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湯浅一郎

 薩南諸島(馬毛島、種子島、奄美大島など)の基地強化と沖縄
湯浅一郎

2018年12月31日

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 18年12月18日、政府は6度目となる防衛大綱と、中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。2013年に10年を見通すものとして発表してから、まだ5年での策定である。日本を取り巻く安全保障環境が過去にないスピードで「厳しさと不確実性を増している」との分析を前提に、宇宙、サイバー、電磁波などの新たな領域を含め、「全ての領域の能力を融合させる領域横断作戦などを可能とする」防衛力として、「多次元統合防衛力の構築」を目指すとした。

 その中で、馬毛島、種子島、奄美大島、沖縄島へと連なる薩南諸島に陸自を中心とした一連の部隊新設計画が盛り込まれている。中期防には「初動を担任する警備部隊、地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊の新編等を行い、南西地域の島嶼部の部隊の態勢を強化する」とある。この背景には、中国を敵視し、米軍との軍事一体化を前提とした軍拡路線がある。鹿児島県の種子島、奄美には、その重要な要として、南西諸島における島嶼防衛線の後方支援拠点として自衛隊、米軍の基地に組み込む多方面からの動きが襲い掛かっている。その全体像を見据えた取り組みが求められる。

奄美大島で進む陸海空自衛隊の基地や演習機能の強化

 陸自では、警備部隊、地対艦ミサイル、地対空ミサイル基地の新設が進んでいる。奄美市名瀬の大熊と瀬戸内町節子で現在、配備に向けた土地造成と施設整備が2018年度末を目途に急ピッチで進んでいる。大熊に約350人、節子に約210人を配置予定という。いずれも、広域監視や武装ゲリラ侵攻への初動対処を担う警備部隊を配備し、大熊に中距離地対空ミサイル(中SAM)部隊、節子には地対艦ミサイル(SSM)部隊を併設する。しかし、これにより山を削り、水系を破壊することで、奄美の自然がはぐくむ希少なアマミノクロウサギなどが生息する独特の生態系への大きな影響が懸念される。

 その他にも、2014年5月10日から27日まで、陸海空3自衛隊による初の着上陸訓練が奄美群島の1つ江仁屋離島(えにやばなれじま)で実施されている。本訓練は、「島嶼防衛に係る自衛隊の統合運用要領を演練し、その能力の維持・向上を図る」との目的が掲げられている。訓練に参加したのは、陸自では西部方面隊等の人員約500名、航空機6機(CH-47JA×2機、AH-64D×2機、UH-60J A×2機)、海自は、人員約820名、艦艇4隻(護衛艦「くらま」(佐世保)、護衛艦「あしがら」(佐世保)、掃海母艦「ぶんご」(呉) 及び輸送艦「しもきた」(呉))及び搭載航空機である。さらに空自は人員約10名、航空機2機(F-2×2機)で、陸海空計で約1330名が参加した。具体的には、5月18-19日、海からの強襲作戦を担う陸自特殊部隊約100人が、大型輸送艦「しもきた」からボートやヘリコプターによる上陸訓練を行なった。「しもきた」搭載のLCACエアクッション型強襲上陸用舟艇は航走訓練を行ったとされる。

 他にも、湯湾岳への空自通信施設の設置も計画され、南西諸島における島嶼防衛線の後方支援拠点としての基地強化が一気に進んでいる。

馬毛島の基地強化と種子島の訓練場化

 もう1つの大きな動きが、馬毛島での基地強化と種子島での統合、共同訓練の定例化である。種子島の西12キロの沖合にある無人島の馬毛島には、南北に1本(約4千メートル)、東西に1本(約2千㍍)と十字を切るように滑走路が造られている。米軍再編で、米空母艦載機の厚木から岩国への移駐が浮上した際、馬毛島は、空母艦載機のFCLP(陸上空母離着陸訓練)用施設の候補地として名指しされている。陸上滑走路を空母の飛行甲板に見立ててタッチアンドゴーを繰り返す飛行訓練である。地元自治体を初め、強い反対の声で計画は遅れているが、ここに来て、土地の買収にめどが立ったとの報道がある。

 これとは別に、同島は、自衛隊の事前集積拠点、「島嶼防衛戦」の上陸訓練施設としての活用がもくろまれている。馬毛島は文字どうり日米の軍事要塞になりかねない。

 仮に馬毛島が計画どうりになれば、それは、隣接する種子島にも大きな影響をもたらすことになる。実際、既に種子島では水陸機動団による着上陸訓練が17年から始まっている。

 17年11月16日、自衛隊統合演習の一環として、南種子町の前之浜海浜公園で着上陸訓練が行われた。さらに、18年5月8日には、九州西方沖や種子島周辺で、離島奪回作戦を念頭に、海自輸送艦からの水陸両用車の発進や上陸訓練を行っている。この時、海自は、輸送艦「しもきた」(呉)、護衛艦「ひゅうが」(横須賀)を派遣している。

 そして、18年10月5日~19日、「水陸機動団」は、種子島の旧種子島空港の跡地、及び長浜海岸において、米海兵隊第3海兵師団(沖縄)と島しょ奪還に向けた共同訓練を実施した。尖閣諸島を巡る緊張の高まりを背景に、中国に対し日米の連携強化をアピールする狙いがあるとみられる。日米共同での訓練は国内では初めてである。14日には、陸自約220人、海兵隊約10人のほか、海自輸送艦「おおすみ」などが参加している。

