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2015年度 主な課題

2015年4月15日

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2015年度 主な課題

以下は2015年4月15日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第17回総会において決定された2014年度総括と2015年度運動方針です。

1.   運動の展開にあたって

(1)   2015年の特徴的な情勢について

  1. 混迷を極める世界情勢と「ポスト2015開発アジェンダ」
       2014年12月16日、パキスタン・タリバン勢力が、パキスタン北西部のペシャワルの学校を襲撃し、児童・生徒141人が殺害されるという衝撃的事件が発生しました。隣国アフガニスタンでは、国内の治安任務を2015年より米国主導の国際治安支援部隊(ISAF)からアフガン治安部隊が引き継ぐとしましたが、タリバン勢力はアフガン全土での武力闘争の強化を表明しています。また、イラク北部や隣接するシリアの一部では、イスラム教スンニ派を中心とするイスラム系過激組織「イスラム国」(IS)が国家樹立を宣言し、捕虜とした民間人の公開処刑や他教徒の女性を誘拐し虐待するなど許しがたい行為を繰り返しています。米国はISに対して空爆を実施していますが大きな成果を上げるには至っておらず、ISの壊滅に向けて地上部隊の派遣を検討するなど、イラクやアフガンにおける紛争は、解決する兆しを見せていません。自国と対立する国を「悪の枢軸」などと主張し、武力で屈服させること辞さない米国やEU諸国などのこれまでの世界覇権がISやアルカイダなどのきわめて過激な敵対勢力を作り上げてきたのです。
       昨年来、湯川遙菜さんと後藤健二さんの2人の日本人がISに拘束されていましたが、日本政府はその解放について打つ手のない状況が続いていました。安倍晋三首相は、2015年1月17日、訪問先のエジプトで演説し、「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」と話し、ISを強く批判し敵対的立場を明確にしました。この演説の一言が、ISによる二人の日本人の殺害という最悪の結末を迎えました。この事実は、日本がISの敵対的勢力またはテロの対象とされたことを明らかにしています。安倍首相は、「テロリストを許さない、罪を償わせる」と発言しました。ニューヨークタイムズは「過激派の暴力に指導者が直面した際、こうした報復の誓いは西側では普通だろうが、対立を嫌う日本では異例だ」と評し、米オンライン誌スレートは、「日本の指導者としてはまれな発言だが、平和主義の外交方針を放棄しようとする安倍氏のとりくみの一環だ」と指摘しています。ISの残酷な行為を許すことはできませんが、しかし、首相の発言はこれまでの中東における日本外交を180度転換するもので、そのことによって日本社会にもたらすきわめて重大な影響を考えなくてはなりません。安倍首相の演説の一言が、日本の戦後外交の基本的姿勢を転換させました。その意味は重要です。
       安倍首相やその周辺からは、「集団的自衛権行使の容認」が抑止力を高めるとの主張が聞こえてきます。しかし、圧倒的軍事力を要する米国が、2001年の9.11同時多発テロ以降、決して安全・安心の社会ではないことは、軍事力の強化やその行使が、自らの安全保障につながらないことを証明しています。
       安倍首相は、イスラエルの国立ホロコースト記念館「ヤド・バシェム」で行ったスピーチにおいて、「特定の民族を差別し、憎悪の対象とすることが、人間をどれほど残酷にするのか、そのことを学ぶことができました」と話し、「日本としても、人々の人権を守り、平和な暮らしを守るため、世界の平和と安定に、より積極的に貢献していく決意であります」と述べています。その道が、決して武器を売り軍事力を行使することではないはずです。ノルウェーの政治学者ヨハン・ガルトゥングが提唱した「積極的平和主義」の意味をしっかりと問い続けることが重要です。これまで空爆による対応を行ってきた米国は、ISに対して限定的な地上戦を行うことを表明しました。日本が、二人の人質殺害に対する市民感情と集団的自衛権行使、新日米ガイドラインに沿って米国支援を理由にIS との戦闘に参加することは許されません。憲法の平和主義に市民社会全体が目を向けていくことが重要です。
       パレスチナ紛争、シリア内戦、ウクライナ紛争、分断国家南北朝鮮など、欧米諸国の利害によって、世界中で軍事的対立が深刻化しています。イラクやアフガン戦争における米国の利益は、米国の若者の死と1兆ドルとも言われる戦争経費や戦場となった地域のインフラ破壊等の経済的損失、そして住民の犠牲によって成立するものです。2014年10月、世界190か国の若者が集まり、アイルランドのダブリンで開催された「One Young World Summit」において、「私の周りには人の話に聞く耳を持たない人が増えている(イスラエル)」「カシミール紛争は、65年続いて、10万人以上が犠牲になった。残念なことに世界の関心は低く、私たちは孤立している(インド・パキスタン)」「紛争にはすべての政治的思惑が絡んでいる。『サメのような政治家』が、他国の資源を狙っている(ウクライナ)」などとの発言がありました。
       紛争の解決を妨げているのは、自国の利益を優先させる『古い政治』です。どちらかが勝者であり続ける限り、紛争は終わりません。そのことをこのサミットの議論から見えてきます。紛争を深刻化させていくのは、武力によって敵を圧倒してつくる平和であり、自国の利益を優先する「政治」であり、国際社会の無関心なのだと言うことを考えなくてはなりません。グローバル経済が、諸国間の利害の対立によって成立している以上、決して紛争の火種が絶えることはありません。世界の現状はそのことを訴えています。
       2000年に、21世紀の国際社会の目標・約束として「国連ミレニアム宣言」が採択され、飢餓や貧困の撲滅、教育の実現、乳幼児の死亡率改善、ジェンダー平等と女性の地位向上などを中心とする「ミレニアム開発目標」が2015年を期限として設定されました。1日1.25ドル未満で生活する人の割合は半減、マラリアの死亡率も3分の1に減少しています。しかし、サハラ以南では目標の進捗が遅れ、都市部と農村部の格差、貧困の格差が拡大する中で、いまだ課題は山積しています。2015年9月に国連は、首脳級サミットを開催し「ポスト2015開発アジェンダ」を採択することとなっています。平和の実現には、グローバルな視野での平等・豊かさの再分配が重要であり、「ミレニアム開発目標」は積極的平和主義の営みそのものです。「武力で平和はつくれない」。まさに、その視点が世界平和実現への近道であり唯一の道であると確信します。
       
  2. 安倍政権の欺瞞の平和主義
       安倍首相は、「積極的平和主義」を標榜し、内閣法制局や歴代内閣が、これまで憲法が禁じているとしてきた「集団的自衛権」の行使容認を、2014年7月1日に閣議決定しました。第二次大戦後成立した日本国憲法は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する(第9条1項)」として、侵略戦争の反省から1928年の「パリ不戦条約」の理想を盛り込んだ徹底した平和主義を掲げてきました。安倍政権は、この戦争の深い反省と人類の崇高な理想、何よりも侵略国家、ファシズム国家としての歴史から平和国家としての信頼をつくり上げてきた日本国憲法の平和主義を放棄し、平和をつくるためとして「戦争をする国」へと舵を切ろうとしています。
       集団的自衛権行使容認の閣議決定に先立つ2013年12月には、「特定秘密保護法」を、多くの反対を押し切って制定しました。戦前の「軍機保護法」が市民社会にどう機能したかを考えると、市民社会を統制する道具としての法整備であることは間違いありません。2014年4月1日には、これまで禁じてきた武器輸出を解禁する「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。これも防衛生産・技術基盤の維持を目的にしていることは確実であり、そのことが戦争の重要な要素となるものです。同時に、紛争の火種を世界にばらまくことを意味するものです。防衛省は、現在日本企業から武器を購入した開発途上国への援助制度の検討に入っているとされています。日本のこれまでの立ち位置を全く逆転させるもので、平和主義の憲法理念上も許されないものです。世界に絶えることのない紛争の陰に、強国の利害に基づいた武器供与があったことを忘れてはなりません。
       安倍首相が考える積極的平和主義は、圧倒的武力を持って相手をねじ伏せる平和であり、これまでそのことによって真の平和が実現したことはありません。ベトナム戦争が、米国による集団的自衛権の行使であり、1975年のサイゴン陥落をもって、南ベトナム民族解放戦線の勝利に終結することの歴史的意義をしっかりと捉えなくてはなりません。
       安倍首相の意図は、①東アジアおよび世界各地での米国の世界覇権を補完すること、②「ホルムズ海峡は日本経済にとって死活的」という首相発言に象徴される日本の利権を守ること、③敗戦国から脱却し、第二次世界大戦の戦勝国で構成される国連の安全保障理事国入りすることにあります。集団的自衛権行使を可能にして国連の安全保障措置に参加することが、日本社会にとって何の意義があるのでしょうか。例えば、ホルムズ海峡の機雷封鎖を除去することは、国際法上は戦闘行為であり敵対国として戦争に参加することに他なりません。そのこと自体が、敗戦から立ち直った日本の信頼を失墜させることであり、戦後70年にわたり「戦争をしない国」として信頼を勝ち得てきた日本社会にとって何の利益もありません。
       3月20日、自民・公明の与党両党は、「安全保障の法整備に関する与党協議会」において「安全保障法整備の具体的方向性について(とりまとめ案)」を基本的に合意しました。合意文書は、日本国憲法の下で平和国家として歩んできたとしながら、国民の命と平和を守るために集団的自衛権行使を基本に自衛隊の活動範囲を大きく広げるとするものです。これまでの「周辺事態」を「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)」とすることで、自衛隊の活動に対する地理的制約を排除し、支援対象も米軍に限定されません。また、活動範囲も「現に戦闘が起こっていない地域」とすることでより戦闘地域に近づくこととなり、支援内容も弾薬の提供など「他国軍との武力行使の一体化」と考えられるものも含まれます。戦争に直接参加する集団的自衛権の行使の前提も「日本の存立が脅かされる明白な危険(存立事態)」と判断した場合とされ、直接の武力攻撃のみならず、ホルムズ海峡閉鎖のような経済的打撃などを含めて政府の恣意的判断を残すきわめて曖昧なものとなっています。3月21日の東京新聞の「平和の俳句」には、「虎よりも菫(すみれ)のやうな国がいい」(岡崎正浩さん68才)と言う句が紹介され、選者のいとうせいこうさんは「威嚇しあって生きるよりも風に揺れて香りたい。柔らかく強く」と評しています。先の大戦の反省に立って出発した日本の平和憲法、その理念に基づく国づくりに舵を切り直さなくてはなりません。
       
  3. 傲慢な米国と卑屈な日本政府
       2013年1月、沖縄41市町村長と議会議長は、東京日比谷野外音楽堂に結集し「MV-22オスプレイ」の米海兵隊普天間基地配備に反対の声を上げました。しかし、そのような与野党の枠を越えた「オール沖縄」の声を無視し、日本政府の了承の上、オスプレイは普天間基地に配備されました。
        オスプレイは、日米合同委員会での「夜間飛行の禁止」「住宅密集地上空の飛行禁止」「米施設及び区域外での垂直離着陸モードでの飛行禁止」などの合意内容を無視し、傍若無人に運用されています。また、飛行計画を市民に提示することなく全国各地での展示飛行やデモ・訓練飛行を繰り返すとともに、横須賀基地を母港とする米海軍航空母艦ジョージ・ワシントンの後継艦とされるロナルド・レーガンへの搭載も予定されています。航空自衛隊木更津基地にオスプレイの整備工場を建設するとも言われており、首都圏での飛行も予想されています。日本の航空法においては、その機能上(ローテンション機能の不備)許されないオスプレイの飛行は、これだけの反対がある以上、配備の撤回と飛行停止を日本政府自らが求めるべきです。オスプレイ配備は、日本の市民社会への米国の挑戦と言っても過言ではありません。
       普天間基地の移転先とされる名護市辺野古の新基地建設は、3000億円の交付金と引き替えに仲井真多弘前沖縄県知事が埋め立て承認を行った後、その工事が本格化しています。この間、辺野古新基地が建設される名護市には、平成12年度から21年度までの10年間総額で1000億円とも言われる北部振興費が投入されてきましたが、市民は生活が向上したとの実感はもっていないだろうと思われます。稲嶺進市長の再選は、市民が「基地のない沖縄」を選択したことの現れであり、そのことは、2014年11月の那覇市長選挙および沖縄県知事選挙結果においても再確認されています。稲嶺名護市長も、翁長雄志沖縄県知事も、基地に依存しない経済を主張しています。現在、沖縄経済の基地依存度は5%を切るものとなっており、中国や台湾に近い沖縄では観光資源の活用が経済活性化にきわめて重要となっています。このような中で、日本政府は従来の交付金による基地の押しつけという「アメとムチ」の政策から脱却できません。2015年度の予算では、新知事が辺野古新基地建設に反対していることを受けて、約束の交付金を減額しながら基地建設費を倍増させています。また、翁長沖縄県知事の挨拶も受けないなど「政府に反対する者は許さない」といえる不遜な対応を行っています。民意を一顧だにしない安倍政権の政治姿勢はきわめて問題です。
       辺野古新基地建設を強行に推しすすめようと、防衛施設局や海上保安庁などが一体となって、キャンプシュワブゲート前での抗議活動や辺野古沖でのカヌーや船舶による海上抗議行動に対して、暴力的な排除行動を展開しています。カヌー隊への海上保安庁による一時拘束は、法律上何の根拠も無いもので、抗議に対して「逮捕でも拘束でもなく、確保である」と強弁しています。ゲート前では、排除しようとする警備員との混乱から怪我人も出る状況にあります。日米安保条約第6条を根拠とした刑事特別法をもって市民の逮捕も行われています。このような、正当な市民の平和的抗議行動に対しての暴力的威圧や排除は、公権力の濫用であり許されません。
       翁長県知事は、就任後に「仲井眞前知事による辺野古埋め立て承認手続きの可否をめぐる第三者委員会」を立ち上げ、検討結果が出るまで海上作業の中断を沖縄防衛局に求めて来ました。しかし、防衛局は、台風の被害以降、知事選挙もあって半年間中断していたボーリング調査を3月12日に再開しました。このため、3月23日、翁長知事は防衛局に対して移設関連作業の停止を命じ、従わない場合は埋め立てに必要な岩礁破砕許可を取り消すと発表しました。これに対して、菅義偉官房長官は「翁長知事の指示は違法性が重大かつ明白で無効だと判断した」として、行政不服審査法などに基づき指示の取り消しを求める審査請求を行うとしました。45トンものコンクリート塊によって珊瑚礁など自然を破壊しながら「ブロック設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕にあたらない」との中谷元防衛大臣の抗弁は、詭弁でしかありません。そもそもの発端は、公約に反して埋め立て申請に許可を与えた仲井眞前知事の県民を欺いた行為にあります。昨年の県知事選挙での翁長新知事誕生は、その行為を否定し改めて辺野古新基地建設にNOの声を県民があげたものであることは論を待ちません。政府は、翁長知事との対決姿勢を改め、県民世論の立場に立った解決に、翁長知事と協力してとりくまなくてはなりません。
       米国の元国防次官補で、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、沖縄タイムズ紙上で「辺野古新基地建設は困難」とし、「沖縄への基地機能の集中は、軍事的には問題」との発言を行っています。米国内でもこのような声が国防総省関係者からも聞こえ、普天間基地に駐留する米海兵隊に関しては、現代戦には全く必要がないなどとも言われています。海兵隊のグアム移転計画の不透明な中で、日本政府は沖縄の民意に立って、米国との交渉に当たるべきです。
       
  4. アジアの平和を阻害するナショナリズム

       1995年、当時41歳の若手保守政治家であった安倍晋三首相は、戦後50年の「村山談話」発表に、猛烈に反対して結成された「終戦50周年国会議員連盟」の事務局次長を担いました。その結成の主旨は「連合国占領体制下でとられた日本に対する断罪と自虐史観を直し、公正な事実に基づいた歴史の流れを解明し、日本および日本人の名誉と自負心を回復しなければならない」というものです。その後、安倍晋三は日本最大の右翼組織「日本会議」や「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」などに所属し、歴史教科書からの従軍「慰安婦」や「南京大虐殺」の既述削除の先頭に立ってきました。首相就任後も、「いわゆる侵略戦争は国際的な定義として確立されていない」「米国の慰安婦決議案は事実の誤認等を含むものもある」など、歴史修正主義的発言を繰り返し、アジア諸国から非難されてきた靖国神社への参拝も行いました。中韓両政府から、強い反発を招くとともに欧米各国からも非難されています。
       安倍首相の、「東京裁判」を否定する姿勢は、戦後の米国のイニシアチブを否定する方向性を有するものです。その意味で現在安倍首相は歴史発言について自重していますが、今回の内閣改造後の首相を含む19人の閣僚のうち15人が、「東京裁判」を否定する改憲・右翼団体「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)に加盟しています。戦後の憲政史上最も右に位置する内閣であることは間違いありません。
       安倍首相の政治姿勢は、中国や韓国など東アジア諸国から疑念を持って迎えられ、首相就任後、中国・韓国とは、首脳会談さえ開かれずに来ました。慰安婦問題や徴用工・強制労働、歴史認識問題、尖閣諸島(中国名:釣魚島群島)や竹島(韓国名:独島)の領土問題など、多くの対立点に対し何ら有効な施策を打ち出すことができず、単に一方的な主張を繰り返しているに過ぎません。米国は、中国との高官級協議を定期的に開催し、経済的パートナーとしての関係性を強めながら、2014年6月末から実施された、米ハワイ諸島沖での米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック)には中国海軍も参加し、陸軍・空軍同士の米中協力も実現しています。東アジアにおける米国の最重要パートナーが中国であることは確実です。
       2015年度の防衛予算は、3年連続の増額となりました。オスプレイ5機をはじめ、イージス艦、早期警戒機P-1など、前回比で1兆2千億円の増額となった中期防衛力整備計画のペースを超える増額幅で、離島防衛を名目にして侵略的兵器である揚陸強襲艦や水陸両用車、また大型ヘリ空母など、朝鮮有事を想定したかのような計画となっています。東西冷戦構造の終結の中で、中国や北朝鮮を仮想敵国としての軍事(防衛)計画は、東アジアの緊張を煽り日本の安全を危うくする何者でもありません。
       軍事予算を増額し装備の充実を図る一方で、安倍政権は米国との同盟深化を標榜し、集団的自衛権の行使容認を決定し、そのことを基本に「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改定を議論しています。指針改定の中間報告では、シームレスでグローバルな日米軍事協力をすすめることが明記され、これまでの地理的概念であった日米安保条約の極東条項に矛盾するものとなっています。東アジアで孤立し米国依存を強める安倍政権は、将来への政治的・経済的構想を放棄しているかのようにさえ見えます。中国・韓国・北朝鮮を中心に東アジア諸国との関係の正常化は、日本の将来にとって重要な課題となっています。
       
  5. 戦後70年に何をすべきか
       安倍首相は、戦後70年を迎える2015年8月15日に、自由や民主主義を重視する戦後の日本の歩みや、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぎつつ、未来志向のメッセージを盛り込んだ安倍首相談話を出すためとして、有識者会議を設置しました。メンバーや安倍首相のこれまでの政治的スタンスから見て、安倍談話が村山談話や河野談話を継承し、侵略戦争と植民地支配の真摯な反省から東アジア諸国の信頼を勝ち取っていくものになるとは考えられません。「侵略戦争と植民地支配へのお詫び」また「国策を誤り」などの文言の削除や言い換えなどが予想されます。
       平和フォーラムは、人権問題や平和問題にとりくむ市民団体などともに、「戦後70年、新しい東アジアへの一歩へ!市民連帯」を立ち上げました。先の戦争における加害の責任を明確にし、戦後補償の真摯な解決を通じて、新しい東アジア諸国との信頼と協調の関係を構築するために、韓国や米国など諸外国の市民運動団体と協力し、安倍首相へ談話内容の申し入れや、諸外国の市民と連帯したアピールの採択、今後のとりくみの議論および連帯の構築に向けて行動していくことを確認しています。東アジア諸国との新しい協調と信頼の関係構築に向けた一歩を、戦後70年の節目に歩み出すことをめざさなくてはなりません。
       侵略と植民地支配を反省し歴史事実を認めることが、自虐的であるはずがありません。村山談話は、アジア社会での日本の将来に向けたメッセージであり、その基本スタンスは、日本の将来を約束するものです。安倍首相は、習近平中国国家主席との会談において、「日本は積極的平和主義のもとで歴代の日本政府が歴史問題に関して明らかにしてきた『認識』を持続的に堅持する」と述べたと伝えられています。1972年9月29日の「日中共同声明」以来、歴代首相は侵略戦争の加害の責任と真摯な反省の気持ちを伝えてきました。戦後70年の節目の安倍首相談話が、そこから後退してはなりません。
       1945年8月15日の敗戦から、日本人は多くを学び、反戦・平和を基軸とした民主社会を大切にし、「非核三原則」「武器輸出三原則」「専守防衛」を基本に戦争に加担することなく、70年を過ごしてきました。このことこそが、日本人の「誇り」であることを忘れてはなりません。集団的自衛権行使容認や装備移転三原則など、安倍政権の政策は日本人の「誇り」を傷つけ、70年かけて培ってきた世界からの平和国家としての信頼を打ち砕くものです。
       
  6. 安倍政権の教育改革がめざす社会
       「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の事務局長としても、安倍首相はこれまで一貫して、「大東亜戦争は侵略戦争ではなく、自存・自衛の戦争であり、アジア解放の戦争」「南京大虐殺や慰安婦などの加害はデッチあげであり、日本は戦争犯罪を行っていない」「 教科書にはありもしない侵略や加害の既述があり、偏向している」との主張を繰り返し、それに沿って政治活動を行ってきました。そのような意味では、安倍晋三は「保守」ではなく「反動的国家主義者」と言っても過言ではありません。
       そのような姿勢をもった安倍首相が、明白な意図を持って組織した「教育再生実行会議」は、民主的・市民的議論もなく、一方的に国家主義的教育改革を、政府・文科省と一体となってすすめています。道徳教育の教科化は「修身」の復活であり、第一次安倍政権時に声高に主張された奉仕活動など国や公共への献身を美化し、国家主義的体制へと市民社会を誘導するものです。
       下村博文文科大臣は、2014年4月25日、衆議院文部科学委員会での質問に答えて「一旦緩急あれば義勇公に奉仕もって天壌無窮の皇運を扶翼すべし」とした教育勅語を評価する発言を行っています。教育勅語は、戦後の教育を規定した「教育基本法」の制定後、軍人勅諭とセットで戦後の日本社会のあり方にそぐわないとして排除・失効の決議が衆参両院で行われています。そうであれば、日本国憲法の尊重・擁護義務を課される閣僚の発言としてきわめて問題です。多くの政治家や評論家が同様の発言を続けていますが、このことで責任を問われることはありません。それが、今の日本社会の病巣であると言っても過言ではありません。
       尖閣諸島や竹島においては、日中・日韓両国間でその領有をめぐって議論があります。議論があることを教えず、一方的に日本の領土と教えることが、グローバル化し多くの民族が同じ場所で生活をする今日においての教育のあり方でしょうか。一方で、グローバル社会での英語教育の充実を主張しています。自らの歴史をグローバルな基準で評価し、相互の民族的立場を理解し議論を重ねていく、その力を養うことこそがグローバル社会に生きる若者への教育のあり方と言えるのではないでしょうか。安倍政権の教育改革の方向は、将来を誤るものであることは間違いありません。
       多民族・多文化共生社会の実現は、グローバル社会の要請であると言えます。そのような将来に備え、子どもたちの異なる民族の文化や社会のあり方などへの理解と共感を養うことが重要です。
       今年は、中学校用教科書の採択の年にあたります。台頭する日本会議地方議員連盟・教育再生首長会議などの政治家の動きに注視するとともに、教科書改善の会や新しい歴史教科書をつくる会の議会要請や教育委員会への圧力などを許さず、きわめて巧妙に国家主義へと誘導しようとする育鵬社版の歴史・公民教科書の採択を地域から阻止しなくてはなりません。
       
