2014年、ニュースペーパー

2014年01月01日

ニュースペーパー2014年1月号



食とみどり、水を守る全国集会
 食の安全・安心や農林業の再生、森林や水などの環境保全の政策と運動について討議するために、毎年各県持ち回りで開催されている「食とみどり、水を守る全国集会」は、今年45回目を迎え、11月29日~30日に仙台市内で開催され、全都道府県から850人が参加しました。2011年3月11日に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた現状や、今後の復旧・復興に向けた取り組み、隣県の福島原発事故の問題や及ぼす影響など、現地の関係者を含めて多面的な討議が行われました。また、山場を迎えた環太平洋経済連携協定(TPP)に対しても、国民合意のない交渉妥結に強く反対することが決議されました。
 「被災地の復興・再生の現状と課題」をテーマに、2コースのフィールドワークも行われ、仙台市内沿岸部では津波に襲われた地域を中心に、仮設住宅やガレキ処分場、農業施設などを視察しました。また石巻市周辺では、工業港の被害や再開された加工団地・市場、多くの子どもたちが犠牲になった小学校などを視察し、参加者は改めて被害の大きさを実感しました。(写真は被災した大川小学校跡地)

インタビュー・シリーズ:85
子どもは未来をつくる、大人は今をつくるもの
福島の高校生平和大使に聞く


吉田有沙さん

―高校生平和大使に応募したきっかけは?
吉田有沙:人前で話すのが苦手だったんですが、3.11があって以降、福島の現状を伝えたい、風化させたくないという思いがありました。先生方の勧めもあり、平和大使に応募しました。大使に選ばれてから、家族、友達、学校も本当に協力してくれていて、周囲の環境に感謝しています。私は元々、人前で話すのが苦手でした。それに、3.11を体験して、失ったものもあるし、最初は自分の経験を話しているだけで辛くて泣いてしまうこともありました。
仲野瑞保:家族が生協に加入していて、生協の総会で原発について発言したことがきっかけです。私の発言を聞いた理事長さんが平和大使募集のことを教えてくれたんです。めったにないチャンスだと思い、応募しました。これまで平和活動などはしたことがありませんでしたが、原発事故を経験して、福島に住んでいるからこそ、何かしなくちゃという気持ちが強くありました。
髙野桜:私は生徒会長をしていて、他校との交流をしようと考え、何かそういったプログラムがないかと探していました。学校宛に届いたパンフレットの中に、「被災地の現状を伝えよう」という文言のあるパンフレットがあり、それが平和大使募集のパンフレットだったんです。周囲の反応としては、父はすごく応援してくれました。また、母や友達は、国連訪問などという活動規模の大きさに驚いていましたが、平和大使としての活動を応援してくれたので、本当に活動し易かったです。


仲野瑞保さん・髙野桜さん

―高校生平和大使に就任する前と後で、心境の変化などはありましたか。
吉田:3.11前は、特に何も考えていませんでした。原発に関しては、福島にあるんだ、とかそのくらいのことしか考えていませんでした。平和大使に就任してから、被爆地から少し離れた場所に住む私たちは戦争のことや、核兵器のことについて、学んでいることが少ないなと思いました。九州の人たちや広島の人たちは知っているのに、自分は全然知らなかったなと。就任してからの、この半年で、原爆被爆者の方など色々な方の話を聞いて、学んできました。やっぱり経験をした地域の方はすごく良く知っているなと思いました。そして、話を聞いて、過ちを繰り返してはいけないなと強く思いました。反対に、福島のことを他の地域の人は知らないと思うので、体験している自分が周りに伝えていきたいです。
仲野:最初は、原発も原爆も、戦争についても全くと言って良いほど何も知りませんでした。自分の生活になんの関心も持っておらず、原発に関しても福島にあるということ以上は知ろうともしませんでした。事故の時、テレビで原発が爆発しているのを見て、とても福島で起きていることだとは思えませんでした。平和大使として長崎・広島の資料館を訪れた時、原爆症などの写真を見て、自分の将来を考えずにはいられませんでした。原爆は人を殺すものとして、原発は平和のために利用することが目的ですが、結果的に核の力で人が傷つけられているのは同じです。日本人として、原爆の怖さは知らないとだめだと思うし、福島という地にいるからこそ、同じ被爆者として核兵器は廃絶すべきだと訴えていきたいと思います。
髙野:平和への関心は、戦争はだめだと思う程度でした。小学校低学年のころに祖母から戦争についてまとめられた本を見せられたことがあります。その記憶があって、どこかで平和について考えることを拒んでいたのかもしれません。平和大使として長崎に行き、資料館で学んで、核は絶対になくさなきゃいけないと思いました。長崎と福島とは距離があるので、その分、福島は核や戦争に対しての意識が低いと思います。そういうことからも、伝えていかなくちゃいけないんだな、伝えることが大切なんだと。

―平和大使として活動した中で、印象に残ったことはありますか?
吉田:私は、3月11日が中学の卒業式だったんです。式が終わってから数時間後、震災に遭いました。翌日に避難して、その時は、どうせすぐに帰れるんだろうと思っていました。その後、数か所を移動しながらの避難生活となりました。それからしばらくしてから平和大使になって、長崎に行って、色々な人と出会いました。そこで、長崎の人は福島のことを思ってくれている、被曝について、原爆と原発とは違うけれど、それでも福島のことを思ってくれていると感じられて嬉しかったです。また、「平和とは人の痛みのわかること」という被爆者の方の言葉が今も心に響いています。
仲野:スイスでの街頭署名活動が印象に残っています。学校では、被曝のことを友達と話すことがほとんどありません。友達は、話すことで自分たちを被災者、被曝者であると認めることが嫌なんだと思います。スイスで署名活動をしていて、「福島から来ました」というと、相手の目つきが明らかに変わるのがわかりました。それは、日本を出て初めて味わった感覚で、〈ああ、私は立派な被曝者なんだ〉っていうことを、思い知らされた瞬間でした。福島以外の人、日本以外の人が見ているのは福島ではなくフクシマなんだなと思います。
髙野:平和大使としてブラジルに訪問しました。そこで交流会をしました。ブラジルの高校生は、日本のこと、福島のことについて情報が少なく、みんなメモを取るなどしてきちんと話を聞いてくれました。そして、政府は何をしているんだ、日本は問題があっても、先送りにして隠そうとすると逆にブラジルの人が怒っていたんです。ブラジルの被爆者の問題も同じで、今取り組むべき問題を先送りして風化させようとしているという声を聞きました。

