法が、衆議院本会議での再可決によって成立しました。国民保護法に基づく実働訓練への自衛隊の参加、武装した自衛隊員の市街地パレードや訓練、新宿御苑でのPAC3展開も行われました。また陸上自衛隊による、平和運動団体に対する違法調査も明らかになりました。自衛隊による市民生活への侵食が目に見える形で始まっています。
  4. 沖縄県では2008年2月10日、米海兵隊兵士による、女子中学生への性暴力事件が発生しました。2月18日にも、米陸軍兵士が、フィリピン人女性への性暴力事件を起こしています。海兵隊による少女性暴力事件がおきた1995年から今日までの間に、沖縄県内で発生した米軍兵士による性暴力事件は16件です。米兵の凶悪犯罪は、沖縄だけではありません。2007年10月には広島市で、海兵隊が兵士集団で、未成年の女性に性暴力を加える事件がおきました。2006年1月には横須賀市で海軍兵士が、強盗目的で女性を殺害しています。交通事故などを含めた、米軍関係者による事件・事故は、2006年には1549件も発生しています。
    米兵関連犯罪では1次裁判権が米軍側にあること、米軍関連事故では加害者である米軍兵士に民事的な損害賠償への支払い能力がなく、被害者が補償を受けられないことなどが、問題になっています。そこには、在日米軍兵士の特権的地位を認めた「日米地位協定」の問題があります。米軍兵士による事件・事故が起こるたびに、被害者からは地位協定の改定が求められますが、日本政府は「改正」には消極的で、「運用改善」で対処しようとしています。
    私たちの目標は、在日米軍基地の縮小・撤去です。しかし、それ以前の段階でも、米軍関連の事件・事故を減少させるための方策を、日米両国政府に対して要求していかなければなりません。とりわけ、日米地位協定の抜本的な改定と、米軍兵士による損害賠償制度を確立することが重要です。
  5. アフガニスタン侵攻以来の米軍の死者は487人、同盟軍の死者は293人です(2008年3月現在)。アフガニスタン人犠牲者の数は明確ではありません。NGOや現地メディアによると、カルザイ政権の支配は首都カブールに限定され、それ以外はタリバン前政権派が支配を強めているとのことです。タリバン前政権派に対する米同盟軍の攻撃も激しさを増し、多くの民間人が犠牲になっているようです。イラク侵攻以来の米軍の死者は3990人、同盟軍の死者は308人です(2008年3月現在)。世界保健機構(WHO)は開戦から3年間のイラク人死者が、15万1000人と発表しました。イラクは米同盟軍とマリキ政権を支えるシーア派主流派、旧フセイン派とスンニ派、シーア派反主流派による内戦状態です。米国は治安維持をイラクに引き継ぐ意向ですが、占領抵抗勢力の攻撃が激しく駐留兵力を削減できません。
  6. 安倍晋三首相(当時)は就任以来、経済的には新自由主義、政治的には戦前回帰を掲げて、閉塞した日本の現状を突破しようとしました。ところが2007年7月の参議院選挙で敗北、テロ特措法の延長にも失敗して首相を辞任しました。防衛省では、米軍再編を推進した守屋武昌前事務次官が、防衛商社との汚職で逮捕・起訴されました。
    平和フォーラムは、米軍再編反対を2007年平和運動の最大課題とし、現地での反基地運動の強化、全国の連携、民主党・社民党への働きかけをすすめました。しかし安倍退陣・守屋疑獄発覚があったにもかかわらず、米軍再編を止めることができませんでした。いま防衛省は、いっそう強権的に米軍再編をすすめています。
    私たちは、全国運動としてとりくむ課題の絞込みと、その課題に集中することで情勢を転換していかなければなりません。与野党逆転の参議院で政府を追い詰めるために、民主党や社民党への働きかけを強めることも重要です。長期化する不況と社会格差の拡大のなかで、労働者・市民の反政府感情は高まっています。そうした世論動向と私たちの運動が結びつけば、日米安保の強化と米軍再編問題を止めることも可能になるはずです。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 在日米軍再編に反対するとりくみ

  1. 2008年8月に米軍が予定する原子力空母の横須賀母港化への反対を、最重点のとりくみ課題にします。(詳細は次項)
  2. 横田基地への航空自衛隊航空総隊の移駐、キャンプ座間への陸軍第1軍団の移駐、岩国基地への空母艦載機部隊の移駐、名護市辺野古沖への新基地建設に対しては、全国運動としてとりくみます。
  3. ミサイル防衛(MD)にともなう、航空自衛隊基地へのPAC3ミサイルや専用レーダーの配備、イージス艦へのSM3ミサイルの配備などには、現地運動組織のとりくみを基本とし、情勢に応じて全国への呼びかけをおこないます。日米両国政府によるミサイル防衛の推進は、東アジア地域の軍拡につながります。平和フォーラムは、野党と協力してのミサイル防衛反対の対政府交渉を進め、また東アジア各国の平和団体との連携を強めます。
  4. 上記以外の米軍再編関連のとりくみ、米軍戦闘機の訓練移転、米軍艦船の民間港湾入港、在沖海兵隊の砲撃演習訓練移転などについては、現地運動組織のとりくみを基本とし、情勢に応じて全国への呼びかけを行います。
  5. 米軍再編に反対する自治体の首長や議会と、連携を強めます。
  6. 沖縄など米軍基地問題懇談会を軸に、民主党・社民党・無所属議員と協力し、政府・国会への働きかけを強めます。
  7. 組織内で構成する「全国基地問題ネットワーク」、市民団体と平和フォーラムで作る「非核・平和条例を考える全国集会」や「沖縄米軍基地問題連絡会」、市民団体「日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会」、各地の反戦・反基地運動団体との連携を強め、重層的な反基地運動をすすめます。
  8. 沖縄「5.15平和行進」に、全国からの参加を呼びかけます。
  9. 各地の爆音訴訟などの基地被害裁判や、米軍関連犯罪被害者の支援に協力します。
  10. 軍隊による女性への人権侵害に対し、安保理決議1325を活かしたとりくみをすすめます。

2) 原子力空母の横須賀母港化に反対するとりくみ

  1. 横須賀市・神奈川県への要請行動の強化など、原子力空母母港化反対の各方面への要請を行います。
  2. 横須賀市、神奈川県、政府(環境省など)へ原子力空母母港化の撤回を求めて要請行動を行います。
  3. 国会議員への要請、国会における働きかけを行います。
  4. 空母の交代式などに際し米国本国への要請団を派遣を検討するなど、アメリカ大使館、在日米軍司令部、海外メディアへの働きかけを強化します
  5. 連合と連携して、より広範な運動の展開にとりくみます。
  6. 「原子力空母の横須賀母港化を許さない全国連絡会」とともに、現地闘争本部を設置し、横須賀の運動に連帯してとりくみます。
  7. 住民投票条例制定については、「全国連絡会」「神奈川実行委員会」と連携し、前回を超える成功に向けてとりくみをすすめます。市長・市議会への条例制定を要請する全国署名その他に取り組みます。
  8. 原子力空母の危険性・環境影響への懸念などを中心に、世論に対する情宣にとりくみます。
  9. 原子力空母母港化阻止全国集会(7月19日)の成功に向けて、総力を挙げてとりくみます。
  10. 原子力空母の入港が強行される場合は、座り込み行動や集会その他の緊急行動にとりくみます。

3) 「戦争する国づくり」に反対するとりくみ

  1. 自衛隊海外派兵恒久法の成立に反対します。
  2. 国民保護法に基づく実働訓練への自衛隊の参加、また市街地での自衛隊の訓練、PAC3の展開訓練に対して、当該地区の組織を中心に反対運動を行います。
  3. 防衛省・自衛隊による平和運動に対する調査活動など、自衛隊の違法活動に対して、摘発と抗議をすすめます。
  4. 自衛隊員の人権を守る運動を、市民団体や国会議員と協力してすすめます。

4) 米軍事故・事件に対するとりくみ

  1. 日米地位協定の抜本的改正を求めます。そのために米軍基地を抱える地域の運動組織や、民主党・社民党などと協力を進めます。
  2. 米軍兵士による損害賠償法の成立をめざします。そのために、米軍人・軍属による事件被害者などと協力を進めます。

5) 米国のすすめる対テロ戦争に反対するとりくみ

  1.  WORLD PEACE NOWなどの市民団体と協力して、イラク戦争に反対するとりくみをすすめます。
  2. アフガニスタンやイラクで活動するNGOへ、支援をすすめます。

6) 米軍基地と戦争に反対する国際連帯の推進

  1.  「世界反基地ネットワーク」ならびに「アジア太平洋反基地ネットワーク」との連携を強めます。
  2. 在沖海兵隊のグアム移転に反対し、「チャモロ・ネイション」などグアムの平和運動との連携を強めます。
  3. 韓国の平和運動団体との連携を強めます。

