2017年、ニュースペーパー

2017年04月01日

ニュースペーパー2017年4月






フクシマを忘れない!さようなら原発全国集会
 東日本大震災・福島原発事故から6年目を迎えた3月、2つの大きな脱原発の集会が開かれました。3月18日、福島県郡山市の開成山陸上競技場で「2017原発のない福島を!県民大集会」が開かれ、県内外から5700人が集まり、福島の現状に耳を傾けました。角田政志実行委員長(県平和フォーラム代表)が「互いに尊重し合い、原発のない福島をめざそう」とあいさつ。さようなら原発1000万人アクションを代表して精神科医の香山リカさんは「私たちは福島を事故のシンボルでなく、脱原発の第一歩だったと言えるように一緒にがんばっていきましょう」と呼びかけました。その後、被災者の生活支援や福島第二原発の廃炉などが訴えられ、馬場有・浪江町長は「原発事故の原因究明が十分になされていない」と強調しました。
 続いて、3月20日に東京・代々木公園で「いのちを守れ!フクシマを忘れないさようなら原発全国集会」が開かれ、11000人が全国各地から結集しました。福島県郡山市から川崎市に避難している松本徳子さんは、今月末に住宅支援が打ち切られる現状を報告し「原発が引き起こす悲劇を身もって知った。被害者救済は国の責任」と述べました。また呼び掛け人の鎌田慧さんからは、福島原発事故に対して前橋地裁が「国と東電」の責任を初めて認める判決を出したことを受け「この動きは全国に広がっていく。時代遅れな原発に私たちの運動で最後の一押しを」と声をあげました。集会後、渋谷や原宿をパレードして「原発被害者を切り捨てるな」「東電は責任をとれ」と呼びかけました。(写真上は渋谷をパレード行進する参加者、下は福島集会でのアピール。)

インタビュー・シリーズ:119
次の衆院選が分水嶺 3分の1超をめざせ
立憲デモクラシーの会共同代表・法政大学教授 山口 二郎さんに聞く

やまぐち じろうさん プロフィール
 法政大学教授。現代日本政治研究をすすめながら、安保法制反対運動はじめ市民運動を積極的に担う。「立憲デモクラシーの会」共同代表。著書に『安倍晋三が<日本>を壊すこの国のかたちとは-山口二郎対談集』他多数。

─「立憲デモクラシーの会」とはどのような団体で役割 は何ですか。
 2014年の春、安倍政権が集団的自衛権を認めるために9条の解釈を変更するという閣議決定を行うのが見えてきた頃、実質的な憲法改正に反対するという趣旨で、憲法学者と政治学者が集まって会を作りました。最初、共同代表は奥平康弘先生と私で、いまは樋口陽一先生と私が務めています。私が念頭に置いていたのは、60年ほど前にあった「憲法問題研究会」という憲法擁護の学者の運動です。憲法擁護の論陣を張ってメディアにも大きな影響を与えましたし、運動や市民に対しても理論的な根拠を提供していました。
今回、憲法9条の最大の危機に際して、学問の世界に閉じこもっていないで、社会に対して、市民に対して語り掛ける、訴えかける運動をしなければいけない、という危機意識で皆動きました。今まではあまり政治的活動をしなかった学者も、今回ばかりは黙ってはいられない、憲法が押し流されてしまう危機だという認識で、非常に活発に動いたわけです。閣議決定に反対し、それが押し切られた後は、今度は安保法制に反対する運動の先頭に立って行動したわけです。新聞の論説担当者を集めた勉強会をするとか、もちろん市民向けの講座とか、出版などの活動をして、安倍流改憲とか安保法制のどこがおかしいか、ということについて学問的議論を提供していったわけです。有力メンバーである長谷部恭男さん(早稲田大教授)が、衆議院の憲法調査会で、集団的自衛権の行使は違憲であると発言したことが、やはり安保法制反対運動をあそこまで大きくした要因だったと思います。安保法制が通った後も、「立憲デモクラシー講座」という市民向け講座をやっています。息の長い闘いをやっているという感じです。

─安倍政治の本質は何でしょうか。
 世界の民主主義を脅かしている動きの表れという面と、日本特有の戦後民主主義という文脈で出てきた「反動」という二つの側面があります。世界に共通する民主主義の危機という面からすれば、アメリカのトランプ大統領、ヨーロッパの極右、安倍というのは同じような性質の政治家です。ナルシシズムが非常に強いといった特徴があって、自分は常に正しい、美しいと信じている。従って、自分の信ずる正義を遮二無二に追求することを正しいと信じて疑わない。自己愛が強いから攻撃や非難を受けることを極端に嫌う。攻撃するものに対しては、逆切れして徹底的な攻撃を加える特徴がある。
 それから、自分の主張を正当化する。対立側を貶める時に、嘘、偽り、デマなんでもあり、事実に基づかない主張を平然とするわけです。これは昨年来、ポストトゥルース(ポスト真実)という言葉で世界的に注目されるようになった現象です。ポストトゥルースは日本から、安倍晋三が始めたのです。ポストトゥルースの政治家が、なぜ各国で人気を取るのか。政治家にとっても国民にとっても、トゥルースというのは、大変不愉快であり、また恐ろしくもあり、向かい合うのは非常に苦痛であり、痛みを伴うわけです。世の中どこを向いてもろくな話はないわけで、先に行ってもあまり展望がない。むしろ未来にツケを先送りしている状況です。
 これは経済にしても財政にしても、環境問題にしても、日本であれば放射能汚染、ヨーロッパであれば移民の問題、現実と向き合うのは、つらいことです。嘘でも心地良いことを言ってくれる政治家が好まれるという現象があります。困難というのは、いろいろな深い原因があるのだけれど、そういうのを無視して、あいつが悪いのだという単純な図式で理解させてくれれば、それが嘘っぱちであっても、とりあえず安心できる。それがポストトゥルースという世界的に共通した現象の、日本的表れとしての安倍政治です。
 もうひとつは戦後民主主義への反動という日本固有の文脈もあります。安倍政治が登場してきたのは、戦後70年の節目の前後でした。戦争を記憶する人が圧倒的少数になる時代に、ポストトゥルースの安倍政治が登場してきたのです。歴史修正主義に対する抵抗力もかなり低下しているわけです。失われた20年、25年、日本が段々衰弱していって、経済的に成長しないし、人口が減りだして全体的に国力が低下していくことに、人々はいろいろな不安や不満を持っています。中国が経済発展をして、軍事力も拡大して日本を脅かしているという感覚もあります。そういう状況の中で戦後民主主義は国内的にも対外的にも無力である、という感覚がある程度広がっているのでしょう。
 戦後民主主義のやり方では、国内の課題も国際的な問題も解決できない。理想とか綺麗ごとは全部かなぐり捨てて、力こそすべて、あるいはにわかに言われるようになった「ジャパンファースト」、自己中心主義で何とか解決を図ろうという気分が、国民の一部には溜まっていると思います。安倍政治というのは現実逃避なのです。自分の作った殻の中に閉じこもって、自分の見たい絵を見ていくという状態でしょうか。これでは何も解決はしないのです。

