2014年、ニュースペーパー

2014年12月01日

ニュースペーパー2014年12月



憲法理念の実現をめざす第51回大会
 「『戦争をさせない』私たちは平和主義を、そして命を守ります!憲法理念の実現をめざす第51回大会(護憲大会)」が、長良川国際会議場をメイン会場に、全国から2000人が参加して11月1日から3日まで開催されました。また、1日には「戦争をさせない1000人委員会岐阜県実行委員会」が主催し「憲法・平和を守る1000人集会」が行われ、護憲大会参加者が大会後にデモ行進をし、長良川河川の公園で集会を行いました。
 今回の大会は、安倍内閣のもとで、歴史認識・靖国参拝等で中国・韓国など東北アジア諸国との関係を極端に悪化させる一方、特定秘密保護法の制定や、集団的自衛権の行使はできないと確立されている憲法解釈を閣議決定で覆し、戦争に参加する道をいっそう開くなど、憲法理念の破棄と平和国家の変更を露骨にすすめています。こうした状況を打開し、憲法のもっとも重要な基調を守り、戦争をさせないとりくみをすすめることを確認しました。

インタビュー・シリーズ:96
フクシマを忘れず、自分のできることをしていきたい
女優 木内みどりさんに聞く
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きうち・みどりさん

きうち・みどりさんのプロフィール
 1965年に劇団四季に入団後、多くの劇団作品に出演し舞台経験を積む。1969年、TBSのテレビ小説『安ベェの海』で主演に抜擢され、ドラマデビュー。その後も、数多くの映画・テレビドラマ・舞台に出演。人気バラエティー番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で秘書役として出演するなど、幅広い役柄を演じている。福島原発事故以降は、さようなら原発1000万人アクションの集会で司会を務めるなど、脱原発運動に精力的にかかわっている。

─女優の道に入られたのは、どういうきっかけですか。
 なにしろ学校に行くのがイヤでイヤで…。教えて欲しくないことばかりが展開する毎日に飽き飽きしていて、でも、ただ行きたくない、やめたいというのじゃ親が許さない。だからどこか他の行き先を見つけたいなぁとボンヤリ思っていた時期に、新聞広告で研究生募集というのをみかけたのです。「劇団」てどんなところだろうと思って日生劇場に足を運びました。そこでジャン・アヌイ作の「ジャンヌ・ダルク」を見て、劇場空間に圧倒され魅了されました。で、試験を受けてみようと思いました。
 演技部の応募資格が16歳から、演出部と文芸部が18歳からだったので自動的に演技部を受験しました。私はどちらかといえば引っ込み思案で社交性なし、出たがりではないし、役者に向いているとは思わなかったのですが、受けてみたら受かってしまって。学校とはまったく違うところで生きいき伸びのび楽しい時間を過ごしていて、18歳になってすぐ、劇団からオーディションを受けてみなさいと連れて行かれて主演に抜擢されてしまったのが、TBSのテレビ小説「安ベェの海」でした。これがきっかけでテレビの仕事が次から次へと。どこかで自分で望んだことじゃない・・・という違和感を抱えつつ、いつの間にかにこうなってしまったという経過です。

─原発事故について、木内さんはどのように感じ取られ、あるいは転機となることがあったのでしょうか。
 私の夫が11年前に静岡県知事選に出馬したことがあります。私も候補者の妻として、暑い夏をがんばりました。
 彼の演説のなかで「浜岡原発を止めよう」という発言がありました。でも、その話題になると、場がシラけるのですね。だから、受けもよくないし、場も盛り上がらないから、原発の話はやめたらいいのにと思っていました。それほど原発について無知だったのです。あの時期「原発」に関心がある人は本当に少数でした。
 福島原発事故が起きてから、世界が変わりました。政府が言っていることや、テレビに出ている学者やマスコミが言っていること、みんな信用できなくなりました。その年の4月初めに「たね蒔きジャーナル」という毎日放送のラジオ番組で小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)の話を聞いたのですが、新鮮でした。どんどん惹きつけられました。iPhoneに入れてくり返し聴きました。知らなかったことをたくさん学びました。「国を挙げて進めてきたことだから、だまされてもしょうがない。けれどだまされたあなたにも責任がある」という小出さんの言葉に気づかされたのです。この時以降、「私は私のできることをしていこう」と静かなる決意をしました。

─集会では司会をお願いしていますが、こうした集会に参加するのは勇気がいることではなかったですか。
 初めてデモに行った時は、おっかなびっくりで、人の影に隠れるようにしてただ歩くだけで、一言も声をあげることができませんでした。みなさんと連なって歩くだけで、ほんとうに心臓がどきどきしていました。それでも何度か集会に参加していくうちに少しずつ慣れていきました。司会をするようになったのは、2012年の都知事選のさなかに、たまたま鎌田慧さんと出会い、お誘いが来るようになりました。
 私にも何かできることがあればと思ってお引き受けしましたが、驚くことが多かった。集会の台本がないのに戸惑いました。誰に何を喋ってもらうか、重ならないよう気をつけてタイムスケジュールをきっちり決めて、というのが普通ですが、集会の日が迫ってくるのに、台本はない、打ち合わせもない、当日会場で簡単なタイムスケジュールのメモだけ渡されて「後はよろしく」なんだとわかってから、ひとりで猛勉強しました。
 そもそも「さようなら原発1000万人アクション」ってなんなのか。どういう経過でできてどう活動してきたのか、どこがいい点でどこが欠点なのか、大江健三郎さんはどのような発言をしてきているのか、鎌田慧さんはどのような人なのか、かなり調べました。

─集会ではいつも準備不足ですいません。木内さんがかなり勉強されていたわけですね。
 私「学習魔」と言われています(笑)。本も1日1、2冊のペースで読んでしまいます。原発関連の専門書は、わからないことばかりでしたが、ゆっくりゆっくり読んでいます。私は学歴が「中卒」です。社会の仕組みや政治の基本がわかっていないから、司会を引き受けることで勉強しますから、自分のためになっていると思います。

