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2019年10月01日

「冷静」を失うな─ 扇動に乗ってはならない

 8月3日、メキシコ国境の町エルパソの大型店舗ウォルマートで、男が銃を乱射して20人が死亡する事件が起きた。男は犯行後「メキシコ人を狙った」と述べた。事件直前にはオンライン掲示板に「これは、テキサス州に来るヒスパニックの『侵略』に対する行動だ」と書いている。ネイティブから土地を奪った移民のアメリカンが、今度は新しい移民は出て行けというのか。全ての人々に開かれた自由な社会がアメリカではなかったのか。

 「国境に壁を」と主張するトランプ大統領も、さすがに「わが国に憎悪(ヘイト)の居場所はない」と主張しているらしいが、そもそも「移民による侵略」はトランプ大統領の常套句ではなかったのか。「人種差別と白人至上主義は非難されなければならない」と述べたとされるが、つい最近も、トランプ大統領を批判する、非白人の民主党新人議員に対して「米国が嫌なら国を出て行け」と発言している。トランプ支持者の中では「LoveitorLeaveit」の文字が、胸や背中に躍っているらしい。「憎悪」をあおり立て、真実を隠し、支持を集めるのは、為政者の常套手段だ。危険な手立てに乗ってはならない。

 日韓対立で揺れる日本でも同様だ、安倍首相は、自己の考えを主張するだけで話し合いなどとは考えず、日韓の歴史と文在寅政権の成り立ちを理解しない。週刊ポストは「厄介な隣人にサヨウナラ韓国なんて要らない」「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」などの見出しで、日韓対立を扇動するかの記事を掲載した。他も似たり寄ったりで、冷静な記事や発言を見つけるのは難しい。韓国ソウルの繁華街ホンデでおきた韓国人男性による日本人女性暴行事件を、あたかも日韓対立の中で起こったかのように取り上げ、中には「韓国人女性が来たら暴行しなくては」と堂々と発言したバカもいた。

 福沢諭吉が、明治18年、時事新報に掲載した「脱亜論」は有名だが、その後の日本の歴史を顧みなくてはならない。朝日新聞の世論調査では、韓国に嫌悪の感情を抱く人は、高齢者ほど多く、18才から29才では好きが上回るが、50歳以上では圧倒的に嫌いが多く70歳以上では41%に上っている。私も含めて、高齢者こそが日韓の将来に責任を持たなくてはならないのではないか。日韓の歴史を、日韓の今を冷静に見つめ直すことが大切だ。為政者の、マスコミの、扇動に乗ってはならない。
(藤本泰成)

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