─民進党がいまの課題に応えるのにはどうしたらいいの でしょうか。
 民進党という政党は再び政権を取れるのか、今の課題を解決するためのプログラムや戦略があるのかよくわかりません。とりあえず野党第一党として存在していることが民進党の存在理由で、人々が民進党の言っていることに共感しているわけではない。ヨーロッパでもアメリカでも政権交代というのは、10年単位で起こります。いろいろな矛盾がそれこそ噴き出てくる、2020年ぐらいに次を狙うぐらいの構えで、取り組まなければいけない。無茶苦茶な金融政策、雇用の劣化、賃金の低下、若い人の生活の不安定さがいっそう大きくなっていく。あまり景気のいい話をして、人を集めるわけにはいかないのです。不愉快な現実にきちんと向き合い、そこを訴えていくしかないですね。しかし現実直視の政策は、心地のいいものではありません。

民主主義という重い遺産を次世代に渡すために

─野党共闘、市民連合というものの可能性はどうでしょうか。
 とくに一人区の選挙区で闘うには、野党を束ねていくしかないという現実があるわけで、それに応えていろいろな人が動いたわけです。ある程度の成果を上げることができた。市民連合は抵抗の運動なのです。与党の3分の2以上の議席阻止ならできると思います。安倍の好き放題を少しでも止めるための防波堤を作るのが今の政治の課題でしょう。3分の1という峰をめざしてみんなで登っていくというのが、市民連合の運動でしょう。
 まず、民進党が黙っていても野党第一党として存続できるという楽観を、捨てないとダメです。東京では小池都知事の新党が、大変な勢いで拡大しています。局地的なものだといえば、まだそのレベルなのでしょうが、「大阪維新の会」と連携するということになると、東京から大阪にいたる大都市圏では自民党をも凌駕する勢いがある。そうするといまわれわれがやっている市民連合は、本当の少数派になる可能性があります。7月の都議会議員選挙がそのひとつの前哨戦になるのでしょうが、小池新党、自民、公明、共産、の順で民進党は本当に第5党か6党になる可能性があります。これが国政の縮図になる可能性もあります。その意味で、私たちが25年間めざしてきた二大政党制あるいは政権交代がある政党政治という目標が潰え去る瀬戸際に来ていると思います。
 小池・橋本新党なるものが出来たとしても、そのようなものはある意味、自民党より悪質だと思うのです。新自由主義的な経済政策とか、憲法に対する姿勢とかです。政治の中に常識的、穏健な選択肢というものを残すことができるかどうか、次の総選挙は本当に重大な局面になっていくと思います。憲法を擁護する、社会的に平等な経済政策を立てるには、やはり民進党などが野党第一党として存在していないと、政党政治がおかしくなってしまいます。存在感ある野党第一党という立場を、守る闘いになると思います。
 その時、共産党やその他と協力して、小選挙区で100近く、数十は取らないと、自民党以外の選択肢が事実上なくなる、あるいは小池・橋下が選択肢ということになります。何より押し出す争点は脱原発でしょう。本気で脱原発をやるという姿勢を示す。内部でいろいろ反対があっても乗り越えていくという姿勢を示すことが必要です。

─次の世代に引き継ぐバトンは何でしょうか
 それはやはり戦後民主主義と憲法でしょう。活動家の世代交代がうまくいくといいと思います。立憲デモクラシーの会などをやって、学者の世界も40代、30代くらいの人たちが出てきています。こういう活動の一つの効果は、次の世代に経験を伝えていくことでもあるのです。
 この数ヵ数ヶ月、あちらこちらで地方レベルの市民連合が立ち上がっています。そういう運動の発足集会に話をせよと呼ばれて、最近あちこちに行っています。どこに行っても、人が”わんさか”来ます。仙台、千葉、神奈川、ともかくあちらこちらで、安保法制以来、この日本の民主主義の崩壊を食い止めようという人たちのエネルギーは続いています。
 次の選挙に向けて野党協力をする、そのためのプラットフォームを作るというと、多くの市民が集まって熱気は感じます。私が行くと喜んでくれて、まだまだやることがあるのだなと感じます。総選挙まで立憲主義と民主主義の旗を立てて、走り続けるしかないと思います。

インタビューを終えて
 山口さんは、「市民連合」の中心メンバーです。そして野党共闘で安倍退陣・政権交代をめざして、参議院選挙に取り組み、次の衆議院選挙へと奮闘中です。単なる学者ではなく、自らの思想を実現するために、社会運動の先頭に立っています。多くの集会でマイクを握り、デモにも参加しています。安倍の「平和と民主主義」を破壊しながらの暴走が止まっていません。安倍政権を打倒するには野党共闘しかありません。私も山口さんのがんばりを見て、がんばらねばと決意を新たにしています。
(福山真劫)

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南スーダン自衛隊PKO派遣から憲法を考える─5・3憲法集会にむけて
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成

説得力のない政府の撤退説明
 「一定の区切りをつけることができると判断した」─安倍晋三首相は3月10日、そう述べて南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している自衛隊の任務を終了し、5月末に撤退させることを発表しました。政府は、撤退をめぐって「南スーダンの国づくりのプロセスは新たな段階に入りつつある。一方、自衛隊の施設活動は5年を超え、一定の区切りをつけることができる」としました。菅義偉官房長官は「治安の悪化は理由になっていない。首都ジュバは比較的落ち着いている」などと説明し、「南スーダン政府による自立の動きに支援の重点を移すことが適当と判断した」としました。
 新たな段階というのは「国連の4000人の増派」が理由とされていますが、昨年10月25日のPKO継続の理由に「国連が4000人の増派を決定し取り組みが強化されている」ことがあげられていました。また「南スーダンの自立の動き」という視点も、キール大統領派の政府軍から多くの脱退者が出て、反政府軍に回るなど、複数の勢力が乱立する状況が生まれ、ジュバを挟んで南スーダンの北部と南部は混乱状況の中にある中では、全く説得力を欠くものです。


昨年の5.3憲法集会
(2016年5月3日・有明防災公園)

