2019年、ニュースペーパー

2019年08月01日

ニュースペーパー2019年8月



参議院で護憲派3分の1超! 当面の憲法「改正」発議は阻止!
しかし、憲法を守るたたかいは続きます!

 平和フォーラムは、今回の第25回参議院選挙を、改憲阻止のたたかいと位置付け、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会および安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合に結集し、取り組みを進めてきました。13項目にわたる政策合意を基本に野党共闘を推進する市民連合の中心的役割を担い、公示前日の7月3日と選挙戦終盤の同月15日、どちらも新宿駅西口での街宣行動にも参加しました。
 7月21日の投開票の結果、護憲派(立憲民主・国民民主・共産・社民・野党統一等)は、84議席(獲得議席43・非改選41)となり、参議院定数245議席の3分の1を超えました。改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。
 しかし、安倍首相は、残り2年余の自民党総裁の任期の中で「残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と主張するとともに、野党の一部の取り込みにも意欲を示しており、引き続き、平和憲法を守り憲法理念実現をめざすたたかいの強化と立憲野党との連携強化が求められています。
 平和フォーラムは、安倍政権の暴走を阻止しその退陣を求めるとともに、立憲主義の回復と憲法理念の実現をめざすたたかいの先頭に立つことをお誓いします。(写真は7月3日、新宿西口での市民連合街宣行動)

インタビュー・シリーズ:147
言葉だけではなく、他者とのつながりに喜びを感じながら歴史を伝えていく
映画監督 大川史織さんに聞く

おおかわ しおりさんプロフィール
 神奈川県で生まれる。高校3年生の時に第9代高校生平和大使。2011年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、マーシャル諸島に移住。日系企業で働きながら、マーシャルの人びとの歴史や文化を記録する作業を進める。2015年、アジア・太平洋戦争中にマーシャル諸島で餓死した日本軍兵士を父に持つ遺族の慰霊の旅に同行し、映画『タリナイ』(2018年)を初監督作品として発表。同映画と書籍(姉妹編)『マーシャル、父の戦場―ある日本兵の日記をめぐる歴史実践』(みずき書林、2018)は2019年5月「第6回山本美香記念国際ジャーナリスト賞・奨励賞」を受賞。

─大川史織さんは第9代高校生平和大使でもあったわけですけれども、応募した理由を聞かせてもらえますか。
 高校1年生の時に参加した「愛・地球博」市民プロジェクトで、「高校生1万人署名活動」を知りました。長崎の高校生が核兵器廃絶のために行っている署名活動を日本全国へ広げようと、オープニングイベントで活動を紹介しました。その後、「愛・地球博」で出会った友達と成城学園前駅や三鷹駅前で街頭署名活動をしました。通っていた高校が自主性を重んじる自由な校風だったのと、部活動を1年生の冬に辞めてからは帰宅部で、学校の枠を越えて関心があることに取り組むことができました。そうした環境も味方となって、高校3年生で高校生平和大使に応募しました。街頭署名活動に参加したり、集めた署名を届けたりと、平和大使になる前に2度ほど長崎を訪れていました。

─大川さんが平和大使であったときには、アウシュビッツへも訪問したと聞きましたが、その時の感想などは。
 欧州訪問は、集めた署名を国連に自分たちの手で届けるという貴重な体験をさせてもらいましたが、私にとって最も大きかったことは、アウシュビッツで唯一の日本人公式ガイド中谷剛さんに出会えたことです。訪問前は、アウシュビッツで起きたことは過去の出来事と思っていました。しかし、別の形であれ、未来にも起こり得てしまうかもしれない、とガイドを通して感じました。アウシュビッツと日々の暮らしが切り離されたものではなく、地続きであると感じられたことで、自分が体験していない時代の歴史や記憶を継承するときに、体験者でない人がどのように語るのか。歴史を語るときの伝え方について、学びを深めた旅であったと振り返って思います。

─その後マーシャルに行くわけですが、そのきっかけは。
 大学入学前の春休みに、大阪にあったNGO団体が企画したスタディーツアーで初めてマーシャルに行きました。
 高校生として署名活動をする中で、さまざまな疑問も同時に抱いていました。例えば、よく見聞きする「唯一の被爆国、日本」と言うフレーズがあります。メディアも核や戦争の話題は夏の風物詩のように報道しますが、長崎の高校生たちは、夏に関係なく、日常的に署名活動をしているし、ヒバクシャの方たちにとっては、夏だけ苦しい思いをしているわけじゃない。そこのところを発信する側はもっと意識して、考えていかないと感じていました。核廃絶という目標に向かうときに、内向きに向かう語りから、一つの語りではなく複数の語りによって、ミクロとマクロの視点でとらえていく姿勢の重要性は、実際に発信する側に立ったことで意識をするようになったと思います。
 そんなことを考えながら、もっとマクロな視点で考えてみようとネット検索で、核兵器の「核」と「環境」と「開発」、これらのキーワードを入れたら、マーシャル諸島スタディーツアーの募集案内があったんですね。
 マーシャルは日本と密接につながりのある時代があったにもかかわらず、全く知らずにいて、そのことがものすごくショックでした。教科書では第五福竜丸事件については書いてあるけれども、かつて日本の統治下にあったということまでは書いていない。私の祖父はマーシャル群島を知っていても、母は知らなかった。孫世代の私はもっと知らなくて。知らなかったからこそ、行ってみようと思いました。

─スタディーツアーに参加しマーシャル諸島を知り、今回映画監督として島にかかわる映画を撮られるようになったわけですね
 大学卒業後、大学院に進学してフィールドワークという形でマーシャルに通い続けてもいいかなと最初は考えていたのですが、間に合わないなと思ったんです。幼少期に日本語教育を受けた人や、戦争体験がある人がどんどん亡くなっていく。現地の人にも、もう遅いよとすら言われました。
 でも、まだわずかでも語れる人はいたので、現地で就職先を見つけて、まずは生活者に近い状態に自分を置いて、マーシャル語と文化を学ぶことが先だと思いました。結局カメラを回すのは2年目からだったんですけれども。


