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ニュースペーパー2017年2月

2017年2月 1日

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高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設を許さない!全国同時アクション
 2016年12月20日、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、辺野古新基地建設のために埋め立てを認めた仲井眞弘多前沖縄県知事の判断に違法性はないとした福岡高裁判決を追認し、国が沖縄県を訴えた「不作為の違法確認訴訟」は県の敗訴が確定しました。地方自治の本旨に反し、沖縄県民の多数の民意を顧みることなく、地域住民の自己決定権を認めない司法の不当な判断に、大きな怒りを持って抗議するとともに、新たな基地建設を阻止しようと、全国で運動が進められています。
 最高裁判決を前にした12月10日には、沖縄県高江のオスプレイパッドゲート前をはじめ、東京・日比谷野外音楽堂での集会(写真上、撮影・今井明)、北海道、茨城(写真下右・署名活動)、長野、富山(写真下中央・学習会)、福井、愛知(東海ブロック)、大阪、兵庫、奈良、岡山(写真下左・映画上映)の12か所で同時全国アクションが行われました。その他、12月中旬までに、全国39か所で取り組まれ、最高裁に抗議するとともに、違法な行為を行ってまでヘリパッド建設工事を強行する安倍政権の姿勢を許さず闘う山城博治・沖縄平和運動センター議長らの長期にわたる勾留など、度重なる権力の弾圧にも抗議の声をあげました。

特別インタビュー
福島原発事故自主避難者と支援団体に聞く
政府・自治体の支援打ち切りを許さない! 避難の権利の確立を

 2011年3月の東京電力福島第一原発の事故により、全国各地へ多くの被災者が避難を余儀なくされました。この間、福島県は自主避難者に対して住宅支援などを行ってきました。しかし、今年の3月でその支援が一方的に打ち切られ、自治体からは福島へ戻るか、「住民票」を移すか、民間賃貸住宅へ移るよう迫られています。多くの人が、支援策が打ち切られれば、生活が立ちゆかなくなる事態に直面しています。自主避難者の置かれている現状について、福島県田村市から東京都に自主避難している熊本美弥子さん、避難者を支援している「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんにお話を伺いました。(聞き手=藤本泰成・平和フォーラム共同代表)

熊本美弥子さん
福島に帰りたくない被災者 深刻ないじめも
藤本泰成:熊本さんはどちらかから避難されてきたので しょうか。
熊本美弥子: 私は福島県田村市から東京都に避難しました。もともと60歳まで東京で働いていて、その後、田舎暮らしをしようと田村市に移住しました。私が住んでいた地区は、福島第一原発から直線距離で30.5㎞くらいの距離にありました。住んでいた地区は限界集落に近いところで、年配者が夫婦二人、その中の一軒が4世帯同居で、子どもを連れたお母さんが1人と後は年寄りばかりでした。私は3月15日に避難しました。私のところは、緊急時避難準備区域だったのですが、半年後に解除になりました。
藤本:放射線量は元に戻った訳ではないですよね。
熊本:2015年の11月に自宅の玄関先3mのところでセシウムが1平方メートル当たり8万ベクレルもありました。
藤本:除染区域には入っていなかったのですか。
熊本:田村市が行うことになっていて、家から20メートルまでを除染すると言っていましたが、阿武隈山地の山裾に家が建っているので、除染されていない周辺の山や林などからどんどん放射能が流れてきているのではないかと思います。
藤本:いまは東京にお住まいですか。
熊本:葛飾区の都営住宅をみなし仮設として住んでいます。
藤本:そこには福島から避難された方はいますか。
熊本:最初のころは十何世帯ほどいました。ほとんどの人はいわき市からの避難者の方が多く、すでにかなりの方は帰られたようです。
藤本:2017年には飯舘村も解除となり、いわゆる帰還困難区域以外はほとんど解除になりました。そうすると皆さん帰ることを迫られる状況ですね。周りの皆さんはどうですか。特に子どもがいる方たちはどうでしょうか。
熊本:3人の子どもを持つお母さんの話ですが、子どものうち1人が2回目の県の検査で甲状腺に嚢胞があると診断されました。福島の自宅の庭の土は5.2ミリシーベルトもあるといい、そういう所に帰りたくないと言っていますが、3月には住宅を「出ろ」と言われています。
藤本:福島からこちらに来て5年くらいになりますよね。子ども達は学校の友達ができますしね。
熊本:そういうことです。その方のお子さんも最初はいじめられたようですが、中学に入っていじめもなくなり、友達もできたと聞いています。
瀬戸大作さん
瀬戸大作:そのお母さんは、いま国家公務員住宅に住んでいて、横浜でのいじめ問題を聞いて、都営住宅が当たったけれど、子どもの学校が変わるので、移るのは怖いと言っています。5年かけて地域との関係を作って、やっと友達もできたと言っています。いじめ問題の報道以降、そのことを気にする避難者は増えています。この間の東京都との交渉で、第一次抽選で都営住宅にあたったけれど、今の所に住み続けたいという声が一番多い。
藤本:いじめという要素は大きいですね。子どもは社会の鏡と思います。子どもを通じて親や社会の見方が子どもに反映している。子どもたちはそれをコントロールする力がないから、思いっきりストレートに出てしまうのでしょう。

施策もないままの打ち切り強要
藤本:今年3月に打ち切られる世帯は東京都ではどのくらいいますか。
瀬戸:717世帯と言われています。実際にはすでに帰っている世帯も多いと思います。
熊本:その中で192世帯はすでに住宅の仮あっせんを受けたと聞いています。
瀬戸:そのうち25世帯が取り消しました。当局は、福島へ帰るからと言っていますが、本当に帰るのか、違う理由なのかは明確にはわかりません。都営住宅には、収入要件や世帯要件があり、収入が21万4千円以下とか、母子世帯、高齢者などの要件が満たされればOKだけれども、それ以外だと申込みができないとなっています。対象外の人たちはどこへ行けば良いのかということが、今の段階でも明確にされていません。そういう状態が放置されているのが、打ち切り3ヶ月前の状況です。
藤本:夫が福島で働き続け、母子は避難しこちらで生活を営むなど二重生活を続けている人も多いのではないですか。
瀬戸:そのような中で家族関係も厳しくなり、夫との関係も冷えて来て、現実に仕送りも切られてしまうケースもあります。夫がなかなか理解しないで、「もう帰って来い」と言われる中で、お母さんひとりでがんばっているということもあります。本当につらい状況が母子避難で生まれています。