―平和大使同士の交流はどんな感じですか?
吉田:かなり仲良いと思います。「今日はどこどこで講演して、こんな話をしたよ」といった連絡が来たりします。学校では、原発について話はしないのですが、長崎に一緒に行った平和大使同士では良く話をしました。だからこそ、九州や広島の子は原爆について良く知っているのに、被爆地から少し離れた場所に住む私たちは全然学んでいないってことに気付きました。もちろん、まじめな話だけでなく、お互いにお誕生日のお祝いをしたりして、普通に友だちとしても仲良くしています。
仲野:友だちが増えたなって思います。私はまだ高校一年生なのですが、高校三年生の大使が、壁は作らない方が活動しやすいと提案してくれて、敬語なしで話しています。他の地域から選ばれた大使から、話が聞きたいと言われてホテルの部屋に集まって話したりしました。みんな、本当に意識が高いんです。また、大使として発表することなどは、全体的な方向性は20人で決めていますが、それ以外は各個人に任されています。だからこそ、私は福島から選出されたということに意味があると思って発表をしています。
吉田:私は後輩たちへのアドバイスを。もっと活動の幅が広がるように、積極的に活動をしていってほしいと思います。平和大使以外の友達も、話をしているうちに意識が変わってきたので、みんなにも頑張ってもらいたいです。

―今の福島の現状をどう思いますか?
吉田:3.11から二年以上経っているのに、震災後そのまま、何も変わってないことに怒りすら感じています。浪江町に戻りたいかと聞かれるのですが、今の姿のままの浪江町には戻りたくないです。私は、3.11前の浪江町に戻してほしいんです。
仲野:福島にいると、原発関連のニュースは毎日やっているので、慣れてきちゃうんです。汚染水のことが話題になっても、「またか…」って思う程度になってしまいます。それと、長崎に行って驚いたのですが、脱原発の座り込みを定期的にやっていました。福島では、自分たちが被曝したのに、声を上げることが少ないと思います。自分たちにしかわからないことがあるんだから、もっと声を上げていくべきだと思いました。
髙野:故郷についてですが、このままでは住めないなと時間が経過するほどに思います。故郷には戻りたいけど、今の故郷には帰りたくないです。そして、私は大学の友達とも、平和や原発の話をすることもありますが、周りとの温度差を感じてしまいます。郡山はまだ線量が比較的高いので、県外から来ている子でも、ある程度わかって福島に来ているんだろうと思って話してみると、みんな全然知らなくてびっくりします。放射線量を計測するモニタリングポストを見て、ソーラーパネルだと思っていた友達もいたくらいです。

―最後に、一言お願いします。
吉田:子どもは未来をつくるもので、大人は今をつくるものだと思うんです。だからこそ、今、辛い思いをしている人がいることを忘れないでほしいです。福島の現状を知る機会はなかなかないのかもしれないけど、二年過ぎて過去のことになっていても、福島では現在のことなんです。今をつくる大人だからこそ、間違った選択はして欲しくないです。
仲野:原発に限らず、とにかく関心を持ってほしいです。多くの人が原発に対して関心を持って自分なりに考えて行動していたら、原発事故は起きなかったと思います。受け身だと何も情報は入って来ません。知りたい、分かりたいという気持ちを持つことが大切だと思います。
髙野:福島の現状を知ってほしいです。忘れられてしまったとしたら、また同じことが繰り返されてしまいます。自分たちが体験してきたことを無駄にして欲しくないんです。今の福島を、自分たちのこととしてとらえてほしいです。

吉田有沙 第16代平和大使 福島県立小高工業高等学校3年
仲野瑞保 第16代平和大使 福島県立安積高等学校1年
髙野桜  第15代平和大使 日本大学工学部1年

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2014年 共生と連帯で希望をつくろう
フォーラム平和・人権・環境 代表 福山 真劫

安倍政権の暴走が止まらない
 安倍晋三内閣は臨時国会では院内の数の力を背景に国家安全保障会議(NSC)法、特定秘密保護法を国民世論を踏みにじりながら強行成立させました。特定秘密保護法は、政府・権力者の悪行を隠すことです。この法律の本質が徐々に国民の前に、明らかになるにつれ、短期間で国民の怒りの声は全国各地に拡大し、国連人権高等弁務官の異例の懸念表明までありました。しかし彼らは、いち早く次の狙いを沖縄名護市辺野古への米軍新基地建設、国家安全保障基本法の制定と定めて着々と画策しています。
 安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」を旗印に右翼系の人たちを中心に構成されており、米議会報告でも「安倍は国家主義者で右翼の国粋主義者の政治家を閣僚に任命し、民族主義的思想や歴史修正主義に基づいた言動や政治」とされています。彼は第2次世界大戦の多くの犠牲者の上に、世界と日本との民衆の平和への願いを体現して作られた「日本国憲法」に基づく「平和と民主主義の体制」を見直し、反対する勢力を分断、抑圧し、懐柔しながら、「戦争をする国・軍事大国化」をめざして、暴走を続けているのです。
 また日本は、表面上の豊かさの陰で、貧困と格差社会が確実に進行・深刻化しています。そして曲りなりにも、雇用と賃金水準が保障されている大企業労働者、公務員労働者へも合理化の波が襲い、彼らの「豊かな生活」を揺るがそうとしています。
 この中で安倍政権は、勤労者層を支配するため、さまざまな分断を持ち込み、固定化を図り、公務員攻撃を行いながら、それぞれの抱える貧困と不安と怒りを偏狭なナショナリズムの中に包摂・統合しようとしています。これに対抗する思想と戦略は、共生と連帯です。建前としての共生・連帯ではなく、一歩、二歩と踏み出すことが求められています。「ファシズムへの足音」が聞こえるという危機感を共有したいものです。


