WE INSIST!、ニュースペーパー

2020年11月01日

民主主義へのあからさまな攻撃!戦前に戻すな

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1930年2月、「天皇機関説」(注)を主張する憲法学者の美濃部達吉貴族院議員を、菊池武夫貴族院議員(予備役の陸軍中将)が、政党や軍部、国粋主義者の支持の中で、「皇国ノ国体ヲ破壊スルヨウナモノ」として国会で攻撃し、美濃部を辞任に追いやった。いわゆる天皇機関説事件だ。岡田啓介内閣は、2度の国体明徴声明を発出し、統治権は天皇にあるとして「天皇機関説」を排除した。「天皇機関説」は、ドイツの学説を基に、明治憲法の下での政治体制を説明する一般的な学説だった。その結果、立憲主義に基づく統治理論は否定され、「天皇は、陸海軍を統帥する」とした明治憲法第11条と相俟って、軍部独裁に途を開くこととなった。戦前は、様々な思想弾圧、学問の自由への弾圧があった。大逆事件や滝川事件は有名だが、その他様々な思想弾圧が日常のように行われていった。権力にあらがい戦争に反対する声は、暴力によってかき消されていく。戦後憲法は、そのことへの反省に立っているのではないか。

成立間もない菅内閣は、あろうことか独立した機関とされる「日本学術会議」の人事に介入し、会が作成した会員推薦名簿にある6人の任命を拒否した。あからさまな学問への攻撃であり、民主主義への真っ向からの挑戦だ。6人は、戦争法や共謀罪法など安倍政権の暴挙に抗議の姿勢を示してきた。菅首相は、任命拒否の理由を明らかにしないが、批判が理由なのは明白だ。気に入らないから排除する、戦前と同じ途に入らんとするのか。

この姿勢が、共謀罪法と一緒になったらと思うと背筋が寒くなる。批判されることのない政治は、政治とは言えない。批判を受け入れ、議論を重ねる姿勢が政治家に必須ではないか。安倍政権も菅政権も、懐の狭い、知恵の浅い政権にしか見えない。法を無視し力で意を通そうとするのは、暴力団まがいだ。将来の社会から、「あの時に」とのそしりを受けないようにしなくては。(藤本 泰成)

(注)天皇機関説とは、天皇は、統治権を持つ国家の最高機関として内閣などの輔弼を受けて統治権を行使するとするもので、統治権は天皇にあるとする天皇主権説と対立するもの。

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