行政が差別やいじめを作り出している
藤本:これまで1ミリシーベルトだった年間被曝線量の許容量が、20ミリシーベルトに引き上げ、「帰還」できると言ってきました。それについて、避難者に国や県からの説明はありましたか。また、その根拠を示されたことはありますか。
熊本:全然ありません。私たちが福島県に交渉に行くと「福島は安全です」の一本槍です。
 除染した所だけは下がりましたが、山から放射能が降って来ます。また地面より空間線量が高いところもあります。田村市の除染では屋根が対象となっていないので、私の家では、2階の寝室の方が倍ぐらい線量が高くなっています。屋根が汚染されていて、「そういったところに寝ていてもいいんでしょうか?」と問きたいぐらいです。データの持つ意味についても詳しく説明されていません。
藤本:大丈夫ですと言っているだけですね。
熊本:そうですね。甲状腺がんも多発しています。けっこう中通りの地区でも多発しています。中通りは避難の対象ではないので避難する人が少なく、郡山とか本宮とかで多いようです。それを知っている親は帰らないと思います。
 年末に一度帰ったという人にお話を伺いましたが、ものすごく気を遣っているということです。子どもが水に入ったので「ダメ、ダメ」と言ったら、「あの人変だね」と言われないかとものすごく気を遣っているそうです。東電や国などがしっかり責任を取らない中で、加害者がしっかり見えず、価値観がずれていき、このようなことやいじめが起きているのではないでしょうか。
藤本:県が、自主避難者が福島の風評被害を拡げているということを言ったことがありました。「何も危なくないのに避難しているじゃないか」と。そういう物の言い方が、様々な人たちに影響を与えている。ある意味、行政サイドや政府などが自主避難者に対する差別やいじめを作り出しているのではないかと、そんな気がしてなりません。政府が避難者に「早く帰れ」と言って、取り巻く社会も冷たくなり、子どもたちにも影響を与えていると思います。これまで1ミリシーベルトが基準だったのに、元には戻らなくなって、話がすすんでいる。
熊本:「ひだんれん」(原発事故被害者団体連絡会)の人が昨年の秋、福島県庁前でスタンディングをやっている時に、自民党の県会議員に「あんたみたいのがいるから風評被害が拡がるんだ」と言われ、言われた人は非常にショック受けました。地元の人の話では、言った県議は腹黒い人ではなく、普通の人だということです。もっと腹黒い人は他にたくさんいるといいます。そういう人たちは露骨にはいわないようです。
瀬戸:飯舘村などを含めて、来年3月で賠償が打ち切りになる地域があるから、福島県内の住宅補償打ち切りの人たちや賠償打ち切りの人たちと一緒に連携しようということが「ひだんれん」の重要な方針となっています。県の内外の運動を結びつけるようにしていかないといけません。
熊本:実際に県外からも多くの意見書が出ています。また、県内でも南相馬市や川俣町などからも出ています。

「帰還」しても必要な支援
藤本:2016年の2月に、飯舘村民救済申立団団長の長谷川健一さんのインタビューで飯舘村に行って、山のようなフレコンパックがあちこちにあって、あそこで子どもと一緒に生活はできるのかと思いました。あそこに帰れという政策は不思議でしょうがない。子どもたちも知らなければそこで遊んでしまうことだってあるだろう。その長谷川さんは、2017年に飯舘に戻ると言っていますが、息子夫婦は戻らないと言っていました。
瀬戸:いま飯舘村をはじめ、各地でそのようなことが様々おきていて、息子は戻らず、おじいちゃん、おばあちゃんはコミュニティーがあるから戻るということが起こっています。
藤本:難しい問題ですね。子どもたちも例えば、学校の仲間は避難しない中で、自分だけが避難するという選択が迫られる。おじいちゃん、おばあちゃんもそうですが、みんなが戻っていく、そのコミュニティーから外れていくことがなかなかできない。
熊本:そういった意味では、自主避難者の方々は、ものすごい決意を持って避難してきたといえます。
藤本:だから国は、一人ひとりの選択肢、そこで暮らす人、そこを出る人などそれぞれ認めるべきだと思います。事故後、原水禁として最初に声明を出す際に、それぞれの選択肢を可能な限り国は支援しなさいとしました。いま、そうではなく国は「帰れ」と命令しています。いろいろな選択をした人たちに、一律に「帰れ」ということに問題があるのではないでしょうか。支援する側としてはどうですか。
瀬戸:単線型の支援にはなりません。そういう各自の選択に基づいて支援していくことで、裁判も支援するし、例え帰還した人でも、保養の問題とか、甲状腺の問題とか、支援しなければならないと思っています。戻っても孤立しないように支援をしなければならない。5、6年間も避難生活を強いてきたわけですから、そのような選択を尊重しなければなりません。その中で、いまは住宅問題に特化したいと思っています。
熊本:また、世代構成もめちゃめちゃで、年寄りしかいなければ町は成り立たないのではないでしょうか。
藤本:例え帰還しても、そこでの生活を再構築しなければならない。そういうことはちゃんとしているんでしょうか。雇用だってそうです。雇用のないところに戻っても何もできない。戻れと言われたって、戻った後は「自己責任」ではダメですね。

