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2016年12月01日

「押しつけられた憲法」という欺瞞

1946年11月3日の日本国憲法の公布から70年が過ぎた。安倍政権が誕生してから「憲法押しつけ論」が横行し、自主憲法制定の声が高まっている。1969年に、安倍首相の祖父の岸信介が「自主憲法制定国民会議」を立ち上げたことを思い起こす。安倍晋三は「祖父や父のできなかった憲法改正をやり遂げたい」と過去に述べていることから、事態がさらに進むことは明らかだ。

11月3日の産経新聞は「GHQ“素人”が米合衆国憲法を『コピペ』で原案押し付け憲法なのに一度も改正せずもう70年」という記事を掲載し、日本国憲法は連合国総司令部(GHQ)にいた憲法の素人が合衆国憲法を切り貼りした「コピペ」と呼ぶしかないものと主張している。また、「『制度疲労』を起こした条項は多岐にわたる」と主張しているが、憲法9条以外に具体的な言及はない。

読売新聞は、同じく3日の社説で「憲法公布70年新時代に即した改正を目指せ」として「時代の変遷に伴い、現実との様々な乖離が生じていることは否定できない」と主張しているが、改正すべき点は、議員のアンケートを基に「自衛のための組織保持」とやはり9条改正をトップに置いている。「国と地方の役割」「環境権」「参院選の合区解消」「緊急事態条項」などを並べてはいるが、それらは一般法の中で解決できる課題であり、説得力に欠ける。

改憲論の多くが、押しつけられた憲法と主張し改正が必要としているが、「何がどのように問題で、憲法改正が必要なのだ」という具体的な話は、憲法9条以外には聞いたことがない。「気に入らないから変える」というような幼稚な議論にしか聞こえない。同時に、この人達は憲法の「平和主義」を目の敵にしている。

日本国憲法は、情けないが自らの手で作ることができなかった。それは事実だ。憲法調査会が出した案は、天皇を元首とした旧態依然としたもので、マッカーサーは、だからこそ「平和主義・象徴天皇・封建制の排除」との憲法作成の指示を出したのだ。しかし、その憲法は、権力に怯えて物言えず戦争に倦いていた日本社会に、圧倒的賛同を持って受け入れられていった。産経新聞が素人が作ったという憲法は、70年もの長きにわたって日本社会を支え続けてきた。そのことから議論を始めるべきだ。
(藤本泰成)

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