7) 宣伝活動の推進

  1. チラシやリーフレットなど、宣伝用の資材を定期的に作成します。
  2. 「STOP!!・米軍・安保・自衛隊」のサイトを通して、さまざまな情報を提供します。

4. 東アジアの非核・平和の確立に向けたとりくみ

  1. 小泉・安倍とつづいたタカ派のアジア軽視内閣で、中国・韓国・朝鮮などとの関係は悪化していました。福田内閣への交代によって対中関係は、若干改善されたものの、基本的な状況は変化しておらず、平和フォーラムは東アジアとの友好活動をいっそう強化する必要があります。
    なかでも朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係正常化が重要です。北朝鮮の核開発をめぐる6ヵ国協議は、2007年は2月13日に初期段階、10月3日に第2段階の措置の合意と大きく動きました。また、米朝協議の進展や、7年ぶりの南北首脳会談の実現、朝鮮半島休戦体制を平和体制に転換するための当事国間論議が始まる動きなど、全体として多くの点で前進を見ました。2007年末からは韓国で南北融和よりも核問題解決強調の李明博が大統領に当選したことや、3核施設を2007年内に無能力化は実現していないなど、若干の停滞しているものの、半世紀以上つづいた朝鮮半島の民族の分断と戦争状態の解消という方向に大きな変化はなく、米国もテロ支援国家指定の解除からさらに米朝国交正常化へと進展しようとしています。
    福田首相は当初、対話姿勢を示すかに見えましたが、北朝鮮に対する経済制裁を延長し、朝鮮総聯関係団体、関係者への抑圧を続けています。日朝国交正常化に向けた作業部会が再開されたものの、進展はありません。日本政府が制裁と抑圧・弾圧の姿勢を転換しない限り、交渉は前進しないことは明らかです。私たちは、対話と協調、東アジアの平和環境醸成の点でも、世紀を超える朝鮮半島との不正常な状態を変える可能性をもつ「日朝ピョンヤン宣言」を基本に、国交正常化に向けた糸口を切り開いていく必要があります。
  2. 東北アジアはいまなお対立構造から脱していないなかで、戦前、韓国・朝鮮・中国などに植民地支配と侵略戦争を重ねた日本の政府と市民は、過去の清算に向け努力し、敵対意識の解消に尽くすことが重要です。しかし、日本は何よりも必要な戦争の歴史と責任に関する認識についての無理解であるとともに、近年の偏狭なナショナリズム的傾向のなか歪曲が広げられ、これら未解決の問題での真摯・誠実な対応ができていません。「慰安婦問題」について日本の首相に公式謝罪表明や歴史教育を求める決議は、2007年7月の米下院につづいて、11月にはオランダとカナダの各下院、12月には欧州議会でも可決されるなど、国際的に人権侵害としての認識が広がっています。決議の求める公式謝罪表明を実施させるとりくみが必要です。
    対外的な戦後補償については、この間、行政・立法・司法ともとりくみと判断を後退させ、司法では最高裁は、事実認定をしながら司法救済の道を閉ざす判決を行いました。1990年代になってアジア地域の被害者が国や企業を相手に戦後補償を求める裁判が続きましたが、政府は被害事実の認定を避け、裁判所は被害事実を認定するものの時効などで請求を棄却してきました。2007年4月27日の中国人強制連行西松訴訟の最高裁判決は、事実認定をしながら、1972年の日中共同声明を根拠に司法救済の道を閉ざし、他の中国関係の訴訟もこれに相次ぎました。しかし、国際法にも人道にも反することは明白です。事実認定をもとに、政府・企業などに具体的な課題にとりくませていくことが重要です。たとえば、日韓首脳会議で調査が約束された朝鮮人徴用者の遺骨返還事業などは喫緊の課題です。また、民間人を切り捨て放置した国の責任を問い、戦後62年を経過して提訴された東京大空襲訴訟などへの支援・協力もすすめます。さらに、在外被爆者問題についても、司法で被爆者援護法の厳格な適用を求める判決が積み重ねられていますが、早急に解決しなければなりません。
  3.  2007年から朝鮮人強制連行真相調査団や在日朝鮮人人権協会とともに開始した在日朝鮮人歴史・人権週間のとりくみは、国連人権委員会ディエン報告書(2006年1月)が指摘した日本の差別についての歴史性を明らかにするものです。2008年は、戦後直後に在日朝鮮人学校閉鎖に抗議し、1948年4月24日に戦後唯一の非常事態宣言下にまでいたった阪神教育闘争の60周年を文化的ジェノサイドという視点から関西中心の西日本で春に行うのつづいて、夏・秋には、1923年9月1日の関東大震災と朝鮮人虐殺から85周年で、軍と自警団による虐殺についての国の責任と謝罪、真相調査を日弁連が80周年時に政府へ勧告した点を、改めて問い直すとりくみを関東を中心とした東日本各地で行います。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 日朝国交正常化に向けたとりくみ

  1. 在日の人権確立や、北朝鮮の人道支援のとりくみをすすめます。
  2. 韓国の平和・人道支援運動との交流・協力をすすめます。
  3. 日本の平和・非核・朝鮮問題・在日人権団体・グループのゆるやかなネットワークとして「東北アジアに非核・平和の確立を、日朝国交正常化を求める連絡会」(略称・東北アジア連絡会)による月1回ペースの学習会・会合、外務省要請などの行動や集会、教宣物のとりくみ。海員組合などとの訪朝団呼びかけ5団体による交流を行います。
  4. 日朝国交促進協会(会長・村山元首相)の月例研究会などのとりくみに参加・協力します。
  5. 在朝被爆者支援連絡会など原水禁のとりくみと連携・協力し、民間交流の道を広げます。
    ※東北アジア非核平和地帯のとりくみ方針は別項参照

2) 「過去の清算」と戦後補償の実現に向けたとりくみ

  1.  日韓首脳会談で約束された韓国・朝鮮人強制連行被害者などの遺骨調査、遺族への早期返還実現に向けた「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」のとりくみをすすめます。
  2. 戦後補償をとりくむ市民団体や、歴史の事実を明らかにする立法(国立国会図書館法改正、恒久平和調査局設置)を求める市民グループとの共同のとりくみを行います。
  3. 中国人戦争犠牲者について司法救済の道は狭まれているものの、国際法や道義的責任にもとづき企業・国に謝罪と補償を求める戦後補償のとりくみに支援・協力します。
  4. 米下院「慰安婦問題」決議をはじめ国際的に広がる日本の首相の公式謝罪表明要求を、首相が真摯に受けとめ実行することを求めるとりくみをすすめます。
  5. 戦争・戦後責任と戦後補償をまなぶ国際交流・視察団の派遣を検討します。
  6. 署名の紹介、協力など東京大空襲訴訟の支援を行います。
  7. 首相の靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、8月15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑で戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会を行います。
  8. 2月11日を、1967年に戦前の「紀元節」を「建国記念の日」とした問題点を忘れず、この日に歴史認識に関わる集会を行います。

3) 「在日朝鮮人歴史・人権週間」のとりくみ

  1.  4月24日の阪神教育闘争60周年前後には西日本で、9月1日の関東大震災と朝鮮人虐殺85周年前後には東日本で在日朝鮮人歴史・人権週間の行動を各地でとりくみます。
  2. 同人権賞などに向けて、青年・若い世代のとりくみを発掘紹介します。
  3. 各都道府県組織の関係する日朝運動組織関係者による全国交流を行います。