被災者に寄り添う運動を
藤本:日本はこれまで「原発事故は絶対起こりません」と安全神話を繰り返し言ってきました。その中で今回の大事故が起こってしまいました。これまで原発を信頼していた人を裏切った事故でした。そういう怒りの声はどうですか。
熊本:みんな根底にはありますね。私は裁判をやっているから、私は怒っていますと言えますが、そうじゃない方は複雑な思いですね。
藤本:日常生活の中で「怒り」をぶつける場がないという状況にあるのではないですか。東京で暮らしている避難者が、日頃から避難のことをいろいろ話すことができるのでしょうか。
熊本:私自身は福島に移住して被害にあったから、割と原発のことを話しやすい立場にいました。だからいま葛飾の団地にいますけれど、そこの卓球サークルに入っていて、そこでバンバン話をします。そうすると「署名をやって」というと、皆すぐにやってくれる。
瀬戸:いじめの問題があって、先週その集会をおこないましたが、話に立った避難者の4人のうち3人が全部仮名でした。これって異常ですね。誰も顔も出せない、名前も出せないで講演する。たぶん多くの避難した人たちは話したかったのだと思います。しかし出来なかった。自分は避難者で賠償金をもらっている。だからできなかった。いじめは子どもに始まったことではなく、大人のいじめの問題が当時からあった。ほとんどの避難者は、自分は避難者と言えなかった。みなさん地域で孤立しています。
藤本:自分が福島の避難者ということ自体を暴かれることを拒む社会であった。それが子どもにストレートに反映して、いじめに発展していく。
瀬戸:みんな心配しているのは、いじめの連鎖がつづくということです。だからさっきのように、都営住宅に当たっても転居するのが怖いとなってしまう。
藤本:避難者がいま居る所を出ないことで、なにか問題がありますか。
熊本:基本的にはないと思います。この間、江東区の区議の方から、避難者用の住宅を確保すると他の一般の方が入れない不満が出るが、いま居る所にいる場合は何の問題もないと言われました。都営住宅というのは、なかなか入れない面もあるので、一理あると思います。
瀬戸:都営住宅への入居要件の基準となる21万4千円の収入というのは、生活困窮の人の基準をただ当てはめているだけです。原発事故避難者は生活困窮者ではなく、避難して生活困窮になったわけです。それでも21万4千円以上の収入がある場合にも、申し込みができないということです。福島で住宅ローンを抱えていたりしても、同じということです。
藤本:3月で住宅補償が打ち切りとなっていますが、避難者は基本的には今まで通り住み続けられることを求めているのですね。
瀬戸:現在、政府交渉はまったくめどが立たない状況です。住み続ける権利を求めていますが、いま家賃負担が高いということが大きな問題です。私たちは住居の提供と家賃負担の補助を求めています。そのために、住宅の無償提供を求めていますが、それがダメでも世帯要件を撤廃し、希望者がそこに住めるようにして欲しいと要請しています。あと3ヶ月しかなく厳しい状況です。最近になって報道もされるようになりましたが、一般的には理解が少ないのが現状だと思います。しかし、あきらめずにがんばりたい。
藤本:一般市民の理解は少ないと思います。政府もどのような状況になっているかを言わない。それでは社会全体がその問題を受け止めるようにはならない。また、いままでの法律の中で対応しようとすることに無理があり、原発災害の法律をきちっと作っていかなければならないと思います。
 3月の打ち切りの動きに対して、避難者の避難し居住する「権利」を認めさせ、避難者・被災者に寄り添う運動を私たちもさらに進めていきたいと思います。
(2016年12月26日インタビュー)

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不当な第4次厚木爆音訴訟の判決
最高裁の住民救済放棄を許さず飛行差し止め実現を!
厚木基地爆音防止期成同盟 委員長 大波 修二

 最高裁判所第一小法廷(小池裕裁判長)で2016年12月8日、第4次厚木爆音訴訟の判決が下された。横浜地方裁判所・東京高等裁判所の1審、2審の自衛隊機の飛行差し止めと、被害賠償の昨年いっぱいの将来分賠償を破棄し、自衛隊機運航に違法性はないとして住民側請求を棄却した。いずれも最高裁判官5人全員一致の結論であり、全面的な原告逆転敗訴が決定した。
 一方、昨年の11月、最高裁は米軍機飛行差し止めの棄却について、東京高裁の判決を不服とした原告の上告書を受理しなかったことから、1審、2審の判決が確定することになった。


不当判決に抗議する人々
(2016年12月8日 最高裁判所前)
人権より国防が優先される社会を容認
 第4次爆音訴訟の基本的な要求は、米軍機の飛行差し止めを実現することであった。日本国内で国民が米軍機で健康被害を受けているのにその事実を全く無視していること、他国の軍隊が国民に犠牲を強いることに対して日本の法の支配が及ばないとして、米軍機の飛行差し止めの請求を退ける、いわゆる第三者行為論に基づく司法判断を行ったのである。
 日本国内において、外国軍隊が日本国民に肉体的精神的な損傷与えている。ところが日本政府が全く何も言わないことは最近の世界の常識から大きくかけ離れている。日本は先進国であると言われながら、アメリカの従属国に過ぎないことを証明している。
 一方、自衛隊機の飛行について、最高裁は、飛行差し止めができるのは自衛隊機の運航が裁量範囲を超えるか、乱用以外はできないと考えている。
 「被害を及ぼす自衛隊機の運航は国の裁量権の逸脱だ」とする高等裁判所の判断は誤りだと主張した。具体的には「厚木基地に駐留する自衛隊機の運航は我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産などの保護の観点から極めて重要な役割を果たしており、国防には高度の公共性・公益性がある」と言うのである。
 さらに、厚木基地に離着陸する航空機の騒音で原告らは睡眠妨害や不快感、健康被害への不安などの精神的被害は深刻で、原告らの生活の質を損ない軽視ができないことは認めるが、夜間の飛行の自主規制や住宅防音工事を実施している点を踏まえ、我慢しろとし、飛行差し止めをすることはできず、従って、防衛大臣の職務の乱用によるものだと認定できないと言うのである。
 さらに将来分の賠償においても「同じ行為の継続が予測されても具体的な損害賠償請求額や金額をあらかじめ明確に認定できない。将来の賠償請求権については、騒音による精神的、身体的被害が具体的に生じた時点での事実関係で判断すべきで、その立証責任も請求者が負う、原告側には将来分について訴える権利はない」と指摘して認めなかった。また、賠償額は2審の東京高裁の判決の94億円から82億円に減額された。つまり、最高裁判断は自衛隊機の飛行で住民の健康を破壊しても構わないと判断し、約半世紀にわたり爆音被害は基地周辺の住民に健康上多大な被害を与え続けていることを無視したのである。
 基地周辺住民は航空機爆音によって殺されかけているし、現に数百人の市民が過去に爆音で殺傷されているといっても過言ではない。誰が市民を殺傷しているか。米軍と自衛隊だ。これは誰の目にも明らかだ。しかし司法は黙ってみているしかないという。これでは司法は社会的責任を放棄したに等しい。人間の人権より国防が優先される社会は、国民がもっと大きな不幸を背負うことに繋がる。それは過去を見れば明らかである。