初の戦争法の運用 PKO派遣原則に違反
 日本政府は、2011年11月より国連南スーダン派遣団(UNMISS)の司令部に要員を派遣し、2012年11月より施設部隊を派遣してきました。この間、政府・自公政権は、日本の市民社会の多くの反対を押し切って、数の力で「安全保障関連法(戦争法)」を強行成立させました。その法を基にして、2016年11月より派遣部隊に対して、PKOやNGOの要員保護を目的とする「駆けつけ警護」や、宿営地の「共同防衛」を新たな任務として付与しました。「戦争法」の具体的で初めての運用でした。
 2016年7月の首都ジュバでの戦闘に対して、政府は国家間の戦闘ではなく、武力衝突だとして、PKO派遣五原則には反しないとの立場を取り、11月の第12次自衛隊派遣を決定しました。しかし、報道によれば国家安全保障会議(NSC)において、派遣決定に先駆けて9月から撤退の検討を始めていたと言われています。
 昨年7月のジュバの戦闘は死者300人を超すこととなり、UNMISSの楊超英軍司令官代理は「和平合意が維持されているとは言えない」と発言し、国連は「ジェノサイド」の危険性も指摘しています。7月1日のPKO部隊の日報には「ジュバ市内で政府軍(キール大統領派)と反政府勢力(マシャル前副大統領派)との戦闘が生起し」と記載されていたことが発覚し、問題化しました。マシャル前副大統領は、滞在先の南アフリカにおいて「ジュバは主要な標的」と述べています。南スーダンの状況は、「和平合意が存在している」とするPKO派遣原則に反していることは明らかでした。

情報操作を許さず「平和への声」が社会を変える
 政府は「法的な意味での戦闘ではない」として、戦闘を武力衝突とする「もう一つの事実」をつくり出し、撤退の時期を図りながら、一方で「駆けつけ警護」や「共同防衛」の既成事実をつくり出しました。しかし、今回の唐突な撤退は、南スーダンの情勢が極めて悪化していることの証左です。
 そのようなことはこれまで全く市民には知らされず、かつ現在もその事実を肯定しないことは、情報の恣意的な操作であり民主主義社会への挑戦であると考えざるを得ません。私たちは決してこのような状況を許してはなりません。
 今回の政府決定の主たる理由について、政府関係者などから「隊員が一人でも亡くなれば政権は吹っ飛ぶ」「自衛隊が築いてきた信頼が損なわれる」「自衛官に犠牲者が出た場合、今進めようとしている政策の一巻の終わりだ」との声が聞かれると報道されています。この言葉こそが、今回の南スーダンからの自衛隊撤退の本当の理由に違いありません。
 特定秘密保護法、NSC設置、安全保障関連法(戦争法)、テロ等準備罪(共謀罪)の成立を図り、「戦争する国づくり」を進めてきた安倍政権の道筋を変えるのは、このような声でしょう。彼らが怯えているように、日本社会の平和への思いは大きいものがあります。安倍政権の謀略を明らかにし、そのもくろみを潰すのは、「平和への声」に違いありません。
 来る5月3日の憲法記念日は、そのような声を集め固める日にしなくてはなりません。国政における圧倒的優位に立つ安倍政権が、一番気にしているのは「平和への声」です。いまだ戦争国家が何であるかを経験した者が生存する時に、確固たる「平和への声」を私たちのものにしなくてはなりません(12面に憲法集会案内)。
(ふじもとやすなり)

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「ホテルエリア」オスプレイ訓練空域下の自治体を訪ねて
飛行を許さない地域の声を作り出すことが重要
非核市民宣言運動・ヨコスカ、ヨコスカ平和船団 新倉 裕史

自治体への情報提供がまったくないことが明らかに
 2月21日、22日、東京の横田基地配備予定のCV22オスプレイの訓練空域(Hエリア)に入る群馬県下の自治体を訪問した。オスプレイ飛行訓練の危険性とともに、自治体の意向確認とフライトプラン(飛行計画)開示の重要性を伝えることが訪問の第一目的だった。要請は群馬県議の角倉邦良さん、群馬県平和運動センター事務局長の倉林誠さん、自治労群馬県本部書記長の青木雄次さん、それに新倉の4人で、それぞれの自治体の議員の同行もあった。
 関係25自治体のうち訪問できたのは8自治体だったが、横田配備に関して、関係自治体への情報提供がまったくないことが明らかになった。自治体は情報を求めており、「運動」が果たすべき役割が具体的に見えてきた。フライトプランの自治体への開示も多くの自治体が関心を持っており、住民からの声を重要視していることも確認できた。自治体は説得されておらず、さらに訪問を重ね、飛行を許さない地域の声を作り出すことが重要だ。
 下記の訪問した自治体名の後の数字は、上毛新聞が行ったアンケート結果(2017年12月28日報道)の内容で、「オスプレイの訓練飛行について」の設問に、(4)は「どちらかといえば容認できない」、(3)は「どちらともいえない」、(2)は「どちらかといえば容認」である。


要請行動で訪れた群馬県玉村町庁舎前にて
(2月22日)

8自治体に要請 反対を明言する首長も
■安中市(4)副市長
・情報公開がない。市民が不安に思っていることは受け止めて対応したい。しかし防衛問題は国の専管事項なので、直接何かを言うのは難しい。
■沼田市(4)市長、副市長
・皆さんが言っていることはよく分かる。私も賛成とは言えない。しかし基礎自治体が声をあげることは難しい。上毛新聞のアンケート回答が精一杯。・(副市長)基本は市民の安全、安心。市民が不安を感じていれば、国に伝えることはできる。
■前橋市(2)市民部長
・市長の「どちらかと言えば容認」は新聞で知って驚いた。手放しで受け入れるということではないはず。安全性の確認、情報の公開ということをクリアした上での「容認」だと思うが、直接真意は聞いていない。いずれにしても市民の声が第一。今日は勉強になった。
■高崎市(3)副市長他4人
・相馬原の合同演習にオスプレイ参加は調整中ということしか知らされていない。国が責任を持って市民生活に影響がないよう対応をとってほしいと要請した。フライトプランの開示は当然だと思う。訓練内容全般についても国に対して詳細を開示するよう求めたい。思いは皆さんと同じだ。
■甘楽町(4)町長、担当者
・空母艦載機の飛行が今年になって多くなった。昼間ここからも何度も見た。夜間飛行もある。沖縄でも市民の不安が高まっていると聞いている。フライトプランの開示は知らなかった。小さな自治体がまとまって言った方が国も耳を傾けるかもしれない。
■渋川市(3)市長、総務部長他2人
・艦載機の飛行訓練は減っている。目標がサージタンクから県庁に替わったと噂がある。横田配備のオスプレイの訓練空域とは認識していない。訓練空域と自覚している自治体は少ないのではないか。国や県からの配備や飛行の説明はない。
■玉村町(4)町長
・アンケートには良く分からないままに答えたが、沖縄で事故が起きているし、この町の上空でやられたらたまらない。やめてもらいたいということだ。国や県から(横田配備や訓練空域についての)説明はきていない。
■榛東村(3)総務課長、総務課職員
・相馬原での訓練にオスプレイが参加を検討ということだけが来ている。質問書を出したが、検討中、安全につとめるという回答。村長は安全第一という考えだと思う。横田配備に関しては国や県から情報提供はない。訓練空域に入るのではという懸念はある。
(にいくらひろし)

