ニュースペーパー

2020年11月01日

イージス・アショア断念に追い込んだ秋田・山口のたたかい

秋田県平和運動推進労組会議 議長 櫻田 憂子

河野太郎前防衛大臣が2020年6月、「イージス・アショア」配備計画の中止を表明してから4か月が経過した。この間、防衛省は、「イージス・アショアにかかる経緯について」(9月4日付)を発表し、装備に関する知見の不足や検討体制の不十分さがあったこと、地元説明の慎重さ・丁寧さに欠けたことなどを「計画失敗」の理由として振り返った。

そうした点においても、今回の計画撤回は「防衛省の自滅」の側面が強い。

しかし、自滅に追い込んだ背景に、山口県での「イージス・アショア配備計画撤回を求める住民の会」や山口県平和運動フォーラムの粘り強い防衛省要請等の闘い、県民の6割超が「反対」という世論を作り上げた秋田県内での闘いがあったことは間違いない。

幅広い闘いをつくり出した平和センター

秋田県における闘いの特徴は、私たち秋田県平和センターの闘いのみならず、候補地とされた新屋演習場に最も近い住民自治組織の反対運動、統一自治体選挙や参議院選挙における闘い、各級議会での攻防、徹底してこの問題を追及した地元紙の踏ん張り、他の市民団体の闘い、「新屋への配備反対」の一点で連帯し取り組んだ県民署名運動など、それぞれの闘いが相乗効果を成して県民世論が形成され、防衛省の決定を引き延ばし、自民党や防衛省関係者に「新屋への配備は無理」と言わしめたことにある。その中で、私たちが果たした役割は次のように整理することができる。

導入計画が閣議決定された2017年12月から18年前半、私たちはイージス・アショア計画の問題点や危険性を世論に訴えることに全力を注いだ。平和フォーラムに協力を依頼し、国会請願署名に取り組んだのもちょうどこの頃であった。一方で、住民の思いに寄り添った運動を提起し、県内での住民や野党議員との連携を模索し、住民と議員を迎えての意見交換会などに取り組んだ。

「住宅地になぜイージス!?」議員と県民との意見交換会 2019.2.3

また、平和フォーラムや山口県平和運動フォーラムと連携し、防衛省交渉や国会議員要請にも力を注いだ。立憲民主党や国民民主党におけるイージス・アショア配備計画に対する方針が定まっていない中で、2度3度と議員要請を行い、2018年12月の要請行動では、野党のほとんどが配備計画反対を表明するなど手応えを感じる取り組みとなった。

2018年7月には、地元住民の自治組織である「新屋勝平地区振興会」がイージス・アショア配備計画反対を決議する。私たちは彼らの活動を支援し、請願提出などの議会対策や、学習会・フィールドワークなどを連携して取り組んだ。2019年4月の秋田県議会選挙秋田市選挙区で社民党公認候補が躍進を果たしたのは、そうした運動が地元住民に受け入れられ、信頼を勝ち得たからではないか。

2019年2月には、市議会議員の呼びかけで県民との対話型の意見交換会を開催したが、企画・運営は私たちが担当した。その時点でイージス・アショアに反対する国会議員、県議会議員、市議会議員と地域住民、市民団体等のゆるやかな連携が完成し、7月の参議院選挙で、その輪が県内の隅々まで広がっていった。10月から実施した県民署名では、多くの人が呼びかけ人となって署名活動に奔走した。その県民署名が秋田市議会を動かし、計画撤回を求める請願・陳情と意見書の採択に至った。

一方、山口県の住民の会は、専門家集団である「科学者の会」と連携し、学術的見地から防衛省を追い込んでいった。住民の会代表の森上雅昭さんは、立憲フォーラムが主催した11.19院内集会で「秋田に続け」とおっしゃったが、ブレない視点で最終打を打ち込み、計画停止をもぎ取った。こうして、私たちの闘いは一つのピリオドを打ったのである。

地域住民とともに平和をつくる

しかし、計画停止の直後から、イージス・アショア配備の代替案とともに「敵基地攻撃能力」の保持の検討が始まった。住民の反対や、能力・費用対効果の面でリスクの高いイージス・アショアに見切りをつけ、専守防衛を逸脱したより危険な領域に金を注ぎ込もうとしている。

これらに対し、イージス・アショア配備計画撤回の闘いの教訓をどう生かすのか。その答えは簡単ではないが、私たちは、生活のすぐそばに「基地」があることの不安を自分事として考えることができた。日米安保や防衛協力体制の推進が、いかに危険なものであるかを学習することもできた。そして何より、住民とともに闘うことの大事さを知った。一度は追いやった武器が、違う形で再び誰かの生活や平和を脅かすこととなってはならない。闘いを過去のものとせず、自分事としてこれからの問題に立ち向かっていきたい。(さくらだ ゆうこ)

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