  7. 人権後進国日本とヘイトスピーチ

       2013年10月7日、京都地裁(橋詰均裁判長)は「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の京都朝鮮学園への執拗なヘイトスピーチ(憎悪表現)を問題にした「街頭宣伝差止め等請求事件」で、在特会の執拗なヘイトスピーチを、日本が批准する国連の人種差別撤廃条約などを基本に差別であると断定し、学校の半径200メートルでの街宣禁止と約1200万円の賠償を命じました。2014年7月8日には、大阪高裁(森宏司裁判長)も地裁判決を支持し、「ヘイトスピーチは違法であり、法の保護に値しない」と断じ、在特会の控訴を棄却する判決を言い渡しました。判決文は、事件現場での在特会の言動を「これらは在日朝鮮人を嫌悪・蔑視するものであって、その内容は下品かつ低俗というほかない」「社会的な差別意識を助長し増幅させる悪質な行為であることは明らかである」「本件活動は、憲法13条にいう『公共の福祉』に反しており、表現の自由の濫用であって、法的保護に値しない」ときびしく断じています。在特会の上告に対して、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は2014年12月10日に棄却決定し、二審の大阪高裁判決が確定しました。
       2014年7月24日、国連人権規約委員会は、日本政府に対し、在日韓国・朝鮮人らに対する「ヘイトスピーチ」と呼ばれる街宣活動に懸念を示し、差別を煽る全ての宣伝活動の禁止を勧告しています。委員会は、「最終見解」の中で、ヘイトスピーチやサッカーJリーグの試合中に問題となった「Japanese only」の表示など、外国人への差別を煽る行為が広がっていることを問題とし、差別される側が「刑法、民法で十分に保護されていない」との懸念を示しています。国連の人種差別撤廃委員会も同年8月29日に対日審査を踏まえた「最終見解」を公表し、「ヘイトスピーチ」に対して同様の見解を示しています。
       国連人権規約委員会、人種差別撤廃委員会、社会権規約委員会などは、それぞれの立場で朝鮮高校への授業料無償化措置からの排除や「慰安婦」問題、また生活保護の減額、女性・障害者・同性カップルなどへの差別、最低賃金水準や男女間の賃金格差などに関してもきびしい勧告を実施しています。そこには、人権への無関心やアジア蔑視に基づく差別、また歴史認識問題や外交問題などからの意図的・政策的差別の実態が浮かんできます。日本政府は「強制力はなく、従わなくとも問題はない」という、条約締結国の責任を放棄するきわめて不謹慎な態度をとり続けています。安倍首相の歴史認識や発言や政府の姿勢が、差別的な日本の社会状況の一因であることは間違いなく、その意味で日本政府は政策的に差別を作り上げていると言えます。
       朝鮮高校へ適用されないままの高校授業料無償化措置は、「高校修学支援金制度」として、安倍内閣の下で所得制限を設けることに改悪されました。国連が言ってきた「教育を受ける権利」が低所得者への「施し」の政策に変更されています。他者の人権侵害は自己に関わってくることを自覚し、権利がどのような理念に基づいて構成されているのかを認識し、憲法13条が規定する「個人として尊重される」とする近代市民社会の基本的理念を踏まえて、他者の人権にしっかりと向き合う姿勢をとり続けていくことが重要です。
       
  8. 社会保障の後退と子どもの貧困、生きづらい日本

       厚生労働省が発表した2012年の子どもの貧困率は16.3%で過去最高を記録しました。OECD加盟国の中でも高位に位置します。特に、ひとり親の子どもたちの貧困率は高く、中でも非正規雇用が多く賃金も低位に置かれているシングルマザーの貧困は社会問題化しています。未だに払拭できない女性蔑視の社会観が背景にあることは確実です。「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が2013年6月に国会で成立し、2014年1月17日に施行されました。しかし、数値目標を設定しないもので実効性のある具体的施策が求められています。
       親から子への「貧困の連鎖」を断ち切るためには、教育を受ける権利も重要です。しかし、政府は2014年8月から生活保護費の減額を実施し、シングルマザーの家庭では月額1万円を超えることが予想されています。平成27年度予算においても家賃と光熱水道費にあたる生活保護予算を188億円削減しました。一方で、事故率が高く配備に反対の多いオスプレイ5機を516億円で購入するなど、防衛予算は3年連続で増額されています。社会的弱者を切り捨てようとする姿勢は許されません。国内総生産(GDP)などの数値と貧困率を比べて考えると、政府の貧困対策の欠如が見えてきます。日本の貧困は政策的に作られているという指摘も見受けられます。
       2014年12月、安倍首相は消費増税の先送りを国民に問うとして、唐突に衆議院総選挙を実施しました。国内需要が伸びない中で、消費税増税を打ち出せない安倍首相は、「アベノミクス」は目標半ばであり「この道しかない」と主張し続けました。しかし、2014年の速報値では貿易赤字は12兆7813億円で1979年以降、過去最大となっています。国内需要も消費税導入後に落ち込んだまま、強引な円安誘導などにより物価は2年連続の上昇となり、低所得層を直撃しています。円安は自動車産業など一部大企業の利益にはなりましたが、中小企業では、輸入材の高騰を受けて円安倒産とも言われる事態を引き起こしています。安倍首相は、賃上げと雇用の拡大を宣伝しますが、賃上げは一部企業に止まり、しかも、実質賃金は物価上昇により継続的に減少しています。雇用に関しても増加したのは非正規雇用であり、正規雇用者は20万人の減となっています。
       円安誘導のためにマネタリーベースを倍増するような異次元の金融緩和は日本経済を危うくするものです。2013年の政府総債務残高の対GDP比は243.20%で、財政破綻を起こしたギリシャの175.08%を抜いて世界第1位となっています。この間、財政再建の声は聞こえず「アベノミクス」の下で大型公共事業も復活し、財政問題は悪化の一途をたどっています。
       
  9. 労働崩壊と不平等社会
       働く者の状況は、安倍内閣になってさらにきびしいものとなっています。前国会で労働者派遣法の改悪は阻止されましたが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ぶ時間外手当不払いの制度など、労働者法制の改悪は目白押しとなっています。労働が買い叩かれ、その権利が脅かされています。長時間労働や時間外の不払い、名目のみの管理職に位置づけ時間外手当を支給しない、また不法な販売方法などを強要するなどブラック企業と呼ばれる悪質な労働実態もあります。安倍政権の経済政策(アベノミクス)自体が、労働者の権利侵害によって成り立っているかのようです。
       総務省の就業構造基本調査では、非正規雇用は2014年12月時点で2016万人となり、役員を除く働き手の38%を占め、正規雇用は減少の一途をたどっています。平均年収も1997年の467万円をピークにこの間、減少傾向を見せており、2013年は414万円となっています。円安による物価上昇などにより実質賃金も減少の一途となっています。  「資本主義は、不平等を拡大する」と主張するパリ経済学校のトマ・ピケティ教授の著書「21世紀の資本」が世界的ベストセラーとなっていますが、日本企業の内部留保は増大するばかりで、賃上げという再分配機能は麻痺をしているかのように、格差は拡大を続けています。また、その再分配を補完するものとしての税制度も、法人税の引き下げと消費税の導入、累進課税の緩和に象徴されるように、格差是正の機能を有していません。ピケティ教授が主張するように、「不平等」の進行は劇的なものとなっています。格差の拡大、不平等の進行が、社会不安を拡大していることは確実です。経済成長政策のみに固執することなく、国内での雇用の拡大と生活の安定に向けた総合的施策が喫緊の課題と言えます。
       
  10. 偽りの女性登用施策、輝きを失う女性
     安倍首相は、女性の活躍・活用を標榜し、「すべての女性が輝く社会づくり」を主要政策に位置づけ、第2次改造内閣において、女性活躍担当大臣を含め5人の女性閣僚を誕生させました。組閣後には、政治資金問題や選挙活動などをめぐって、小渕優子経済産業大臣と松島みどり法務大臣が相次いで辞任しました。
       その他の3人についても、きわめて女性の権利や地位向上には批判的な考え方の保守的な人物です。 有村治子女性活躍担当大臣は、夫婦別姓や人工中絶に反対の立場をとってきています。山谷えり子拉致問題担当大臣は、ヘイトスピーチで問題を起こした在特会や霊感商法などで社会問題化した統一教会とも近いと言われ、「児童の2次障害は幼児期の愛着の形成に起因する」という差別的教育理論を振りかざし、女性は家庭を守るべきとの持論を展開してきました。また、高市早苗総務大臣も夫婦別姓に反対し、婚外子の遺産相続における差別を違憲とした最高裁判決にも「ものすごく悔しい」と発言し、また、2020年に女性の指導的地位における女性参画率30%との政府目標を、「女性と言うだけで下駄を履かせる結果平等」と批判しました。稲田朋美自民党政調会長も同様に「女性の割合を上げるために能力が劣っていても登用するのはクレイジー」と発言しています。また「家族を特別視しなければ、帰属意識が欠如し、地域共同体や国家までが軽んじられる」と主張し、尊属殺重罰規定を復活せよとまで主張しています。
        世界経済フォーラム(WEF)が発表した「国際男女格差レポート2014」では、日本は2013年から順位を1つ上げましたが、142カ国中104位という低レベルに甘んじています。日本の評価は、「経済的平等」102位、「教育機会」93位、「健康」37位、「政治参加」129位で、総合104位となっています。2006年からの推移をみると、日本の総合評価は101位、105位、104位と100位以下に低迷し、「教育機会」は2006年の60位から2010年の82位、2014年の93位と下降傾向にあります。
       国税庁が発表した「国民給与の実態調査」によれば、2013年における会社員の正規・非正規職員あわせた平均年収は414万円ですが、男女別に計算すると男性511万円、女性272万円という大きな格差が存在します。就業者の約38%を占める非正規職員では、男性225万円、女性143万円となります。男女の賃金格差は、きわめて厳しいものがあります。米国労働局のデータを見ると、1979年の賃金の男性に対する女性の割合は62.3%であったのが、2012年には80.9%に伸びています。しかし、日本では1979年の51.1%が2012年になっても53.3%と全く増えていません。
       女性閣僚の実態や賃金格差などからして、安倍首相の「すべての女性が輝く社会づくり」の政策がいかに中身の無いものかが見て取れます。
       
  11. 後退する脱原発と再生可能エネルギー、復活する原子力ムラ
       安倍政権は、2014年4月に「エネルギー基本計画」を新たに閣議決定し、原発を重要なベースロード電源に位置づけ、原発の依存度をできる限り下げるとしながらも、推進の姿勢を明確にしました。新規制基準の施行後、電力会社が既存原発の安全対策へ投じた資金は、2014年7月で、総額 約2兆2000億円に達しました。電力会社からは「再稼働すれば資金は回収できる。投資は惜しまない」とする声も聞こえてきます。原発停止が長期化すれば安全対策費用はさらに膨らむ見通しであり、資金の回収も含めて原発再稼働の要求が強まっています。
       福島原発事故以降、再生可能エネルギーへの関心が高まり、政府は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入しました。小売りの自由化と発送電分離を掲げ、企業や個人の再生可能エネルギー産業への参加を促す政策を取りましたが、既存電力会社が電力買い取りを拒否するなど自然エネルギー抑制へ動き出しています。政府はすでに、買い取り価格の縮減と電力会社が買い取り量を制御しやすくするよう新ルールの策定に動いています。これらは、再生可能エネルギー発電への企業や個人の参入・投資を阻害し、ひいては再生可能エネルギーの将来発電量を大きく抑制するものです。
       このような、脱原発・原発依存の縮減への政策が頓挫し、原発再稼働への投資が膨らんでいく背景には、政府の原発推進回帰の姿勢があります。政府・電力会社が一体となって、2011年3月11日以前の「原子力ムラ」の復活がもくろまれています。
       
  12. 川内・高浜原発再稼働!原発推進への転換
       2014年9月10日、原子力規制委員会は、九州電力川内原発の「審査書」を正式決定し、川内原発の再稼働への道を開きました。「審査書」の決定にあたってのパブリックコメントには、17,819件もの意見が寄せられていますが、修正された箇所はほとんど見られません。問題とされた火山リスクに対しても、「運転期間内は問題ない」と一蹴しています。専門家が「噴火の前兆を見極めるには研究が不十分」としているにもかかわらず、九州電力の予知可能とする主張を受け入れた姿勢は、東京電力が、福島原発事故に関して専門家が指摘した連動型地震(貞観地震)の津波の被害を無視し、過酷事故を起こしたことへの反省に立った議論とは思えません。
       想定を上回る津波被害を知りながら、対策を怠り原発事故を引き起こしたとして、東京第五検察審査会は、東京電力の勝俣恒久元会長ら3人を起訴相当と議決しました。今後、仮に地検が不起訴としても再度別の検察審議会が起訴相当とするならば、強制起訴されることとなります。福島原発事故は、非常用電源の水没が決定的要因となりました。想定の7mを超える14mもの津波の可能性が指摘されていたにも関わらず、また、非常用電源の水没事故が過去2回もあったにも関わらず、何ら対応措置がとられずに震災を迎えたことが原因と言えます。安全神話を喧伝し続けた歴代政府や自民党関係者、官僚、そして一義的な責任のある東京電力のいずれも、国会事故調が人災であるとしたにも関わらず責任を問われることがありませんでした。新たな安全神話が形成され、再び責任を曖昧にしたまま再稼働に進む中、事故の原因究明と責任追及の手を緩めてはなりません。
       田中俊一規制委員会委員長は、「審査書」はあくまでも「新基準に適合している」とするもので、一部報道にある「安全審査の合格書」ではないとし、これまで「安全とは言わない」「リスクがゼロとは言わない」と発言しています。しかし安倍首相は、「福島原発事故の経験を踏まえ、日本の原発は世界一安全」と発言し、「新エネルギー基本計画」において「規制委員会が新基準に適合するとした原発は再稼働をすすめる」としています。政府と規制委員会はどちらも再稼働への責任を明確にしていません。このような曖昧な状況を許してはなりません。
       国際原子力機関(IAEA)は多重防護安全策で、原発の稼働にあたっては住民の避難・防災対策を求めています。しかし、規制委員会では、避難計画は再稼働の条件ではないとして、一切議論されていません。政府は、福島原発事故後に原発の周辺30km圏内(UPZ圏内)の自治体に対して「避難計画」の策定を義務づけています。ならば、避難計画を先送りしての再稼働はあり得ません。
       伊藤祐一郎鹿児島県知事は2014年11月7日、「やむを得ない」として九州電力川内原子力発電所の再稼働の容認を表明しました。立地自治体の薩摩川内市議会も鹿児島県議会も同様に容認を表明しました。伊藤知事は、いちき串木野市など周辺自治体からの「UPZ圏内の自治体を同意対象にするように」との要請に対して、「知識の薄いところでの判断は混乱するだけ」として一蹴しました。福島原発事故後の飯舘村のように、原発の恩恵は受けずに、事故のリスクのみ負っている地元自治体の要求は正当なものと言えます。
       川内原発に続いて、2015年2月12日に規制委員会は、関西電力高浜原発3・4号機も新規制基準に適合しているとする審査書を決定しました。福井県、京都府、滋賀県などに広がる高浜原発のUPZ圏内自治体住民は、再稼働に反対するネットワーク「脱原発若狭湾共闘会議」を立ち上げ、原発事故のリスクを負う広汎な住民を結集して反対運動の展開を模索しています。このような運動のつながりを全国に広めていかなくてはなりません。
       事故の収束の見通しが立たず、計画的避難区域や帰宅困難区域などから、いまだ多くの人々が避難生活を余儀なくされている中で、あたかも事故がなかったかのように、再び「安全神話」をつくり出し原発の再稼働が行われようとしています。関西電力は、40年を超える高浜原発1・2号機の再稼働を申請することを表明し、電源開発(Jパワー)は、建設中の大間原発(フルMOX)の運転開始を申請するとしています。日本のエネルギー政策は、市民社会の意志にも、市民の安全にも、「いのち」にも、何ら配慮していないと言って過言ではありません。
       
  13. 国富とは何か、脱原発の倫理
       稼働から40年を経過ないし経過しようとする福井県の美浜原発1・2号機、敦賀原発1号機、島根県の島根原発1号機、佐賀県の玄海原発1号機の5基の原発について、各電力会社は廃炉を選択する方向を示しています。老朽原発は、発電量の規模が小さく新規制基準に伴う安全対策への投資が膨らみ、再稼働しても採算がとれないことが最大の理由です。英国ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット)の廃炉作業は、1993年に開始して20年以上を経過しますが、施設の完全な解体までは、放射線量の低下を待ってなお70年かかるとされています。当初、約450億円と見積もられていた廃炉費用は、現在約900億円にまで膨らんでいます。
       各原発の多大な廃炉費用に関して、政府は電力料金への転嫁を検討しています。電力料金の値上げ理由を、各電力会社は燃料代の高騰と説明していますが、そこに2兆2000億円と言われる安全対策費がどう影響しているのか、明確な回答はありません。今後は、廃炉費用に加え、増大する使用済み燃料の処分費用や東京電力福島第一原発の事故収束作業の費用など、莫大な負担が電力の消費者側に課せられることとなります。原発は安い電力ではなく高い電力であり、事故のリスクを考えるとその商業的価値は低下していくことが予想されます。
       2014年5月21日に福井地方裁判所(樋口英明裁判長)は、大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じました。判決の中で「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利(生命を守り生活を維持する権利)がきわめて広汎に奪われる事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故以外は想定しがたい」として、「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流失や喪失と言うべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」と主張しています。そこには、政府の政策にない人間社会の倫理があります。それは市民社会が望んでいるものであることは間違いありません。
       
  14. 変わらない政治と原子力ムラ

       川内原発の再稼働をめぐって、「関連企業が工事発注の県議」「再稼働、議会で積極発言」と、2015年1月13日の朝日新聞で報道されました。川内原発の工事を受注している企業と関係のある県議2人が「国益のためにもぜひ再稼働を」「原発の代替の火力発電で、国富の流失と電気料金の値上げが止まらない」などの発言を繰り返し、再稼働容認を誘導していたとされるものです。この県議が関係する企業は、2億9000万円もの工事を受注していたとされています。原発の安全性や再稼働の是非を審議する立場の議員が原発から利益を受ける構図は、「原子力ムラ」として常に問題とされてきました。
       2014年8月18日の朝日新聞は、東京電力と東北電力が、使用済み核燃料再処理関連施設が集中する青森県六ケ所村に対し、法的根拠を欠き定められた漁業補償を超える毎年2億円もの「漁業振興費」を、5年にわたって支払ってきたと報道しています。また、同様に朝日新聞は、2014年7月28日、関西電力の内藤千百里元副社長が、少なくとも1972年から18年間にわたり在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1千万円ずつ献金してきた」との証言を掲載しました。「原資はすべて電気料金だった」とされ、原発政策の推進や電力会社の発展を目的に、政界全体では年間数億円に上ったことが明らかにされています。
       このような報道に対して、政界は一切沈黙を守っています。原発の停止が国富の流失を招くとしながら、原発によって己が利益をむさぼる政治姿勢は、国富の私的流用と言わねばなりません。総括原価方式の闇の中で、いいように作られてきた「原子力ムラ」は、福島原発事故を起こした後も全く変わることがありません。
       経済産業省は、原発の電力に基準価格を設ける制度案を打ち出ています。電力自由化を見越した原発優遇策であり、競争から原発を守り維持しようとする電力自由化の主旨に反する全く政策的根拠が無いものと言えます。基準価格は、使用済み核燃料の処分や廃炉にかかる費用も含めて必要額を計算し、政府と事業者で決めるとされ、電力自由化の中で原発にかかる巨額の費用を回収しようとするものです。そこにも「原子力ムラ」の意図が透けるものとなっています。
       
  15. 子どもの健康から、福島の復興の基本を
       原発事故を起こした福島第一原発は、事故の収束に全くめどが立たず、4号機の使用済み燃料のプールからの移送は終了したものの、1~3号機の事故収束は何らのめども立っていません。冷却水から放射性物質を取り除く「多核種除去設備(ALPS)」は、運転停止を繰り返し本格運転に至っていません。また、地下水の建屋への流入を防ぐべき凍土遮水壁の工事も困難をきわめています。基準値内の汚染水を海に流そうとしていますが、ALPSによってもトリチウムは除去できず、そのリスクも指摘されています。規制委員会は今後、福島第一原発における事故に際して、国際的な事故評価基準(INES)を示さない方針を決定しました。意識的な事故の風化をもくろむものではないかと懸念されます。
       福島原発事故により放射性物質で汚染された地域は、帰還困難区域・居住制限区域・避難指示解除準備区域に区分され、避難指示によって未だに8万人が他地域での生活を余儀なくされ、仮設住宅で被災4年目を迎える人も相当数に上ります。政府は、事故前の年間被曝制限量1mSvを20mSvまでに拡大し、避難者の帰還促進を強引に図っています。2014年9月には福島沿岸部を縦断する国道6号線を開通させました。しかし、周囲は帰還困難区域に指定され、車内においても毎時9μSvといわれる、除染目標の42倍の放射線量が測定され、通過する車両は駐停車や降車が禁止されています。2015年3月1日には、6号線と同様帰宅困難地域を走る常磐自動車道が全面開通されました。
       全町民が避難し、事故を起こした第一原発や汚染物質の中間貯蔵施設建設問題を抱える大熊町に、政府・復興庁は住民帰還の受け皿になる商業地と住宅地を集約した39haの「復興拠点」の設置をもくろんでいます。「戻りたい住民がいて、戻れる環境が整いだした」と町の担当者が説明していると報道されていますが、中間貯蔵施設の建設予定地から3.5kmの距離にあり、周辺地域の除染もままならず、生活基盤としてふさわしいものとは言えません。経済を優先する道路の開通も復興拠点も、「意識的な事故の風化」を呼び込む政策に他ならないのです。
       2014年11月14日、飯舘村の住民の約半数に当たる2837人が、東京電力を相手に慰謝料の支払いを求めて「裁判外紛争解決手続き(ADR)」を申し立てました。原発の恩恵を全く受けていなかった飯舘村は、福島原発事故直後に大量の放射性物質に汚染されました。しかし、3年半を経過しても東電や国による避難している住民への支援は不十分なままで、申し立てによって生活再建の資金を得るものとしています。浪江町が代理人となった住民5000人のADRでは、国の指針の月額10万円の精神的賠償に5万円を上乗せする損害賠償紛争解決センターの和解案が示されましたが、東電は他との平等性を欠くとして拒否しています。飯舘村・長泥地区と蕨平地区のADRでは、示された損害賠償紛争解決センターの和解案を東電は拒否し、長泥地区への慰謝料しか認めませんでした。東電の総合特別事業計画には「損害賠償紛争解決センターの和解案を尊重する」と明記されているにも関わらず、東電の和解案拒否の姿勢は目立っています。
       震災発生時18歳以下であった約37万人の子どもたちを対象にして、福島県では「甲状腺検査」が行われています。2014年8月24日、甲状腺がんと確定した子どもが57人、がんが疑われる子どもが46人と発表されました。2014年8月17日、全国紙と福島県の地方紙に全面広告として掲載された「放射線についての正しい知識を」との政府広報では、放射能影響研究所(放影研)が、広島や長崎の被爆に関する放射能の影響については「現在のところ優位な差は見られないが、引き続き疫学的調査を続ける」とし、その影響を否定していないにも関わらず、「100mSv以下の被ばくでは、がんの増加は確認されていないことから、甲状腺がんの増加は考えられません」「全身2000mSvの放射線を浴びた広島・長崎でさえ遺伝的影響はなかったと考えられています」として、根拠なくこれまでの研究を否定するものとなっています。今のところ何が正しいという決定的な証左はありません。今後、福島原発事故で放出された放射性物質がどのような影響を与えるかを見通すことはできません。そうしたことから、決して安全のみを主張することなく、危険性も認めた上で、県民の健康調査の継続と甲状腺がんなどの治療に関して、政府の責任を果たすべきです。
       
  16. 破綻した核燃料サイクルと核拡散
       2015年は、5年に一度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の開催の年であり、4月末よりニューヨーク国連本部で幕を開けます。1970年に発効したNPTは、①核兵器保有国の核兵器技術の拡散防止、②非核兵器保有国は核開発を行わない、③同じく国際原子力委員会(IAEA)の査察を含む保障措置を受け入れる、④全ての条約参加国は原子力の平和利用の権利を有することを基本にしています。原水禁は、「核と人類は共存できない」ことを基本に、核の商業利用(平和利用)である原子力発電にも反対を表明し運動を展開してきました。しかし、多くの核兵器廃絶を求める運動は、NPT体制を基本認識としてすすめられてきました。
       2001年9月11日の同時多発テロを経験した米国は、増え続けるプルトニウムと核開発から「核テロ」が現実性を帯びてきたことに鑑み、2010年のNPT再検討会議に先行して「核セキュリティサミット」を開催し、「これ以上分離プルトニウムを増やすべきではない」と主張してきました。そのような中で、NPT加盟の非核保有国で唯一使用済み核燃料から分離したプルトニウムを長崎型原爆にして6000発弱分、47tも抱える日本と、これまで3度の核実験を行い事実上核保有国である北朝鮮に挟まれた韓国は、期限切れを迎えた韓米原子力協力協定の締結交渉において、使用済み核燃料の再処理、プルトニウム利用政策の実施を要求しました。核拡散に懸念を持つ米国はそれを認めず、韓米原子力協力協定は、2年間の暫定的延長となりました。アジアの平和のために原水禁が主張してきた「東北アジア非核地帯」の実現に向けて、また、日本政府が主張する世界の核廃絶に向けても、同時に高速増殖炉もんじゅの計画破綻の現状や六ヶ所再処理工場の20回目となる稼働延期の現状からも、日本政府が勇気を持って「プルトニウム利用計画(核燃料サイクル計画)」を廃棄することが求められています。
       2014年4月非核保有国12ヵ国による「核軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」の外相会議は、核兵器廃絶に向けたとりくみをアピールする「広島宣言」を採択しました。10月には国連総会第1委員会において、核兵器の非人道性や不使用を訴える共同声明が、日本を含む155ヵ国の賛同をもって発表されました。核兵器が非人道的兵器であることは、被爆者の粘り強い訴えのなかで世界各国の一致した見解になっています。パン・ギムン国連事務総長が提案する「核兵器禁止条約」締結への下地ができつつあります。
       しかし、米国を中心に核保有国が、いまだ核の抑止力に意義を見いだしている現状と、北朝鮮やインド、パキスタン、イスラエルなどNPT枠外の国々が核兵器保有する状況から言えば、核兵器使用の可能性を低減し、核兵器の削減・廃棄につなげていくことために、漸進的にでもとりくみをすすめることが重要です。米国の「憂慮する科学者同盟」のグレゴリーカラーキー博士は、現状で実施可能な措置として、米国政府に対して「核兵器の即時警戒態勢の解除」を求めることを提案しています。このことは、核兵器使用また誤用の可能性を低減し、核抑止力への幻想を断ち切ることに大きな効果を及ぼすものと考えられます。核廃絶に向けては、様々な視点や方向からとりくみを複合的にすすめることが求められています。
       