自治体へのアンケート調査、リーフも発行
 平和フォーラムと「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」は、米空軍オスプレイの横田基地配備計画に伴い、飛行訓練等が予定されている訓練空域「ホテルエリア」に含まれる自治体、横田基地周辺の自治体に対して、政府の情報提供の有無や自治体が求めている情報などについてアンケート調査を実施しています。3月23日には外務省、防衛省と5回目となる要請交渉を実施しました。今後も、各自治体への要請行動のとりくみ、およびアンケートの結果をもとにして政府に対してオスプレイ配備の問題点を追及していきます。またリーフレット「墜落大破したオスプレイこれでもまだ安全だというのですか」も発行しました。
(近藤賢)

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ポストTPPへ これからどうなる貿易交渉(2)
東南アジアやEU等との交渉も進む

高水準の自由化をめざす日本に中国・インドが慎重姿勢
 トランプ米大統領の「TPP離脱」の大統領令により、環太平洋経済連携協定(TPP)が頓挫することが確実視される中で、それに代わる巨大な経済圏をめざす交渉として注目を集めているのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10ヵ国と日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16ヵ国による「東アジア地域包括的経済連携」(RCEP)交渉と、日本とヨーロッパ共同体(EU)との「経済連携協定」(日欧EPA)の2つです。
 このうち、RCEP交渉会合が2月27日から3月3日まで兵庫県神戸市で開かれました。この交渉は2013年5月に始まり、日本での会合は初めてでしたが、すでに16回も行われています。神戸の交渉では大きな進展はなかったようですが、ASEAN創設50周年の今年中に交渉をまとめたいとする機運が高まっています。しかし、関税の自由化水準をめぐる意見の隔たりは依然大きく、日本は「質の高い貿易・投資ルールに合意することが重要」(世耕弘成経済産業相)として、高水準の自由化をめざしています。TPP交渉に参加していたオーストラリアやニュージーランドなども同様ですが、中国やインドは慎重な姿勢を取っています。
 交渉前日の2月26日に神戸市で市民団体が主催し「RCEP交渉の現状と問題点を語る」集会が開かれ、TPP交渉で国際的な反対運動をリードしてきたニュージーランドのジェーン・ケルシー教授が講演。「RCEPでもTPPと同じような内容を持ち込もうとしている」として、日本など先進国の動きを批判しました。ケルシー教授は特に、TPPでも問題となった、投資家が国家を訴えることができるISDS条項や、安価なジェネリック医薬品の製造を阻害する知的財産権分野などの問題点を挙げました。
 その一方で「今回の交渉にはアメリカが入らず、中国とインドが入っていることが大きく違う」として、特にジェネリック薬を多く製造しているインドが、医薬品の特許権を強化しようとする先進国の動きに対抗するのではないかという見方を示しました。また、ASEANは加盟10ヵ国の全体合意を優先する運営を行っていることから、ミャンマーやカンボジアなど低開発国を抱える中では、「TPP協定合意が今後の交渉の礎になる」(安倍晋三首相)という姿勢では対立を深めると指摘されています。


RCEP交渉会合に対する市民集会
(2月26日・神戸市)

TPP以上の秘密交渉の壁 各国市民の連携が重要に
 一方、日本とヨーロッパ共同体(EU)との日欧EPA交渉も、2013年3月に交渉開始が決定されてから、東京やEU本部のあるベルギーのブリュッセルで交渉会合が重ねられてきました。一時は、昨年中に大枠合意がなるのではと言われましたが、まだ合意には至っていません。交渉分野はTPPを上回る28に及び、これまで、EUからは豚肉や乳製品、木材、加工食品等の日本への輸出拡大が求められ、日本はEUの自動車関税引き下げなどを要求してきました。
 しかし、RCEPと同様に、日欧EPAでも交渉内容がほとんど明らかにされていません。TPPは守秘義務があることを盾に、交渉内容や経過が明らかにされませんでした。それでも、市民団体の努力で、各国の交渉担当者から情報のリークを受け、それをもとに国際的な反対運動が行われてきました。しかし、他の交渉では守秘義務規定が無いにも関わらず、日本では内容についてほとんど明らかにされていません。
 そうした中で、ヨーロッパの市民団体からの情報によれば、EUの産業界からは、農林畜産物以外にも、日本の食品添加物基準や動物用医薬品の認可、郵政事業と民間との対等な競争条件、公共工事や私鉄を含む鉄道事業への外国企業の参入拡大などが求められています。
 一方、EUでは日本以上に個人データの保護に対する規制が厳しく、電子商取引を行う場合、EU加盟国以外の国に個人データ(カード情報や名前など)が流出することを制限しています。日本は個人データの保護が不十分であり、EU並みになるには数年かかると言われており、日欧交渉でも大きな障害となっています。
 また、ISDS条項をめぐっても、EUでは利害関係のない独立した常設の仲裁裁判所で解決することや、公共利益のために規制をする権利の明確化、仲裁の対象から社会・労働関連法を除外するなど、企業の横暴を制限しようとしています。しかし、日本はTPPと同等のISDS条項を主張して対立しています。
 このように、RCEPも日欧EPAも多くの課題が残されていますが、TPPの発効が見込めないなか、安倍政権は実績造りのために、これらを強引にまとめようとしており、交渉内容の情報を各国で共有しながら、連携した取り組みを進める必要があります。
(市村忠文)

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台湾は2025年までに脱原発になる─再生可能エネルギー開発の目標達成が重要
台湾大学教授、理学博士・公共経営修士 徐 光蓉

