声明・申し入れ、2013年

2013年03月15日

政府の環太平洋戦略経済連携協定(TPP)交渉参加表明に対する声明

フォーラム平和・人権・環境
                                                      事務局長  藤本 泰成

 安倍晋三首相は3月15日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明しました。その理由として、「アジア太平洋地域の成長を取り込む」「日本経済全体としてのプラス効果」「アメリカとの関係強化による安全保障、地域の安定」などをあげ、「1日も早くルール作りに参加する必要がある」としました。また、自民党のTPP対策委員会は14日、コメなど農林水産分野の重要5品目や国民皆保険制度などの「聖域」扱いを安倍首相に求めたものの、「交渉に参加しなければ、国民生活の水準、国際社会における地位を保つことができない」など、事実上、交渉参加を容認しました。
 平和フォーラムは、菅直人元首相が2010年にTPP参加検討を表明して以来、TPPは食料や農業、環境等に与える影響が大きいことなどから、慎重な検討が必要であると指摘してきました。TPPは農業問題だけでなく、食の安全、医療や公共サービス、労働、金融など、広範な「社会的共通資本」に大きな打撃を与えることが予想されます。それらの規制の撤廃、全面開放が行われれば、市場主義、競争原理が一層激しさを増し、矛盾と格差の拡大をもたらし、日本社会の有り様に重大な影響を及ぼすことが懸念されます。
 さらに、日本の参加は、TPP交渉を主導してきた米国の意向に沿うものであり、このことで「日米同盟」体制をより深化させ、経済におけるブロック化を強めるとともに、軍事面を含めて、東アジアでの安全保障体制に影響を与えることも想定されます。
 しかし、このような重要な問題について、この間、十分な情報開示や国民的議論がほとんど行われてきませんでした。特に自公政権下では政府と国民との意見交換は一度も行われていません。昨年からの米国との事前協議における、自動車や保険、牛肉などの貿易問題での米国からの要求についても明確にされていません。今後のTPP交渉においてはさらに、既存の参加国間で既に合意した事項はすべての受け入れを求められます。
 このような情勢の中で、政府が十分な情報を開示せず、国民的議論を行うことなく、性急にTPP交渉への参加表明を行ったことに対し、平和フォーラムは強く抗議し、その撤回を求めます。
 また、自民党は先の衆議院総選挙時に、TPPに関して「食の安全・安心の基準を守る」「ISD 条項(投資家による国の訴訟権)は合意しない」「政府調達・金融サービス等はわが国の特性を踏まえる」なども含めて公約としました。そして、「聖域(死活的利益)の確保ができないと判断した場合は脱退も辞さないものとする」としています。
 私たちは、今後、国内外の多くの団体と連携して、政府やTPP交渉参加各国の動きを監視し、農業・食料をはじめとして、国民生活に打撃を与えるような協定に強く反対して運動を進めます。

    

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