  17. 倫理なき経済発展、生命をむしばむ武器や原発の輸出政策

       「福島原発事故の教訓から、日本の原発は世界一安全」と主張し、安倍首相は2012年12月の就任直後から、中東諸国などを中心に原発輸出に積極的に動いてきました。地震国トルコ、砂漠の国ヨルダン、ベトナム、リトアニアなど政治的にも外交的にも不安定な国々に対する原発輸出は、原発事故のみならず核開発や核テロの危険性を高めるきわめて問題の多いものと考えられます。また、NPT非加盟の核保有国であるインドとの原子力協力協定締結にも積極的に動いています。このような姿勢は、被爆国日本の核廃絶への外交姿勢をゆがめ、世界の信頼を失う結果を招来するでしょう。
       武器の輸出に道を開いた「防衛装備移転三原則」も同様に、このような自国の経済発展のための倫理なき政治姿勢は、世界の混乱に自らが飛び込んでいくもので、集団的自衛権行使の「積極的平和主義」と同様に、侵略戦争と植民地支配、そして敗戦の反省に立った「平和国家」日本を根底から覆すものです。
       
  18. TPPによる日本社会の崩壊
       環太平洋経済連携(TPP)交渉は、5月の安倍首相の訪米予定を踏まえ、予断を許さない段階に突入しています。日米両政府も早期妥結に向けて交渉を加速化させている模様です。TPP交渉は守秘義務によって守られ、交渉内容が見えていません。しかし、伝えられていることを総合的に判断するならば、関税撤廃の例外とされてきたコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖やその原料の重要5品目も、牛肉・豚肉などは漸進的に自由化の方向に進み、コメについても世界貿易機関(WTO)のミニマムアクセス米(MA米)の枠とは別に、その輸入枠拡大をめざしていると思われます。このような状況に対して、多くの反対の声があがっています。「地方創生」と標榜しながら、地方経済は、農業生産者を中心に、TPPによってきびしい状況に追い込まれることは確実です。
       バター不足が社会問題化し2014年に農水省は7000トンのバターを緊急輸入しました。酪農農家の減少が背景にあることは明らかです。全国酪農協会の調べでは、この10年間で酪農家の戸数は約35%減少しています。これは、輸入飼料の高騰や価格の低迷などで収支が悪化していることが原因ですが、食生活に定着した乳製品の多くを輸入に頼る現状は問題です。昨年から米価が大幅に下落し生産者を直撃しています。MA米の枠は現在77万トンでさらに輸入米が拡大していけば、日本における米作りは終焉しかねない状況です。TPPは農業分野だけではなく、医療分野や社会保険分野、共済制度などにおいても日本社会の根底を揺るがし、社会的資本と市民生活に大きな打撃を与えるものです。
       
  19. 市民社会を破壊する憲法論議
       これまでに指摘してきた日本社会のきびしい情勢を通底しているのは、「いのち」をないがしろにする政策と言わざるを得ません。積極的平和主義を主張し、自衛隊を戦闘の地へと派遣しようとする安倍首相は、自衛官の死に言及したことはありません。安倍首相が口にする「ホルムズ海峡は日本経済にとって死活的」という言葉には、国家の利益を優先し個人の「いのち」を軽んじる国家主義が見えています。
       自民党が2013年4月に発表した「憲法改正草案」は、近代市民社会が作り上げてきた理念、憲法というものの持つ意義を根底から覆すものとなっています。「公共と公の利益という文言の導入」「緊急事態の宣言(戒厳令)の導入」「国民に国防の責任を課す」「国民に憲法の尊重・擁護義務を課す」など国家主義的な規定が並びますが、憲法13条の「すべての国民は個人として尊重される」を「人として尊重される」に置き換えていることは、自民党安倍政権の本質を表しています。内田樹・神戸女学院大学名誉教授は近著「街場の戦争論」の中で、現日本国憲法と自民党改正案を米国の高校生に示しどちらが新しいかと聞けば、結果は明らかだと述べています。
       安倍首相は、これまでの保守とは立ち位置を別にします。彼の主張は、米国主導の「戦後」の否定であり、確信的に戦前への回帰を主張するものです。東京裁判およびサンフランシスコ講和条約を基本にしたこれまでの保守政治と一線を画すものとなっています。その意味で、中曽根内閣や小泉内閣とも比較できない、きわめて危険な内閣であると言えます。
       2014年12月、安倍首相は、消費増税の先送りの是非を問うとして、突然の衆議院解散・総選挙を行いました。アベノミクスの破綻が見えないうちに総選挙を行い自己の政権の延命を図るという、全く大義ない解散・総選挙であり政治の私物化として許されるものではありません。集団的自衛権行使容認の問題や特定秘密保護法などでは、市民社会の意見が分かれているにも関わらず何ら耳を貸さず、消費増税の延期など反対の声が聞こえない事柄に、市民社会の意思確認がなぜ必要なのか、全く理解できません。また、選挙期間中に口にしなかった「憲法改正の議論」を、選挙の勝利が確定してすぐに主張し始めるなど言語道断です。安倍首相の政治的倫理観の欠如は際立っています。
       安倍首相は、2016年夏に予定される参議院選挙後の「憲法改正」を主張しその議論を始めるとしました。初めは、新しい権利としての環境権や、大震災を想定するとした緊急事態の宣言など、連立与党である公明党の理解を得られるものを基本にして、2016年参議院議員選挙後の実施を検討すると伝えられています。この間、日本会議の地方議連により、石川、千葉、富山、兵庫、愛媛、香川、熊本、鹿児島などの県議会で『憲法改正の早期実現を求める意見書』が採択されています。このように、地方からの憲法改悪への動きも安倍首相の姿勢に呼応して活発化しています。憲法改正の最終的な到達点が、2013年に示された自民党憲法草案にあることは自明であり絶対に許してはなりません。
       平和フォーラムは、51回の「憲法理念の実現をめざす大会」を開催してきました。日本国憲法は、パリ不戦条約や近代市民社会が作り上げてきた理想を具現化したものとして、その理念は常に新鮮です。理念の実現を基本にして、国民的議論を展開していかなくてはなりません。
       安倍政権の本質が、戦争や原発、貧困や差別を助長し、物言わせない社会を構築していくことにあります。そこには、私たちが主張してきた「一人ひとりの命に寄り添う政治と社会」とは正反対の社会しか見えてきません。
       
  20. 総がかりへ、安倍政権との闘い
       「戦争をさせない1000人委員会」の運動には、多くの学者・文化人が参加しています。日本の理性は、この国の現状に大きな警鐘を鳴らしています。亡くなった菅原文太さんは、戦争をさせない1000人委員会の発足集会で「戦争反対に反対するいわれはないからここに来ました」と発言し、参加者の喝采を浴びました。大江健三郎さんは、「日本の戦後は明るかった。戦後の精神は平和と民主主義」などと発言し、80歳となった今でも行進の先頭に立っています。多くの人々が、それぞれの立場から平和について発言を始めました。戦争反対こそ市民社会の圧倒的声であることを確信し、平和フォーラムは、「戦争をさせない1000人委員会」の運動を支え、労働組合運動と市民運動をつなぎ広汎な人々の声を結集する役割を担わなくてはなりません。
       2011年3月11日の福島原発事故から、脱原発の声は市民社会に拡がりました。平和フォーラムは「さようなら原発1000万人アクション」の運動に対し、事務局機能を担い脱原発運動の全国展開の中心として多くの市民と連帯してとりくみをすすめてきました。安倍政権は、戦争も原発も推進し、そして貧困も差別も助長する政策をとりつづけています。日本国憲法とその理念が崖っぷちに立たされている今こそ、社会変革に理想をもってとりくんでいる多くの人々と運動をつないで、大きな「いのち」の輪を作り上げていかなくてはなりません。その基盤が、日本社会にできあがりつつあります。
       

(2)   今年度の重点的とりくみ

   2015年のとりくみの焦点は、集団的自衛権行使を可能とする戦争関連法案制定、沖縄辺野古への新基地建設強行、歴史認識の修正を狙う「安倍談話」公表であり、エネルギー政策の見直し・原発再稼働にあります。国会の勢力図だけを見れば、それらの強行は可能です。加えて安倍首相は、2016年の参議院選挙において、憲法発議に必要な3分の2の議席数を確保し、いよいよ「憲法の条文改悪」へ踏み出そうとしています。その先に見えるのは、いのちをないがしろにする「戦争をする国」です。日本は、現在、戦後最大の憲法の危機、平和と民主主義の危機に直面しています。安倍政権との闘いが正念場をむかえようとしています。
   世論調査では、安倍政権の支持率は50%前後と高くなっていますが、「憲法9条」「戦争関連法案」「沖縄辺野古への米軍新基地建設」「歴史認識の修正」「原発再稼働」「アベノミクス」などの個別政策を見るならば、市民社会は反対の意志を示しています。また自民・公明の与党間においても意見の相違が見られます。
   衆議院選挙は投票率も低く、自民党の絶対得票率は17%弱です。沖縄では、名護・那覇市長選、県知事選、衆議院選挙とも「新基地建設反対派」が勝利し、県民挙げての運動になろうとしています。韓国、中国、西欧諸国、米国の政府・市民などの国際世論も「安倍の暴走」とりわけ「歴史認識の修正」「東アジアで軍事的緊張を高める政策」を支持していません。安倍政権は「貧困と格差社会の進行」「沖縄への新基地建設強行」「東電福島事故の収束と再生」「東アジアでの共生」などの課題で、市民社会との距離を開き、矛盾を拡大させるばかりで、事態への対処能力を失いつつあります。
   こうした情勢の中で、平和フォーラムは、安倍政権との対抗軸を明確にし、これまで平和と人権、脱原発や環境の分野で活躍してきた団体・市民・労働組合、民主リベラルの政治勢力などが総がかりで闘えば、安倍政権の政策転換・退陣を勝ち取ることは可能だということを確信し、それぞれの自主的運動の強化を前提にしながら、従来の運動の枠を超えて、大胆に「連帯と共闘」に踏み出します。

  1. 戦争をさせない1000人委員会のとりくみを中心に
       安倍内閣の、戦争をする国づくりとしての、集団的自衛権行使容認の閣議決定、今後予想される戦争関連法制、日米ガイドライン改定、そして戦争をする人づくりとしての教育改革などに抗して、「戦争をさせない1000人委員会」の運動強化を図ると共に、より広汎な市民・労働団体の結集として「総がかり行動実行委員会」の積極的とりくみを主体的にすすめ、その延長上として「平和といのちと人権を!5.3憲法集会-戦争、原発、貧困、差別を許さない-」の成功に全力を尽くします。引き続き5月から8月までの通常国会の山場では、連続国会包囲行動などを中心に全国の平和・民主主義・脱原発勢力総がかりの運動・共闘を追求します。
       このようなとりくみを通して、戦争させない1000人委員会の運動の前進を、平和フォーラムと構成団体の組織の強化に連動させていきます。
       
  2. 地域社会・職場からの平和運動の構築を

       「戦争をさせない1000人委員会」の運動を強化し、署名のとりくみや情宣活動を通じて地域社会・職場への浸透を図ります。平和フォーラムに結集する地方運動組織を中心に「戦争をさせない1000人委員会」の地方バージョンの展開を追求し、組織強化をめざします。
       
  3. 憲法の改悪を許さない

       安倍首相は、2016年の参議院総選挙後の憲法改正をめざして国民的議論を展開すると標榜しています。安倍首相のもくろむ日本社会の姿を明確にするとともに、市民社会との連帯を「戦争をさせない1000人委員会」運動を通じて強化し、世論喚起を基本に据え、憲法改正に踏み込むことのできない盤石な世論形成に全力でとりくみます。そのため、「憲法理念の実現をめざす第52回大会青森大会」の成功に向けてとりくみます。
       
  4. 「オール沖縄」の運動に連帯し、普天間基地撤去・辺野古新基地建設阻止へ
       名護市長選挙、那覇市長選挙、そして辺野古新基地建設に反対する翁長県知事の当選、加えて新基地建設反対の国会議員4名の全員当選を果たした衆議院総選挙、何度も繰り返し示されてきた「オール沖縄」の意志、沖縄への基地負担の押しつけ、沖縄差別、民主主義破壊などに対する沖縄の怒りを胸に刻み、「平和運動センター」「島ぐるみ会議」「基地の県内移設に反対する県民会議」と連携して、辺野古新基地建設工事の中止、普天間基地の即時返還を求めて、全国連帯のとりくみをすすめます。
       
  5. 脱原発で社会変革の実現
       市民社会の声を無視して、「原子力ムラ」という一部の利益に寄り添い原発推進に舵を切る安倍政権を許さず、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を中心に、多くの脱原発団体との共闘の前進にとりくみます。
       UPZ圏内自治体の住民との連帯の形成をめざし、川内および高浜原発の再稼働およびその他既存原発の再稼働を阻止し、大間原発、上関原発など新規原発を廃炉に持ち込むべく全力でとりくみます。
       
  6. 福島の原発事故被災者の補償確立を

       被災4年目をむかえてもなお、何ら変わることのない避難生活があります。また、健康不安も広がりつつあります。「福島プロジェクト」の議論を軸に、被災者の合意形成を基本にして、被災者の求める生活基盤の復興にとりくんでいきます。
        政府の責任ある補償を基本にして、子どもたちを中心とした健康問題へのとりくみをすすめます。
       
  7. 日本を核兵器廃絶の先頭へ
       2015年4月末から予定されるNPT再検討会議にむけて、連合・KAKKINと連携し核兵器廃絶に向けた運動の展開を図ります。朝鮮半島及び日本列島の非核化の実現に向けた議論をすすめます。
       「核と人類は共存できない」を基本テーゼとしてきた原水爆禁止日本国民会議(原水禁)は、今年結成50年を迎えました。これまでの論理と運動を振り返るとともに、次の50年を、核兵器廃絶・脱原発運動の先頭に立つために真摯な議論を展開します。
       
  8. 朝鮮高校への高校就学支援金制度の適用を求めます
       国連社会権規約委員会や人種差別撤廃委員会の勧告でも、明確に差別とされる朝鮮高校への高校修学支援金不適用を許さず、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」をとりくみの中心にすえて、韓国のNGOなどとの連帯も含め、裁判支援のとりくみをすすめます。
       
  9. アジアの地域統合と日本社会を破壊するTPPに反対
       日本の社会的資本と市民生活に大きな打撃を与え、アジアの地域統合を米国の利益の視点から拒もうとする環太平洋経済連携協定(TPP)には、反対の立場で、広範な組織と連携してとりくみます。
       
  10. 戦後70年、新しいアジアとの関係をつくる
       安倍首相は、戦後70年目の今年、新しい未来志向の談話を発表するとしています。これまで、全体として歴代首相の談話を引きつぐとしていますが、「国策を誤り」などの重要な文言を削除しようとの姿勢が見えます。安倍首相への申し入れ、侵略戦争と植民地支配の反省に立ち新しい東アジア諸国との信頼と協調の関係構築を基本にした「東アジア市民宣言」「8・14市民集会」など、安倍談話への対抗的アクションに多くの市民団体などと協力してとりくみます。
       これまでの「戦後70年、新しい東アジアへの一歩へ!市民連帯」「日朝国交正常化全国連絡会議」「日韓つながり直しキャンペーン」の運動を基本に、歴史認識の修正を許さず、過去の清算・戦後補償、日朝国交正常化実現のとりくみを強化します。
       今年度は、中学校用教科書の採択年度であり、「育鵬社版歴史・公民教科書」など、歴史事実を歪曲し国家主義に基づく教科書の採択阻止にむけて、市民連帯の下でとりくみをすすめます。
       
  11. 立憲フォーラム議員団との連携の深化
       「戦争をさせない1000人委員会」の運動を通じて、集団的自衛権や日米ガイドライン改定の問題、沖縄基地問題、憲法改正の問題などへのとりくみに関して、民主リベラル勢力の結集である「立憲フォーラム」の議員団や「自治体議員立憲ネットワーク」との連携を深化し、院内外でのとりくみを強化します。そのとりくみを通じて、「立憲フォーラム」などの強化に全力を挙げます。また、労働団体の最大のナショナルセンター「連合」内での集団的自衛権や憲法改正に関する議論を注視し、連携のとりくみを追求します。
       

2.   平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざすとりくみ

(1)   改憲の動きに抗し、憲法理念を実現するとりくみ

   日本国憲法は、前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」し、第9条で「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で「基本的人権の本質、普遍性、永久不可侵性」を定めています。平和フォーラムの基本的立場は、これらに示された憲法理念の擁護と実現をめざすとともに、人権や民主主義の国際的な確立にむけた世界の到達点に立って、さらに発展させることです。そしてこの間、東北アジアの平和に向けたとりくみや、人々の生命の尊厳や生活を最重視する「人間の安全保障」の具体化をめざしてきました。
   しかし、自民党・安倍政権は、2012年12月の発足以来、この憲法理念を踏みにじり、ないがしろにしてきました。基本的人権を否定する自民党改憲草案の公表、改憲発議を3分の2から過半数に引き下げる96条改「正」の策動、「知る権利」「報道の自由」を侵害する特定秘密保護法の強行採決、そして「防衛装備移転三原則」閣議決定(武器輸出の実質的解禁)や、集団的自衛権行使容認の閣議決定と、着々と憲法破壊の攻撃をすすめてきました。
   12月14日に行われた第47回衆議院総選挙は、投票率52. 66%と戦後最低となりました。各党の獲得議席は、自民党291、公明党35、民主党73、維新の党41、共産党21、社民党2、生活の党2、次世代の党2、無所属9であり、自民党と公明党の与党で憲法改正の発議に必要な3分の2を超える326議席を獲得するという結果となりました。
   安倍政権は今回の選挙結果を受けて、「集団的自衛権」行使容認などが「国民の支持を受けた」とねじ曲げ、憲法違反の閣議決定に基づく日米ガイドライン改定や戦争関連法案提出、沖縄辺野古への基地建設、歴史認識の改ざん、貧困と格差の拡大、原発再稼働、そして憲法改悪へと突き進もうとしています。「戦後レジームからの脱却」を掲げつつ、「戦争する国」づくりに向け、さらに大きく踏み出しつつあります。
   その上で、来年夏の参議院選挙に合わせて憲法改正の国民投票へとなだれ込もうとする可能性すらあります。3月5日、選挙権年齢を18歳へ引き下げるための公職選挙法改「正」案が衆議院に提出されています。成立した場合、昨年改「正」の国民投票法の公布から4年の経過を待たず、国民投票の年齢も18歳に引き下げられることになります。
   昨年、平和フォーラムは全国一丸となって、安倍政権の憲法破壊の攻撃に対決するたたかいに立ち上がりました。2014年3月に発足した「戦争をさせない1000人委員会」は、「集団的自衛権」行使容認の閣議決定阻止のたたかい、さらに「9.4総がかり行動」(9月4日、日比谷野外音楽堂、約5500人)、「11.11総がかり国会包囲行動」(11月11日、国会議事堂周辺、約7000人)など安倍政権と対決するたたかいをすすめてきました。そして、「戦争をさせない全国署名」は合計255万筆以上を集めるなど、大きく運動を拡げてきました。
   安倍政権は自衛隊法など関連諸法の改「正」のみならず、「日米防衛ガイドライン」改定についてもどんどん先延ばし、統一地方選挙への影響を避けるために5月以降、一括しての提出を目論んでいます。最低限の説明責任すら果たそうとしないこうした態度を許してはなりません。「集団的自衛権」の実体化を許さず、憲法破壊・人権破壊・生活破壊の安倍政権と対決する全国的なたたかいをつくりだすために、これからも引き続き、全力でとりくみます。
   「戦争をさせない1000人委員会」からあらためて全国署名が提起されています。憲法違反の閣議決定の撤回を求めるとともに、戦争参加を可能とするあらゆる法整備に反対する内容であり、これからの全国運動の軸となるとりくみです。私たちはこの全国署名に全力を挙げてとりくみ、昨年の署名をも大きく超えるかたちで、「戦争をさせない」という全国の人々の意志を安倍政権に突き付けていきます。
   昨年、「戦争をさせない1000人委員会」と市民団体によって構成される「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」との共同で「9.4総がかり行動」、「11.11総がかり国会包囲行動」にとりくんできました。この積み重ねをもとに、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を立ち上げ、これからの全国的共同行動の実現をめざしていきます。
   また、首都圏では平和フォーラムと「5.3憲法集会実行委員会」が例年5月3日にそれぞれ憲法集会を開催してきましたが、今回は共同して「平和といのちと人権を!5.3憲法集会~戦争・原発・貧困・差別を許さない~」の開催を呼びかけます。ここに「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」をはじめ、戦争・原発・貧困・差別といった課題にとりくむ諸団体・個人の総結集をかちとることをめざします。
   全国での「戦争をさせない1000人委員会」の立ち上げは、各地でのとりくみの結果、各都道府県レベルでの結成をおおよそ実現することが出来ました。さらに地域における運動拡大、市民運動との連携をつくりだし、安倍政権と対決しうる全国的ネットワーク形成をはかっていきます。
   改憲情勢に抗し発足した超党派の議員連盟「立憲フォーラム」(代表・近藤昭一衆議院議員)は「戦争をさせない1000人委員会」に連携しながら、「集団的自衛権」をめぐる攻防においても積極的にとりくみをすすめてきました。平和フォーラムもこれらの動きと連動しながら、国会での攻防も含め、大きな動きをつくりだしていきます。
   「国民主権」や基本的人権に対する破壊攻撃と言うべき「特定秘密保護法案」は、12月10日に施行され、すでに内閣官房や防衛省など10行政機関で計382件が「特定秘密」に指定されています。しかし、運用をチェックするとされる機関「情報監視審査会」は3月下旬、ようやく初会合を開催しました。「特定秘密保護法」は単に「知る権利」の抑圧に止まらず、戦前の治安維持法下の物言えぬ社会への回帰をもたらしかねないものです。多くの労働者・市民と共同し廃止に向けたとりくみをすすめていきます。さらに安倍政権は再度の「共謀罪」新設を画策するなどしていることから、廃案を求める多くの市民の動きを今後のとりくみへと繋げていく必要があります。
   2015年の通常国会は、戦争関連法制をめぐる攻防が焦点となります。戦争国家への道へと突撃する安倍政権の暴走を阻止する、大きな運動をつくりだすことが求められています。私たちは、その役割を担い、全力で果たす決意です。

(2)   「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」について

   平和フォーラムは、昨年度、「戦争をさせない1000人委員会」に結集し、安倍政権による「集団的自衛権」行使容認に反対する全国運動に全力でとりくみました。
   「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」もこの情勢を踏まえたものとなりました。11月1日から3日間の日程で、第51回大会を岐阜市で開催し、「『戦争をさせない』私たちは平和主義を、そして命を守ります!」のテーマのもと、シンポジウムや分科会を通して白熱した議論が行われました。また、独自企画として「憲法・平和を守る1000人集会」とデモを行いました。このなかで「主権在民」「基本的人権の尊重」「平和主義」といった憲法の原則を否定し、破壊しようとする安倍政権と真っ向から対決し、一人ひとりの命と、平和に生きる権利を守りぬくためにがんばる決意を固めあいました。
   本年については、青森県・青森市において11月14日~16日の3日の日程で開催する準備を、地元実行委員会との協力の下、すすめていきます。

《2015年度運動方針》

  1. 戦争のできる国家づくりを推し進める安倍政権の動きに対抗する全国的運動として「戦争をさせない1000人委員会」のとりくみをすすめます。人々の「生命」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていく「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」、「9の日行動」など各地で行います。「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求める「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみと連携します。
  2. 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し、立憲主義を確立するため、米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、「集団的自衛権行使」に向けた憲法解釈変更を許さないとりくみを引き続きすすめます。また、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約を平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
  3. 自民党による改憲攻撃や衆参憲法審査会の動向に対抗するとりくみを強め、立憲フォーラムと協力し、院内外での学習会などを行います。中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。学習会を開催します。また、機関誌「ニュースペーパー」での連載企画や冊子発行、論点整理のホームページなどを適宜、情報発信します。
  4. 新しい時代の安全保障のあり方や、アメリカや東アジア諸国との新たな友好関係についての大衆的議論を巻きおこすとりくみを引き続きすすめます。
  5. 今年の5.3憲法集会を「平和といのちと人権を!5.3憲法集会~戦争・原発・貧困・差別を許さない~」として開催し、安倍政権とたたかう諸団体・個人の総結集をめざします。あわせて、全国各地での多様なとりくみを推進します。
  6. 「憲法理念の実現をめざす第52回大会」(護憲大会)は、下記日程で青森県・青森市において開催します。
          11月14日(土)午後-開会総会、11月15日(日)午前-分科会、11月16日(月)午前-閉会総会