第5次訴訟で闘いの継続へ
 司法権は立法権・行政権とともに国家の統治作用のひとつであり、法を適用し事件・紛争を解決していく権限がある。国民の基本的人権や法的利益の侵害の救済、場合によってはそれらの侵害の予防を大きな目的としているが、今回の事件はこの権限を放棄した内容である。
 まさに最高裁判所の今回の判決は爆音に苦しめられている住民の、何とかしてほしいという切実な要求を無視し、米軍・自衛隊の航空機が自由に飛び回る特権(超低空での飛行、真夜中の飛行、機体の距離が数メートル間隔での4機編隊飛行、2機で平行離陸・平行着陸、100デシベル前後での20秒間継続爆音が実に1年間に2万回の日常生活分断等を無視し飛行する)を与えたのである。世界中でこんな生活を余儀なくされている国民は果たして存在するのか。この現実を断じて認めることはできない。
 日本の裁判制度は三審制であり第4次厚木爆音訴訟はこれで終了したが、我々はこれで諦めることは全く考えていない。次の闘いである第5次爆音訴訟を組織し、爆音と墜落の恐怖を完全に無くすまで全力で闘う決意だ。
(おおなみしゅうじ)

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台頭するポピュリズム─貧困と格差の拡大の中で
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成  

米国市民社会の不満を背景としたトランプ大統領の出現
 2017年1月10日、米オバマ大統領が8年の任期を締めくくる演説を行ないました。その中で「民主主義は、団結という基本的な意識を必要とする。外形的な違いはあっても、私たちは共にいる」と強調しました。経済的不安や偏狭な排他主義・人種差別などを民主主義の脅威として、白人労働者階級と少数派の間で確執が生まれているとの認識の中で、米国の強みは「多様性」であると指摘しました。その言葉の背景にトランプ次期大統領がいることは明らかです。
 冷静で理知的なオバマ大統領は、貧困層を対象に格差の是正を重要課題として「オバマケア」などの施策を打ち出しましたが、共和党の反対などによって必ずしも十分な成果を上げられず、雇用率は改善したものの、白人中間層の経済的底上げはかないませんでした。「YESWECAN」と締めくくった演説ですが、米国市民社会は、大統領選において、必ずしもその言葉に同意しませんでした。
 昨年12月4日付けの朝日新聞の「GLOBE」は「トランプのアメリカを歩く」との特集を掲載し、トランプが民主党有利の州や接戦州を次々と制した原動力は、地方に住む「忘れられた人々」だったとしました。「10年で年平均250万人の雇用を創出する」「メキシコとの国境に(移民を入れないために)『巨大な壁』を建設する」「中間層を壊滅させた貿易協定を終わらせる」とする主張は、人口比が減少し「アメリカンドリーム」に裏切られた白人層の圧倒的支持を受けたに違いありません。
 トランプ支持層における経済と雇用、テロの不安、犯罪や移民に対する不満は、クリントン支持者を圧倒しました。この不満は、オバマ大統領が指摘するとおり、白人社会と移民や黒人層などの少数派との分断を生み、米国の民主主義を危機に陥れ、ポピュリズムの台頭を許していることは明らかです。英国におけるEU離脱の決定も、その意味は同様です。トランプ大統領の出現は、欧州各国で台頭する極右政党を勇気づけたことは確実です。そのほとんどが、トランプ大統領と同様に、移民受け入れに反対し国家保護主義を標榜しているからです。

ウソを重ねてつくられた景気
 2014年12月に日本でも発行されたトマス・ピケティの「21世紀の資本」は、700ページを越える大著にもかかわらず、10万部を上回るセールスを記録しました。資本の取り分は労働者の取り分を上回るとする主張は、日本国内の格差問題を考えるきっかけを提供しました。2012年の調査で子どもの相対的貧困率が16.3%と発表され、1980年代には20%であった非正規労働者は、2014年には40.5%となりました。貧困と格差の課題が、日本社会を大きく覆っています。
 2016年夏の参議院選挙において安倍首相は「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」「アベノミクス加速か、後戻りかが最大の争点だ」とし、国民総所得は36兆円増加し、企業収益は過去最高で就業者数は110万人増加した、給与は3年連続で2%水準の賃上げと主張しました。
 しかし、実質成長率は旧民主党政権時代の平均1.7%を下回り0.8%で、実質賃金は2010年を100として2015年は94.6、就業者の増加数は非正規雇用者の増加に伴うものでした。アベノミクスは、日銀が紙幣を増刷し国債を購入することで下支えしています。日銀の国債保有額は、アベノミクス以前は130億円程度であったものが400億円を超しています。嘘を重ね、無理を通してつくられた景気は、市民社会を潤すことにはなっていません。
 貧困・格差の拡大は、社会層の分断をもたらしています。「波打ち際で足を取られる貧困層が差し出す手を、貧困予備軍が足蹴にする」─今の日本はまさにそのような状況になりつつあるのではないでしょうか。大阪維新の会は、高齢者への配慮を優遇措置のように主張し、比較的若い勤労者層との分断を利用するなど、ポピュリズム的手法によって支持者を拡大しました。同会を代表する橋下徹は、前出の「GLOBE」のインタビューに答えて「民主政治の基本は大衆迎合です」「(米大統領選挙の)敗北者は、メディアを含めた知識層」と言いきっています。

