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2012年度 主な課題

2012年4月25日

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2012年度 主な課題

以下は2012年4月25日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第14回総会において決定された2011年度総括と2012年度運動方針です。

1. 運動の展開にあたって

1) 2012年の特徴的な情勢について

  • 激動の世界情勢
       2010年12月から2011年1月にかけてのチュニジア・ジャスミン革命に端を発した「アラブの春」と呼ばれる民主化の動きは、チュニジアのベンアリ大統領やエジプトのムバラク大統領の失脚など、アラブ諸国に広がりました。一方で、1991年以来無政府状態が続くソマリアに加えて、南スーダンおよびスーダンのダルフール地方、エリトリア、コンゴ東部などアフリカ諸国の政治情勢は極めて深刻です。
       2011年はギリシャの暴動、米国での「ウォール街を占拠せよ」との反格差社会デモ、ロシアでの反体制運動など、若者を中心とした運動が広がりました。米国の経済・財政危機はもちろんのこと、失業率が20%を超えるスペイン、10%を超えて20%に迫る勢いのギリシャやアイルランド、ポルトガルなど、経済危機にあえぐEU諸国においても問題は深刻です。新自由主義、グローバリズムの中で、世界では貧困と格差、政権の腐敗、社会矛盾が若者を直撃しています。国連が提起した「ミレニアム開発目標(MDGs)」は遅々として進みません。多国間競争を緩和し、諸国間格差を是正する世界の富の再分配を進めて「人間の安全保障」の確立していくために、国際的議論が求められています。
     
  • 民主党マニフェストの後退
       民主党政権は、2009年8月の政権獲得から3年近くを経過して鳩山由紀夫首相、菅直人首相、野田佳彦首相と交代してきました。2006年9月から2009年9月まで3人が交代した自民党政権末期と同様の様相を呈しています。戦後初の本格的政権交代であり、子ども手当や小学校低学年への35人学級導入、戸別所得補償制度の実現など評価できます。また不十分ではあるものの、事業仕分けなどは国民への開かれた政治のあり方を提示してきました。しかし、米国の執拗な圧力や官僚の抵抗、衆参のねじれ、大震災や原発事故が重なり、政権運営は混乱を極めました。辺野古新基地建設のアセス強行、八ッ場ダム工事の復活や整備新幹線、東京外郭環状道路工事などの予算復活、消費税増税など、「生活第一」「コンクリートから人間へ」「米国との対等なパートナーシップと東アジア重視」などと、政権交代で表明したマニフェストから大きく後退していくものとなっています。
     
  • 地方社会の再生と格差是正
       社会保障費の増額や累進課税の後退などによって、可処分所得における格差が拡大している状況は問題です。「社会保障と税の一体改革」からも、経済格差を埋める具体的な手立てが見えてきません。市場原理主義など新自由主義政策のつまづきによる地域経済の低迷や地域公共サービスの低下など、日本社会の閉塞感は極めて深刻になっています。相対的貧困率も15.7%とOECD諸国中でメキシコ・米国・トルコに次いで高いものとなっています。年間所得200万円以下の若年労働者や非正規労働者の増加もめだっています。年間所得200万円以下の労働者は、5年連続で1000万人を超え、労働者の22.9%(2011年国税庁調査)となっています。非正規労働者も2011年には労働者の35%を超えて増加の一途をたどっています。日本の自殺率は世界9位、13年連続で自殺者が3万人を超える社会にも手立てが打たれていません。震災復興をめぐって「絆」という言葉が頻繁に使われますが、人と人の関係性は薄れつつあり、「孤独死」などに象徴されるように、社会における個人は孤立を深めています。
       2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故は、このような疲弊しつつある日本社会を直撃しました。震災復興は、被災者の我慢と自己犠牲・自己努力にまかされている状況で、日本政府の不十分な対応が露呈しています。新自由主義の流れの中で疲弊した地方の社会経済、民間活力の導入と称して切り捨てられてきた地域公共サービスの実態が被災者を直撃しています。震災復興は、地方社会のあり方そのものを私たちに問い続けています。震災復興を契機にして、「命の尊厳」を基本に「一人ひとりの命に寄り添う社会と政治」のあり方を、真剣に考えなくてはなりません。
     
  • 右傾化する政治
       社会の不満と閉塞感を拾い上げるように、橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」、河村たかし名古屋市長の「減税日本」、山田宏前杉並区長や中田宏前横浜市長の「日本創新党」、そして既製の「みんなの党」「たちあがれ日本」や石原慎太郎東京都知事による新党構想など、少数政党が乱立する様相を呈しています。彼らは、ほとんどが公務労働者の賃金抑制、小さな政府を標榜し、市民の不満を背景に支持を集めています。日本の公務員数の人口比は米国よりも小さく、公務労働者に対するこのような批判は決して的を射たものではありません。結果として公共サービスの低下を招き地域社会の生活に大きな打撃を与えています。彼らの多くは、競争原理において社会的弱者に厳しく、アジア諸国を蔑視する差別意識に溢れています。ポピュリズムともファシズムとも評される右傾化の動きは見過ごせません。
     
  • 「社会を変える」と言うだけの維新
       橋下大阪市長は、知事時代に「教育基本条例」や「職員基本条例」を提起し、教育委員会制度などを無視し選挙に当選したことを担保に強権的な行政運営を求めてきました。勤務評価の最下位を一定の割合でつくり出し、最下位3回目となれば自動的に免職とする規定や「日の丸・君が代」をめぐる職務命令に3回反すると免職などの規定によって、知事の恣意的方針を強制する、教育委員会や各学校で決定してきた教育方針を否定し、知事が独断で教育方針を決定するなどが含まれています。最高裁は、日の丸・君が代をめぐる東京都教育委員会の懲戒処分について一部行き過ぎとする判断を下しました。大阪府や東京都の方針に危惧を抱く結果と言えます。「現状を変える」ことのみが支持を受ける結果となり、「維新」による新しい社会のあり方は、見えてきません。現状に満足しない市民層をどのように引きつけるのかは、運動の側の大きな課題と言えます。
     
  • 憲法理念実現は遠い改憲議論
       憲法改正をめぐっては、2010年5月に「日本国憲法の改正手続に関する法律」(改憲手続法)が施行され、これまで衆議院のみで制定されていた「憲法審査会」が、衆参のねじれを受けて参議院においても2011年5月に制定されました。改憲に向けた議論が始動しています。日本国憲法が規定する国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三大原則を含め、戦後社会においてその理念が必ずしも実現できてきたわけではなく、ここに至ってもなお人権課題など世界基準にさえ至らないものが多くあります。今、政治に必要なのは、憲法理念に社会をどれだけ近づけるかの努力であり、憲法を現実に近づけることではありません。
       大阪維新の会の橋下大阪府知事は、「大阪都構想」を掲げ大阪市長選挙に立候補し、当選しました。「維新版・船中八策」を示し、憲法改正発議要件の過半数への緩和や首相公選制、参議院の廃止などを提起しています。大胆な政策を標榜することで、市民の圧倒的な支持を得て独裁的手腕を発揮することをもくろんでいます。自民党憲法改正推進本部は、天皇を「元首」とするなど極めて保守的な「憲法改正原案」をまとめました。自民党は、サンフランシスコ条約締結60年にあたる4月28日までに成案をまとめるとしていますが、異論もあり意見集約には難航が予想されます。しかし、このような保守的勢力からの改憲議論は、そのことを基本に保守勢力の総結集が意図されることも懸念され、注視が必要です。
     
  • 米国の変化と変化しない日本
       米国政府は、2013会計年度以降、国防予算を10年間で4900億ドル(約37兆円6000億円)削減し、陸軍8万人、海兵隊2万人の削減を決定しました。米国の厳しい財政事情があります。しかし、一方で対中国政策を重視し東アジアでのプレゼンスは維持する方針も固めています。
       また、日米両政府は、普天間問題に関して、これまでセットとされてきた新基地建設と海兵隊のグアム移転や嘉手納以南の基地返還を、それぞれ切り離して実施することを決定しました。グアムに移転するとされていた約8000人の海兵隊員数は半減していますが、海兵隊グアム移転が進むものと考えます。現在、日米両政府は普天間基地移設問題に関して交渉を展開しています。米軍再編の方向性は、岩国基地、馬毛島そして沖縄本島を結んで、米国の財政難もあって混迷の方向に見えています。1995年のSACO合意の本質が何であったのかを忘れることなく、米軍基地負担増や普天間基地の恒常化などにつながらないようとりくみが求められます。
       日本政府は、沖縄県民の抗議の中、辺野古新基地建設に伴うアセスメントの沖縄県への文書搬入を、深夜に行うという異常な事態を招きました。アセスの搬入時期を問われた田中聡前沖縄防衛局長の「犯す前に犯すと言うか」という前代未聞の発言や、その後返り咲いた真部朗同局長の宜野湾市長選挙に係わる講話や名簿作成の問題、また一川保夫前防衛大臣の95年少女暴行事件を「詳しくは知らない」とする発言、勉強不足を露呈する田中直紀防衛大臣など、不祥事が続出しています。沖縄県民を軽視する政府・防衛省の姿勢の表れと言えます。
       基盤的防衛力構想を放棄した新防衛大綱、武器輸出三原則の緩和など、憲法の平和主義の中で議論を重ねてきた日本の平和・外交政策の中核を、民主党政権は国民的議論なしに簡単に変更を加えています。このような安易な政治姿勢は、日本の将来に大きな禍根を残すものと考えます。
     
  • 北朝鮮の権力継承と中国の軍事力増強
       2011年12月、かねて健康不安を伝えられていた朝鮮民主主義人民共和国の金正日国防委員長が死去しました。後継指導者には三男の金正恩朝鮮人民軍最高司令官が就任しました。前回の金日成国家主席死去の場合同様、世襲的権力継承となりました。金正日国防委員長は、金日成体制の中で20年余りの政治的活動を行っての権力継承でしたが、今回は唐突の感が否めません。金正恩体制の安定化には時間がかかるものと考えられます。世界各国が弔意を表明する中で、日本政府、野田首相は無視し続け、日朝国交回復も含めて外交のチャンスを自ら逸することになっています。2010年11月のヨンピョンド(延坪島)砲撃事件、核兵器開発疑惑など北朝鮮をめぐる情勢は緊迫感を増してきましたが、北朝鮮側の新体制の下、2012年2月23・24の両日、北京において米朝協議がもたれ、ウラン濃縮活動の停止を以って食糧支援を行うとの合意が行われました。しかし、北朝鮮政府は3月15日に長距離弾道ミサイルの技術によって実用型衛星を打ち上げると表明しました。米国政府は、実施されるなら食糧支援は困難と表明しました。日本政府も「PAC-3(地上配備型迎撃ミサイル)」「イージス艦(海上配備型迎撃ミサイル搭載)」を展開し、自衛隊法を根拠として迎撃態勢をとることを表明しました。6ヶ国協議再開を含め早期に対話の途を開くことが重要です。
       中国政府は、尖閣列島(魚釣島)を重要な権益として領有権を主張するなど、東シナ海、南シナ海において、日本、韓国、ベトナム、フィリピンなどの諸国と軋轢を生じています。経済発展を背景にして国産空母建造計画が取りざたされるなど海軍力増強も進めています。このような中国の動きに対して、日本政府は日米安保を背景に、米国と一体となって南西諸島への自衛隊の増強など軍事力強化を図っています。しかし、領土問題や経済協力などの日中での外交交渉による問題解決は遅々として進んでいません。
     
  • アジアと向き合わない日本
       韓国憲法裁判所は、「従軍慰安婦問題」に関する国の不作為を違憲としました。来日したイ・ミョンバク(李明博)大統領は、野田首相に対して「従軍慰安婦問題」の解決を強く要請しました。しかし、野田首相は「解決済み」との姿勢を崩していません。尖閣列島問題や竹島(独島)問題、北方四島の問題など領土問題、北朝鮮との国交問題についても強硬姿勢を強めるばかりで外交交渉など対話を通じて解決を求めていく姿勢に欠けています。
       「脱亜入欧」との言葉に象徴される戦前の日本の外交姿勢は、資源などを求めての海外侵略と植民地政策の中で、欧米文明への憧れとアジア諸国への差別感情を国民の中に醸成してきました。そのことが今なお根深く影響を及ぼしていることは、一部政治家の度重なるアジア諸国への差別発言や南京虐殺や慰安婦問題、植民地政策や侵略戦争の評価をめぐっても明らかです。1996年に日本の教科書は自虐的として結成された「新しい歴史教科書をつくる会」は、東京裁判を否定し侵略戦争や植民地支配を美化し肯定する、史実をゆがめる国家主義的教科書を作成してきました。「つくる会」から分裂した「教科書改善の会」は、同様の「中学校用歴史・公民教科書」を育鵬社から発行し、新指導要領実施に伴う2012年度用教科書採択にあたって、採択率を歴史3.7%・公民4.0%に伸ばしています。侵略戦争の反省に基づきアジア諸国に表明している政府の見解とも異なる歴史観に基づく教科書は、そもそも文部科学省の検定を通過できるものではなく、世界に通用しない歴史観を学ぶ子どもたちの将来に大きな影響を与えるもので、看過することはできません。
     
  • 政治課題に変わった無償化
       国連人権委員会から指摘され「国連人権A規約」の課題とされてきた高校授業料の無償化措置は、民主党政権によって2010年4月より実施されました。しかし、朝鮮学校への適用については、文部科学省が「高校無償化措置は政治的課題ではない」とし、市民運動団体や平和フォーラム、そして朝鮮学校生徒の必死の訴えにもかかわらず停止された状態が続いています。この問題に対しては、国連人権委員会が「一部の政治家の態度」と指摘したように、日本に在住する外国人生徒の人権と国家間の外交問題を区別できない一部の差別的政治家の姿勢が大きな障害になっています。
     
  • 進展遅い人権課題
       国連人権委員会から指摘されているとおり、代用監獄制度や密室の取調べ、証拠の不開示など日本の警察・検察制度は多くの問題をはらんでいます。そのことが、布川事件、袴田事件、狭山事件などの冤罪を引き起こす温床となってきました。郵便不正事件の検察の証拠ねつ造や警察官による暴力的な取調べの実態などが明らかになる中、取調べの可視化や証拠の全面開示など喫緊の課題とされています。しかし、その制度設計については、検察側から捜査上の問題を指摘されるなど具体化されていません。
       人権救済機関の設置が急務となっています。政府案は実効性に疑問があるなど問題点も多く、その克服が運動の課題となっています。民主党が当初その実現を求めた在留外国人の地方参政権付与についても、結局実現せずに今に至っています。国連人権規約委員会や人種差別委員会などからの多くの勧告に対して回答できる状況にはなく、人権後進国という汚名をぬぐい去ることができないでいます。
       この7月から「改正」入管法が施行されます。外国人の住民登録を入管法の一本化する法改定は、何らかの事情で住民登録されていない外国人を、地方行政サービスから排除することになり、人道上の問題を誘発するものです。
     
  • 第3次男女共同参画基本計画の実効化を
       2010年12月17日に閣議決定された「第3次男女共同参画基本計画」に基づいて2011年度男女共同参画社会の形成の促進施策が決定され、政策・方針決定過程への女性の参画拡大、男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革など16項目に及ぶ施策が具体化されています。しかし、世界経済フォーラムの発表した2010年の世界男女格差指数(GGGI)では日本は134ヵ国中94位、国連の女性活躍度指数(GEM)も109ヵ国中57位と低迷している状況にあり、社会の活性化の視点からもなお一層の女性の社会参画が求められます。
       東日本大震災にあたっても、女性労働者の雇用の実態は極めてきびしいものがあります。女性が生きづらい社会を突破するためにも、実効的な施策の充実が求められます。
     
  • 福島原発事故をめぐって
       福島原発事故によって放出された放射性物質に汚染された地域は、未だ住民が帰還できる状況ではありません。また、政府や地方自治体が進める放射性物質の除染作業についても、汚染土などの処分、作業での被曝、除染後における放射線量の上昇など問題の多いものとなっています。また、事故を起こした福島原発1号機から4号機については、①放射性物質の放出が止まらない、②汚染された冷却水の保管場所が不足しているなど、野田首相による収束宣言からはほど遠いものとなっています。再稼働を急ぐかのような、ストレステストへの対応や原発寿命の実質60年容認など、日常生活において低線量被曝にさらされる福島県民をはじめ多くの市民から非難の声が上がっています。
       2011年3月11日にM9.0を記録した東北地方太平洋沖地震以降、地震に対する新しい知見が多く出されています。また、原発事故そのものの調査も中間的なものであり、現時点での再稼働など国民理解を得るものではありません。脱原発の方向性を明確にし、すべての原発が停止する今夏の状況を見つつ、新しいエネルギーへの国民的議論を展開すべきであると考えます。
       政府が「成長期にある若者の放射線の影響を考慮し、18歳未満の健康診断を無料化すべき」とする要求に応えないため、福島県は独自で無料化を実施するとしました。一部専門家の「低線量被曝は人体に影響はない」とする宣伝は、「根拠のないもので、日常的な低線量被曝の影響についてはその知見が得られていない」というのが正確な表現であり、被曝量を低減することはとくに成長期の人体にとって重要なことと言えます。
       全国各地で、震災でのがれきの受け入れ・処分の問題が浮上しています。「がれき問題」の本質は放射性物質に汚染されたことにあります。このことは、原子力発電を進める中で、避けて通ることの出来ない「高レベル放射性廃棄物」の処分問題と同様の意味を持つものです。問題を解決することなく原子力政策を進めてきた政府・電力会社の責任に帰するものです。政府は、がれき受け入れを強制するのではなく、説明責任を果たすとともに、「脱原発」の方向性をしっかりと示した上で国民的議論に付すべきであると考えます。
     