5. 核兵器廃絶に向けてのとりくみ

  1. ヒロシマ・ナガサキの原爆投下から63年。これまで被爆体験を原点に核廃絶と世界の恒久平和を訴え続けてきましたが、いまだ人類は、2万7000発とも言われる核兵器の存在のなかで、核と戦争の脅威から解き放たれていません。2005年のNPT再検討会議では、ブッシュ政権の単独行動主義による核軍縮義務への消極的な態度により、2000年のNPT再検討会議で合意された13項目などの核軍縮の課題を前進させることができませんでした。さらに米印原子力協力の動きなど、NPTによってかろうじてささえられている核軍縮・不拡散の国際的枠組みが危機に直面しています。
    これまでアメリカが発表した国家安全保障戦略では、先制攻撃戦略は堅持され、単独行動主義の姿勢をいっそう強め、国際的な法や世論を無視し、好戦的な姿勢を貫きながら、イラクやアフガニスタンへの武力侵攻を行い、各地で憎しみや暴力、報復の連鎖を生み出し続けています。2005年の「統合核作戦ドクトリン」では、地域紛争でも核兵器の使用も述べており、いまだ核の力を保持しようとしています。そして2006年の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告でも、先制使用も含め核兵器と非核兵器の一体的運用の促進を掲げています。さらにブッシュ政権は、小型核の開発研究として「信頼できる交代用核弾頭」(RRW)計画をすすめようとしていましたが、現在、議会で否決されています。しかし、引き続き警戒が必要です。そのうえABM条約(対弾道ミサイル制限条約)の一方的脱退・破棄に続き、同盟国とのミサイル防衛構想(MD)の推進など新たな核・ミサイル軍拡の流れを生み出そうとしています。
    また、米ロなど核大国はいまだ未臨界核実験を繰り返し、核警戒態勢も維持され偶発的核戦争の危険性もかかえています。さらに「削減」された核弾頭を将来に備えた「貯蔵」に回すなど核軍縮の実態もともなっていません。
    2006年10月9日の北朝鮮による核実験は、東北アジア地域はもとより世界全体にも緊張を激化させる暴挙でした。しかし、2007年2月13日の6カ国協議で、朝鮮半島の非核化にむけて各国がとるべき初期段階の措置を決めた合意文書が採択され、対話と協調を基調にしながら平和的な解決に向けて動きが続いています。2007年には初期段階の合意、米朝対話の進展、南北首脳会談の実現など多くの進展がありました。一方で、2007年内の3施設の核の無能力化などがいまだ実現していないなど課題は残されています。6カ国協議のなかで、日本は拉致問題を盾に経済制裁を継続させており、6カ国協議の進展を複雑にしています。今後の協議の推移に注目しながら、これまでの合意を後退させない世論を作り上げることが求められています。
    さらに、NPT未加盟国のインドやパキスタン、イスラエルの核保有や、イランなどは原子力の平和利用からの転用で核開発が疑われています。それらの動きは、周辺地域の安全保障を揺るがし、緊張を高めています。そのなかでアメリカは米印原子力協力を結び、インドの核を公然と認める動きがでてきました。このことはNPT体制の根幹を揺るがすものです。ここでも国際社会の動きよりも自国の利益優先の単独行動主義を押し通そうとする強引なアメリカの動きです。あらためて当事国に核開発の放棄や緊張緩和にむけた平和的な解決と国際ルールへの参加を促すことが必要です。日本国内からも、各自治体からの「南アジアの核軍拡競争を防ぐため、原子力供給国グループ(NSG)での慎重な対応を求める意見書」提出のとりくみが、最近では三重県議会、鹿児島県内の市町村などで精力的に行われています。今後も引き続き議会決議をあげていくことが必要です。
  2. 日本政府は、核廃絶を訴えながらも、米国の「核の傘」にあるというダブルスタンダードという矛盾した政策を取り続けています。さらに米印原子力協定に対する態度を明確にせず、自らNPT体制を骨抜きにしようとしています。被爆国の責務として積極的に世界に先駆け平和と核軍縮政策のリーダーシップを取ることを求めることが重要です。しかし現在の安倍政権から続く福田政権でも、テロ特措法の延長強行を行い、積極的にアメリカの世界戦略のシステムのなかに加わろうとしています。なかでもミサイル防衛(MD)の積極的な開発と導入は、アメリカの核の傘とあいまって東北アジアに新たな軍拡に道を開き、不安定要因を作り出すものとなっています。そのうえアメリカとの共同運用によって、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使にまで踏み込もうとしています。これらの政策転換がいま求められています。さらに、六ヶ所再処理工場の本格稼働の持つ意味も国際的核拡散の視点からとらえなければいけません。
    冷戦終結後、世界はアメリカだけが突出した軍事力を持つなかで、国際的な平和・核軍縮の連携を強化し、アメリカをはじめとする核保有国を包囲する陣形をつくりあげることが求められています。各国の平和勢力との連携の強化を中心に、国内においても、政府に対して核の傘からの離脱や核軍縮の強化を要請し、連合や各市民団体・NGOなどと共通の核軍縮課題へのアプローチやネットワークの強化をすすめます。そのためにも「東北アジア非核地帯」構想(核兵器の不存在と核保有国による地域への消極的安全の保証の約束など)を積極的に推進し、その実現に向けた市民・政府レベルでの議論の活性化と韓国や中国などとの国際連携を強化が求められます。国内的には、非核三原則の徹底した遵守とそれを基にした「非核法」の制定を求めていきます。
  3.  被爆63周年原水爆禁止世界大会は、以上の「核兵器廃絶にむけたとりくみ」状況と別項の「ヒバクシャの権利確立のとりくみ」や「原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けてのとりくみ」の3つの課題を中心に議論を深め、共通認識を作りあげていきます。昨年に引き続き連合・核禁会議との共同行動をすすめ、今年も原水禁大会の開会式にあたる部分の共同開催や核兵器廃絶、被爆者援護の課題の拡大(共同シンポジウムなど)をはかります。
    さらに今年の国際会議は、8月19日の原子力空母の横須賀母港化を目前に控え「原子力空母の横須賀母港化と東北アジア平和と安定(仮称)」をテーマに、内外の研究者や活動家を中心に国際会議を行い、国内外に問題をアピールします。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 国内外の核軍縮へのネットワークの強化に向けたとりくみ

  1. 国内外の核軍縮すすめる団体や運動体とのネットワークの強化と世論喚起にむけたさまざまなとりくみを行い、核保有国への包囲網を強化していきます。NPT再検討会議準備会合や国連軍縮会議、8月の「原水禁世界大会」、などで、国際的な連携を強化していきます。さらに東北アジアの非核地帯化を求めて、日韓での連携を強化します。
  2. 平和市長会議が呼びかけ2020年に核兵器廃絶をめざすとりくみの「2020ビジョン」に賛同し、具体的に協力します。
  3. 核兵器国に対して「核の先制不使用」や「消極的安全保障の制度化」などを求めます。朝鮮民主主義人民共和国に対しては2005年9月の6カ国共同声明による核開発の放棄とNPT復帰などの実施を求めます。
  4. 日本政府による核の傘依存からの脱却を求め、東北アジア非核地帯化構想の実現をめざして国内外の運動の強化をはかります。
  5. 非核三原則の法制化に向けたとりくみを立ち上げ、連合・核禁会議などとも協議をすすめます。 f)ミサイル防衛構想に反対し、迎撃ミサイルPAC3配備と宇宙の軍拡に反対します。
  6. 未臨界核実験や核拡散に反対するとりくみを、引き続き連合・核禁会議との共同行動として積み上げます。
  7. CTBT条約、カットオフ条約など停滞する国際条約の発効・促進させるとりくみを強化します。とくに日本政府に対して働きかけを強化します。
  8. 劣化ウラン弾・クラスター爆弾などの非人道的兵器の禁止に向けたとりくみを行い、沖縄にあるとされる劣化ウラン弾の撤去を求めます。
  9. 核拡散につながるウラン濃縮、再処理を止めさせる国際的な関心を喚起し、ネットワークを広げます。
  10. NPT体制を空洞化する米印原子力協力に反対します。国際的な枠組みでの核物質の管理を求めます。

2) 非核自治体決議の推進と非核政策の内実の充実を求めるとりくみの強化

  1. 非核自治体決議の100%達成にむけたとりくみと自治体の非核政策の充実を求めていきます。地方議会への働きかけや非核平和行進に合わせて自治体への要請などを行うなかで宣言の達成や政策(事業)の充実を求めます。
  2. 非核宣言をした自治体の非核宣言自治体協議会への加盟を推進します。
  3. 非核平和条例のとりくみを強化します。
  4. 内外に被爆国の内実を問われる被爆国の企業の核兵器研究・開発への関与や武器輸出三原則の緩和による協力の拡大(とくにMDに関して)については、その動きを監視することと同時に協力させないとりくみを積み上げます。

3) 被爆63周年原水爆禁止世界大会・ビキニデーの開催に向けて

  1. 被爆63周年原水爆禁止世界大会は実行委員会方式で、神奈川・横須賀(国際会議)、広島、長崎で下記の日程で開催します。また、「メッセージfromヒロシマ2008」や「ピースブリッジ2008」などの子どもや若者の企画をサポートし、子どもの参加や若者、親子などの参加を強化し、被爆の実相の継承をはかります。なお、昨年に引き続き「核廃絶の壁」木ブロックも実施します。
    8月2日(土) 国際会議(神奈川・横須賀/予定)
    8月4日(月)-6日(水) 広島大会(8月4日連合・核禁会議と共催の開会式)
    8月7日(木)-9日(土) 長崎大会(8月7日連合・核禁会議と共催の開会式)
    8月7日(木)-9日(土) 「核廃絶の壁」(木ブロック)の展示
    b)2009年の被災55周年ビキニ・デー集会を、54周年集会の成果を引き継ぎ、被爆63周年原水禁世界大会に連動する集会として開催します。