─ウェブマガジンで、福島の被災地のレポートをされていますが、何度か訪問されているのでしょうか。
 私は3年半たってようやく双葉町と浪江町に行けました。何の音もない奇妙な静けさを感じました。津波に襲われた土台だけが残っているところで、人々が泣き叫んでいる絶望の声や恐怖の叫びが、耳の奥のほうから聞こえてくるようで、強い衝撃を受けました。ただ立ちすくんでいるだけの情けない自分を感じました。放射線量も高くて、道端の側溝では20.2マイクロシーベルトもありました。
 国道6号線を全線開通させてしまったでしょう。特別許可がない一般の車が通過できるようになってしまった。枝道に入っては困るので、封鎖していましたが、封鎖するだけでものすごいお金がかかっています。一般の車が通過することで放射性物質を運んでしまう、拡散してしまう、危険だと思いました。
 それと福島原発から30km圏内の広野町に「福島県立ふたば未来学園」という中高一貫校を開校する話があるようです。小泉進次郎さん(自民党衆院議員)が支援していて、芸能関係者や著名人も支援していますけれど、「放射線管理区域」なんですからそんなことをしてはいけないと思います。小泉さんも応援する人たちもそこに住むなら話は別ですが、東京からちょっと行くだけなのでしょうね。
 3年半経って、事態は一層悪くなっているのではないでしょうか。もうみんな忘れているから、忘れたがっているから。もっとたくさんの人が行くことができればいいなと思います。

─さようなら原発の集会などイベントへのアドバイスはありますか。
 若い方がもっと気軽に参加できるような雰囲気があればいいなと思います。ソーシャルネットワークも広がっていますからツイッターやフェースブックをもっと使って。それに海外の人が見てもわかるように、英語の表記を必ず入れてほしい。
 気になる点としては、署名をお願いしている人がお願いする人の態度じゃないなと感じる点が一部にありました。「どうしてしないのよ」「私たちは正しい」というような態度が出ている感じがします。「なんで関心を持たないの」と相手を責めていては人は通り過ぎます。イヤな「気」はすぐに伝わります。もちろん反原発活動を長いことやってこられている方々は、これまで褒められることもなく、さまざまな嫌がらせを受けてきたことはわかります。が、今までがんばってきた人も、つい昨日関心を持った人も、無関心な人もみんな同じねというくらいの感じでできれば広がっていくのではないでしょうか。
 今まで使ってきた言葉が今現在も有効かどうかも考えてほしいです。「再稼働やめろ!」とか「許すな!」とか命令口調じゃないですか。道を歩いている人にとっては、何か怒られている気分になりますよね。女性だけの脱原発デモに参加したことがありますが、命令口調なし、演説なし、有名無名関係なし、歌って踊って、柔らかく優しく、参加者みなさん、解放されて楽しい時間でした。
 集会やデモは、いろいろな人に自分の思いを伝えていくことですよね。司会をする私も含め、出演者もスタッフも、同じ熱を持っていないと、来てくれた人に伝わらないと思います。遠方から参加された方にも、帰るときには倍の熱を受けとって帰っていただきたい。
 それと私は詳しくないので理解できないのですが、原発反対ということでは同じでも、いろんな立場の人がいていろんなグループがある。それぞれ感覚の違いがある。時として反目しあうこともある。でも、お互いの違いを尊重しつつ許しあって同じ方向に歩いていきたい。

─原発を止める、そのひとつでまとまっていかないと、運動はバラバラになります。大切なことを忘れてはいけないですね。
 その通りだと思います。私は活動家じゃないし、どこにも所属していない。いつも一人行動でいいと思っています。時々、新聞記者の方から取材依頼を受けますが、「原発」以外のことはすべてお断りしています。「集団的自衛権」とか「特定秘密保護法案」とか、私には基本がわかっていないのですから。ただ、原子力発電だけは絶対反対。だってあれだけの事故が起きて、家を失い家族がバラバラになって苦しんでいる人たちがたくさんいるのに、事故の原因すらわかっていない。汚染水は流れっぱなしで何ひとつ解決できていない。政府もマスコミも忘れさせようとしている。
 今こそ福島の現状を、それこそ、第一原子力発電所の現状を中継してほしい。テレビ画面の端に常に映っているようにすれば、みんなの関心がキープできるのにと思います。福島を忘れないで自分のできることを続けていきたいと思います。

インタビューを終えて
 学校嫌いで引っ込み思案の女の子が女優として大成する。そして、今や多くのことに目を向けて、さようなら原発の運動にも参加。数寄屋橋交差点の街宣車の上で、さようなら原発を訴えて何時間も手を振り続けてもらったことが頭から離れません。まじめに福島と向き合う姿勢が素晴らしい。
(藤本泰成)

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重大な衆議院総選挙に向けて
平和・民主主義・脱原発のために勝利しよう
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 福山 真劫

 11月21日に衆議院が解散され、12月2日公示、14日に投票の総選挙になりました。安倍自公政権は、「アベノミクス失敗、相次ぐ閣僚の不祥事、沖縄県知事選での大敗、戦争するための暴走」を隠し、自らの延命と権力基盤強化のために解散に打って出たのです。しかし私たちにとっても、安倍の暴走を止めるための絶好のチャンスです。


戦争させない・9条壊すな!国会包囲行動(11月11日)