  • 高揚する脱原発運動
       大江健三郎さんや鎌田慧さんなどの呼びかけに応じた「さようなら原発1000万人アクション」は、2011年9月19日明治公園に6万人を集め、脱原発の世論が極めて大きいものであることを示しました。「さようなら原発1000万人署名」も多くの市民の手によって、全国各地でとりくまれています。
       震災と福島原発事故から1年目の3月11日、福島県ではあらゆる立場の県民が結集し「原発いらない!3・11県民大集会」が郡山市で開催されました。また、全国から福島に連帯するかのように多くの集会が市民の手によって開催されました。「さようなら原発1000万人アクション」の運動は、これまでの枠を超えて大きく広がりつつあります。
       いま全国で、それぞれがそれぞれの方法で脱原発の思いを形にしています。新聞報道は「民主主義が動き出した」と、この「1000万人アクション」の運動を表現しました。「我慢強い」と言われ続けた国民が、声を上げつつあることが感じられます。政府は、今夏をめざして「エネルギー基本政策」に関する国民的議論を展開するとしていますが、運動の力と市民の圧倒的な声が求められています。
     
  • 核燃料サイクル計画の破綻
       2010年の再稼働後も多くの問題や事故を起こした高速増殖炉「もんじゅ」は、福島原発事故以降その存在意義を根本から問われています。政府は、維持費用以外の予算を計上しませんでしたが、維持費用でさえ1日5500万円という膨大なもので、早期の廃炉が求められます。一方で、1月に再稼働した六ヶ所再処理工場でも、ガラス固化体製造過程において、従来とは別の炉で問題が発生し、停止を余儀なくされました。
       高速増殖炉研究は、世界中でその危険性から放棄されたものです。プルトニウム利用が現実化しない中での再処理も、単に核兵器に転用可能な危険なプルトニウムを大量に保有することにつながり、核セキュリティーや核拡散の視点からも極めて問題です。 そのような中で、石破茂自民党政調会長は、「核燃料サイクル計画は、日本の核抑止力として重要」との発言を行いました。歴代の自民党政府が「プルトニウム利用・再処理」を核兵器と結びつけて考えてきたことの証左であり、被爆国日本のもつ「非核三原則」に照らしても重大な問題と考えます。
     
  • 崩壊するNPT体制と原発輸出
       福島原発事故後、「原発に依存しない社会をめざす」として今後のエネルギー政策を議論しようとしている中で、日本政府は、ロシア、韓国、ヨルダン、ベトナムとの原子力協力協定を締結しました。また、米国が原子力協力協定を締結したインドとの交渉再開も決定しました。背景には、米国および日本の原発関連企業の思惑があります。しかし、核疑惑に揺れるイランと政治的つながりの深いヨルダンや、NPT非加盟国で核兵器保有国のインドなど、核拡散の観点からもNPT体制を骨抜きにするもので、核兵器廃絶を希求してきたこれまでの日本政府のあり方を根本から覆すものです。
       2012年1月14~15日に開かれた「脱原発世界会議」に出席したヨルダンの国会議員モオタシム・アワームレ保健・環境委員会委員長が、ヨルダンでは原発の冷却に必要な水を確保できず極めて危険であると発言しているように、今後の原発輸出には多くのリスクがともなうものと考えられます。
       脱原発を宣言したドイツでは、原発関連では国内最大企業のジーメンス社が原発事業からの撤退を決定しました。フィンランドのオルキルオトにおいて「欧州加圧水型軽水炉(EPR)」の建設工事を受注したフランスのアレバ社は、工事期間の延長とコストの増大によってきわめて重大な局面にあります。原発依存率が高いフランスにおいてさえ、脱原発の主張が高まりつつあります。日米の原発産業への積極的姿勢は、経済面からもリスクの高いものといえます。
     
  • 米国主導のTPPは日本を壊す
       環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加をめぐって、農業関係団体をはじめ反対運動が全国的に展開されました。ASEAN諸国と日中韓の東アジア経済圏に対して、くさびを打つかのような米国主導の自由貿易構想への安易な参入は、東アジア経済の将来にとって、また、日本経済の将来にとって禍根を残すものと考えられます。米国は、日本の軽自動車制度、医療制度、共済制度など、市民の生活基盤に直結する社会的共通資本に関わる要求を提起しています。現在でもきびしい市民生活の基盤をこれ以上破壊することは許されません。
       また、自給率の低下と所得減による離農や後継者不足問題を抱える日本の農業など第一次産業への影響が強く懸念されます。直接所得補償制度や食糧自給向上策、また集落営農や生産法人の推進など地域農業の実情を加味した経営規模拡大施策など、日本の第一次産業再生への抜本的な政策は喫緊の課題となっています。
     
  • 放射性物質と食料汚染
       福島原発事故にともなう放射性物質による土壌などの汚染は深刻です。稲わらの汚染やそれに伴う牛肉の汚染は畜産農家を直撃しました。農地や山林の汚染、海洋や河川の汚染などにともない、農水産物に含まれる放射性物質が注目され、そのことによる健康被害に関心が高まっています。厚生労働省は、これまでの暫定規制値を見直し、新たな規制値を施行しました。食品などによる内部被爆の問題は、これまで明確な知見がないために、規制値の根拠はあいまいです。基本的には外部・内部問わず被曝量を最小限に抑えることが重要であり、食品の放射線量の細かな測定と公表は重要です。
     

2) とりくみの基本スタンス

  • 新しい社会のあり方と結集軸
       2011年3月11日の東日本大震災および福島第一原発事故は、日本社会に大きな衝撃をもたらしました。これまでの社会のあり方の矛盾が、未曾有の災害と事故の中で大きく浮かび上がっています。
       「憲法理念の実現」と「人間の安全保障」を求めて運動を展開してきた平和フォーラム・原水禁は、3・11以降「一人ひとりの命に寄り添う社会と政治」をスローガンに、危険な原発を中心としたエネルギーから「太陽と風、大地、自然の恵みをエネルギーに!」として脱原発・持続可能で平和な社会をめざす「さようなら原発1000万人アクション」を、大江健三郎、鎌田慧さんなどの呼びかけ人の協力を持って立ち上げました。2011年9月19日に、「さようなら原発全国集会」を明治公園で開催し、予想を超える6万人の市民・労働者が結集しました。これまでのとりくみになかった、一般市民の脱原発を求める声が結集した大規模な集会となりました。福島事故以降、これまで闇に閉ざされてきた「原子力村」なるものの実態が少しずつ明らかになっています。旧来の自民党政治が引きずってきた社会・政治構造を打破し、脱原発の実現から新しい社会を求めていく運動を、今こそ大きく広げなくてはなりません。
       閉塞感漂う社会に風穴を開けることは、その中で将来への不安を抱えて暮らすとくに若い世代の立ち位置を私たちの運動の側に引き込んでいくことになると考えます。大阪維新の会や減税日本、また石原慎太郎都知事や亀井静香国民新党党首が模索する新党構想など、国民の不満に乗じた勢力が台頭しています。しかし、これらは皆、権力掌握のためには手段を選ばず、そのために注目されるよう政策提起をしているに過ぎず、新しい社会のあり方を示し得る勢力ではありません。私たち運動の側からの「新しい社会のあり方」への提起が求められています。
       米国の東アジア戦略に追随し、戦前の植民地政策大陸侵略政策からのアジア蔑視の感覚から抜け出せない日本社会に、将来への構想はありません。日韓における現在の文化交流にみられるような、新しいアジアとの関係を今こそ創り出さなくてはなりません。日米安保と経済成長政策という戦後レジームから抜けだし、「一人ひとりの命」を基本にした成熟した日本社会をめざすとりくみが重要です。
       民主党政権は、米国追随の旧来の社会のあり方や官僚機構の中でマニフェストの実現に苦しみ、国民の信頼を失う結果となっています。国家戦略局で議論されるエネルギー基本計画や日米の交渉が進展しつつある普天間基地移設問題などに対して国民や沖縄県民の生活から見えてくる政策の提示、働く者の将来への安心と子どもたちの夢が描ける「生活第一」とする社会像の具体化による信頼回復が求められています。そのためには、運動の側から提起が重要です。
       平和フォーラム・原水禁は、「米国との対等なパートナーシップ」「東アジア重視」という民主党が掲げた社会像を運動の側から実現するため、民主・社民リベラル勢力の結集と動き出した市民や若い世代と手を携えて、とりくみに全力を尽くします。
       また、労働者のナショナルセンターである連合は、これまでの原発中心のエネルギー政策を0ベースで見直し「原発に依存しない社会をめざす」として、内部プロジェクトを立ち上げ議論を展開しています。平和フォーラム・原水禁は、これまで核兵器廃絶とヒバクシャ支援の課題を、連合・核禁会議とともにとりくんできました。私たちの考える「脱原発・持続可能で平和な社会」の実現のために議論できるステージを求めるとともに、運動の広がりを求め更なる連携の強化をすすめていきます。
     
  • 具体的とりくみの視点
     
  1. 沖縄普天間基地移設問題を中心とした米軍基地縮小撤去に関するとりくみ
       日米交渉の中で、米国政府は辺野古新基地建設の断念と普天間基地の返還について話し合いがもたれているとの報道があります。太平洋の米軍プレゼンスを後退させないとしながらも、沖縄の米軍基地問題での沖縄県民の反発は、世界の警察を標榜する米軍の世界展開へ大きな圧力となっています。米国議会では、米国財政を圧迫する軍事予算が、しかし、世界の反発を買っている事実を指摘する声が上がっています。米財政の悪化に伴っての米国議会、米国世論の変化が読み取れます。米軍事占領下から日本復帰して今年で40年、しかし米軍基地の負担にあえぐ、変わらない沖縄の現実があります。40年目にあたって、平和フォーラムとして、私たちの運動をどのように捉え直し、再構築するかの極めて重要な転換点あります。昨年の原水禁沖縄大会で示した、国策に翻弄され「命」をないがしろにされる沖縄の現実しっかりと運動に刻み込んで行かなくてはなりません。基地と原発が根本的に戦後社会の象徴的な矛盾であることを、国民全体の共通理解にして、日本社会の次なるステージへとつなげる運動にとりくみます。
       米国の東アジア政策に追随することなく、新防衛大綱の意図する東アジアでの軍事力の日米共同展開に反対し、これまでの基盤的防衛力構想・専守防衛政策と自衛隊のあり方を検証しつつ、自衛隊のこれからに関する議論をすすめます。アジアでの脅威となることなく、侵略戦争・植民地政策の反省に立ってアジアでの平和構築のイニシアチブを担うよう、各国平和団体・NGOとの連携を強め運動を展開します。
     
  2. さようなら原発1000万人アクションへのとりくみ
       枝野経産大臣は「原発の再稼働への国民理解は困難であり、今夏は原発なしに乗りきることが必要」との見解を示しています。しかし、原発寿命の実質60年容認やストレステストの評価の是認など、経済効率優先の既存原発再稼働容認の方向性も示されています。国家戦略局エネルギー・環境会議は、今春にエネルギー基本計画の選択肢を示し、今夏を目途に国民的議論に付すとしています。平和フォーラム・原水禁は、「さようなら原発1000万人署名」を貫徹し、7月16日代々木公園で予定している「さようなら原発10万人全国集会」を成功させ、脱原発の方向性を明確にしていくために全力でとりくみます。
       また、放射線被害が及ぼす福島県民の健康問題や原発事故による補償問題の政府交渉、3月に開設した福島県平和フォーラム放射線測定所を利用しての食品・土壌などの放射性物質汚染調査、河川などの放射性物質汚染調査、原発労働者の被曝問題、原子力発電所事故への住民意識調査など、福島県民の現実に依拠した「フクシマ・プロジェクト」を進めます。
       政府は、諸外国との原子力協力協定を結んで国策として原発輸出を行おうとしています。米国とインドの原子力協力協定が、NPT体制を空洞化する懸念を持つように、核拡散の視点からも日本政府の姿勢は極めて問題です。平和フォーラム・原水禁は、その運動の原点に立ってNPT体制・核不拡散条約の実効化に向けとりくみを強化します。
       今年6月25日には長崎地裁で「被爆体験者」の訴訟に対する判決があります。戦後67年を数え、被爆者の高齢化が進む中で、被爆者課題は喫緊のものと言えます。福島原発事故の低線量被曝の問題も含めて、とりくみを強化します。
     
  3. 人権課題へのとりくみ
       東アジア諸国との友好・協力関係を構築するために、朝鮮民主主義人民共和国との国交回復、東アジア非核地帯構想の具体化、東アジアでの共通の安全保障体制の具体化、在日外国人の地方参政権問題、朝鮮学校への高校授業料無償化措置の適用、朝鮮学校を支援する全国ネットワークの立ち上げ、育鵬社・自由社版中学校用歴史・公民教科書の採択問題など多くの課題に真剣に向き合い、戦前から続くアジア蔑視の国民的感情に基づく国家主義を克服する運動を展開していきます。戦後補償なくしてアジア諸国との関係回復は進みません。
       議論されている人権救済機関の立ち上げ、取調べの可視化や証拠の全面開示、「改正」入管法の問題、男女共同参画・女性差別の問題など社会的弱者に依拠した運動を展開し、人権後進国である日本の現状を打破するようとりくみます。
       東日本大震災からの復興においては、憲法の理念に沿って「人間の安全保障」が図られなくてはなりません。人権の視点から、とりくむべきものは多いと考えます。被災者の生活確保の視点からのとりくみが重要と考えます。
     
  4. 米国主導の自由貿易構想に反対し、食糧自給などの日本社会の生活基盤を守るとりくみ
       実質的なTPP交渉に入ることを決定した日本政府は、しかし、その交渉による日本社会への影響を明確にしていません。グローバル化の中で、世界の平和を創り出すにおいて富の独占と収奪を排除し、公正な再分配を行うことは重要な課題です。そのことと日本社会の共存を図ることが重要であり、地方公共サービスやこれまでに培った社会的共通資本を守ることは、「一人ひとりの命に寄り添う社会と政治」にとって重要です。TPP交渉に関してはそのことを基本に、とりくみを進めます。きびしい国際競争の中でも、日本の農業を中心とした第一次産業の基盤を守ることは可能であり、実効的・継続的な政策を求めていかなくてはなりません。「人間の安全保障」にとって重要な課題といえます。