アベノミクスで私たちは幸せになるのか
 欧州各国や米国のような移民の少ない日本にあっても、在日朝鮮学校を授業料無償化措置からの排除をもって攻撃する。福島原発事故の自主避難者を住宅支援措置の撤廃をもって攻撃する。沖縄の高江・辺野古の闘いを機動隊と司法権力をもって弾圧する。権力による政治的分断と差別と支配、貧困と格差の拡大、少数者への差別とそのことの政治的利用が、日本の民主主義を破壊しようとしています。
 トランプ次期大統領は、1月11日の初めての記者会見において、一部のメディアを攻撃しその正当な取材要求を無視しました。これは、安倍政権のメディアに対する対応と類似しています。その意味で、日米のリーダーはともにポピュリストです。なぜなら、真実を知らせることはポピュリズムの崩壊を意味するからです。私たちは、真実を追求しそこから出発しなくてはなりません。貧困と格差の時代に、アベノミクスが主張する経済成長政策で私たちは幸せになるのか。アベノミクスの崩壊はまさに目前に迫っています。
(ふじもとやすなり)

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「パリ協定」発効の意義とこれからの課題
温暖化防止に逆行する日本のエネルギー政策
気候ネットワーク 東京事務所長 桃井 貴子

温室効果ガス排出を今世紀後半に実質ゼロへ
 2015年12月、気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で、「パリ協定」が採択されました。パリ協定は、気候変動防止の法的拘束力のある国際枠組みで、55カ国の批准と世界の総排出量の55%以上の国の批准が発効条件となっていました。早期発効をめざした国が次々と批准を急いだことにより、当初想定された以上のスピードで協定は発効しています。9月上旬に米国と中国が共同で批准を発表し、その動きをリード。その後、欧州やインドなども続いたことで条件を満たしました。
 「パリ協定」では、気候変動の脅威を防ぐために、工業化前からの地球の平均気温上昇を、2℃を大きく下回る水準に抑えることをめざすとともに、1.5℃未満に向けて努力することが盛り込まれました。世界全体の温室効果ガス排出を今世紀後半には実質ゼロになるよう、排出量を可能な限り早期に頭打ちにし、大幅削減を進めることを決めています。また、目標に向けて、世界全体の温暖化対策の進捗確認を2018年から5年毎に行うことも決まっています。事実上、化石燃料時代の終焉を意味し、産業構造的にも社会システム的にも大変革をもたらすような枠組みに200ヶ国近くの国が合意に至ったという意味でも、革命的・歴史的合意だと言われています。
 世界各国が早期発効に向けて批准の手続きを急いだのに対して、日本ではTPP協定の国会承認が優先されたこともあり、協定発効後の11月8日に批准しました。COP22の開催期間中で、新たに設置されたパリ協定締約国会議会合(CMA1)にも、締約国としてではなくオブザーバー参加となりました。日本の気候変動問題に対する優先度の低さを象徴する出来事でした。


パリ協定発効を記念して国連大学前で
(2016年11月4日)
世界はグリーン革命へ 再生可能エネルギーを促進
 今、脱炭素社会をめざす「パリ協定」を実行するため、様々な国が化石燃料から再生可能エネルギーへと大きく舵を切り出しています。パリ協定では全ての国に「長期低排出発展戦略」を作成、提出することを求めています。世界で最も早く長期低排出発展戦略を発表したドイツは、2050年に90年比80~95%削減の目標を改めて示し、温室効果ガスニュートラルをめざすことや、再生可能エネルギーの促進と石炭火力発電の漸減、建物や運輸の脱炭素化等を行うことなどを明記しています。
 アメリカ・カナダ・メキシコも、COP期間中にそれぞれの長期低排出発展戦略を発表しています。また、気候変動に脆弱な小さな国々の集まりである気候脆弱国連合(CVF)も、2020年よりも前に長期戦略を策定することを宣言し、さらに、再生可能エネルギー100%をめざす方針を掲げ、2020年までの目標の引き上げを表明しました。長期戦略は、これまでの化石燃料依存社会を見直し、エネルギーシフトすることが新しいビジネスや社会システムを生み出し、国を発展させていく戦略でもあるのです。
 最もCO2排出量の多い石炭火力発電所については、イギリスが2025年、フランスが2023年、カナダが2030年までに廃止することを決定しました。一方、太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーの導入量は急速に伸び、コストも石炭を下回ってきています。これにより、さらに再エネ導入が加速化しています。また、企業や自治体レベルでも再生可能エネルギー100%をめざすところが増えてきています。

問題視される日本の石炭火力発電計画
 一方、日本はどうでしょうか。COP22開催期間中に環境NGOのジャーマンウォッチが発表した各国の気候変動政策評価ランキングでは、日本は58ヶ国中、下から2番目の低評価を受けています。これは気候変動政策全般や再エネ、省エネ政策が評価されているものですが、特に問題視されているのは石炭火力発電所建設計画が48基にものぼっている点です。前述のように、先進国の多くが脱石炭に舵をきる中、日本は2020年前後から新たに石炭火力発電所を増やしていく計画があり、今後のCO2排出量を長期にわたって固定化することになるためです。
 また、パリ協定の制定前につくられた「エネルギー基本計画」では、石炭や原発をベースロード電源としており、2030年の電源構成では石炭が26%と見積もっています。48基の石炭火力発電所の新設計画は、この見通しをも上回りかねません。政府が石炭火力発電所を推進するエネルギー政策自体を見直す必要があります。
 さらに、こうしたエネルギー基本計画ありきで作られた日本の温室効果ガス削減目標は、2030年に2013年度比26%削減で90年比では約18%削減と非常に緩い目標から見直されていません。2050年に80%以上の削減をめざした野心的な目標の再設定と目標達成のための実行性をともなう仕組みづくりが求められています。
(ももいたかこ)

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2017年を「核兵器禁止」の年に─3月から始まる条約交渉に向けて
ピースデポ 代表 田巻 一彦

交渉の開始決議に反対する日本
 2016年のクリスマス前夜、1つのツイートが世界を駆けめぐった。
 「米国は核能力を大いに強化し拡大してゆかねばならない。世界が核に関する正気をとりもどすまでは」。ツイートの主はドナルド・トランプ。この号が手元に届く頃には米国大統領となっている、その人だ。これはプーチン・ロシア大統領が「ミサイル防衛を打ち負かすようなミサイルを開発し核戦力を強化せよ」と、国防幹部らに向かって檄を飛ばしたことに応えたものだ。トランプは翌日のテレビでこのようにも言った。「軍拡競争になったって構わない。我々は彼らに打ち勝ち、より長く生き延びるのだ」。
 私たちは2人の指導者に言ってやらねばならない。「『正気』をとり戻さねばならないのは、あなた達の方だ」と。
 トランプがツィートした翌日、国連総会では核兵器禁止条約交渉を開始する決議(A/RES/71/258)が採択された。主導したのはオーストリア、ブラジル、アイルランド、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ。投票結果は賛成113、反対35、棄権13。「圧倒的多数」ということを私はためらわない。米国、ロシアをはじめとする核保有9か国は、この決議に反対または棄権した。そして、「核兵器依存国」も反対または棄権。「反対」の中には日本も含まれている。