安倍政権の暴走を止めよう─私たちの訴え
 この2年間、安倍自公政権は「戦争する国へ、監視社会へ、原発推進へ、貧困・格差拡大社会へ」と暴走を続けました。こんな政権の継続を絶対に許してはなりません。選挙で何としても、憲法を基本に平和、民主主義、脱原発をめざす立憲フォーラム・民主党・社民党などの野党の勝利を勝ち取り、政策の転換を勝ち取りましょう。
 平和フォーラムがこの選挙で訴える基本的な政策は次のとおりです。
1、戦争する国ではなく、憲法を基本に平和をつくろう
 歴代の自民党政権によって、憲法とりわけ9条は空洞化され続け、最後の歯止めであった「専守防衛」、「集団的自衛権行使は違憲」という国是が、7月1日の閣議決定よって変更され、次は日米防衛ガイドライン・戦争関連法案の改・制定に進もうとしています。日本の自衛隊は米国の軍事戦略のもと、中東から東アジアまで「武力行使・戦争する軍隊」になろうとしているのです。憲法を破壊する閣議決定を撤回させ、憲法に基づく平和の確立をめざします。
2、沖縄を基地のない平和な島に
 沖縄県知事選挙の結果、名護市辺野古への基地建設は許さないという県民の意思が、名護市長選挙に続き、明確に示されました。懐柔と弾圧による辺野古への新基地建設強行は絶対に許されません。米軍基地の縮小・撤去、基地のない平和な島・沖縄をめざします。
3、原発ゼロをめざし、新しいエネルギー政策の確立を
 東京電力福島原発事故は、事故原因もわからず、収束のめども立たず、いまだ13万人を超える人々が故郷を破壊され避難したままです。そして、福島を、日本を、地球を放射能で汚染し続けています。こんな状況で、原発の再稼働など絶対に許されません。原発再稼働反対、核燃サイクル路線反対、原発ゼロをめざして新しいエネルギー政策の確立をめざします。
4、貧困と格差社会ではない共生と連帯の社会を
 非正規労働者は全労働者の37%、1900万人、年収200万円以下の人は1000万人を越え、子どもの貧困率は16%、生活保護世帯の増加など、貧困と格差社会は確実に進行しています。雇用・賃金・権利が保障される労働政策の確立、社会保障制度の確立、子どもの権利保障、地域コミュニティづくりの政策を求めます。
5、正しい歴史認識を確立し、東アジアから非核・平和の確立を
 河野談話・村山談話の見直しを許さず、来年の戦後70年を契機に、正しい歴史認識のもとでの戦後補償、日朝国交正常化、東アジアでの非核・平和の確立をめざします。また人権保障関連の国際条約に基づく人権確立をめざします。

安倍自公政権の本質と腐敗─政治の潮目が変わった
 安倍自公政権の大臣19人中、安倍総理を先頭に16人が右翼団体の「日本会議」のメンバーです。女性閣僚の高市早苗総務相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子・女性活躍相の3大臣は、靖国へ公式参拝すると同時に、「日本軍慰安婦に強制性はない」という米国の新聞広告に名前を連ねている輩です。彼らの背景にいるのが、「日米安保ムラ、原子力ムラ、公共事業ムラ、中央官僚、多国籍企業」で、「自らの利権よ、永遠に」と夢見て、国民の生活破壊など意に関しない輩です。かれらに私たちの未来を託すわけにはいきません。
 安倍自公政権の集団的自衛権行使の合憲化、辺野古への基地建設、原発再稼働など亡国への政策の強行に対して、世論調査は明確に反対の立場を鮮明にしています。
 そして自民党は、滋賀県知事選挙に敗北し、福島県知事選挙では候補者を出せずに相乗り、そして沖縄の知事選では大敗北を喫しました。次から次へと続出する閣僚の不祥事、アベノミクスの行き詰まり、消費税や財政赤字、TPPなど課題は山積していますが、展望が見えません。安倍自公政権は、確実に揺れだし、行き詰りつつあります。
 さあ、総選挙です。立憲フォーラム、民主党、社民党の勝利をめざして、全国でがんばりましょう。そして、私たちの未来のため安倍自公政権を過半数割れに追い込み、退陣を勝ち取りましょう。
(ふくやましんごう)

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憲法理念の実現をめざす第51回大会ひらく
戦後70年の節目に新しい東アジアとの関係を
フォーラム平和・人権・環境 事務局長 藤本 泰成


大会後のデモ行進(11月11日・岐阜市)

 憲法理念の実現をめざす第51回大会は、11月1日~3日に岐阜市で開催されました。安倍晋三首相の数に力を借りた政治手法は、憲法理念をねじ曲げ、これまでの平和と民主主義、基本的人権の尊重、そして多文化共生の方向から、「戦争をする国」、戦前の軍国主義を彷彿とする暗澹たる世界へと引きずり込もうとしているように感じられます。
 憲法96条の改「正」の議論は改憲手続きが必要なことから、安倍首相は早々に放棄しました。しかし、その後は数を力として「特定秘密保護法」「安全保障会議」の制定、そして今年7月1日には「集団的自衛権」行使容認の閣議決定を行いました。行使に必要な法改正を先送りして、日米の政府間合意でしかない「日米安全保障協力協定」(ガイドライン)の見直しを、日本国内の法制度を無視して進めています。
 一方で、これまで一貫して安倍首相が主張してきた「先の大戦はアジア解放の戦争」「従軍慰安婦の強制はなかった」などの歴史認識から、河野談話や村山談話の否定、また「侵略戦争に定義はない」などの発言や靖国神社参拝強行などにより、海外メディアからも「歴史修正主義者」との汚名を付けられています。中国や韓国の政府や世論を敵に回し、この間、首脳会談さえ開くことのできない状況が続いてきました。このような安倍首相の政治姿勢は、東アジア諸国を敵視する狭隘なナショナリズムを日本国内にばらまいています。