12月6日、日比谷野外音楽堂での秘密保護法反対集会

安倍自公政権と対決を
 世界はもう一度国連を中心に平和を作り出さなければなりません。米国の「軍事力と経済力」による世界支配は、米国内の金融危機、財政危機と米国の仕掛けたアフガニスタン・イラク戦争の泥沼化、中東全体の混乱の深刻化などから、後退を続けています。
 東アジア各国でも経済のグローバル化と貧困と格差社会の進行の中で、国内矛盾が激化し、権力者たちが自らの権力を維持するため、偏狭なナショナリズムと強権的政治を行い、国民の目を外に向けさせるようになっています。それゆえ東アジアでの緊張が高まり、不測の事態が生じることが予測されます。
 そうした情勢の中で、この時代を生きるものとして、平和フォーラムが果たさなければならない役割はますます重要となっています。
 世論調査では、安倍政権・自民党への支持率は依然として高く、野党への支持率は低いままとどまっています。しかし安倍政権の政策が支持されているわけではありません。民主党政権への失望とアベノミクスとオリンピック景気への期待によるバブルで支持率が高いだけです。特定秘密保護法の強行採決以降、各種世論調査による安倍政権の支持率の低下は明らかです。12月の共同通信の調査によれば支持率47.6%、不支持率は38.4%と急接近をしています。また地方自治体の首長選挙でも自公政権系候補は負け続けています。今後消費税導入による国民生活の深刻化、TPP交渉の行方、貧困と格差社会の進行、東電福島事故の深刻化、震災復興の遅れの深刻化、原発推進路線への転換、辺野古新基地建設推進、国家安全保障基本法の強行と続けば政権への支持率は一挙に低下することが予測されます。
 安倍の狙いは、国家安全保障基本法、憲法改悪です。私たちがその流れに抗して闘わなければ、また闘いに負ければ、憲法改悪、ファシズムへと確実に突き進みます。しかしその道は国民が求めている方向ではありません。私たち国民が傍観者をやめ、それぞれの持ち場で、労働団体や市民団体、大衆運動が総結集して闘えば、必ず平和と民主主義の新しい時代をつくることができます。

2014年の主要課題は何か
(1)憲法の危機に一大国民運動を
 米国は、自衛力の強化と集団的自衛権行使の合憲化を日本政府に求め続けてきました。その内実は、自衛隊が米軍の指揮下で中東から東アジアまでを視野に闘うということです。日米軍事同盟体制は確実に新しい段階に入り、憲法9条は確実に有名無実化されます。日本は2000年代に入り、日米同盟を機軸に、米軍再編成に協力し、自衛隊は米軍との指揮権の統合をさらに図り、共同軍事訓練、共通の兵器・弾薬使用、情報の共有化を急速に進め、自衛隊の米軍への従属がかってないほど進みました。その上での、集団的自衛権行使の合憲化です。
 安倍は、内閣法制局長官を差し替え、イエスマンばかり集めた安保法制懇に答申を出させ、外堀を埋め、公明党を恫喝と懐柔で巻き込み、閣議で解釈を変更し、国家安全保障基本法提案へ進もうとしています。野党の中でも賛成の議員、政党があります。憲法は最大の危機を迎えています。
 しかし、国民の多数派はこれに反対です。国民の圧倒的多数を結集する運動を組みたてれば必ず勝利できます。私たちは、従来の平和フォーラム中心の運動から連帯の輪を大きく拡大して、「さようなら原発1000万人アクション」の取り組み、「ゆるすな特定秘密保護法」の取り組みで、安倍政権と対決し、従来にない運動の高揚作り上げていますが、安倍政権の政策を転換させるところまでは、追い込めていません。政策転換を勝ち取るためには、より大きな大衆運動を基礎に総合的な取り組みを作り上げる必要があります。より大きな大衆運動を取り組むための実行委員会を全国各地でつくる。そして署名運動では、家族や街頭署名活動を超えて、地域に出て、戸別訪問し、署名を集めるなどして、1000万筆を集めよう。集会も全国各地で取り組み、地方・中央の連鎖した大集会に取り組もう。政府・霞が関・国会包囲のあり方も工夫しよう。そして何よりも個々人が「危機意識」を共有し、傍観者にならず、安倍の暴走に直面している時代を生きているものとして、責任を果たそう。労働団体、すべての団体、市民の総結集を作ろう。野党にも奮闘してもらおう。そうすれば暴走を止めることは可能です。
 力をあわせて、勝てる布陣を構築し、総力をあげて、集団的自衛権行使の合憲化阻止・国家安全保障基本法反対・戦争する国づくり反対・憲法擁護の一大国民運動を構築しよう。

(2)基地問題で奮闘する沖縄への連帯
 2013年1月28日、沖縄県の全自治体の首長と議会議長たちが東京に結集し、安倍首相に、オスプレイの配備反対、普天間の移設は県外へという「建白書」を提出しました。県民上げての闘いが続けられているにもかかわらず、「4・28主権回復の日」が挙行され、オスプレイの強行配備、辺野古への新基地建設は止まっていません。自民党政権は沖縄へのあめとむちの政策を一段と強化しようとしています。当面、1月19日投票の名護市長選挙が焦点です。現職稲嶺市長の圧勝を勝ち取り、辺野古基地建設阻止を確かなものにし、基地のない平和な沖縄めざして、奮闘する沖縄と連帯しよう。

(3)福島に連帯し、原発再稼働を許さない
 東電福島原発事故が発生してから、間もなく3年になろうとしています。しかし事故の収束は見えず、放射能が拡散し続けています。福島の仲間たちが、「東北の鬼」と表現したように福島の怒りは拡大し続けています。
 そうした中で政府は、エネルギー政策を原発推進に方向転換しようとしています。絶対に許せません。福島の被災者・被曝者たちの課題、事故収束への道筋の確立、原発・核燃サイクル路線からの撤退、原発再稼働阻止をめざしてがんばりましょう。
 さようなら原発1000万人実行委員会の取り組みで、署名も840万を集め、集会も全国各地で取り組まれています。東京では3月、9月大集会を予定しています。福島に寄り添った取り組みを全力で頑張ろう。