2. 平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざすとりくみ

  1. 憲法の理念を実現するとりくみ
       憲法は前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意」し、第9条で「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で「基本的人権の本質、普遍性、永久不可侵性」を定めています。平和フォーラムの基本的立場は、これらに示された憲法理念の擁護と実現をめざすとともに、人権や民主主義の国際的な確立にむけた世界の到達点に立って、さらに発展させることです。そして、東北アジアの平和に向けたとりくみや、人々の生命の尊厳や生活を最重視する「人間の安全保障」の具体化をめざしてきました。
       2009年9月に誕生した民主党を中心とした新政権は、政権発足に先立つ「連立政権樹立にあたっての政策合意」で、「憲法」について、「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と明記しました。また、米国一辺倒の安全保障から、東アジアや環太平洋の安全保障体制の構築を政権として打ち出す大きな好機でした。
       また、2011年3月11日の「東日本大震災」は、東北地方を中心に日本各地に大きな被害をもたらし、東京電力福島第一原発事故は大量の放射性物質の放出問題などがつづき、なお収束の動きは確立されていません。平和フォーラム・原水禁は、この事態に脱原発へのエネルギー政策転換を求めて強い信念を持って立ち向かい、生活の基盤と雇用を失い、そして放射能汚染によって故郷を失っている現実に、私たちは「生存権」の問題として向き合うことが求められていることが明らかになりました。生命の大事さが被災者をはじめ多くの住民の基本におかれるなど、平和・人権・民主主義の憲法理念が定着しているあらわれといえる状況も示されており、民主党を中心とした政権の発足にあたって打ち出された政治の方向をあらためて築くことが求められました。
       しかし、民主党政権は、発足当初から右往左往しながら結果としてマニフェストや政権公約に反する動きをとってきました。鳩山内閣時の東アジア共同体に向けた検討や菅内閣時の韓国併合100年に際しての首相談話の一方で、米国との対等の関係を求めるとしながら、沖縄の普天間基地問題で私たちを裏切り、東アジア重視と言いながら、尖閣諸島の問題では対中国関係を悪化させ偏狭なナショナリズムを煽る動きを強めました。高校授業料無償化では朝鮮学校を排除し、外国人地方参政権付与法案なども見送られてきました。大震災と原発事故という未曾有の事態にあたっても、菅内閣時の脱原発に向けた動きの一方で、震災復興の混乱のなかで、「想定外」とされる事態がつづくなか、「非常事態」「危機管理」「超法規」などの名目で憲法理念を歪め、逸脱する動きが起きてきました。米軍や自衛隊の活動は、災害復旧やその協力の域を超えて、日米の共同軍事作戦行動の側面が浮き彫りにされました。
       対米関係を最重視し、9条改憲と集団的自衛権行使、A級戦犯は戦争犯罪人ではないとの発言など、これまで示してきた政治姿勢からは右傾化の危険性を強くもつ野田佳彦首相の内閣では、民主党内状況など流動的要素もありますが、武器輸出三原則見直しが強行されました。また、1980年代に廃案となった国家秘密法を焼き直した秘密保全法制の制定やPKO参加5原則の見直し、消費税増税や社会保障の制限、原発政策の推進、TPP参加など国民生活に犠牲を強いる動きも強くすすめています。
       このもとで、平和フォーラムは、それまでとりくんできた改憲手続法の見直し、米軍再編と深くかかわる「集団的自衛権」の行使に向けたなし崩し的な解釈改憲を許さないこと、沖縄普天間基地の返還などに当面する焦点をあてた、「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」や、不十分ながらも打ち出された韓国併合100年にあたっての「菅首相談話」(政府見解)を活用していくとりくみをすすめるとともに、震災・原発事故を受けて「生命の尊厳」「生存権」「人間の安全保障」に焦点をあてたとりくみを行いました。
       5月3日を中心とした5月の憲法月間には、東京の「生命の尊厳、人間の安全保障をめぐって憲法を活かす」をテーマにした「施行64周年憲法記念日集会」をはじめ、全国各地で脱原発・エネルギー政策転換などの課題を加えた集会・行動をとりくんだほか、「9の日」などの定例や節目の日のとりくみをおこないました。
     
  2. 「改憲手続法」をめぐって成年年齢の18歳への引下げなど附則における検討条項について政府の検討状況の報告と質疑が行われはじめており、今後さらに動きが活発になると見られます。改憲発議を3分の2から過半数に引き下げることを目的とした超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」(2011年6月発足)や大連
       「日本国憲法の改正手続に関する法律」(改憲手続法)については、2010年5月18日に施行されたことにより、法的には国会で改憲原案の議論や改憲案の作成ができることになりました。同法で定められた憲法審査会は、衆議院では麻生政権下の2009年6月に規程が強行採決で制定されましたが、対立構造となったため、始動してきませんでしたが、参院でも2011年5月18日に、委員45名にするなどの内容で憲法審査会規程が民主・自民などの賛成で制定されました。秋の臨時国会ではそれぞれ委員が選定され、第1回会合で会長が選任(衆議院・大畠章宏会長、参議院・小坂憲次会長)されるなど始動しはじめ、4回の会合では委員からの意見表明や参考人意見聴取が行われました。第180通常国会では、2月下旬から衆参両院でそれぞれ開会され、選挙権年齢・立や政界再編の動きなどと連動する危険性にも注意する必要があります。不安定な政治状況は、大阪での橋下徹市長(前知事)率いる維新の会などは、ハシズムとも称されるバッシング手法で人権や民主主義を否定する動きも加速させています。さらに、3月10日に原案が公表された大阪維新の会「維新八策(船中八策)」は、首相公選制、参議院廃止、憲法9条改正国民投票、改憲発議要件の緩和など明確に改憲を打ち出したものであり、これらが大連立や政界再編の動きと結びつくことを含めて十分に警戒することが必要です。
       また、自民党は、2012年度運動方針案に「憲法改正原案の国会提出」を打ち出し、「第2次草案」(2005年の第1次草案を改定したもの)を、4月28日のサンフランシスコ対日講和条約発効60周年を目途に発表するため作成中です。天皇元首化や自衛軍の明記など伝来の復古的改憲色を強く打ち出すとともに、震災を口実とした動きとして、大規模災害の発生や武力攻撃事態に際して人権を制限し、首相に強力な権限を与える「緊急事態条項」の導入なども盛り込もうとしており、十分注意しなければなりません。
       憲法をどうするかに関わる法律は、どの法にもまして憲法の理念に立脚し、基本的人権の尊重や主権在民の原則に沿う必要があるにもかかわらず、「改憲手続法」は、それに反して国民投票の成立要件を「有効投票総数の過半数」とする低い基準としたり、公務員や教育者の運動を制限するなど、まさに「憲法改悪のため」のものです。審査会活動以前の問題として、参議院で18項目もの附帯決議がついた欠陥法であり、その問題点など法の見直しをすすめることが何よりも必要です。
     
  3. 「平和基本法」をめぐって
       大きな転換点にあるなか、平和・軍縮への道筋を切り拓くため、「平和基本法」の確立に向けたとりくみが重要です。東日本大震災は、災害救助隊の重要性と役割を明らかにしました。憲法第9条を具現化するためにも、日米軍事同盟・自衛隊の縮小・改革とそのための基本法が不可欠です。平和フォーラムは、①国家の交戦権否定、②集団的自衛権禁止、③非核三原則、④武器輸出三原則、⑤海外派兵禁止、⑥攻撃的兵器の不保持を条文に明記し、⑦文民統制原則、⑧国連中心主義をかかげること。さらに、自衛隊を改編し、①国土警備隊、②平和待機隊、③災害救助隊に分割すること。当面存置される「国土警備隊」は、組織・任務・装備の面で、「陸海空その他の戦力」に当たらないものに限定すること。大幅に削減される予算・人員・施設を、「災害救助」と「国際協力」分野にふりむけ、憲法前文と9条にふさわしい日本の姿を世界に示すこと―などを内容とする「平和基本法」により、まず東アジアに「EU型共通の安全保障」を実現、最終的に国境を越える地球ぐるみの「人間の安全保障」へと発展させていく大きな流れを政治のなかに活かしていくことを提起しています。「専守防衛」や「武器輸出三原則」「非核三原則」の見直し論など平和・軍縮に逆行する動きがすすむなか、今後の国のかたちを提起するものとして、補強していく必要があります。
     
  4. 「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」について
       憲法理念の実現をめざす第48回大会(山形県山形市)は、「震災から考える、『人間の安全保障』で『生命の尊厳』を」と題して開催しました。討議の中心は、震災の復興と脱原発であり、被災地の実情が率直に報告されるとともに、これからの長い放射能とのたたかいに向けた提起が相次ぎました。震災によって、原発事故によって、生命を失い、生活の基盤を失った人々に対して、政治は何をすべきなのか、憲法の規定する「生存権」をめぐる大きな課題であり、開会総会、シンポジウム、分科会・フィールドワーク・ひろば、閉会総会にいたるすべての場で討議は行われました。政治状況は、民主党政権は、次々とマニフェスト・政権公約に反する動きをとるなかで、あらためて米国の言いなりになるのではなく、アジア諸国との友好の絆を紡いで、新しい日本の将来を切り開くのかの重要な選択を迫られているときであり、とりわけ、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故という事態を経たいま、市民との不戦の交流、平和連帯・共通の安全保障を明確にする東北アジアの非核化と平和環境の醸成のとりくみや、人権や民主主義の確立、そして人々の「生命」や生活を重視する「人間の安全保障」のとりくみが必要です。また、基地問題を中心とした安全保障政策や、原子力を中心にしたエネルギー政策などの日本の根幹に関わる諸政策が、これまで市民の意見の反映なく続けられてきたという重大な問題点が明らかにされました。そのためにも「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求めて「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみを大規模にすすめていく必要があります。私たちは「我慢」と「自己犠牲」の時代から、自らを「主役」とする時代へと大きな転換を求めなくてはなりません。これからの長い放射能とのたたかいとともに、社会と政治を変えていく必要性をあらためて確認した大会でした。
       大会には、全国47都道府県、東北と山形県内を中心にあわせて2500人が参加した熱気あふれる大会となりました。東北は大震災と原発事故によるさまざまな困難をかかえていたにもかかわらず、東北ブロックの強く連携した協力と初めての大会の周到な準備と参加のとりくみを精力的に行った山形県実行委員会の尽力によって、参加者の心に強く残る大会となりました。大会の運営に向けて多数の要員を配置し、期間中に連日、速報ニュースを発行するなど献身的なとりくみで成果ある大会となりました。
       このような状況で迎える憲法施行65周年について、平和フォーラムは、本年も憲法記念日など5月の憲法月間の記念行事を全国的にとりくみます。大震災・原発事故という事態とともに、安保条約60年・沖縄復帰40年の節目であることを踏まえて、「生命の尊厳」「人間の安全保障」「国際協力」と沖縄問題などをテーマにするものとします。また、第49回護憲大会を上関原発建設や米軍岩国基地に対してとりくみを長年続けてきた山口で開催します。

  《2012年度運動方針》

  1. 戦争被害の悲惨な実相などを明らかにしながら「軍事力による平和」という逆行した流れを許さず、人々の「生命」「生存権」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていく「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」、「9の日行動」などのとりくみをすすめます。「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求める「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみと連携します。
  2. 新しい時代の安全保障のあり方や、米国や東アジア諸国との新たな友好関係についての国民的議論を巻きおこすとりくみを引き続きすすめます。
  3. 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し、立憲主義を確立するため、米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、「集団的自衛権の行使」に向けた憲法解釈変更を許さないとりくみをすすめます。また、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約については、平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
  4. 「改憲手続法」について、民主党、社民党との連携をいっそう強化し、参院特別委での18項目特別決議などを活かし、法の見直しを求めてとりくみます。
  5. 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し、立憲主義を確立するため、米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、「集団的自衛権の行使」に向けた憲法解釈変更を許さないとりくみを引き続きすすめます。また、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約を平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
  6. 5月3日の「施行65周年憲法記念日集会」(東京・日本教育会館大ホール)をはじめ、憲法記念日を中心に5月を憲法月間として、「生命の尊厳」「人間の安全保障」「国際協力」と「平和基本法」の重要性などをテーマとした多様なとりくみを全国各地ですすめます。自治体などに対して、憲法月間にその理念を活かした行事などの実施を求めます。
  7. 憲法問題の論点・問題点整理をおこなうため、適宜、課題に応じて「憲法学習会」をおこないます。中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。
  8. 本年度の「憲法理念の実現をめざす第49回大会」(護憲大会)は、憲法をめぐる動きが重要な局面にあることを踏まえて、下記日程で山口県山口市において2500人規模で開催します。
          11月  9日(金)午後      開会総会(山口市・維新百年記念公園アリーナ)
          11月10日(土)午前      分科会(山口市内)
          11月11日(日)午前      閉会総会(山口市)

3. 東アジアをはじめ世界の平和と安全保障に関するとりくみ

1) 平和実現のとりくみ

  1. 安全保障政策に関する動き
    アメリカの世界戦略の変更と中国包囲政策
       2012年1月5日、アメリカのバラク・オバマ大統領は国防総省で演説し、アメリカの新しい国防戦略となる「アメリカの世界的リーダーシップの維持と21世紀の国防の優先事項」を発表しました。報道などによれば、新国防戦略のポイントは以下の通りです。
    1. 二正面作戦の見直し...冷戦期のアメリカの軍事戦略は、同時に発生する1つの世界戦争と1つの地域紛争に勝利するというものであり、冷戦後は同時に発生する2つの地域紛争に勝利するというものでした。新国防戦略では、1つの紛争に勝利し1つの紛争を抑止するとしています。
    2. 地上兵力の削減...イラクからの全面撤退とアフガニスタンからの段階的撤退、また欧州や中南米での兵力削減を通して、陸軍と海兵隊の兵力を削減するとしています。
    3. 中国とイランへの対処...アメリカの前方展開戦略に対抗しようとしている国として、中国とイランを名指しました。この二ヵ国に対処するためにアジア太平洋地域を重視し、この地域では兵力の削減を行わず在日・在韓米軍は維持し、オーストラリア・シンガポール・フィリピンなどの同盟国との軍事協力を一層強化するとしています。
       国防戦略の変更の背景には財政問題があります。2001年のアフガニスタン侵攻から10年以上続く戦争によって、アメリカ政府の財政赤字は拡大して国内政策を大きく圧迫しています。連邦議会内では民主・共和の両党から財政削減の圧力が強まり、軍事費も聖域ではなくなりました。アメリカ政府は今後10年間で、国防費を4900億ドル削減しなければならなくなりました。
       アメリカが中東の泥沼に足をとられている間に、アジア太平洋地域では中国が海軍力の近代化を進めました。かつての中国海軍は沿岸警備隊程度の規模であり、米軍が黄海や東シナ海など中国近海で行動することに対抗することができませんでした。しかし、ここ数年、中国海軍は大型艦を保有する外洋型の艦隊へと成長しています。中国海軍の規模は、未だ米海軍太平洋艦隊や海上自衛隊にはおよびませんが、将来的には米海軍の中国近海への接近を制限しようという戦略(アクセス拒否戦略)を想定しているようです。こうした中国の動きに対して、アメリカは中国近海での自国軍隊の活動を保証し、中国海軍の太平洋地域への進出を阻止するために、日本・韓国・オーストラリアをはじめとしたアジア太平洋地域の同盟国と連携して、中国の封じ込めを進めようとしています。
       韓国海軍哨戒艦「天安」(チョナン)の沈没事件や、北朝鮮軍と韓国軍との砲撃事件への対抗措置として、アメリカは黄海や東シナ海で軍事演習を行いました。また中国・台湾・フィリピン・ベトナムなどが国境問題で争っている南シナ海でも、同盟国との軍事演習を繰り返しています。こうしたアメリカの軍事政策に中国は強く反発し、東アジア地域での緊張が高まっています。

    民主党政権が進める日米軍事一体化
       民主党政府はアメリカの中国封じ込めを補完する外交・安保政策を推進しています。2010年12月に菅内閣が策定した新しい防衛計画の大綱では、「南西地域も含めて、防衛体制の充実を図る」として、①在沖縄陸上自衛隊の増強と先頭諸島への配備、②航空自衛隊の増強―を挙げています。また鹿児島県の馬毛島に、自衛隊と米軍が共同で使用する基地の建設を計画しています。
       昨年6月21日に行われた日米安全保障協議委員会(2+2)では、「航行の自由の原則を守ることにより海上交通の安全及び海洋における安全保障を維持する」として日米による中国封じ込めを再確認しました。また一昨年、昨年と続いて、九州・沖縄地域で、米軍と自衛隊による大規模な軍事演習を実施しています。

    武器輸出三原則とPKO五原則の緩和
       野田内閣は昨年12月『「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての官房長官談話』を発表しました。談話は武器輸出三原則を抜本的に緩和するもので、今後は海外に派遣された自衛隊が使用した装備品を当該国に寄付すること、多国間で行われる武器の共同開発に日本のメーカーが参加することの2点が可能になります。日本政府はこれまで、この2点に関連する案件については、個別に審議を行い例外的措置として認めてきました。今後はこの2点を包括的に認めることになります。武器輸出三原則は非核三原則とともに、平和国家の証として、また国是として、自民党政権時代も変えられることなく定着してきました。その武器輸出三原則を、国会議論もなく緩和してしまうことは大問題です。こうした観点から平和フォーラムは抗議声明を発表しました。
        民主党政権は2010年1月にハイチPKOへ、2012年1月には南スーダンPKOへ自衛隊を派遣しました。ハイチPKOでの自衛隊の主任務はハイチ地震によって破損した建物や道路などの修復です。しかしハイチPKO自体は2004年から続いていて、目的は政府と反政府勢力による武力衝突から治安を回復することであり、米軍が主導でPKO部隊の武力行使を容認するものです。また南スーダンでは、南スーダン政府軍とスーダン政府軍の紛争や、南スーダン政府軍とウガンダ反政府勢力の紛争、南スーダン内部での政府軍と反政府勢力の紛争などが続いています。日本政府は1992年のPKO法成立以来、いくつかのPKOに自衛隊を参加させてきましたが、民主党政権下で自衛隊を派遣した2つのPKOは、それ以前のPKOを踏み越えるものです。
       自衛隊が、より紛争の度合いが強い地域へのPKOに参加するようになった事態に合わせて、野田政権はPKO法の定める武器使用基準を緩和するために、PKO法を改正する準備に入りました。報道などによれば、他国部隊やNGOなどが襲撃された場合にも自衛隊が武器使用できるようにする、現地で自衛隊が治安維持訓練を行う―などを検討しているようです。
       さらに野田政権は、イランの核開発をめぐって紛争が起きた場合に、自衛隊を派遣するための準備にも入りました。イランは現在、ウラン濃縮を進めているとされています。この問題に関して国連原子力委員会(IAEA)はイランに調査団を送りましたが、イランはウラン濃縮に関連していると思われる軍事施設などへの立ち入りを拒否しました。イランの核兵器開発を危惧するイスラエルは、イランが核開発を継続すれば、単独でのイラン攻撃もありうると表明しています。米国のオバマ大統領は、「いかなる選択肢も排除しない。(選択肢には)軍事的要素も含まれる」と述べていますが、他方でイスラエルに対しては軍事力行使の自制を求め、国内では主に共和党側が求めるイラン強硬策に対しても「戦争には代償が伴う」として外交交渉による解決をめざしているようです。
       こうした中で野田政権からは、自衛隊機による邦人の救出活動や、米国とその同盟国がイランへの攻撃を開始した場合に米同盟軍を支援するための自衛隊派遣について検討に入りました。政府内からは特措法の制定を求める声も上がっています。
       野田政権は一方で中国の脅威から日本を防衛するとして沖縄への自衛隊配備を進め、他方で国際協力の名目で自衛隊の海外派兵を進めようとしています。こうした事態に注視し、反対運動を強めます。

