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「陸上イージス・システム」は、新たな核軍拡を招く―2017年9月30日 田巻一彦

2017年9月30日

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「国難突破解散」の欺瞞と偽善
 安倍首相は、衆議院解散・総選挙に打って出るにあたって、これを「国難突破解散」と呼び、北朝鮮の核・ミサイルという脅威をうちまかすための国論の一致こそが争点だといった。
 おびただしい数のミサイル発射を繰り返し、9月3日には6度目の核実験を行った北朝鮮の「冒険主義」は、目に余るものがある。国際社会は一致してかの国の核計画を食い止めるために知恵を結集して外交による平和的プロセスを追求するべきときである。
 しかし、安倍首相から「対話」の言葉は聞かれない。「対話の努力は時間稼ぎに利用されました。北朝鮮に全ての核兵器・弾道ミサイル計画を完全な検証可能、かつ不可逆的な方法で放棄させなければならない。そのことを北朝鮮が受け入れない限り、今後ともあらゆる手段による圧力を、最大限まで高めていくほかに道はない。私はそう確信しています。」
 少し長い歴史のものさしを当ててみれば、この「圧力偏重」路線がつまるところ、効果をあげずにきたことは明らかである。北朝鮮が最初の核実験を行ったのは2006年からこの方、日本政府が米国に追随して「圧力一辺倒」政策を継続してきたことが、現状を生み出しているという自省は首相の心の中には存在しないのか。弾道ミサイル開発が加速されたのは、1990年の半ばに遡る。すでに200発のノドン・ミサイルが日本全土を射程に収めている。その現実を歴代日本政権は直視せず、こんにち、ミサイルがグアムや米本土に迫るにいたって、まるで「初めて」のようにミサイルの脅威を叫び、Jアラートを発し、ミサイル対処訓練を各地で実施するよう促している。
 このようなことになる前に、「外交」が機能するべきだったのではないか。まるで「圧力をさけぶこと」が唯一の外交政策であるかのように振舞ってきたのは、誰だったのか? 人はこれを「マッチポンプ」と呼ぶのではないか? 

イージス・アショアは幻想
 選挙キャンペーンは「北朝鮮はコワい」という扇情的な言辞はふりまいても、この難題をどのように解いていくかという課題は素通りしたように見える。
私たちは今こそ、立ち止まって問うべきである。1910年の日本による「併合」にはじまる、日本がかの国になしてきた罪、そしてその罪科の遺産である南北分断の現状について、日本との闘いの中から生まれた北朝鮮という国の歴史について、それらを包含する歴史観をとおして問われるべき、「核のない朝鮮半島」のために、私たちがなすべきことについて。
 だがこの国は、それらを省みることはせず、ひたすら米国の後ろで「圧力」をけしかける。
安倍首相がくりだす「国難突破」のための手の一つは「ミサイル防衛」である。「イージスアショア」(陸上イージス・システム)-この1基800億円の高額兵器を米国から買い、2023年までに稼動させるというのが安倍政権の目論見だ。
 「イージス・アショア」は日本の防衛のための兵器ではない。それが守るのはたとえばグアムや米本土だ。これは、トランプ政権の「米国第一」路線にしたがって「日本に配備」される兵器だ。断じて日本を守るものではない。
 2016年5月に、欧州における「冷戦の遺産」であるルーマニアで、最初の「陸上イージス」運用がはじまったとき、在ブカレスト米大使館はこの兵器の「効能」をウェブサイトで説明した。その宣伝文句を紹介しておきたい。
 これを読みながら考えてみよう。果たして、「イージス・アショア」は、私たちと北東アジアの安全と安心の永続化に貢献しうるのだろうか。私たちの血税を注ぐ価値のあるものなのか。そうではなくて、この兵器システムがもたらすのは、この盾(イージス)の能力を、量の上でも質的にも凌駕する軍拡競争なのである。◆◆


<資料>欧州におけるミサイル防衛の実施(在ブカレスト米国大使館ウェブサイト)
2016年5月11日最終更新

端的に言えば、我々の欧州における新しいミサイル防衛構想は米国とその同盟国の戦力に対し、より強力で、高性能で、迅速な防衛力を提供する。それは、以前の計画より包括的なものであり、検証済みで対費用効果の高い能力を展開し、米本土を長距離弾道ミサイルの脅威から守る責務に基づくものであるとともにそれを持続する。そして全NATO加盟国への防御を保証し、強化する。―オバマ大統領

 オバマ大統領は米国と、その海外に派遣された兵力、欧州の同盟国とそのパートナーを、増大する弾道ミサイルの脅威から守ることを誓約している。2009年9月、国防長官と統合参謀本部長の勧告に基づき、オバマ大統領は、より早期に、より包括的な防御を提供するため、ミサイル防衛のための欧州段階的適応アプローチ(EPAA)を発表した。この2年間、政府はNATO諸国と協働し、このアプローチの実施において目覚ましい進展を見ており、大統領が打ち出した到達目標に向かっている。
 EPAAの発表以来、政府はEPAAをNATOの環境の中で実施する願望を明らかにしてきた。2010年11月のリスボンサミットでNATOは、弾道ミサイルの拡散によって引き起こされる脅威の増大に対して全てのNATO加盟欧州諸国の住民と領土、戦力を完全に保障し保護することを目的に、ミサイル防衛能力を承認するという歴史的決定を行った。この決定は、同盟が直面する21世紀の一連の脅威に対抗するNATOの抑止態勢を拡大し、強化する我々の努力と軌を一にしている。NATOはまた、NATO加盟欧州諸国の住民、領土、戦力を保護するために、その現在のミサイル防御の指揮・管制・通信能力を拡張することにも合意した。リスボンでNATO諸国はEPAAをNATOのミサイル防衛に対する米国の国家的な貢献として歓迎するとともに、他のNATO加盟国の追加の自発的な貢献を歓迎した。

 EPAAには、2010年代の残りの期間にわたって実施される4つの段階がある。それぞれの段階で進展があったし、大統領が2009年に設定した目標の達成に向かっている。


 大統領がEPAAを発表した際に、彼がミサイル防衛に関するロシアの協力を歓迎したことに留意することは重要である。我々はこの側面でも進展を得た。2010年11月にNATO・ロシア評議会(NRC)サミットで、NATOとロシアはミサイル防衛協力の機会を探る約束をした。ロシアとの効果的な協力は、我々の地域全体のミサイル防衛能力の全般的な有効性と能率を向上させることになると同時に、NATOとロシア両方に、より大きな安全保障をもたらすだろう。第一段階としてNATOとロシアは統合弾道ミサイル脅威評価を完了し、評議会が戦域ミサイル防衛協力を再開することに合意した。米国とロシアはまた、国務省や国防総省での数多くの高官作業部会を通じてミサイル防衛協力の議論を続けている。
 前に進むべく、政府は2009年9月に大統領が定めたビジョンを実施するため、連邦議会やNATO諸国と緊密に協議を続ける。我々はまた、弾道ミサイルによって引き起こされる脅威と、我々がその迎撃のために開発している技術の評価を精力的に続ける。合衆国は引き続き、新興の脅威への自在な対処を可能にする、対費用効果が高く、検証済のミサイル防衛に専心する。
 米国のミサイル防衛政策に関する詳細は、「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)をご覧いただきたい。(訳:ピースデポ)

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