民進党政権誕生で原発の稼働停止へ
 2016年初めの総統選挙の前に、蔡英文民主進歩党主席(現・中華民国総統)は、2025年までに現存する原発をすべて閉鎖し、第四原発は稼働しないと約束した。2017年1月、電気事業法改正案が立法院で可決され、その95条は「すべての原子力発電施設は、2025年までに稼働停止しなければならない」としている。選挙公約は法となった。多くの不確実性を乗り越える意思が、稼働停止を現実にするだろう。
 民進党が今後2回総統選挙に勝利し、議会多数を維持すれば、95条は修正されないであろう。しかし2016年5月の就任以来、蔡政権は野党のみならず、多くの民進党支持者から、政権が元国民党幹部に占められていると厳しく批判されている。政策について優柔不断であったり、早急すぎたりして、支持率は急落した。野党に有力な挑戦者は見当たらないが、再選は容易ではなさそうだ。
 蔡総統は、脱原発によって生じる電力量の減少を埋めるため、2025年までに再生可能エネルギーによる発電を20%にする目標を設定した。台湾の再生エネルギー法は、2009年に可決し、2010年に施行された。しかし、馬英九・前総統は、原子力エネルギーを選び、再生可能エネルギーを軽視した。台湾電力公司(台電)は、再生可能エネルギーを敵視してきた。風力・太陽光発電の占める割合は、2016年の終わりで合計1%を超えるだけで、2025年までに17%に到達するのはかなり困難である。


原水禁大会で台湾の原発について語る徐さん
(2015年・長崎)

原発の稼働をあきらめない台湾電力
 国有企業である台電の態度は、脱原発を達成できるかの鍵である。台電は原子力の強い信奉者である。2016年の選挙で蔡総統が勝利して2ヵ月後、台電は原子力無しに十分な電力供給は保証できないと発言した。
 台湾の6基の稼働中の原発のうち、4基の使用済み燃料プールは満杯で、緊急時に燃料全部を外せない。この危険な状況にも関わらず、台電は原発を稼働し続けようとしている。金山発電所1号機は、2014年12月から稼働されておらず、燃料組込ハンドルの破損について、議会調査中である。2016年5月16日、国聖発電所2号機の避雷設備が爆発した。台電はまだ説明が出来ず、そのため原発は閉鎖されたままである。
 2016年5月、台電は電力不足の可能性を繰り返し警告し始めた。それに惑わされた様に、無任所大臣は、電力不足のバックアップとして金山発電所1号機の再稼働を示唆した。台電により用意されたデータに基づいて林全首相(行政院長)が支持した。しかし無任所大臣は、原発はバックアップにならないという基本知識を欠いていたため、大いに嘲笑されることになった。この見解は市民社会と、脱原発公約への裏切りだとする民進党議員からの厳しい批判にさらされ、林首相は翌日、発言を撤回した。
 この事件は、蔡政権が台電のエネルギー政策での役割について、理解していないことを露呈し、台電を掌握できていないことを明らかにした。台電は電力供給が厳しいとの警告を発し続けた。謝長廷・元首相がかつて言ったように「台電はしばしば自らの主張を通すのに、不正確な情報を使う」のである。台電は国有企業であり、公然と総統の原子力ドクトリン(基本原則)を否定はしないが、独占状態を利用し、原子力以外の選択を阻止するのである。 

より多くの化石燃料を燃やす計画も
 電気事業法改正案の27条の「電力安定を維持するために、すべての発電業者は十分な備蓄を持たねばならない」に対し、市民グループと再生可能エネルギー業者から強い抗議を受けて、「参入した再生可能エネルギー業者で能力不足のものは例外」が最終的に付け加えられた。蔡政権は、競争を強めサービスを向上させるという電力改革の目的を理解していないようである。改正案6条は「安定した電力供給、発電を維持するために、台電の各部門は管理コンソーシアム(共同体)として合併できる」と書かれている。電力自由化のためには、台電を分割せねばならないが、逆に台電の独占的立場を強化している。
 十分な再生可能電力が供給されない場合には、より多くの化石燃料を燃やすことになる。実際に台電は化石発電能力を強める計画を行っている。その結果、より多くの温室効果ガスを大気中に排出することになる。パリ気候条約が発効しながら、より多くのCO2を排出するのは世界の流れに反することになる。台湾は条約に加盟していないが、グローバル合意に従わないことで経済制裁が科せられたりしたら、おそらく原子力が代替とされるのではないか。
 台湾において大量で活発な再生可能エネルギー開発を行えるかが、2025年までの脱原発の可否を決める。だから我々は明確な工程表と対応した予算配分を要求している。注意深い計画とその実施が始まれば、2025年までに脱原発は実現できる。フレームワークと正しい準備がなければ、それは空約束でしかない。
(しゅう・ぐぁんろん)(翻訳・原水禁事務局)

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日米原子力協力協定と日本のプルトニウム政策国際会議2017

 2月23、24日に国連大学で、プルトニウム政策と核拡散問題に関する国際会議が開かれました。会議は原子力資料情報室と米国の憂慮する科学者同盟(UCS)が共催、原水禁など7団体が協力、世界中から地域、国、国際レベルの政府・非政府、工学、法学から外交に至る幅広い背景を持った関係者が集まりました。ロバート・ガルーチ元国務次官補やスティーブ・フェター前ホワイトハウス科学技術政策局次長、ヘンリー・ソコルスキー元国防長官府核不拡散担当次長など米国の専門家もパネリストとして参加、強調したのが日本の六ヶ所再処理工場の稼働問題です。
 核兵器6千発分にもなる48トンが日本のプルトニウム保有量ですが、経産省の計画で、日本原燃の六ヶ所再処理工場が18年度に稼働すれば、さらに年間8トンのプルトニウムが増産される可能性があります。世界中のプルトニウム量の動向を見ると、軍事用のものの増加が止まる中、民生用のプルトニウム量が増大しています。核保有国以外では最大のプルトニウム保有国となっているのが日本です。米国の専門家たちの強調したのが、核兵器物質プルトニウムの分離が安全保障上の大きな問題であること、日本の動きに中国、韓国が疑念を抱き、東アジアでプルトニウムの増産競争が起きかねないことです。

日米原子力協力協定は18年に延長されるか
 2018年7月に発効から30年を迎え、更新される時に内容に変更があるかどうかが、日本のプルトニウム政策に大きな影響を与えます。トランプ政権がどのような方針になるかは分かりませんが、米国内からは、ちょうど本格稼働しようとする六ヶ所再処理工場のモラトリアムが提案される可能性があります。
 米国でも、核兵器由来の余剰プルトニウムが問題になっており、MOX燃料にして利用する計画は、その予想コストが膨大なものになって破綻していることが、UCSのエドウィン・ライマン博士から報告されました。このMOX利用計画にはすでに50億ドル以上が費やされていますが、MOX燃料製造工場の進捗率も30%以下、今後さらに120億ドル以上かかると見込まれています。オバマ政権はこのMOX工場建設をキャンセルし、余剰プルトニウムを不活性物質で薄めて、ニューメキシコ州の核廃棄物隔離施設に廃棄することを決めました。
 日本の再処理を認めている日米原子力協力協定は、余剰プルトニウム問題を見ても明らかなように、過去の間違った政策の遺産です。いまここで検証し、解決策を見つけなければなりません。日本は、米国が直面しているプルトニウムの処分問題から教訓を学ぶべきで、六ヶ所再処理工場を稼働させてさらに深刻なプルトニウム問題を抱え込むことが無いようにするべきです。