戦時下で残された日記
「最後カナ」が絶筆となった

─映画『タリナイ』では、マーシャル諸島で飢えのために亡くなった日本兵の一人、佐藤冨五郎さんの日記を手掛かりに、息子の勉さんが父の足跡を追う映画となっています。
 佐藤勉さんのお父さま、佐藤冨五郎さんと日記については、私が2011年から3年間マーシャルに滞在していた時、当時のマーシャル日本大使館の安細大使が教えてくれたんです。飢えで亡くなった日本兵が日記を残していて、日記は遺族がお持ちだという話を聞いたとき、とても衝撃を受けました。日記を読めるなら読みたい、遺族の方にも話を聞きたいと思いましたが、とても興味本位では聞けない。ところが、帰国後に安細大使が佐藤勉さんをご紹介くださって、メールのやり取りをするようになりました。
 勉さんは、それまで3回政府主催のツアーでマーシャルへ慰霊の旅に行っていました。でも、勉さんがお父様の島に滞在できる時間は毎回20分ほど。あわただしく祭壇を作って、お祈りをして、片付けたら次の島へ、という状態だったようです。
 過去3回の慰霊の旅ではまだ悔いが残っている。出来れば1週間ぐらいお父さんが亡くなった島に滞在したい。それには、長くその地に住んでいた人と一緒に行けたらうれしいという依頼を受けました。勉さんに直接お会いしたことはなかったのですが、メールの文面から切実な思いが伝わり、一緒に行くことにしました。

─映画が完成して、大川さんが訴えたかったことが表現できましたか?
 何かを訴えたくて作ったわけではなくて、マーシャルの話がしたいのに、話ができる基盤がない。まずはマーシャルがどういうところかを知り、行ってみたくなるような映画を作ることで、マーシャルとつながっていきたいと思う人を増やしたいという思いが根底にあります。映画を完成させた達成感というよりも、やっと、その入口に立てたという感じです。
 今年の夏、マーシャルで上映会を開催します。核家族化が進むマーシャルで、昔はあたりまえのようにおばあちゃんやおじいちゃんから聞くことができた話を、今は知らない若者が増えています。

─3年間の滞在中や、映画撮影でマーシャルに訪れて、日本とのつながりを感じられることもあったと思いますが、逆にマーシャルの人びとは、どのようにとらえているとお考えですか。
 日本人との思い出を楽しそうに話してくれているように見えても、マーシャルの人びとの心のうちはとても複雑です。ただ、私が3年間暮らし、今も私がマーシャルにかかわり続けていたいと思うことができるのは、マーシャルの人が敵意やネガティブな感情を直接的に表すことなく、いつも穏やかに温かく向き合ってくれる姿勢があるからです。
 寛容であるとかやさしさという言葉では表現しきれないし、的確ではない。あてはまる言葉を探し中ですが、マーシャルの人たちが私たちと会う出会い方に、他者とつながるときのヒントが隠されていると思います。

─今日、日本と隣国との関係が非常に悪い。若者文化では音楽やドラマなどを通して文化的な交流はできている。しかし政治のレベルになると関係が悪化している。そういう他者とつながろうとする態度がなぜ政治の世界で出てこないのだろうと思いますね。最後に、今後大川さんがやりたい仕事は。
 今年の3月、AAS(アジア国際学会)で『タリナイ』が上映されました。開催地の米国コロラド州デンバーには約200人のマーシャル人が暮らしていました。でもデンバーで生まれ育った子どもたちは、マーシャルのことをよく知りませんでした。今、マーシャルでは毎日100人パスポートの申請をしているほど、若い人たちがどんどん外に出てしまっている。こうした現実の中で、今公開されている映画『トゥレップ-「海獣の子供」を探して-』のマーシャルパート・ラインプロデューサーとして、マーシャルの神話や伝承を映像に残せたことは貴重であったと思っています。
 また、映画と同時に新たな本づくりも進めています。言葉で表現できないことと、言葉でしか表現できないこと。両方の表現方法を磨くことで、心を通わせ合ったり、つながりを感じる喜びを抱ける仕事をしていきたいです。

<映画『タリナイ』上映予定>
8/10長崎西海市
8/10-16横浜シネマリン
8/17.18鹿児島ガーデンズシネマ
8/17-30名古屋シネマスコーレ
8/24対馬市
8/31-9/3京都シネマ
9/8神奈川県大和市
9/14上智大
9/29明治学院大
※詳細はhttps://www.tarinae.com/

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どこにもいらないオスプレイ!
関東上空は危険地帯!木更津基地への陸自オスプレイ暫定配備で
原田義康護憲・原水禁君津、木更津地区実行委員会


木更津基地に着陸したオスプレイ
(前方はCH-47 2018年10月18日)

 自衛隊が導入するオスプレイ17機について防衛省は、5月24日に千葉県木更津市に、6月6日には千葉県に対し、陸上自衛隊木更津駐屯地(以下木更津基地という)に暫定的に配備したいと説明してきた。これは、配備を予定している佐賀空港が、佐賀県は着陸料100億円をもらうことで同意したものの、漁協等が強硬に反対しているため、配備の見通しがまったく立たないため、木更津基地に暫定的に配備をしたいというものだ。

はじめから木更津ありきの暫定配備
 2017年・2018年とマスコミで「防衛省はオスプレイを木更津基地に暫定配備で最終調整」というニュースが大々的に流されたこともあり、今回の説明の際にも木更津市や千葉県は、防衛省が情報を意図的にリークし、現地の反応を見たのではないかという疑念を示した。これに対し防衛省は、そのような意図は全くなく、マスコミに流されたことは遺憾だと答えたという。私たちが「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」の防衛・外務省交渉の際、何度かマスコミ報道の真偽を問うたが、防衛省はその度に「決定した事実はない。あらゆる選択肢で検討している」と答えてきた。しかし田中紀子木更津市議(きさらづ市民ネット)は、今回の市議会基地政策特別委員会での防衛省の説明では「民間空港を除いた陸、海、空の46基地の中で、1500メートル以上の滑走路を持ち、大きな施設整備をせずに17機を収容でき、佐世保に給油なしで行ける基地」で選択したと言っており、調べてみるとマッチするのは木更津基地だけであり、はじめから木更津基地ありきであったのではないかと指摘する。