核軍縮のパラダイムは変わった!
 2010年4月20日、赤十字国際委員会のヤコブ・ケレンベルガー総裁(当時)はジュネーブで行った演説で次のように語った。「核兵器をめぐる議論は軍事ドクトリンやパワーポリティックスのみに基づくものであってはならないと強く確信します」「核兵器使用の防止には、法的拘束力を持つ国際条約によって核兵器を禁止し完全廃棄することを目標とした交渉を追及するという、現存する義務の完遂が不可欠です」。総裁は、核兵器使用による「非人道的結末」を回避することこそが核兵器廃絶の基本的動機とされねばならないと訴えたのである。そしてそのためには「法的禁止」こそが求められている、と。
 この演説を契機に、核兵器をめぐる議論のパラダイムは変わった。「大幅な核軍縮」でも「核軍縮を急ぐ」でもなくて、「核兵器を禁止する」こと。これが大きな目標に据えられたのだ。2013年から14年には「核兵器の人道的影響」に関する政府主催の国際会議が3回(オスロ、ナヤリット、ウィーン)にわたって開催された。ウィーン会議で発表された「オーストリア誓約」(後に「人道誓約」と改題して127カ国の賛同を集めた)は次のように言う。「すべてのNPT加盟国に対し、(略)核兵器の禁止及び廃棄に向けた法的なギャップを埋めるための効果的な諸措置を特定し、追求するよう求める」。
 日本はこのパラダイムの変化についていけない、いかない国のひとつだ。15年3月18日、安倍首相は衆議院予算委員会でこう言った。「(人道誓約は)いたずらに核保有国との関係に溝をつくって、立派なことは言っているんですけれども一歩も実は理想に近づいていくことにはならないアプローチだ」と。実際、国連の会議などで日本代表が繰り返したのは、必要なのは核兵器を禁止する法的文書ではなく、「核兵器の非人道性と厳しい安全保障環境の両方を」認識した、「核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置」だということだった。この態度をもっとも喜んだのは誰だったのか?いまさら言うまでもないだろう。

核保有国も参加せざるを得ない場に
 国連総会決議によれば、「核兵器を禁止し、それらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉する会議」は、17年3月27日~31日、6月15日~7月7日の2会期にわたってニューヨークで開催される。もちろん会議の目標達成は容易ではない。この決議は、「交渉の会議」を開くことは明らかにしているが、「禁止条約」の具体的内容には踏み込んでいない。
 私たちは白いキャンバスに画を描いてゆかねばならない。そして、核保有国と日本のような核兵器依存国の間にくさびを打ち込み、最後にはこのような国々も参加せざるを得ないような「禁止条約」を創るのである。どんなに難しく忍耐のいるプロセスだとしても。
(たまきかずひこ)

 2月26日(日)午後4時から6時半まで、ピースデポは第18回総会記念講演会「核兵器禁止条約と核の傘―北東アジアで考える」を開く。石坂浩一さんが、朝鮮半島の非核化の展望について、田巻一彦が「核兵器禁止条約」のイメージについて述べた後、参加者による討論を行う。会場は明治学院大学白金校舎。詳しくはピースデポにお問い合わせを。
045-563-5101。office@peacedepot.org

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オバマ政権、核兵器の唯一の役割は核攻撃の抑止と確信
昨年500発一方的に削減──バイデン副大統領、退陣直前の演説で

 1月11日、オバマ政権のバイデン副大統領が、カーネギー平和財団での演説で、以前から退役が予定されていた核弾頭に加えて約500発を昨年中に一方的に退役させたと発表するとともに、「核攻撃を抑止すること――そして、必要とあれば報復すること――を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすべきであると確信している」と述べました。同日、ホワイトハウスは2009年プラハ演説後の核状況に関するファクトシートを発表しました。
 下の表はこれを受けて、米科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンが同団体のサイトで更新した世界の核兵器数の推定です。米国の予備も含めた保有核は2016年9月末現在で4018発、前年9月末の4571発と比べると553発減っています。昨年9月以後さらに削減が進んで現在約4000発との推定です。(これに約2800発の解体待ち弾頭を加えた合計6800発が米国の総数となります。この他に核兵器のプルトニウムの芯の部分「ピット」2万個以上がテキサス州パンテックスの核弾頭組立・分解施設で保管されています。)

2017 年の世界の核兵器

https://fas.org/issues/nuclear-weapons/status-world-nuclear-forces/
(2017年1月11日バイデン副大統領演説後に更新)

 クリステンセンは、下のグラフを使って、オバマ政権での削減は今回の発表分を入れてもわずかな下降線としてしか見られず、冷戦後の政権の中で最も小さいと指摘します。削減数を絶対数で見ると、ブッシュ(父)9497発、クリントン3182発、ブッシュ(子)5304発、オバマ1255発。前政権から引き継いだ総数に対する削減の割合で見ても、それぞれ43%、23%、50%、24%という具合です。共和党の牛耳る議会やロシアのプーチン政権の影響に左右されるところが大きいとはいえ残念な結果です。しかも削減は予備用と推測されます。「憂慮する科学者同盟(UCS)」は、今回の削減は歓迎するとしながらも、同団体が要求してきたのは、配備核兵器500発、予備1300発(戦略核1000発、戦術核300発)の削減であったことに触れています。
 オバマ政権は核兵器の役割を敵による核攻撃の抑止に限り、先には核を使わないとの先制不使用宣言をすることを検討したが、日本を含む同盟国の反対などを理由に宣言を見合わせたと報じられています。バイデン副大統領の次の発言は日本が賛成していれば結果は違っていたかもしれないことを覗わせます。
(「核情報」主宰田窪雅文)