6. 偏狭なナショナリズムに基づく教育改悪を許さないとりくみ

  1. 「戦後レジームからの脱却」を標榜し、教育再生会議などを中心に反動的な教育改悪を推進した安倍内閣(当時)は、新自由主義の導入による格差拡大や競争原理に社会不安が増大するなかで、2007年7月の参議院選挙の敗北のなかで崩壊しました。
    教育基本法の改悪を中心に安倍前内閣のもたらした教育荒廃は、教員の多忙化と全国学力調査などによる競争主義のなかで子どもたちの疲弊をもたらしています。真の教育改革を実現するために、教職員数の増や30人以下学級の早期実現など教育条件整備を拡充することが重要です。
    私たちは、教育を競争原理に閉じこめ能力あるもののみを対象にすることなく、主権者として自立する国民を育てる公教育を復権させなくてはなりません。狭隘なナショナリズムを排し、平和と民主主義、人権尊重の憲法理念を実現するためにも、そうした教育の実現は重要です。
    平和フォーラムは、教育の管理統制をいっそう強め、能力主義の基づく教育格差を増大しようとするもくろみに対して、日教組をはじめ構成組織の力を結集してとりくみをすすめます。
  2. 沖縄戦における「集団自決」に対する日本軍の関与が問題とされた、文科省の高校歴史教科書沖縄戦記述に対する検定意見は、平和フォーラムや「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を成功させた沖縄県民集会実行委員会などのとりくみによって、教科書会社の訂正申請に応ずる形で、日本軍の関与が一定認められることとなりました。このことは、「新しい歴史教科書をつくる会」など自由主義史観グループが抗議するなど、私たちの主張に文科省が歩み寄りを見せた内容になっていますが、今回の検定意見は以下の点で問題です。
    a)検定意見は、教科書審議会の議論なく教科書調査官の意見がそのまま採用されたもので、戦後レジームからの脱却を標榜する安倍前内閣の成立、教育基本法の改悪、大江・沖縄戦裁判などの情勢から、意図的に行われたものであること。しかし、文科省は「検定意見」の撤回に応じていない。また「日本軍の命令による『集団自決』」という事実の記述は認められなかったこと。
    b)文科省は1982年にも「日本軍による住民虐殺」の記述削除を目論んだものの、戦争体験者を含む沖縄の全県民からの猛抗議を受けて、記述を復活させた経緯があり、この問題は今回だけのことではないこと。
    c)1984年の上原康助衆議院議員の発言に答えて、当時の森喜朗文部大臣は「沖縄での旧日本軍に対します住民虐殺などに関する記述につきましては、十分に沖縄県民の感情を配慮しつつ客観的な記述になるよう検定において必要な配慮を求め指導を行っている」と回答していること。政府、文科省は、一貫して検定意見を撤回することは教科書検定制度への政治的介入であるとしてきたが、過去の文科省発言などからして矛盾すること。
    d)大江・岩波沖縄戦裁判の判決において、「集団自決」は日本軍の命令によると考えられるとの見解が示されたこと。
    e)今回、多くの沖縄戦の体験者が声を上げたこと。しかし、高齢化が進行するなかで沖縄戦の体験の風化がいっそう進んでいること。
    f)教科書審議会の議論が国民に見えないこと。検定意見にはつかなかった審議会の指針が訂正申請した教科書会社に配布された、文科省の一官僚の教科書調査官の意見が重要な役割を担うなど、教科書検定制度そのものにも問題が多いこと。
    自由主義史観グループの「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」は、歴史教科書0.4%、公民教科書0.2%と低迷する採択率と教科書の内容をめぐって「改正教育基本法に基づく教科書改善をすすめる有識者の会(改善の会)」に分裂しました。改善の会は、屋山太郎を代表世話人としてより自民党保守派政府に近い立場に立っています。扶桑社(フジ・サンケイグループ)は、改善の会とともに今後、扶桑社が100%出資して立ち上げた育鵬社より、新たな内容で教科書を発行するとしています。2009年度に迫っている次回教科書採択に向けて、さらなる運動の強化が求められます。
    平和フォーラムは、「教科書問題を考える会」を中心に、2009年度に向けて、自由主義史観グループの歴史を歪曲した偏向教科書の採択阻止のたたかいをすすめるとともに、沖縄のたたかいに連帯し、2007年度の「検定意見」の撤回を求めてとりくみます。また、戦争体験者の高齢化が進むなかで、歴史事実を正確に伝えていくためには、1982年の「近隣諸国条項」と同様に、教科書検定制度のなかに「教科書検定に際しては、地上戦を経験した沖縄県民の感情の配慮し、集団死・「集団自決」への日本軍関与など沖縄戦の実相に基づく記述を行う」とする「沖縄戦条項(仮称)」を設けることが重要だと考え、歴史事実をゆがめることなく、実際の戦闘のなかにあった沖縄県民の感情に配慮した教科書記述を求めてさらなる運動の展開を求めるとともに、国民に開かれた教科書づくりの新たなあり方を求めていくことが必要です。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 改悪教育基本法の実効化を許さないとりくみ

  1. 日教組と連携・協力し、教育関連三法の実効化を許さず、教育再生会議提言や後継組織の動きに注視しつつ、子どもの権利条約に立脚した教育を実現するとりくみをすすめます。
  2. 「愛国心」や「日の丸・君が代」の強制・強要に反対し、「競争主義」などによる人権侵害に対するとりくみを行います。

2) 沖縄戦教科書検定意見撤回など教科書問題へのとりくみ

  1. 教科書問題を考える会を中心に日教組などと連携して、歴史を歪曲する教科書採択を許さないとりくみを強化します。
  2. 日教組、沖縄平和運動センター、現地実行委員会と連帯して検定意見の撤回および沖縄の県民感情に配慮する「沖縄戦条項」の制定を要求してとりくみます。
  3. 政府・与党、文部科学省に対する要請行動を強化します。
  4. 2009年度使用教科書の作成に関して、教科書出版会社・執筆者に対して、沖縄戦の史実に基づいた記述に書き換え、再度の「訂正申請」にとりくむよう要請するとともに、「訂正申請」をサポートするとりくみを強化します。
  5. 日教組と連携し、教科書検定制度の弾力化・透明化へ向けた制度改革にとりくみます。
  6. 相互理解に基づいた歴史感の醸成に向けて、東北アジアの諸国を中心に、国際交流を追求します。

7. 多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ

  1. 2008年12月10日で世界人権宣言60周年を迎えます。世界はこの間、国際人権規約の他、人種差別撤廃や女性、子ども、移住者、障害者、死刑廃止など各分野におよぶ30の国際人権条約が積み上げられてきました。また、安保理決議1325号など安全保障の分野においても女性の重要性・ジェンダーを強調するなど、あらゆる分野で人権確立がすすめられています。しかし、日本はようやく12の条約に加入したにすぎず、批准した条約も、国内法整備がなかったり、留保や未批准部分があるなど人権救済についての遅れがあります。日本では、差別が社会悪であり犯罪であるという明確な認識が希薄であるのに加えて、この間の小泉・安倍内閣のもとで人権侵害の法案が相次ぎ成立するなどの逆流状況にありました。
    とくに問題は人権救済制度の未確立です。部落差別や女性差別をはじめとした差別に対し、公正・平等をめざした実態の改善と、差別を禁止する法律を整備する必要があります。その基本は、国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある機関の制度化と「人権の法制度」確立です。法務省は人権擁護法案の国会再提出への動きを強めていますが、これまでの政府与党案は、人権委員会を法務省外局とするなど独立性やメディア規制などの問題があるのに加えて、自民党には人権擁護委員に国籍条項を設定するなど外国人住民排除の動きもあります。政府案を抜本的に見直し、「人権市民会議」「人種差別撤廃NGOネットワーク」をはじめとした人権諸団体・ネットワーク、民主党・社民党などの野党と連携して、参議院での民主党案提出や法案先議なども見据えたとりくみをすすめることが必要です。
    具体的な人権救済では、すでに20年を超えた1047名のJR採用差別問題は、再三のILO勧告はもとより、司法判断も国鉄による差別・不当性を指摘しており、政治的協議でも大きな山場を迎えています。国労など当事者4者4団体による大同団結のもとに早期解決に向けて、当事者・家族へのいっそうの支援と励ましのとりくみが必要です。
  2. 男女共同参画に向けた動きは、大道としてはすすめられていますが、他方で教科書から「ジェンダー」の言葉が消えたり、自民党の「憲法改正」協議で第24条の「両性の平等」の見直しが指摘されたり、柳澤厚労相(当時)の「産む機械」発言など人権意識の低さを露呈しました。少子高齢社会に向かうなかで、政府は「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と家庭の調和)の運動をすすめていますが、日本のジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)が著しく低いなど、両立には大きな壁があります。男女共同参画に向けたいっそうのとりくみが必要です。
  3. 2006年1月の国連人権委員会ディエン報告書は、日本における人種主義・人種差別・外国人嫌悪/排斥の問題を、法的側面にとどまらず、社会的・歴史的文脈にまで踏み込んで指摘し、差別禁止法制定、問題対処の国内機関設置、歴史教科書の見直しなど、24項目の包括的勧告を提示しました。日本の外国人住民は200万人をこえ、うち在日コリアンなど特別永住者44万人、一般永住者39万人が暮らしており、外国籍住民の人権確立は重要課題です。在日外国人は納税の義務を負っていますが、ほとんど恩恵を受けていません。欧州各国などでは地域社会に参画する権利として定住外国人の地方参政権が広がっています。日本でも国会に永住外国人の地方参政権法案が提案されてから10年近くになりますが、主に自民党タカ派の反対で実現しないままです。この間、先に永住者参政権を法制化した韓国の金大中・盧武鉉・李明博と歴代大統領も強く日本に実現を求めています。民主党は実現に向けて動いきはじめましたが、平和フォーラムは、民団、参政権日韓在日ネットと連携して、全国的にとりくみます。
    子どもの問題では、朝鮮学校やブラジル人学校などの外国人学校は政府からの助成金がなく、卒業資格が認められないなどの差別を受けている場合もあります。子どもの権利条約の趣旨に基づいて、学校教育法の「1条校」化することは当面する重要課題です。また、朝鮮学校の土地明け渡し訴訟などがなおつづいており、早期に解決しなければなりません。
    また、外国人住民にかかわる管理強化の動きとして、昨年11月に施行された日本版US-VISITと呼ばれる出入国審査における指紋押捺をさせる入管法改定がなされ、外国人「在留カード」制度新設の動きもあります。
  4. 少年法は、2000年の適用年齢変更、2007年に14歳未満少年への警察関与と改定が強行されましたが、さらに、少年審判への被害者などの傍聴を可能にする改定が検討されています。少年の成長発達と更生を支援するという少年法の理念を大きく損なうおそれがあります。弁護士会を中心に反対していますが、その声をいっそう広げていく必要があります。
    ここ数年、微罪逮捕や関西生コン事件に見る不当長期拘留など、警察・監視社会化による人権侵害事件が多発しています。国会上程中の「共謀罪」新設法案は、犯罪の実行の有無にかかわらず、法律違反について話し合うだけで罪とする稀代の悪法ですが、与党は制定を断念していません。これを廃案にするとともに、「盗聴法」(組織犯罪対策法)などの廃止をめざします。さらに、この間、発覚した自衛隊・情報保全隊による平和運動団体の諜報活動は、米軍・自衛隊・警察による共同した監視体制がつくられる危険性をも示しています。
    これら一連の監視強化・警察社会化を明確にストップさせ、参議院での与野党逆転を踏まえて、人権確立法制度の確立を求めていく必要があります。警察の密室の取り調べのもと自白強要によるえん罪事件が、鹿児島選挙違反事件、富山事件など次々と起きていることに対し、民主党が国会に提出している「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(取調べの録画・録音による可視化法案)を成立させるとともに、さらに代用監獄の廃止に向けたとりくみが重要です。第3次再審をすすめる狭山裁判をはじめとしたえん罪訴訟を支援・協力するとともに、司法の民主化に向けたとりくみもすすめます。2009年に開始される裁判員制度は、市民の司法への参加や関わりを増大させる司法制度改革の中心として画期的な側面もある一方、裁判官の恣意などに左右されない制度・人数配分になど市民に開かれたものとする原則の確立や、被告や裁判員などの人権保障など、課題も多く残されています。また、総選挙の際に行われる最高裁判所裁判官国民審査の投票方式について、現行の白票信任方式を止め、○×式にするなど、投票した人の意思が結果に反映する方法への改善を早急に実現させる必要があります。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 世界人権宣言60年と実効性ある人権救済法の制定に向けたとりくみ