 奄美、種子島における一連の着上陸訓練は、陸自の水陸機動団と呉配備の「おおすみ」型大型輸送艦との連携が基本になっている。「おおすみ」型輸送艦は、英語では、LST、Landing Ship Tankで、軍事的には戦車揚陸艦である。LCAC2隻を有し、大型戦車や装甲車を強襲上陸させることができる能力を持っている。米軍が、沖縄の海兵隊を佐世保配備の強襲揚陸艦に搭載して世界中の戦場に輸送するのと構図は全く同じである。島嶼奪回を理由に、海外進行もできる演習が、薩南しょ島において始まっている。

米軍輸送機オスプレイの低空飛行訓練ルートの新設

 奄美は、沖縄の米軍基地との間に、相互に影響しあう問題を抱えている。一つは、普天間基地配備のMV22オスプレイの低空飛行訓練ルートが、近年、奄美大島の上空に設定されたことである。これは、米軍監視を目的とした市民団体リムピースが、16年12月13日、名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した事故報告書を分析し、当日のオスプレイの飛行経路をたどった結果、判明した。米軍は、このルートを公表していないが、図のような閉じた南北に細長い長方形のルートが浮かび上がった。事故機は、午後6時過ぎ、普天間基地を離陸したあと、宇検村の西海上から奄美大島上空に飛来し、島の上空を図のルートに沿って反時計回りに2周し、その後、沖合での夜間空中給油訓練に移行し、事故を起こしたのである。報告書によれば事故機は、高度500フィート(約152メートル)、速度240ノット(時速444キロ)で飛行していた。

 米軍は、オスプレイの普天間配備に際し公表した「環境レビュー」で6本の低空飛行訓練ルートを初めて明らかにし、普天間配備後、岩国基地などを使いながら、本州や九州での低空飛行訓練を実施するとした。このうち、鹿児島から南西諸島を経由して沖縄島に至る主に海上を使った「パープルルート」は、奄美大島では宇検村がチェックポイントとなっている。ところが、2013年3月にオスプレイが初めて岩国基地に飛来してからこの方、6本の低空飛行訓練ルートでの低空飛行訓練は行われてきた気配が全くない。この間、オスプレイは低空飛行訓練をしていないのか、または、どこか不明なルートがあるのかわからないままであった。皮肉なことに、那古沖での墜落事故の報告書から新たな訓練ルートが見えてきたのである。これにより、一つの謎が解けた。米軍は、普天間に近い奄美大島の上空に一方的に訓練ルートを新設することで、オスプレイの運用を実現していた。奄美大島における住民の目撃情報を整理することで、島内上空で低空飛行訓練が常態化していることがわかるはずである。オスプレイを巡っては、17年6月、計器が機体の異常を示した1機が奄美空港に緊急着陸する事例があるが、今後、このような事態が頻繁に起っていくことが予想される。自治体や住民への説明もないまま、一方的に奄美大島が米軍基地の運用に組み込まれているのである。   

辺野古の海をつぶす岩ズリの奄美からの搬出

 一方、奄美が沖縄の豊かな海を破壊することに関与してしまう問題が、辺野古埋め立て用岩ズリの奄美からの持ち出しである。12月14日 沖縄防衛局は、辺野古への土砂投入を開始した。10月の沖縄県知事選で玉城デニー候補を圧勝させ、辺野古新基地建設を拒否するという沖縄県民の民意を一方的に踏みにじるものであった。ここで使われる土砂は、沖縄島の本部から運び込まれたものである。周知のように大浦湾側の海底には、厚さ40mとも言うマヨネーズ上の軟弱地盤があることが防衛省の調査からわかっており、計画変更の許可を沖縄県知事から受けない限り、本格工事はできないことが明らかになっていることを承知で、見切り発車した。

 辺野古・大浦湾は、ジュゴンやウミガメの生息地として知られ、調査のたびに新種が発見される。国際的に見ても生物多様性の豊かな海である。政府は、それを承知で埋め立ててしまうということは、生物多様性基本法や国家戦略よりも、米軍基地の新設を優先するという選択である。政府が、中長期的な未来を見るのでなく、「抑止力を保持するため」を理由に目先の都合によって政策を押し付けている様子が見えている。

 このままだと、早ければ2019年中にも、沖縄島以外からの土砂搬入が始まる。その候補の1つが鹿児島県の奄美と南大隅である。防衛省資料には、奄美大島では、奄美市住用町、大島郡瀬戸内町、龍郷町の3箇所の砕石場が示されている。既に岩ズリが海岸線付近に山積みされている。これを止めるため、2015年5月、搬出予定地の市民グループが奄美に集結し、「どの故郷にも、戦争に使う土砂は一粒もない」をスローガンに辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会を発足させた。土砂全協は、沖縄県の土砂搬入に伴う外来生物の持込みを規制する条例を活かして、土砂の搬出をとめる運動を精力的に行っている。12月の沖縄県議会に鹿児島県を含む7地点から条例の強化を求める陳情書を提出したが、継続審議となっている。19年の早期に条例の強化がされることを期待したい。

 以上、見てきたように、尖閣諸島における対立を理由に、九州から与那国島への琉球弧を基地化し、又日米併せ持っての軍事訓練の場とする政策が系統的に進められている。その中で、馬毛島から奄美にかけての薩南諸島は、後方支援物資の集積拠点、輸送中継拠点として基地強化が進められつつ、あわせて、着上陸訓練の演習場として一方的に使用されつつある。基地建設のために奄美の山の頂を削り、ウミガメの産卵場でもある砂浜は、着上陸訓練の場として荒らされている。外国軍威信基地を提供せんがために、生物多様性の豊かな辺野古の海の埋め立てにまい進する政府は、同じ思想で、薩南諸島の自然を破壊しようとしているのである。地域の住民が、将来に向けて活かしていくべき自然をないがしろにする国の防衛政策とは何かを問い、薩南諸島のそれぞれの住民が連携して国の防衛政策を変えていくよう求めていくことが求められている。

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