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2014年11月01日

平和のための教育 -マララさんのノーベル賞受賞に思う-

パキスタン人のマララ・ユスフザイさんが、「パキスタンのタリバン運動」(TTP)に銃撃され重傷を負ったのは、2012年10月だった。ウイでもそのことについて書かせてもらった。医師団の必死の治療と強い意志によって奇跡的に回復したマララさんに、10月11日(日本時間)、女性の教育を受ける権利への闘いによってノーベル平和賞が授与された。心から喜びたい。

「私には二つの選択肢しかない。一つは、声を上げずに殺されること。もう一つは、声を上げて殺されること」「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンが、世界を変える」と主張するマララさんは、女性をきびしく抑圧するTTPのターゲットだ。ノーベル賞受賞後も「われわれは異教徒のプロパガンダにはひるまない。イスラムの敵に対して鋭利なナイフを用意している」とマララさんを脅している。回復後の2013年7月12日、彼女は国連で演説した。その中で「多くの人々がテロリストに命を奪われた。私はその一人にすぎない。だから、私は、多くの少女たちの一人としてここに立っている」と自らを規定し、「私を撃ったタリバン兵さえ憎んでいない。タリバンの子も含め、全ての子に教育を」と訴えている。教育は時代を、社会を変える。その確信が彼女の言葉にある。

残念なことは、パキスタン国内でマララさんが必ずしも圧倒的支持を受けていないことだ。「祖国パキスタンを貶める欧米の工作員」などという批判がパキスタンの市民社会にあるという。保守的な考え方がいかに根強いかだけが原因ではない。パキスタンの女性の識字率は46%、しかし同じくイスラム教徒の多いマレーシアやインドネシアは90%を超える。アフガン戦争やイラク戦争を主導してきた米国や欧米諸国に対する強い反発が背景にあるのではないか。オバマ米大統領は、マララさんの受賞に対して、「人類の尊厳のために奮闘するすべての人たちの勝利だ」とする声明を発表した。米国の傲慢を象徴する発言だと思う。TTPやもっと過激といわれる「イスラム国」などの主張を許すべきではないが、これまでの米国のあり方に問題は無かったのか。そのことを自らに問わずして、一方的に非難するのは「ノーベル平和賞受賞者」の言葉ではない。

国連のミレニアム開発目標は、重要な目標として「普遍的な初等教育の達成」「ジェンダー平等の推進と女性の地位の向上」をあげている。人間の安全保障の観点に立ち武器によらない平和実現の唯一の道として重要だ。2008年からパキスタン東部で識字率の向上にとりくむ国際協力機構(JICA)の大橋知穂さんは「女子教育への国際的関心が高まった意義は大きい」とマララさんのノーベル賞受賞を評価する。現場で闘う人の言葉は、大統領よりも重い。日本政府もそのことに気づくべきだ。

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