米国の保有核兵器数と年次変化1945-2016

 米国の計画における「攻撃下発射」手順(敵核ミサイルの発射確認後、着弾を待たずに報復用ミサイルを発射すること)への依拠を減らすようにとのオバマ大統領の指示の一環として、国防省は、わが国の計画・プロセスの調整を行ってきた。核攻撃の様々なシナリオにいかに対応するかを決める上で大統領に以前より大きな柔軟性を提供するためである。
 私たちは、2010年の「核態勢の見直し」において、核兵器の唯一の目的が他国による核攻撃の抑止となるような条件を作り出すことを約束した。これに従い、我が政権の期間中、私たちは、第二次世界大戦以来我が国の安全保障政策において核兵器が持ってきた重要性を着実に減らしてきた――いかなる敵も核兵器に頼ることなく抑止し打ち負かすための我が国の能力を改善し、同盟国にそのことについて安心してもらうようにしながら。
 我が国の核兵器以外の能力、それに今日の脅威の性格を考えれば、米国による核兵器の先制使用が必要となる――あるいはそれが意味を成す――信憑性のあるシナリオを想像するのは難しい。オバマ大統領と私は、核以外の脅威は、核以外の方法で抑止し、わが国及び同盟国を守ることができると確信している。
 次の政権は、その政策を提示することになる。しかし、「核態勢の見直し」の指示から7年、大統領と私は、これまでに目標達成に向けて十分な進歩を遂げており、核攻撃を抑止すること――そして、必要とあれば報復すること――を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすべきであると確信している。

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《投稿コーナー》
「部落差別解消推進法」が成立
総合的な人権の制度確立に向けて
部落解放同盟中央本部 総務部長 大西 聡

社会不安や不満を背景に深刻化する差別
 今日、新自由主義政策によって、貧困と格差が深刻な社会問題となり、不安定な就労実態が慢性化し、社会保障制度や労働法制の改悪がすすめられています。このような社会への不安や不満を背景に、公然と差別を扇動するヘイトスピーチや、神奈川県相模原市の障害者施設での大量殺傷事件などのヘイトクライム(憎悪犯罪)が起きています。また、昨年4月の熊本・大分を中心にした九州大地震では、朝鮮人や部落民が井戸に毒を入れたなどの悪質な差別デマがインターネット上で流されました。まさに関東大震災での朝鮮人や社会主義者の虐殺を想起させるものです。
 こうした差別のきびしい実態をふまえ、昨年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が制定されました。さらに人権の個別課題では「男女雇用機会均等法」「障害者差別解消法」「DV禁止法」「子どもの貧困対策法」など、それぞれに不十分な点もありますが、法律での対応がされてきました。また、与党内では、性的マイノリティに関する法制度も検討されています。
 部落問題に関しては、33年間にわたる事業法である「同和対策事業特別措置法」が2002年に終了した後は、「人権教育・啓発推進法」(2000年)で国や自治体などが取り組みをすすめてきましたが、財政的な面も含めてまだまだ課題も多いのが実態です。しかも人権教育・啓発という枠組みのなかで、同和教育が後退してきました。

粘り強い法制化への運動
 部落解放同盟は、部落解放・人権政策確立に向けた活動として、「人権擁護法案」の抜本修正や、民主党政権のもとでの「人権委員会設置法案」制定の取り組みなどを精力的に進めてきましたが、残念ながら法制定を実現できませんでした。しかし、部落差別の実態を訴えるとともに、「人権擁護推進審議会」が「特別措置法」以後の同和行政・人権行政のあり方を示した、01年5月の「人権救済制度の在り方について(答申)」で要請されてきた人権侵害救済制度の確立という課題について、しっかりとした政治責任を果たすように、政府や与野党に粘り強く要請するなど運動を積み上げてきました。
 こうした同和行政・人権行政の確立と推進を求める様々な働きかけの中で、昨年2月に自民党政務調査会のなかに「差別問題に関する特命委員会」と「部落問題に関する小委員会」が設置され、部落差別解消に向けた論議が進められてきました。国内人権委員会の設置には消極的な安倍政権として、ともかく個別の人権課題に取り組むという方向の中で、結果的に部落問題の解決に向けた論議が可能になったということでした。
 3月に小委員会でのヒアリングがおこなわれ、部落解放同盟は鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査復刻版」出版事件や、大阪・兵庫を中心にした大量差別文書配布事件などを取りあげ、具体的な差別の実態を強く訴えました。こうしたことを集約し、自民党内で「部落差別解消推進法案」が了承され、公明党、民進党でも党内手続きが取られ、3党による議員提案として5月19日に通常国会に提出されました。


法制定を求めた部落解放同盟の大会
(2016年3月3日)
法を実効あるものにするために
 7月の参議院選挙のため継続審議となった法案は、9月からの臨時国会で、11月17日に衆議院本会議で可決、参議院では12月6日の法務委員会の審議で、参考人として部落解放同盟の西島藤彦書記長が意見陳述を行い、いまだに部落差別が存在していることを明らかにし、法律の必要性を強く訴えました。法案は、同月8日の法務委員会で可決、翌9日の参議院本会議で賛成多数で可決、成立し、同16日に施行されました。
 「部落差別」が初めて法律の名称になるという「部落差別解消推進法」は、第1条の「目的」で、いまなお部落差別が厳しく存在することを明らかにし、インターネット上の差別情報の氾濫など高度情報化社会での新たな差別の実態にも言及しています。また「部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」としています。
 その上で必要な施策として、国や自治体による相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査などに取り組むとしています。法律の中では、罰則規定はありませんし、財政措置などを明確にしていないなど、不十分な点もありますが、今日の厳しい実態をふまえ、「部落差別は社会悪である」ということを改めて明らかにした意義は大きいと思います。
 「部落差別解消推進法」を実効あるものにしていくのは私たちの責任ですが、もちろん法律だけに依存していて問題が解決するわけではありません。法の制定をふまえ、それぞれの人権課題、差別問題へのとりくみと連帯、協働して、総合的な人権の法制度確立に向けてさらに活動を強化していくことが必要です。
(おおにしさとし)