    平和フォーラムの対応
       日米両国が進める軍事政策に対して、平和フォーラムはニュースや解説チラシを作成して問題点を指摘し、護憲大会や全国基地問題ネットワークの総会などの際に学習を深めてきました。また国会議員の協力を得ての政府への要請行動や、全国の加盟組織に依頼しての抗議打電行動なども実施しました。日米共同演習などに対しては、当該地域の運動組織が中心になって各種の抗議行動が行われました。
       これまでは、自民党政権の進める対米追従の外交・安保政策に関して、民主党と社民党がブレーキの役割を果たしてきました。しかし政権交代によって、現在では民主党が推進役に転換しています。今後も平和フォーラムと考え方を同じくする民主党議員への働きかけを進めますが、国会内でのブレーキが利かない分、集会・デモ・署名などを通した抗議活動や世論の醸成が必要になります。
     
  2. 米軍再編と沖縄の動き
       2012年2月8日、日米両国政府は「共同報道発表」を公開しました。ポイントは以下の5点です。
    1. 普天間基地の辺野古移設を継続する。
    2. グアムが海兵隊の戦略的拠点として発展することが、日米同盟にとりアジア太平洋地域戦略の不可欠な要素であると強調する。
    3. アメリカが行ってきた地理的分散などの米軍態勢の見直しを、日本も歓迎する。
    4. 海兵隊のグアム移転と嘉手納以南の基地返還を、普天間基地の移設と切り離す。
    5. 最終的に沖縄に残留する海兵隊は、ロードマップに沿ったものとする。
       この内容は、2005年から2007年にかけて結ばれた、在日米軍再編に関する日米合意を大きく変更するものです。最大のポイントは、普天間基地の辺野古移設と、海兵隊のグアム移転ならびに嘉手納以南の基地返還を切り離したことです。次に最初の合意で日米政府とりわけ日本政府は、海兵隊の主力部隊が沖縄に駐留していることが抑止力として重要としていました。しかし新しい合意では、海兵隊の戦略的な拠点としてグアムが重要であると述べています。また海兵隊航空部隊を沖縄から動かせない理由として、地上部隊・後方支援部隊・航空部隊が一体であることが必要としました。しかし新しい合意では、海兵隊をアジア太平洋地域に分散して配置することになりました。さらに沖縄からグアムに海兵隊8000人を移転することになっていましたが、沖縄に残る海兵隊の数については触れていませんでした。しかし新しい合意では、沖縄に残留する海兵隊の数をロードマップに沿うとして、あたかも残留する数が当初から合意されていたように記載しています。
       この発表以降、日米政府は様々なレベルで交渉を続けています。両国政府や関係大臣は交渉内容を明らかにしていませんが、報道などによれば以下の様なことが話し合われているようです。
    1. グアムに移転する海兵隊員の数を、8000人から4700人に削減する。
    2. 残る3300人は、ハワイ・オーストラリア・フィリピンなどアジア太平洋地域のアメリカ同盟国への配置とする。また一部、日本本土への配置も検討する。
    3. グアムに移転する海兵隊は、2006年当時は第3海兵遠征軍の司令部部隊を中心としていたが、現時点では司令部部隊と第31海兵遠征隊(31MEU)を沖縄に残し、実戦部隊の多くを移転することを検討している。
    4. 第1海兵航空団の司令部を日本本土へ移転する。

    辺野古新基地建設アセスの強行
       野田佳彦内閣は昨年11月、辺野古新基地建設に関する環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県知事宛に提出する意向を固め、沖縄側を懐柔するために玄葉光一郎外務大臣・一川保夫防衛大臣・前原誠司民主党政調会長らが次々と沖縄を訪問しました。こうした中で11月28日、沖縄防衛局の田中聡局長は報道陣との懇談会で、評価書の提出時期を明言しない一川大臣の真意について問われ、「これから犯す前に犯しますよといいますか」と発言しました。女性差別であり沖縄差別である発言に対して、沖縄県内では強い反発が沸き起こり、翌29日には一川防衛大臣が田中局長を更迭しました。この問題に関して平和フォーラムは、11月29日に抗議見解を発表するとともに、加盟組織に打電行動を要請しました。
       12月26日から28日までの3日間、沖縄平和運動センターを中心とした「基地の県内移設に反対する県民会議」は、評価書提出阻止行動にとりくみました。連日300人を超える人々が県庁に結集して搬入を阻止してきましたが、沖縄防衛局は28日の早朝4時に県庁への搬入を強行しました。このまま進めば、環境影響評価の手続きは6月ごろには終了し、国が沖縄県に対して、公有水面埋立免許申請を行うことになります。また田中直紀防衛大臣の発言で、政府は年内にも新基地建設に着工する計画を持っていることが明らかになりました。
       2012年3月27日、沖縄県は国に対して、アセスメントに対する県知事意見を提出しました。県知事意見では、辺野古での基地建設は「生活や自然環境の保全は不可能」で、埋め立ては「免許することができない」としました。
       こうした沖縄側の明確な拒否にもかかわらず、野田首相は国会答弁で従来の政府方針を進めると表明しました。今後は、埋め立て不許可を不服として、政府が沖縄県知事を裁判所に訴えることや、政府の一存で埋め立てができるようにする特別措置法の制定などが考えられます。
       平和フォーラムは政府による基地建設を許さないために、沖縄と連帯してとりくみを進めます。

    MV-22オスプレイの沖縄配備と高江ヘリパット建設工事
       日本政府は昨年6月、海兵隊がMV-22オスプレイを、2012年中に沖縄に配備することを明らかにしました。防衛省はオスプレイの安全性を強調していますが、アメリカは日本に対してオスプレイの詳細なデータを提供しておらず、防衛省が安全性の根拠としているものは、全てアメリカがインターネット上で公開している情報でした。さらに海兵隊は、当初は2012年10月以降としていた配備時期を、6月以降に前倒ししました。オスプレイについては専門家から構造的な欠陥が指摘されています。こうした欠陥機が、宜野湾市の上空を飛行することは許されません。
       また北部訓練場のある東村の高江では、オスプレイの運用を前提としたヘリパットの建設を沖縄防衛局が進めようとしています。これまで地域の住民や、基地の県内移設に反対する県民会議は、座り込み行動によって建設工事を止めてきました。しかしオスプレイ配備に伴い、建設が強行される恐れがあります。辺野古新基地建設と同様に、ヘリパット建設についても阻止行動への支援を行います。

    平和フォーラムの対応
       「沖縄5・15平和行進」(2011年5月15日・宜野湾市、3000人)が行われました。昨年の平和行進は、東日本大震災の直後でもあり、本土の仲間には震災復旧支援に全力を尽くしてもらいたいという沖縄側の意向を受け、全国募集は行わず日程も1日になりました。それでも全国各地から700人が参加し、沖縄の参加者と合わせて3000人を越える人々が普天間基地を包囲するように行進しました。
       また東京では、市民団体と協力して、「辺野古アセス反対 沖縄の民意を踏みにじるな 12・15集会」(2011年12月15日・自治労会館、250人)を開催し、沖縄の闘いに連帯しました。
     
  3. 国際連帯
    日・沖・韓反基地運動の連帯
       「第4回 沖縄・韓国・日本 米軍基地環境シンポジウム」(2011年9月24日・岩国市、300人)を開催しました。このシンポジウムは、3地域の米軍基地反対運動がお互いの活動と経験を交換するために行っているものです。平和フォーラムは第1回目の集会から実行委員会として参加しています。
       アメリカがアジア太平洋地域での軍事力を増強しようとしている中で、日・沖・韓の3地域、またグアム・オーストラリア・フィリピンとの連携が大変重要になってきます。
     
  4. 宣伝活動
       学習・宣伝用の資材として、以下を作成しました。
    • 「日米安保を問う!!」第4号~第5号(印刷物を配布)
    • 「反基地運動ニュース」発行準備第1号~第6号(Eメールで清刷りを送付)
    • 各種解説資料・宣伝チラシ(Eメールで清刷りを送付)
    • ホームページ「STOP!米軍・安保・自衛隊」を通して活動の報告情報提供
       

      《2012年度運動方針》

    1. 辺野古新基地建設に関して、日本政府は2012年6~7月に公有水面埋立免許申請を行い、年内にも着工しようとしています。平和フォーラムは組織の総力を挙げて、新基地建設を阻止します。また今年は沖縄の本土復帰から40年目であり、沖縄5・15平和行進に全国から参加するとともに、復帰40周年関連のとりくみに協力します。
    2. アメリカ政府はMV-22オスプレイを、本年中に日本に配備するとしています。オスプレイは普天間基地に配備され、北部訓練場で運用され、佐世保を母港とする強襲揚陸艦に搭載されます。平和フォーラムはこれら三地域での反対運動の連携を強化し、普天間基地の閉鎖・返還、東村高江でのヘリパット建設阻止、佐世保への新型強襲揚陸艦ボノム・リシャールの配備阻止にとりくみます。
    3. アメリカと日本の政府は、厚木基地に駐留する空母艦載機部隊の岩国基地への移転を進めようとしています。さらに日本政府は、岩国基地移転後に空母艦載機部隊が行うFCLP(陸上空母着艦訓練)の施設を馬毛島に建設しようとしています。また現在は沖縄にいる第1海兵航空団の司令部を、岩国基地に移転しようとする動きも出てきました。平和フォーラムは、これらの地域の連携を強化し、岩国基地の強化反対、馬毛島FCLP施設建設阻止、厚木からの空母艦載機部隊の撤退、横須賀基地からの原子力空母の撤退を求めます。
    4. 上記を含む米軍再編の白紙撤回にとりくみます。
    5. 在沖縄海兵隊の155ミリりゅう弾砲の訓練移転や、戦闘機の訓練移転、また米軍艦船による民間港湾使用に反対します。実施に際しては、地域運動組織を中心に、中止や撤回を求めるとりくみを進めます。
    6. 武器輸出三原則の緩和や、PKO五原則の緩和・PKO法の改正、沖縄への自衛隊部隊の配備増強など、野田内閣の下で進められる軍事拡大政策に反対します。
    7. 自衛隊の市中パレードや市街地での訓練など、自衛隊による市民生活への浸透に反対します。そのために各地の運動組織が行うとりくみに協力します。
    8. 米軍基地・自衛隊基地などの周辺住民によって進められている、爆音訴訟に協力します。
    9. 米軍犯罪の被害者によって進められている、被害者補償の制度化に協力します。日米地位協定の改正にむけて、野田内閣ならびに国会への働きかけにとりくみます。
    10. 自衛隊員の自殺や自衛隊内でのいじめ・セクシャルハラスメントなどの問題にとりくみます。これらに関連して、国と自衛隊を相手に行われている裁判を支援します。
    11. 全国基地問題ネットワークや、沖縄基地問題にとりくむ市民団体、またアジア太平洋地域の反基地運動団体との連携と協力を進めます。
    12. 平和フォーラムとしての「東アジア共同体構想」をまとめます。そのために学習会や集会を実施します。平和フォーラムの考え方を野田内閣や民主党に伝え、外交・安全保障政策の転換を求めます。また「東アジア共同体構想」が国会内外で多数派となるように、民主党・社民党・無所属の国会議員との連携を進めます。

    2) 東アジアの非核・平和の確立と日朝国交正常化に向けたとりくみ

       冷戦構造のなお存続している東アジアとの関係、なかでも急成長を遂げている中国との友好な関係構築は喫緊の課題です。米国一辺倒の安全保障から、東アジアひいては環太平洋全体での安全保障体制の構築に、平和憲法を持つ日本がリーダーシップを発揮する必要があります。そうした立場から平和フォーラムは、侵略戦争や植民地支配への反省に立った国家的歴史観の構築や戦後補償、靖国問題の解決、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化などの課題をとりんできました。
       そのなかで、平和フォーラムもその実現を求めるなか明らかにされた、2010年8月10日の韓国併合100年にあたっての菅首相談話は、人道的な協力と韓国文化財の返還に触れるなど、大韓民国(韓国)の国民の感情にも配慮する姿勢等の積極的側面もありました。文化財返還につづいて、遺骨問題などで前進させる必要があります。談話は、国会での追求のなかで、政府は北朝鮮をも対象としていると答弁したものの、具体的な対応は韓国政府向けにとどまっていること、在日外国人の地方参政権否定や高校授業料無償化での朝鮮学校差別、シベリア抑留者特措法での旧植民地出身者排除など、日本が克服できていない差別の問題に踏み込んでいないなどの問題がありました。日本軍慰安婦問題は世界各国から日本政府に対して謝罪を求める声が高まっていましたが、韓国では2011年8月30日の憲法裁判所の判決により韓国政府が日本軍「慰安婦」問題をはじめ、戦後補償実現のために努力してこなかった事実が問われました。昨年12月にはイ・ミョンバク(李明博)韓国大領訪日時でも重要課題として提起されました。ソウルの日本大使館前で日本の謝罪と補償を求める行動を続けてきた水曜デモは、昨年12月14日に1000回に達し、日本でも市民による外務省包囲行動が行われ、平和フォーラムも参加しました。
       これらの解決を早急にしなければなりませんが、野田内閣では日本軍「慰安婦」問題に対して、1990年代の河野官房長官(当時)談話などで示された認識よりも後退する動きも起きています。平和フォーラムは、歴史認識と戦後処理の課題について政府・与党への働きかけをいっそう強めなければなりません。日本政府は、事実を認め、さらに実態と真相を究明するとともに、謝罪と損害賠償を行うことが必要です。また、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の制定に向けてとりくみます。
       日本と東北アジアの平和構築にあたって、世界で唯一、日本が国交を持たない北朝鮮との国交正常化と核開発問題の解決は最重要課題です。日朝国交正常化連絡会(東北アジアに非核・平和の確立を!日朝国交正常化を求める連絡会)のとりくみは、震災・原発事故の影響で多少縮小し、例年行ってきたピョンヤン宣言9周年では主催の集会は開催せず、呼びかけ人方式のシンポジウム(9月3日)に参加するにとどめましたが、11月21日に総会・記念講演会を開催したほか、定期的な学習会(6月1日、7月25日、10月24日、12月26日、1月23日、2月27日)を行いました。連絡会役員・顧問を講師とした講演会も全国各地で行われました。
       2010年3月の韓国軍哨戒艦沈没事件や、日本海・黄海での大規模な米韓合同軍事演習、2010年11月のヨンピョンド(延坪島)への北朝鮮による砲撃事件など、朝鮮半島は戦争間際へと緊張状態を極度に高めましたが、米国や中国はカーター元大統領訪朝など要人の関係国訪問、2011年1月18日の米中首脳合意以後、対話再開の動きを強めてきました。2011年12月19日、北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)国防委員長の死去の唐突な発表は、内外に衝撃を与えました。米朝協議が進み6ヶ国協議再開への道筋が見え始めた矢先でしたが、死去後も対話姿勢を続けています。韓国では、イ・ミョンバク政権はおくやみを表明し、故キム・デジュン(金大中)元大統領の家族らの訪朝を認めました。紆余曲折はありますが、2012年は米国や韓国の大統領選、北朝鮮の「強盛大国」(2012年4月15日は金日成主席生誕100年)の節目であり、2月下旬の米朝高官協議によるウラン濃縮活動停止や食糧支援の合意など対話の前進や6ヶ国協議再開に向けた動きが続いています。
       日朝間もピョンヤン宣言10周年の節目の年ですが、日本では対応のないまま、12月27日に野田政権発足後初めての拉致問題対策本部の会合が開かれ、7つの分科会を設置することになりました。日本に必要なことは、拉致対策本部の組織強化などではなく、対話の糸口をつかむことです。日朝国交正常化連絡会は、国交正常化を実現できずに世を去った隣国のリーダーの死去に対して哀悼の意を表明するとともに、拉致対会合前日の12月26日に日本政府に対して、弔意の表明や、朝鮮総連最高幹部の弔問に際しての再入国許可を認めること、日朝ピョンヤン宣言の確認、制裁措置緩和の表明、人道援助再開、国交正常化交渉に向けた接触再開、拉致問題再調査のための折衝を行い懸案解決に努力すること、の7点について緊急の要請を行いました。
       また、連絡会は4月13日の制裁延長に関連して、政府に、日本政府独自の制裁措置を延長せず対話を呼びかけること、国際的人権基準に照らし在日朝鮮人の人権侵害の疑いがある措置を即時撤回すること、日朝ピョンヤン宣言10周年に向け国交正常化交渉を前進させ諸懸案解決に向け話し合いを進めること、正常化交渉再開以前でも在朝被爆者支援のために具体的措置をとることなどを要請しました。また、制裁の実態と問題点を明らかにした冊子「制裁白書」を発行しました。
       総会を前にして、北朝鮮の人工衛星ロケット打ち上げをめぐり新たな緊張状態が生み出されました。平和フォーラムは、北朝鮮に対して周辺諸国の反応を憂慮し抑制的に対応するよう求めるともに、日本政府に対しては、ことさら北朝鮮を敵視する政策を転換し、対等な関係における対話の姿勢を構築するために、ミサイル配備などの軍事的措置をとらないことを求めました。