飛行訓練は関東全域に及ぶ
 暫定配備の説明では、(1)2019年度末に配備する。(2)17機全てが配備されると年間4500回程度離発着する。(4)配備後は他の自衛隊機同様に訓練を行う、としている。ここで問題になるのは、第一に暫定とはいつまでなのかが全く明らかにされず、恒久配備につながる懸念が大きいということだ。二つ目には木更津基地は滑走路が短く、基地上空で飛行機モードからヘリモードに転換することが困難な上、年間を通じて海側から強い西風が吹く日が多く、強風に弱いオスプレイは内陸からの進入を余儀なくされることも多いのではないか。さらに、木更津基地の訓練場などを明示した「木更津飛行場運用規則」によると、その訓練域は南房総全域、広くは関東地方全域が訓練空域となっており、こと木更津市や千葉県だけの問題では過ぎないということだ。防衛省の説明に対し、木更津市は「市民の声、議会の意見を聞きながら、千葉県とも連携して結論を出したい」としている。しかしマスコミ報道では千葉県は前向きに協議を行いたいとしており、両者のスタンスに差がある。市民、県民の暮らしの安全と安心を守るという、行政の基本をしっかりと堅持した対応を望みたい。また、木更津市と防衛省は6月に木更津基地周辺8地区の住民説明会を行ったが、市会議員さえ日時、場所を知らされないという中で行われた。8月3日には全市民を対象にした説明会も設営されてはいるが、「丁寧な説明を行った」という既成事実を作るためとみるのは穿った見方だろうか。


木更津駅前で暫定配備反対を訴える
(2019年7月3日)

遅れ続ける米軍オスプレイの機体整備
 木更津基地では2017年2月からSUBARUが受注し、普天間基地の米海兵隊オスプレイMV―22の定期整備が行われている。これまで3機が定期整備にやってきて、1機目は当初の説明の8ヶ月で終了するとしていた整備が、延びに延びて25ヶ月たってようやく2019年3月に終了し、2機目も既に1年以上経過するが終わっていない。整備拠点として年に5~10機の整備をすると言っていたものが、2年で1機の整備となれば、「機能不全」にあるといってもよい。防衛省はマニュアルの整備と部品の調達などで時間を要していると説明するが、かなり痛みが激しいということは想像に難くない。そのせいで、普天間基地のオスプレイの定期整備は全く進んでおらず、いわば「車検切れ」のオスプレイが全国を飛び回っている状態にある。
 安倍政権が進める日米軍事一体化の一つの現れと言えるこのオスプレイ配備について、木更津にも沖縄にも佐賀にも、そして橫田にも、「日本の空にオスプレイはいらない」という声と運動を一層強めていかなければならない。
(はらだよしやす)

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緊迫する中東情勢─海外派兵で自衛隊員を死なせてはならない!
戦争をさせない1000人委員会事務局長 弁護士 内田雅敏


戦争法に反対し国会前で大集会
(2015年8月30日)

 2016年8月31日、安倍首相は、ジャーナリストの田原総一郎と面談し、いよいよ憲法改正ですねと水を向けられたところ、「大きな声では言えませんが、改憲する必要はなくなったんです」と答え、日本が「集団的自衛権を行使出来ないから日米同盟がうまくいかない」と米国が不満を示していたが、2015年9月19日集団的自衛権行使容認する安保関連法が成立したことによって「米国は何も言わなくなった。満足したのだ」と解説したという(2018年10月17日付毎日新聞)
 2014年7月1日の閣議決定による集団的自衛権の行使容認、これを受けての翌2015年9月19日未明の安保法制の強行採決という憲法破壊、法の下剋上が2000年10月に発せられた第一次アーミテージリポート以来の米国の改憲要求の延長上にある。安倍首相の田原に対する「安保法制の成立で憲法改正の必要性がなくなった」という述懐は、そのことを裏付け、同時に、安倍首相自身が、集団的自衛権行使容認の閣議決定が憲法上如何なる意味を持つものであるかを十二分に認識していたことを示している。

もっと米国に貢献を!武器を買え!!
 「憲法上、集団的自衛権行使は許されない」とする従来の政府見解が覆る日本の安全保障政策の根幹の変更について、2015年4月23日リチャード・アーミテージ元米・国務副長官は、朝日新聞のインタビューに応じて以下のように満足げに語る。

―安倍政権は集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈を変更し、新たな安全保障法制も整備しました。
 「以前は日本と作戦計画や演習について議論すると『憲法9条があり、自衛隊は制約を受けている』と頻繁に聞かされた。(法整備した)15年以降、そのような発言は聞こえてこなくなった。集団的自衛権行使の禁止を我々は『同盟協力の妨げや障害だ』と指摘はしたが、どうするかは日本の判断だと言ってきた」、「日本の対応は大きな一歩だと評価している。ただ完全ではない。私は日本が敵基地攻撃能力を保有するのに賛成だ。」

―専守防衛の日本は『盾』の役割で、米国が『矛』を提供するとされてきました。
 「私は安保条約改定が好ましいとは思わない。条約改定論が出てくれば、米議会や日本の国会で厄介なことが起きかねない。日本が矛を持つことを懸念する米専門家はいるが、私は賛成。そうすれ日米で二本の矛を持つことになる。周囲には中国や北朝鮮など競争相手が存在している」(2018年4月24日朝日新聞)。