「権利と差別」の議論が重要に
 今年の大会での議論では、「権利と差別」の議論が、「集団的自衛権」の議論と同様に重要でした。私は、その中に通底する人間の「命」の尊厳が極めて危機的状況にある、そして、それは「戦争をする社会」を追い求める安倍政権の姿勢が、つくり上げていると感じました。
 「教育と子どもの権利」の分科会で、子どもたちが安心感や自信、将来の希望を持てない、自分が大切にされているという実感がないとの指摘がありました。貧困、格差、孤立が、子どもを支えきれない社会状況を作り上げています。子どもの貧困率は、16.3%で過去最高の数値を記録しました。一人親家庭の貧困率は、50%を大きく超えてOECD加盟国中最悪の数字となっています。男女の賃金格差を考えると、シングルマザーの生活がどのようなものか想像に難くありません。
 権利と義務に関する指摘も重要です。常に義務は権利に伴うものであると主張されますが、権利を守ることの義務は、権利の主体を取り巻く公的な側(政府)にある。「公益と公の秩序」を問う前にすべきことがある。権利の衝突を、権利の主体の「公」への義務から問うべきではなく、相互における権利の行使のあり方として考えるべきだ。日本社会は「公的な義務」と「倫理的義務」を取り違えているとの指摘は、自民党憲法改正草案などを考えると、極めて新鮮な指摘ではなかったかと思います。
 1924年、国際連盟は「子どもの権利に関するジュネーブ宣言」を採択しました。第1次世界大戦を経験した人類は、「戦争によって最大の被害を被ったのは子ども」との視点から、子どもの権利を議論し始めたのです。「戦争」が、社会的弱者である子どもたちをいかに苦しめたかに着目し平和を語ることも重要です。

日本の安全保障に何が求められるか
 「非核・平和・安全保障」の分科会では、「集団的自衛権」行使容認の閣議決定が、嘘で固められていることが明らかになっています。「武器で平和はつくれない」、日本の平和運動はそう主張してきました。どの国が米国との戦争を決断するのでしょう。第二次大戦後、多くの戦争が米国の集団的自衛権行使を名目に行われてきました。米国の傲慢なやり方は、9.11同時多発テロを生み、「イスラム国」を生んだのではないでしょうか。私たちは、テロを決して容認しません。しかし、その行為の裏側に米国の責任がないとは決して言えないでしょう。
 「集団的自衛権」行使容認の議論の先に、分科会で指摘された「第2次朝鮮戦争」があるのだとするなら、その危機を乗り越え、新しい東アジア諸国との友好と協調の関係、そして北朝鮮との国交正常化への取り組みを強化していかなくてはならないでしょう。日米同盟の強化は、私たちの命を危うくするものでしかありません。
 初日のシンポジウムでは、1972年の日中共同声明にある「日中両国は一衣帯水の間にある隣国」との考え方や、1995年の村山談話が取り上げられ、歴史認識がアジア諸国との和解にいかに重要かが指摘されました。私たちは、過去を清算し戦後70年の節目に向かって新しいアジアとの関係を築かなくてはならない、そのことこそが、日本の安全保障なのだとの意を強くしました。
(ふじもとやすなり)

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日朝交渉の進捗状況と朝鮮半島情勢
いまこそ国交正常化への話し合いを
日朝国交正常化連絡会共同代表兼事務局長・立教大学准教授  石坂浩一

安倍政権の方が交渉再開急ぐ
 安倍晋三政権は、国家秘密保護法、集団的自衛権など、平和と人権に逆行する危険な政策を立て続けに打ち出してきた。日本の社会運動はそうした安倍政権の政策に反対し、アジア周辺国との信頼構築のために努力するよう求めてきた。ところが、その安倍政権は2013年5月以降、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との接触を始めた。その動きはその後、一時水面下に隠れていたが、14年3月末には瀋陽で日朝協議が再開され、次いで5月26日から28日にかけてはストックホルムでの政府間協議が実現した。代表団の帰国した29日には安倍首相みずから日朝協議の成果を発表、北朝鮮側がすべての日本人に関する調査を行なう特別委員会を立ち上げ、それを受けて日本政府は独自制裁の一部を解除するという内容の合意が成立したことを明らかにした。
 拉致問題の再調査と制裁一部解除という合意は、2008年の福田政権当時の合意を復元するもので、交渉自体が開けなかった状態からすると、大きな前進と見ることができる。日本のマスコミでは北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)政権が日本から見返りを得るために譲歩してきたかのような報道が多いが、実際のところ交渉再開を必要としていたのは安倍政権だったろう。安倍首相は、圧力をかければ北朝鮮が屈服してくるという根拠のない見通しのために、10年以上の歳月を失ってしまった。第二次安倍政権で拉致問題の成果を上げることができなければ、政権の存立にも関わることになる。むしろ安倍政権の方が交渉再開を急いだと思われる。

拉致問題だけではない両国協議
 7月1日に北京で開かれた日朝協議において、北朝鮮は国防委員会から特別な権限を付与された特別調査委員会が設置されたことを日本側に伝え、国防委員会参事とされるソ・デハ(徐大河)委員長をはじめ、これまで外部に知られることのなかった北朝鮮の指導層の名前を明らかにした。これを受けて日本政府は制裁の一部解除を実行した。
 当初、8月末頃に第1回の経過報告が伝えられるといわれていたが、日程はなかなか決まらなかった。8月下旬と9月に国家安全保衛部の幹部と日本側との秘密接触が行なわれたと報じられたが、結局次の日朝協議は10月28日から29日にかけて平壌で行われた。協議の内容について日本政府は詳細を明らかにしていないが、日本側は拉致問題が最優先であると強調し、北朝鮮側から日本人の遺骨調査を中心とした報告がなされたものと報じられている。
 日本では拉致問題の新たな成果にばかり関心が集まっているが、日朝交渉は本来、国交正常化に向けた両国間の懸案を話し合うためのものにほかならない。2002年の日朝平壌宣言を尊重するとの合意にもかかわらず、安倍首相がこの間、国交正常化をまったく口にしていない点は、北朝鮮側に不信感をもたらす要因といえよう。
 10月22日に安倍首相が、今後調査ができなくなるリスクを考慮し、拉致問題を最優先に考えて政府代表団の平壌派遣を決めたと述べたことは、対話の継続性を確認した点で有意義だが、一歩進んで東北アジアの平和と歴史の清算をめざす日朝交渉の本来的役割を首相として明確にすべきであろう。


日朝国交正常化連絡会の総会・講演会(9月9日・教育会館)