      《2012年度運動方針》

    1. 日中国交正常化40周年の節目を活かして、東アジアの平和の確立に向けたとりくみをすすめます。
    2. 韓国併合100年に際しての「菅首相談話」を活かし、「内閣に日本の侵略行為や植民地支配の歴史的事実を調査する機関を設置」し、全情報を開示し「残された戦後諸課題に立ち向かう」ことを政府に求めてとりくみます。関連して、次々項「5.多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ」における『5)「過去の清算」と戦後補償の実現のとりくみ』をすすめます。
    3. 日朝国交正常化連絡会への全国各地の運動組織の参加を求め、連携を強めるとともに、国交正常化に向けた世論を喚起するため、7月の総会、9月のピョンヤン宣言10周年集会をはじめ、継続的に全国各地での講演会・学習会・全国行動をおこないます。
    4. 日朝国交正常化に向けて政府・外務省、国会議員、各政党に対する働きかけをおこないます。
    5. 日朝国交正常化連絡会による東京での月1回程度の連絡会の定期的学習会や集会・行動をひきつづき行うほか、必要に応じて随時集会をおこないます。
    6. 日朝国交促進国民協会、在朝被爆者支援連絡会をはじめ、在日の人権確立や、北朝鮮の人道支援のとりくみ、韓国の平和・人道支援運動、朝鮮学校支援の市民運動との連携・交流・協力をすすめます。

    4. 教育の民主化を求めるとりくみ

       「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」とそこから分かれた「教科書改善の会(改善の会)」がそれぞれ編集した、新学習指導要領に基づく2012年中学校用歴史・公民教科書は、文部科学省の教科書検定に合格し、自由社(つくる会)および育鵬社(改善の会)から出版されました。
       2011年6月16日に「東アジアとの新しい連帯を求めて-教科書と歴史認識を考える全国集会」(東京ウィメンズプラザ)を開催し、つくる会系の教科書の問題点を明らかにするとともに、学校現場にこのような歴史観や社会観が持ち込まれることのないよう、教科書白書(歴史・公民版)などの情宣資料の作成や集会用プレゼンを利用しての各地域でのとりくみを提起しました。7月19・20日には、韓国の市民団体「アジアの平和と歴史教育連帯」のメンバーが来日し、文部科学省に日本の歴史教科書に関する韓国市民の意見を届けるとともに、記者会見を実施しました。民主党・社民党の議員や平和フォーラムとの意見交換を行いました。
       2009年に自由社版教科書を採択した横浜市やこれまでも使用を続けてきた大田原市を抱える栃木県などを中心に採択阻止のとりくみを続けました。2012年度採択に関しては、栃木県下野市や栃木市などにおいては、平和フォーラムや地元運動団体・市民の粘り強いとりくみの中で育鵬社版採択を阻止するなど、一定の成果もありました。また、市民や教組が一体となったとりくみを進めてきた東京都杉並区では山田宏区長の退陣もあって、帝国書院版が採択されました。しかし、全市1採択区とされた横浜市で育鵬社版歴史・公民教科書が使用されることとなりました。また、松下政経塾出身者が市長を務める藤沢市、益田市などで育鵬社版が採択されるなど、これまで問題とされなかった地区で採択されました。

    育鵬社版教科書の主な採択地区

    神奈川県横浜市(歴・公)、藤沢市(歴・公)、東京都大田区(歴・公)、
    武蔵村山市(歴・公)、大阪府東大阪市(公)、栃木県大田原市(歴・公)、
    愛媛県今治市(歴・公)、四国中央市(歴・公)、上島町(歴・公)、
    沖縄県八重山地区(公、竹富町は東書)、山口県岩国地区(歴)、
    広島県呉市(歴・公)、尾道市(公)、島根県益田地区(歴)、
    東京都立(都立中学、中等教育学校、特別支援学校の公民は自由社版)、
    神奈川県立(平塚中高一貫)、埼玉県立(伊奈学園)、愛媛県立(中高一貫)
    香川県立(高松北中)、沖縄県石垣市

       文部科学省は、11月1日、2012年度から全国の中学校(公・私)で使われる教科書の需要数を発表しました。それによると、育鵬社版(改善の会)の歴史教科書が採択率3.7%、公民教科書が4.0%となっています。一方で、年表の流用などが指摘された自由社版(つくる会)は、公立学校では歴史教科書は採択なし、公民教科書が都立特別支援学校でのみ使用されるなど、採択率を激減させています。採択結果は以下の通りです。

    2012年中学校用歴史・公民教科書の需要数

     
     
    歴 史
     
    公 民
    出版社
    順位
    数(冊)
    率(%)
    順位
    数(冊)
    率(%)
    東京書籍
    679,038
        52.8
     686,738
        57.0
    教育出版
    188,058
        14.6
     158,848
        13.2
    帝国書院
    180,787
        14.1
     106,665
         8.9
    日本文教出版
    161,584
        12.6
     169,480
        14.1
    育鵬社
    47,812
         3.7
     48,569
         4.0
    清水書院
    27,248
         2.1
     32,972
         2.7
    自由社
         830
         0.1
        654
         0.1

       採択率上昇の背景には、地方議会における自民党を中心とした保守系議員の育鵬社版採択への圧力と「改善の会」および「日本教育再生機構」「日本会議」による強引なとりくみ、産経新聞を中心としたマスコミの執拗な攻撃があったと考えます。
       沖縄県八重山採択地区での育鵬社版公民教科書採択をめぐる混乱では、育鵬社版を拒否した竹富町の東京書籍版採択を文科省が認めたものの、採択地区は同一教科書とされる教科書無償化措置法の適用を認めませんでした。竹富町は、市民の善意によって教科書の提供を受けることを決意しました。文科省は、地方教育行政法と教科書無償化措置法に矛盾があるとして、教育委員会ごとの無償化措置を提起しています。
       「アジアの平和と歴史教育連帯」は、2011年11月に韓国済州島において今年度の採択のとりくみに関する意見交換を行いました。平和フォーラムも参加し、連携しての今後のとりくみを確認しました。
       平和フォーラムは、「アジアの平和と歴史教育連帯」からゲストを招き、「『建国記念の日』を考える集い-アジアの連帯を求めて-」(2012年2月4日、自治労会館)を開催し、2011年度のとりくみの総括を行いました。育鵬社の採択率の上昇は、きわめて問題でありとりくみの実効性が問われています。危機感の共有とともに、広く市民と連帯したとりくみを地域ごとに確立する必要に迫られています。
       アジア諸国との友好・連帯の重要性が増している今日、アジア蔑視と侵略の歴史事実を歪曲する教科書採択が日本とアジア諸国との関係に与える影響は大きいといえます。将来の日本を支え、グローバル化する世界で活躍して行くであろう子どもたちが、世界の国々から、とくにアジア諸国から受け入れられることのない歴史観と世界のスタンダードから遠い人権感覚などの社会観を持って生き抜いていくことは考えられません。
       育鵬社版歴史・公民教科書の採択をすすめる勢力は、将来を見据えた世界観や理念なしに極めて狭い視野の中で、アジア諸国から強い反発を受ける主張を繰り返しています。私たちは、次の採択を見据えてしっかりとした世界観の中で将来の日本のあり方に対して責任を持った運動を展開していく必要があります。
       橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」が提起してきた「教育基本条例」「職員基本条例」に基づく教育のあり方が現実味を帯びてくることが予想されています。教育にそぐわない強引な業績評価の手法と教職員へのきわめて一方的な管理強化は、教育の本質を大きくゆがめ子どもたちの成長にきわめて重大な影響を与えるものと懸念されます。協力・共同の関係を一方的に放棄し選挙によってすべてが容認されるというような政治手法を、決して許してはなりません。
       1月16日、最高裁は君が代不起立を職務命令違反とした懲戒処分について、「戒告等は裁量権の範囲内ではあるが、減給と停職は慎重な考慮が必要」とする判断を示しました。この判決は、大阪府や東京都の極端な処分をめぐって出されたものであることは明確です。「国旗国歌法」の制定時に、国が「強制されるものではない」としていることや、昨年5月の最高裁判決も補足意見で「思想良心の自由を間接的に制約する側面がある」「命令に踏み切る前に、寛容の精神の下に可能な限りの工夫と慎重な配慮を行うべき」と指摘しています。今回の判決も「不起立の回数で機械的に処分を重くする東京都教委の方針は裁量権の逸脱」「職務命令そのものも違憲」との補足や反対意見がついていることなどを含めて、都道府県各教育委員会は、日の丸君が代の強制のみにとどまらず、懲戒権を振りかざしての教職員への管理強化を見直すことから、真の教育改革を始めなくてはなりません。戒告までは裁量権の範囲と解釈し、懲戒権の乱発があるとするなら判決の趣旨に反するに違いありません。権力による処分乱発は教育の荒廃をもたらすことは自明であり、そのことに抗しての教育改革が求められます。

      《2012年度運動方針》

    1. 日教組と連携し、教科書検定制度のさらなる弾力化・透明化へ向けた制度改革にとりくみます。政府・文科省等への要請にとりくみます。
    2. 採択地区の小規模化、地域や学校現場の声を反映した学校単位での教科書採択を求めてとりくみます。
    3. 採択地区協議会と異なる選択を行った沖縄県竹富町への教科書無償化の適用を求めてとりくみます。
    4. 育鵬社・自由社を採択した地区においての抗議行動にとりくみます。地区における市民と連帯したとりくみを模索します。プレゼン用CDや問題点を指摘した学習用PDFなどを利用し、地域での学習会の開催を追求します。
    5. つくる会系教科書の問題点を指摘し、採用地区の教職員と連帯して教育実践のとりくみに向けた教材の作成を進めます。
    6. アジア諸国の市民と連帯して、共通の歴史観からの新しい友好関係の構築にとりくみます。
    7. 平和・人権・環境のとりくみと、国民主権・人権尊重・平和主義の憲法理念を通じて、私たちが求める新しい社会像と教育のあり方を明確にしていきます。
    8. 教育現場にそぐわない強引な評価手法などによる教職員管理を進める大阪府の「教育基本条例」などに反対してとりくみます。

    5. 多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ

       2011年3月11日に発生した東日本大震災は、生命の尊厳、人権保障の重要性を私たちに再認識させるものとなりました。とくに被災した高齢者、障害者、女性、外国籍住民など弱い立場に置かれた人々を支えるとりくみを多くの市民が担ったことは、共生社会を展望していく上で多くの教訓を示しています。一方で、災害下の「非常事態」を名目としながら、人権を規制する動きが強められていくことに十分注意しなければなりません。「共謀罪」の焼き直し部分を数多く含むものとして危険性を指摘されている「コンピュータ監視法」案が震災直後に閣議決定されるなどの動きも起きています。また、共謀罪創設の意向を示すなど「人権状況のゆり戻し」を警戒すべき動きが見られます。制定が検討されている「機密情報」漏洩に厳罰を科す「秘密保全法」は「知る権利」の抑圧に繋がるものです。国会に2月14日提出された「社会保障・税共通番号制」は個人の尊厳にかかわるプライバシー権を脅かしかねないものとして、その危険が指摘されています。
       2009年8月の政権交代によって大きく期待された人権分野の進展は、いまだ実現されていません。2011年9月に就任した野田佳彦首相は、外国人参政権などについての主張に見られるように保守色が強い人物であることが知られています。
       厳しい政治状況にはありますが、先の江田・平岡(元)法相が積極的な態度を示してきた取調べの可視化については、今年1月に就任した小川敏夫法務大臣も可視化が必要との見解を表明しています。法務省の開催する勉強会でも昨年8月に提出された最終報告は全面可視化を提言する内容となりました。冤罪の温床となってきた警察・検察の取調べの過程公開は、人権保障の観点から大変重要な進展と言えますが、冤罪根絶のためには証拠の全面開示の実現が必須です。平和フォーラムは「取調べの全面可視化を求める市民団体連絡会」がすすめる「待ったなし! 取調べの可視化」署名キャンペーンに協力したほか、集会(2011年5月26日、12月7日)に参加するなどのとりくみを行いました。44年の長きにわたり冤罪を訴えてきた布川事件の再審で無罪判決が確定するなど、取調べの全面可視化・証拠の全面開示に向けた議論をすすめていく上で、今年は正念場だと言えるでしょう。
       人権確立を求める当事者や人権団体、日弁連などによってとりくまれてきた、人権救済機関設置要求の高まりのなかで、2011年12月、法務省は「人権委員会」を法務省の外局とする方針を示しました。指摘されている政府からの独立性の確保などの課題についての是正をすすめながら、実効的な人権救済機関としていかなくてはなりません。平和フォーラムも参加・協力する「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動」(人権共同行動)は法務省案の問題点を指摘しながら、被差別当事者によりそった内容を実現していくために、集会(2012年2月1日)やパンフ発行(2011年9月)などにとりくんできました。
       在日外国人の人権問題の解決が喫緊の課題となっています。とくに朝鮮民主主義人民共和国との様々な外交的問題を口実とした在日朝鮮人に対する抑圧の高まりは看過できません。また、国内における排外主義的な雰囲気が醸成されるなかで、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」などによる集会妨害、インターネットを利用した差別扇動などの動きに対する注意が必要です。
       朝鮮学校無償化問題については、退任間際の菅直人前首相によってようやく適用審査の再開が指示されましたが、保守勢力の抵抗もあり、今なお審査結果は出ていません。また、助成打ち切りなど朝鮮学校への攻撃の動きは全国の地方自治体へと波及しています。「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」主催の集会(2011年6月23日、12月7日、2012年2月14日)が多くの朝鮮学校関係者と日本人市民の参加のもと開催されるなど、各地でさまざまなかたちで朝鮮学校を支えるとりくみがすすめられてきましたが、さらに大きな運動を創り出していく必要性があります。平和フォーラムとしては、各地域での朝鮮学校を支える市民のとりくみと協力しながら、懸案であった全国的な連携と情報共有のための緩やかなネットワーク形成に向け、とりくみをすすめていきます。
       外国人参政権については、継続して保守勢力によるネガティブキャンペーンが繰り広げられています。とくに外国籍住民が投票可能な地方自治体の住民投票条例にその攻撃の矛先が向けられています。また、2009年に「改正」された入管法が2012年7月に施行される予定であり、管理と監視の強化による外国籍住民の人権状況の動向にはとくに注意しなければなりません。そうしたなかで外国人労働者の権利確立を求める「マーチ・イン・マーチ」など、多文化・多民族共生社会を目指すとりくみをいっそうすすめることが重要です。
       これら日本における、在日韓国・朝鮮人をはじめとしたアジアに対する差別の根幹には、過去の植民地支配の歴史についての未清算と無知が存在しています。日本を開かれた社会へとつくりかえていくためには、この問題を主体的にとりくまなくてはなりません。在日朝鮮人の人権状況について、歴史性を踏まえた理解と問題解決をめざす「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみをすすめます。
       第3次男女共同参画基本計画は、第2次計画で安倍政権によって後退した部分を修正し、国連の女性差別撤廃委員会の勧告をほぼ受け入れた内容で、2010年12月17日に決定しました。なかでも「選択的夫婦別姓の実現」や、「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」、政策決定の場への女性の参画手段として「クオータ制の導入」などが明記され、その実効性をあげることが、運動課題になっています。すでに今年に入って、民法の夫婦同姓規定は、個人の尊厳を定めた憲法13条や、男女平等規定の24条に違反し、これら差別法規の改廃義務を定めた女性差別撤廃条約に反しているとして、5人の男女が国を相手どり、「国賠訴訟」に踏み切りました。I女性会議は原告を支え、全国的な「別姓訴訟」の支援にとりくんでいます。平和フォーラムとしても、女性の人権を国際的な水準に引き上げる運動に協力することが求められています。
       国際人権諸条約の未批准・留保の多さに端的に現れているように、日本はこれまで国際的な人権水準から大きく遅れをとってきました。とくに自公政権下では人権確立を求める動きへの敵対が続きました。
       国連・人種差別撤廃委員会日本審査総括所見(2010年3月)において、人権救済機関や差別禁止制度の不備や、部落民、アイヌ、沖縄、在日韓国・朝鮮人と中国人、外国人居住者、難民など、29項目にもわたる懸念と勧告が指摘されています。世界に開かれた多文化・多民族共生社会の実現のために、私たちは国際水準に見合う人権確立に向けたとりくみをいっそう強化し、運動をすすめなくてはなりません。