3.   平和と安全保障に関するとりくみ

(1)   安全保障法制の改定・日米ガイドラインを阻むとりくみ

   7月1日の閣議決定では、集団的自衛権の行使容認のほか、後方支援の対応、武力攻撃に至らない(いわゆるグレーゾーン)やPKO活動等にも言及し、安全保障法制の見直しを打ち出しました。
   従来の政府の基本方針であった自衛権発動の3要件のうち第1要件である「我が国に対する急迫不正の侵害があること」が「我が国に対する武力攻撃が発生、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」とする新しい武力行使の要件が示され、集団的自衛権行使への道を開きつつあります。これにより、今後の安全保障法制の見直しでは、自衛隊法や武力攻撃事態対処法など、「我が国に対する武力攻撃」を前提にして立法されている法律の改正がすすめられようとしています。
   また、米軍の武器を防護するために武器使用を可能とすることや、常時自衛隊を海外に派遣できる一般法を制定しようとする方針が打ち出されています。これまでPKO法に規定された海外派兵の他は、特措法によって自衛隊が派遣されるなど期間の制約があるほか、非戦闘地域での活動に限定されていました。こうした制約が取り払われることで、自衛隊の活動範囲が地球規模に広がり、専守防衛としてきたこれまでの安全保障政策から大きく逸脱することが危ぶまれます。
   安全保障関連法制の改定に向けて協議を進めてきた自民・公明両党は、3月20日に「安全保障法制整備の具体的な方向について」を合意しました。
   現行の自衛隊法の防衛出動の要件(第76条)では「我が国に対する武力攻撃」「明白な危険が切迫している事態」(いわゆる「おそれ事態」)、そして武力攻撃事態対処法では「武力攻撃」「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」と、日本に対する武力攻撃にいたるなかでシームレスに対応するよう定義されています。そこで政府は、7月1日の閣議決定を受け「日本と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある」状況を「存立事態」と定義し、武力攻撃事態対処法に盛り込むことにより、集団的自衛権の行使の法制化をめざそうとしていました。公明党は新武力行使の3要件を厳格に解釈することを自公協議で求めていましたが、安倍首相は中東のホルムズ海峡での機雷掃海も集団的自衛権の行使の対象となると表明し、幅広い解釈を可能とする姿勢を示していました。
   結局、自公合意では、集団的自衛権にかかわる「新事態」の名称と定義を具体的に明記することは避け、新武力行使の3要件を自衛隊法や武力攻撃事態法の条文に「過不足なく盛り込む」として、武力行使の3要件が時の政権によって解釈の幅が広がることないように厳格に位置づけるべきにもかかわらず、そのことすら表明しないあいまいなものとなっています。
   日本の平和と安全を目的とした他国軍支援については、朝鮮有事を想定してアメリカ軍の後方支援を行うことを定めた周辺事態法があります。自公合意では、米軍及び他国軍隊を含めて後方支援し、「目的規定を見直す」として「周辺事態」という地理的概念の見直しを検討するとしました。また、国際社会の平和と安全を目的とした他国軍支援について、自衛隊法の活動の幅を広げる一般法を新たに制定するとしています。しかし、自公合意では、「武力行使との一体化を防ぐ」「国連決議」「国会の事前承認」「自衛隊員の安全確保」を前提にする姿勢を示しながら、その具体的な要件については明言することを避け、派遣の対象国などの制限もないなど、極めて問題が残る合意事項となっています。
   グレーゾーンの対応に関しては、米軍以外の外国軍隊も含めた武器等について自衛隊による防護も可能とするよう自衛隊法を改正することを明記しました。PKO活動の対応についても、自衛隊の任務の拡大と武器使用権限の見直しが示されています。
   以上のように安全保障法制の整備に向けた自公合意では、公明党が求めていた、閣議決定の限定的な解釈すら盛り込まれず、要件の具体化、明確化が先送りされました。このままではより政府の意向に沿った法整備、条文化が危惧されるところとなります。もとより自国及び同盟的な関係にある国々の安全と平和のために、地球的規模で武力を行使することができるようになることは、憲法9条や「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という憲法前文の理念に全く反するものと言わざるを得ません。
   これら安全保障関連の法整備は、地方自治体選挙への影響が考慮され、今国会(第189国会)の5月以降に提出されるとされています。加えて、閣議決定を反映させた日米ガイドラインの改定も4月末には行われ、すでに昨年10月のガイドライン中間報告で示されたようにシームレスで地理的概念なく対米協力をすすめていくこととなり、対米支援の拡大から日米物品役務相互提供協定の改定なども目論まれます。
   平和フォーラムは、「戦争をさせない1000人委員会」の諸行動に全面協力し、また立憲フォーラムに結集する国会議員と連携して、「戦争をさせない全国署名」の展開や、数次にわたる院内集会や国会包囲行動にとりくみ、7月1日の閣議決定の前後には、連日にわたる首相官邸前行動で抗議の声を上げ続けてきました。2014年9月4日には、「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動」で幅広い市民との連帯で集会を行い、その後も院内集会やピースコンサートなどに協力し、第189回通常国会開会日の2015年1月26日には「安倍政権の暴走に反対する国会前行動」にとりくんできました。
   これまでの行動の積み重ねを糧として、また立憲フォーラムの国会議員との連携を強化しながら、総力を挙げて運動にとりくむとともに、今後示されていく安全保障関連の法整備について国会での論戦を厳しく監視していく必要があります。

(2)   拡大する防衛費、拡張する自衛隊

   2015年度の防衛費予算案が、安倍政権下で3年連続増の4兆9801億円となり、補正予算を含めると5兆円を超える過去最高の規模となりました。2013年12月に閣議決定された新「防衛計画の大綱」で、統合機動防衛力の構築がめざされ、対中国を意識した東シナ海での軍事行動において、自衛隊を「統合的に運用しシームレスに、状況に臨機応変に対応して機動的に行う」としています。この方針に対応するように、日本版海兵隊である水陸機動団の新編に関わる予算で、オスプレイ5機の取得、水陸両用車(AAV7)30両の取得し、常時監視体制の整備で与那国島への沿岸監視部隊の新編、新早期警戒機(E2D)の取得、ステルス戦闘機のF35Aを6機取得することになっています。そのほかイージス艦2隻の建造と調達が進められ、質と量ともに軍事力の強化を進める予算確保であることが見て取れます。加えてオスプレイの発着も可能な「ヘリ空母」(ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)・いずも型)も3月末に竣工するなど、専守防衛からの逸脱ともいえる対敵地攻撃能力の向上を進めています。
   また、日米両軍の共同訓練が頻繁に行われていますが、昨年の1月から2月にかけて陸上自衛隊富士学校の部隊訓練評価隊約180人が、米カリフォルニア州モハーベ砂漠にある米陸軍戦闘訓練センター(NTC)で、約1ヵ月間、米陸軍の部隊と共同訓練していたことが発覚しました。集団的自衛権の行使容認をみこし、地球の裏側でも米国と共同で戦争を行う新ガイドライン協定下の自衛隊を想定する訓練であることは明らかです。
   安倍政権は、武器輸出三原則を改め防衛装備移転三原則を閣議決定し、オーストラリアへの潜水艦のエンジン技術の提供をはじめ、武器や技術の輸出を拡大させようとしています。さらに武器を購入した開発途上国に融資を行う援助制度、政府が武器を買い上げて贈与する無償援助制度の検討を始めたほか、武器の輸出や共同開発を一元的に管理し、防衛産業の窓口ともなる「防衛装備庁」の設置を含む防衛省設置法改正案の閣議決定も3月6日に行っています。さらに民生分野に限って途上国援助を続けてきた政府開発援助(ODA)についても、安倍政権は2月10日に新しいODA大綱(「開発協力大綱」と名称変更)を閣議決定し、他国軍への支援の道を開きました。非軍事分野に限定しているとしていますが、判断基準はあいまいです。また、これまで防衛大臣が自衛隊に対して指示・監督、あるいは自衛隊の計画に対する大臣の承認などで、文官(制服組)が関与する仕組み(=文官統制)が確立されていました。これは制服組の暴走を食い止めるシビリアンコントロール(文民統制)の重要な仕組みの一つとなっていますが、防衛省設置法改正案ではこれを廃止するとしています。
   安倍政権のもとでとどまるところを知らない軍事分野での国際協力は、防衛産業を後押しし、「死の商人」となることであり、混迷する世界で火に油を注ぐ結果となるだけです。かつての侵略戦争の反省もなく、軍事分野での歯止めを次々と撤廃しようとすることは断じて許すわけにはいきません。
   このところ自衛隊の広報活動が活発化し、迷彩服・武器携帯での市中行軍すら行われています。学校現場では中学校の職場体験で自衛隊での研修も行われ、海上自衛官が制服姿で保育園児と交流することまで行われています。攻撃型の装備の充実を図り、砂漠での日米共同訓練など変質する自衛隊の広報戦略には注意が必要です。

(3)   辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設等沖縄に関するとりくみ

   辺野古新基地建設は、米軍海兵隊の普天間基地移設に向けた代替基地という性格だけではなく、船舶が接岸する護岸や弾薬搭載エリアなどで軍港並みの機能を有しています。米海軍佐世保基地所属の強襲揚陸艦ボノムリシャールが接岸可能な272メートルもの護岸や水陸両用訓練に向けた「斜路」の整備がなされ、オスプレイやエアクッション型揚陸艇(LCAC)が搭載可能なボノムリシャールの運用により、より統合的な訓練や軍事機能が強化されることとなります。
   沖縄県民は、この辺野古新基地建設にたいして明確に反対しており、昨年1月の名護市長選、11月の沖縄県知事選、12月の衆議院選と、はっきりとその民意を示しています。また、沖縄平和運動センターが事務局を担った数次にわたる県民大会では、毎回予想を上回る参加者が多数結集し、成功を収めています。
   安倍政権は、たびたび「沖縄県民によりそう」「ていねいに説明し、理解を求める」と発言していますが 、民意に一切耳を傾けず工事を強行しています。言行不一致も甚だしく、安倍政権の「民主主義の品格」が問われるものとなっています。そのうえ、2015年度の沖縄振興予算で2014年度に比べ161億円も減額したうえ、数次にわたって上京し面談を求める翁長知事の要請に一切応えていません。山口俊一沖縄北方担当相は「沖縄には当面課題がない」と面談を拒否した理由を述べ、中谷防衛大臣にいたっては「より対立が深くなるということでは、会っても意味がない」とあからさまな対話拒否の姿勢を示すなど、不誠実極まる対応に終始しています。新基地建設工事に反対する市民に対して、警察や海上保安官の警備活動は異常を極めています。工事海域で拘束した市民を外洋に曳航し放置し、抗議船を転覆させようとする行為などが日常的になっています。海上の安全確保を任務とする海上保安官にはあるまじき行為の背景には、人命をも顧みることなくことをすすめていこうとする権力の意志すら感じられます。加えて2月22日の抗議行動で2名がキャンプシュワブゲート前で米軍に拘束され、刑事特別法の疑いで警察に逮捕されました。これに対して平和フォーラムは、抗議声明(2月23日付)を発出し、沖縄県警並びに那覇地方検察庁への緊急打電行動にとりくみました。
   オール沖縄の県民総意に支えられて誕生した翁長雄志県知事は、普天間基地の辺野古基地建設阻止に向け、「粛々と」公約実現の動きを進めています。仲井眞前知事による公有水面埋め立て「承認」の過程で、瑕疵(かし)の有無について検証する第三者委員会を設置し、結論が出るまで工事を見合わせるように求めています。また、沖縄防衛局が立ち入り制限区域を示すフロート(浮具)の固定化のため、海底にコンクリート製のブロック(10トン~45トン)を投下し貴重なサンゴの一部が破壊されていることに対して、翁長県知事は2月16日、沖縄防衛局に対してブロックの設置の停止を指示しました。さらに3月23日には、6か月ぶりに再開したボーリング調査も含めた海上作業を3月30日までに停止することを指示し、指示に従わない場合は「岩礁破砕許可の取り消し」の可能性にも言及し、辺野古新基地建設阻止に向けた知事の権限を行使しました。しかし、沖縄防衛局は行政不服申請法に基づいて、審査請求と県知事の停止指示の執行停止申立を林芳正農林水産大臣に申し立て、林農相は3月30日に県知事指示の執行停止を決定しました。
   これまで政府は「適正に事業を進めている」として、知事が求めていた知事権限に基づいた指示(2月16日の指示)を無視して工事を着々と進め、中断していた海底ボーリング調査を再開するなど、新基地建設に向けた工事を強行しています。3月23日の指示を受けたのちも中谷防衛大臣は、従う意向はないと明言しています。政府の対応を見極めながら、沖縄県民の民意に寄り添い、「本土」での辺野古新基地建設を阻止するとりくみを、創意工夫を凝らしながら進めていかなければなりません。
   平和フォーラムは沖縄平和運動センターのとりくみに協力し、辺野古現地行動への参加をよびかけ、また抗議船「美ら海」の購入のためカンパを求める活動を行い、1000万円を超える金額を沖縄平和運動センターに寄贈しました。「本土」における連帯行動においても、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックやピースボートなどと共同し、沖縄県議会議員代表団の報告集会(2015年1月15日、連合会館)、「沖縄の民意を無視するな!辺野古に新基地はつくらせない国会包囲行動」(2015年1月25日、国会周辺・7000人)などの大衆行動をよびかけてきました。沖縄等米軍基地問題議員懇談会の申し入れ(2015年2月6日、防衛省、警察庁、海上保安庁宛)のほか、沖縄視察(2014年8月、2015年2月)、「辺野古新基地建設問題を考える院内集会~沖縄県民の民意を踏みにじるな~」(2015年3月17日・参議院議員会館講堂・290人)など議員懇談会のとりくみに協力してきました。今後も、沖縄での闘いと「本土」での闘いを結び、最大限の反基地闘争としてとりくみをすすめていきます。
   また、尖閣諸島問題を奇貨とした与那国島をはじめとした南西諸島での自衛隊基地の新設や増強については、いたずらに緊張を高めるものでしかないことから、これらの動きに反対していきます。
   東村高江でのヘリパッド建設についても、オスプレイの離発着可能な着陸帯であるところから、米軍基地機能の強化であり、安倍政権が主張する「沖縄の基地負担の軽減」とは全く矛盾するものです。閣議決定された高江住民の住居に隣接するヘリパッド(N-4地区)の米軍への供与を阻止し、運動の拠点であるテントの破壊や横断幕の遺棄行為を強く非難します。そして残る5つのヘリパッド基地建設に反対していきます。

(4)   オスプレイの配備、米軍の基地機能強化に反対するとりくみ

   沖縄に配備された米海兵隊のMV-22オスプレイ24機は、当初は沖縄県内および岩国基地での展開が主たる運用でしたが、昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定以降、北海道、茨城、高知、滋賀、和歌山、宮城、神奈川、東京、静岡、熊本、長崎などで日米合同防災訓練、合同軍事演習、飛行訓練などを目的とした飛行が相次いでいます。
   MV-22オスプレイは、回転翼機CH-46と比較して、航続距離、速度、積載重量で優れるために防災面での活用も有力視できると宣伝されています。一部自治体の首長の中には、この点を踏まえオスプレイの導入や受け入れに前向きな姿勢を示しているところもあります。自治体に対して、オスプレイの構造上の問題点や「安全性」などについて申入れ活動を進めていく必要があります。
   オスプレイの「安全性」を巡っては、その開発段階から事故が多発しており、2014年だけでも、嘉手納基地への緊急着陸の際にエンジンから白煙を出す事故(3月2日・沖縄嘉手納基地)、乗務員の転落事故死(5月19日・米国ノースカロライナ州)、部品落下事故(6月17日・沖縄普天間基地)、落雷事故による機体損傷(6月27日・沖縄普天間基地)、10月一時的に動力を失い、脱出した乗務員2名のうち1名死亡した事故(10月1日・北アラビア湾)などが相次いでいます。
   エンジン停止の際にローターが自動回転するオートローテンションの機能がないとの証言や落雷を避けるための放電装置の欠陥などの指摘もあります。さらに、和歌山や宮城での防災訓練で、オスプレイの離発着の際、着陸帯の芝生で火災が起きる事故がありましたが、オスプレイの運用のための「環境レビュー」には、ナセル(排気口)から排出される排熱は環境への影響をもたらさないレベル(火災を起こさない)とされており、米軍資料や防衛省の導入説明との矛盾があります。そのほか「環境レビュー」で示されているオスプレイの低空飛行訓練の実施がいまだ皆無であること、悪天候を理由とした訓練中止がたびたびあることから、オスプレイの機体構造は回転翼機に比べて特異な構造なものであり、そのために操縦がきわめて困難になっていると考えられます。
   その他米軍機に関しても、1月17日米海兵隊普天間基地所属のAH1攻撃ヘリが200kgあまりの部品を落下させる事故やF15戦闘機による同様の事故をはじめ、部品落下事故が相次いでいます。人々の命に係わる重大な問題であるにもかかわらず、米軍当局は飛行の中止はおろか、十分な調査すら行うことなく飛行を再開させています。米軍当局に対する抗議はもちろんのこと、こうした米軍の運用を許容している日本政府に対しての追及が必要です。
   米軍国防省は、国防予算の削減に対応し欧州での基地の統合削減計画を進めています。いっぽう在日米軍は、沖縄の海兵隊の一部グアム移転をすすめていくとしていますが、米国本土からの州兵空軍機の暫定配備や在日米軍基地及び自衛隊基地間で行われる訓練移転などが活発化し、日本国内での米軍の機能の強化に拍車がかかっています。ジャパンハンドラーであるジョセフ・ナイ元国防次官補は、2015年12月の朝日新聞のインタビューのなかで、対中国の軍事戦略上、沖縄に基地の70%が集中していることのリスクに焦点を当てています。このことは裏を返せば、戦略上リスクを分散させることの重要性を示しています。リスク分散で各地の米軍基地や自衛隊基地での運用を拡大していくことは、現在の沖縄で頻発している事故や事件などの問題が、「本土」全体にも拡大していくことになります。
   在日米軍についての取り扱いを決めている日米地位協定の解釈を改ざんしたり、密室で行われる日米合同委員会の問題は、沖縄で数々の問題を起こしてきました。同様にオスプレイによる飛行訓練の全国化は、これまでの基地提供の枠組みを大幅に変える問題となっています。
   日米地位協定の非民主性や非合理性は、これまでにも様ざま指摘されてきました。昨年来沖縄の米軍基地返還跡地から米軍の遺棄物が多数埋められているのが見つかり、発見されたドラム缶の中から枯葉剤として使用されたと推測できるダイオキシンが検出される問題では、現状の地位協定には環境保全にかかわる規定がないため、米軍当局に撤去や処理を求めることはできないという課題を抱えています。
   また、オスプレイ等米軍機の飛行に関しても、「日米地位協定の実施に伴う航空特例法」により航空法の除外規定がもうけられ、航空の安全を確保する項目の大半が除外され、米軍機の自由勝手な飛行が「保障」されています。基地周辺の騒音や飛行による騒音問題でも、日米合同委員会の合意事項が守られることはなく、基地外の私有地に墜落したとしても、墜落物の捜査・差し押さえの権限等は日本側にはありません。こうした実態を一つ一つ取り上げ、安全保障条約および地位協定の問題点を追及していくとりくみが必要です。
   昨年7月1日以降のオスプレイの飛来時には、各地の地域フォーラムが抗議集会や学習会に取り組んできました。そして平和フォーラムは、市民団体と協力して「オスプレイ作業委員会」を組織し、2014年7月31日に米軍機オスプレイの防災訓練への参加及び飛行訓練に関して、防衛省、内閣府、環境省と交渉してきました。「資料・オスプレイ問題の追及のために」を作成しWEB上に公開したほか、オスプレイが飛来した周辺自治体に配布してきました。また、「オスプレイ等米軍機米軍機飛行問題全国交流会」(2015年1月17日、連合会館)をよびかけ、同日の「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」の発足に協力し、外務省・防衛省との交渉(2015年3月11日)を行いました。
   今後、横須賀基地を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンが、2015年夏ごろには原子力空母ロナルド・レーガンに交代し、また米軍は交代に合わせて、隋伴艦を現行の10隻体制から12隻体制にしようとしています。さらに米海軍は、空母艦載輸送機C2グレイハウンドの後継に、オスプレイの導入方針を示しており、横須賀基地の機能強化が進められようとしています。「海上に浮かぶ原子炉」である原子力空母とオスプレイの安全にかかわる問題や防災対策について交渉をふくめた運動の強化が求められます。

《2015年度運動方針》

  1. 昨年7月1日の閣議決定の撤回を求め、安全保障関連法制の改定および制定の問題を明らかにさせていくとりくみをすすめていきます。そのために「戦争させない1000人委員会」に協力していきます。
  2. 専守防衛から逸脱する装備、技術取得に反対し、防衛予算の増額に歯止めをかけるとりくみをすすめていきます。またオスプレイ5機の自衛隊導入に抗議し、佐賀空港等の拠点化阻止のとりくみをすすめます。
  3. 防衛装備移転三原則に基づく武器輸出や技術移転に反対し、武器輸出を促進するための政府援助等をやめさせるとりくみをすすめていきます。
  4. 専守防衛から逸脱した自衛隊の装備に監視の目を光らせ、自衛隊の国防軍化に反対していきます。
  5. 辺野古新基地建設について、他の市民団体や沖縄米軍基地等議員懇談会と連携をとりつつ、新基地建設を阻止するべく集会の開催や学習会の行うなどのとりくみを進めます。また、東村高江でのヘリパット建設阻止、普天間基地の即時閉鎖・返還を求めて、とりくみを進めていきます。また沖縄平和運動センターの要請に応え、支援を強化し、「沖縄5・15平和行進」に参加します。
  6. 在日米軍海兵隊のMV- 22オスプレイの配備撤回、全国展開しようとしている飛行訓練の阻止にとりくみます。MV- 22オスプレイの運用に関わる日米合意違反を追及します。またCV-22空軍仕様のオスプレイの嘉手納基地配備、東京横田基地配備阻止をとりくみます。
  7. 安保・地位協定の問題を追及し、在日米軍は「安保条約によってどこでも訓練が可能」とする政府見解を質します。これらの問題を追及していくため、市民団体や沖縄米軍基地等議員懇談会と連携をとりつつ政府交渉をすすめていきます。
  8. オスプレイの飛行および米軍機の飛行にかかわる地域の運動をすすめていきます。飛行および訓練ルート下の自治体が対政府要請、意見書採択等を行えるよう、各ブロック、各都道府県組織と連携して対策をすすめます。
  9. 米軍の訓練移転にともなう、在日米軍基地および自衛隊基地での日米共同訓練に反対していきます。また、米軍艦船による民間港湾施設利用や米軍基地の機能強化に反対し、米海軍横須賀基地での神奈川平和運動センターのとりくみなど地域運動組織を中心にしたたたかいに協力し、中止・撤回を求めるとりくみをすすめていきます。
  10. 自衛隊の市中パレードや市街地での訓練など、自衛隊の市民社会への浸透に反対します。そのために各地の運動組織が行うとりくみに協力します。
  11. 各地の爆音訴訟に協力するとともに、米軍犯罪の被害者によってすすめられている、被害者補償の制度化に協力します。
  12. 全国基地問題ネットワークや、沖縄基地問題にとりくむ市民団体、またアジア太平洋地域の反基地運動団体との連携と協力をすすめるとともに、立憲フォーラム、沖縄等米軍基地問題議員懇談会会員の国会議員との連携を強化していきます。

