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些細なことから始まる

2019年6月 1日

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 「新しいプラットフォームは素晴らしい」「老人には大事な安全対策も万全」「人生最後だから」などと適当に言いつのって車を買い換えることにした。財務省は渋かったが、「安全のため」が効いたようだ。したがって定期預金を解約に銀行へ、窓口で驚いた。「かなりの大金ですが、何にお使いでしょうか」と聞かれた。とっさに出た言葉が「何で」。何でそんなことを聞かれなければいけないのか。饅頭買おうが、馬買おうが、車買おうが、私の勝手ではないか。不愉快になって、つい窓口で「プライバシーの侵害だ、私のお金をどう使おうが私の勝手」などと毒づいた。不愉快になるのは私だけだろうか。「振り込め詐欺など、様々な問題がありますので」という。ならば、「振り込め詐欺などが横行していますので、ご注意下さい。大丈夫でしょうか」などと注意喚起を促せば良いのではないか。

 戦前の天皇制の下、共産主義を弾圧するために「治安維持法」が作られた。稀代の悪法である。この法の第1条には、「「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ」とある。真偽のほどは確かではないが、「日本の国土は、全て天皇のものである」との主張が、治安維持法違反になったという逸話もある。共産主義弾圧のための法とはいえ、私有財産制度は戦前から国の根幹であり、自由主義社会の基盤である。私のお金をどう使うかは私の勝手であり、知らせる義務もない。

 全国金融協会のホームページを開くと、2017年の振り込め詐欺の被害は8475件、203億円と巨額だ。2008年には、急増する振り込め詐欺対策として「振り込め詐欺救済法」が施行されている。前記のホームページには「高額・高齢のお客様の取引などの場合、金融機関ではお声をかけさせていただくことがあります」と記載されている。なるほど、窓口の職員は銀行の指導に従っただけかもしれない。しかし、個人の権利が犯罪防止のためとはいえ、少しでも損なわれていいはずはない。些細なことにと言われるかもしれないが、些細なことがいつか大変なことになるのは、歴史が教える。今の日本社会に、そのような匂いを感じるのは私だけだろうか。戦前、新聞紙条例・讒ざんぼうりつ謗律に始まって様々な人権侵害がはびこった。最後は、軍部独裁を許し侵略戦争への道に突進する。「戦争が廊下の奥に立ってゐた」(渡辺白泉:1940年)そのようなことが起こらないとは誰も言えない。
(藤本泰成)

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