再処理推進の破綻
 ホワイトハウス科学技術政策局国家安全保障担当次官だった、プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル公共政策・国際問題名誉教授は、再処理が放射性廃棄物処分場の面積を減らすという再処理推進の口実について、使用済MOX燃料と高レベル廃棄物ガラス固化体以外の廃棄物を計算に入れればそうならないことを指摘されました。また、再処理はエネルギー・セキュリティーを高めるという推進理由も、実際には日本の場合でも核燃料の輸入を10%減らすに過ぎない一方、核燃料コストを倍にすることも示されました。環境を汚染する上に、大規模な放射能事故のリスクもあり、全く推進する利点はありません。
 フランスのマイケル・シュナイダーさんからは、ラ・アーグ再処理工場の老朽化、とくに蒸発缶の腐食が酷く、交換時期を早めて工場の閉鎖が必要な状況で使用済核燃料の貯蔵問題が発生、さらにプルトニウムの在庫も急速に増加する可能性なども含め、操業会社のアレバが財政状況が壊滅的なことが報告されました。世界中で再処理を中心的に担っている会社が事実上破綻しているような事業には、国家レベルでいかに補助金を注ぎ込んでも将来はないと言えます。
 日米中韓仏独台湾から23人のスピーカーが多角的な議論を行った、ごく一部しか紹介できませんが、最後に参加者の有志で発表した宣言の提言部分を下に引用します。

日米両政府に以下の点を提言します。
 日米原子力協力協定に則り、合同委員会を組織し、(1)六ケ所再処理工場の問題について、地域及び世界の安全保障に与える影響という観点から再検討をおこなうこと(2)地域及び世界の懸念を緩和するため、日本の既存のプルトニウムの安全かつ確実な管理方法を、IAEAの管理下に置くことの可能性も含めて検討すること(3)プルトニウム処分方法についての情報交換と分析をおこなうこと

そして、中国政府、韓国政府ならびに日本政府に対して、以下の点を提言します。
(1)北東アジア地域のさらなる分離プルトニウムの蓄積を回避するために、再処理モラトリアムを約束すること。日本政府はすでに分離プルトニウムを48トン保有していることから、再処理モラトリアムの先頭に立って、六ケ所再処理工場の稼働無期限延期をおこなうべきだ。この地域内の他国政府は。この先例にならって、再処理による分離プルトニウムに関する全ての活動と将来の計画をすべて停止することを約束するべきだ。
(2)このモラトリアム/停止の間に自国のすべての核燃料サイクル政策に関して包括的な検証をおこない、そして使用済み燃料の貯蔵・処分についての代替手段について検討すること。(中略)すべての情報とデータが完全に公開されたなかで、精力的な公開討論がおこなわれなければならない。関係するすべての政府はこうした再検討の結果を尊重し、それらの提言に沿ってプルトニウム政策を変更するべきだ。

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米大統領の核先制使用権限 制限を狙う法案

 米民主党のエドワード・マーキー上院議員(マサチューセッツ州選出)とテッド・リュー下院議員(カリフォルニア州選出)は、1月24日、「議会による宣戦布告がない限り先制使用核攻撃の実施を禁止する法案」を提出しました。二人は昨年9月に同様の法案を提出しています。オバマ政権は核兵器の役割を敵による核攻撃の抑止に限り、先には核を使わないとの先制不使用宣言をすることを検討したが、日本を含む同盟国の反対などを理由に宣言を見合わせたと報じられています。平和首長会議の「2020ビジョン」キャンペーンの責任者を務める米国人核問題専門家のアーロン・トビッシュはこの法案について流したメールで日本での反応はどうだろう?との問いを発しています。以下、法案の全訳のほか、マーキー上院議員、NGO「軍備管理協会(ACA)」、ウィリアム・ペリー元国防長官の文章の抜粋訳を載せました。先制不使用に反対し続ける日本政府はどういう反応をするでしょう?反核運動は?

●マーキー上院議員
 核戦争は人類の生存にとって最も深刻なリスクだ。しかし、トランプ大統領は、テロリストに対して核攻撃をかけることを検討すると示唆している。残念ながら、米国の政策は紛争において核兵器を最初に使うオプションを維持することによって、彼にその権限を与えている。核武装国との危機状況において、この政策は、意図しない核エスカレーションのリスクを劇的に高める。トランプ大統領も、他のいかなる大統領も、核攻撃に対応する以外の場合において、核兵器を使うことを許されてはならない。この法案は、核兵器の先制使用を制限することによってこの単純な原則を法定化するものだ。

●法案を紹介した「軍備管理協会(ACA)」の解説
 単純に言うと、何千万もの人々の運命が一人の人物の正しい判断と安定性に大きくかかっている。米国には、大統領の命令があればいつでも数分内に発射できる核弾頭が約900発ある──これらは全て、1945年に広島と長崎を破壊した兵器よりずっと強力なものだ。大統領は、そして大統領だけが、核兵器の使用を命令する絶大な権限を持っている。現在議会は、この件で発言権を持っていない。このような破壊的な権限を一人の人物の手にゆだね続けるのは、非民主的かつ無責任であり、現在ますます擁護しえないものとなってきている。
 2016年8月の米インターネット新聞「ハッフィントン・ポスト」と世論調査会社YouGovの共同調査において、回答者の3分の2が米国は核攻撃にに対する報復としてのみ核兵器を使うべき、あるいは、全く使うべきでないと答えている。先制使用が時には正当化されると答えたのはわずか18%だった。実際、米国の核兵器の先制使用のベニフィット(便益)がその深刻なコストを上回るシナリオを想像するのは不可能以外のなにものでもない。

●ウィリアム・ペリー元国防長官
 「私の国防長官しての在任期間、大統領に対し核兵器の先制使用をすることを──そうすれば、どのような挑発があったせよ、文明の終焉をもたらすだろうと理解しながら──提言するような状況に直面したことはないし、そのような状況を想像することさえできない。