  1. 界人権宣言60年を記念するとともに、国際人権諸条約の批准を促進させます。
  2. 「人権市民会議」が公表した「日本における人権の法制度に関する提言」などを踏まえて、国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定、「差別禁止法」の制定に向けてとりくみます。
  3. 全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」を策定・実行を求めるとともに、「人権のまちづくり」や「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着した「社会的セーフティネット」などのとりくみを広げていきます。また、地域・職場でさまざまな差別問題など人権学習・教宣活動を行います。
  4. JR採用差別事件のとりくみを国鉄労働組合に協力して行います。

2) 男女共同参画社会の実現に向けたとりくみ

  1. 地方自治体計画作成のなかでジェンダー定義を後退をさせないとりくみを行います。
  2. 平和フォーラム組織自身の構成、諸会議をはじめ、関わる運動全般で女性が参加できる条件・環境作りを行います。
  3. 女性会議をはじめとした女性団体のとりくみに連携、協力します。
  4. 安全保障の分野においても女性の重要性・ジェンダーの視点を強調している国連安保理決議1325号など人権確立の国際社会の流れを活かしたとりくみをすすめます。

3) 地方参政権など在日定住外国人の権利確立

  1. 定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワークや民団などと協力して院内集会、各地での集会を実施します。
  2. 朝鮮学校や、ブラジル移民100年などを踏まえ子どもの権利に立った外国人学校の整備をはじめ、多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみに協力します。
  3. 在日外国人学校の中学校・高校卒業者を差別なく高校・大学受験資格を認めることをはじめ、学校教育法の1条校並としていくとりくみを行います。
  4. 「外国人人権法連絡会」「人種差別撤廃NGOネットワーク」のとりくみを行います。
  5. 日本版US-VISITなどに反対するとりくみについて協力・紹介します。

4) 司法制度・地方自治などをはじめとしたとりくみ

  1. 司法改革で、裁判員制度は裁判官の恣意などに左右されない制度・人数配分になど市民に開かれたものとする原則を確立するとりくみを行います。
  2. 日常的な判決チェックなど最高裁判所裁判官国民審査にかかわるとりくみを行います。
  3. 狭山差別裁判第3次再審実現など、えん罪をなくすとりくみに参加・協力するとともに、「取調べ可視化法案」の成立をめざします。
  4. 共謀罪の新設をさず、盗聴法の廃止に向けたとりくみを行います。
  5. 警察公安による微罪逮捕や自衛隊による取り調べ事件や情報収集増大の動きを警戒し、不当弾圧、人権侵害を許さないとりくみを行います。
  6. 少年審判への被害者傍聴などの少年法再々改定に反対するとりくみを行います。
  7. 地方分権を促進し、地方自治体の自主財源の確保とともに、条例制定権の拡大、拘束力のある住民投票の導入などのとりくみを行います。
  8. 反住基ネット連絡会のとりくみに協力します。
  9. 言論や表現の自由を暴力やテロで封じる動きを許さないとりくみを随時、行います。

8. ヒバクシャの権利確立のとりくみ

  1. 被爆後、63年を迎え、被爆者の高齢化が進み、被爆体験の風化が叫ばれています。同時に広島・長崎の被爆者の残された課題を解決する時間も限られてきています。援護対策の充実と国家の責任を問うことがあらためて急務となっています。
  2. 援護施策の充実を求める課題として、この間、原爆症認定制度が問題となっています。認定制度の根幹である原因確率の機械的な運用による被爆者の切り捨てが、大阪、広島など6つの地裁で司法の手によりその誤りが断罪されてきました。司法の判断や被爆者や市民の声に押され、国は、原因確率による審査を全面的に廃止し、新基準を2008年4月から実施しました。しかし、これまで裁判で認定された被爆者が、新基準によっても切り捨てられ現実が生まれています。距離の線引き、対象疾患の限定など、被爆者が求めている被害の実態に合った基準づくりには、まだまだ乖離があります。引き続き国の認定制度の抜本的改善を求めていくことが必要です。
    また、在外被爆者に対する援護の充実は、日本の戦争責任と戦後補償の実現とあいまって重要なとりくみです。これまでの在外被爆者裁判で勝ち取った成果を、残された在外被爆者裁判へ活かし、「日本へ来なければ認定しない」などの政策的な不備の改善を政府に要求し、援護法の改善に向けたとりくみをすすめていくことが必要です。また、これまで放置されている在朝被爆者への援護施策の実施を求めていくことも戦後責任を果たす意味でも重要です。昨年の訪朝で被爆者の実態の一部を明らかにしましたが、さらに在朝被爆者の実態を明らかにし、国の戦争責任を明確にし戦後補償をしっかりさせることは重要です。「被爆者はどこにいても被爆者」です。国内外の差別なき援護施策の実施を求めるとともに、国家補償による援護を求めていくことが必要です。
  3. さらに「援護なき差別」の状況に置かれている被爆二世・三世への援護施策の充実をはかることも必要です。そのため全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)と連携しながら二世・三世の組織化や行政に対する被爆者健康手帳の発行、二世健康診断の通年化・制度化、ガン検診の追加、被爆二世調査などの独自要求を積み上げていくことが求められています。とくに、2007年3月に発表された、「被爆二世健康影響調査」の解析結果では、「遺伝的影響」の解明には、さらに調査が必要なことが明らかになりました。それらを踏まえ被爆二世としての施策の実現やさらなる被爆二世の実態調査、遺伝的研究の深化を求めていくことが必要です。さらに三世への援護施策の充実をはかることが今後の大きな課題です。
    上記の課題を達成するために原水禁・連合・核禁会議の三者で行った被爆者の権利の拡大をめざした政府への要求の実現を図ることをさらにすすめ、課題の広がりを創り出すことが重要です。
  4. さらにヒロシマ・ナガサキの原爆被害にとどまらず、あらゆる核開発過程で生み出される核被害者への連帯や援護のとりくみは原水禁運動の重要な課題です。多くのヒバクシャをいまだ生み出しているチェルノブイリ原発事故、軍事機密のなかで行われた核実験によるヒバクシャの実態などを明らかにしていくことが必要で、国際的な運動としてヒバクシャ運動の強化が求められています。フランスの核実験被害者国際会議や劣化ウラン弾による被害の国際的ネットワークへの協力などこの間すすめてきた国際的な連携を引き続きすすめていくことが必要です。
  5. 国内的にも原子力の商業利用で生み出された被曝労働者が増大するなか、被曝労働者の権利の拡大をめざすためのとりくみをすすめていくことも重要です。
    それらを踏まえ、核実験や原発事故、原子力開発などのあらゆる核開発の流れのなかで起きたヒバクシャとの連帯強化と具体的な援護制度確立や権利の確認をすすめることが、「二度とふたたびヒバクシャをつくらない」原水禁運動の原点に結びつけていきます。以下そのためのとりくみを充実させていきます。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) ヒバクの実相を継承するとりくみ