(4)戦後補償など多くの課題
 ヘイトスピーチ・ヘイトクライムが街頭で、ネット上で響き、在日、少数者たちを傷つけ、民主主義を壊し続けています。この犯罪の背景に、アジアでの危機あおりと朝鮮・中国差別政策を続ける安倍自公政権の影響があることは確実だと思われます。
 人権問題について、国連機関からの日本政府への改善を求めての勧告、定期審査、特別報告が続いています。
 私たちは、日本政府の加害責任を自覚し、日本軍慰安婦、強制連行・労働補償、被爆者補償など戦後補償を確実にし、国連水準の人権を確立する必要があります。
 貧困と格差社会の進行、消費税の導入、競争の激化、社会保障制度の改悪など国民生活が深刻になっています。
 とりわけ貧困と格差の拡大は、深刻です。年間所得が200万円以下の世帯は1200万世帯、雇用の不安定な非正規社員は増加を続け、雇用者数のうち35%に、また職場では競争に明け暮れ、長時間労働、不払い労働が常態化しています。生活保護世帯は、増加続け150万世帯、自殺者は2012年に27858人に減少したとはいえ1988年から2011年まで毎年3万人を超えています。こうした中で、児童虐待、いじめも増え続け荒涼たる風景が私たちの目の前に展開しています。国民が安倍政権に求めるものはこうした事態の打開です。「ファシズムへの暴走」など誰も求めていません。平和フォーラムはこうした課題の解決をめざして、全力で奮闘します。
 野党、労働組合、関係団体、市民の奮闘を期待します。とりわけ非正規労働者の課題については、ナショナルセンターの連合には頑張ってほしい。最大の勤労者の味方であることを看板に掲げているのだから。
 民主党、社民党、はその存在が問われています。自民党や維新の会などにすり寄る野党はいりません。平和・民主主義・脱原発・憲法擁護を対抗軸にする野党に期待し、立憲フォーラムのこの間の奮闘を高く評価します。
 そして、もう一度希望の膨らむ新しい時代をめざして力を合わせましょう。

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仙台で「第45回食とみどり、水を守る全国集会」開かれる
震災復興をめざす杜の都からの発信!
TPP反対で決議も   

復興への課題さぐるシンポ、収束しない原発事故
 「第45回食とみどり、水を守る全国集会」は東日本大震災からの復旧・復興のあり方を大きなテーマに開かれ、「復興ビジョンの理念と現実的課題~復興から復幸に向かって今なすべきこと」と題した全体シンポジウムでは、特に農業面での復旧・復興に焦点をあて、農業関係者や報道機関、自治体議員などから、震災当時の状況や復旧の現状、これからのありかたなどをめぐって論議が行われました。
 有限会社として大規模な農業生産をする「耕谷アグリサービス」の佐藤富志雄代表は「津波により経営面積の9割が浸水したが、自己負担を覚悟し、周辺の農家を含めて早期の復旧をはかってきた。今後も地域農業を支えていきたい」と語りました。
 農業団体の取り組みについては、JA仙台の渋谷奉弘・震災復興推進課長が被害状況を説明し、特に被害の大きい仙台市荒浜地区の再生に向け「震災前の農業に戻すのではなく、次世代が農業を希望するような転換が必要だ」など、今後の展望を述べました。
 報道機関として長期にわたり取材をしてきた、地元紙・河北新報の論説副委員長の佐々木恵寿さんは、同紙の「東北再生への提言」で「仙台平野の先進的な農業再生」として、「都市近郊型の地域営農を促進するため効率的で持続可能な地域農業の展開が求められている。そのための集落コミュニティーをどう再生するか、復興まちづくりとのリンクなどが課題だ」と提起しました。
 さらに、消費者との提携を続ける生産組織「大郷みどり会」の西塚敦子さんからは「震災復興に名を借りて、大規模な農業の工業化が進められている。そうした企業農業に食を依存するのは問題だ」と語りました。
 最後に、コーディネーターの東北大学教授の工藤昭彦さんから「復興はまず自力から始まり、複幸への希望を後押しする地域や行政、団体との連携が大事だ。また、農業は地域の絆を形成してきた。震災復興で、その社会的共通資本をどう維持するかが課題だ」とまとめられました。
 一方、「福島原発事故と環境エネルギー政策」をめぐっては、郡山市民フォーラムの柳田向一さんが「福島原発事故の現状と課題」について報告。いまなお、事故の収束の展望も見えない中で、除染した土の保管場所もなく住民間のトラブルもおきている状況や損害賠償の不備などを指摘しました。また東北大学大学院の長谷川公一教授は「今後のエネルギー政策のあり方」で、原発を再稼働させようとする動きなどを指摘し「原発ゼロ社会」への課題を訴えました。


農業復興に向け討議するシンポジウム
(11月29日・仙台国際センター)

TPP・グローバル化の対抗軸としての地産地消
 TPPに対しては、TPP阻止国民会議事務局長で前衆議院議員の首藤信彦さんが「TPP交渉は問題点が多く残されており、年末までの妥結ができるかはまだ不透明だ。しかし、アメリカは強引に交渉をまとめようとしており、日本の追随姿勢も問題だ」「TPPの目的は自由貿易拡大ではなく、各国の制度のアメリカ化だ」として、国民運動の展開と各国との連携で交渉妥結を食い止めようと呼びかけた。
 「TPPに反対する人々の運動」共同代表の菅野芳秀さんは「TPP反対だけでなく、循環・自給・参加・自立を条件とした対案を出していこう」と、「対抗軸としての地域自給圏構想」を訴えました。また、宮城県内で生協の共同購入運動を進める「あいコープみやぎ」顧問の吉武洋子さんも「グローバリズムは弱肉強食の代名詞だ。地産地消をグローバル化の対抗軸としたい」と述べました。
 一方、多角的な農業生産を展開する「有限会社伊豆沼農産」の代表の伊藤秀雄さんは、「農業・農村を守れだけではなく、国民の食料、環境を守ることを呼びかけるべきだ」と提起しました。こうした議論を踏まえ、集会では「TPPの妥結・参加に強く反対する決議」も採択されました。