●議会による宣戦布告がない限り先制使用核攻撃の実施を禁止する法案
第1条 短い名称
本法律は、「2017年核兵器先制使用制限法」と称することができる。
第2条 事実認定及び政策の宣言
(a)事実認定議会は以下の事実を認定する:
(1)憲法は議会にのみ宣戦布告の権限を与えている。
(2)憲法の起草者たちは、戦争を始めるという極めて重大な決定は、大量の死と文明社会の破壊とを持たしうるものであり、一人の人物によってではなく国民の代表者らによってなされなければならないと理解していた。
(3)[1973年]戦争権限法第2条(c)に述べられている通り、「敵対行為に──あるいは敵対行為に今にも巻き込まれそうであることを状況が明確に示している事態に──米国軍隊を投入する最高司令官としての大統領の憲法上の権限は、(1)宣戦布告、(2)明示的な制定法による権限付与、あるいは(3)米国、その領域または領地、あるいはその軍隊に対する攻撃によってもたらされた国家非常事態の後にのみ行使できる。
(4)核兵器は、一瞬のうちに何百万人もの人々を殺し、世界中に長期的な健康・環境面での影響をもたらし、世界平和を直接的に損ない、そして、核報復による壊滅的リスクに米国をさらす能力を持った比類のない強力な兵器である。
(5)いかなる戦争の定義によっても、米国による先制使用核攻撃は重大な戦争行為である。
(6)議会による宣戦布告なしで実施される先制使用核攻撃は、憲法に違反する。
(b)政策の宣言議会による宣戦布告なしに先制使用核攻撃を実施してはならないというのが米国の政策である。
第3条先制使用核攻撃の実施の禁止
(a)他にいかなる法的規定があるかにかわらず、大統領は、先制使用核攻撃を明示的に許可する議会の宣戦布告に従ってこれが実施される場合を除き、先制使用核攻撃を実施してはならない。
(b)先制使用核攻撃の定義本条においては、「先制使用核攻撃」は、敵が先に米国あるいは米国の同盟国に対して核攻撃を仕掛けたとの大統領による判断のない状態における当該国に対する核兵器による攻撃を意味する。
(「核情報」主宰 田窪雅文)

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《投稿コーナー》
トランプ政権に朝鮮半島政策転換迫る北朝鮮
東北アジアの対話の場の復元が重要
日朝国交正常化連絡会代表・立教大学准教授 石坂 浩一

朝鮮半島をめぐる条件の変化とオバマの失敗
 朝鮮半島をめぐる状況は、2017年に入って、がぜん変化を見せ始めた。何よりまず、米国においてトランプ政権が成立し、続いて昨年秋以降、韓国で朴槿恵(パククネ)政権への追及が強まり、とうとう3月10日に憲法裁判所で大統領の弾劾が認められた。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は予想通り、3月の米韓合同軍事演習に対抗すべく、ミサイル発射実験をおこなった。さらに、予想できなかったことだが、金正男(キムジョンナム)と思われる人物の暗殺事件が発生した。
 だが多くの出来事の実質的展開はこれからである。逆に言えば、関係国や市民社会の働きかけの余地もまた存在する。今、考えるべきことは何だろうか。
 北朝鮮は昨年9月に第5回核実験を行ない、ミサイルについても、昨年を通じて発射実験を繰り返したが、年末ごろからは米国新大統領の朝鮮半島政策や韓国の政局を見守り、穏やかな新年を迎えた。金正恩(キムジョンウン)国務委員長は元旦の新年辞で、比較的地味な基調の中、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験準備が最終段階にあると表明した。すると、トランプ大統領は早速、北朝鮮のICBM能力を否定、事実上挑発してしまった。これから北朝鮮はたくみにトランプ政権を刺激し、結局話し合いに臨まざるを得ないように仕向けようとすることだろう。
 批判の対象とすべきは、「戦略的忍耐」というオバマ大統領(当時)の戦略不在の北朝鮮政策にほかならない。オバマ政権は北朝鮮に対して核とミサイルの開発・保有・増産を許してしまった。このままではだめだということはトランプ大統領も自覚していようが、新政権のスタッフがまだろくに決定できない状態で、朝鮮半島政策についていつ方針が出せるのか、危ぶまれている。ホワイトハウスが朝鮮半島の状況を理解していないのではないかとの憂慮も指摘されている。
 トランプ政権発足以降、米国では北朝鮮への先制攻撃を容認するかのような議論が登場したこともあるが、今のところあまり攻撃的な手段は取れないとの現実論が優勢になりつつあるように見える。関与政策を主体的に具体化することが望まれる。

米国からの核先制攻撃を排除したい北朝鮮
 北朝鮮は韓国の大統領選挙まで、南に対して融和的な姿勢で臨むものと予想される。ミニマムとして、米国に核とミサイルの力をアピールすることを基本に、米韓合同軍事演習を牽制していくだろう。北朝鮮は簡単に核を放棄することはないが、朝鮮半島の平和に道筋をつける包括的交渉の場が成立すれば、参加にやぶさかではないはずだ。過渡的には北朝鮮の事実上の核保有状況を認めざるをえなくなるだろうが、事態を放置するよりましな選択肢といわざるを得ないだろう。
 北朝鮮の主張の大枠は米国からの核を含む先制攻撃の可能性の排除である。制裁を続けていても北朝鮮が屈服しないことは、すでに1990年代からの歴史が物語っている。
 ただ、金正男暗殺事件の背景や意味について判断するには材料が不足している。北朝鮮の関係者が関わっていることは否定できそうにないが、重要なポイントが未解明のままだ。崔竜海(チェリョンヘ)国務委員会副委員長がしばらく姿を見せず、2月22日になって現われたことで、彼が中国に行っていたのではないかとの見方もある。

韓国の政治・外交力の回復が求められる
 韓国では大統領選挙で野党が有利な形勢であり、文在寅(ムンジェイン)候補が有力視されている。サード(THAAD・高高度ミサイル防衛システム)配備に対する中国からの経済面を通じた圧力は、韓国の社会経済に大きなダメージになっており、韓国の立場を明確にし、朝鮮半島の新たな状況を切り開く主体となることは緊急かつ切実な課題だ。
 市民社会においても、東北アジアにおける韓国の政治・外交力の回復は、強く求められるところであり、期待は大きい。開城工業団地の操業再開などを手始めに、南北関係改善は新しい状況を切り開く役割を果たすだろう。
 残念ながら安倍政権は、こうした韓国の厳しい立場に対し、東北アジア地域の一員として協力する姿勢はおろか、むしろ米国との同盟を名分として追い込む姿勢を取っている。ともに平和を構築するための協力に向けた方針を日本政府に求めていきたい。安倍首相は北朝鮮が悪者でいてこそ戦争政策を進めることができると考えているようだが、それを東北アジアのどの国も望んではいない。
 今は東北アジアの対話の場を復元することが何より重要である。北朝鮮の核・ミサイル開発凍結と米国の核先制不使用や段階的制裁解除、そうした場の設定を推進ないし主導する韓国のリーダーシップ、そして関係国の協調が、東北アジアの平和を定着させるカギになる。
(いしざかこういち)