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各地の脱原発の動きから
2月に玄海原発再稼働を許さない総決起集会
佐賀県平和運動センター 事務局長 栁瀬 映二


民家のそばに立つ玄海原発
(2014年7月撮影・佐賀県玄海町)
 昨年11月9日、国は九州電力玄海原子力発電所3・4号機の再稼働について、事実上の「合格証」を出しました。今年3月で丸6年を迎える福島第一原発事故は収束することなく、今も約8万人の方々が故郷に帰れず、避難生活を送っています。にもかかわらず電力会社の利益のみが優先され、原発が再稼働されることに満身の怒りを禁じ得ません。また、玄海原発には佐賀県民のみならず長崎、福岡、強いては西日本一帯の住民の命がかかっており、多くの人たちが求めている「地元の範囲」が整理されないままの再稼働に、住民の不安と動揺は高まっています。
 山口祥義・佐賀県知事は、国の基準に合格した原発は県民の理解を得て動かすと明言しています。何をもって「県民の理解が得た」と判断するのかも曖昧に、「玄海原子力の再稼働に関して広く意見を聴く委員会」と「原子力安全専門委員会」を設置しました。専門部会(7人)には工藤和彦・九州大学名誉教授、出光一哉・九州大学教授など原発推進の専門家が多くを占めています。部会長の工藤名誉教授は「経済やエネルギー確保の面での大きなリスクを避けるには、安全上のリスクを含むものでも使う必要がある。経済性とのかねあいもどこかで考えないといけません」と述べるなど経済優先の姿勢を明らかにしています。また、出光教授は県主催の「プルサーマル討論会」で推進派として登壇。両人とも電力会社から拠出金を受け取るなど密接な関係があると言われています。
 再稼働をめざす玄海原発3・4号機は、2017年1月18日に国の審査に「合格」しましたが、県平和運動センターとして全力を尽くして再稼働を阻止する決意を固めています。また、脱原発をめざす9つの市民団体で「脱原発ネットワーク」を組織しており、毎月1回の情報交換で「いま何をなすべきか」を議論しています。昨年の佐賀県知事への申し入れに続き、玄海町長に対しても9団体で「再稼働反対」の申し入れを行い、2月18日には佐賀市で「玄海原発の再稼働を許さない九州総決起集会」を開催して県庁包囲行動を実施します。全国の仲間の皆さんのご支援をお願い致します。
(やなせえいじ)

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〔映画紹介〕
「太陽の蓋」
2016年/日本/佐藤大監督

 「原発タブー」に触れたと評判となった映画で、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発事故の5日間を中心に追った作品です。1号機から4号機の爆発・火災事故により、日本が本当に壊滅する瀬戸際にあったこと。その中で展開された政府や東電(映画では東美電力)、原子力委員会そしてマスコミなどの動きと、福島や都市部の人々の反応を描いています。実名(一部)を挙げることによって物語に厚みを加え、菅直人首相は三田村邦彦さんが、枝野幸男官房長官は菅原大吉さん、福山哲郎官房副長官は神尾佑さんら実力派の俳優陣が演じることによって、当時の混乱ぶりがよりリアルに感じ取ることができます。
 原発事故は日本を未曽有の危機に落とし入れました。しかし、電力会社は政府に対して情報をあげないどころか、情報の隠蔽に走ったこと、原子力・保安院や学者の対応もその無能さを露呈するなど、事故に対するまともな危機管理すらできない有様は、見ているだけで非常に腹立たしくなるものでした。そんな人々がこれまで原発を強引に推進してきたかと思うと、怒りを通り越し悲しくなるばかりです。こんな人々にこれ以上危険な原発を任せる訳にはいかないと強く感じさせます。
 昨年12月のもんじゅの廃炉を求める集会(敦賀市)で講演に立った菅直人元首相も、この映画を「概ねその通りで、よく出来ている」と言っていました。民主党(当時)の肩を持ちすぎの映画と言う人もいますが、自民党政権下で起きたならばこのような情報すら出てこなかったのではないかと言われています。だからこそ、タブーと言われた原発批判の商業映画が出来たのでしょう。
 福島原発事故から6年が過ぎようとする今、改めて当時を振り返り、日本の原子力政策を考える映画として見るべきと思います。福島ではいまだ多くの人々が避難を余儀なくされています。事故の風化も言われ、あの当時の恐怖や怒り、悲しみが薄れようとしています。しかし、この映画を見ることによって再び思い出すことが出来るでしょう。現在、安倍政権や電力会社は、原発の再稼働に走り、被災者の切り捨てを行おうとしています。原発事故は終わったのではなく、これからも大きな問題が次々と出でくる危険な状況にあることを感じずにはおれません。
(井上年弘)

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核のキーワード図鑑


核汚染、ヒトとはもう暮らせない 箱舟で脱出

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追悼 和田さん!本当にご苦労さんでした

原水爆禁止広島県協議会 元事務局長 横原 由紀夫
 私が和田長久さんと出会ったのは、原水爆禁止広島県協議会(広島原水禁)の事務局を担当した1986年であった。和田さんとはよく議論をした。大阪軍縮協の学習会に招かれ討論した事は、懐かしい思い出だ。意見が一致しないこともあり、会議の場以外でも議論することが多かった。
 原子力資料情報室の故・高木仁三郎さんが、原水禁国民会議の幹事会に出席されるようになったのも和田さんの働きかけであろう。高木さんが出席されてから、脱原発をめぐる議論が盛んになり"反原発から脱原発"へと原水禁の方針が確定したが、この時はかなり激しく討論した。
 『開かれた「パンドラの箱」と核廃絶へのたたかい』(原水禁国民会議編・2002年発行)は、原子力開発と日本の非核運動についてまとめたものだが、和田さんがいなければ発行することは出来なかった。非核運動のテキストとして必読の書だ。和田さんの「あとがき」は、日本の運動にとって多くの問題を提起しており、今でも私たちが噛み締めるべき提言が溢れている。
 原水禁運動が"禁・協"に分裂する以前から、運動に関わった和田さんの存在は大きかった。私にとっても、運動の大先輩であり貴重な存在であった。(原水禁国民会議専門委員の和田長久さんは2016年12月31日に逝去されました)

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