      《2012年度運動方針》

    1. 実効性ある人権救済法の制定と国際人権諸条約・選択議定書の批准に向けたとりくみ
      1. 国際人権諸条約の批准促進を求めます。とりわけ、個人通報制度にかかわる条約の選択議定書の早期実現を求めます。実効的な人権救済機関設置の実現に向けて、当事者を中心としたとりくみに参加・協力します。
      2. 国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定、「差別禁止法」の制定に向けてとりくみます。「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動(人権共同行動)」や日弁連と協力して政府に対して実現を求めてとりくみます。
      3. 全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」を策定・実行を求めるとともに、「人権のまちづくり」や「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着した「社会的セーフティネット」などのとりくみを広げていきます。また、地域・職場でさまざまな差別問題など人権学習・教宣活動をおこないます。
    2. 男女共同参画社会の実現に向けたとりくみ
      1. 「男女共同参画第3次基本計画」に明記された「選択的夫婦別姓の実現」「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」「クオータ制の導入」などを実効化するため、I女性会議などがとりくむ「別姓訴訟」支援をはじめ、女性の人権を国際的な水準に引き上げる運動に協力します。
      2. 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めるI女性会議など「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)のとりくみに協力します。
      3. 女性の重要性・ジェンダーの視点を強調した人権確立の国際社会の流れを活かしたとりくみをすすめます。
      4. 平和フォーラム自身の組織構成、諸会議をはじめ、かかわる運動全般で女性が参加できる条件・環境づくりをおこないます。
    3. 地方参政権など在日定住外国人の権利確立のとりくみ
      1. 韓国の「在韓外国人処遇基本法」(2007年)などに学び、在日外国人の権利確立の制度実現に向けたとりくみをすすめます。
      2. 差別なき定住外国人参政権法案の制定に向けて、参政権ネット、民団と協力して、全国各地でとりくみをすすめます。
      3. 子どもの権利に立った外国人学校の整備など多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみをおこないます。全国各地でのさまざまな動きに注視・連携しつつ、朝鮮学校支援のとりくみをすすめるため、全国的なネットワークづくりを行います。高校無償化の朝鮮学校への即時適用を実現させます。
      4. 2009年入管法改定を見直させるため、外国人人権法連絡会や日弁連のとりくみに参加・協力します。
      5. 無権利状態におかれた外国人労働者などの救済に向けて外国人研修生権利ネットワークなどのとりくみや、生活と権利を守るための外国人労働者総行動「マーチ・イン・マーチ」のとりくみに協力します。
    4. 司法制度・地方主権などに関するとりくみ
      1. 裁判員制度は多くの問題点があり、抜本的に見直させるとりくみをおこないます。
      2. 最高裁判所裁判官国民審査にかかわって、日常的な判決チェックをおこなうとともに、権利の行使として「×」を増大させるとりくみをすすめます。また、期日前投票などの改善を中央選管に求めます。
      3. 山場を迎えた狭山差別裁判第3次再審実現など、冤罪をなくすとりくみに参加・協力するとともに、日弁連や「取調べの全面可視化を求める市民団体連絡会」などのとりくみに協力して「取調べ可視化法」の実現をめざします。
      4. 制定前から重大な人権侵害をもたらす恐れが指摘されていた医療観察法の廃止を求めるとりくみをすすめます。
      5. 共謀罪の新設を許さず、盗聴法の廃止に向けたとりくみをおこないます。「コンピュータ監視法」などの動きに注意し抜本的修正を求めます。
      6. 警察公安による微罪逮捕や自衛隊による取調べ事件や情報収集増大の動きを警戒し、不当弾圧、人権侵害を許さないとりくみをおこないます。
      7. 地方分権を促進し、地方自治体の自主財源の確保とともに、条例制定権の拡大、拘束力のある住民投票の導入などのとりくみをおこないます。
      8. 反住基ネット連絡会のとりくみに協力します。
      9. 言論や表現の自由を暴力やテロで封じる動きを許さないとりくみを随時、おこないます。
    5. 「過去の清算」と戦後補償の実現と「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
      1. アジア・太平洋の人々の和解と共生をめざして、日本と日本人が戦争に対する反省・謝罪、補償に向けた姿勢を示し、二度と戦争による犠牲者を出さない非戦の誓いを新たにするとりくみをすすめます。不十分なものとはいえ、2010年8月10日の「菅首相談話」を活かし、別項の日朝国交正常化を含めた一連のとりくみをすすめます。
      2. ひきつづき首相・閣僚などの靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、政府に国立の非宗教的戦争被害者(関係諸国すべてを含む)追悼施設の建設を要求し、靖国問題の決着を求めていきます。このもとに8月15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑をはじめ各地で戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会をおこないます。衆参両院議長、首相・閣僚の千鳥ヶ淵墓苑での追悼・献花との連携をはかります。
      3. 「過去の歴史を直視するため、内閣に日本の侵略行為や植民地支配の歴史的事実を調査する機関を設置し、政府機関が保有する記録を全面開示する」「戦後処理に関する全情報を開示し、戦後処理の在り方を再検討し、残された戦後諸課題に立ち向かう」ことを政府に求めるとりくみをすすめ、戦後補償をとりくむ市民団体や、歴史の事実を明らかにする立法(国立国会図書館法改正、恒久平和調査局設置)を求める市民グループとの共同のとりくみをおこないます。
      4. 「菅首相談話」にも明記された遺骨問題や文化財返還問題で、「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」や「韓国・朝鮮文化財を考える連絡会議」と連携したとりくみをすすめます。「強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク」などがすすめる「朝鮮人強制労働被害者補償立法の実現を求める要請署名」に協力します。
      5. 「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
        • 2012年は、秋頃の「月間」キャンペーン開催を目標にしてとりくみをすすめていきます。
        • 全国集会、東日本集会、西日本集会などは実行委員会を発足させてとりくみます。また、朝鮮人強制連行真相調査団などと連携・協力して全国各地でとりくみをすすめます。
        • 「在日朝鮮人歴史・人権月間」奨励賞を通じて、日朝の友好や和解に向けた青年・若い世代のとりくみを発掘・紹介します。
      6. 司法解決の道は狭められてきたものの、国際法や道義的責任に基づき企業・国に謝罪と補償を求め立法解決への道を開こうとする戦後補償のとりくみに支援・協力します。
      7. 米下院「慰安婦問題」決議をはじめ国際的に広がる日本への公式謝罪表明要求を、首相が真摯に受けとめ実行することを求めるとりくみをすすめます。
      8. 差別なき戦後補償を求めて東京大空襲訴訟・空襲被害者立法の支援のとりくみをおこないます。また、東京大空襲朝鮮人犠牲者追悼集会などに協力します。重慶爆撃被害者による訴訟のとりくみに協力します。
      9. 1967年から戦前の「紀元節」を「建国記念の日」とした問題点を忘れず、2月11日に歴史認識にかかわる集会をおこないます。

      6. 核兵器廃絶に向けたとりくみ

      1. 停滞する核軍縮
           いまもなお、世界には2万発以上もの核兵器が存在しています。これは私たちの世界を何度でも破壊できる量で、核兵器廃絶は重要な人類的課題です。しかし核兵器廃絶への道のりは未だ厳しいものがあり、2010年のNPT再検討会議で確認された様々な合意が進展していない現実があります。今年は、2015年のNPT再検討会議に向けて国連で準備会合が開かれ、議論の行方を注視しなければなりません。2010年に合意した課題の前進をはかることが切に求められている年でもあります。
           昨年12月2日に閉幕した第66回国連総会では、核兵器廃絶提案がいくつもの国から出されましたが、その中での日本案は、米国など核兵器保有国に対して「究極的廃絶」を主張するだけで具体的要求が乏しいものでした。新アジェンダ連合(NAC)の決議のように「核兵器国による核軍縮の誓約や合意の促進を求める」姿勢と対照的でした。核兵器国に対して具体的な要求をしない日本政府の姿勢は、被爆国としての内実が問われるもので、それを変えることがまず私たちに課せられています。
           2012年は、NPT再検討会議で合意された、中東非核化会議が開催されるべき年となっていますが、この間の中東での政治変化によって開催そのものが危ぶまれています。核保有国であるイスラエルの非協力があるほか、イランは核開発疑惑の渦中にあり、それに対する日米欧での制裁措置が強化されており、中東における非核化の流れがますます混沌としています。
           一方で、核兵器の廃絶を訴える米・オバマ政権も、米ロの新戦略核兵器削減条約(新START)に署名した以降目立った動きがでていません。むしろ未臨界核実験は就任以来すでに3回も実施され、今年1月には、未臨界核実験を補完する新しいタイプの実験を行ってきたことも明らかになりました。オバマ政権も核抑止論に未だとらわれているといえます。
           さらに、日印、米印の間で原子力協力も進んでいます。原子力産業の生き残りのため、NPT未加盟国のインドへ原子力機器を輸出する動きが加速されています。インドを例外扱いにして原子力機器を輸出することは、NPT体制がさらに骨抜きとなり、これまでのインドの核開発を認め、加担するものです。日本の非核政策のあり方も含め私たちはインドへの原子力輸出の問題をとらえていかなければなりません。
           また、韓国で3月18日~23日に「環太平洋原子力会議」(釜山)、19日~21日「原子力エネルギー展示会韓国2012」(釜山)、23日~3月24日「原子力産業サミット」(ソウル)、そして26日~27日「核セキュリティーサミット」(ソウル)が開催されました。核保有国や核産業は、原発の有用性と核テロの危険性だけを強調しました。とくに福島第一原発事故以降の原発輸出とあわせて核産業(勢力)の生き残りをかけた国際的な議論が展開されました。「核セキュリティーサミット」は核問題に関するものとしては最大規模の首脳会議とも言われ、今回の会議では、NPT未加盟国のインド、パキスタン、イスラエルも含め53ヵ国の首脳と国際機関が集まって、核テロが世界の安全保障にとって最も大きな脅威だと強調しました。しかし一方で核兵器の脅威については、北朝鮮以外には言及されることはありませんでした。核の「平和(商業)利用」の名の下で核開発が国際的に進展する中で、核物質の拡散が、核の安全保障問題(軍事利用問題)にまで拡大してきたものといえます。このことは、核の「軍事利用」と「平和利用」は表裏一体であることをますます明らかなものとして示しています。あらためて核兵器や原発の縮小そして廃棄が、世界の安全にとって重要な課題であることは明らかです。一連の国際会議が韓国で開かれたことは、原発輸出を海外戦略として積極的に押し進め、再処理技術を持ちたいと願う韓国の姿勢を鮮明に打ち出したものです。
           その背景には、非核国で唯一日本のみが再処理工場を持ち、45トンものプルトニウムを保有する姿があります。プルトニウム利用政策は、常に核武装の懸念とセットになっています。現に再処理工場は「安全保障政策」の一環として保持することが必要との石破茂・自民党政調会長(当時)発言や読売新聞社説などはその典型です。日本のプルトニウム利用政策や韓国の再処理の動きは、今後、東北アジア非核地帯化を目指す上で、その姿勢は大きな障壁となりつつあります。あらためて韓国の反核・脱原発運動との連携強化が求められています。
           朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)は、「人工衛星」を打ち上げることを予告し、4月13日発射しました。国際的には「弾道ミサイル」実験との認識が強くあり、日本政府においては、PAC3などの迎撃ミサイルによる「破壊措置命令」を表明する(3月30日)など、北朝鮮に対する対応もより一段と厳しいものとなっています。今後のミサイル開発や核兵器開発、ウラン濃縮などの行方が注目されるところです。緊張緩和に向けて六ヵ国協議の再開、日朝・米朝対話の再開など対話による平和と安定、そして東アジアの非核化に向けた動きをつくり出すことこそが本来求められなければなりません。日朝国交回復や在朝被爆者の援護と同時に、東北アジアの平和と安定に向けたとりくみが引き続き重要な課題となっています。
           一方で、先のNPT再検討条約会議で上がった「核兵器禁止条約」の実現にむけて、世界のNGOの動きは活発に続いています。「中堅国家構想」を提唱するNGOなどが国連を中心に動いています。私たちは、国際的な連帯を重視しながら、日本の新政権に対して、核の傘からの脱却、東北アジア非核地帯化構想の実現に向けた努力を重ねなければなりません。
           このような中で、原水禁としても、原水禁大会での3団体の「平和シンポジウムin広島」(2011年8月5日)、さらに各分科会で核軍縮や東北アジアの平和と安定についての必要性・重要性を訴えてきました。
           これまで日本政府は、核廃絶を訴えながらも、一方で米国の「核の傘」に依存するという矛盾した政策をとり続けてきました。さらに核兵器の先制使用をも容認し、米国が先制不使用宣言をしないように働きかけたり、核搭載可能な巡航ミサイル「トマホーク」の退役に反対していました。まさにダブルスタンダードとも言える対応です。また、自らも日印原子力協定を進めることで、NPT未加盟国のインドの核開発を容認し、NPT体制の骨抜きに手を貸す結果となっています。さらに核密約が日米間で取り交わされていたことが明らかになり、ここでも国民を欺くこれまでの政府の姿勢が問題となっています。
           そのような日本政府の核容認とも言えるこれまでの姿勢を改め、被爆国の責務として積極的に世界に対し平和と核軍縮のリーダーシップをとるよう求めなくてはなりません。すでにこれまでの民主党のマニフェストでも核不拡散体制の強化を進めるとし、NPT未加盟国への働きかけやCTBTの早期発効、カットオフ条約の推進、東北アジアの非核地帯化構想の推進など、核廃絶・核軍縮・核不拡散へのとりくみを訴えています。それらを実行に移させることが重要です。
           そのことを支えるためには、私たちの運動の強化や非核自治体や平和市長会議との連携を深め、核廃絶に向けた動きを加速させて行かなければなりません。さらに「核密約」が明らかにされた中で、核搭載艦の領海内の通過や寄港を認めようとする動きもあり、それらの動きを警戒しなければなりません。非核三原則の徹底した遵守と法制化を新政権に求めていくことが必要となっています。
      2. 被爆66周年原水爆禁止世界大会/ビキニ・デーの開催について
           66周年大会の参加者数は、福島大会・850名、国際会議・160名、平和ヒロシマ集会(三団体主催)・6800名、平和ナガサキ集会(三団体主催)・4500名、沖縄大会・320名、メッセージfromヒロシマ2011・400名となりました。また、海外ゲストは6ヵ国24名(ノーニュークス・アジア・フォーラムのゲスト除く)となり、一昨年よりも多い参加者となりました。
           震災の影響もあり地域や組織によってとりくみが厳しい中にありながらも、原水禁内の参加者数は、地域によっては増減がありますが、全体としては、昨年と比べほぼ横ばいとなりました。結果として厳しい中でも各地の奮闘が伺われました。一方で市民参加という点からは、組合や各地の原水禁が中心となり、もっと市民に開かれたものとするための参加しやすい大会づくりが求められています。
           メッセージfromヒロシマ2011やピース・ブリッジ長崎2011への参加は昨年よりも増え、親子での参加を含め、関係者の努力が少しずつ定着しつつあります。とくに、高校生のとりくみや主張には大きな共感が寄せられました。

        《2012年度運動方針》

      1. 核兵器廃絶にとりくむ世界のNGOや市民団体との国際的な連携強化をはかります。
      2. 東北アジア非核地帯化構想を具体化にむけて推進します。
      3. 原水禁・連合・核禁会議3団体での核兵器廃絶に向けた運動の強化をはかります。
      4. 政府・政党への核軍縮に向けた働きかけを強化します。とくに民主党の核軍縮議連への働きかけを強化し、平和と核軍縮政策の促進をはかります。
      5. 東北アジア非核地帯化構想などの具体化をするために、日本政府や日本のNGOへの働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。さらにアメリカや中国、韓国などのNGOとの協議を深めます。
      6. 非核三原則の法制化へ向けた議論と行動にとりくみます。
      7. 非核自治体決議を促進します。自治体の非核政策の充実を求めます。さらに非核宣言自治体協議会や平和市長会議への加盟・参加の拡大を促進させます。
      8. 核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)や民主党の核軍縮促進議員連盟との連携をはかります。
      9. 被爆67周年原水爆禁止世界大会と国際会議を広島、長崎で開催します。
              7月28日            福島大会
              8月4日~6日      広島大会(8月5日/国際会議)
              8月7日~9日      長崎大会
      10. 2013年3月には被災58周年ビキニ・デー集会を、57周年集会の成果をひきつぎ、被爆68周年原水禁世界大会に連動する集会として開催します。

