ニュースペーパー

2020年09月01日

朝鮮幼稚園にも幼保無償化の適用を!

―46万をこえる賛同署名の一筆一筆にこめられた思いを糧に─
幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会/在日本朝鮮人人権協会 事務局 宋 恵淑

46万をこえる賛同署名

2020年6月15日、私たち朝鮮幼稚園の保護者は、平和フォーラムをはじめとする日本の市民団体のみなさんとともに、2019年10月にスタートした幼保無償化制度に、朝鮮幼稚園など各種学校認可を得た外国人幼稚園も対象とするよう求める要望書と、2019年12月1日から全国的に行われている署名活動を通じて集まった署名の一部を提出した。140人にのぼる日本人有識者も賛同を表明した同署名は、コロナ禍によりかなりの制約があったにもかかわらず、2020年5月末現在で46万6,876筆にのぼった。

外国人学校幼稚園も「支援策」の対象に

署名一筆一筆に込められた、幼児教育にまで理不尽な差別をする日本政府に対する強い反発と差別の是正を求める思いを糧に運動を展開した結果、新たな局面を迎えている。日本政府が幼保無償化実施前から検討していた幼保無償化対象外施設に対する支援策に、外国人学校幼稚園も含まれる可能性が高くなってきたのだ。

そもそもこの「支援策」、団地の有志などによる幼児施設や、地域の神社・寺・教会などで集団的活動を行う施設などの幼児教育類似施設を念頭においたもので、文部科学省は外国人学校幼稚園を「支援策」の対象として含めるのか否か曖昧にしてきた。しかし2019年11月2日の集会(写真)やパレード、賛同署名をはじめとする私たちの差別是正を求める声によって、来年度からはじまる「支援策」を形作るために今年度行われる「調査事業」に、外国人学校も含まれることとなったのだ。

「調査事業」とは、文科省が主管し行う自治体への委託事業で、外国人学校幼稚園や幼児教育類似施設に子どもを通わせている保護者の意識、当該施設の安全性、施設の活動内容の把握などを調査し、来年度の本格的な「支援策」につなげていくものだが、問題点がある。第一に、国が「調査事業」に係る判断を、自治体への委託事業という形式で自治体に丸投げしたがために、国からすでに外国人学校幼稚園は幼保無償化の対象ではないという方針が出されているため今回の「調査事業」の対象にもならないと決めつけてしまったり、コロナ禍のなかで、「調査事業」への手上げを躊躇したりする自治体がでてしまったことだ。第二に、「調査事業」の前提条件に、現在自治体がなんらかの金銭的支援を行っていることが付されているという問題点がある。すなわち、高校無償化除外という国の差別に連動する形で朝鮮学校・幼稚園に対する補助金を停止する自治体が続出しているなか、同じ朝鮮幼稚園の園児であっても、自治体からの補助金の有無によって「調査事業」の対象となる/ならないの線引きがなされてしまったということなのだ。

日本のみなさんとの共闘が、子どもたちの明るい未来を呼び込むカギ

こうした大きな問題点がありながらも、朝鮮幼稚園に通う園児が居住する18の自治体が「調査事業」の公募に手上げし、文科省内部での審査の結果、13自治体が委託先として選定された。そして、「調査事業」の対象施設の類型のひとつとして、「外国人等を主たる対象とするもの」が加えられたのだ。13もの自治体が選定―これは決して軽視できるものではなく、たとえ朝鮮学校への公的支援に反対するような輩が騒いだとしても、簡単にひっくり返すことのできない数であり「調査事業」になると確信している。そしてこれは、幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外がいかに不当で不平等で理不尽で、即時是正されなければならない差別であるかということの証左であり、さらに、高校無償化適用運動からこれまで、屈することなく、朝鮮学校の子どもたちに対する理不尽な差別の撤廃と子どもたちの学習権の保障を訴える粘り強い活動を果敢に継続してきたからこそ得られたものであると感じている。

名指しで幼保無償化の対象外となった状況から、どうにか「支援策」の対象として検討されるまでに至った。とはいえ、ここで気を抜いてはならない。最後までどう転ぶかわからないのが朝鮮学校を取り巻く問題だ。「調査事業」を土台に、来年度からの本格的な「支援策」に全国の朝鮮幼稚園がひとつも漏れることなく類型化され、一律で含められるよう、気を引き締めて要請活動や署名活動などの世論喚起に努めていきたい。

朝鮮学校の子どもたちの明るい未来を創るためのカギは、日本のみなさんとの共闘にあると思います。これからもよろしくお願いいたします!(ソン ヘスク)

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