 アーミテージらは、2018年10月の第4次アーミテージリポートで、日本は国内の安全保障法制を改正し、集団的自衛権の行使を可能にし、その安全保障の備えを改善し、より積極的な地球的関与戦略を採用しアメリカと日本の国家指導者たちは緊密な個人的結びつきを享受し、それは両国関係の安定装置として機能していると述べ、日本の防衛政策の根幹の変更を歓迎しつつ、更に、「日本はそれ自身の防衛支出と受け入れ国支援への貢献との両方により、同盟の防衛協力に多大の貢献をしている。以前の推計は日本政府が在日米軍の維持費の約75%を支払っていることを示してきた。今年だけでも、日本政府はとりわけ同盟関係の支出として費用分担に1970億円(17億ドル)、米軍再編に2260億円(20億ドル)、自治体の各種支援に2660億円(24億ドル)の予算を組んだ。この同盟へのこれらの実際に重要な貢献は無視されるべきではない。それにもかかわらず、日本の防衛費を増やし、次の『中期防衛計画』と『防衛計画の大綱』にそれを反映させることが重要であろう。
 中国の能力と野望の増大は、北朝鮮の核とミサイルの脅威とともに、日本が防衛のために国内総生産(GDP)の1%を超えて支出することを必要としよう」と、中国、北朝鮮の脅威を煽り(敵対的依存関係)、軍事費の増大すなわち、今以上に米国からの武器の爆買をせよと迫っている。
 トランプ大統領も米国からの武器爆買をする安倍首相を称え、更に日米安保条約では米国は日本の防衛義務を負うが日本は米国の防衛義務を負っておらず不公平だと不平を鳴らし、今でさえ日本側の負担が重い在日米軍の駐留費についてその全額を負担せよと迫っている。

血を流すことになる自衛隊員
 そして「有志連合」構想である。米国は、中東からの現油輸送の大動脈となっているイラン沖のホルムズ海峡とイエメン沖のバブルマンデル海峡の航行の自由を確保するため多国籍の「有志連合」結成する検討に入ったという。専守防衛の防衛政策をかなぐり捨てた日本は、もはや日米安保条約における「極東の範囲」などという議論は吹っ飛び、「有志連合」への参加を拒むことは出来ない。海外派兵された自衛隊員の死者が出るのは時間の問題である。
(うちだまさとし)

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マイクロプラスチック問題
日本消費者連盟環境部会 栗岡理子

 プラスチックによる海洋汚染が深刻です。米ジョージア大などの研究チームによると、2010年に海に流れ込んだプラスチックは470万~1270万トンです。この数値をもとに計算すると、2050年には海のプラスチック量は魚より多くなるそうです。 

マイクロプラスチックとは
 マイクロプラスチックは5ミリ以下のプラスチックを指し、大きく2種類に分けられます。最初から5ミリ以下に作られたものを一次マイクロプラスチック、大きなプラスチック製品が劣化し、細かくなったものを二次マイクロプラスチックと呼んでいます。
 一次マイクロプラスチックには、レジンペレット(プラスチック原料の小粒)や肥料カプセル(肥料を入れた3ミリ程のカプセル)、マイクロビーズなどがあります。2018年6月、海岸漂着物処理推進法が一部改正され、洗顔剤などに研磨剤として入れられていた水に流すタイプのマイクロビーズは事業者が「使用の抑制に努める」ことになりました。しかし、ビーズソファやクッション、ぬいぐるみなどに入れられているマイクロビーズは規制されていません。海岸で直径1~2ミリ程のビーズが落ちているのを見かけることがあり、おそらくごみとして出されたビーズソファーなどの外側の布が運搬中に破れ、こぼれ出たものと思われます。
 合成繊維の衣類も二次マイクロプラスチックになります。洗濯中に排水と一緒に流れる繊維クズは下水処理施設で処理しきれずに一部が川へ放流され、海へ流出します。衣類乾燥機から大気中に放出される繊維クズも同様で、その多くは雨で洗い流され、やがて海へ流れ込むと考えられます。

マイクロプラスチックの影響
 海にはかつて流したPCB(ポリ塩化ビフェニルの略称。人工的に作られた、主に油状の化学物質のこと。)やDDT(強力な殺虫効果が認められた有機合成殺虫剤。日本では1981年に第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が禁止された。)などの有害物質が溜まっています。プラスチックはそれらの化学物質をスポンジのように吸着します。また、プラスチック自体にも紫外線吸収剤や難燃剤、可塑剤等の化学物質が添加されているため、それらが流れ出すことで、海を汚染します。添加剤の中には環境ホルモンなど有害性が指摘されているものも少なくありません。海の化学物質を吸着したマイクロプラスチックは、食物連鎖に入り込み、魚介類を通して人間にも還ってきます。人間がマイクロプラスチックを食べても大半は便として排出されるので、今のところ健康への影響はないといわれていますが、研究はまだ始まったばかりで、確かなことはわかりません。
 東京湾で捕ったカタクチイワシの8割からマイクロプラスチックが見つかっています。サンゴや動物プランクトンも、マイクロプラスチックを食べることが知られています。

危険なマイクロカプセル
 最近知られるようになったマイクロプラスチックに、柔軟剤などに入れられるマイクロカプセルがあります。目に見えない程小さなカプセルに、香料などが入れられ、カプセルが徐々にはじけて中身が出ることで効果が持続するように作られています。これは「香害」を助長するのみならず、カプセルの被膜剤にウレタン樹脂やメラミン樹脂などが使われていた場合、樹脂から発生する化学物質の影響が懸念されます。例えば、ウレタン樹脂からは強毒のイソシアネートが、メラミン樹脂からはホルムアルデヒドが大気中に放散する危険性が指摘されています。また、はじけたカプセルの破片が0.5マイクロメートル以下になった場合、鼻毛を通過し肺胞に入り込み、血管を通して全身の臓器に入り込む可能性があるそうです*。
※古庄弘枝『マイクロカプセル香害』(ジャパンマシニスト社)より

対策はプラスチックの安易な使用を避けること
 マイクロプラスチックは、北極海の海氷や深海底からも大量に見つかっています。最近では、ピレネー山脈の辺境の山地に毎日1平方メートル当たり平均365個のマイクロプラスチックが降ることが観測されました。
 プラスチックごみの散乱はポイ捨てだけでなく、カラスがごみ集積所を荒らすことでも起きるので、誰もが原因者になり得ます。また、合成繊維やマイクロカプセルを使用した製品など、使用者が気付かないうちに発生させているケースもあります。
 先般、日本が策定した「プラスチック資源循環戦略」には2030年までに使い捨てプラスチックを25%減らすことなどが盛り込まれましたが、海外のとりくみに比べ消極性が際立ちます。
 私達にできることは、使い捨てプラスチック(ペットボトルやストロー、ラップ等)を使わないこと、衣類や寝具、食器洗い用タワシなどもできるだけ自然素材にすること、そして化学物質(柔軟剤や消臭剤、殺虫剤等)の使用を控えることなどが考えられます。
 マイクロプラスチックは化学物質と絡み合い、私たちの暮らしを脅かし始めているのです。
(くりおかりこ)