活発な外交姿勢をみせる北朝鮮
 北朝鮮はこの間、ほとんど全方位外交というべき活発な外交姿勢を見せてきた。10月21日に北朝鮮で拘束されていた米国人1名が釈放され、これを受ける形でケリー米国務長官が22日、「残る2名を釈放するなら北朝鮮は恩恵を被る。今後数週間、数カ月で対話に戻れることを望んでいる」と述べた。さらに11月に入って残る2名が釈放され8日に米軍機で米国に到着したが、この際クラッパー国家情報長官が訪朝、同行する異例の対応となった。クラッパー長官はオバマ大統領の書簡を託されたと伝えられており、米朝関係の行方が注目される。
 北朝鮮は仁川で開催されたアジア大会の閉会式にファン・ビョンソ(黄炳瑞)朝鮮人民軍総政治局長、チェ・リョンヘ(崔竜海)国家体育指導委員会委員長、キム・ヤンゴン(金養建)朝鮮労働党書記の最高指導部3名を韓国に派遣して人びとを驚かせた。北朝鮮は今年初めから積極的に韓国に対してボールを投げて対応を促したが、韓国側はこの機会を生かせずに今日に至っている。
 一方、リ・スヨン外相の9月30日からの長期訪ロに続き、11月14日にはチェ・リョンヘ氏のキム・ジョンウン第一委員長の特使としての訪ロが発表され、ロシアとの関係進展も朝鮮半島の変数になっている。キム・ジョンウン第一委員長の初の外遊も浮上するかもしれない。2015年に向け朝鮮半島の平和が進展することを願わずにいられない。
(いしざかこういち)

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TPP交渉は合意ならず越年へ
知的財産や農産物関税などで各国に隔たり

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、11月中の合意ができず、越年が決まりました。11月10日に北京で開かれた交渉参加国の首脳会合では「できる限りの早期」の妥結を、各国の閣僚や交渉官に指示する首脳声明を採択しましたが、妥結の具体的な目標時期は示されませんでした。しかし、米国では2016年の大統領選挙に向け、来年の後半以降は実質的な交渉が出来なくなることから、年明け以降、急展開も予想されています。

グローバル資本の利益優先のルール作りに反発
 交渉は過去何度も目標期限を先送りしてきましたが、最終局面にきても具体的な期限を明示できなかったことは、米国主導の交渉の異常性と限界を示しています。各国の国民経済よりも、グローバル資本の利益を優先した新自由主義的な投資・貿易ルールであることがますます明確になっています。交渉内容は依然として秘密裡に進められていますが、最も難航しているのは特許などの「知的財産」分野です。
 この分野は、米国が年間9兆円以上を稼ぐ最大の輸出産業であることから、さらに利益を得るために、著作権保護期間の延長、高い賠償金、遺伝子組み換えなどの種子特許、医療行為の特許、医薬品の特許期間の大幅な延長などを主張しています。特に、有効成分の特許が切れた医薬品を他の製薬会社が低価格で製造・供給するジェネリック医薬品について、アメリカの製薬メーカーの圧力によって特許保護期間などの規制を強化して、低価格薬の拡大を妨げようとしています。これは命に関わる問題であることから、こうした医薬品に頼るマレーシアなど新興国と激しく対立しています。
 また、マレーシアやベトナムでは国有企業が多く存在し、各国の経済を牽引しています。これらについて、米国などは、一般的な企業と同等の条件に置くように要求していますが、各国の経済政策の根幹に関わる問題であることから、合意が困難になっています。
 さらに、日本にとって大きな問題は、日米2国間で交渉が進められている農産物や自動車の貿易をめぐる協議です。昨年4月、衆参の農林水産委員会では、日本がTPP交渉に参加するにあたっては、農林水産物の重要品目の関税撤廃を認めないことや食の安全・安心、安定生産の確保、「投資家対国家間の紛争解決条項」(ISD条項)反対などを確認し、これらが確保できない場合は交渉からの脱退も辞さないものと決議しました。
 しかし、日米協議では、政府が「聖域」としてきた米や畜産物、麦など農林水産物の重要品目の関税交渉は譲歩を強いられていると言われています。特に牛・豚肉や乳製品などは、大幅な引き下げ・撤廃を迫られていると伝えられています。一方、自動車では、米国は日本への輸出拡大のため、安全規制基準の緩和などを求めており、ここでも多国籍企業の意向を受けた米国の強硬な交渉姿勢が目立っています。


リレートーク「いま言いたい!TPP交渉」(11月7日・参院)

秘密交渉に反対、交渉差止・違憲訴訟の動きも
 11月4日に行われた、米国議会の中間選挙で、野党の共和党が上下院で多数を獲得しました。共和党は、貿易拡大をめざす産業界や農業団体の支持を受けていることから、TPP交渉の促進を求めてくるとみられています。米国は伝統的に貿易交渉の権限は議会が握っており、その交渉権限を政府に与えるには、「大統領貿易促進権限(TPA)」という法案を成立させなければなりません。今年の1月に同法案が国会に提出されましたが、労働組合など民主党の支持基盤から強い反対の声が上がって、審議すらされない状態でした。しかし、新たなTPA法案を作る動きもあり、可決すると交渉の妥結に向けたオバマ政権の動きが加速するとみられています。
 来年の早い時期に妥結が出来なければ、米国は次期大統領の下で交渉体制を固めるのは3年後になるため、交渉は「漂流」することになります。窮地のオバマ政権が失地回復を狙って、年明け以降、TPP早期妥結へ一段と対日攻勢を強めることが予想されます。
 安倍政権も米国に追従し、妥結に前のめりの姿勢を見せています。来る12月の衆議院総選挙では、前回の2012年の総選挙でTPP交渉に反対した自民党の公約を反故にして交渉を進めてきた責任を問うとともに、これまでの交渉内容の開示を求めることや、国会決議の遵守などを求めていくことが重要になっています。
 11月7日には、国会内でリレートーク「いま言いたい!TPP交渉」が開かれ、主婦連や弁護士団体、大学教員などがTPP交渉の問題点を指摘し、「秘密交渉のままの合意はあり得ない」と、今後も連携して反対運動を強める事になりました。また、交渉が国民の知る権利(憲法21条)や、健康や生命に関わる生存権、幸福に生きる権利を侵害するものとして、「TPP交渉差止・違憲訴訟」をおこす動きも出ています。

