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2019年11月01日

台風一過、気候変動に関心を─ 私たちは環境破壊の瀬戸際にいる

9月9日、10月12日、首都圏は史上最強とも言える台風の直撃を受けた。被害は甚大で、日常生活を取り戻すまでには相当の期間かかるかもしれない。被災者の苦労はいかばかりか。自民党の二階俊博幹事長は、台風19号の被害について「まずまずの被害に収まった」と発言し、批判を浴びている。被災者の痛みを感じることのない人ごとのような発言は、批判されて当然だが、日本社会全体がこのような気候変動ともいえる状況に、余りにも無関心だったのではないだろうか。

日本の平均気温は、徐々に上昇している。特に1990年代以降、高温となる年が頻出し、真夏日は10年で0.6日増加し、猛暑日も1990年代後半から特に増加している。文科省、気象庁、環境省のまとめを見ると、このまま気温上昇が続くなら今世紀末には日本で真夏日が最大で2.1倍、熱帯夜は3.3倍になると予測されている。日本が、亜熱帯に分類され、東京都内でもマラリヤが蔓延する日も遠くない。そんなことも想像される。

EU議会では、フランスのマクロン大統領が、EU加盟国は2050年までに温暖化ガスの域内排出量を実質0にすることを提案し、ドイツのメルケル首相も、2021年から28年のEU共通予算の4分の1を気候変動やエネルギー効率関連に向けることを支持している。気候変動の危機を訴えて座り込みを続けてきたスウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)に触発された若者の「学校ストライキ」は、日本も含めて世界125カ国2350都市に及んだ。

国連の温暖化サミットで演説したグレタは、「私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです」「なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」と、きびしい口調で述べ「未来の世代の目は、あなた方に注がれている」と、対策の強化を訴えた。

歴史的台風が日本を襲い、未曾有の被害が出ているにもかかわらず、気候変動への日本人の関心は鈍い。そして政治家から根本的な対策をとの声を聞かない。温暖化サミットには、国連グレーテス事務総長の呼びかけでドイツのメルケル首相など、約60カ国の首脳級が出席した。日本は就任したての小泉進次郞環境大臣が出席したが、具体策を提起できなかった。原発が駄目なら石炭火力と易きに流れる日本は、若者の声にどう答えるのか。その声は、私たち日本の市民社会にも向けられている。
(藤本泰成)

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