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特定技能の廃炉作業は当面見送り
外国人労働者の除染作業を容認する国の姿勢を許すな!
全統一労働組合 佐々木 史朗


除染作業に従事させられる技能実習生

 入管法の改定によって新たに在留資格「特定技能1号・2号」が制定され、2019年4月から受け入れが始まった。特定技能は、技術移転・国際貢献を建前とする技能実習制度と併行して、人手不足の解消・単純労働受け入れの手段として5年間に34万人もの外国人労働者の受け入れを予定している。

除染労働をあっさり容認
 受け入れ開始の直前、法務省は2019年3月20日に「特定技能運営要領」を公表。あわせて各分野ごとの受入基準が所轄官庁によって示された。そして国土交通省は、「建設分野の受入基準」で、特定技能外国人が除染作業に従事する可能性について、「差し支えない」と明言した。
 技能実習生が除染業務に従事させられた事件が明るみに出され、送り出し国を含んで大きな社会問題となったことから、政府は2018年3月、法務省、厚労省、技能実習機構の連名で、除染は海外で行われるものではなく技術移転に該当しないとして、技能実習生の除染作業を禁止する通達を発した。
 ところが、特定技能では、除染は(なぜか除雪と並べて)建設作業ではないとして、主たる業務としては認められないとしつつ、しかし「同じ特定技能所属機関に雇用され、特定技能外国人と同様の業務に従事する他の技能者が従事している場合」は、「特定技能外国人に同様の範囲内で従事させることは差し支えありません」として、除染労働への従事をあっさりと容認したのである。
 この受入基準を根拠に、東京電力はすぐさま、ゼネコンなど協力企業各社に対して、特定技能外国人を福島第一原発の廃炉作業に投入する方針を明らかにした。東電は建設以外にも、ビルクリーニング、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、自動車整備、外食産業などの職種で、一定の業務遂行能力と日常会話程度の日本語力があれば、原発構内の放射線管理区域で就労させてかまわないと通知したのである。
 東電の外国人投入方針は、4月18日付朝日新聞で報道され、各方面に衝撃が広がった。除染作業や廃炉作業には、電離放射線障害防止規則(電離則)による放射線の基礎知識、被ばくリスク、安全対策、関連法規などの特別教育が必須とされている。外国人の日常会話程度の日本語力では、十分に理解できる内容ではない。実際に、高線量区域で作業指示が明確に伝わるのか。現場では少々のコミュニケーションミスでも重大事故に直結する。

労働者の安全・健康への配慮はどうなっているのか
 原発構内の作業では、5年間で100ミリシーベルトまたは1年間50ミリシーベルトが被ばく限界とされている。では、帰国した後の健康不安について、いったい誰が、どのようにフォローするのか。放射線管理手帳は国境を越えた被ばく線量の記録に対応しておらず、多言語化もされていない。そもそも、日本政府は、送り出し国に事前に説明し、「差し支えない」との了承を得たのか。
 5月16日、国会エネルギー調査会(準備会)は、この問題で集中ヒアリングを行ったが、出席した東電、法務省、国交省、厚労省の実務担当者たちは、これらの質問にまともに答えることができなかった。
 外国人労働者の被ばく労働の強制について不安が高まる中、労働安全に責任を持つ厚労省は、5月21日に東電に対して「東京電力福島第一原子力発電所における外国人労働者に対する労働安全衛生の確保の徹底について」との通達を発し、「日本語や我が国の労働習慣に不慣れな労働者」に対する安全衛生管理体制の確立を求め、「極めて慎重な検討を行う」よう指示した。そして東電は、厚労省通達を受けた翌日、「当面の間、発電所での特定技能外国人の就労は行わない」との声明を発した。
 しかし、「当面見送り」だけでは解決しない。東電は方針を撤回したわけではなく、一時的な留保にすぎないからだ。そもそも、厚労省の通達は福島第一原発についてのものであり、除染作業一般については「差し支えない」とされたままである。
 原発事故から8年を経過した今も、除染により大量に生じた汚染土は中間貯蔵施設に仮置きされたままで、フレコンパックの劣化も深刻だ。除染に伴う被ばく労働はこれからも続く。特定技能労働者を低賃金で雇い、除染作業に従事させ、用済みとなったらさっさと帰国させるような、外国人労働者の使い捨て、人権侵害を許してはならない。
(ささきしろう)

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2020年核不拡散条約再検討会議に向けて
藤本泰成 フォーラム平和・人権・環境共同代表

 2019年6月18日に刊行された、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年鑑(Yearbook2019)では、核保有国9カ国が持つ2019年1月時点での核弾頭の数は、2018年の発表より600発減って総数1万3865発となりました。新戦略兵器削減条約(新START)による米国とロシアの削減数が大きいものと思われます。一方で年鑑は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘し、核兵器の脅威は新たな段階に進んでいることが懸念されます。米トランプ政権の核態勢の見直し(NPR)などの方向性は、戦術核兵器の小型化や艦船へ搭載可能な核ミサイルの開発、サイバー・宇宙攻撃を想定し、核兵器開発競争を再燃させるものです。これらは、核兵器の限定使用を可能し、核兵器のあり方を根底から覆すものです。
 米トランプ政権は、「米国第一主義」「力による平和」を掲げ、威圧的、挑発的な姿勢に終始し、世界平和の脅威となっています。2018年5月には、イランとの「核合意」から、2019年2月には、ロシアとの「中距離核戦力(INF)全廃条約」から一方的に離脱を表明しました。米国とロシアの間では2021年に期限切れとなる新STARTの延長問題があります。また、米国とイランとの対立は、イスラエルやサウジアラビアなどを含めて、中東情勢の混乱を招くものです。これまでのトランプ政権の来し方は、世界がこれまで作りあげてきた核廃絶への枠組みを崩壊させるものです。現在の核をめぐる情勢は、極めて危機的であり、国連軍縮部門トップの中満泉国連事務次長は、再検討会議準備会合を前にした2019年4月2日、国連本部において「核使用の可能性は高まっている」と発言し、強い懸念を示しています。

