WE INSIST!、ニュースペーパー

2021年01月01日

誤った政治が、誤った歴史をつくる

WE INSIST!

「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」など多数の著書があり、近現代史を専門とする加藤陽子東大教授は、今年8月13日のNHK「視点・論点」において、1930年のロンドン海軍軍縮条約をめぐる外相幣原喜重郎と海軍軍令部の対立を引きながら、「鋭く意見が対立する状況では、それぞれの主張を支える根拠や決定へ至るプロセスが、国民の前で十分に情報開示されることが本当に大切だと思います。コロナ禍の中で戦争の歴史を考える意味はそこにあります」と述べた。

安倍政権下7年8ヶ月、政治は「国民の知る権利」をどのように捉えてきたのか。安倍首相は、特定秘密保護法の制定にあたって「今後とも国民の懸念を払拭すべく丁寧に説明していきたい」と述べた。何かあるごとに「丁寧に説明し」「国民のご理解をいただき」と繰り返してきたが、しかし、国会は空転し、かみ合うことのない答弁に、説明責任は果たされていない。特に、国有地を不当に安く売却した森友事件、総理のご意向で獣医学部新設が決定した加計学園事件、安倍事務所が懇親会費を補填した桜を見る会事件、これらは情報公開どころか、隠蔽と破棄が繰り返された。安倍政権は、多くの政策でその根拠や決定へのプロセスを開示してこなかった。加藤教授の指摘は、「戦前の日本がどのような経緯を持って無謀な戦争に突入していったか」ということへの綿密な歴史の検証の中で生まれてきたものだ。歴史に学ぶ姿勢のない政治家は、退場してもらいたい。

ご存じのように、加藤陽子教授は、今回学術会議会員に推薦されながら、菅内閣によって任命を拒否された6人のうちの一人だ。菅首相は「総合的、俯瞰的に判断した」と述べ具体的理由には触れず、人事を理由に「答弁を控える」と臨時国会中に100回以上も繰り返した。閉会にあたっては、何と「国会では何回となく質問を受けて丁寧に答えてきた」と述べている。それが、100回を超える答弁拒否だった。「茶番」としか言い様がない。「安倍政権を継承する」という菅首相の言葉は、なるほど、真摯な答弁を放棄し、記録を改ざんし、あったことをなかったものにして、政治を私物化することだったのか。誤った政治が、誤った歴史をつくる。そこにあるのは、無辜の人々の犠牲でしかない。歴史がそう語っている。(藤本 泰成)

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