  1. 各地でのヒバクシャから聞き取りや記録(映像など)すすめ、若い世代へ被爆の実相を継承していく運動をすすめます。
  2. メッセージfromヒロシマ2008、ピース・ブリッジ2008、高校生1万人署名や平和大使などの運動にも協力します。

2) 被爆者援護の運動を強化するとりくみ

  1. 被爆者団体との連携し、連合・核禁会議の3団体での厚生労働省への被爆者の権利拡大に向けた共同行動を強化し、国家補償の明記や認定制度の改善など援護施策の充実・改善などの要求行動をすすめます。
  2. 在外被爆者の残された課題の解決に向けたとりくみを行います。裁判闘争の支援や交流、厚生労働省への制度・政策の改善・強化の要求などを行います。
  3. 在朝被爆者問題の解決に向けたとりくみを、在朝被爆者支援連絡会を中心に運動をすすめます。放置された在朝被爆者の援護の確立に向け、在朝被爆者団体との連携強化とともに、日本政府や厚生労働省、政党・議員などに働きかけていきます。
  4. 原爆症認定制度の抜本的改善を求めます。被爆者の被害の実態にあった制度に抜本的に転換するよう、被爆者団体とともに連合・核禁会議と連携しながら、政府の政策転換にむけて運動をすすめます。

3) 被爆二世・三世の組織化と援護政策の充実を求めるとりくみ

  1. 全国被爆二世団体連絡協議会との連携を強化し、被爆二世・三世の組織化に協力します。
  2. 被爆者援護法の被爆二世に対する付帯決議を具体化するとりくみを強化していきます。二世への援護法の拡大や被爆者健康手帳の発行、ガン検診の追加、被爆二世調査の継続と充実などを求めていきます。さらに三世についても調査や援護の充実を求めていきます。
  3. 日韓被爆二世シンポジウムを、被爆二世団体全国協議会と共催で、日韓の被爆二世の交流と課題の共有を深めるために、今年は日本で開催します。

4) あらゆるヒバクシャとの国際連帯・交流の強化のとりくみ

  1. 世界に拡がる核被害者との連帯強化をはかります。
  2. ヒバクシャとの連帯をつくりだすために、必要に応じて現地への調査・訪問団の派遣も検討します。
  3. 劣化ウラン弾の使用禁止を求める国内外の動きに連動し協力していきます。

5) 原発・被曝労働者のヒバク実態の把握と労働者の権利拡大をめざすとりくみ

  1. 原発労災やJCO臨界事故などによって生みだされた原発被曝労働者への援護の運動に連携していきます。
  2. 被曝労働者の健康を守る「健康管理手帳」の制度確立を、関連する労働組合と協力してめざします。

9. 原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けてのとりくみ

  1. 今年の脱原発運動の中心課題であるプルトニウム利用政策転換に関しては、利用政策の要となる六ヶ所再処理工場の本格稼動が焦点となり、稼働阻止にむけた全国的な運動展開が求められています。核燃料サイクル施設が集中立地する青森では、G8サミットのエネルギー大臣会合が行われ、日本の再処理路線を世界にアピールすることになります。しかし、日本のプルトニウム利用政策は、プルトニウム利用路線がすでに破たんしているにもかかわらず原子力推進派は、六ヶ所再処理工場の建設・稼働やプルサーマル計画、もんじゅ運転再開をいまだ放棄しようとはしていません。原子力政策大綱(旧原子力長期計画)や原子力技術立国計画でも、再処理・高速増殖炉(もんじゅ)・プルサーマル路線の堅持をうたい、原子力政策の破たんのツケを先送りし、国民に多大な負担を強いようとしています。その中心となる六ヶ所再処理工場は、2008年4月以降の操業開始に向けて、実質的な稼働に近いアクティブ試験の最終段階に移り、大量の放射能をまき散らし、プルトニウムを大量に作り出しています。すでに余剰プルトニウムは約44トン。六ヶ所再処理工場の稼働でさらに余剰のプルト
    ニウムを生み出すことは、国際的も核拡散として問題となっています。
    生み出された余剰プルトニウムを消費するために計画されているプルサーマル計画は、玄海原発をはじめ、伊方、島根、浜岡、泊と計画実施の声をあげ、いままた関西電力も声を上げようとしています。しかし、各地での反対の声も根強くあり、実施までにはさまざまなハードルがあります。これまで柏崎刈羽原発は住民投票によって、福島ではデータ改ざんなどの不正によって白紙となり、さらに地震によって計画そのものが議論できる状況がありません。さらに、もんじゅは1995年の事故以来停止したたまで、今年の10月の再稼働をめざしていますが、長期停止の原子炉の再稼働ともんじゅのもつ特殊性によって事故の危険性が指摘されています。プルトニウム利用計画の柱となるプルサーマル、もんじゅ先行きも非常に不安定となっているのが現状です。だからこそ原子力政策の転換を求めてプルトニウム利用政策の中止を求めるとりくみをとくに強化することが必要となっています。
  2. 2007年7月に発生した中越沖地震は、震災と原発災害が同時に襲うことの可能性を私たちに示しました。現在柏崎刈羽原発の7基の原発全てが停止し、運転再開については見通しが立っていませんが、今年中には何らかの形で運転再開にこぎ着けようとの動きがでています(とくに7号機とも言われています)。あれだけの被害を起こし、活断層が敷地内に延びているとも言われる柏崎刈羽原発をこのまま再稼働させることは認めることはできません。全号機の廃炉に向けたとりくみを地元-全国を結んで展開することが重要です。
  3. 今年の8月19日は、横須賀に原子力空母の横須賀母港化が予定されています。30万KW級の原子炉が東京湾に常時浮かぶことになってしまいます。地元に対して何の合意も安全審査もなく通常型の空母と交代で原子力空母がやってきます。軍事のベールに包まれた原子炉は、安全性を不問にしたまま大都市の傍らに巨大な原発が出現することになります。別項のとりくみを積み上げ、危険な動く原発を配備させないことが首都圏の市民の命を守る上でも重要です。
  4. さらに今年は、高レベル放射性廃棄物問題が衆議院議員選挙以降に浮んでくるとが考えられます。2006年の滋賀県余呉町に続き、2007年には東洋町が誘致を拒否しました。その後も長崎県対馬町や青森県東通村や六ヶ所村でも誘致にむけた動きが続いています。「文献調査」にかかわる交付金が、2億1000万円から10億円(年間)に増額されるなど、自治体財政が危機に瀕している地域を候補地として金で釣りあげようとする動きが活発化することが十分予想されます。超長期にわたる管理や安全性、世代間の問題、国民的議論や合意もないままに押しすすめられようとしている高レベル放射性廃棄物処分場問題は、このまますすめることを許してはなりません。緊急の課題としてとりくみの強化が求められています。
  5. そのうえ老朽化した原発の問題や昨年大きな問題となった1万件を越す電力会社によるデータ改ざん、事故隠しなど、安全性に係わる問題も見逃せません。さらに定期点検の間隔延長(連続運転の延長)の動きなど、コストの圧縮と安全の軽視が心配されます。とくに、東京電力、北陸電力などの臨界事故隠しは、大事故につながる危険な事故で、組織ぐるみの隠蔽は悪質なものです。大事故が起きる前に、廃炉や運転停止、企業としてのモラルの根本的改善を求めていくことが必要です。
  6. 地球温暖化に関連して「原発が地球温暖化切り札」というようなキャンペーンがなされています。とくにG8サミットのなかで、青森市で開催されるエネルギー外相会議や洞爺湖サミットでの地球温暖化と原発推進が叫ばれることが予想されます。しかし、実際は原発を増やすことは、電気の需要に合わせて供給するために小回りのきく火力発電などを増やすことにつながります。むしろ原発に頼った温暖化対策は、本来行うべき対策を遅らせ、むしろ温暖化をすすめてしまうといえるものです。そもそも放射能を生み出すことが、地球にやさいとはとてもいえません。地球温暖化による被害も、放射能災害もない社会の構築が本来望まれるはずです。地球温暖化を防止するためにも、脱原発による「小エネルギー社会」の実現へむけて政策転換が求められています。分散型エネルギーとして自然エネルギーを積極的に拡大していくことが必要です。平和フォーラムとしてすすめてきたエコロジー社会構築プロジェクトが作成した脱原発に向けたエネルギー政策の検討成果を活かし、大胆な省エネルギー政策の推進と合わせて地域で再生可能エネルギーの具体的展開をはかることが必要です。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) プルトニウム利用政策の転換を求めるとりくみ

  1. 再処理工場稼働阻止(ないし停止)にむけて、地元青森との連携を強化しながら行います。
  2. プルサーマル計画の中止を求めて、佐賀、愛媛、島根、静岡、北海道などを中心に連携を強化します。
  3. 「もんじゅ」廃炉に向けたとりくみを強化し、全国集会を開催します。
  4. 世界的に進む核拡散を止めるためにも、再処理・プルトニウム生産の中止と政策転換を訴える国際キャンペーンをとりくみます。
  5. G8エネルギー大臣サミットに対して、対抗的なエネルギーシンポや集会を市民団体と協力しながらとりくみます。