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川内原発再稼働阻止へ向けて
市民との連携を強めて脱原発を
鹿児島県護憲平和フォーラム副事務局長 山崎博

九州電力が申請。甘い活断層評価に批判
 原発の新規制基準が施行された2013年7月8日、九州電力(九電)は川内1・2号機の原子炉設置許可変更申請を原子力規制委員会に行なった。原子力規制委員会は「新規制基準」に適合するか審査を進めているが、九電の耐震評価などの工事計画資料提出が12月中旬とされていることなどから、規制委員会の適合性審査結果が明らかになるのは年明けになると見込まれる。
 国の地震調査研究推進本部(「推本」)は2013年2月に「九州地方の活断層の長期評価」を公表したが、川内原発周辺の活断層の長さを2倍に、地震の規模を最大11倍に評価するとともに、活断層が川内原発に延びている可能性も指摘し、九電の評価を「断層の存在を全く無視」(議事録より)しているなどと酷評した。しかし九電は「推本」評価を踏まえても、従来の耐震評価を変える必要はないと適合性審査会合で強弁している。


ストップ再稼働!川内集会のデモ行進
(12月15日・薩摩川内市)

切り捨てられる周辺自治体の反対の声
 規制委員会が「規制基準」に適合するという判断を下したら、国による住民説明会が薩摩川内市など複数箇所で開催される予定だ。鹿児島県は国による説明内容に理解が得られたかなどについてアンケート調査を行ない、判断材料にする意向である。
 UPZ(原発30㌔圏・緊急防護措置区域)内の姶良市が2013年10月12日に「県民の安全が担保されない拙速な川内原発1・2号機の再稼働を許さない決議」を、出水市が11月25日に「川内原子力発電所1、2号機の再稼働に対し慎重な対応を求める意見書」を採択した。しかし鹿児島県は、川内原発再稼働にあたっては、鹿児島県と薩摩川内市のみの同意で足りるとし、UPZ内の8市町など「被害自治体」の声を切り捨てようとしている。
 しかも鹿児島県知事と薩摩川内市長は、「安全性の確保が大前提」と言いながら、その判断は原子力規制委員会に丸投げし、住民の安全確保に責任を果たそうとせず、原発再稼働に前のめりとなっている。
 鹿児島県知事も薩摩川内市長も、UPZ内のお年寄りや子どもたちなどの「要援護者避難計画」策定は、原発再稼働の同意要件にはならないと公言している。「要援護者避難計画」は、薩摩川内市のPAZ(原発30㌔圏・予防的措置範囲)内で策定されただけで、9市町全てのUPZ内で策定の目途が立っていない。原発事故の際の要援護者の生命と安全には関知しないということであり、絶対に容認できない。

監視行動、自治体要請で再稼働反対の声を
 2013年10月11~12日、福島原発事故後初めての国の原子力総合防災訓練が、「実時間実働訓練」と「国・自治体・事業者間の連携強化」を特徴に、川内原発を対象に行われた。県護憲平和フォーラムは、34人が2日間で20班に分かれてチェックリストを活用しながら監視行動をおこなった。
 この監視行動で明らかになった放射性物質の拡散予測情報を住民が直接アクセスできるようにすること、PAZ内住民の「ゼロ被曝避難」、UPZ内住民の早期避難準備など、さらには原発20㌔圏内の2市とは「主要設備の変更」の事前説明に「意見を述べることができる」とする「協定」を結びながら、同じUPZ内の5市町とは情報連絡にとどまっている「協定」しか結んでいない問題点などを指摘。11月22日~12月3日まで、鹿児島県知事とUPZ内9市町長へ「川内原発の拙速な再稼働に反対し、原子力防災の充実を求める申入れ」を行なった。
 県護憲平和フォーラムと社民党などによる「川内原発増設反対鹿児島県共闘会議」と「川内原発建設反対連絡協議会」は、11月9日と23日、12月7日に薩摩川内市民へ「川内原発のこと考えましょう!」のリーフレットを持ち、2,917世帯に声を掛けて意見を聞きながら、12,772世帯に配付した。原発関係企業で働く人々が身近にいるだけに、声を上げづらいなかでの「原発はないほうがいいのだけれど・・・」という言葉に含まれる、雇用や地域経済への不安をしっかり受け止めながら脱原発社会づくりが求められている。
 12月15日には市民グループのみなさんとともに「集まろうストップ再稼働!12.15in川内」集会を薩摩川内市で開催し、1,800人が参加し、市内をパレードした。2014年3月16日には、鹿児島市で再稼働阻止大集会を開催する予定にしている。
(やまざきひろし)

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「被爆二世シンポジウム2013」を開催
国は実態調査をして不安の解消を
全国被爆二世団体連絡協議会 副会長 寺中正樹