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再稼働の策動に歯止めをかけよう
「原発ゼロ」の実績もとに強固な世論を
原子力資料情報室 共同代表 西尾 漠


川内原発再稼働反対集会(9月28日・鹿児島市)

 11月7日に鹿児島県知事が川内原発1、2号機の再稼働に同意を表明したことで、形式的には地元同意の条件が満たされた。工事計画の認可を得て改修工事を行ない使用前検査に合格すること、保安規定の変更認可を得ることで、同原発は今冬中にも再稼働される見込みだと報じられている。そんな見込みを認めるわけにはいかない。形だけの条件づくりは進んでも、避難計画にせよ、火山対策にせよ、火種はしっかり残っている。
 止める力も残っている。それでも力づくで再稼働が強行されてしまうかもしれない。しかしなお「ほぼ原発はゼロ」の状況に変わりはなく、ここでがんばっただけ、今後の再稼働の動きに歯止めがかかる。「原発ゼロ」ないし「ほぼゼロ」を維持していくことこそが、脱原発への最も確実な道である。

再稼働とは原発を長く動かすこと
 再稼働とは、目先の原発をいま動かすかどうかではなく、原発を長く動かすということだと、確認をしておきたい。
 2013年7月8日に原子力規制委員会の新規制基準が施行されて以降、川内原発1、2号機を含めて全国で20基の原発の新規制基準適合性審査が申請された。申請順に、北海道・泊原発1~3号機、福井・大飯原発3、4号機、同・高浜原発3、4号機、愛媛・伊方原発3号機、川内原発1、2号機、佐賀・玄海原発3、4号機、新潟・柏崎刈羽原発6、7号機、島根原発2号機、宮城・女川原発2号機、静岡・浜岡原発4号機、茨城・東海第二原発、青森・東通原発、石川・志賀原発2号機である。近く、建設中のものとしては初めて、青森の大間原発の申請が計画されている。
 これらのうち使用前検査合格から35年を超えているのは東海第二原発のみ。30年超も川内原発の1号機のみだ。申請が出されているのは、比較的新しい号機だと言える。他方、大飯、高浜、伊方、玄海、柏崎刈羽、島根、女川、志賀と、1、2号機の申請は軒並み見送られている(浜岡の1、2号機はすでに廃炉)。
 原子炉等規制法では原発の運転期間について、最初に使用前検査に合格した日から40年を原則としている。新規制基準に適合させるためには大規模な改修が必要となり、多額の費用を要する。基準適合が認められ再稼働できても、数年しか動かせない古い号機では、かかった費用を回収できない。また、難燃性のケーブルが使われていないなど、そもそも適合性に大きく欠ける。1、2号機については申請にためらいがあって当然だろう。

周辺自治体に働きかけを強めよう
 40年の寿命については、原子力規制委員会の認可が得られれば、20年を超えない期間で1回限り延長することができる。規制委員会は10月15日、40年超運転を申請するなら早く新規制基準適合性審査を請求しないと時間切れで不認可となると、警告を発した。17日には経済産業大臣が電気事業連合会会長に、40年超運転か廃炉かの判断を急ぐよう要請した。
 最初の審査対象は、福井・美浜原発1、2号機、高浜原発1、2号機、島根原発1号機、玄海原発1、2号機の7基で、それらは遅くとも2015年7月までに新規制基準に適合していなくては40年超の申請自体ができない。早い決断が求められるゆえんである。
 言いかえると、再稼働に向けた新規制基準適合性の審査を申請するということは、そのためにかかる費用を回収できるよう、40年超運転をめざすものなのである。原子炉等規制法に運転期間が盛り込まれた時、40年超運転は「あくまで例外」と説明された。それがなし崩しに通常のこととされようとしている。何としても食い止めなくてはならない。
 川内原発1、2号機に続いて、高浜原発3、4号機の審査書案づくりが既に着手されているという。ただし、ここでの「着手」とは、原子力規制委員会なり審査会合なりで「着手する」と決められたわけではない。各審査官が、審査と並行して案を書き始めているということらしい。そうしたあいまいさを意図的に使って、規制委員会と規制庁内の推進派は再稼働は必至という雰囲気づくりを行なっている。
 マスメディアも「次は高浜、続いて玄海、大飯、伊方」などと憶測を並べて、その企みに乗っかっているが、そうしたものに惑わされる必要はない。それぞれの原発についてきちんと問題点を指摘することで審査にくさびを打ち込み(規制委員会・規制庁とも、皆が再稼働推進というわけではない)、周辺自治体に働きかけ、2012年以来の「原発ゼロ」「ほぼゼロ」の実績をもとに反対世論をより強固にしていくことに全力を尽くしたい。
(にしおばく)

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「フクシマ」でいま何がおこっているか
福島の全ての原発の廃炉へ、そして全ての原発の再稼働をさせない運動へ
福島県平和フォーラム 代表 角田政志

「廃炉作業工程」の遅れと事故の危険性
 福島第一原発の廃炉は既に決定し、廃炉に向けた作業工程が示されている。しかし、東京電力は、10月30日に1号機のがれき撤去が進まず、使用済み核燃料の取り出し時期が2年遅れると発表した。溶け落ちた燃料の取り出しについては、その方法も、取り出した後の処理についても定まっていない。2号機及び3号機でも同様に作業工程が遅れるのは確実となっている。
 2013年8月に行われた3号機のがれき撤去の際には、原子力規制委員会の発表によると1兆1000億ベクレル超える放射性物質が飛散したとされる。また、作業中に約570キロの重さの燃料交換機が使用済み核燃料プールに落下する事故も起きている。廃炉作業は高放射線量の中、安全な設備が整っていない状態での作業が行われている。常に事故の発生の可能性があり、放射性物質の放出につながる危険性がある。廃炉作業に当たる作業員は常に被ばくし、危険との隣り合わせの中での作業を行っている。そしてこの廃炉作業は、原発労働者の果てしない過酷労働の継続が必要となる。