核なき社会に背を向ける日本政府
 非核保有国122カ国で採択され、署名・批准が進んでいる「核兵器禁止条約」に対して、米国のロバート・ウッド軍縮大使は、国際情勢を無視した条約は「一つの核兵器も削減できず、重要な問題から目をそらすだけ」「危険な努力だ」と述べ、真っ向から反対しています。日本政府は、(1)日本の安全保障に重要な役割を果たす米国の核抑止を否定する、(2)条約が核保有国と非保有国との対立を生む、との理由から核兵器禁止条約は署名・批准しない方針をとっています。核廃絶NGO連絡会(被団協、ICAN、原水禁、創価学会平和委員会などで構成)との意見交換会では、外務省の担当者は、口をそろえて「日本政府と市民の皆さんとは、核なき世界を目指していくことで一致している」と繰り返し発言しています。辻清人外務大臣政務官は、核兵器禁止条約への日本の立場に言及して、「核保有国が核を手放すようにすすめていくためには、核保有国・非保有国両方の協力が必要だ。そのアプローチの中では、核禁止条約には賛成できない」と主張しています。多くの核兵器非保有国が核兵器禁止条約に署名・批准していく中にあって、核保有国は核兵器禁止条約を核兵器廃絶のプロセスに対する障壁のように利用しているのではないでしょうか。核兵器禁止条約を対立の全面に押し立てることによって、核兵器廃絶へのとりくみを牽制しています。それに対する大きな役割を担っているのが、日本政府のような立場に立つ国々です。米国の核の傘の下に安全保障政策を形成する中で、核兵器廃絶へのアプローチに真剣にとりくむとは考えられません。2020NPT再検討会議の第3回目の準備会合は、米国とロシアの対立、米国とイランの対立、そして核保有国と非保有国の対立の中で、再検討会議の方向性を決める「勧告案」を採択することはできませんでした。2015NPT再検討会議では、最終の合意文書をまとめることができず、2020年も同様の結果では、NPT体制そのものの意義が問われます。NGO連絡会との意見交換会の冒頭、辻政務官は「唯一の被爆国である日本には、核のない世界を作るために、世界をリードしていく責任があります」と述べています。河野太郎外務大臣も、「核軍縮と核不拡散に関するストックホルム会議」後の記者会見で、「各国間の対話の促進と具体的な核軍縮のとりくみの進展に貢献したい」とその意気込みを語っています。対立から対話へ、核兵器の先制不使用宣言、即時警戒体勢の解除、核の透明化、核兵器の削減、新START、CTBTの発効など様々なアプローチの構築は、日本政府の責任と言えます。

核兵器廃絶のために全力を尽くそう
 外務省は、NGO連絡会の問いに「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核保有国を追い詰めていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。
 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万人署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。
(ふじもとやすなり)

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米ロ核削減条約完全消滅?

 日本において核禁止条約についての関心が高まる一方、世界の核兵器の90%以上を保有する米ロの核戦力に関する条約がピンチです。両国の核兵器について法的拘束力を持つ制限が消滅する可能性が大きくなっています。そうなれば、1972年以来のことです。現在米ロ両国の間にある核削減関連条約は二つです。一つは、1987年「中距離核戦力(INF)」全廃条約。もう一つは、新「戦略兵器削減条約(START)」(2011年発効)です。前者は、2月に米国が破棄の意向をロシアに通告し、義務履行停止を発表、これにロシアも義務履行停止で応じ、6か月後の8月初めに失効予定です。後者は、2021年2月に失効します。5年間の延長が可能ですが、延長交渉は進んでいません。

画期的な役目を果たしたINF条約、失効へ
 旧ソ連が1970年代末に西ヨーロッパを射程に入れた新型中距離弾道ミサイルSS-20を配備したのに対応して、1979年、北大西洋条約機構(NATO)は、米ソに交渉を求めると同時に、米国の地上発射巡航ミサイル「トマホーク」と中距離弾道ミサイル「パーシングII」の配備を1983年末から欧州で開始するとの「2重決定」を行います。緊張が高まるなか、レーガン大統領とゴルバチョフ大統領が1987年末に署名し、翌年発効したのが射程500~5500kmの地上発射弾道・巡航ミサイルの生産・実験・保有を禁じたINF条約です(核弾頭と通常弾頭を区別しない)。それまでの戦略兵器制限交渉(SALT)は、その名の通り、戦略兵器の配備増大の上限を定めるものでした。INF条約は、戦略ミサイルに関するものではありませんが、厳しい査察体制の下で一つの範疇のミサイルを完全に廃棄することを決めたという点で画期的なものでした。これは、1991年の「戦略ミサイル削減条約(START)」の基礎を築くものとなりました。条約により、米ソ合わせて2692基がのミサイルが破棄されました(米側846基、旧ソ連側1846基)。

INFで破棄されたミサイル

出典:Arms Cntrol Association

 米国は2014年以来、ロシアがINF条約に違反していると主張していましたが、2017年11月にこれが、核・通常両用の9M729(SSC-8)地上発射巡航ミサイルの実験・配備のことだと明らかにしました。今年2月の条約破棄通告はこの違反を理由としています。ロシアは米国側の指摘を否定する一方、米国がルーマニアに配備し、ポーランドでも配備を計画しているイージス・アショアの発射装置MK-41が将来、INF違反の巡航ミサイルの発射に使われうるとの懸念を表明しています。また、米国は、中国がINF条約に制限されずに中距離射程のミサイルを保有していることにも不満を表明しています。ロシアも2007年以来、条約を多国化するべきと主張しています。このような中、INF条約は、失効することになりそうです。