再び被爆者をつくらないために立ち上がる二世
 11月30日に「被爆二世シンポジウム2013」が広島平和記念資料館で全国被爆二世団体連絡協議会(二世協)の主催で開催された。全国から約100名の被爆者、被爆二世、市民が集まった。パネラーは、坪井直さん(日本被団協常任理事・広島被団協代表)、鎌田七男さん(広島大学名誉教授・倉掛のぞみ園園長)、振津かつみさん(兵庫医科大学准教授・医師)、平野伸人さん(全国被爆二世団体連絡協議会前会長)。
 被爆から68年が経って被爆者の皆さんが高齢化され、被爆者団体の運営や活動の継承ということが課題になるなか、各地で被爆二世の会ができつつある。二世協は1988年に結成し、被爆体験を継承しながら、再び被爆者をつくらないために、戦争をおこさないために、被爆二世自身の問題を取り組んできた。このシンポは、各地の団体とともに運動を行い、核問題、被爆二世問題を解決しようと開かれた。
 パネルディスカッションでは、坪井直さんが、被爆体験を話された後、「被爆者は短命で、何年後にどのようなことがおきるかわからないというので、就職差別、結婚差別があった。被爆者ということを隠す人もいた。私の子どもが10代の頃、遺伝的影響を心配し、落ち込んでいたことがある。私は子どもに被爆したときの話をし『お父さんも頑張って前向きに生きてきた。お前も頑張ってくれ』と励ました。私は被爆体験の話を40年間おこなってきた。昨年から被団協の中に被爆者二世の委員会ができるようになった。遅きに失した感があるが、二世の側からみた核の問題を突き出して欲しい」と語った。
 鎌田七男さんは、「厚労省が試算した被爆二世の数は32万人で、広島県内の原爆被爆2世の数は1973年時点で119,331名であった。広島で被爆後に生まれた子どもの白血病罹患率は、被爆後10年以内に生まれ、かつ、両親ともに2km以内で500ミリシーベルト以上被爆しているか、3日以内に入市被爆の場合、それぞれ片親の被爆の場合に比べて高くなっている。このデータを公表するかどうかでかなり迷ったが、被爆二世の施策に繋げるために公表した」と報告した。

フクシマと連帯して国家補償を求めよう
 振津かつみさんは「放射線影響研究所の調査では放射線の遺伝的影響は被爆二世に今のところ認められないという。しかしマウスの実験をみれば次世代以降にもガンなども含めて遺伝的影響があると証明されている。私は人間にはまだ出現していない段階なのかと思っている。そういった意味で、鎌田さんの研究は重要だと思う。また科学的に証明できていないからと言って影響がないとは言い切れないはずだ」と指摘した。
 さらに、「原爆は自然災害ではない。原発も同じで、加害者と被害者がいる。加害者が責任を認めて補償をしていくことが大事だ。福島では若いお母さん方が遺伝的影響を心配されている。被災者一人一人と向きあい、丁寧に説明している。二世協の皆さんは被爆者の思いを引き継ぎ、より自覚的に侵略戦争の責任を問いながら二度と核被害をなくしていく、あらゆる核被害者と連帯していく、という困難な課題を取り組んでいる。皆さんの存在意義はフクシマ後ますます大きくなっている。フクシマと連帯し、国の責任を問いながら国家補償にもとづく補償を求めていってほしい」と呼び掛けた。
 最後に平野伸人さんが「被爆二世問題の課題について政府に様々な要求をしてきた。実態調査を要求すると厚労省の担当者は『厚労省は実態調査をすれば援護施策をしなければならなくなるからしない』と平然と言う。国は被爆二世の健康診断を不安解消のためということでしているが、あまりにも簡単な健康診断でガン健診さえないため、不安は解消されていない」と指摘したうえで、被爆二世の問題として、(1)健康問題、(2)放射線による遺伝的影響、(3)社会的な問題、(4)差別や偏見などの人権の問題をあげた。
 参加者からも、被爆二世自身の健康問題が訴えられるなど、活発な質疑応答があり、各地の被爆二世団体の立ち上がりや被爆二世対策に関する自治体調査が提起された。これまでも、中国・九州地区交流会が行われ、二世協、被団協の関係なく二世が集まり交流をしてきた。今後もこうしたシンポジウムや交流を行い、被爆二世運動を牽引していきたい。
 なお、二世協がHPを開設しましたので、ご覧下さい。
http://www.c-able.ne.jp/~hibaku2/
(てらなかまさき)

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「プルトニウム・バランスどうなるんですか」
民主党の原発ゼロの方針を批判する茂木経産相

 茂木敏充経済産業相は12月6日の記者会見で、原発ゼロと再処理計画続行という矛盾した政策を発表した民主党政権を批判し、「じゃあプルトニウム・バランスどうなるんですか?」と問いかけました。再処理で分離されるプルトニウムは元々はもんじゅのような高速増殖炉の初期装荷燃料にして、燃やしながらさらにプルトニウムを生み出す「夢のサイクル」を実現するためのものでした。しかし、この計画が挫折したため、日本は国内に約10トン、英仏に34トン、合計44トンものプルトニウムを抱えています。「国際原子力機関(IAEA)」の計算方法を使うと、核兵器5000発分以上になります。これを減らすために考案されたのが、普通の原子力発電所で「プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)」として消費するプルサーマル計画です。ところが原発をゼロにするとプルトニウムが消費されない。その一方で再処理は続ける。「じゃあプルトニウム・バランスどうなるんですか?」というのは、もっともな問いです。

米国も心配する日本のプルトニウム
 米国も日本のプルトニウムの蓄積について心配しています。鈴木達治朗原子力委員会委員長代理が4月22日の同委員会会合で同月中旬に米国で会った二人の高官の発言を次のように紹介しています。
 トーマス・カントリーマン国務省次官補「核燃料サイクルをめぐって現在日本で行われている議論について、核不拡散や原子力技術の観点から、非常に高い関心を持っている。特に、MOX燃料を使用する原発が存在せず、その見通しもない中で、六カ所再処理施設を稼働することは、米国にとって大きな懸念となりうる。特にイランの核問題や米韓原子力協力の問題に影響を及ぼすことで、米国にとっても困難な事情につながる可能性がある。日本が、経済面・環境面での理由がないままに再処理活動を行うとすれば、これまで日本が不拡散分野で果たしてきた役割、国際社会の評価に大きな傷が付く可能性もあり、状況を注視している」
 ダニエル・ポネマン米エネルギー省副長官「MOX燃料を装荷して、プルトニウムを消費できる原子力発電所がどれくらい速やかに立ち上がるかを大きな関心をもって注視している。今後、消費する予定がないまま、再処理により新たな分離プルトニウムのストックが増えることにならないか大いに懸念を有している」
 また、オバマ大統領は、昨年3月、核セキュリティー・サミットで韓国を訪れた際、外国語大学校での演説で次のように述べています。各種の措置により「国際社会は、テロリスト達が核物質を入手するのをますます難しくした。これは各国を安全にした。しかし、我々は幻想を抱いてはいない。我々は、核物質──何発もの核兵器に十分な量──が未だに適切な防護のないまま貯蔵されていることを知っている。我々は、テロリストや犯罪集団が、今も、核物質を、そして、ダーティーボム用に放射性物質を、手に入れようとしていることを知っている。我々は、ごく少量のプルトニウム──リンゴほどの大きさ──が何十万人もを殺傷し、世界的危機をもたらしうることを知っている。核テロリズムの危険性は、世界の安全保障にとって最大の脅威の一つであり続けている。・・・新しい世代の科学者や技術者が直面する最大のチャレンジの一つは、燃料サイクルそのものである。我々は、みんな、問題を理解している。原子力エネルギーを我々に与えてくれるプロセスそのものが、各国やテロリストによる核兵器入手を可能にしうるということだ。しかし、分離済みプルトニウムのような我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない」

