声明・申し入れ、2020年

2020年10月15日

中曽根元首相内閣・自民党合同葬への「弔意の表明」強制に反対する

2020年10月15日

中曽根元首相内閣・自民党合同葬への「弔意の表明」強制に反対する平和フォーラム見解

フォーラム平和・人権・環境
事務局長 竹内 広人

 菅政権は、10月17日に内閣・自民党合同葬として執り行う予定の故中曽根康弘元首相の葬儀について、全国の国立大や都道府県教育委員会、各都道府県知事・市区町村長に対して、弔旗の掲揚や黙とうで弔意の表明を求めていることが明らかになった。
総理経験者の合同葬については、戦前は「国葬令」がありこれに基づいて国葬が行われていたが、戦後廃止され、現在、法的根拠は全くない。今回のような「内閣・自民党合同葬」が行われるようになったのは1980年の大平正芳元首相からであり、岸信介、福田赳夫、小渕恵三、鈴木善幸、橋本龍太郎、宮沢喜一の計7名が合同葬の形式で行われてきた。
今回、政府は2020年度当初予算の予備費から約9600万円を支出する予定であり、何ら法的根拠もない中で、このような多額の支出をすることは、この間の歴代元総理の事例も含めて問題である。
さらに、政府は、全国の国立大や都道府県教育委員会、各都道府県知事・市区町村長に対して、「『故中曽根康弘』内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について」との文書を発出し、弔旗の掲揚や黙とうで弔意の表明を求めている。文中では「政府と同様の方法により哀悼の意を表するよう御協力をお願いする」とされ、事実上強制につながりかねない内容となっている。
中曽根元首相合同葬について、国公立大学など、各行政機関の職員に参加を強制することは、日本国憲法が保障する学問の自由や思想信条の自由を脅かすものであり、極めて問題である。しかも、この合同葬には何ら法的根拠もない。法的根拠のないものを、時の政府が恣意的に行政機関に通知を出すこと自体が問題だ。
さらに自治体については、そもそも今回のように国が自治体に対して、法定受託事務でもない事務について、安易に通達を発すること自体が問題である。国と自治体は対等・平等な関係であり、国の行政機関の長である元首相の葬儀に、自治体が「政府と同様の方法により哀悼の意を表する」必要はない。また、教育現場に関しては、特定政党への支持や政治的な活動を禁じている教育基本法14条に違反するとの指摘もされている。
以上のように、中曽根元首相内閣・自民党合同葬には、多くの問題点がある。特に、各行政機関の職員に「弔意の表明」を強制することは、許されることではない。
平和フォーラムは、日本国憲法が保障する学問の自由や思想信条の自由の侵害を許さず、今後も取り組みを進めていく。

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