4.   東アジアの連帯と非核・平和に向けたとりくみ

   安倍首相の政治姿勢は、一貫して日本の戦争責任を認めず、東京裁判を否定するものです。侵略戦争と植民地支配への反省とお詫びを明確にした1995年の村山談話に関しても、反対の先鋒を担いました。愛国心を強調した教育基本法の改悪や、歴史を歪曲する教科書採択、従軍慰安婦の強制性を否定する新聞意見広告など、国家主義・歴史修正主義と言える行為を繰り返してきました。
   2014年2月20日の衆議院予算委員会の「河野談話をまとめる時点で日韓のすりあわせがあったかもしれない」との、石原信雄元内閣官房副長官の発言をめぐって、河野談話を検証する委員会が設けられました。委員会は準備会合を含む都合5回の会合をもって「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯 ~河野談話作成からアジア女性基金まで~」を、6月20日に発表し、「閲覧した文書等に基づく限り、その内容が妥当なものである」との判断を示しました。このような事態に対して、韓国チョ・テヨル第2外務次官は、「河野談話を検証すること自体、同談話の形骸化を意図したものであり、韓日国交正常化以降、韓日関係の根幹となってきた河野談話、村山談話という2大談話の一方を日本政府は有名無実化しようとしている」として強く反発しました。米国サキ報道官は「村山元首相と河野(洋平)元官房長官が示した謝罪は、近隣諸国との関係改善をめざした日本にとって重要な一つのチャプター(第一章)だというのがわれわれの見解」と発言しています。この間、「従軍慰安婦」問題は人権侵害であり許されないものとの見解が世界の常識となっています。
   日本政府は、歴史を歪曲する姿勢を改め、韓国の元従軍慰安婦の生存者の皆さんなど多くの戦争被害者への、政府の真摯な謝罪と個人に対する戦後補償を実施することで、新たな日韓、日中関係をつくらなくてはなりません。
   朝日新聞の従軍慰安婦にかかわる吉田清治証言の誤報問題に関して、「朝日新聞は日本を貶め日本人の誇りを損ねた」との主張に象徴される、きわめて意図的と思われるバッシングが展開されています。誤報とその後の対応については問題があるものの、従軍慰安婦問題そのものが虚偽であり日本を貶めるものとするような感情的反応が広がることはきわめて問題であり、朝日新聞への批判の意図がそこにあるとするならば、批判するマスメディアなども追及されねばなりません。私たち日本社会が向き合わなくてはならないのは、従軍慰安婦が存在したこと、そのことによって人間の尊厳を著しく侵害されたことであり、戦争がそのことを引き起こした事実なのです。日本が、戦後70年を経過するにあたってこの問題を解決できていない事実こそ、私たちは真剣に考えるべきです。
   県立「群馬の森」(高崎市岩鼻町)にある「記憶 反省 そして友好」と書かれた労務動員による朝鮮人犠牲者の慰霊碑が、右翼団体によって撤去を求める攻撃にさらされて来ました。右翼団体が提出した碑の撤去を求める請願書を、群馬県議会は採択し、これを受けて群馬県は追悼碑設置期間更新申請を不許可として碑の撤去を求めています。平和フォーラムは、群馬県平和運動センターの要請を受けて、慰霊碑の存続を求める署名活動にとりくみました。2014年11月13日には、市民団体、平和運動センターなどが不許可処分の撤回と設置期間の延長を求めて、前橋地裁に提訴しています。安倍首相の政治姿勢の影響を受けて、戦争責任や過去の侵略戦争・植民地支配への反省を求める動きへの攻撃が強まっています。一部の勢力の攻撃に萎縮する行政の姿勢は問題です。
   2012年5月に、韓国最高裁が「日韓請求権協定では個人請求権は消滅していない」とする判断を示して以来、日本企業を相手とした戦後補償問題に絡む裁判で賠償を命じる判決が4件も出されています。日本政府は、「韓国側の個人の請求権問題は解決済み」としていますが、韓国国内では全面的に否定されています。2014年4月には、中国山東省で元労働者や遺族ら約700人が、三菱商事、三菱マテリアル2社を相手取り提訴し、受理されるという状況が発生しています。これまで中国政府は日本の戦後補償をめぐる訴訟を受理してきませんでしたが、日中関係の悪化に伴いきびしい状況が生まれ、企業活動にも支障をきたす事態が想定されています。
   歴史を歪曲する姿勢を改め、侵略戦争と植民地支配の加害への補償を真摯に韓国の元従軍慰安婦の生存者の皆さんなど多くの戦争被害者への、政府の真摯な謝罪と個人に対する戦後補償を実施することで、新たな日韓、日中関係をつくらなくてはなりません。
   2014年7月1日からの日朝局長級会合において、「拉致被害者」「行方不明者」「日本人遺骨問題」「残留日本人・日本人配偶者」の4分科会に分かれて調査を実施すると北朝鮮側からの提起がありましたが、その後は調査の進展が見られません。10月には、外務省の伊原純一アジア太平洋局長が訪朝し協議を行いました。北朝鮮側は、調査には1年ほどかかるとしており、安倍首相は、「対話と圧力、行動対行動の原則の下、拉致問題の解決に今後とも全力を尽くしていく」との談話を発表しています。
   米国の主導の下で、2014年11月には、国連総会で「北朝鮮人権決議」が、賛成111、反対19、棄権55で採択され、12月には安保理史上初めて北朝鮮の人権問題が議案として上げられました。北朝鮮は、この問題を重く捉えるべきと考えますが、しかし6ヵ国協議や朝米2ヵ国協議に消極的姿勢をとり続ける米国の姿勢も問題です。北朝鮮の金正恩第一書記は、年頭にあたって「われわれは、南朝鮮(韓国)当局が本当に対話を通じて北南関係を改善しようとする立場であれば、中断された高位級接触も再開でき、部門別会談も可能と思う」と、南北会談の再開を示唆する発言を行いました。また、10日付けの朝鮮中央通信は北朝鮮政府の発表として「米韓合同軍事演習をやめれば核実験は中止する」と報道しています。北朝鮮の意図が何処にあるにせよ、米国はこのような発信に応じ対話への準備をすすめるべきです。
    北朝鮮が孤立していくことは、東アジアの平和にとってきわめて問題です。平和フォーラムは、日朝国交正常化全国連絡会とともに「日朝ピョンヤン宣言」に基づき日朝国交正常化へ向けて対話を基本にしてすすめるべきと主張してきました。再開された日朝間の対話を発展させ、日朝交渉から六か国協議の再開に向けてとりくんでいくべきです。
   日朝国交正常化全国連絡会は、学習会(2014年7月18日、連合会館)を開催し、動きの出た日朝関係の検証と今後のとりくみに関する検討を行うとともに、ピョンヤン宣言から12周年を記念し、「日朝国交正常化連絡会2014年総会・記念講演会」(9月9日、教育会館)を開催しました。「金正恩政権の3年と日朝交渉」と題し共同通信客員論説委員である平井久志さんが講演し、再開された日朝の対話を発展させ、新しい友好と協調の日朝国交正常化への運動の前進が重要であると確認しました。
   「日韓つながり直しキャンペーン」の実行委員会(平和フォーラムも参加)が主催し「日韓市民がいっしょに開く『歴史NGO大会in東京』1965年日韓協定体制の克服と東アジアの平和」と題するシンポジウム(2014年6月21~22日、韓国YMCA)が開催されました。日本と韓国という地域間で、市民レベルでの交流と真摯な議論を基本に、お互いに不幸な歴史を克服していこうとするとりくみが展開されています。私たちは、日本社会が、アジア蔑視の考え方を払拭し歴史認識を共有してこそ、新しいアジア諸国との連帯が生まれるものと考えます。
   安倍首相は、2014年12月の衆議院総選挙後、戦後70年に新しい首相談話を発表するとし、そのための有識者会議を立ち上げました。これまで示されてきた歴代首相の歴史認識を全体として踏襲しながらも、未来志向の談話にしたいと発言しています。このような発言からは、真摯なお詫びの言葉や「国策を誤り」などの文言が削除され、現状の東アジア諸国との対立をさらに煽るものとなる可能性があります。
   戦後70年の節目に向けて、平和フォーラムは「戦後70年-新しい東アジアへの一歩へ!市民連帯(東アジア市民連帯)」を立ち上げ、平和・人権団体が結集してのスタート集会(2014年8月27日、連合会館)を行いました。東アジア市民連帯は以下の5項目の基本認識で一致し、予想される「安倍首相談話」への対抗的とりくみをすすめていくこととしています。

  1. 戦時の加害責任に対しての日本政府の真摯な謝罪と戦後補償問題の抜本的解決
  2. 新しい民間レベルでの相互理解と歴史認識の共有化
  3. 米国主導の安全保障からの脱却とアジア世界における共通の安全保障の確立
  4. 日朝平壌宣言に基づき、日朝国交正常化への努力
  5. 南北共同宣言に基づく朝鮮半島の自主的平和統一の促進

   戦後70年市民連帯は、これまでに学習会として、第1回「東アジアの平和と歴史認識」(10月21日、高島伸欣琉球大学名誉教授)、第2回「ヘイトスピーチと闘うために」(12月19日、前田朗東京造形大学教授)、第3回「戦後70年の東アジア外交」(2月10日、浅井基文元広島平和研究所所長)に加えて、第4回目は「ジョン・ラーベ~南京のシンドラー~(ドイツ映画)」の上映会(4月4日)を開催してきました。今後、安倍首相談話の内容への申し入れ、国際シンポジウム、東アジア市民宣言などのとりくみをすすめます。また、すべての運動団体を結集して、安倍談話へのカウンターアクションを8月14日に開催します。

《2015年度運動方針》

  1. 中国・韓国・朝鮮など東アジア近隣諸国との平和と友好に向けて、対話と協調のとりくみをつづけます。
  2. 戦後70年の節目に、友好と協調を基本にした東アジア諸国との関係の再構築をめざし、「戦後70年、新しい東アジアの一歩へ!市民連帯」のとりくみを基本に、東アジア市民宣言の発出などにとりくみます。そのことを通じて、安倍首相談話が、これまでの河野談話や村山首相談話、そして菅首相談話などの考えを踏襲し、侵略と植民地支配の加害の責任否定と歪曲を許さず、新しい東アジアの関係構築に向かうようとりくみます。
  3. 二度と戦争による犠牲者を出さない非戦の誓いを新たにするとりくみをおこない、首相や閣僚などの靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、政府に国立の非宗教的戦争被害者(関係諸国すべてを含む)追悼施設の建設を要求し、靖国問題の決着を求めます。
  4. 2002年日朝平壌宣言の趣旨に沿い、日朝国交正常化に向けた交渉再開・対話を求める日朝国交正常化連絡会を中軸としたとりくみをすすめます。そのため、連絡会への全国各地の運動組織の参加を求め、連携を強めるとともに、国交正常化に向けた世論を喚起するため、継続的に全国各地での講演会・学習会・全国行動をおこないます。東京では月1回程度の連絡会の定期的学習会や集会・行動をひきつづき行うほか、必要に応じて随時集会をおこないます。
  5. 日朝国交正常化に向けて政府・外務省、国会議員、各政党に対する働きかけをおこないます。
  6. 日朝国交促進国民協会、原水禁など在朝被爆者支援連絡会をはじめ、在日の人権確立や、北朝鮮の人道支援のとりくみ、韓国の平和・人道支援運動、朝鮮学校支援の市民運動との連携・交流・協力をすすめます。日本人遺骨問題での解決に向けたとりくみに協力します。在日朝鮮人の生活と権利を脅かす制裁解除のとりくみ、高校無償化からの朝鮮学校排除などの差別を許さないとりくみを行います。

5.   民主教育をすすめるとりくみ

   「連合国占領体制下でとられた日本に対する断罪と自虐史観を直し、公正な事実に基づいた歴史の流れを解明し、日本および日本人の名誉と自負心を回復しなければならない」。これは、戦後50年を迎えた1995年、 村山談話発表に猛烈に反対して結成された「終戦50周年国会議員連盟」の結成趣旨であり、当時事務局次長を務めた安倍晋三首相の政治的スタンスです。その後、彼は一貫して、つくる会系教科書の採択促進に協力し、歴史教科書からの従軍「慰安婦」や「南京大虐殺」の記述修正やアジア・太平洋戦争の侵略性の否定など、侵略戦争と植民地支配の反省に立って新しい平和国家を創造しようとする方向性を排除してきました。現在行われている安倍首相の教育改革の基本スタンスは、そこにあります。
   この間の「教育再生実行会議」の議論や文科省の施策は、そのような狭隘な国家主義的方向に沿ったものです。日本史の必修化は戦前の「国史」を、道徳の教科化は「修身」を、領土問題など検定制度への介入は「国定教科書」の復活を想像させるものです。
   下村博文文科大臣は、2014年4月25日、「教育勅語は現代でも十分通用する」と国会答弁で発言しました。教育勅語は、軍人勅諭とともに教育基本法の成立した1946年の翌年、衆議院で失効、参議院で排除の決議がなされています。それは、日本国憲法の民主教育の理念と照らして存続すべきでないこと、また、戦争遂行に果たした「教育勅語」の歴史的役割などに対する総括であったのです。そのことを基本に、戦後の民主教育は「主権者の育成」という役割を果たすべくとりくまれました。戦後の日本の発展は、そこに依拠してきたものです。文科大臣という公の場に立ち、憲法遵守を求められる者が、教育勅語をどのような言い方であれ肯定する発言を行うことは許されないものです。しかし、「個を犠牲にして全体に奉仕する」ことを美とするヒロイズム的教育観は、多くの場所で広がっています。自衛隊への体験入隊に象徴されるこのようなあり方をきびしく監視していく必要があります。
   沖縄県竹富町の教育委員会が、採択地区協議会の採択に反して育鵬社版公民教科書を使用しなかった問題で、文科省は是正勧告を出すなど竹富町教育委員会を徹底して攻撃してきました。竹富町教育委員会は、「市郡単位であった教科書採択地区を市町村単位とする」とした文科省による「教科書無償措置法」の改定を踏まえ、採択地区協議会から独立し独自で教科書採択を行うこととしました。沖縄県教育委員会は、竹富町の採択地区協議会からの独立を追認しています。法的に問題なく行われている竹富町の採択に対して、「無償措置法の趣旨を十分踏まえたものとは言い難く、遺憾だ」などとして圧力をかけ続ける文科省の姿勢は、許されるものではありません。
   このような、安倍政権の政治姿勢に迎合するように、国旗・国歌問題を記載する実教出版の「高校日本史B」の採択へ、横浜市、東京都、神奈川県、川崎市などの教育委員会から圧力がかかり変更を余儀なくされています。学校図書館などでは「アンネの日記」や「はだしのゲン」などの閲覧禁止などの措置が、一部勢力の圧力に中で行われています。また、数研出版が高校公民科教科書3点の記述から「従軍慰安婦」と「強制連行」の言葉を削除する訂正申請が提出され、文部科学省が2014年12月11日付けで承認したことが報道されました。これらは、近隣諸国条項にも反するもので、歴史修正とも捉えられ近隣諸国との信頼関係にも影響を与えるものです。文科省が改訂した教科書検定基準にある「政府見解の尊重」を先取りしたようなもので、このような政府による統制は極めて問題です。グローバル社会に生きる子どもたちが、東アジア諸国との間に横たわる歴史問題に無関心であってはなりません。そのことは、子どもたちの将来にとって百害あって一理無いものと言えます。
   昨年に続き、韓国の運動団体である「アジアの平和と歴史教育連帯」も参加し、3回目となる市民レベルでの教科書問題の意見交換会(2014年6月14~15日、大阪国労会館)が開催されました。歴史認識の問題にどう向き合うか、次期教科書採択でのとりくみをどうするか、積極的な議論を展開しました。
   「2014年日本教科書問題関連日韓市民円卓会議」(2014年9月13日~16日、韓国)も開催され、韓国の運動団体である「アジアの平和と歴史教育連帯」を中心に、日本からも平和フォーラム、教科書ネット、各県の市民運動団体が参加して、具体的とりくみが積極的に議論されました。その議論を受けて、「2015年日本教科書問題関連日韓市民円卓会議」(2015年2月28日~3月1日、上智大学)が開催され、①歪曲された歴史教科書に抗議する国際署名、②共同アピール、③文科省要請行動、④教科書会社への要請行動、⑤国会議員との意見交流、⑥日韓教科書シンポジウムなどにとりくみ、2015年度の教科書採択での育鵬社版や自由社版の「つくる会系教科書」の採択阻止にむけてとりくみを議論しました。
   さらに、「憲法と『建国記念の日』を考える2.11集会-安倍政権の暴走とナショナリズム-」(2015年2月11日、教育会館)を開催し、若者のナショナリズムを主題に中西新太郎横浜市大名誉教授の講演と教科書問題と採択問題での市民団体の報告を受け、日本の若者の状況と歴史教科書問題を明らかにしてきました。
   今年度は、中学校用教科書の採択年度となっており、今後、日本国内でも、各県レベルでの「日本会議」「日本会議地方議員連盟」などの動きや「日本維新の会」の地方自治体での動きなどに注視するとともに、「新しい教科書をつくる会」などの議会請願の動きに対する対抗的とりくみを作らなければなりません。

《2015年度運動方針》

  1. 「教育再生実行会議」の議論を注視しつつ、同会議の議論に対峙する教育議論の場づくりに平和フォーラムとして市民との連帯の中でとりくみます。憲法集会などの場において「歴史認識」の問題にとりくみます。
  2. アジア諸国の市民と連帯して、共通の歴史観からの新しい友好関係の構築にとりくみます。
  3. 道徳の教科化、教科書検定基準の改定、全国学力調査の公表、教育委員会制度改革など、一連の「教育再生」と称する施策に対しては反対の立場でとりくみます。
  4. 「つくる会系」や「在特会」などの陳情や圧力、日本会議系の地方議会議員の動向を踏まえつつ、2016年度中学校用教科書採択に対し、つくる会系組織からの攻撃に対抗し、地方議会や教育委員へのとりくみ、教科書展示会での意見反映、パンフレットやガイドブックの作成・活用など地域社会の連帯の中からとりくみます。
  5. 日教組と連携し、教科書検定制度のさらなる弾力化・透明化へ向けた制度改革にとりくみます。政府・文科省等への要請にとりくみます。
  6. 採択地区の小規模化、地域や学校現場の声を反映した学校単位での教科書採択を求めてとりくみます。特に採択地区の一本化がすすむ政令指定都市への働きかけを強化します。
  7. 各地域の採択実態の検証に継続してとりくみつつ、地域の運動との連携をめざします。
  8. 東京都、神奈川県、横浜市、大阪市、埼玉県などの高校教科書採択問題にたいして、学校採択尊重の視点からとりくみます。
  9. 育鵬社・自由社を採択した地区においては、抗議行動にとりくみます。地区における市民と連帯したとりくみを模索します。プレゼンテーション用CDや問題点を指摘した学習用PDFなどを利用し、地域での学習会の開催を追求します。

6.   多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ

   2013年の社会権規約委員会・拷問禁止委員会に引き続き、2014年も自由権規約委員会・人種差別撤廃委員会という2つの国連機関から日本政府に対して勧告が出されました。両委員会から合わせて49項目にもわたる勧告が出されたように、日本社会には多くの差別・人権侵害が存在します。それにも関わらず、日本政府は勧告に従う姿勢を全く見せていません。それどころか2013年の勧告に対しては「法的拘束力をもつものではなく」「従うことを義務付けているものではないと理解している」という答弁を閣議決定しており、日本政府が自ら勧告の実現に動く可能性は皆無といってよいでしょう。
   そもそも日本は、在日外国人や障害者といったマイノリティのみならず、例え「日本人」であっても人間らしい生活を送ることが困難なほど社会保障の脆弱な社会です。そのことは、児童の6分の1が貧困に苦しんでいるということからも明らかです。安倍政権はさらなる労働法改悪と社会保障の削減をもくろんでおり、このままでは社会的弱者はさらなる差別・人権侵害に苦しめられることになります。
   日本社会に存在する人権課題を解決するためには、個別の課題についてとりくむことはもちろんですが、運動の横断的なつながりを強化・拡大していくことも必要です。多様な運動が連携し合い、差別・人権侵害を放置している社会・政府とたたかっていくことが求められています。

(1)   国際的水準の人権確立に向けたとりくみ

   昨年も国連の人権規約委員会から19項目、人種差別撤廃委員会から30項目に渡る勧告が日本政府に対して出されました。国連の勧告は、ヘイトスピーチや日本軍「慰安婦」といった植民地支配・戦後責任に関するものから、代用監獄や死刑制度などマジョリティたる「日本人」に関連するものまで、ありとあらゆる人権課題について是正を求めています。それにも関らず日本政府は真摯に向き合おうとせず、国際条約に加入しながらも勧告は無視するという条約違反ともとれるような開き直りの態度を取っているのです。
   また日本がいまだに批准していない条約・条項が多いことがそもそも問題です。例えばヘイトスピーチを国内法で規制することを定めた人種差別撤廃条約4条a・b項を日本はいまだに批准していません。しかもその理由に関しては「深刻な状態にあるとは認識していない」などと答弁するなど、国際的な批判に対してもあまりに不誠実な対応に終始しています。
   わたしたちはこのような日本政府の姿勢を批判し、国連・人権勧告の実現を要求しながら「差別・人権侵害は許さない」という国内世論の喚起に努めなければなりません。昨年は平和フォーラムも参加する「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会が2度にわたって集会・デモを開催し(1月25日・代々木公園、9月28日・芝公園)、学習会も積み重ねてきました。今年も様々な個別課題に取り組む運動団体が連携し「国連・人権勧告の実現を!」を合言葉に運動を展開していきます。

(2)   朝鮮学校無償化問題

   安倍政権は2013年2月20日に「高校授業料無償化」制度の適用について定めた規定を変え、朝鮮学校のみを対象から除外しました。またこのような政府の姿勢に追随するかのように、各自治体も朝鮮学校に対する補助金の打ち切りを行っています。朝鮮学校のみを標的とした一連の措置は明らかな民族差別であり、絶対に許すことはできません。
   このような朝鮮学校差別に対抗するため、当事者と支援者による運動が全国各地で行われています。現時点において全国5つの朝鮮高校(大阪、愛知、広島、福岡、東京)が「高校無償化」の適用を求めて国を相手に裁判を行っています。実に200名に上る卒業生・学生が原告となり、各地の市民運動と一緒に裁判闘争に取り組んでいます。また大阪では補助金支給停止をめぐる裁判も行われています。
   いま求められていることは、各地の運動の連携・交流を強化し、全国に波及させていくことです。昨年末には「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク 全国交流会」を開催し、各地で朝鮮学校支援に取り組む市民・団体が情報交換と交流を行いました(2014年12月20日、連合会館)。さらに「朝鮮高校生裁判支援全国統一行動」(2015年2月20~21日)を全国各地で行い、運動の全国的展開を実践しました。
   韓国の市民運動との連携も進んでいます。昨年6月に結成された「『ウリハッキョ』と子どもたちを守る市民の会」は文科省に対する要請行動(11月6日)を行い、あわせて朝鮮学校に対する差別是正を求める署名1万筆を提出するなど活発な運動を行っています。今後も各地の裁判を支援すると同時に、国内外において運動の輪を拡大させていきます。

(3)   在日外国人の人権

   2013年に流行語になるなど社会問題となったヘイトスピーチは、2014年にも多くの関心を集めました。特に国連からの2度にわたる勧告と「在特会」などの行為を人種差別と断じた「京都朝鮮学校襲撃事件」の判決は、ヘイトスピーチの問題性を社会に知らしめるのに大きな役割を果たしました。こうした流れを受け、法規制を求める意見書も各自治体議会において採決されるなど政府に対する圧力も強まっています。
   しかし政府・自民党は法規制に関しては「表現の自由」を建前に消極的です。また国連勧告に対しても「深刻な差別はないと認識している」などと答弁するなど、政府自らが法規制をかけることは考えられません。このような政府の姿勢に対する批判をさらに強めていくためのとりくみが必要です。
   そもそも在日朝鮮人などアジアに対する根強い差別の根底には、過去の植民地支配に対する謝罪と賠償がなされていないこと、またそのような歴史を多くの人々が知らないという問題があります。歴史性を踏まえた理解と問題解決をめざすとりくみを進めていきます。
   外国人労働者の人権問題も今後さらに重要性を増していくと思われます。政府が国内での労働力不足を口実に外国人労働者の受け入れを拡大させる方針を明らかにしたためです。特に人手不足を訴える建設業界においては、東京オリンピックまでの限定措置として技能実習修了後も追加で働けるよう限定措置が取られます。しかし「外国人技能実習制度」は技能実習という名目で外国人実習生に奴隷的な労働を強いるという構造的な問題をはらんでおり、実際に裁判に訴えるケースもあります。外国人労働者がしっかりと権利を保障されたうえで働くことができるよう共生・共存のための法制度を構築することこそが求められています。
   2012年から本格運用されている改定入管法に関しては、出国時の些細なミスで在留資格を失ってしまったり、あまりにも広範囲に拡大された退去強制事由によって実際に退去強制手続きをとられるなどのケースが見られています。そもそも外国人への監視・管理を強化する事こそが改定入管法の狙いであり、さらに政府は当事者たる外国人への周知を怠っています。この法律を放置したままでは、「不法滞在」の外国人が社会保障から排除されるというようなより重大な人権侵害が大量に発生してしまいます。多文化共生社会の実現のために、わたしたちは引き続き改定入管法の見直しを求めていきます。

(4)   法制度に関して

   2014年3月27日、静岡地裁は袴田厳さんの第二次再審請求について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止するという画期的な判断を下しました。
   狭山事件の第3次再審請求審においては検察側が弁護側に証拠リストを開示しました。これには昨年法制審議会が刑事司法制度改革の答申において証拠リスト開示制度を盛り込んだことが影響していると見られますが、「狭山事件の再審を求める市民集会」(5月23日、10月31日、ともに日比谷野外音楽堂)などの運動を行ってきた影響も少なくありません。ただし証拠リストは一部に限られているなどの問題は残ったままです。
   その一方で2015年3月13日には警察と検察による取り調べの録音・録画(可視化)の一部義務付けや司法取引の導入、そして通信傍受の対象拡大を柱とする刑事訴訟法などの改正法案が閣議決定されました。取り締まり可視化の対象となるのは全事件の2~3%に過ぎず、また「司法取引制度」には自分の刑を軽くするために事件とは無関係な第三者を「首謀者」として名指ししてしまうなどの問題点があります。これでは冤罪は少なくなるどころかより増加する危険性があります。また通信傍受の範囲も大幅に拡大され、捜査機関の権限はさらに強化されようとしています。これは捜査機関の権力を制限させることで冤罪事件が二度と起こらないようにしようとしてきたわたしたちの運動とは真っ向から対立するものであり、到底看過することはできません。わたしたちは取り調べの可視化を求める各運動団体との連携をより深め、反対の声を強めていかなければなりません。
   2013年6月に障害者差別解消法が成立したことを受け、全国の自治体でも障害者への差別を禁止する条例が広がっています。また、2016年度から施行される差別禁止の規定を盛り込んだ「改正障害者雇用促進法」の指針づくりも本格化しています。障害者差別をなくすための法律が実体を伴うものとなるよう、当事者団体とともに運動を広めていきます。
   民主党政権において閣議決定までされた人権救済機関の設置でしたが、国会では審議されないまま廃案となりました。しかしマイノリティに対する差別の激化や削減され続ける社会保障を考慮したとき、差別禁止・人権救済の制度整備の必要性はいっそう高まっています。わたしたちは引き続き被差別当事者によりそった内容を実現していくためにとりくみをすすめていきます。
   また安倍政権は、すべての子どもたちに学ぶ権利を保障するために制定された「高校授業料無償化」制度に所得制限を導入するという制度改悪を行いました。このように学ぶ権利を「施し」へとすり替えた政府の姿勢を批判しながら、憲法に規定された「法の下の平等」や教育基本法の「教育の機会均等」を具現化する無償化制度本来の趣旨を取り戻さなくてはなりません。