大臣、それでプルトニウム・バランスどうなるんですか?
 原子力発電ゼロを想定せず、早期再稼働を目指す方針にすれば再処理工場運転計画維持政策との間に矛盾はなくなると大臣は言いたいのでしょう。1999年以来ヨーロッパから送られてきたMOX燃料は合計約4.4トン。このうち、実際に原子炉に装荷されたのは約2.5トン。残りの約2トンは原子炉のプールに保管されたままです。ヨーロッパにはまだ34トン残っています。日本原燃は来年10月の工場完成を目指す方針と各紙が報じました。MOX装荷計画のある原子炉の再稼働・MOX装荷が遅れる中、年間使用済み燃料処理能力800トンの六ヶ所再処理工場が動き出せば、毎年約8トンの割合でプルトニウムが増えることになります。大臣、それでプルトニウム・バランスどうなるんですか?

日本の未照射プルトニウム(2012 年末) 単位:トン
英国保管 17.1
フランス保管 17.9
ヨーロッパ保管小計 35.0
六ヶ所 硝酸プルトニウム等または酸化プルトニウム 3.6
東海再処理施設 硝酸プルトニウム等または酸化プルトニウム 0.8
東海燃料加工施設の酸化プルトニウム、
加工中、または製品のプルトニウム、
または、常陽、もんじゅ、高速臨界実験施
設等に貯蔵中の未照射燃料
4.0
フランスからの未照射MOX 燃料内 1.0
国内保管小計 9.3
合計 44.2
日本の未照射のプルトニウム(2012 年末現在)四捨五入の関係で合計は正確には一致しない。2012 年末にフランスにあったプルトニウムの内、0.9 トンが2013 年にMOX のかたちで日本に送られた。また、0.65 トンがドイツのものとして名義が変更され、代わりに、英国にあったドイツのプルトニウム0.65 トンが日本のものに名義変更された。

(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)

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「核問題とウランを考える」(1)
ウラン採掘が核問題の始まり─差別と被害の上にある原子力

被害を受けるウラン採掘労働者と周辺住民
 核問題はいろんな立場からの議論が可能ですが、まず始まりはウラン採掘です。ウラン採掘は、周辺地域の環境を破壊し、そこに暮らす住民を苦しめ続けます。ウラン鉱山で働く労働者はもちろん大きな被害を受けます。ウランが採掘されている各国、各地域での被害はほとんど変わらないといえます。
 そこには先住民差別があり、後進地域への差別があります。この差別の上に原子力発電が存在し、またウラン235濃縮後に残る劣化ウランが、アフガニスタン、イラク、リビアなど、さまざまな地域での戦闘に使われています。ウラン採掘が核の始まりであり、採掘をやめることこそが大きな課題といえます。
 ウラン鉱山といわれていても、ウラン含有率が0.2~1%ほどしか存在しないウラン鉱石を採掘し、それを細かい粉末とし、ウラン含有率60%ほどまで高める精錬(イエローケーキの製造)は、大量の鉱滓を作り出します。このイエローケーキまでの生産過程はどこの国でも同じですから、ウラン採掘が行われている地域は、すべて大量の鉱滓が作り出され、放置されていると考えていいでしょう。
 さらに鉱滓にはウランをはじめさまざまな公害物質が含まれていて、それは飲料水に流れ込み、空中に飛散し人々や生物を汚染し続けるのです。つまり、現在どこで採掘が行われようと、労働者と周辺住民は被害を受け続けていると考えられます。鉱山が長く採掘され続けば、肺ガンだけでなく、さまざまなガンが発症することになります。


2010年の長崎大会でスピーチするピノさん

アメリカインディアン居留地でのウラン採掘
 これまでにアメリカ、カナダ、オーストラリア、インド、ニジェールなどの国々でのウラン採掘による被害と、鉱山労働者・周辺住民の闘い、運動が明らかになってきていますが、まずアメリカ・ニューメキシコ州のウラン鉱山の被害と闘いについて書いていきます。
 この鉱山は筆者が30年も前に訪れた場所でもあります。この地域のアメリカインディアン・プエブロ族アコマのメニュエル・ピノさんが、2010年の原水禁世界大会に参加し、現在の実態を報告しましたが、30年前と状況はほとんど変わっていないことが示されました。
 アメリカで「フォーコーナー」と呼ばれるニューメキシコ、コロラド、アリゾナ、ユタの4州の州境を接して広がるウラン鉱山の開発は、1940年代から80年代にかけて、核兵器や原発に向けての大量のウランを採掘してきたことで知られていますが、この地域にはナバホ、ホピ、プエブロを初めとする多くのアメリカインディアンの人たちが生活している場所でもあります。
 現在、フォーコーナーに存在するウラン鉱山は1000を越えており、なかでもニューメキシコ州サンファン盆地のウラン鉱は米国のウラン埋蔵量の40%を占めるといわれています。発掘当初から鉱山労働者や周辺住民に肺ガンを含む多く被害が出ていることが問題となってきました。鉱山会社はウラン採掘による被害を知っていたにも関わらず鉱山労働者や周辺住民の健康を長年無視し続けてきたのです。