最後の砦、新START条約を救えるか?
 残るは、戦略核兵器の上限を次のように定めた新START条約です。配備運搬手段700基(大陸間弾道弾(ICBM)発射装置、潜水艦発射弾道弾(SLBM)発射装置、それに核兵器搭載可能重爆撃機の合計)。非配備を合わせると800基。配備核弾頭は、1550発。ただし重爆撃機は1基1発との勘定です。期限の2018年2月5日までに、米ロ両国とも、この規定を達成しました。両国が交換した最新データは、2019年3月1日現在、米国が配備発射機656基、核弾頭1365発、ロシアが524基、核弾頭1461発を保有していることを示しています。これは前述の特殊な数え方のため、実際の核弾頭の保有数とは異なります。米科学者連合(FAS)は、米ロの現在の戦略配備核弾頭数をそれぞれ1600発、軍用保有核合計を3800発及び4330発、解体待ちを入れた総数を6185発及び6500発と推定しています。
 ロシアは、米国による戦略運搬手段の非核化が検証できないとし、米国はロシアの型破りの新型核兵器が条約の対象になっていないと不満を表明してきました。トランプ政権は、中国を含めた条約の交渉を呼びかけていますが、保有核兵器数300発ほどと推定される中国はそのような状況にないと参加を拒否しています。米ロだけの交渉でも、残された期間に新START条約のような相互査察などの検証措置を定めた新たな条約が締結できる見込みは乏しく、まずは、上院の承認の必要もない5年間延長を実現したうえで、その後の条約について検討する方が現実的でしょう。
 民主党が多数を占める米下院は、国防予算の大枠を決める国防権限法案(NDAA)を7月12日に採択した際、低威力で、使用される可能性を高める新型核弾頭を戦略原子力潜水艦に配備することを禁じるとともに、核兵器を先に使用しないとの先制不使用策に関する独立の報告書の作成要請に加え、新START条約の延長支持表明の文言を入れています。同法案は、米国の平和運動の焦点を象徴するものともなっています。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》 国連女性差別撤廃条約「選択議定書」を批准しないと始まらない!
中村ひろ子(I女性会議 事務局長)

 女性差別撤廃条約実現アクションは、去る3月6日にキックオフ集会を開き、「国連女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める請願署名」にとりくみました。5月末時点で5万2184筆を集め、6月初め国会に提出しました。しかし、女性活躍推進と言いながら本気ではない安倍政権は、とりあげることなく、審議未了となりました。
 実現アクションは、I女性会議を初めとする女性の人権問題にとりくんできた46の団体で構成されています。労働問題にとりくんでいるナショナルセンターの3つ、連合総合男女・雇用平等局、全労連女性部、全労協女性委員会が名を連ねていることでお分かりいただけるように、現在の日本では、最高裁まで争っても解決できない男女賃金差別問題が存在し、平等を求める多くの声があるということです。先の署名運動では、ナショナルセンターが力を発揮するには至りませんでしたが、課題であることの共通認識はできていますから、これから盛り上げていけるものと思っています。

選択議定書とは何?
 1979年に成立した国連女性差別撤廃条約は、あらゆる分野で、女性が性にもとづく差別を受けない権利と平等の権利を保障しています。多くの国で批准され、法整備はされましたが、「女らしさ」「男らしさ」といった社会慣習・慣行は一朝一夕にはなくなりません。そこで、1999年、条約の実効性を強化し、1人ひとりの女性が抱える問題を解決するために選択議定書が作られました。
 選択議定書には、2つの制度、個人通報制度と調査制度があります。
<個人通報制度>は、(1)女性差別撤廃条約で保障されている権利が侵害されたとき、女性差別撤廃委員会(CEDAW)に通報することができます。個人でも集団でもできますが、国内救済措置が尽くされていることが条件です。(2)委員会から当該国にこのような通報がありましたがどうなのかと問い合わせがあります。(3)当該国は、反論します。(4)その反論を受けて、委員会は受理するか検討します。(5)受理したら、検討・審査をします。(6)委員会は、見解(勧告)を国と通報者に通報します。(7)当該国は6ヵ月以内に回答書を提出しなければなりません。
<調査制度>は、女性差別撤廃委員会が、女性差別撤廃条約に定める権利の、重大または組織的な侵害があるという信頼できる情報を得た場合に、当該国の協力の下で調査し、国に調査結果を意見・勧告とともに送付する制度です。
 この選択議定書を批准しているのは109ヵ国で、条約批准国189ヵ国の6割弱しかありません。日本も批准していませんが、批准したら、どう変わるのでしょう。
※裁判所(司法)が、女性差別撤廃条約を裁判に適用するようになります。*国会(立法)が、性別に基づく差別的法制度を見直し、差別をなくすための法整備が進みます。*国・地方自治体(行政)が、差別された個人を救済するための方策をとるようになります。*個人やNGOが、ジェンダーに基づく無意識の偏見や差別をなくすために、条約を活用して世論を喚起できます。*ジェンダー平等と女性の権利の国際基準が私たちのものになります。
男女賃金差別事件で、夫婦別姓訴訟で、差別を認定されなかった女性たちが、CEDAWに通報して、救済される道を待ち望んでいます。
一部上場企業の男女賃金差別を提訴したものの認められなかったAさんの例を紹介します。Aさんは、高い営業成績を上げながらも、13年間昇格しませんでした。一方、12歳若い男性が昇格していったので、訴えたわけですが、一審は敗訴。二審は男女賃金格差を認めながら、(1)賃金は男女間で層として明確に分離していると言えない。(2)職能等級制度や人事考課に男性と女性で取り扱いを異にする定めはない。(3)人事考課制度には、考課者研修や本人へのフィードバック等があり公正が担保される。(4)女性は管理職を敬遠する傾向がある、等として、企業の裁量権の範囲としました。最高裁では、「これほど明確な男女間の資格分離は統計学上偶然では起こりえない」との労働経済学者の意見書も提出しましたが、棄却。
日本でたたかう術がなくなったAさんは、早く選択議定書が批准され、個人通報制度でCEDAWに通報し「日本の司法判断はこれでよいのか」問いたいと待ち望んでいます。
 6月に提出された請願署名は審議未了となりました。実現アクションでは、この秋にも署名活動を続け、さらに多くの人の賛同を得て、選択議定書の批准につなげたいと考えています。フォーラムに参集されている皆さまのご協力をお願いします。
(なかむらひろこ)


※選択議定書をわかりやすく解説したリーフ(1部5円)を用意しています。グループでの勉強会にスタッフを派遣することもできます。フォーラムを通じてご連絡下さい。



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加盟団体の活動から(第18回)
女性の視点で社会を変える
I女性会議 池田 万佐代