2) 原発震災に対するとりくみ

  1. 中越沖地震による柏崎刈羽原発の廃炉を求めていきます。とくに全国100万人署名や全国集会をすすめ、世論喚起をすすめていきます。
  2. 志賀原発の勝訴判決を活かし、浜岡原発をはじめ各地で原発震災問題の集会や学習会などをすすめ、各地の原子力防災のとりくみをすすめます。

3) 原子力空母の出入港・母港化についてのとりくみ(別項参照)

4) 放射性廃棄物処分問題に対するとりくみ

  1. 高レベル放射性廃棄物の処分場を誘致させない運動を作り上げていきます。
  2. 青森県むつ市などの各地の中間貯蔵施設建設問題について、設置反対を地元の運動と連携していきます。
  3. 高レベル放射性廃棄物関連法の改正や放射能のスソ切り処分の問題点を知らせるために、国会議員への働きかけの強化と集会や学習会、リーフレットなどの作成で世論喚起を行い、具体的な適用を阻止します。

5) 原発の新増設と老朽化原発をはじめとしたとりくみ

  1. 大間原発や上関原発などの新規立地や泊3号、川内3号などの増設に対する反対運動を現地とともに全国の運動として広げていきます。
  2. 老朽化した原発の廃炉を求める運動をすすめます。
  3. データ改ざん、臨界事故隠蔽などの事故隠しを徹底的に追及していきます。
  4. JCO臨界事故へのとりくみ地元を中心とした、9周年目にあたるJCO臨界事故の問題を風化させないとりくみとしての集会に協力します。
  5. 原発被曝労災問題へのとりくみを強化します。
  6. 原発・原子力施設立地県全国連絡会との連携を強化していきます。
  7. 国民保護について、想定のなかの原爆・原子力施設攻撃の問題点を強く訴えます。

6) エネルギー政策など国政に対するとりくみ

  1. 脱原発に向けたさまざまな具体的制度・政策を確立するためにも、「原子力政策『転換』議員懇談会」などの動きとも連携し、院内外での運動を強化していきます。

10. 環境問題のとりくみ

  1. 地球温暖化や森林の減少と砂漠化、水の量と質の悪化、増え続ける廃棄物や有害化学物質など、環境問題は多岐にわたっています。これらは、人口の都市集中や市場経済優先の産業活動、第一次産業の衰退などによって年々深刻化しています。環境の悪化が深刻になるなかで、これまでの「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、「循環型社会」への転換が求められています。
    昨年発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告は、21世紀末には世界の平均気温は最大6.4度も上昇するなどの警告を発しています。CO2などの削減を定めた「京都議定書」の着実な実行が求められています。アメリカと同調して京都議定書への参加を拒否してきたオーストラリアは政権交代により議定書を批准しました。また、昨年、米国を含めて、議定書の約束期限後の削減について大枠合意され、今年のG8洞爺湖ミサミットでも大きな議題になるなど、世界的に温暖化問題へのとりくみが加速しています。
    一方、日本においては逆にCO2などの排出量が増加しています。これは、これまで政府として強力な対策を取らずに自主的なとりくみに任せてきたことに加え、森林吸収源対策が着実に実施されない状況が続いてきたためです。削減効果のある具体的な政策を求めて運動をすすめることが重要です。また、温暖化対策として原発推進がすすめられようとしていることに強く反対していく必要があります。
    欧米などですすめられている自然エネルギーに対して、日本は積極的な推進政策をとろうとしていません。最近の石油価格高騰や、危険な原発、化石燃料資源に限界があるなかで、自然エネルギーを推進する法制度を早急に確立することが必要です。身近な地域資源を活用したバイオ燃料や風車、太陽光発電などの地域分散型のエネルギーの利用を推進することが必要です。また、地域においても、自治体と市民の連携を図り、温暖化対策をすすめることや、個々人のライフスタイルを見直し、エネルギー消費を減少させることが必要です。
  2. 環境を守るうえで、森林は重要な役割を果たしています。しかし、地球規模での森林の減少と劣化が進み、砂漠化や温暖化を加速させています。日本は世界有数の森林国ですが、大量の木材輸入により、木材自給率はわずか20%に止まっています。また、木材価格の低迷などにより林業経営が厳しく、担い手不足、高齢化から持続的な森林整備が十分行われていないのが現実です。
    こうした状況に対し、政府は「森林・林業基本計画」を策定してきましたが、地球温暖化防止、林業労働力、国産材利用対策などの目標が達成できない状況であり、基本計画の具体的な実施が問われています。
    国際的には、違法伐採の問題や、WTO・FTA交渉での林産物の自由化・関税引き下げの動きに対処することも必要になっています。
    水の問題では、世界的な水不足や、有害な化学物質・合成洗剤などによる河川や湖沼の汚染など、その質と量が大きな課題になっています。2025年には世界の3人に2人が水不足になると予想され、飢餓問題とともに国際的な緊急課題となっています。21世紀は水問題が国際的緊張をもたらす要因となり、戦争や紛争の原因になるとも指摘されています。
    こうしたなか、水の商品化、水道事業の民営化がすすめられ、貿易自由化交渉でも課題になっています。しかし、これは世界各地で安全で安定した水へのアクセスを阻害する結果をもたらしています。日本では民間企業を軸にした国際貢献について検討が進められる状況となっていますが、水を利潤獲得の対象とするのではなく、水は国際公共財であり基本的人権であることを基本に利用する住民が自己決定できる枠組みをつくることが大切です。
    また、水質汚染に対する規制を強化するため、企業などの有害化学物質汚染の責任の明確化、農薬や化学肥料の減量、家庭からの合成洗剤の追放などが求められます。そのため、有害化学物質の排出状況などを公表する制度(PRTR)の活用や、表示の徹底などを求め、影響が疑わしいものは使用しない「予防原則」を行政に取り入れさせることも課題です。
  3. 自由貿易の推進は、膨大なエネルギーを消費し、環境問題を深刻化させています。日本が輸入する農産物の生産に大量の水が使われ、水問題を悪化させています。また、膨大な食料輸入によって、過剰な窒素が国内に堆積し、逆に輸出国では土壌や養分が流出する二重の環境汚染を招いています。さらに、輸入食料や木材の量と日本までの輸送距離を掛けた数値(フードマイレージ、ウッドマイレージ)では、他国に比べて異常に突出し、輸送にかかるエネルギーが環境に影響を与えています。
    さらに、日本と東南アジア諸国とのFTAでは、リサイクルを名目とした日本の産業廃棄物の処理を途上国に押しつける危険性が指摘されています。こうした環境面からも貿易ルールのあり方を問い直す必要があります。
  4. 先進国首脳会議(G8サミット)が7月7日-9日、北海道洞爺湖を会場に、「気候変動(地球温暖化)」、「アフリカ等の開発問題」、「世界経済」・「核不拡散」、「テロ対策」などを主要テーマに開催されます。また、関連する大臣会合も4月以降、各地で開催されます。
    これに対して、市民団体などでは、市民の意見の反映や大国主導の国際支配問題などから、キャンペーン活動や政策提案、集会、討論会の開催などの活動がすすめられています。
  5. 「第40回食とみどり、水を守る全国集会」は、「人間の安全保障」を基軸に、「循環型社会形成のとりくみ」、「食の安全のとりくみ」、「WTO・FTA交渉」、「食の安定、農林業問題のとりくみ」、「森林・水問題」など、食とみどり、水・環境を守る運動の集約の場として開催します。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) 地球温暖化問題のとりくみ

  1. 温暖化防止の国内対策の推進を求めていきます。そのため、関係する市民団体と連携・協力し、企業などへの排出削減の義務づけを始め、森林の整備、温暖化対策のための税制(環境税)の導入など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
  2. 自然(再生可能)エネルギー普及や省エネルギーのための法・制度の改正などを求めていきます。
  3. 各地域で環境問題にとりくむNGOと連携し、身近な資源を活用したバイオマスエネルギーや風力発電などの自然エネルギーのとりくみに協力していきます。

2) 森林・水問題などのとりくみ

  1. 森林の整備推進に向けた政策の充実を求めていきます。政府の「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地域材の利用促進、予算の拡充、再生可能な木質バイオマスの推進や、木材貿易自由化、違法伐採問題などについて、関係団体のとりくみを支援します。
  2. 水問題の世論形成を図り、水道から河川、森林までの一体的な政策推進のための「水基本法」の制定に向けて協力していきます。また、環境団体などと連携し、水中や環境中の化学物質に対する規制運動を強めていきます。
  3. 10月に開かれる「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国集会」(10月11-12日・秋田市)に協力します。

3) 貿易自由化にともなう環境問題のとりくみ

  1. 自由貿易と環境問題の関連性について教宣活動などで世論形成を図っていきます。
  2. 有害廃棄物の途上国への輸出を禁止するとともに、廃棄物の発生削減を最優先とし、国内循環を基本にした政策の推進を求めていきます。

4) G8サミットに対するとりくみ

  1. G8サミットに対する平和・人権・環境などの課題でのNGOのキャンペーン活動に協力します。
  2. 貿易自由化や農業・食料問題を中心に、農民・消費者団体とともに、海外ゲストも含めて集会・シンポジウムを開きます。
  3. サミットに合わせて、札幌市内で予定されている市民団体などが行う「ピースウォーク」の準備・運営に協力します。