飯舘村で進む除染作業。これで安心して帰村できるのか
(2014年6月)

深刻になる汚染水問題と中間貯蔵施設
 汚染水問題は非常に深刻で、増え続ける汚染水を保管する地上タンクの増設が間に合わない状況にある。さらに、これまで使用されてきたタンクのボルト部分からの汚染水漏洩のトラブルをなくすため、溶接型タンクへの切り替え作業も行われている。一方、ボルト型のタンクの解体後の保管方法は定まっていないと報じられている。
 汚染水の浄化計画達成も困難を極めている。「多核種除去設備(ALPS)」増設も行われているが、度重なるトラブルにより試運転の状態が続いている。
 汚染水の増加を止めるため、地下水流入対策も行われている。原子炉建屋に流入する前の地下水をくみ上げて海に流す地下水バイパスの運用では、くみ上げ井戸の一部で、台風通過後などに最高濃度の放射性物質が検出されることがしばしば発生している。しかし、全ての井戸からの地下水をまとめて放出するため、放出時には、規定濃度をクリアしているとして海洋放出が行われている。
 また、建屋への地下水流入を防ぐために凍土壁による遮断を試みる作業も進められているが、海側のトレンチで高濃度汚染水を取り除く工事が難航するなど、実現性も不確実だ。
 福島県と双葉町、大熊町は、苦渋の選択として除染で取り除いた土壌や放射性物質に汚染された廃棄物を保管する「中間貯蔵施設」の受け入れを了承した。しかし、住民の理解が十分に得られているわけではなく、住民感情も複雑である。「中間貯蔵施設」ができることで、汚染廃棄物の処理が進むと期待される一方で、様々な問題も出ている。「使用開始から30年以内に福島県外で最終処分すること」「搬入ルートの維持管理と周辺対策の明確化及び施設と運送の安全性の確保」など知事が受け入れ条件としての提示したことが確実に実行されるのか、課題は山積している。

原発がある限り第二の「フクシマ」が発生する
 国によって、避難区域の再編が進められ、避難指示解除準備区域の解除が行われている。解除になったからといって、人々が元の生活に戻れるのかといえばそうではない。住民の気持ちは複雑だ。
 また、国道6号線の規制解除は、第一原発の近くを走行可能としたことから、原発災害からの復興を強く印象づける宣伝に利用されている。しかし、歩行での立ち入り、二輪車の走行は禁止され、自動車も窓を開けることや停止することが禁じられている。途中の空間線量は、10マイクロシーベルトを超えるところもある。無用な通過はもちろん、特に、子どもを乗せての通過はさせてはいけない。
 福島第一原発では、廃炉に向けた作業は極めて厳しい状況にある。現在も1時間当たり平均で1000万ベクレルの放射性物質が放出されているとみられており、原発災害は収束しているどころか、危険な状態が続いている。福島原発災害の惨状を見れば、原子力災害が一度起これば、元に戻すことはできず、人々の生活と環境に取り返しのつかない破壊をもたらすことは明らかだ。原発がある限り、第二の「フクシマ」が発生する可能性がある。福島では、第二原発も含めた全ての原発の廃炉を求め、3月14日に、福島市あずま総合体育館で「原発のない福島を!県民大集会」を開催する。
(つのだまさし)

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オバマ大統領核軍縮の実績
冷戦後最小の削減量・率、残りの2年で挽回の手は

政権ごとの保有核削減数

 2009年4月5日のプラハ演説で、「核のない世界」を目指し、「冷戦時代の考え方に終止符を打つ」「核兵器の役割を縮小する」「核兵器の量を削減する」と約束したオバマ大統領でしたが、実は、就任から6年間で503発削減しただけで、冷戦後の4人の大統領の中でもっとも削減数が小さいという結果になっています。
 「米国科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセン氏が10月15日のブログに載せた下のグラフを見てみましょう。灰色の部分が、米国の保有核数の歴史的水位を、折れ線が各年の増減数を示しています。右に示したのは同氏のデータを使って冷戦後の政権毎の削減数を棒グラフにしたものです。前政権から引き継いだ核兵器を何%減らしたかを示す数字を見ても、冷戦後の4人の大統領は就任順にそれぞれ41%、23%、50%、10%となっており、オバマ大統領の成績は振るいません。クリステンセン氏が指摘している通り、保守的な米国議会、核削減交渉を拒絶するロシアのウラジーミル・プーチン大統領、米国内の核兵器関連組織の抵抗などに直面した結果なので大統領だけを責めることはできませんが、皮肉な結果となっています。

残りの2年と日本の役割
 クリステン氏は、残された2年で挽回できる手は、2010年4月に米ロが締結した新「戦略兵器削減(START)」条約で予定されている弾頭退役を前倒しで進めたり、財政事情を心配する議員らと、戦略原子力潜水艦や大陸間弾道弾(ICBM)の削減や無用な計画の中止について交渉して将来必要でなくなる弾頭を退役させたりすることだと言います。
 大統領の成績に日本が貢献できることがあります。オバマ大統領は、できるだけ多くの核兵器を数分で発射できる一触即発の「警戒態勢」から外すこと、世界中の核兵器利用可能物質の量を最小化し防護体制を強化することを提唱してきています。前号で紹介したとおり、米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」は大統領がまず、ICBMの警戒態勢を一方的に解除することを提案しています。これなら、ロシアや議会と交渉することなく実施できるが、日本が反対しないことが鍵となるとして、日本の反核団体に協力を求めています。
 また、日本は、プルトニウムを核兵器6000発分近くになる47トンも保有していながら、消費の目処も立たないまま、六ヶ所再処理工場を動かしてさらに年間8トン(1000発分)も抽出する計画です。UCSのキャンペーンに協力すると共に、この非核兵器国で唯一の大規模再処理工場の運転をさせないことが、オバマ大統領の成績向上に繋がります。
(田窪雅文:「核情報」主宰)


