2021年、声明・申し入れ、沖縄コーナー

2021年07月07日

辺野古サンゴ特別採捕をめぐる関与取り消し訴訟で最高裁が下した不当判決に抗議する

沖縄県が国の関与は違法だとして取り消しを求めていたサンゴ特別採捕をめぐる関与取り消し訴訟で、最高裁判所(林道晴裁判長)は2021年7月6日、県の上告を棄却しました。

辺野古新基地建設の建設予定海域にある大浦湾に生息する約4万群体のサンゴを移植するために、沖縄防衛局が沖縄県に対して特別採捕の許可申請をしたところ、沖縄県はこれまでに例のない大規模なサンゴの移植であること、また大浦湾の軟弱地盤の存在により埋め立て工事が困難であることが明らかになったことで、水産資源の保護の立場から、慎重な審査を続けていました。これにたいして、沖縄県は何ら判断をしない違法な状態にあるとして、農林水産大臣が、沖縄防衛局のサンゴ採捕の申請を許可せよとする是正の指示を沖縄県知事に出したことで沖縄県と国との争いとなりました。

2021年2月3日の福岡高裁那覇支部の判決は、沖縄県が許可をしないことは裁量権の逸脱又は濫用であるとして、沖縄県の訴えを棄却していました。そもそも、「不作為が違法であるのみならず、許可処分もしないという点においても違法な状態」などと、許可をするかしないかという、法令で知事に与えられている権限を、根拠の明示もなく違法と断定するずさんな判決であったうえに、大浦湾の軟弱地盤について、無益な工事になったとしても工事を妨げる法律上の根拠はないと、国の強行工事を後押しするような踏み込んだ発言までしていました。またサンゴの保護についても国の主張を全面的に採用した一方、沖縄県の主張はことごとく切り捨て、沖縄防衛局のサンゴ保護は手厚いと一方的に評価する始末でした。

上告審である今回の最高裁判決も、沖縄県の処分は裁量権の逸脱又は濫用であるとした福岡高裁判決を維持し、是認する不当判決にすぎません。

最高裁の判決理由は、「設計変更に関する部分に含まれない範囲の工事」は当初の計画通りに工事を進めることができるという国の主張と同様の前提にたち、サンゴ保護に関する沖縄県の主張を何ら考慮することなく、「サンゴが死滅するおそれがある以上、移植は必要だ」と言い切りました。さらに沖縄防衛局の環境保全措置も十分配慮されているとしたうえで、沖縄県が許可しないことは、沖縄防衛局の地位を侵害するとしています。そのうえで沖縄県の判断は「考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮した」著しく妥当性の欠いたものと、法令に基づいた沖縄県の行政処分を全否定するかの価値判断まで行っていることに強い違和感があります。

最高裁五人の裁判官のうち二人が、裁量権の逸脱又は濫用として違法であるいとはいえないとして反対意見を述べています。大浦湾の軟弱地盤の存在で、変更申請が不承認になった場合、サンゴ移植は無意味であるということ。サンゴの移植を行ったとしても、移植は極めて困難で、大半が死滅することを考えれば、それでもサンゴの移植をするべく大浦湾の埋め立て事業が実施される蓋然性が相当程度になければいけないとする反対意見は、きわめて現実的な意見といえます。

今後、国はこの不当な最高裁判決を錦の御旗にして、設計概要変更に対する沖縄県知事の判断に、承認するように圧力をかけ、そして裁判等に訴えてくるでしょう。国への忖度ともいえる裁判が繰り返されてはいますが、沖縄県と県民、そして辺野古新基地建設に憂慮するすべての人びとと連帯を強固にし、忖度を許さない闘いを進めていくことが大切であると考えます。そのためにもフォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)は全力でとりくむことをここに表明します。

 2021年7月7日

フォーラム平和・人権・環境

共同代表 藤本康成

共同代表 勝島一博

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