5) 第40回食とみどり、水を守る全国集会の開催

  1. 食とみどり、水・環境を守る運動の集約の場として、関係団体に呼びかけて実行委員会を作り、青森県青森市で下記日程で開催の準備をすすめます。
    11月27日(木) 全体集会
    11月28日(金)午前 分科会
    11月28日(金)午後 総括集会

11. 食の安全のとりくみ

  1. 食品の賞味期限の改ざんや産地偽装などに加えて、中国などからの輸入食品の残留農薬や抗菌剤、原料の偽装などが相次ぐなかで、食の安全に対する不安・不信が高まっています。それらは単に個別企業による不祥事だけではなく、規制の緩和や表示制度の不備、そして大量の輸入食料に頼る構造的な要因が重なっているものといえます。さらに、貿易の自由化をすすめるため動植物の検疫規制緩和や、遺伝子組み換え、放射線照射食品の認可拡大などの動きも出ており、食の安全のとりくみが重要になっています。
    BSE対策が不十分な米国産牛肉について、さらに米国から輸入条件の緩和・全面自由化が求められています。一方、国内でもこれまでの実質的な全頭検査に対する国の補助が8月から打ち切られます。これは米国の輸入緩和要求と軌を一にするものです。
    こうした状況のなかで、消費者が選択する権利を行使するためには、明確な原料原産地表示が必要です。また、輸入条件の緩和を行わないことや検疫体制の強化、国内対策の徹底についても引き続く求めていく必要があります。
  2. 食品に放射線を照射して殺菌や殺虫、発芽防止などを行う照射食品について、内閣府原子力委員会はスパイスなどに拡大する方針を打ち出し、厚生労働省などで検討が開始されようとしています。
    これに対して、消費者団体などは、照射による安全性や、照射を検知する技術がないこと、原子力の技術を食品に用いることの問題から、反対運動を続けています。消費者にメリットがなく、原子力産業界の利益につながるだけの照射食品に強く反対していくことが必要です。
  3. 食の安全のためには、疑わしきは使用しない「予防原則」や、総合的な食品の影響評価が求められています。そのため、形骸化している内閣府食品安全委員会などの行政の動きに対し、市民の立場から監視・提言する運動や、地域・自治体での食の安全施策への参画をすすめるとともに、食品の安全に関する基準緩和を許さないとりくみ、農産物・食品に対する検査・検疫や表示の徹底を求める運動が重要になっています。
  4. 学校や地域での子どもたちの食べ方が問題となるなか、「食育」が大きく取り上げられ、朝食の欠食改善、学校給食での地場食材使用、教育ファームの推進、栄養職員の教諭化などの目標が掲げられています。子どもをはじめ、地域全体で食べ方や地域農業を見直す運動が重要になっています。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。

1) BSE問題のとりくみ

  1. 牛肉およびそのすべての加工品の販売、外食、中食において、原料・原産地表示を義務化することを求めていきます。
  2. 米国が要求している輸入条件の緩和(現在の20ヶ月齢以下の牛から30ヶ月齢以下への拡大)などを行わないように求めていきます。また、国内において引き続き全頭検査を継続するよう、各自治体への要請運動にとりくみます。

2) 放射線照射食品のとりくみ

  1. 「照射食品反対連絡会」や原水禁と連携し、照射食品を認めない運動をすすめます。
  2. 食品関連業界などに照射食品を扱わないよう働きかけるとともに、海外での実態についての調査活動などをすすめます。

3) その他の食の安全問題のとりくみ

  1. 「食品安全委員会」に対して意見反映を図るため、意見書の提出や委員との意見交換をすすめます。また、「食の安全・監視市民委員会」などの活動に協力して、政府や企業などへの申し入れや集会、学習会などを行っていきます。
  2. 食品偽装や輸入食品の安全性などに対する対策の徹底、表示の改善を求めていきます。
  3. 遺伝子組み換え食品については、国内における商業的作付けはしないことを求めるとともに、表示制度の改善を要求していきます。
  4. 各地域において、食品安全条例の制定などを求める運動を広めていきます。

4) 食育の推進のとりくみ

  1. 各地域において、食育推進のための条例作りなどの具体的施策を求める運動をすすめます。
  2. 学校給食の自校調理方式、栄養教諭制度の推進を求めていきます。また、学校給食に地場の農産物や米を使う運動や、地域の食材の見直し、地域内の安全な生産物の消費をすすめる地産地消運動などの具体的な実践をすすめます。

12. WTO・FTA交渉、食の安定、農林業問題のとりくみ

  1.  「グローバル化」の急速な進展のなか、世界貿易機関(WTO)や二国間自由貿易協定(FTA)交渉により、貿易や投資の自由化がすすめられてきました。しかし、開発途上国と先進国との格差拡大状況がつづき、アメリカなど一部の国の農産物輸出が増加する反面、途上国の食料の輸入依存度はますます高まっています。
    依然として世界では8億人以上が飢餓状態に陥っているなか、追い打ちをかけるように世界的に穀物需給が逼迫し、食料価格が高騰しています。国連は2000年にミレニアム開発目標(MDGs)を打ち出し、貧困や飢餓の半減をめざすとしましたが、現状ではその達成は困難です。
    国内では、食料や木材の輸入増加が続き、農林水産業の縮小、農山漁村の荒廃・過疎化が一段と進んでいます。さらに、米価などの下落、新たな農業政策により、中小農家や山間地は崩壊の危機的状況にあります。
    こうしたグローバリゼーション、自由貿易体制、構造改革の進展に対して、国内外のNGOと提携を強めてとりくむとともに、地域からのとりくみが重要になっています。
    WTO交渉は、農業分野や工業品貿易を中心に、途上国と先進国、輸入国と輸出国の対立により、停滞を続け、アメリカの大統領選挙後まで交渉が延びることも予想されています。しかし、これまでのWTO閣僚会議に対する世界のNGOの反対行動に表れるように、市民、消費者、生産者から自由貿易一辺倒への批判も高まっています。今後のWTO交渉の動向を注視していく必要があります。
    WTO交渉の停滞から、各国では二国間での自由貿易協定の締結をめざす動きが強まっています。日本は東南アジア諸国に続いて、昨年から農産物輸出大国のオーストラリアとの交渉が始まりました。今後はEUやアメリカとの交渉も予想され、日本の農業や食料に対し大きな影響を与えようとしています。
    自由貿易交渉に対しては、農業をはじめ、各国の多様な産業や文化が共生・共存でき、環境や資源を保全できる交易ルールの確立をめざす必要があります。
  2. 政府は、「農政改革」をすすめるために、昨年から新たな「経営所得安定対策」や「環境保全向上対策」を実施しました。しかし、対策対象の限定や財政などの問題点が明らかになり、制度の見直しが行われました。今後は、中小農家や山間・過疎地などの切り捨て、食料自給率の低下につながらないような制度の改善が求められています。
    農地制度についても、耕作放棄地の解消を名分として、株式会社の農地取得への道が開かれようとしており、その動向も注視しなければなりません。一方、農薬や化学肥料を使用しない農業をすすめるため、「有機農業推進法」をもとに、各地域の具体的な施策がすすめられる段階にあります。
    これまでの規模拡大・効率化一辺倒の政策は、食の不安を引き起こす一方で、自給率の向上に結びついてきませんでした。いまこそ、食の安全や環境問題などに配慮した政策への転換を求めて、政府や政党、自治体への提案・要請を行っていくことが重要です。

これらを踏まえて、次のようなとりくみをすすめます。


1) WTO・FTA交渉へのとりくみ

  1. 自由貿易交渉では、農業分野を中心として、遺伝子組み換え食品などと関連する知的所有権問題、水の自由化・民営化問題などのサービス貿易、多国籍企業による投資などの問題点も含め、関係団体とともに集会、学習会、パンフ作成などのキャンペーン活動を行います。
  2. オーストラリアとのFTA交渉は、日本農業と食料に大きな影響をもたらすことから、重要農産物を交渉から除外することなどを求めて活動します。
  3. 関係する各国のNGO、農民との連携・交流を深めます。

2) 食の安定・農林水産業問題のとりくみ

  1. 各地域で新農政の実施状況を点検し、問題点を洗い出して、政府などへの要請を行います。また、食料や林産物の自給率向上に向け、直接支払い制度や新規就農・就労者の支援策を求め、農民団体などの運動と共闘していきます。
  2. 有機農業の推進にむけ、自治体での施策の充実を求めてとりくみます。
  3. 各地域における食料自給率や地産地消のとりくみ目標の設定を要求していきます。さらに、食の安全や農林水産業の振興に向けた条例作りをはじめ、学校給食に地場の農産物を活用する運動、地域資源を活用したバイオマス運動や間伐材の活用など、さまざまなとりくみを広げていきます。
  4. 子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や、農林水産業の多面的機能を訴える機会を作っていきます。とくに、支援米運動では小学校の総合学習やイベントなどとの結合、地域連合との共同行動など地域に広げてとりくみます。

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