      7. 原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けたとりくみ

      1. さようなら原発1000万人アクション
           2011年3月11日に発生した東日本大地震は、東日本一帯に大きな被害をもたらし、その中で福島第一原発が原子力史上最悪の大事故を引き起こす結果となりました。事故の収束も見えない中で、あらためて「核と人類が共存できない」ことを知ることになりました。脱原発にむけた政策転換を強く求め、事態の早期収束を願うものです。原発は「安全神話」のもと国策として強引に進められ、その下で「命」が軽んじられてきたことがあらためて浮き彫りになりました。
           3・11以降、私たちは、福島から、広島、長崎、そして沖縄さらに全国に「命」を基本に様々な運動を展開してきました。原水禁大会をはじめ「さようなら原発1000万人アクション」として東京・明治公園での6万人集会(2011年9月19日・脱原発集会として過去最大の集会)や1000万人署名などを行い、国内外に大きな反響を与えました。現在、署名は6,154,043筆(2012年4月6日現在)が集まり、6月の政府への提出に向けて、今後も署名運動を盛り上げ、1000万筆の実現に迫ることが求められています。
           さらに今夏の7月16日には、東京・代々木公園で昨年の6万人を上回る規模の集会を行うことになっています。「電力危機キャンペーン」が打ち出され、原発の再稼働の動きが強まると予想される夏。さらにエネルギー環境会議の方針が打ち出される8月。秋の臨時国会での予算審議が行われる前のこの7月に、あらためて脱原発への政策転換を求める大衆的な世論喚起と運動の盛り上がりをつくろうとしています。原水禁としても全力で1000万人署名や7・16集会の成功をかちとり、脱原発への大きな流れをつくりださなければなりません。多くの市民団体・NGOそして宗教者、生協、農業者団体などさまざまな分野の人々と幅広い連携をつくりだし、国民的運動に盛り上げていく必要があります。原水禁・平和フォーラムの奮闘が求められています。
      2. フクシマ課題の前進を
           福島第一原発について、政府は、2011年12月16日に「冷温停止状態」になったことを理由に「収束宣言」を発しました。しかし、事故の収束を宣言するにはほど遠い状況にあるにもかかわらず強行された「政治的」なパフォーマンスでしかなく(2011年12月19日・原水禁として声明発出)、かえって政府に対する不信感を高めるものでした。そのことは事故を過小に見せることによって脱原発の世論を抑えようとするかのようです。事態はいまだ厳しく、課題が山積する中で、本当の事態の「収束」へ向けた具体的ロードマップも描き切れていません。30年とも40年とも言われる事態の収束作業さえ、何ら具体的な保証はありません。希望的予測でしかありません(1月23日の野田首相の施政方針演説では「ステップ2の完了」と後退発言)。
           現地では長期に渡る住民の避難が続いています。生活や就労、そして健康など心身に渡る苦労が続いています。さらに福島県を超えて広範囲に渡る地域での放射能汚染やそれへの対策など、様々な問題が続いています。避難問題、健康問題、除染問題、がれき問題などなどですが、目に見えない放射能がそれらの問題をさらに複雑にしています。
           避難問題では、原水禁として原発震災当初から「妊産婦並びに乳幼児・児童・生徒などの避難の実施について(要請)」(2011年3月16日)として、放射能の影響を受けやすい立場の側にたって要請をしてきました。今後もその立場から避難を安心して「選択」できる環境をつくり出すことが求められています。健康問題も、ヒロシマ・ナガサキの被爆者援護の経験を踏まえながら被災者の健康と健康不安に対応していかなければなりません。さらに今後も続く収束へ向けた被曝労働に対しても、被曝の低減とともに安全な労働環境の整備を追求していくことが重要です。除染問題では、放射能の拡散と効果の問題があります。現在人々が暮らす地域の放射能の汚染レベルをどこまで下げることができるのか、放射能の拡散はどのようになるのかなど、効果とリスクを常に検討することが重要です。がれき問題も、各地で放射能が含まれるがれきの受け入れがとくに問題となっています。ここには、放射能が拡散すること、そして地域住民が受けるリスクの問題があります。遅々として進まない現地での処理の問題の根源は、国が責任を十分果たしていないことにあります。このことは放射性廃棄物の処分問題に通じるものです。さらに測定体制の充実と情報の公開は、それらの各課題の前提として常に求めていかなければなりません。
           その上で、それらの課題について、現地をはじめ、各地でのとりくみを強化し、一つひとつ丁寧にとりくまなければなりません。原水禁としても現地と協力しながら「フクシマ」の抱える問題を全国の課題としてとりくみつつ、フクシマ・プロジェクトなどで政策提言や河川調査、放射能測定室の設置への協力などを進めるなかで、福島原発事故のもたらした実相を明らかにしていくことが必要です。
      3. 破綻した原子力政策
           5月5日、泊原発3号機が定期検査に入り、54基ある全ての原発が止まろうとしています。今後はそれらの原発の再稼働が焦点となってきます。とくに大飯原発は、原子力安全・保安院が第一次ストレステストを妥当なものとし、安全委員会がそれを了承しました。現在、原子力安全・保安院が暫定基準を作成し、野田首相をはじめ3閣僚の政治決断によって、地元合意(政府は福井県とおおい町のみを想定)をもって再稼働を認めさせようとの動きが強めています。ストレステストは、あくまでもシミュレーションであり、それによって「安全」が確保されたわけではありません。さらに暫定基準によって原発の100%「安全」が確保されたわけではありません。福島第一原発事故の知見が全て反映されたわけではなく、事故の調査も未だ終了していません。再稼働を許さない闘いは、今後、地元や周辺自治体の合意や住民の世論が大きなポイントになってきます(滋賀県知事や京都府知事は慎重姿勢です)。
           この夏の電力危機キャンペーンとセットなって、再稼働問題が浮上し、原発必要論が強く打ち出されています。しかし、福島原発事故の解明も不十分な中で、小手先の安全対策を中心に再稼働を進めようとする動きに対峙していかなければなりません。再稼働をすすめようとする原発現地での動きに対して、現地の反対のとりくみを全国化していくことが必要です。電力危機キャンペーンに抗するとりくみとともにとりくみを強化することが必要です。
           また、六ヶ所再処理工場では、高レベルガラス固化体の試験再開に向けた準備段階でいきなりトラブルが発生し、中断を余儀なくされました。根本的に器機の欠陥であり、技術そのものが完成されていないことの証明となりました。今後の運転再開、そして今年10月としている完工さえ期待できないことはもはや明らかです。原発全機停止のうえ再稼働もままならず、さらに新増設も展望が見いだせない中で、核燃料サイクル政策そのものが問われています。プルトニウム利用政策の中核を担うはずの高速増殖炉「もんじゅ」も予算が削減され、今年度はほぼ開発は不可能になりつつあります。さらに2015年までに16~18基の原発でプルサーマルを実施するとする計画も実現不可能となっています。国際的に余剰プルトニウムを持たないことを国際公約と掲げている政府は、これ以上プルトニウムを生産してもその使い道はありません。プルトニウム利用路線は、明らかに破綻しているにも関わらず、六ヶ所再処理工場や高速増殖炉を建設する意義はありません。核燃料サイクル路線を根本から見直す必要があります。あらためて政府・電力会社に政策の転換を求めることが必要です。
      4. エネルギー政策の転換を
           野田政権は、脱原発依存をかかげてスタートしました。しかしその内実にはブレがあり、具体的ロードマップも明確にされていません。一方で電力会社をめぐる変化がでてきています。東電に対して国の資金投入によって実質的な国の管理下に入ろうとしており、さらに電力会社の発送電分離などの政策も打ち出されようとしています。電力業界そのものの変化を求められる時代になろうとしています。同時にエネルギー政策も原発からの脱却が強く求められています。このことをエネルギー政策の転換のチャンスとしてとらえることが重要です。原水禁として、「エネルギー政策」や「プルトニウム利用政策」などに対する提言を積極的に打ち出す必要があります。
           これまで各地の原発・原子力施設立地県との連携を強化するために原発・原子力施設立地県連絡会のとりくみに協力してきました。原水禁大会や「もんじゅ」などの全国的な集まりにあわせて立地県会議を開催し、各地の活動について共有化をめざしました。
           また、原発建設の国内展開がきびしくなるなかで、原発輸出の動きが活発化しています。ベトナムやインドなどに対して、企業の働きかけが強まっています。環境問題や核拡散の問題として海外のNGOとの連携を深めることが必要となっています。ノーニュークス・アジア・フォーラムなどの市民運動と連携しアジアを中心としたネットワークの強化をはかることが求められています。
           政権交代を機に、原水禁としてのエネルギー政策に対する考えをまとめ、政権や世論に訴えるために、この間、プルトニウム利用政策の転換と、自然エネルギー利用の開発・促進を柱にした政策の提言を昨年1月「原水禁エネルギー・プロジェクト-持続可能で平和な社会をめざして」としてまとめました。3・11以降の新たな状況を踏まえ、さらにエネルギー政策の提言を精査しまとめる必要があります。同時に、各地でとりくまれる自然エネルギーの具体的な展開に協力していくことも重要となっています。そのためにも、国内外の環境・エネルギーの先進地のとりくみから学ぶことも今後の課題となっています。

        《2012年度運動方針》

      1. 「さようなら原発1000万人署名」や「7・16集会」などのさまざまな「さようなら原発1000万人アクション」の行動に積極的に協力します。さらにアクション実行委員会の事務局を担います。
      2. 福島原発事故に関する様々な課題について、フクシマ・プロジェクトを中心に課題を整理し、現地と協力しながら運動を進めます。
      3. プルトニウム利用路線の破綻を明らかにし、再処理工場の建設に反対し、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に反対します。
      4. 原発再稼働の動きに反対し、各地でのとりくみを全国化して運動を展開します。
      5. 大間原発や上関原発などの新増設に反対します。
      6. 原発震災について問題を広め、原子力防災の問題点を明らかにします。
      7. インド、ベトナム、ヨルダンなどへの原発輸出に反対します。
      8. これまでのエネルギー政策プロジェクトの成果を活かし、国会での議論を進展させます。そのために、関係閣僚への要請、院内集会・学習会などを行います。
      9. 原子力政策大綱見直し、エネルギー環境会議、福島原発事故調査委員会など政府関係機関の議論に対して、各委員や国会議員などへの働きかけを強化します。
      10. 各地の自然エネルギー利用のとりくみに協力します。

      8. ヒバクシャの権利確立のとりくみ

      1. 被爆者の残された課題解決にむけて
           ヒロシマ・ナガサキの被爆者は高齢化が進み、その子どもである被爆二世もその域に入りつつあります。被爆者の残された課題を解決する時間も限られ、援護対策の充実と国家の責任を求めることが急務となっています。
           被爆者の援護施策の充実を求める課題として、これまで原爆症認定が大きな問題として裁判闘争を中心にとりくまれてきました。その結果、被害者団体と政府は解決にむけた合意がなされ、「基金」の創設や被団協などとの「定期協議」などが確認され原爆症認定の課題は前進しましたが、一方で、改定した「新しい審査委の方針」に従って展開されている審査制度の中で、多くの審査滞留や認定却下が生み出されているなど改善を要する課題も山積しています。引き続き日本原水爆被害者団体協議会が進める運動に協力を深めていくことが求められています。
           在外被爆者の課題は、日本の戦争責任・戦後責任の問題と重なります。高齢化の進む在外被爆者の課題解決も重要です。在外被爆者の援護も国内の被爆者との援護内容に差があります。国籍条項のない被爆者援護法の趣旨からも「被爆者はどこにいても被爆者」であり、差別のない援護の実現に向けてさらに運動を強化していかなければなりません。現在、在外被爆者が、政府の401号通達によって権利を侵害されたとする裁判が各国から提訴されています。国は提訴されれば和解に応じますが、あくまで提訴があった場合のみで、自ら積極的に在外被爆者へ補償する動きはありません。
           さらに在朝被爆者に対しては、これまで一切の被爆者援護も実施していません。国交がないことを理由に、被爆者が亡くなるのをあたかも待っているかのようです。昨年7月原水禁として訪朝し確認したところ、これまで確認されていた384人の被爆者はさらに減少しており、現在人数の確認作業に入っているとのことで、高齢化する在朝被爆者への援護が急がれています。しかし、金正日国防委員長の死去にともない、北朝鮮のそのものの動向も不透明な部分もあり、在朝被爆者の援護・連帯の行方も厳しい部分もありますが、日本の戦争責任・戦後補償が問われ問題でもあり、以前に増して強化する必要があります。
           全国被爆二世団体協議会と連携して、署名のとりくみや厚生労働省交渉を積み重ねてきました。引き続き連携の強化を原水禁大会などでの二世・三世の分科会・ひろば(2011年8月5日・8日)や全国総会(2012年2月4~5日)でこの課題を広く浸透させてきました。
           行政区域の違いだけで「被爆体験者」とされる長崎の「被爆体験者訴訟」の課題では、これまで43万筆を集める全国署名に協力し(2010年10月30日厚生労働省提出)、課題の全国化を図りました。国会への請願や政権への働きかけをサポートしてきました。昨年12月26日に長崎地裁での裁判が結審し、今年6月25日には判決を迎えようとしています。判決を待つまでもなく、被爆地の拡大に向けたとりくみを被爆者とともに進めていくことが必要です。国や関係機関への働きかけが求められています。引き続き裁判支援とともに課題解決に向けたとりくみを強化していかなければなりません。広島・長崎の「黒い雨」地域の課題も近年でてきましたので、それとともに被爆地拡大、被害の実態に見合った援護の強化を訴えて行く必要があります。
           これらヒロシマ・ナガサキの被爆者課題に対して、これまで連合・核禁会議を交えた3団体で2011年2月8日に厚生労働副大臣との意見交換を持つなどのとりくみをしてきました。被爆者課題に対してさらに3団体でとりくみ強化を行っていくことが重要です。
           また、被爆者援護法の枠外に置かれている被爆二世・三世は、原爆被爆による「健康不安」の状態に置かれています。この健康不安解消のために「二世健康診断」のこれまでの単年度措置から恒常的な処置への移行を求めて、法制度に組み入れることを要求してきました。さらに健康診断内容に「がん検診」などを加えることも要求してきました。二世も高齢化の域に入ってきました。援護政策充実は、今後の福島での被曝問題にもつながっていくものです。
           しかし国による被爆者援護に対する消極的姿勢は、国が「原爆の被害を過小に見せたいがため」にあり、原爆被害を根本から補償しようという立場にないことにあります。そのことは、今後起こるであろう福島原発事故による被曝者への補償に対する姿勢にも通じるものです。ヒロシマ・ナガサキの被爆者に対してきっちり補償させることは、今回の福島に対しても補償をさせることにつながるものと捉え、一つひとつ解決していけなければなりません。
      2. 福島原発事故に対する対応
           福島第一原発事故による被曝の被害は、いまだ収束しているわけではありません。いまだ原発からの放射能放出は止まらず、周辺環境への放出は続いています。当初の水素爆発のような大量に出ることはこの間ありませんでしたが、今後もそうであるとの保障はありません。周辺への放出が続き、県内外では放射能被曝に対する不安は広がっています。さらに農畜産物や海産物などへの汚染も広がり、社会・経済にも大きな影響を与えています。福島原発の収束が野田内閣の最重要課題であり、1月24日の野田首相の施政方針演説でも「原発事故との戦い」を重要課題の一つとしています。収束への対応と同時に事故の補償や健康に関する対応の強化が求められています。
           私たちも現地被災者の方々の要求に即し、政府や事業者などへの働きかけを強化していかなければなりません。とくに被曝と健康については、子どもや妊産婦に対する援護と同時に、被害拡大を防ぐために汚染地域の除染などを求めていくことが重要です。同時に、事故の収束にむけて懸命に作業に従事する労働者の被曝にも目を向けなければなりません。これまで原水禁として原発被曝労働者の裁判を支援してきました。今回の福島原発事故でも高線量を浴びる労働者が続発しています。最近では東電職員よりも下請け労働者の被曝線量の方が増加している状況にあります。今後も事態の長期化が予想されるなか、さらに被曝労働の中での事故も予想されます。ヒバクシャをこれ以上生み出さないためにも、不用意な被曝の低減や被曝労働者の権利の確立が求められています。これまで被曝労働問題をとりくんできた全国労働安全センターをはじめとする団体や研究者などとともに、運動を進めていくことが重要です。
      3. 世界の核被害者との連帯
           ヒロシマ・ナガサキの原爆被害にとどまらず、あらゆる核開発の過程で生み出される核被害者への連帯や援護のとりくみは原水禁運動の重要な柱です。多くのヒバクシャをいまだ生み出している原発事故、軍事機密のなかで行なわれた核実験によるヒバクシャの実態などを明らかにしていくことが必要です。
           海外の核被害者(団体)との連携では、昨年はチェルノブイリ原発事故から25周年目にあたり、4月のチェルノブイリ・デー(2011年4月26日)や原水禁世界大会に事故の被害者を招き、事故の実態を紹介しました。福島原発事故による被害が拡がる中で、チェルノブイリ原発事故から学ぶべきものはたくさんありました。あわせて「チェルノブイリ原発事故―25年のメッセージ」というパンフレットを発行し、広く事故の実態を知らせることができました。
           「核と人類は共存できない」ことは明確になりました。核被害者の連帯は、そのことをあらためて告発することでもあります。核の「軍事利用」、「商業利用」を問わず核被害者との連携を強化することは、原水禁としての最も重要な課題です。