(5)   女性の権利確立

   「女性の輝く社会」の実現を掲げる安倍政権は、第2次内閣に5人の女性を入閣させ、さらには「女性活躍推進法案」を臨時国会に提出しました(衆院選のために廃案)。しかしその一方で、昨年は東京都議会での自民党議員による差別ヤジが社会問題となりました。その後も麻生太郎財務相が社会保障費を巡って「子どもを産まない方が問題だ」と発言するなど、自民党議員による差別発言が後を絶ちません。このような現状を考えたとき、安倍政権がどれほど女性の権利拡大に真剣であるのか疑わざるを得ません。
   一方で今年2月18日、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反として国に賠償を求めた訴訟の上告審において、最高裁は審理を大法廷に回付しました。また女性だけに離婚後6カ月間の再婚禁止期間を設けた民法の規定は違憲だと訴えた訴訟の上告審も大法廷に回付されました。このように性差別を固定化する法律が根底より揺らいでいます。また2013年12月に婚外子の相続差別規定が改正されたように、封建的な家族制度に対する見直しも進んでいます。
   わたしたちは安倍政権の空虚な宣伝に惑わされることなく、真の男女平等社会実現のために運動を展開させていかなければなりません。そのためにも第3次男女共同参画基本計画に盛り込まれた「選択的夫婦別姓の実現」や「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」、そして「クォータ制の導入」などの実効性を上げていくことが求められています。

《2015年度運動方針》

  1. 実効性ある人権救済法の制定と国際人権諸条約・選択議定書の批准に向けたとりくみ
    1. 国際人権諸条約の批准促進を求めます。とりわけ、個人通報制度にかかわる条約の選択議定書の早期実現を求めます。実効的な人権救済機関設置の実現に向けて、当事者を中心としたとりくみに参加・協力します。日本政府に国連の人権勧告を遵守するよう求めるキャンペーンをすすめます。
    2. 国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定、「差別禁止法」の制定に向けてとりくみます。「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動(人権共同行動)」や日弁連と協力して政府に対して実現を求めてとりくみます。
    3. 全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」を策定・実行を求めるとともに、「人権のまちづくり」や「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着した「社会的セーフティネット」などのとりくみを広げていきます。また、地域・職場でさまざまな差別問題など人権学習・教宣活動をおこないます。

       
  2. 地方参政権など在日定住外国人の権利確立のとりくみ
    1. 韓国の「在韓外国人処遇基本法」(2007年)などに学び、在日外国人の権利確立の制度実現に向けたとりくみをすすめます。
    2. 差別なき定住外国人参政権法案の制定に向けて、参政権ネット、民団と協力して、全国各地でとりくみをすすめます。
    3. 子どもの権利に立った外国人学校の整備など多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみをおこないます。「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」をはじめ、全国各地でのさまざまな動きに注視・連携しつつ、朝鮮学校支援のとりくみをすすめます。高校無償化の朝鮮学校への適用をめざしてとりくみます。
    4. 2012年より本格運用が開始された改定入管法の問題点を検証し、これを見直させるため外国人人権法連絡会や日弁連のとりくみに参加・協力します。
    5. 無権利状態におかれた外国人労働者などの救済に向けて外国人研修生権利ネットワークなどのとりくみや、生活と権利を守るための外国人労働者総行動「マーチ・イン・マーチ」のとりくみなどに協力します。

       
  3. 司法制度・地方主権などに関するとりくみ
    1. 裁判員制度は多くの問題点があるので、抜本的に見直させるとりくみをおこないます。
    2. 最高裁判所裁判官国民審査にかかわって、日常的な判決チェックをおこなうとともに、権利の行使として「×」を増大させるとりくみをすすめます。また、期日前投票などの改善を中央選管に求めます。
    3. えん罪をなくすとりくみに参加・協力するとともに、日弁連や「取調べの全面可視化を求める市民団体連絡会」などのとりくみに協力して実効性のある「取調べ可視化法」の実現をめざします。
    4. 障害者権利条約の完全実施を求める当事者団体のとりくみに協力します。
    5. 重大な人権侵害をもたらす恐れが指摘されている医療観察法の廃止を求めるとりくみに協力します。
    6. 「共謀罪」などの人権抑圧につながる法制度に反対するとともに、「特定秘密保護法」の廃案を求めます。
    7. 警察公安による微罪逮捕や自衛隊による取調べ事件や情報収集増大の動きを警戒し、不当弾圧、人権侵害を許さないとりくみをおこないます。
    8. 地方分権を促進し、地方自治体の自主財源の確保とともに、条例制定権の拡大、拘束力のある住民投票の導入などのとりくみをおこないます。
    9. 言論や表現の自由を暴力やテロで封じる動きを許さないとりくみを随時、おこないます。

       
  4. 男女共同参画社会の実現に向けたとりくみ
    1. 「男女共同参画第3次基本計画」に明記された「選択的夫婦別姓の実現」「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」「クォータ制の導入」などを実効化するため、I女性会議などがとりくむ「別姓訴訟」支援をはじめ、女性の人権を国際的な水準に引き上げる運動にともにとりくみます。
    2. 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めるI女性会議など「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)のとりくみをすすめます。
    3. 女性の重要性・ジェンダーの視点を強調した人権確立の国際社会の流れを活かしたとりくみをすすめます。
    4. 平和フォーラム自身の組織構成、諸会議をはじめ、かかわる運動全般で女性が参加できる条件・環境づくりをおこないます。

       
  5. 「過去の清算」と戦後補償の実現と「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
    1. アジア・太平洋の人びとの和解と共生をめざして、日本と日本人が戦争に対する反省・謝罪、補償に向けた姿勢を示し、二度と戦争による犠牲者を出さない非戦の誓いを新たにするとりくみをすすめます。不十分なものとはいえ、2010年8月10日の「菅首相談話」を活かし、別項の日朝国交正常化を含めた一連のとりくみをすすめます。
    2. ひきつづき首相・閣僚などの靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、政府に国立の非宗教的戦争被害者(関係諸国すべてを含む)追悼施設の建設を要求し、靖国問題の決着を求めていきます。このもとに8月15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑をはじめ各地で戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会をおこないます。衆参両院議長、首相・閣僚の千鳥ヶ淵墓苑での追悼・献花との連携をはかります。
    3. 「過去の歴史を直視するため、内閣に日本の侵略行為や植民地支配の歴史的事実を調査する機関を設置し、政府機関が保有する記録を全面開示する」「戦後処理に関する全情報を開示し、戦後処理の在り方を再検討し、残された戦後諸課題に立ち向かう」ことを政府に求めるとりくみをすすめ、戦後補償をとりくむ市民団体や、歴史の事実を明らかにする立法(国立国会図書館法改正、恒久平和調査局設置)を求める市民グループとの共同のとりくみをおこないます。
    4. 「菅首相談話」にも明記された遺骨問題や文化財返還問題で、「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」や「韓国・朝鮮文化財を考える連絡会議」と連携したとりくみをすすめます。「強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク」などがすすめる「朝鮮人強制労働被害者補償立法の実現を求める要請署名」に協力します。
    5. 在日朝鮮人の歴史的背景への理解をすすめ、その人権確立をめざすとりくみに協力します。
    6. 司法解決の道は狭められてきたものの、国際法や道義的責任に基づき企業・国に謝罪と補償を求め立法解決への道を開こうとする戦後補償のとりくみに支援・協力します。
    7. 米下院「慰安婦問題」決議をはじめ国際的に広がる日本の首相の公式謝罪表明要求を、首相が真摯に受け止め実行することを求めるとりくみをすすめます。
    8. 差別なき戦後補償を求めて東京大空襲訴訟・空襲被害者立法の支援のとりくみをおこないます。また、東京大空襲朝鮮人犠牲者追悼集会などに協力します。
    9. 1967年から戦前の「紀元節」を「建国記念の日」とした問題点を忘れず、2月11日に歴史認識にかかわる集会をおこないます。

       

7.   核兵器廃絶に向けたとりくみ

(1)   核廃絶に向けて

  1. 世界の核状況
       1月22日(米国時間)、今年70周年を迎える「ブレティン・オブ・アトミックサイエンティスト」が管理している終末時計の針は、福島原発事故後に5分前に動かされて以来3年ぶりに動きました。核軍縮が停滞している中、世界の終わりまであと3分というところまで進められたのです。ロシア、中東の深刻な国際状況の中、核廃絶へのとりくみはたいへん困難な局面を迎えています。ウィーンで開かれた核の非人道性に関する国際会議に米・英の核保有国も参加したり、マーシャル諸島が核保有9カ国を国際司法裁判所(ICJ)に提訴するなど、新しい動きも出てきていますが、1月20日に始まったジュネーブ軍縮会議(CD)でも、核軍縮への突破口は見いだせそうになく、核不拡散条約(NPT)再検討会議へむけても困難な状況は続きそうです。
       オバマ米大統領は、新戦略核兵器制限条約での削減数以上の核兵器削減を行うと表明していますが、米国務省が発表した保有核兵器数では、オバマ政権下の4年間でわずか309しか削減できていません。世界の核兵器総数は1万6千以上、退役して解体待ちのものをのぞいても1万以上も存在しています。米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名後も議会では20年間も批准出来ていません。この状況下で実現可能な措置としては、核兵器の警戒態勢解除があります。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を瞬時に発射できる態勢に維持していることで、管理費用が高いばかりでなく、実際に敵ミサイル誤認のケースも有り、核戦争につながる偶発事故が起きる可能性があります。
       オバマ米大統領の残る任期の中でも実現可能性が高い核政策は、条約国の同意が必要ない一方的にとれる措置で、戦略上も核攻撃への報復時間を長くするだけというリスクの低い、ICBMの警戒態勢解除です。核兵器の使用を、第一撃に対する報復に限定し、その役割を低減することは、先制不使用へ、さらには国際間の核の使用禁止へもつながる道すじです。日本からも同盟国として米国に警戒態勢解除を要請するべきです。この問題に関しては、米国UCS(憂慮する科学者同盟)のG.カラーキーさんと国会で核廃絶議連に働きかける等のとりくみを行ってきました。
       
  2. 日本のプルトニウム問題
       核兵器非保有国で唯一核燃料の再処理に固執する日本は、現在47トンもの分離済みプルトニウム、核弾頭5000発分以上にあたる核兵器物質を保有していることになります。さらに六ヶ所再処理工場が運転されれば、年間800トンの使用済み燃料を処理し、約8トンのプルトニウムを分離する能力、つまり核兵器約1000発分が、既存の5000発分に加えて毎年増加する事態になりかねません。被曝69周年の原水爆禁止世界大会国際会議でも、日本のプルトニウム政策と核拡散に焦点を絞り、日米韓の専門家のパネリストによる討論を行いました。
       日本のプルトニウムの国際的な核拡散問題としては、韓国への影響がまず挙げられます。韓国は日本と同じ再処理の「権利」を主張、米韓原子力協力協定の交渉でも折り合いがつかず、2年間の協定延期の状態にあります。その他の国もこれに倣えば、核兵器製造能力を持った国が増えていきます。最近も台湾が使用済み燃料の再処理を計画していることが報道されました。
       東北アジアの非核化へも影響を及ぼしています。91年の「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」に戻ることが、北朝鮮の非核化への第一歩と考えられますが、そこにうたわれた「南と北は核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない」ことに対して、日本と同じ再処理権利を認めよという韓国の主張が、南北非核化を困難にしてしまいます。
       さらに、核セキュリティサミットの主要課題が核兵器の材料「プルトニウムの最小化」であることでも明らかなように、核テロの危険性を考えれば、日本のこの膨大な余剰プルトニウムが国際的問題であることは明白です。昨年ハーグで開かれた第3回核セキュリティサミットで、東海村の高速炉臨界実験装置のプルトニウム約300キロを米国に返還することが公表されましたが、他の47トンのプルトニウムに関しては、日本政府は明確な方針を示せていません。見込みのついていないウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)利用で消費すると「計画」しているのみです。
       世界の核軍縮への障害も目に見えてきました。核兵器ゼロにむけて議論されている過程でも、民生用プルトニウムが問題になっています。世界中の核兵器の数が1000発という、核兵器削減の中間的目標を達成しようということになれば、兵器用プルトニウム量は全世界で数トンになります。そのとき、膨大な「民生用」プルトニウムが存在していたら、核保有国が兵器用プルトニウムを処分することの足かせになります。再処理を進めることが、核軍縮の不可逆的措置─実現すべき核削減を後戻りさせない措置への障害にもなってしまいます。
       日本政府は国際プルトニウム指針に基づき国際原子力機関(IAEA)にプルトニウム保有量を報告していますが、核兵器物質として査察の対象になる未照射のプルトニウム量を640kgも過小に申告していました。九州電力玄海3号機に装荷し使わないまま2013年3月に取り出したMOX燃料の分です。IAEAが核弾頭1つ分と見なす8kgで換算すれば、核兵器80個分もごまかしていたわけです。
       MOX燃料は、化学的に簡単にプルトニウムが抽出できる、核兵器に転用しやすいもので、核査察の対象ですが、日本政府は玄海原発に保有するプルトニウムを「使用済み」としてごまかしました。核拡散防止体制に対する重大な違反行為です。国際的にプルトニウムを扱う資格のないことを自ら明らかにする行為です。日本政府は、プルトニウム利用計画のごまかしを直ちに国際社会に明らかにし、核燃料サイクル計画を放棄するべきです。
       
  3. 核兵器の非人道性を強調するキャンペーンからNPT再検討会議へ
       2013年にオスロで開かれた核兵器の人道的影響に関する国際会議につづくメキシコでの国際会議、また、国連での核兵器の非人道性に関する共同声明など、従来の核軍縮のとりくみとは少し違う角度からの核廃絶をめざす国際的な動きが、赤十字・赤新月社などを先頭に生まれています。昨年12月ウィーンで開かれた3回目の国際会議には、核兵器保有国として初めて米英が参加、NPTの枠外の核保有国としてはインドとパキスタンもふくめ、過去最多の158ヵ国が参加しました。
       参加国のうち29ヵ国が核兵器禁止のための法的拘束力を持った枠組みの交渉を呼びかけましたが、核保有国は、最終的には核兵器のない世界へと向かうべきだが、当面は核兵器保有継続が国防・安全保障の観点から不可欠であるという従来の立場を変えていません。議長国のオーストリアは、「議長総括」と「オーストリアの誓約」という核兵器の禁止に向けて各国政府や市民社会と協力して行動していく姿勢を示した文書を発表し、NPT再検討会議へむけた各国への働きかけを続けています。
       日本は、国連の核兵器の非人道性に関する声明に署名した125ヵ国に入っています。これまで、同様の声明が3回出されてきましたが、核の傘に依存する政策と相容れないとして署名を拒否してきました。声明文に核軍縮に向けた「すべてのアプローチ」という文言が入ったことで、先制使用も含む核抑止依存のアプローチも認めているという、独特の解釈をして署名をしたものです。このような詭弁としか言えない論議を使う不誠実な態度は国際社会で認められるものではありません。このような、声明の精神をも踏みにじる政府の詭弁を明らかにし、核の非人道性に対する本来的意義に沿うような形に政策を転換させるとりくみを進めます。
       一方、国内世論におされて、政府が「いかなる状況下でも核を使用しない」ことを認める方向に動いた事も確かです。まずは、核の先制使用も認めてきた政策を変え、核保有国に対して先制不使用の宣言を求めるべきです。核兵器禁止条約の実現への第一歩では無いでしょうか。
       ウィーンの会議では、佐野利男軍縮大使が、核兵器による負傷者の救援活動が不可能だという意見に、「少し悲観的だ」と反論、救援能力を高める研究を提言し、本来取り返しのつかない核兵器の非人道性を否定するとも取れる発言をするなど、およそ核廃絶を求める政府の姿勢とは思われない外交が続いています。
       また、1950年代後半、日米が核を使用する図上演習を行っていたり、70年には米国の核兵器の日本への持ち込みについて、中曽根防衛庁長官(当時)が「留保」として可能性を残すよう米国に要望するなど、核に依存する日本の安全保障政策のあり方も明らかになっています。さらには、NPTの枠外で実質核保有国になったインドへの核輸出についても核拡散防止の明確な政策を出していません。核兵器の非人道性を訴えるのであれば、実質的な政策に反映させるべきです。
       連合、KAKKINとともに行っている核廃絶署名、核保有国の大使館への働きかけとともに、市民団体も広くかかわるネットワーク、「核兵器廃絶日本NGO連絡会」と連携してとりくみを進めて行きます。
       

(2)   原水禁結成50周年のとりくみ

   1965年2月1日、「あらゆる国の核実験禁止」を訴え、原水禁は結成されました。その後核兵器廃絶、被爆者援護・連帯の運動に反原発・脱原発運動が加わり、被爆者運動もヒロシマ・ナガサキの被爆者の運動から、あらゆる核開発から生まれるヒバクシャへの援護・連帯の運動へと、その輪をひろげていきました。2015年に被爆・戦後70周年とともに原水禁結成50周年を迎えました。多くの人々の苦闘の歴史の上に、いまあらためて私たちの主張の正しさが明らかになっています。結成50年の節目を迎える今年、原水禁の半世紀を振り返り、未来を展望するためのとりくみが求められています。

(3)   被爆70周年原水爆禁止世界大会および被災62周年ビキニデー集会のとりくみ

   被爆69周年原水爆禁止世界大会は、7月27日福島大会、8月4日~9日にかけて広島大会・長崎大会と開催しました。大会は、2015年にNPT再検討会議を控え、核兵器廃絶への機運と意識を高めました。さらに福島原発事故から3年半、いまだ12万人にも及ぶ被災者が苦しい避難生活を余儀なくされているにもかかわらず、安倍政権は原発推進政策を進め、川内原発や高浜原発の再稼働を強行しようとしており、あらためて脱原発への意志と確信を作り出しました。
   大会参加者は、福島大会1300人、広島大会3300人(開会総会)、長崎大会1800人(開会総会)、国際会議70 人、メッセージfromヒロシマ350人となりました。海外ゲストはアメリカ、ドイツ、韓国など4か国16人が参加。各分科会の参加者は、7~8割が初参加で、原水禁大会が労働組合や各地区の平和学習の第一歩の役割をはたしていることがうかがえました。被爆70年の大会に向けて、さらに参加体制や参加賛同団体・個人の拡大・強化に向けた工夫が課題です。
   「メッセージfromヒロシマ」(広島大会)、「ピースブリッジin長崎」(長崎大会)など若い世代の真摯なとりくみに大会参加者からも大きな共感が寄せられました。引き続き若い世代のとりくみを支援・強化していくことが必要です。
   また、被災61周年ビキニデー集会と墓前祭を3月1日~2日にかけて行いました。4月のNPT再検討会議を控え、世界の核軍縮の課題を確認し、ビキニ被災について学びました。
   こうした成果と反省を踏まえ、今年度の被爆70周年原水爆禁止世界大会や被災62周年ビキニデー集会の内実を豊かにしていくことが必要です。

(4)   NPT再検討会議へのとりくみ

   核不拡散条約(NPT)再検討会議は、5年に一度、ニューヨークにある国連本部で開かれ、今年4月27日から開催されます。再検討会議は、核保有国の核軍縮を促進する重要な会議で、前回(2010年)の会議では、「2013年の中東非核化会議の開催」、「核兵器国の核廃絶の約束」など多くの核軍縮へ向けた約束が合意なされました。この5年間の進展を振り返り、次のステップへ向けた協議と合意を図ることが期待されています。
   今回、国際的には国連事務総長が提案した「核兵器禁止条約」が大きな焦点になるとも言われています。また、「核兵器の非人道性と不使用」についても、昨年10月に日本を含め125カ国の共同声明がなされた流れの中で、今回その内実があらためて問われています。
   しかし核軍縮をめぐる状況は極めて厳しい状況にあります。ロシアがクリミア半島をウクライナから一方的に編入し国際社会と対立、「新たな冷戦」と呼ばれる事態となり、その過程でロシアのプーチン大統領の核兵器使用の準備も公言されるなど緊張が高まり、核軍縮も停滞しています。さらにパレスチナ問題、シリアの内戦、「イスラム国」(IS)の台頭など中東をめぐる情勢の流動化など、中東の非核化へのアプローチが困難になっています。NPT未加盟国の核兵器保有の問題やインドへの原子力技術やウラン資源の輸出など、NPT体制そのものの基盤さえ掘り崩されようとしています。
   困難な状況の中で、国際的な核軍縮の枠組みを話し合う唯一の機会がNPT再検討会議です。国家間の話し合いとともに市民社会もこの議論を促進し、監視する役割があります。国際的な反核運動が結集して、現地ニューヨークで国際的デモンストレーションとロビー活動が展開されます。
   原水禁もこの間、2000年、2005年、2010年と代表団を派遣し、国際的な連帯活動を展開してきました。今回も代表団を派遣し国際的な連帯をはかります。

(5)   高校生平和大使のとりくみ

   1998年にはじまった高校生平和大使も17年目をむかえ、2014年度は、20名の高校生が平和大使として8月16日~23日にかけてジュネーブの国連などを訪問しました。昨年も政府(外務省)から「ユース非核特使」(政府が新設した制度)に任命され、日本の若者の代表として、核兵器廃絶と平和の実現を世界に訴えました。
   これまで国連に訪問した高校生は100名を超え、昨年度集めた署名も約13万筆となり、これまでの累計1,173,422筆となりすでに100万筆を大きく超えました。高校生平和大使の活動は、長崎の高校生の運動から始まり、いまや全国各地に広がり、13都道府県から20名が選出(2014年度)され、その中には東日本大震災の被災地の岩手や福島からも選ばれ、国際社会に被災地の現状を訴えました。
   昨年、この高校生の活動を支援する全国組織「高校生平和大使を支援する全国連絡会」を6月15日、被爆地広島で立ち上げ、財政面などでサポートしていくことになりました。若い声と力をさらに広げるための活動とそれを支える人々の結集が、戦後・被爆70周年の今年はさらに重要になっています。

《2015年度運動方針》

  1. 核兵器廃絶にとりくむ国内外のNGO・市民団体との国際的な連携強化をはかり、核兵器廃絶に向けたとりくみを進めます。
  2. 政府・政党への核軍縮に向けた働きかけを強化します。そのためにも核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)など、国会議員と連携したとりくみをすすめます。
  3. 東北アジア非核地帯化構想の実現のために、働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。
  4. 日本のプルトニウムへの国際的関心を活用し、再処理問題は、核拡散・核兵器の課題としてとりくみを行います。
  5. 現実的な核軍縮の実現をめざし、日本から同盟国として米国に警戒態勢解除を要請するよう政府に働きかけます
  6. 核兵器の非人道性声明に署名しながら拡大抑止政策を変えない日本の核政策の矛盾を追及し、先制不使用などの具体的な政策変更を求めていきます。
  7. 非核三原則の法制化へ向けた議論と行動にとりくみます。
  8. 非核自治体決議を促進します。自治体の非核政策の充実を求めます。さらに非核宣言自治体協議会や平和市長会議への加盟・参加の拡大を促進させます。
  9. 原水禁結成50年にあたり原水禁運動の半世紀を振り返り、未来を展望できるとりくみを行います。
  10. 被爆70周年原水爆禁止世界大会は、下記の日時で開催します。
          8月1日            福島大会(いわき市平中央公園)
          8月4日~6日      広島大会(8月5日/国際会議、8月6日原水禁結成50周年シンポジウム)
          8月7日~9日      長崎大会
  11. 被災62周年3.1ビキニデー集会を2016年3月に静岡で開催します。
  12. 高校生平和大使の活動を支援し、「高校生平和大使を支援する全国連絡会」の活動を強化していきます。
  13. NPT再検討委会議に派遣団を構成し、核兵器廃絶や日本のプルトニウム問題を訴え、ウラン採掘による核被害者(ネイティブアメリカン)との交流を図ります。また、連合・KAKKIN(核禁会議)と連携し、1000万人署名提出や原爆展を開催します。