米国の保有核兵器数と年次変化1945-2014

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《投稿コーナー》
自衛官に「聞く」ことから始めよう
9条が「命」を守っている
非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団 新倉裕史

 10年以上も前のことです。小学生のためのガイドライン学習会というものがありました。地域のお母さんたちが呼びかけたもので、20人程のこどもたちが集まって、熱心に紙芝居を見てくれました。保護者の中に現役の海上自衛官がいて、紙芝居の後の交流会で、彼はこんなふうに言いました。
 「自衛隊で飯を食っている以上、命令があれば行かざるを得ない。だから、皆さんが、そんなとんでもない命令を出す政府を作らないでください」。
 自衛官の心配は現実のものとなっています。「戦争できる国」への暴走を続ける安倍政権。「とんでもない命令」が自衛官・家族に届く前に、何ができるでしょうか。

戦時派遣を拒否する自衛官
 2001年11月9日、護衛艦「くらま」、「きりさめ」、補給艦「はまな」が佐世保基地を出港しました。インド洋での対米支援、「戦時派遣」の最初の出港です。テロ対策特措法は成立しておらず、防衛庁設置法を根拠とした強引な出港でした。
 「派遣を拒否した隊員はひとりもいない」と艦隊司令は豪語しました。しかし実際には派遣候補になった自衛官数人が辞職しています。「戦争に参加するために自衛隊に入ったんじゃない」(毎日新聞、11月9日夕刊)と彼らは艦を降りたのです。横須賀でも、自衛官からの一通の投書が、インド洋派遣予定の護衛艦「しらね」の出航を中止に追い込むということがありました(神奈川新聞、2003年6月30日)。
 平和運動が足踏みをしている間にも、「とんでもない命令」に対し、自ら答えを出す自衛官たちがいました。遅れをとっているのは「私たち」です。

国外で活動するとは思っていなかった
 2014年6月25日の朝日新聞に、元陸将でカンボジアPKO施設大隊長だった渡辺隆さんのインタビューが掲載されました。「1992年に自衛隊初のカンボジアPKO部隊を率いてカンボジアに行きました。当時、国外で活動すると思って陸上自衛隊に入った者はおりませんでした。『我が国の平和と独立を守る』と服務の宣誓をして入隊した隊員にすれば、当時の流行語『聞いてないよォ』という話でした」。
 2003年(北海道は2004年)に、私たちは自衛官と家族にアンケートを実施しました。横須賀市の自衛官官舎に2500通、北海道では5000通のアンケート用紙を配布してのアンケートです。質問項目の中に、渡辺元陸将が言う、「国外で活動すると思って陸上自衛隊に入った者はおりません」を裏付ける項目もありました。「あなたが自衛隊に入ったとき、外国を占領する軍隊に加わる事を想定していましたか」というものでした。横須賀の集計では12通の返信のうち6通、北海道では11通の返信のうち8通が「予想していなかった」というものでした。北海道の自衛官がより多く「予測していなかった」と答えたのは、北海道の陸上自衛隊部隊がイラクへ派遣される直前だったからでしょう。
 いずれにしても、元陸将の直感と、私たちのアンケート(回答率は決してよくないですが、それでも生の自衛官の生の声であることはたしかです)には、自衛官の気持ちは同じように表現されています。


自衛官の通る所でホットラインのアピール(横須賀市)

「とんでもない命令」を食い止めるために
 「9条があるから大丈夫。そう思って親が保証人になって高校を出た息子を入隊させました」。「自衛官‐市民ホットライン・横須賀」にかかってくる自衛官・家族の声は、憲法9条が自衛官や家族の支えになっていることを教えています。
 そんな小さな声を手がかりに、私たちは「戦地」に向かう自衛官に「9条が自衛官の命を守っている。その事実に気がついてください。9条は皆さんの最後の安全保障です。だから9条を殺さないで」と訴え続けています。
 9条が変えられて大変な思いをするのは誰か。9条が変えられ自衛隊が国防軍になって、自衛官や家族は喜ぶだろうか。この問いが、「とんでもない命令」を食い止める取り組みのスタートかもしれません。
 自衛官や家族が憲法9条の力に気がつき、自衛官の命を守る大切なものと思うようになったとき、9条は新たな力を持つに違いありません。たとえば、「国防軍を望みますか」という自衛官・家族アンケートを全国規模で実施してはどうでしょうか。私たちにできること、しなければならないことはたくさんあります。
(にいくらひろし)

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核のキーワード図鑑


緊急会議 いつ噴火するかなんて言えないよ

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《新刊パンフレットの紹介》

(1)避難計画の実行性を問う─再稼働なんてありえない!
 各地で反原発・脱原発に取り組んできた「反原発運動全国連絡会」が、原発防災問題の中の避難計画の問題点を明らかにしました。各地で進められようとする再稼働の動きに対して反撃の論拠になります。
・避難計画の実行性を問う
・事故が進展しないと出ない避難指示
・こんなにある避難計画の問題点
・各地からの視点(各地の原発立地地域からの報告)
編集:「はんげんぱつ新聞」編集部
発行:反原発運動全国連絡会A5版68ージ400円+送料82円(原水禁でも取り扱っています)

(2)食とみどり、水・環境を守るために2014
 環境や食料、農林業問題について、当面する情勢と運動課題についてコンパクトにまとめたものです。各地の学習会や活動資料として活用してください。
・食の安全─食品行政、食のグローバル化
・食料・農業問題─農業政策、TPP交渉の動向
・農民・農村問題─TPPと農政転換の問題
・森林・林業問題─森林・林業の動向、政策課題
・水・環境問題─水道民営化、水循環基本法
・自治体の取り組み─食、農林業、環境施策
・環境・食・農教育─教育の実践、地場農産物活用
発行:フォーラム平和・人権・環境A5版52ページ300円(送料別)

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