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各地の脱原発の動きから
3月に上関原発を建てさせない県民大集会
原水爆禁止山口県民会議 議長 岡本 博之


県民大集会のデモ
(2016年3月26日・山口市)

 1982年に山口県上関町に原発建設計画が浮上して以降、地元の上関町・祝島を中心に根強い反対運動が続いてきました。原水禁山口ではこの間、2カ月に1回の上関町内全戸ビラ配布行動や、10月26日の反原子力デーに合わせた上関での県民集会、祝島ビワ狩りツアーなどに継続して取り組んでいます。
 上関原発建設計画をめぐっては、2008年に県知事が中国電力に建設予定地の埋立免許を交付し、09年に中国電力が原子炉設置許可申請を原子力安全・保安院に提出しましたが、11年の東日本大震災・福島第一原発事故を受け、埋立工事も設置許可の審査も停止しています。
 こうした中、12年10月に埋立免許は失効期限を迎えましたが、中電が免許の延長を申請し、県が中電に補足質問を何度も繰り返すという手段で、失効の判断が先送りされてきました。そして16年8月3日、村岡嗣政・県知事は、重要電源開発地点の指定が変更されていないことを理由に「許可せざるを得ない」として、埋立免許の延長を許可しました。
 国のエネルギー政策においても原発の新増設は言及されていないにも関わらず、それを超えて新増設の判断をした、とんでもない暴挙です。さらに、県知事の動きに呼応するように、県議会では16年10月7日、自民・公明会派を中心に、上関原発を含めて原発政策の推進を国に要望する意見書が強行可決されました。
 一方、県内では、12年12月の自民党政権回帰以降、脱原発を志向する団体や個人が危機感を強め、県内の「上関原発反対の声」を結集する動きをつくって対抗すべきとの機運が高まっていました。そして、平和フォーラム山口・原水禁山口を含め、従来の枠組みを超えた幅広い団体・個人により「上関原発反対」一点集中での県内結集を呼びかけ、福島原発事故から3年目となる14年3月に山口市・維新百年記念公園で「上関原発を建てさせない山口県民大集会」を開催しました。
 この取り組みは継続しており、4回目となる今年は、映画「日本と原発4年後」の監督の河合弘之弁護士らを招き、3月25日に県民大集会を開催します。上関原発建設計画の白紙撤回までたたかい続けます。全国の仲間の皆さんのご支援をお願いします。
(おかもとひろゆき)

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〔映画の紹介〕
「薬は誰のものかーエイズ治療薬と大企業の特許権」
(2013年/インド/ディラン・モハン・グレイ監督/84分)

 いまやマスコミの話題にもならなくなった環太平洋経済連携協定(TPP)ですが、2015年10月の最終合意の直前までもめたのは、薬の特許権をめぐってでした。製薬会社の利益を代弁して特許の期間を長くしたいアメリカに対し、特許権が切れた後に、それと同じ有効成分で製造・販売される後発医薬品(ジェネリック)を普及させたい途上国が対立。日本は、アメリカの意を受けてまとめ役を買って出ていました。
 1990年代、アフリカでは毎年数百万人もの人々がエイズで命を落とすなど、世界では数千万の人々が苦しんでいました。1996年に抗レトロウィルス治療薬が開発されると、エイズ治療への希望が開けました。しかし、特許で守られた医薬品の価格は一人あたり1年間で150万円以上。貧困国では手に入る価格ではありません。
 「命を守るのになぜ特権が必要なのか?」「薬の本当のコストは?」「欧米社会はなぜアフリカを見殺しにするのか?」。映画では特許の壁を破り、途上国に安価なジェネリック医薬品を届けようと、南アフリカ、アメリカ、インドなどで医師や活動家、製薬会社などが奔走します。そして明らかになったことは、過去数十年間、医薬品の大手企業が膨大な利益を上げてきたことです。利益の多くは研究開発ではなく、企業や資本家の蓄財のために費やされました。
 そしていまも「自由貿易」の推進によって、医薬品の特許権はどんどん強化されようとしています。貧富の格差が、医薬品アクセスの格差につながることを見過ごしてはなりません。このドキュメンタリー映画の原題は『fireintheblood』。グレイ監督はこれまでも数々の社会派ドキュメンタリーを手がけており、本作は2013年に作られ、アメリカの映画祭で注目され、世界各地で上映会が行われてきました。日本語の字幕入りのDVDが昨年「アジア太平洋資料センター」から発売されました(頒価3000円)。
 ただ、映画の中でクリントンとブッシュの両元大統領が、ジェネリック薬普及に熱心な姿が出てきて、「いくら大統領を辞めてからとはいえ、ちょっと持ち上げすぎじゃないか」と突っ込みも入れたくなる場面もありました。
(市村 忠文)

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核のキーワード図鑑


アベちゃんは キライな9条に×つける

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施行70年 いいね!日本国憲法
平和といのちと人権を 5.3憲法集会

 日本国憲法を守り生かし、不戦と民主主義の心豊かな社会をめざし、戦争法の廃止や沖縄・辺野古新基地建設の撤回、原発のない世界、貧困や差別のない社会、「共謀罪」反対など、安倍政権の暴走にストップをかけるため、今年も5月3日に大規模な憲法集会が開かれます。

日時:5月3日(水・休日)11:30~イベント広場、12:00~プレコンサート、13:00~集会、14:30~パレード

会場:東京・江東区「有明・東京防災公園」(ゆりかもめ「有明駅」、りんかい線「国際展示場駅」)

内容:プレコンサート佐々木祐滋、ユキヒロ+市民合唱団トークピーコ(ファッション評論家・シャンソン歌手)、池内了(世界平和アピール七人委員会委員)、山口二郎(市民連合呼びかけ人)、山田火砂子(映画監督)、落合恵子(作家)、伊藤真(弁護士)、植野妙実子(中央大学教授)、特別ゲスト李泰鎬(イ・テホ・朴槿恵退陣緊急国民行動)政党挨拶(各野党代表)、アピール(沖縄基地問題、共謀罪問題)

詳細はホームページでhttp://kenpou2017.jp/

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