8.   原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けたとりくみ

(1)   さようなら原発1000万人アクション

   2011年3月11日に発生した東日本大地震は、東日本一帯に甚大な被害をもたらし、その中で福島第一原発が原子力史上最悪の大事故を引き起こす結果となりました。「安全神話」のもと原発が国策として強引に進められ、その下で「命」が軽んじられてきたことがあらためて浮き彫りになりました。4年経ったいまでも事故の収束は見えず、放射性汚染水や除染、労働者被曝、健康被害など多くの問題が深刻化しています。事故は、あらためて「核と人類は共存できない」ことを教えています。
   3・11以降、作家の大江健三郎さんら9名の著名人の呼びかけの下、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」が結成され、脱原発の国民的運動を進めてきました。原水禁はそのとりくみの中心を積極的に担ってきました。運動は、1000万人署名と大衆集会を中心に進められてきました。1000万人署名はトータルで8,492,258筆(4月1日現在)となり目標の1000万筆が目前となっています。今年度には目標を達成し、原発推進の安倍政権に国民の声として脱原発を突きつけられるよう、引き続き署名活動の強化が求められています。
   さようなら原発1000万人アクションが開催した集会は、「川内原発を再稼働させるな!さようなら原発★首都大行進」(6月28日、明治公園、3団体共催・5500人)、「さようなら原発全国大集会」(9月23日、亀戸中央公園・16000人)、「川内・高浜原発を再稼働させない!東京集会&デモ」(1月24日、豊島公会堂・550人)、「NO NUKES DAY反原発★統一行動」(3月8日、日比谷野外音楽堂、3団体の共催)を開催してきました。特に9月23日の集会では、デング熱問題で急遽会場を変更するなどの事態もありましたが、全国から大結集をはかることができました。
   また、福島原発事故から4年目を迎えた福島では、「原発のない福島を!県民大集会」(3月14日、福島市・6500人)開催しました。さようなら原発1000万人アクションとして協力し、全国からの参加を呼びかけました。また首都圏での連帯集会を「フクシマを忘れない!さようなら原発講演会」(3月28日、新宿文化センター・1300人)を開催し、福島原発事故の風化に抗し、フクシマへの連帯の強化を訴えました。
   川内原発(鹿児島県)や高浜原発(福井県)の再稼働の問題が大きくクローズアップされました。特に先行する川内原発の再稼働問題について上記の集会での大きく取り上げるとともに、鹿児島市内で開かれた「川内原発再稼働反対集会」(6月15日)、「ストップ川内原発再稼働!9.28全国集会」(9月28日)、「ストップ川内原発再稼働!1.25全国集会」(1月25日)などを全国に呼びかけ、積極的に参加してきました。
   また原子力規制委員会から川内原発の再稼働を認める「審査書」が出された7月9日に「川内原発の再稼働を許さない緊急行動」(国会前/代々木公園)や2015年3月30日に設備の検査開始に抗議する緊急行動(国会前)を展開してきました。さらに周辺30キロ圏内(UPZ)の全自治体に対する申し入れ(2014年4月16日)を行ってきました。自治体への申し入れは高浜原発の再稼働に対しても、30キロ圏内の福井、京都、滋賀の各県内の自治体に12月7日、もんじゅ全国集会に合わせておこなってきました。特に防災対策、避難計画に対して焦点を当てました。
   今後、再稼働阻止が運動の大きな焦点となってきます。現時点では川内原発の再稼働が今夏以降、高浜原発は11月以降と報じられています。さようなら原発1000万人アクションとして集会や緊急行動を行い、現地での集会やとりくみへの連帯の強化によって世論の喚起をはかり、政府・電力会社にも申し入れ等なども行うことが重要です。

(2)   フクシマ課題の前進を

   福島第一原発事故をめぐる事態はいまだ厳しく、12万人を超す被災者が4年目の春を迎えています。子どもたちの甲状腺の問題、労働者の被曝の増大、汚染水の漏えい、中間貯蔵施設の問題など山積する課題の中で、いまだ事故の収束の見通しすら立っていません。現地住民は、放射性物質汚染地域から長期にわたる避難を強いられ続けています。生活や就労、そして健康など心身にわたる苦労がすでに4年も続いています。さらに、広範囲に渡って広がった放射能汚染の問題は、福島県のみならず県境を越えて広がっています。除染問題、健康問題、がれき処理問題、そして住民差別の問題も浮上してきています。被災住民に寄り添う丁寧な対応が求められています。
   原水禁は原発震災当初から「妊産婦並びに乳幼児・児童・生徒などの避難の実施要請」や「こども被災者支援法」の具体化を求める全国署名を展開し、これまでに100万筆以上を集め、2014年2月17日に内閣府、復興庁、衆参両院議長に提出するなど被災者の切実な要求に沿って行動してきました。
   さらに、原水禁福島大会の決議をもって復興庁への申し入れ(7月27日)なども行ってきました。また、全国労働安全センターやヒバク反対キャンペーンなどの市民団体とともに、数度に渡って被曝労働や甲状腺検査の問題について政府と交渉を行ってきました(6月10日、7月10日、8月5日、1月26日、2月19日)。
   この間、福島の子ども甲状腺検査では、1巡目でがんと確定したのは86人、疑いは23人にのぼりましたが、2巡目では1人ががんと確定し、7人が疑いとなったことが報道されています。被曝と甲状腺がんとの関係について、県民の間で不安が広がっています。因果関係の断定には慎重を期す必要がありますが、安易に「無い」と断定し、対策を取らないことは県民の「不安」を無視することです。県民の「安心・安全」を優先し対応することを国や県に求めることが必要です。さらに福島県に限らず、県境を越えて広がった放射能の影響を考えれば、周辺県にも拡大すべきです。
   ヒロシマ・ナガサキの被爆者援護の経験を踏まえながら、被災者の健康と健康不安に対応していくことが重要です。特に健康不安を軽減するための対策のひとつとして、ヒロシマ・ナガサキの被爆者援護法のような法的位置づけを持った制度が求められています。さらに今後も続く収束へ向けた被曝労働や除染作業に対しても、被曝の低減とともに、安全な労働環境の整備を追求していくことが必要です。

(3)   「破綻した原子力政策

  1. 安倍政権のエネルギー基本計画に対決する
       安倍政権は、前政権の民主党が国民的意見を求めて決めた「2030年代原発稼働ゼロ」をめざす政策をいとも簡単に放棄し、昨年4月11日に「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。基本計画では、原発の再稼働や再処理やもんじゅ開発を含めた核燃料サイクルの推進、原発輸出など原発推進政策に回帰した内容となっています。現在も世論調査で脱原発を求める国民の多数を占めており、原発推進政策への前のめりの姿勢は、非常に危険であり許すことはできません。
       安倍政権の原発推進の流れに対決していかなければなりません。今年は、福島原発事故の対応とともに川内原発・高浜原発などの再稼働が大きな焦点となります。再稼働や核燃料サイクルの推進に多くの資金や資源を投入するのではなく福島原発事故の収束や廃炉問題など山積する課題への対応に全力をあげるべきです。脱原発を進める運動にとって、安倍政権の頑発推進政策と対決するまさに正念場ともいえる年です。
       
  2. 川内・高浜原発の再稼働阻止へ
       今年の夏以降に九州電力・川内原発の再稼働が言われ、関西電力・高浜原発も11月頃とも言われています。原子力規制委員会は昨年9月に川内原発、同じく12月に高浜原発の審査書を相次いで出しました。その際、田中俊一委員長は「これで安全を保証したものでない」と発言していますが、実質再稼働にお墨付きを与えました。地震や火山、活断層の問題、避難(防災)計画の問題など、様々な問題を残したまま推進側は強引に再稼働を進めようとしています。
       高浜原発に至っては、1・2号機が40年を超す老朽原発となっています。2013年7月施行の改正原子炉等規制法で原発の運転期間が40年とされ、さらに20年延長するために原子力規制委員会の認可があらためて必要とされました。そのために運転期限(40年)の1年前までに規制委員会に申請することが必要となり、施行から3年は猶予期間とされましたが、16年7月が期限とされています。
       すでに日本原電・敦賀1号、関西電力・美浜原発1・2号、中国電力・島根原発1号、九州電力・玄海原発1号の5基は40年を超え廃炉となることが明らかになり、地元との協議に入るとしていますが、同じく40年を超す高浜原発1・2号機だけが運転延長をめざし、昨年12月から特別点検を進めています。このことは安全性、経済性(安全対策費なと追加の高コスト問題)などの面からも大きな問題です。危険な老朽原発を再稼働させることは、住民が求める「安心・安全」に背くものです。
       今後、再稼働の動きに対して当該の自治体はもとより30キロ圏内の自治体判断が焦点となります。自治体での防災計画・避難計画の策定と30キロ圏内の自治体合意・住民合意が鍵となります。自治体や地域住民へ「再稼働反対」の働きかけの強化が求められています。
       鹿児島では、昨年9月28日鹿児島市内で全国集会を開き7500人が結集し、再稼働阻止を訴えました。また1月25日にも「ストップ川内原発再稼働!1.25全国集会」(鹿児島市内・5000人)が開かれるなど活発な運動を展開しています。東京においても「川内・高浜原発を再稼働させない!東京集会&デモ」が開催(1月24日、豊島公会堂・550人)されました。原子力規制委員会が使用前検査に入る2015年3月30日には、国会前での抗議集会を開催し首都圏からの連帯を示しました。
       高浜原発の再稼働阻止のとりくみについては、2月13日に原子力規制委員会が3・4号機の審査「合格」を出したことに対する抗議声明を発しました。また運動の陣形の強化めざして福井県平和センターの呼びかけで、福井に隣接する京都・滋賀・岐阜の原水禁・平和フォーラムを軸に「脱原発若狭湾共闘会議」の結成に向けた協議が2月19日に行われました。正式な結成に向け隣県の協力体制の強化を原水禁として進めています。再稼働阻止に向けた連携・連帯・支援の動きが各地ででています。そのような動きをさらに各地に広げていくことが重要です。
       
  3. 中越沖地震から8周年とJCO臨界事故から15周年
       福島原発事故に先立つ4年前に起こった中越沖地震の教訓は福島原発には生かされず、原子力の「安全神話」が先行し、フクシマの惨事がおこりました。地震と原発の問題は、先の高浜原発差し止め判決でも大きな焦点となりました。また、川内原発の再稼働審査でも火山との関連も含め問題になっています。原発推進側は、活断層と地震を過小評価し、老朽化する原発が増える中、耐震性にも大きな問題があります。福島原発事故での地震と耐震性の原因究明もなされないまま、次々と原発の再稼働がされようとする流れの中で、2007年の柏崎刈羽原発事故についても徹底した検証とそこからの教訓をつかみ取ることも重要です。「止めよう柏崎刈羽原発再稼働!東京集会」(2014年4月12日、日比谷図書文化センター・200人)を開催し、「中越地震7周柏崎刈羽原発集会」(7月12日、柏崎市・350人)に協力してきました。
       原発の安全神話を考える上で1999年9月30日に起きたJCO臨界事故も忘れてはなりません。事故を起こしてもなお「安全神話」を信じつづけたことが、福島原発事故につながっています。JCO 臨界事故の教訓をしっかり学ばなかったことは、今の福島原発事故の教訓を十分学ばないうちに原発の再稼働を進めることと同様に、新たな大事故が懸念されます。JCO臨界事故14周年集会(9月27日、茨城・東海村)を開催し、そのことをあらためて確認しました。
       今後も福島原発事故に先立つ2つの大きな事故から今も学ぶべきことを強く訴えていきます。なお、耐震問題では、3月25日、敦賀原発2号炉については、原子力規制委員会の有識者評価で、敷地内断層が「活断層」と報告され、東通原発1号機についても活断層として可能性を認めましたが、その「活動性」で評価が分かれる結果となりました。今後の原子力規制委員会の判断が焦点となりますが、活断層の上に原発を置くこと自体が問題です。中越沖や東日本の震災の教訓を生かし、活断層問題を追及していくことが重要です。
       
  4. 核燃料サイクルのとりくみ
       六ヶ所再処理工場では、一昨年12月の新規制基準の導入により現在適合性などの審査が進められています。昨年10月の完工予定をさらに延期し、16年3月と発表しました。21回目の延期で、現在進められている適合性審査も施設近傍の活断層の問題、耐震問題などで予定通りにいくとは限らない状況にあり、さらに延期という事態も考えられます。
       さらにプルサーマル計画や高速増殖炉開発のとん挫などにより核燃料サイクル政策そのものが、すでに破たんしている状況にあって、プルトニウム利用の見通しがまったく立たない状況にあります。そのような中で処理施設建設・稼働に執着することは、核不拡散の観点からも問題となっています。使い道のないプルトニウムを大量に作り出すことは、日本の潜在的核開発能力のポテンシャルを高め、核セキュリティ上も問題です。現在約47トンものプルトニウム(国内10トン、国外37トン)を抱え、海外からも問題視されています。
       原水禁は、青森での「反核燃の日」行動(4月5日・800人)や福井での「もんじゅを廃炉へ!全国集会」(12月6日・800人)を行い、核燃料サイクル路線の破綻を明らかにしてきました。
       「反核燃の日全国集会」の前段に、大間原発(大間町)、東通原発(東通村)、リサイクル燃料備蓄センター(むつ市)、日本原燃(六ヶ所村)など事業者や立地自治体への申し入れ・要請行動(4月4日)も行ってきました。統一地方選挙の関係で2015年の反核燃の日行動は5月29日~31日に実施予定ですが、あらためて核燃料サイクルの破綻を明らかにしていきます。
       また、東京においては「再処理止めたい!首都圏市民のつどい」(原水禁が連絡先)とともに、2004年12月以来、毎月第4水曜日に国会議員へのニュース配布と経済産業省申し入れ行動、定例デモに市民とともに協力してきました。また1月19日から3月23日にかけて、5回の連続講座「安倍政権の原子力政策を問う」を開催するなど、首都圏での反核燃の運動を進めてきました。
       高レベル放射性廃棄物の問題はいまだ解決の目途も立っていません。処分方法、処分地、国民的合意などどれ一つ解決されていません。現在、北海道・幌延と岐阜・東濃で研究が進められていますが、そのまま近傍が処分地になる危険性も指摘されています。危険な放射性廃棄物のゴミ捨て場を安易につくらせないことが重要です。幌延は深地層研究所問題が起きて今年で30年となります。現地での粘り強い闘いと連帯し、運動をさらに強化し課題の全国化を図ることが重要です。「北海道への核持ち込みは許さない!幌延デー北海道集会」(11月23日)への協力や、大間原発問題で電源開発に対し、幌延問題で日本原子力研究機構に対して北海道平和運動フォーラムと共同で申し入れ(1月30日)を行ってきました。核燃料サイクルの闘いを現地だけの問題にさせないことが重要です。
       安倍政権は、先のエネルギー基本計画の中で、核燃料サイクルの推進を唱っており、破綻した再処理路線の現実を広く明らかにしていく必要があります。プルトニウム利用においては余剰プルトニウムを持たないことを国際公約と掲げていますが、原発が停止する中にあってはこれ以上の使い道がないことは明らかです。国際的にもこのことを強くアピールしていくことが求められています。原水禁世界大会でも核燃料サイクルと核拡散の問題を明らかにしていきます。
       
  5. 原発輸出に反対するとりくみ
       トルコとアラブ首長国連邦(UAE)に原発関連の資材や技術の輸出を可能にする原子力協定承認案が2014年4月4日の衆議院で賛成多数で可決され、発効されました。原発輸出を成長戦略の目玉として掲げる安倍政権は、今後も各国との原子力協定を積極的に推進し、原子力産業の延命をはかろうとしています。特に今回のトルコとの協定では、UAEとの協定には書かれていない再処理の問題が指摘されています。日本が書面で同意すれば、輸出した核物質について、核兵器への転用にもつながる再処理を認める規定があり、国際社会からは核拡散の面からも問題となっています。さらにトルコは地震大国であり「イスラム国」(IS)の問題もあり輸出そのものが大きな危険を伴っています。
       中東では、トルコ、UAE、ヨルダンといった国々への輸出が、安倍首相の中東外交を踏まえ、進められようとしていましたが、テロ問題など新たな問題が出てきました。日本の道義性が問われる問題です。原水禁は「トルコおよびUAEとの原子力協力協定の承認に対する抗議声明」(2014年4月7日)を出し、抗議してきました。今後も原発輸出に対しては、原発の危険性とともに核拡散の面からも追及していきます。
       
  6. 原子力空母の危険性を訴えるとりくみ
       東京湾に浮かぶ60万KW級の原発と積載する原子力空母は、日本の規制基準さえも及ばない、現在唯一日本で稼働している原子炉といえます。米軍の管理下という軍事のベールの中にあり、私たちの生活を脅かしています。原子力空母の母港化反対とともに、原子炉災害の観点からも政府や米国政府を追及していくことが引き続き重要となっています。
       現在、横須賀市として原発並みの防災計画を立案しています。そのような動きに対応し、横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)などの寄港先の運動とも連携して問題を提起していくことが必要です。「米原子力空母横須賀母港化反対神奈川集会」(2014年9月28日、横須賀市・1700人)が取り組まれ、協力してきました。今年は特に原子力空母の交代という局面を迎え、母港化継続を許さないとりくみが重要です。
       

(4)   エネルギー政策の転換を

   「エネルギー基本計画」は、民主党政権時に広範な国民的議論を行ない、2030年代までに原発ゼロをめざして方針決定した「革新的エネルギー戦略」を放棄したものです。国会事故調も指摘したように、原発事故は、これまでの政府、規制当局、事業者、学者、マスコミを含めた無責任体制が原因の人災でした。その反省もなく事故後4年を前に、旧態依然の無責任体制に回帰しようとしています。
   経済産業省内の審議会で、討論型世論調査などを含めた国民的議論を行った結果である「革新的エネルギー・環境戦略」をまったく無視するという、民主的手続きを欠いたものです。革新的エネルギー戦略策定のプロセスの中で行った、コスト等検証委員会の議論(エネルギーコストの比較を行い、バックエンドコストなど未確定な部分を指摘し、原子力エネルギーが高くつくことを明らかにした事実)を無かったかのような、ごまかしの数字を使っています。
   さらに、相次ぐ経産省の小委員会の会合が開かれ、形だけのパブリックコメントを行って原発優遇のエネルギー政策が決められようとしています。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度も骨抜きにされ、原子力の電力を2030年に20%にしようという計画です。
   太陽光などからの接続申込量が、晴天時の昼間に消費電力を上回る可能性があるという理由で、九州電力など5社が再生可能エネルギー電力の接続を拒否し、原発からの電力を優先する体制が作られています。実際には、再生可能エネルギー電力の申込量より設備容量は少なく、さらに稼働率は30%前後であり、消費量を上回る可能性は非常に低いものです。他電力との融通なども考慮されていません。
   データを公表せず、原発による電力を優先させて、再生可能エネルギーを抑制させることは、電力の地域独占を続けている送電網独占の現状を利用した悪質なものです。エネルギー政策の方向性を定める明確な政策誘導を行い、既存の送電網でも活用次第で、再生可能エネルギーをかなりの比率まで高めることを実証したドイツの前例に学ぶべきです。
   2016年から一般の家庭でも電気を選べる、電力の「小売り自由化」が始まります。現在行われているエネルギーミックスの議論を含め、電力小売自由化制度設計や送電系統の広域運用などの電力システム改革の動きにたいして働きかけをつづけます。今後もすすめられる議論の中で、送配電部門の中立性の一層の確保など、電力システムの改革が後退しないように監視を続けます。
   また、再生可能エネルギー推進によってこそ地域の経済が新しく豊かになります。地域エネルギー民主主義をめざし、再生可能エネルギー促進条例などのとりくみに協力し、その普及拡大をめざします。

《2015年度運動方針》

  1. 川内原発・高浜原発の再稼働阻止にむけて、現地と協力しながら、課題を全国化していきます。合わせて自治体や政府への交渉を進めます。国会周辺での抗議集会や全国への緊急行動を呼びかけます。
  2. 福島原発事故に関する様々な課題について、現地と協力しながら運動を進めます。フクシマ・プロジェクトを通じて、被災地への連携強化と課題を明らかいにしていきます。被曝問題について、政府への要請や交渉を進めます。
  3. 「さようなら原発1000万人署名」の達成をめざしてとりくみの強化を進めます。
  4. 六ヶ所再処理工場や核燃料サイクル政策の推進に反対し、現地のとりくみを支援するとともに、事業者などへも要請を行います。
  5. フルMOX燃料の大間原発の建設中止を求め、高速増殖炉・もんじゅの廃炉を求めていきます。
  6. 中越沖地震7周年集会、JCO 臨界事故15周年集会に協力します。
  7. 原発輸出に反対し、政府などへ要請します。
  8. 原子力空母危険性を訴え、防災対策について政府との交渉を行います。
  9. 電力システム改革へ後ろ向きの勢力に注視し、政策決定の過程を明らかにさせるとりくみを行います。
  10. eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)と連携し、電力システム改革に働きかける「パワーシフト」キャンペーンに協力して電力の小売り自由化へむけたとりくみを進めます。
  11. 各地の自然エネルギー利用のとりくみに協力します。とくに「再生可能エネルギー促進条例」(仮称)づくりなど、地域から再生可能エネルギーのとりくみをつくり上げることに協力します。

9.   ヒバクシャの権利確立のとりくみ

(1)   被爆者の課題解決にむけて

   ヒロシマ・ナガサキの被原爆投下から70年。被爆者の高齢化はいっそう進み、その子どもである被爆二世も高齢の域に入りつつあります。被爆者の残された課題を解決する時間も限られ、援護対策の充実と国家の責任を求めることが急務となっています。
   被爆者の援護施策の充実を求める課題のひとつとして、原爆症認定問題が裁判闘争を中心にとりくまれてきました。その結果、被爆者団体と政府は解決にむけた合意がなされ、「基金」の創設や日本原水爆被害者団体協議会(被団協)などとの「定期協議」などが確認され原爆症認定の課題は前進しましたが、一方で、改定した「新しい審査委の方針」に従って展開されている審査制度の中で、多くの審査滞留や認定却下が生み出されているなど、改善を要する課題も山積しています。最近でも、4名の原爆症認定が勝ち取られる判決(1月30日、大阪地裁)など、行政の認定を覆す判決が引き出されました。
   しかし、原爆の被害を過少に評価しようとする行政の態度がまたも断罪されました。このような行政の動きはフクシマの被曝問題にもつながるものです。引き続き原爆症認定など(被爆体験者、二世三世問題も含め)原爆被害の救済の運動に協力をしていくことが重要です。
   在外被爆者の課題は、日本の戦争責任・戦後責任の問題と重なります。高齢化の進む在外被爆者の課題解決も重要です。在外被爆者の援護は国内の被爆者との援護との間に内容に差があります。「被爆者はどこにいても被爆者」であり、差別のない援護の実現に向けてさらに運動を強化していかなければなりません。これまで政府は、被爆者健康手帳の交付、健康管理手当の支給、海外での原爆症認定申請など、在外被爆者に関連する施策については「裁判で負けた分だけを手直しする」ことに終始し、差別的な制度の抜本的見直しを行ってきませんでした。このような問題点を被爆69周年原水禁世界大会の分科会で強く訴えてきました。
   国内の被爆者と同じく医療費が全額支給されることは、在外被爆者の切なる願いです。これまで、医療費支給額に年額約18万円の上限(2014年からは30万円)が設けられていた在外被爆者は、原爆後障害などの病苦と貧困の中で医療費を借り入れなどでまかなってきた現状があるにもかかわらず、日本政府はこれまで放置してきました。原水禁は「在外被爆者の医療費を認めない長崎地裁判決に強く抗議する声明」(4月2日)を発し、強く抗議しました。今後も在外被爆者への被爆者の平等な取り扱いに向けて、被爆者への連帯と運動を強化していくことが重要です。
   また、同じく在外被爆者である在朝被爆者に対しては、国交がないことを理由にこれまで被爆者援護が実施されていません。これまで確認されていた384人の被爆者はさらに高齢のため減少しています。高齢化する在朝被爆者への援護が急がれています。日本の戦争責任・戦後補償が問われる問題でもあり、とりくみをいっそう強化する必要があります。
   長崎の被爆体験者裁判は、一昨年6月の一審での敗訴を受け、現在控訴をして争っています。引き続き裁判支援を行いながら、政府・政党への働きかけをさらに強化していかなければなりません。特に裁判で強く主張した内部被曝が過小に評価されることは、今後の福島原発事故の被曝被害の過小評価にもつながるものです。このことの問題性を広く訴えることが重要となっています。
   これまで原水禁は、裁判闘争の支援とともに全国被爆体験者協議会と連携して、署名のとりくみ、厚生労働省交渉や国会議員への働きかけなどを積み重ねてきました。この課題も、原水禁世界大会の分科会でもとりあげてきました。広島・長崎の「黒い雨」地域の課題も近年明らかになってきました。そうした事実に即した被爆地拡大、被害の実態に見合った援護の強化を訴える必要があります。
   また、被爆者援護法の枠外に置かれている被爆二世・三世は、原爆被爆による「健康不安」の状態に置かれています。この健康不安解消のために、全国被爆二世団体協議会とともに「二世健康診断」のこれまでの単年度措置から恒常的な処置への移行を求めて、法制度に組み入れることを要求してきました。さらに健康診断内容に「ガン検診」などを加えることも要求してきました。また、今年2月14日~15日の「被爆二世全国交流会」にも参加・協力してきました。被爆二世が求める成果はなかなか得られませんが、粘り強く全国被爆二世団体連絡会との連携を強化し政府に要求していくことが必要です。
   残された課題にみるように国による被爆者援護に対する消極的姿勢は、国が「原爆の被害を過小に見せたいがため」にあり、原爆被害を根本から補償しようという立場にないことにあります。ヒロシマ・ナガサキの被爆者に対して十分な補償をさせることは、福島の被災者に対しても補償をさせることと一体として捉え、一つひとつ解決していけなければなりません。

(2)   被曝労働者との連帯を

   福島原発事故によって、住民の被曝とともに、収束作業や除染作業にあたる労働者の被曝問題はますます深刻な状況にあります。高線量の中での作業や劣悪な労働環境がもたらす被曝は、労働者の健康に多くの影響を与えるものです。安心・安全に働くための労働者の権利の確立は、事故の収束作業などの基本となるものです。福島原発に限らず、多くの原発・原子力施設に共通するものでもあります。現在、労働者の緊急時被曝限度を100mSvから250 mSvへ引き上げ、生涯1000mSvを容認しようとしています。労働者に大量の被曝をさせる動きに反対していくことが重要です。
   この間、原水禁・平和フォーラムとして被曝労働者の裁判を支援してきました。福島原発事故以降も厚生労働省や文部科学省、復興庁などへ被曝低減や安心・安全に働ける労働環境の整備など現地福島の方々をはじめ市民団体や住民団体(8団体)とともに求め、交渉を重ねてきました。
   今後も、福島原発事故に関連する被曝問題を取り上げ、被曝労働者の権利の拡大や被爆住民の健康管理や補償の課題について当事者と協力していくことが求められています。支援する団体とともに今後もとりくみの強化をはかります。