アメリカ開拓史はインディアン虐殺史
 その背景には、アメリカ社会の長年にわたる差別の存在と無縁ではありません。アメリカ開拓史はインディアンの虐殺と征服史ともいえます。コロンブスはアメリカ大陸を発見したことで知られていますが、大勢のインディアンを虐殺し、奴隷として連れ帰ったことは知られていません。
 ウラン鉱山のほとんどがインディアン居留地内に存在し、さらにアメリカ政府によるインディアンの抹殺にも等しい政策が進むという状況のなかでウラン採掘が始まったのです。鉱山会社が最初からインディアン労働者の健康になんの配慮も持っていなかったことが推察できます。1978年に筆者たちが訪れたサンファン盆地にあるカー・マギー社のウラン鉱山は、露天掘りの鉱山跡地になっていて、巨大なすり鉢状の窪地とその近くに放置されたウラン精錬所、精錬後の鉱滓(テイリング)の小山が点在し、さらに鉱山跡地からあまり離れていない場所にナバホ族の住居が存在していました。
 当時、ニューメキシコ州で採掘が進められていた数十のウラン鉱山のうち、露天掘り鉱山は少なくなり、地中での採掘が中心になっていると説明されましたが、鉱山会社は採掘現場のすぐ近くで精錬を行っていて、地下鉱山の周辺にも鉱滓の山がいくつも存在していました。

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各地からのメッセージ
運動の地方センターとして、粘り強い取り組みを!
フォーラム岐阜 事務局長 浅野専市

 フォーラム岐阜は、岐阜県評の解散と連合岐阜の結成に伴い、直ちに連合岐阜に継承することが困難な運動課題の取り組みをすすめることを目的に結成されました。結成後20年経過しましたが、今日の政治・経済情勢の中で役割と課題は増々重要となってきています。現在、自治労、私鉄総連(電車・バス労組)、全農林、森林労連、全国一般などの14労働組合、県中小商工業協会連合会、部落解放同盟、県会議員や市会議員など13人の個人会員で構成しています。フォーラム岐阜の組織としては、公立学校教職員組合の組織化が弱く、各種の国民運動課題の展開が厳しい状況にありますが、県下の7地区労働組合協議会との連携・連帯を強化し、取り組みの全体化を図っています。
 とりわけ、岐阜地区労との協賛による「平和集会・行進」「地区憲法学習会」の開催、「朝鮮人歴史・人権月間講演会」「部落解放講座」を継続してきています。「継続は力なり」を軸として、簡単に諦めることなく粘り強い運動の展開を基本に、今後も取り組みをすすめていくこととしています。
 特に、「さようなら原発1000万署名」活動は、2011年6月以降、毎月第2土曜日を基本に街頭署名活動を展開し、フォーラム岐阜の存在を内外にアピールしてきました。先の特定秘密保護法案反対の取り組みでは、フォーラム岐阜独自での集会を開催しました(写真)。2014年11月に、岐阜の地で初めての護憲大会の開催が決定しております。大会に向けた準備をすすめるとともに、この機会を活かし、新たな個人会員の組織化や市民団体との連携をめざしていきます。

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〔本の紹介〕
歴史物語り 私の反原発切抜帖
西尾獏 著 緑風出版 2013年刊

 原水禁の副議長も務める西尾獏さんの最新刊の本です。タイトルの示す通り、反(脱)原発運動の歴史を西尾さんの体験を通じて、語り口調でわかりやすく書かれた運動史となっています。
 タイトルにもある「原発切抜き帳」とは、もともと1982年の土本典昭さんの同名の記録映画で、当時その制作に西尾さんもかかわった経過があり、それに続くものとして本書は書かれています。たまたま、今年10月に福島の被災地へフィールドワークへ出かけた車中で、30年ぶりにこの映画を見る機会がありました。時がたっても原発の本質は何一つ変わっておらず、ここでの原発への批判や指摘はいまだ色あせていないことがあらためておどろかされました。原発の問題がいまも解決できずにきていることが、原発の本質的な問題であることがわかります。DVDでも市販されていますので合わせて見ていただければと思います。
 夢の原子炉と大きな期待をばらまきながら、国策として強引に推し進め、地域社会を分断し、破壊してきた原発推進勢力。その力に対抗する地域住民や科学者、市民、労働者たちの苦闘の歴史があります。そのことが時代とともに綴られていきます。原水禁もその中で様々な取り組みを住民や市民とともに作りあげてきたことも本書で証言されています。反(脱)原発の大きな流れをつかむには、語り口調もあり肩がこらずに読める本です。
 現在、安倍政権は、エネルギー基本計画を策定し、原発震災前に戻った感のある原発推進政策を強引に推し進めようとしています。しかし、この流れは必ず破たんすることは明らかです。本書が示したこれまでの反(脱)原発の流れをみればそのことの確信を感じることができるはずです。
 最後に「西尾獏」のペンネームの由来やトレードマークのような背広姿がいつからなのか、その「ナゾ」も明かされ、さらに子どものころの写真まで掲載されるなど、西尾獏さんのある種プライベートヒストリーとしても楽しめます。
(井上年弘)

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核のキーワード図鑑


秘密保護 戦にNOも 言えぬ国(橋本勝)

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平和フォーラムブックレット
『憲法・集団的自衛権・自衛隊を考える』

 安倍晋三政権の下で、憲法改正・集団的自衛権の行使容認・自衛隊の海外での武力行使の合法化が進もうとしています。これらの問題に関する理解を深めるために、平和フォーラムと全国基地問題ネットワークは、ブックレット『憲法・集団的自衛権・自衛隊を考える』を発行しました。
 来年の通常国会では、集団的自衛権の行使容認とそのための「安全保障基本法案」の審議が大きな柱になります。学習会などに最適なブックレットですので、ご活用ください。

  1. A5版88ページ頒価:1冊200円(送料別)
  2. 内容:第1章日本国憲法について考えてみよう/第2章自民党の憲法改正草案を見てみよう/第3章集団的自衛権について考えてみよう/第4章自衛隊について考えてみよう
  3. 申込み:フォーラム平和・人権・環境事務局
    (電話03-5289-8222、FAX03-5289-8223)

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