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「もう一つの事実」の時代

2017年3月 1日

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 2017年1月20日の就任以来、米国のトランプ大統領は、反イスラムや反移民の大統領令を連発して、世界を混乱に陥れている。その米国で、イギリスの作家ジョージ・オーウェルが1949年に書いた反ユートピア小説「1984年」が、アマゾンの書籍売り上げのトップに輝いた。ケリーアン・コンウェイ大統領顧問のALTERNATIVEFACT(もう一つの事実)と言う言葉が「1984年」を連想させたと言われている。

 「1984年」でオーウェルの描く世界は、核戦争を経験し紛争の絶えない荒廃した社会だ。市民生活は、すべての部分で統制されお互いに監視し合う。歴史は常に改ざんされ、何が真実かも分からなくなっている。「WARISPEACE」(戦争は平和である)「FREEDOMISSLAVERY」(自由は屈辱である)「IGNORANCEISSTRENGTH」(無知は力である)と言うのが、独裁政権のスローガンとして至る所に掲げられる。そこでは、矛盾した二つの考えを同時に受け入れる能力(DOUBLETHINK)が求められる。「このスローガンは間違っているが、政権の主張であるから正しい」と受け入れることができる人間でなくてはならない。笑えない話しだが、それが現実となりつつある。

 コンウェイ大統領顧問は、2月2日、トランプ大統領の入国禁止令を擁護するために、「2人のイラク人難民が起こした『ボーリンググリーンの虐殺』をきっかけに、オバマ前政権が難民受け入れを6ヵ月間中断した」「メディアが報じなかったので、それは誰も知らない」とテレビのインタビューで主張した。事実は、2人のイラク人難民がイラクのテロ組織に資金と武器を送ろうとして逮捕された事件だった。オバマ大統領が難民受け入れを停止した事実はない。2月10日付のニューズウィーク日本版は「ドナルド・トランプは嘘をつく。そのこと自体、もはやニュースでも何でもない」と報じている。

 過日の朝日新聞で、名古屋大学の日比嘉高准教授は「日本も『もう一つの事実』の時代に入った」として「権力者が嘘を繰り返し主張することで、正しさの基準が崩れていく」と指摘している。戦争法成立の議論の中で、私たちは「もう一つの事実」にどれだけ振り回されただろうか。そのことによって議論の歯車はかみ合わず、与野党の攻防は空中戦に終わった。「武力行使であって戦闘ではない」「法的な意味での戦闘ではない」、その後も「もう一つの事実」がまかり通っている。そして、最後は強行採決だ。民主主義が危うい!
(藤本泰成)

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