《2015年度運動方針》

  1. 現地と連帯して福島原発事故による核被害に対する責任や賠償そして被害の軽減化を求めます。とくに健康面での国家による補償を求めます。
  2. 被曝線量の規制強化を求めます。
  3. 原爆症認定制度の改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向けて、運動をすすめます。
  4. 在外被爆者の裁判闘争の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。
  5. 在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。
  6. 健康不安の解消として現在実施されている健康診断にガン検診の追加など二世対策の充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さらに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。
  7. 被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実の拡大をめざして、現在すすめられている裁判を支援します。国への働きかけを強化します。
  8. 被団協が進める援護法の改正要求に協力し、被爆者の権利の拡大に向けたとりくみをはかります。
  9. 被爆の実相の継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万人署名」、平和大使などの若者による運動のとりくみに協力します。
  10. 原水禁・連合・KAKKIN(核禁会議)の3団体での被爆者の権利拡大に向けた運動の強化をはかります。
  11. 世界に拡がる核被害者への連帯を、NPT再検討会議派遣団の場や国際交流、原水禁世界大会などを通して強化します。
  12. 被曝労働者の被曝線量の引き上げに反対し、労働者への援護・連帯を強化します。

10.   環境問題のとりくみ

(1)   TPPなど貿易自由化に対するとりくみ

   世界の食料は高値水準で推移しており、気候変動などによる不安定さが続いています。国連世界食糧農業機関(FAO)などの推計では、2011~13年の間に慢性的な食料不足に苦しむ人々は世界で約8億4200万人(およそ8人に1人)もいたとされ、依然として深刻な状況が続いています。地球規模での食料問題を解決するためには、自由貿易の拡大ではなく、各国が生産資源を最大限活用して自給率を高めながら、共生・共存できる「新たな貿易ルール」が必要です。
   こうした問題があるにも関わらず、世界貿易機関(WTO)や二国間・多国間自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)により、貿易自由化をめざす交渉が進められてきました。しかし、WTOドーハ・ラウンド交渉は15年近くにわたって進められてきましたが、近年はほとんど進展が見られず、事実上、失敗に終わろうとしています。そのため、各国ではFTA、EPAの推進が図られようとしています。
   特に、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、安倍内閣は2013年3月に交渉参加を表明し、同年7月から正式参加をしました。交渉はアメリカの主導のもとで進められ、本来は2013年末までの妥結をめざすとされてきました。しかし、これまで「大筋合意」は見送られてきました。
   これは、農産物をはじめ、著作権などの知的財産権、マレーシアやベトナムなどでの国有企業改革、環境問題など、多くの対立が残されているからです。さらに、米国では、昨年11月の議会の中間選挙に向けた企業や業界団体からは高圧的な自由化要求や、米国内の産業保護の圧力を受け、妥結が困難な状況が続きました。
   しかし、オバマ米大統領は2015年前半での合意をめざし、5月の日米首脳会談を踏まえて、早期妥結を図ろうとしています。安倍首相も妥結に前のめりの姿勢を取り続けており、農産物や自動車などの日米間の交渉でも一方的に米国の要求を受け入れています。しかし、米国では議会が持っている貿易交渉の権限を政府に与える「大統領貿易促進権限(TPA)」法案の協議が難航し、またアメリカのナショナルセンターの「米国労働総同盟・産業別会議(AFL-CIO )」など多くの労組が反対しています。さらに、各国の主権を侵害して多国籍企業に都合のいいルールを押しつけようとする交渉に対する各国での反対の声も高まっています。こうしたことから、最終的な妥結ができるか、見通しが立っておらず、長期にわたって「漂流」するとの見方も出ています。
   TPPは国内の農業・食料に打撃を与えるだけでなく、食の安全や医療、公共サービス、投資、特許や著作権等の知的所有権など、広範な影響が予想され、各国の経済・社会システムを根本から変え、国家の主権をも侵害するものです。特に、導入が検討されているISD条項(投資家が国を訴える訴訟権)は、これまでも各国の安全や環境を守るために作られた法律や制度を変更させてきました。さらに、中国など東アジア諸国との関係への影響、世界のブロック経済化なども懸念されています。しかし、この間、TPP交渉に関する情報は、守秘義務により明らかにされず、国民的議論がほとんど行われてきませんでした。
   こうしたことから平和フォーラムは交渉に反対してとりくみを進めてきました。農民・消費者・市民団体とともに、全国各地でTPP反対運動を進める人達が参加しての「TPP運動全国交流集会」(2014年9月27日・明治大学)の開催や、アメリカとのFTAを結んだ韓国での反対運動の国際シンポジウム(2014年4月17~19日・ソウル市)への代表派遣、アメリカやニュージーランドの運動家や研究者による国際シンポジウム(4月21日・衆院)の開催に協力してきました。また、定期的な連続講座(2014年4月15日、5月14日、6月11日、7月9日、9月16日、10月14日、11月29日、12月18日、2015年1月20日・連合会館)の開催も進めてきました。
   さらに、第46回食とみどり、水を守る全国集会(2014年11月28日~29日・東京・日本教育会館)でも主要課題の一つとして討議を行った他、TPPに反対する関係団体とともに「TPPを考えるフォーラム─地域を破壊するTPPは止めよう」(3月9日)の開催、関係国のNGOとの情報交換などを進めてきました。また、TPP 交渉が国民の知る権利(憲法21条)や、健康や生命に関わる生存権、幸福に生きる権利を侵害するものだとして、「TPP交渉差止・違憲訴訟」をおこす動き(1月24日に結成総会)にも協力してきました。
   今後も、消費者・市民団体、農民団体などと連携を強め、TPP協議における徹底した情報公開を求め、TPPの問題点を明らかにしながら、東アジア諸国をはじめとして、各国の農業や産業が共存できる公平な貿易ルールを求め、活動を進めていく必要があります。
    一方、TPPとは別に、東南アジア諸国連合(ASEAN)10ヵ国と日中韓印豪NZの6カ国による広域的な東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉も2012年から行われています。また、日本・中国・韓国のFTAに向けた交渉、さらに日米、EU、カナダ、韓国など23ヵ国による「新サービス貿易協定」(TISA)の交渉も昨年から進められています。こうした動きも合わせて、今後のアジアを中心とした各国との連携のあり方も検討していくことも課題です。

(2)   水・森林・化学物質・地球温暖化問題・放射能汚染などのとりくみ

   水の問題では、世界的な水不足、有害な化学物質や合成洗剤などによる河川や湖沼の汚染など、水の質と量が大きな問題となっています。さらに、グローバリゼーションの進展の中で、水の商品化、水道事業民営化の動きが強まっています。健全な水循環を構築するとともに、水の公共性を守り、ライフラインである水道・下水道事業の公共・公営原則を守り発展させることが、引き続き重要な課題となっています。
   そうしたなか、健全な水循環を構築するための「水循環基本法」が2014年3月に成立しました。地下水を含め、水の公共性が謳われており、今後、複数省庁で管轄されている水行政が総合的に運営されることが期待されます。「水循環基本法」等については、食とみどり、水を守る全国集会でも課題の一つとして討議を行いました。また、全水道会館内に設置された「水情報センター」との連携も進めてきました。今後も、基本法の理念を具体化するため、各個別法に利用者や関係する労働者の意見が反映できるようとりくみをすすめる必要があります。
   家庭から出される有害化学物質の最大のものが合成洗剤です。「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」は、合成洗剤を追放し、人と環境にやさしい石けん使用の推進に向け、化学物質の移動・排出届け制度(PRTR)の推進などを求めてきました。
   平和フォーラムは「合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、運営やニュースの発行などに協力してきました。また各地で水源地域の保全活動や水質検査活動などが進められてきました。特に「第33回合成洗剤追放全国集会」(2014年10月4日~5日、福岡市)の開催に参加・協力してきました。また、2014年は同連絡会の結成40周年であり、その記念事業(リーフ・活動記録発行)にも協力してきました。
   今後も、合成洗剤の規制など化学物質の総合的な管理・規制にむけた法制度や、有害物質に対する国際的な共通絵表示制度(GHS)の合成洗剤への適用などを求めて運動を展開していく必要があります。
   環境および農山漁村を守るうえで、森林は重要な役割を果たしています。また、東日本大震災では津波被害を軽減するなどの森林の防災面での機能も改めて見直されました。その公益的機能に対する学習活動として、各地域で森林視察や林業体験などがとりくまれてきました。また、「食とみどり、水を守る全国集会」でも森林の多面的機能などを学びました。
   今後、温暖化防止の森林吸収源対策等の確実な実行、木材産業の活性化と、自然エネルギー資源としての木質バイオマス利活用の推進なども含めて「森林・林業基本計画」の具体的な実施、林業労働力確保、地域材の利用対策などを実現する必要があります。
   また、山村が担ってきた国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全が、主要産業である農林業の低迷、就業機会の減少、過疎化・高齢化に伴い、森林の管理機能の低下により森林の有する多面的機能の発揮が危ぶまれていることから、2015年3月末に期限をむかえる「山村振興法」の延長と内容の充実を図り、地域資源を活用した地域林業の確立、地域雇用の確保を図る必要があります。
   地球温暖化問題は、日本政府は、気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に対し、2009年に示した中期目標「1990年比25%削減」を見直し、「2020年に05年度比3.8%減(吸収源を含む)」という新目標を打ち出しました。これは、京都議定書第1約束期間の削減努力を帳消しにし、90年比で3.1%増加を意味します。
   気候変動枠組条約締約国会議では、全ての国が参加する新しい枠組みを2015年末に合意する予定で、2020年以降の削減目標を国連に提出する必要があります。日本は2020年の削減目標を明確にして、脱原発と気候変動対策とを両立させる形で再生可能エネルギー・省エネに重点をおく政策実現に向けて早急に議論を進めるべきです。しかし、原発推進に回帰するような「エネルギー基本計画」見直しを行う傍らで、気候変動政策は大きく後退し、「地球温暖化対策計画」も未制定のままです。
   一方、自然エネルギー推進については、再生可能エネルギー促進法に伴い、発電された電力の全量買取制度が行われてきました。しかし、電力会社は、「電力の需給バランスが崩れる」として、一部で自然エネルギーの買い入れを拒否しています。身近な地域資源を活用した太陽光発電やバイオマス、風力など地域分散型のエネルギーの利用を一層推進するため、市民・農民団体などとともにとりくみをすすめていく必要があります。
   さらに深刻なのは、福島第一原発の事故による放射能汚染問題です。広範囲に拡散した放射性物質は、大気や水、土壌、河川、海洋など環境に対しても多大な影響を与ました。現在も汚染水は増え続け、貯蔵タンクからの汚染水漏れが発覚し、海洋などへの深刻な放射能汚染が指摘されています。
   放射能汚染は食の安全にも多くの影響を与えています。放射性物資が付着した食べ物や水、空気などを体内に取り込んで、放射能を浴び続ける体内被曝は、微量でもDNAを傷つけ、ガンなどを誘発します。福島県内では米の全袋検査などが行われるなど、対策が強化されてきていますが、他の県からも放射能汚染の農産物が見つかるなど、消費者の不安は払拭されていません。福島県平和フォーラム内に開設している放射能測定室において食品や土壌の放射線量の測定のとりくみも行われており、平和フォーラムはこうしたとりくみを支えてきました。
   今後も農産物、水産物等の汚染状況の徹底的な把握のためにきめ細かい検査態勢と情報の迅速な公開、そして乳幼児や妊婦、子どもへの特段の配慮を求めて行くことが必要です。また、田畑や森林については、きめ細かな測定や除染が必要です。この作業には膨大なコストと時間を要することになり、その効果を見定めながら実行していくことが必要です。さらに、大気汚染も深刻であり、広範囲に及ぶ放射性物質の影響調査は不十分なままです。それらの対策も今後の大きな課題です。

(3)   第一次産業の転換や農林業政策のとりくみ

   日本農業は長期にわたって、農業就業人口の減少や高齢化、農業所得の大幅減、耕作放棄地が増加してきました。2009年の政権交代によって、民主党政権では「食料・農業・農村基本計画」が見直され、多様な担い手がつくる日本農業の姿が展望され、直接支払制度の強化など、自民党農政とは別の道が模索されてきました。
   しかし、2012年の再度の政権交代とTPP交渉を背景にして、再び農政の改革が進められようとしています。安倍内閣は、農林水産業を「成長戦略」の柱の一つにあげ、2014年5月に「農林水産業・地域の活力創造プラン」の改訂をまとめました。新たなプランでは、規制改革会議などの検討を踏まえ、農地の権利移動や農業生産法人の要件緩和が盛り込まれたことから、現在は株式会社に認められていない「企業の農地所有の自由化」につながり、投機目的になることから、生産現場や自治体から反対の声があがっています。
   また、農協、農業生産法人、農業委員会に関する改革も盛り込まれました。特に、「農協改革」については現行の中央会制度の廃止や、JA全中の一般社団法人への移行、農協への会計士検査の義務付けなどを行うために、「農協法」などの関連法案の改訂を行おうとしています。しかし、こうした改革が、農業の活性化や農家所得の向上とどう結びつくのか不明であり、逆に地域農業の維持が困難になると批判が高まっています。さらに、この背景には経済界やアメリカからの協同組合全体の解体とその利権の獲得の狙いがあることから、生協など他の協同組合等からも政府への反論が出されています。
   こうした一連の農政転換は、農業の「競争力強化」よりも、TPP体制も踏まえて、企業による農業・食料産業の支配を強めるものと言えます。さらに、2014年は生産者米価が大幅に下落したうえ、民主党政権下で作られた戸別所得補償による米価の直接支払金が削減・廃止された影響で、大規模農家ほど大きな打撃を受け、存亡の危機を迎えています。
   これは食料の安定・安全にも大きな影響を与えるものです。現に、昨年から全国的にバター不足が深刻になりました。これは長年の酪農に対する価格抑制策や、昨今の円高による飼料高騰を受け、酪農家の廃業が相次ぎ生産量が減少したためです。こうした事態がこれから米や他の農産物まで広がることも予想され、安倍政権の農業・食料政策を厳しくただしていくことが必要です。
   これに対し、農民団体とともに、「TPP交渉に反対し、米価暴落対策を求める緊急全国農民行動」(10月21日・参院)を行い、内閣府や農林水産省に対する申し入れなどを行ってきました。また、食とみどり、水を守る全国集会でも論議・学習が行われました。今後も農民・消費者団体と協力し、食料自給率引き上げや所得補償制度の拡充、食品の安全性向上など、展望のある食料・農林業・農村政策に向けた法・制度確立と着実な実施を求めていく必要があります。
   また、各地域でも、子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動(41都道県で実施。カンボジアとアフリカ・マリへ約36トン送付)や森林・林業の視察会などを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくってきました。こうした活動をさらに拡大し、食の安全や農林水産業の振興に向けた条例作りや計画の着実な実施が必要です。

(4)   食とみどり、水を守る全国集会の開催

   「食の安全」、「食料・農業政策」、「森林・水を中心とした環境問題」を中心とした食とみどり、水・環境に関わる課題について、情勢と運動課題の確認、各地の活動交流のために、東京・千代田区「日本教育会館」で「第46回食とみどり、水を守る全国集会」を開きました(2014年11月28日~29日、500人参加)。また、集会後に、講演・報告やシンポジウムを収録した記録集も発行しました(2015年2月)。
   第47回全国集会は11月27日~28日に金沢市に開催するよう準備します。そのため、関係団体や地域組織に呼びかけて実行委員会をつくります。

《2015年度運動方針》

  1. TPP交渉に反対し、幅広い団体と連携を図りながらとりくみを進めます。そのため、集会や学習会などを開催し問題点を指摘していきます。また、政府に交渉内容の情報開示などを求めていきます。
  2. 「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、活動を推進します。
  3. 「水循環基本法」の具体化に向けたとりくみを求めます。また、水中や環境中の化学物質に対する規制運動を強めていきます。
  4. 関係団体と協力して、「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、木質バイオマスの推進などにとりくみます。
  5. 温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけや森林の整備など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
  6. 自然(再生可能)エネルギー普及のための法・制度の充実を求めていきます。また、温暖化防止を名目とする原発推進に強く反対します。
  7. 福島原発事故にともなう、環境や農産物などへの放射能汚染に対して、検査体制の拡充、放射性物質の除去対策などの万全な措置を求めてとりくみを進めます。また、大震災による農林漁業の復旧・復興に向けた対策を求めます。
  8. 農林業政策に対し、食料自給率向上対策、直接所得補償制度の確立、地産地消の推進、環境保全対策、自然エネルギーを含む地域産業支援策などの政策実現を求めます。
  9. 子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。とくに、支援米運動では小学校の総合学習やイベントなどとの結合、地域連合との共同行動などをとりくみます。
  10. 「第47回食とみどり、水を守る全国集会」の開催(11月27日~28日、金沢市)に向けてとりくみます。

11.   食の安全のとりくみ

(1)   食の安全行政に対するとりくみ

   食の安全と信頼をめぐっては、近年も様々な問題が提起されています。外食産業で相次いだ食品の産地や原料の偽装表示をはじめ、添加物や残留農薬、原産地表示などをめぐり食の安全性・信頼性への懸念が続いています。さらに、マスメディアなどで「健康食品」の効能効果を謳った違法広告や安全が疑われる商品も多数存在しています。これらの問題は、不当に利益を得ようとする業者だけの問題ではなく、外食に表示義務がないなどの制度の不備、罰則規定や監視体制の不十分性、管轄する省庁が多岐に渡る縦割り行政の弊害、そして、効率化優先の生産体制や大量の輸入食料に頼る食料政策など構造的な要因が重なっているものといえます。
   こうした中で政府・消費者庁は、新たな「食品表示法」のもとでの表示基準の統一に向け、食品表示法施行令(政令)と表示基準(内閣府令)が2015年2月に公布され、4月に施行される見通しになっています。しかし、事業者側からの圧力により、経過措置期間が長く取られ、加工食品及び添加物の表示については5年間、生鮮食品の表示については1年半後に完全実施されることになっています。こうした異例な業者優遇措置は、安倍政権の消費者軽視の姿勢を示すものです。
   平和フォーラムも参加し、消費者団体や生活協同組合などでつくる「食品表示を考える市民ネットワーク」は、食品表示改訂に対し、①加工食品と生鮮食品の区分、②製造所固有記号の廃止、③添加物の表示の改善、④原材料名表示等のルール、⑤栄養成分表示の改善などを要求し、「食品表示問題シンポジウム」(2014年7月4日・連合会館)や、消費者庁等への申し入れを行ってきました。また、今後の課題として、①加工食品の原料原産地表示の拡大、②遺伝子組み換え食品の表示義務、③食品添加物表示等についても早急な検討を求めてきました。今後も、消費者庁や消費者委員会に対するとりくみを進めていく必要があります。
   また、安倍政権の規制緩和政策の一つとして、新たに「機能性表示食品」の解禁に向けた制度作りが進められ、2015年4月から解禁されることになりました。その内容は、本当に効果があるかどうかの判断を企業任せにするものです。消費者団体などは制度創設に反対し、国による審査制度を作るように求めてきました。平和フォーラムが参加する「食の安全・監視市民委員会」は、消費者庁等への働きかけを進めてきました。また、全国消費者大会(2015年3月13~14日・プラザエフ)でもこれらの問題を取り上げ、食に対する規制緩和に反対することを確認しました。引き続き、制度の監視をすすめる必要があります。
   さらに、2015年2月に消費者庁が特定保健用食品(トクホ)としてノンアルコール飲料の認可を行いました。これは消費者委員会が「未成年者の飲酒を誘引する可能性がある」として、トクホ認可に反対する答申を行っていたものを覆して決定したものです。さらに、同2月にカナダにおいてBSE (牛海綿状脳症)の感染牛が見つかりましたが、政府は輸入禁止措置を取りませんでした。同時期にノルウェーでもBSE感染牛が見つかり、禁輸措置をとったことと矛盾します。また、韓国はカナダからの輸入を止めたのと対照的です。
   このように、安倍政権において食の安全政策は大きく後退して、事業者の利益を優先しています。「食の安全・監視市民委員会」では、これらの問題点をただすために消費者庁や政府各省へ抗議の申し入れを行ってきました。今後も食の安全政策を求めていく必要があります。
   一方、食品事故や表示偽装、誇大広告などの問題が相次ぐ中、「食の安全・監視市民委員会」では、市民からの様々な情報や通報などを収集して、問題点を整理して政府や企業に申し入れるための「食の安全・市民ホットライン」を運営してきました。特に最近、ファーストフードなどでの食品への異物混入問題が大きく取り上げられています。こうした企業に対しても公開質問状を出してきました。今後も、多くの情報を収集して申し入れなどを進める必要があります。
   さらに、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉とも絡み、アメリカは食品添加物・ポストハーベスト農薬規制の緩和などを求めてくることが予想されます。輸入農産物・食品に対する安全管理の徹底とともに、消費者の立場に立った食の安全確保も強く求めていく必要があります。

(2)   「放射線照射食品」などに対するとりくみ

   食品に放射線を照射して殺菌や殺虫、発芽防止などを行う照射食品は、政府の原子力推進行政と一体となって、原子力の商業利用拡大のために原子力委員会が強引に進めようとしてきました。これに反対して、平和フォーラムなどは「照射食品反対連絡会」をつくり、政府や各党への働きかけを進めてきました。その結果、厚生労働省は食品への適用を認めない方針を維持してきました。
   一方、輸入食品をめぐっては、消費期限切れ肉による加工食品など、安全性が問われる事件が繰り返し発生しています。特に中国では、殺菌などのために放射線照射も数多く実施され、日本でも違法な輸入照射食品が摘発されています。
   こうしたことから、「照射食品反対連絡会」は、「中国等からの食品が抱える危険性を考える集会」(10月2日・プラザエフ)の開催や、輸入食品を扱う企業へのアンケート調査などを行ってきました。また、「全国学校給食を考える会」と協力し、「学校給食全国集会」(3月28日・東京ウィメンズプラザ)でも学校給食と輸入食材の問題を討議しました。さらに、現在許可されている北海道・士幌町農協から出荷される「照射ジャガイモ」の流通を監視し、販売店での販売中止を求めてきました。引き続き、関係団体や食品関連業界などに対する働きかけを強めていく必要があります。
   遺伝子組み換え(GM)食品の表示問題では、現在、表示義務がない食用油や醤油への表示など、改善を求める運動が消費者団体を中心に展開されています。しかし、今後はTPPとも関連して、アメリカからのGM食品の輸入拡大や、日本で行われている表示の撤廃などを求められることも予想されます。消費者や生産者の不安が起きているなか、ヨーロッパ並みの表示の実現を求めていく必要があります。

(3)   食農教育の推進のとりくみ

   食の安全を脅かしているのは、国内の低い食料自給にも要因があります。日本は世界最大の食料純輸入国であり、食料自給率(カロリーベース)は39%のままで、先進国では最低となっています。自給率の低下とともに、食のグローバル化が進み、輸入農産物を多用した外食や加工食品が急増しています。その結果、世界有数の長寿国を形成してきた日本人の食生活が急速に変化し、それによると見られる生活習慣病やガン、アレルギーが急増しています。
   こうしたことから、自給率向上のとりくみとともに、学校や地域での子どもたちへの「食農教育」が注目されています。これらの問題について「食とみどり、水を守る全国集会」などで討議するとともに、各地域での支援米作付け運動等を通じた地域・子どもたちへの働きかけが進められてきました。今後も、食の背景にある農業まで含めた教育とともに、「食育推進基本計画」に基づき、学校給食に地場農産物や米を使う運動の拡大、栄養職員の教諭化の拡大などが必要です。また、子どもだけでなく、地域全体での地産地消運動など、食べ方を変えていく具体的な実践が求められています。そのためには、自治体での食の安全条例制定や有機農業の推進などの施策を求める運動もますます重要となっています。

《2015年度運動方針》

  1. 新たな「食品表示制度」の実地に向けて、消費者のためになる表示のあり方を求めていきます。とくに原料・原産地表示の徹底・拡大、遺伝子組み換え食品の表示義務、食品添加物表示などの改善を求めていきます。
  2. 食品偽装や輸入食品の安全性などに対する対策の徹底を求めるとともに、TPP交渉にともなう、添加物・ポストハーベスト農薬規制の緩和、アメリカ産牛肉の輸入制限の撤廃、遺伝子組み換え食品の輸入促進などの動きに反対して、消費者団体などと反対運動を進めます。
  3. いわゆる「健康食品」の機能性表示の実施に対し、データの公開や表示のチェックができるように求めてとりくみます。また、悪質な「健康食品」の違法広告に対する規制を求めていきます。
  4. 食品製造所の所在地が省略される「製造所固有記号制度」の廃止を求めてとりくみます。
  5. 照射食品を認めない運動をすすめます。そのため、政府への要請とともに、食品関連業界や消費者へのアピール活動などをすすめます。
  6. 遺伝子組み換え食品の、ヨーロッパ並みの表示制度への改善を要求していきます。
  7. 各地域で食品安全条例や食育(食農教育)推進のための条例づくりなどの具体的施策を求める運動をすすめます。また、学校給食の自校調理方式、栄養教諭制度の推進を求め、学校給食に地場の農産物や米を使う運動や、地域内の安全な生産物を消費する地産地消運動などをすすめます。

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