        《2012年度運動方針》

      1. 現地と連帯して福島原発事故による核被害に対する責任や賠償そして被害の軽減化を求めます。とくに健康面での国家による補償を求めます。
      2. 被曝線量の規制強化を求めます。
      3. 原爆症認定制度の改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向けて、運動をすすめます。
      4. 在外被爆者の裁判闘争の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。
      5. 在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。
      6. 健康不安の解消として現在実施されている健康診断にガン検診の追加など二世対策の充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さらに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。
      7. 被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実の拡大をめざして、現在すすめられている裁判を支援します。国への働きかけを強化します。
      8. 被団協が進める援護法の改正要求に協力し、被爆者の権利の拡大に向けたとりくみをはかります。
      9. 被爆の実相の継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万人署名」、平和大使などの若者による運動のとりくみに協力します。
      10. 原水禁・連合・核禁会議の3団体での被爆者の権利拡大に向けた運動の強化をはかります。
      11. 世界に広がる核被害者への連帯を、国際交流や原水禁世界大会などを通して強化します。
      12. 被曝労働者への援護・連帯を強化します。

      9. 環境問題のとりくみ

      1. 福島原発事故による放射能汚染問題のとりくみ
           東日本大地震による福島第一原発の事故により、広範囲に拡散した放射性物質は、大気や水、土壌、河川、海洋など環境に対しても多大な影響を与えています。とくに森林については、まだ除染は手つかずの状態であり、膨大なコストと時間を要するものと見られています。さらに、海洋についてはまだ本格的な調査も行われていない状態で、魚介類等への蓄積が指摘されています。なお「除染」については、問題点も指摘されており、その有効性などの検討が必要です。
           一方、汚泥やがれき、焼却灰などからも高濃度の放射性物質が検出されていることから、その処理も含めての対策が求められています。今後、関係団体等とともに、こうした問題点を追及するとともに、より細かな測定体制を地域ごとに確立することが重要です。
           農業生産についても、福島県内での高濃度の汚染地域で除染作業を行うとしています。他県においてもホットスポットと言われる高濃度の汚染地域があることから、さらに広範な地域において細分化して、検査・判定を頻繁に行い、結果を全面公開することが求められます。また、出荷制限や価格低下などに対する速やかな補償対策はもとより、放射性物質の被害が深刻な農地については代替地の確保や土壌の入れ替えなどの対応が必要になっています。さらに、農産物の出荷時検査も全量(ロット)で行えるような体制が全国的に必要です。
           こうした事態に対し、平和フォーラムでは、「食の安全・監視市民委員会」などの消費者団体、農民団体とともに、随時、厚生労働省や農林水産省など政府関係機関に対する申し入れや意見交換会(2011年1月16日・星陵会館)の参加などを行ってきました。また、食とみどり、水を守る全国集会(2011年12月16~17日・名古屋市)では、中心テーマとして、多方面からの論議・学習が行われました。
           今後の課題として、放射能汚染の環境に対する影響について、詳細な調査を行うとともに、汚染された汚泥等の処理の早急な対策確立を求めていく必要があります。また、農産物放射能汚染に対しては、検査体制の拡充、補償対策、放射性物質の除去対策などを求めていきます。そのため、消費者・市民団体、農民団体などと協力してとりくみを進めます。
      2. 水・森林・化学物質・地球温暖化問題などのとりくみ
           家庭から出される有害化学物質の最大のものが合成洗剤です。「合成洗剤追放全国連絡会」は、合成洗剤を追放し、人と環境にやさしい石けん使用の推進に向け、合成洗剤などへのGHS絵表示制度の早期実施、化学物質の移動・排出届け制度(PRTR)の推進、「化学物質政策基本法」の制定などを求めています。
           平和フォーラムは、「合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、同連絡会の総会・学習会(2011年10月29日・全水道会館)の開催やニュースの発行、関係省庁との交渉(2012年2月24日・経済産業省など)に協力してきました。また、各地でも水源地域の保全活動や水質検査活動などが進められてきました。さらに「化学物質政策基本法の制定を求める集会」(2011年5月24日・参院)の開催や政府・政党対策も進めてきました。しかし、化学物質政策基本法については民主党内での論議が進まないままになっています。
           今後も、合成洗剤の規制のため、化学物質の総合的な管理・規制にむけた「化学物質政策基本法」の制定や、GHS制度の適用などを求めて運動を展開していく必要があります。また、大震災によって下水道などのインフラが破壊されている地域では、とくに石けんを使用することを求める運動を展開します。
           一方、健全な水循環を構築するとともに、水の公共性を守るため、森林、河川、海岸等に関連する法体系を統合した「水基本法」の制定が提起され、連合が主催する「水基本法シンポジウム」(2011年10月21日・証券会館)の協力などを行ってきました。現在、連合を中心に基本法の制定にむけたとりくみが行われており、さらに協力していきます。また、民主党の政権公約として注目されている群馬県「八ッ場ダム」建設反対集会(2012年2月23日・衆院)にも協力してきました。
           森林は環境や農山漁村を守るうえで重要な役割を果たしています。その公益的機能に対する学習活動として、各地域で森林視察や林業体験などがとりくまれてきました。また、全国集会(2011年12月16~17日・名古屋市)でも津波対策など森林の多面的機能の再確認を行い、「森林・林業再生プラン」および「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、再生可能な木質バイオマスの推進などの学習・討議を行いました。今後も森林・林業・農山村の再生、木材産業の活性化などを図り、温暖化防止の目標達成を実現する必要があります。
           地球温暖化問題は、人類の社会基盤を脅かすものとなっており、温暖化の主要原因である温室効果ガスの削減に向けたとりくみが必要です。2011年11月~12月に南アフリカ・ダーバンで気候変動枠組条約締約国会議(COP17)が開かれ、京都議定書について2013年から第2約束期間を始めるなど、その仕組みを維持しながら、その先の包括的な枠組みを協議していくことを決めました。しかし、日本政府は「京都議定書第2約束期間に不参加」という姿勢に終始しました。これは、国際社会の中での信頼低下、国内の低炭素化と持続可能な社会への転換の遅れを招くものです。そのため、こうした方針を見直し、先進国の責任としてより高い削減目標を掲げ、それを実現する国内法と政策措置を備えることが求められています。今後とも、温室効果ガスの削減をめざす「地球温暖化対策基本法案」について、事業所に排出上限枠を設けるなどの施策、環境税の導入、森林吸収源対策の着実な実施など、実効性のある内容で制定させることが必要です。引き続き、「気候ネットワーク」など、環境団体などのとりくみに協力していきます。また、福島第1原発の災害に見られるように、これまで温暖化対策のためとして進められてきた原発推進政策の根本的な転換を求めていくことが一層重要になっています。
           一方、自然エネルギーを推進する法制度については、2011年8月「再生エネルギー促進法」が成立し、2012年7月から、再生エネルギーの全量買い取り制度がスタートします。身近な地域資源を活用したバイオ燃料や風車、太陽光発電など地域分散型のエネルギーの利用を一層推進することが必要です。
           人体や環境に影響を与える恐れがあるフッ素問題では、フッ素問題全国集会(2011年11月5日・教育会館)に協力しました。今後も、学校等での集団フッ素洗口・塗布に反対する運動などを強めていく必要があります。
      3. TPPなど貿易自由化に対するとりくみ
           日本は世界中から食料や木材を大量に輸入しています。これは、国内の第一次産業の衰退を招くばかりか、膨大なエネルギーを消費し、輸出国の水や土壌、環境の汚染を招いています。さらに、世界的な食料不足の時代を迎え、穀物価格の高騰が続いています。こうした状況の中で、自由貿易の一方的な推進は、日本と世界の食料や環境問題の解決を困難にしています。
           こうした問題があるにも関わらず、世界貿易機関(WTO)や二国間・多国間自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)により、貿易自由化をめざす交渉が進められてきました。とくに、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加をめぐって、野田首相は昨年11月に、実質的な交渉参加を表明し、1月以降、TPP交渉に参加している9ヵ国との事前協議を行い、各国が日本に求める参加条件などについて話し合っています。とくに問題なのは米国との協議であり、すでに米国からは農畜産物(牛海綿状脳症に伴う牛肉の輸入制限撤廃)や自動車(基準・規格の撤廃など)、郵政や共済事業などを含む保険市場の開放等が求められています。このように、TPPは国内の農業・食料へ打撃を与えるだけでなく、食の安全、医療や公共サービス、労働、金融など広範な影響が予想されており、各国の要求内容などの正確な情報や議論が必要です。今後、TPP協議における徹底した情報公開を求めることや、市民参加の意見交換会を行うなどを求めていくことが必要です。
           平和フォーラムはTPPに対し、国内農業への打撃、食料自給率の大幅低下、環境や地域経済への影響、農業以外の様々な分野への影響、東アジア諸国との関係への影響、世界のブロック経済化への懸念などの観点から、慎重な対応を求めてきました。農民・消費者団体とともに「拙速なTPP参加に反対する生産者・消費者行動」(2011年11月1日・参院、2012年3月13日・参院)を開催したのをはじめ、学習会(2011年5月16日、10月5日、12月1日)などを行ってきました。また、市民・農民団体等とともに、シンポジウムの開催(2011年10月31日・文京区民センター、2012年3月13日・総評会館)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に対するとりくみや関係国の活動者との討議への参加(2011年11月10日~12日・ハワイ)、連続学習会(2012年1月25日、2月23日、3月27日)などを進めてきました。今後も、消費者・市民団体、農民団体などと連携を強め、TPPの問題点を明らかにしながら、東アジア諸国をはじめとして、各国の農業や産業が共存できる公平な貿易ルールを求め、活動を進めていく必要があります。
           なお、WTO交渉については、今年も大きな進展はなく、実質的に今回のラウンドは破綻したとの見方が広がっています。
      4. 第一次産業の転換や農林業政策のとりくみ
           東日本大震災による農林漁業の被害は甚大で、津波等による総被害農地面積は2万3600ヘクタールにおよび、いまだ多くの地で復旧のめどが立っていません。さらに、福島原発事故による放射性物質拡散で、作付け制限や出荷停止の深刻な事態を生んでいます。
           また、今後の「復旧・復興」の検討にあたっては、農家への経済的補償に加えて、被災地域の農民、住民の意向を第一に、生産基盤と生産力の維持・確保対策、農村地域の振興と雇用対策、風評被害の防止等を進めることが重要であり、経済界などが進めようとする、一方的な規模拡大・集約化を進める動きは注視していく必要があります。また、国内食料の自給率維持を図るため、全国的に耕作放棄地や不作付け地での作付けを進めていくことも課題になっています。一方、海岸林は大震災では津波などに対する防災面での多面的機能があらためて見直されており、そうした機能の維持が大切になっています。
           さらに、世界的な食料・農業危機を前に、国内の食料自給率の向上と農業の再建が求められています。これまでの規模拡大・効率化一辺倒の政策は、食の不安を引き起こす一方で、自給率の向上に結びついてきませんでした。いまこそ、食の安全や環境問題などに配慮した食料・農業・農村政策への転換を求めていくことが重要です。
           しかしTPPと関連して、政府は農業改革を進めるとして、「食と農林漁業の再生推進本部」を設置して、方針を示しています。その中で、国際競争力をつけるために農地集積による経営規模の拡大を進めるとして、今後5年間で、平地では20~30ヘクタール、中山間地では10~20ヘクタール規模をめざすとしています。そのため、来年度から農地を貸し出す地権者に対する農地集積協力金の交付を行うなど施策を進めています。しかし、地域の実情を無視した一律的な規模拡大政策は、逆に混乱を招き、農業の再生を阻害する恐れもあります。
           こうしたことから、農民団体を中心に政府への申し入れなどを行ってきました。また、各地域でも、自治体への要請などがとりくまれました。今後とも、食料・木材の自給率引き上げや所得補償制度の拡充、7月から始まる自然エネルギーの買い取り制度の活用も含む農業・農村の6次産業化、食品の安全性向上など、これまでの政策の重点課題を中心に、展望のある食料・農林業・農村政策に向けた法・制度確立と着実な実施を求めていく必要があります。
           また、各地では、全国的なアジア・アフリカ支援米作付け・送付運動(40都道府県からカンボジアとアフリカ・マリへ約39トン送付)などがとりくまれました。こうした活動をさらに拡大し、食の安全や農林水産業の振興に向けた条例作りや計画の着実な実施が必要です。
      5. 食とみどり、水を守る全国集会の開催
           「食の安全」、「食料・農業政策」、「森林・水を中心とした環境問題」を中心とした食とみどり、水・環境に関わる課題について、情勢と運動課題の確認、各地の活動交流のために、名古屋市で「第43回食とみどり、水を守る全国集会」を開きました(2011年12月16日~17日、850人参加)。とくに、今回は大震災および原発事故に関する論議を中心に進めました。また、いくつかの講演やシンポジウムを収録した記録集を発行しました(2012年2月)。
           第44回全国集会については、大阪市で11月30日(金)・12月1日(土)に開催するよう準備します。そのため、関係団体や地域組織に呼びかけて実行委員会をつくります。

        《2012年度運動方針》

      1. 福島原発事故にともなう、環境や農産物等への放射能汚染に対して、検査体制の拡充、放射性物質の除去対策などを万全な措置を求めてとりくみを進めます。とくに、食品に対する放射能対策では、新たな規制値の実施に対する要請を行います。
      2. 放射能汚染の環境に対する影響について、詳細な調査を行うとともに、汚染された汚泥等の処理の早急な対策を求めます。
      3. 震災による農漁業の復旧・復興に向けた万全な対策を求めて、関係団体とともに政府要請などのとりくみを進めます。
      4. 「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、活動を推進します。とくに、洗剤等の家庭用製品に対し、その危険性や有害性を表示する国際的な統一ルール(GHS制度)の導入を求めてとりくみます。また、第32回合成洗剤追放全国集会の開催に協力します(2012年10月6日~7日・北海道函館市)。
      5. 「水基本法」の制定に向けたとりくみをすすめます。また、水中や環境中の化学物質に対する規制運動を強めていきます。とくに、化学物質全体の規制のため、「化学物質政策基本法」の制定運動にとりくみます。
      6. 関係団体と協力して、政府の「森林・林業再生プラン」および「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、再生可能な木質バイオマスの推進などにとりくみます。
      7. 温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけをはじめ、森林の整備、温暖化対策のための税制(環境税)の導入など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
      8. 自然(再生可能)エネルギー普及や省エネルギーのための法・制度の充実を求めていきます。また、温暖化防止を名目とする原発推進に反対します。
      9. TPP問題について幅広い団体との連携を図りながら、政府に対して情報公開や市民参加の意見交換会開催などを求めていきます。また、学習会や集会等を開催し、問題点を指摘していきます。
      10. 農業改革の検討に向けて、食料自給率向上対策、直接所得補償制度の確立、環境保全対策、自然エネルギーを含む地域産業支援策などの政策実現を求めてとりくみます。
      11. 各地域における食料自給率や地産地消のとりくみ目標の設定を要求していきます。さらに、食の安全や有機農業の推進、農林水産業の振興に向けた条例つくりをはじめ、学校給食に地場の農産物を使用する運動、地域資源を活かしたバイオマス運動や間伐材の利用などのとりくみを広げていきます。
      12. 子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。とくに、支援米運動では小学校の総合学習やイベントなどとの結合、地域連合との共同行動など、地域に広げてとりくみます。
      13. グローバリゼーション、新自由主義がもたらした、平和、環境、生活、労働などに対する影響などを検証し、それらをただすとりくみをすすめます。
      14. 「第44回食とみどり、水を守る全国集会」の開催に向けてとりくみます(11月30日~12月1日・大阪市)。

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