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2016年04月01日

固定化する格差・貧困 ─今はいつの時代か?

37.5%という数字がある。約4割、10人いれば4人という数字だ。これは、山形大学の戸村健作准教授がはじき出した沖縄県の子どもの相対的貧困率である。沖縄が突出して高く、基地経済を押しつけられてきた沖縄差別とも言える課題が明らかだ。

大阪21.8%、鹿児島20.6%、福岡19.9%、宮崎19.5%と続く。西日本が高いという印象だが、戸村さんは「貧困率の高い地域はワーキングプアの多い地域」と言い、加えて「子どもの貧困は全国に広がっている」と指摘する。戸村さんの調査では2012年は13.8%に上る。1992年の全国平均は5.4%との数字がある。格差拡大は明らかだ。

相対的貧困率の拡大は、所得格差の拡大が要因だ。「一億総中流」などといい気になっている間に、新自由主義、規制緩和、労働法改悪といった流れによって、労働者の4割が不安定で低所得な非正規労働に押しやられた。結果としての格差拡大であり、貧困率の拡大である。法人税減税と消費税増税、防衛費増額と社会保障費の減額、所得税の累進率の緩和、政治の無策、いや意図的な政策によって格差はさらに拡大している。

自由と民主主義の国アメリカも、きわめて深刻な格差社会だ。ジェームス・ディーン主演のハリウッド映画「ジャイアンツ」、遠い昔に楽しんだドラマ「じゃじゃ馬億万長者」、アメリカには自らの力量や運によって、貧困から立ち上がることのできた時代があった。しかし、今アメリカは、格差の固定化という事態の中で深刻な社会不安を抱えている。それが、大統領予備選挙の、極右・極左とも評される共和党トランプ候補と民主党サンダース候補の善戦に象徴されているのではないか。

自らの将来を描いて、奨学金を得て大学に進学する。一所懸命のアルバイト生活で卒業するが、就職に失敗すれば奨学金の返済が一気にのしかかる。生活保護家庭にあった子どもが就職すると、生活保護が打ち切られるという事態も生まれる。教育は無料の欧州社会を想定するのは贅沢なのだろうか。貧困の固定化が、日本社会を覆っている。河上肇の「貧乏物語」や細井和喜蔵の「女工哀史」、横山源之助の「日本の下層社会」などに表現される資本主義黎明期の日本と何が違うのだろうか。
(藤本泰成)

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