2022年、憲法審査会レポート

2022年11月11日

憲法審査会レポート No.1

はじめに

平和フォーラムでは、改憲発議をめぐる攻防が重要な局面にあることを踏まえ、国会における改憲議論、とりわけ衆参における憲法審査会の動向に注視し、全国の皆さんと情報共有しながら、改憲阻止にむけたとりくみのいっそうの強化をはかりたいと考えています。

本レポートの内容をぜひご活用ください。当面週1回程度の更新を予定していますが、開催状況などに応じて更新していきます。

※議事録や議員や学者のコメントを、随時追加していきます。

2022年11月9日(水) 第210回国会(臨時会)第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7110

【会議録】

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detailPDF?minId=121014183X00120221003

【主な発言項目】

https://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/keika/hatsugen_210.html#d1_hatsugen

【マスコミ報道から】

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221109/k10013885821000.html
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022110901030&g=pol
https://www.sankei.com/article/20221109-YVGYYYTCUNPQNBC6T4ZT72E22U/
https://www.tokyo-np.co.jp/article/213036

【傍聴者の感想】

今臨時国会における参議院憲法審査会は、会長および幹事の交代に伴う事務的手続きを行った10月3日開催の第1回に引き続き、2回目です。

今回は各会派からそれぞれの主張があった後、一人3分の発言時間を目安に意見交換が行われました。とくに印象に残った発言として、自民党松川議員は「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある憲法前文を取り上げ、「自分の国は自分で守るべきであり、他者に生存権を委ねてはいけない」という内容の発言をしました。この前文解釈について、審査会でもざわつきが見られました。その後、立憲民主党小西議員から「もう少し憲法を勉強した方が良い」という発言もあり、さらに松川議員がそれに反応するといったやりとりがあったことがこの日の印象に残る出来事でした。

憲法改正を望む国民の声に緊急性がなく、その前に生活と暮らしをどう守っていくのか議論すべき、という考えと、国民が望んでいるかどうかよりも、それが必要だから議論すべき、という考えの、根本的な溝は大きく、埋めていくことは困難であると感じました。(T)

【国会議員から】吉田忠智さん(立憲民主党参議院議員/憲法審査会幹事)

参議院憲法審査会が11月9日に行われ、立憲民主党の次席幹事として参加しました。

立憲民主党は冒頭、小西洋之議員(筆頭幹事)が会派を代表して「憲法審査会の役割は、憲法違反問題を議論することが主眼である。憲法改正の発議をする前に、憲法や問題をしっかり議論をして、そして法律で対処できるものは法律で対処すべき」と主張しました。また、「2015年の安保関連法の集団的自衛権を行使できないという憲法解釈を変えて、米軍と一体的に自衛隊を活動できる法整備が行われたことも明らかに問題であり憲法違反である」との立場で議論を行いました。

今、衆議院、参議院でもそうですが、特に参議院の一票の格差の問題で高等裁判所での違憲判決も最近続いています。その一票の格差の問題、そして関連する参議院選挙区の合区の解消の問題もしっかり議論していかなければなりません。併せて、安倍元総理の銃撃事件をきっかけにして、旧統一教会の問題も出ています。政治と宗教の関係、また強行された安倍元総理の国葬に関わる問題、これも憲法上、様々な問題が生じています。

国民投票法改正案についてもCM、インターネット規制、最低投票率の問題、また公務員の国民投票運動等の課題についてもしっかり議論し、解決していかなければなりません。そうした意味では、未だ改憲国民投票の条件整備が整っていないと考えます。

私は、憲法審査会の中で、これまで日本国憲法が、施行以来75年間改正されなかった理由を三つ申し述べました。「第1は、日本国憲法がよくできていること。第2は、国民が憲法を変えることを望まなかったこと、第3は、これまでの社会経済情勢の変化を踏まえ、法律の制定や改正で補完してきた結果として、一度も改正されませんでした。今後とも、そうした日本国憲法の良き伝統、経緯を踏まえ、参議院は熟議の府、良識の府である事を踏まえ、参議院らしい慎重で冷静な憲法議論が参議院憲法審査会で行われるべき」と強く訴えました。

これからも参議院憲法審査会の一員として、また立憲民主党の憲法調査会の会長代理として、「今大事なことは、憲法を変えることではなくて活かすことだ」と自分に言い聞かせながら、私に与えられた役割を果たしていきます。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

日本の市民の幸せと家族を崩壊させてきた、反社会的団体の統一協会の影響を受けた可能性を否定できない憲法改正など論外です。統一協会と自民党の改憲問題は徹底的に追及されなければなりません。

この点、参議院の憲法審査会では統一協会と自民党の改憲の問題が徹底的に追及されています。発言順に、小西洋之議員(立憲民主党)、仁比聡平議員(日本共産党)、熊谷裕人議員(立憲民主党)、吉田忠智議員(立憲民主党)、福島みずほ議員(社会民主党)、石川大我議員(立憲民主党)、辻元清美議員(立憲民主党)が統一協会の改憲問題を追及していました。

今後も統一協会と自民党の改憲論・改憲運動の関係が徹底的に追及される必要があります。

2022年11月10日(木) 第210回国会(臨時会)第3回 衆議院憲法審査会

→第2回のレポートはこちら

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54190
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021020221110003.htm

【マスコミ報道から】

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221110/k10013886881000.html
https://nordot.app/963358522768474112
https://www.tokyo-np.co.jp/article/213262
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20221110-OYT1T50276/

【参考】

飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)執筆コラム「壊憲・改憲ウォッチ」第18回
「国会議員の任期延長の改憲論議について(1)」
http://www.anti-war.info/watch/2211151/

【傍聴者の感想】

前回の審議を受け緊急事態条項、特に議員の任期延長に関する内容が中心でした。早急に結論に導きたい自民党に対し議論を深めて進めるべきと立憲民主党が指摘するなど各党の意見は分かれていますが、議論の焦点が定まっていたためか議場は前回に比べ全体的に集中した雰囲気が感じられました。

一方で、公明党・吉田宣弘委員がグローバル化する日本社会に憲法がどう対応するかという問題を挙げ、外国に在留する日本人、日本に在留する日本人の存在、特に憲法13条にある「個人の尊厳の実現」の「個人」には外国人も含むとした発言が印象的でした。

各発言時の議場の委員の表情、仕草を見ていると、多様な意見がまだまだ議論される可能性はあると感じます。そのために私たちの声をさらに強く伝えていく意義を改めて感じました。(N)

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、有志の会は緊急事態に際しての国会機能の維持(立法機能、行政監視機能)のため、国会議員の任期延長の憲法改正を主張しています。

緊急事態に際しても立法機能、行政監視機能は重要です。しかし2020年、2021年のコロナ感染拡大の際、自公政権は市民のいのちとくらしを守るための適切な立法をしませんでした。数か月も国会を開きませんでした。
自民党や公明党に「立法機能」は重要だと主張する資格はあるのでしょうか?

2017年、森友学園問題の解明のため、憲法53条に基づく国会召集要求がなされました。しかし安倍自公政権は98日間も国会を開催しませんでした。

自民党や公明党に「行政監視機能」を主張する資格があるのでしょうか?

なにより、緊急事態を名目にして、選挙もせずに国会議員をその地位に留まらせる改憲論議に市民が納得すると改憲4政党の国会議員は思っているのでしょうか?

国会議員を選挙もせずにその地位に留まらせることを可能にする、国会議員の任期延長の改憲論。こうした改憲論、私たちは認めるのでしょうか?

TOPに戻る