 私たちが目指すのは”平和と人権が守られ、女性が自分の能力を十分に発揮でき、生きやすい社会”です。女性が生きやすい社会は、男性にとっても人間らしく働き、くらせる社会です。私たちは平和憲法・女性差別撤廃条約・女性に対する暴力撤廃宣言の理念を生かし、ジェンダー平等社会を実現するために活動しています。
■女も男もすべての人が人間らしく働き続けるために
雇用における差別をなくし、男女ともに生活と仕事が両立できる税制や法整備を求めます。現在、女性差別撤廃条約の実効性を高める選択議定書の批准を求める署名に取り組んでいます。
■リプロダクティブヘルス/ライツ
富士見産婦人科事件(1980年)への取り組みは、リプロダクティブヘルス/ライツの運動の出発点。現在はHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)による被害や旧優生保護法による人権侵害を問題とし、医療のあり方、女性の生殖や健康における自己決定権の確立を目指しています。
■あらゆる女性・子どもへの暴力をなくす
復帰前の沖縄に調査団を派遣して以来、軍事基地と女性への暴力、人間の尊厳を守る運動をつづけてきました。子ども買春、DV、そして現在の#MeToo#Withyou運動へとつながっています。
■せっけん運動から環境問題そして脱原発で持続可能な社会へ
加盟団体の活動から(第18回)女性の視点で社会を変えるI女性会議池田万佐代
1970年代から合成洗剤が人体や河川を汚染することを明らかにし、安全な粉せっけんを開発。あらゆる環境破壊や食の安全への活動をひろげてきました。そして今、脱原発政策への転換と、原発事故被災者への避難・保養・健診・治療の保障を求めています。
■日本の侵略戦争の反省に立ちアジアの平和を求めて
侵略戦争、植民地支配の歴史に学び、アジアの人びとの交流・連帯、日本軍慰安婦問題や戦後補償の実現を求めてきました。武力によらない安全保障をめざしています。
■女性の政治参加で社会を変える
以上の運動を政策決定の場に積極的に持ち込み、実現するために、地方議会や国政に女性議員を送り出しています。女性の視点で政治や社会を変えるのがI女性会議の運動です。
(いけだまさよ)

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〔映画の紹介〕
『主戦場』
監督・脚本・撮影・ナレーション ミキ・デザキ

 政権に忖度するような主要メディアには取り上げられませんが、製作、上映する側の覚悟がつたわってくるような映画が上映されています。
 人気俳優の主演する「新聞記者」。参院選の時期にあわせるように、大手のシネコンで全国的に上映しているイオンも、ドキュメンタリー映画「主戦場」配給の東風も、自主上映も含め地味なドキュメンタリーも多く配給するなど活躍しています。
 物議を醸す論争―慰安婦たちは性奴隷だったのか?日本軍による強制連行は本当にあったのか?日本政府の謝罪と法的責任とは…?といった大きな疑問を、35歳の日系アメリカ人のミキ・デザキ監督が、第三者の視点から論理的に、かつテンポよく紐解いていきます。櫻井よしこ、藤岡信勝など、慰安婦問題を否定する人々からは、「従軍慰安婦」を金目的の売春婦だとする主張が語られ、映画の画面の中に客観的な引用として映されます。これに対する丁寧な反証も、客観的映像が映され、「性奴隷」の定義など、論争点が、隙なく明確に論証されて行きます。反論を述べる人々の中には、平和フォーラム関係の催しでもおなじみの面々が登場。中でも中野晃一先生の英語での発信力には感服です。問題はなかったと得々と、無邪気・無恥に発言した人々は、後になって意図に反してインタビューを「商用映画」に悪用されたなどと訴訟を起こしていますが、この映像自体が明らかな証拠として裁判の前から完敗の様相。この論争への挑戦には、相当丹念な事前調査などの準備があったと思われます。デザキ監督は、元朝日新聞記者の植村隆さんが慰安婦問題の記事に関して「ネトウヨ」から誹謗中傷され、家族までもが被害にあっていることを知ったことがきっかけで、日韓での論争を疑問に思い、さらには問題自体を否定しようと、歴史を修正しようとする人々と出会ったことで、なぜこれほどまで歴史を変えようとするのか、という疑問を追求したといいます。そして国際関係学を学ぶ上智大学の修士課程のテーマとして取り組んだという、まさに修士論文のような組み立て。日本政府の中枢がこの「歴史修正主義」に乗っかてしまっている日本の状況に対する、調査報道のお手本のような作品。もう一度見ようと思います。
上映中:http://www.shusenjo.jp/
(金生英道)

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核のキーワード図鑑


原発やめないアベ政権つくる核のゴミの山

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パンフ「2019核も戦争もない21世紀へ 核問題入門」

第74回原水爆禁止世界大会に向けたパンフを発行しました。学習会等での参考資料としてご活用ください。
★核兵器廃絶にむけて
核兵器とは/いま核兵器が使われたらどうなるか/核実験の歴史/世界の核兵器/核不拡散条約(NPT)上の核兵器国の状況/NPT枠外の核保有国の核政策/日本の核政策/核軍縮交渉の現状/非核兵器地帯とは/東北アジア非核兵器地帯とは/広がる「核兵器の非人道性」への認識/核兵器禁止条約が成立/核兵器廃絶に向けた自治体の動き/新たな核軍拡を食い止めるために2020年NPT再検討会議を生かす
★脱原発に向けて原発回帰か脱原発か/なぜ脱原発か?/福島原発事故が教えるもの/「廃炉の時代」へ/破綻する核燃料サイクル/六ヶ所再処理工場を止めよう/放射性廃棄物のゆくえ/原発輸出という失策/やっぱり脱原発
★ヒバクシャの現状と課題ヒバクシャをつくらないために/被爆体験者とは/在外被爆者とは/被爆二世問題とは/原水禁運動の出発点・ビキニ水爆実験/ビキニ水爆実験の影響/大気圏内核実験による被害とは/原発、核兵器製造サイクルが生みだす核被害/原発事故による被害とは/ニュークリア・レイシズム
★表紙イラスト/橋本勝体裁:A5版80ページ発行:原水爆禁止日本国民会議/フォーラム平和・人権・環境原価:500円(送料別)

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