憲法審査会レポート、2023年

2023年12月01日

憲法審査会レポート No.28

今週は参議院憲法審査会不開催のため、衆議院憲法審査会のみのレポートです。

【参考】

岸田首相、憲法審の経験なし 辻元氏「改憲姿勢は右派向け」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023112700714&g=pol
“岸田文雄首相は27日の参院予算委員会で、衆院憲法審査会など国会の憲法審議組織に所属したことがないと明らかにした。立憲民主党の辻元清美参院議員は、首相が改憲に前のめりだと指摘し、「自民党総裁再選のために右派をつなぎ留めたい(からだ)」と批判した。”

自民議連、改憲論議加速へ意欲 衛藤氏「年内に条文案」
https://www.47news.jp/10200408.html
“来年9月までの自民党総裁任期中の改憲実現に意欲を示す岸田文雄首相に関し、衛藤氏は総会後、記者団に「実現できなければ岸田政権は終わりだ」とも言及した。”

2023年11月30日(木) 第212回国会(臨時会)
第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54793
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

「広報協議会」で討議 役割巡り賛否交錯―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113000150&g=pol
“衆院憲法審査会は30日午前、憲法改正発議に伴い設置する「国民投票広報協議会」の規定について討議した。新聞・放送広告の掲載手続きなど、国民投票に際して同協議会が担う事務について各党が意見を表明した。”

維・国、改憲論議の継続要求 条文案の早期作成で―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113001185&g=pol
“維新の青柳仁士氏は「審査会開催をできる限り増やして討議を加速させるべきだ」と主張した。国民の玉木雄一郎代表も緊急事態条項の創設に絞った作業部会の設置を要求。自民党の中谷元氏は「憲法改正できるよう最大限努力していくことは当然の責務だ」と同調した。”
“これに対し、立憲民主党の階猛氏は期限を区切って改憲を目指す首相の姿勢に触れ、「改正の内容を示さずに、期限だけを指定するのは百害あって一利なしだ」などと反発した。”

賛成会派だけで改憲条文検討も 公明、立民に早期結論を要求
https://www.47news.jp/10200017.html
“国民の玉木雄一郎氏は、岸田文雄首相が来年9月までの総裁任期中の改憲に意欲を示していることを踏まえ「任期延長など緊急事態条項について条文案を取りまとめることが現実的ではないか」と主張した。”

衆院憲法審査会 国民投票の広報などめぐり 各党が主張展開
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231130/k10014273331000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、憲法改正の発議後に行う国民投票の広報のあり方や、今後の議論の進め方などをめぐり、各党が主張を展開しました。”

【傍聴者の感想】

11月30日、10時から衆議院憲法審査会が開催され、各党・会派からの意見表明と質疑が行われました。

所信表明演説で岸田首相が、来年9月の任期までに憲法改正を図りたいと発言したことについて、与党と首相の間で真意を確認し、調整がしたかどうかが問われました。自民党の中谷元・与党筆頭幹事は個人的なこととして答弁を控えるとして答えませんでした。「個人的問題」としてすまされるような問題ではないし、責任ある政党としての態度でもありません。いっぽう議論の中で、改正に向けての「熱意が感じられない」(維新・国民)などとの発言が出るありさまでした。

しかし、今期も会期日数がわずかで、発議に向けた法案や関連する法案の内容も具体的に詰められていない中で、首相の言う9月までの改憲は幻でしかありません。
それに関連して改憲派の委員からは、閉会中の審議の継続や改正に向けたスケジュールを示せという声があがりました。

また今回の議論に上がった国民投票法や国民広報協議会の在り方、緊急事態と議員任期の延長問題を巡って与野党での議論はまだまだ隔たりがありました。

緊急事態について、公明党の北側一雄委員は、「議論が煮詰まっており、立憲民主党として「態度を明らかに」と迫り、与党単独で審議に入ると圧力をかけてきました。しかし緊急事態とはいったいどのような事態を具体的に想定しているのかも示さず、条件だけを羅列して具体的な想定もないまま、自民党の石橋茂議員が発言したように「本当に現実味を持って議論されるのか」という指摘に十分にこたえられていません。

国民広報協議会のありかたも、デジタル化、IT、フェイク情報など様々な課題があり、近年その状況が著しく反化する中にあって、どのようにしていくかは議論が煮詰まっておらず、広報の規制の問題も自民党は「政治的表現の自由にかんがみ、できるだけ自由に規制を少なく」という立場で、立憲民主党は公平・公正の立場から規制を設けることと対立する主張をしていました。

国民投票法の中でネット広報をどこまで規制できるか、さらにフェイク情報にどのように対応していくかも十分議論されてはいませんでした。

今回の会議でも自公の他に維新や国民は改正に向けて議論を加速させる発言が目立ちました。しかし最後に発言した石破議員の共同通信の世論調査で憲法改正について国民の関心がたった7%としかなかったことに委員会は危機感をもつべきだという指摘は、改正を急ぐ委員に対して向けられてものでもあったようにも思えました。「本当に現実味を持った議論がなければ」国民は関心を示さないということだと思います。

国民世論との隔たりをかかえたままの改憲論議は危ういものでしかありません。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

「公明が立民に最後通告? 改憲会派だけで改憲案づくり示唆」―2023年11月30日衆議院憲法審査会

戦争をさせない1000人委員会ウェブサイト「壊憲・改憲ウォッチ(36)」より転載
http://www.anti-war.info/watch/2312011/

タイトルは『産経新聞』2023年12月1日付〔電子版〕の見出しです。

憲法審査会についての『産経新聞』の記事の内容には賛同できないことが多いですが、11月30日の衆議院憲法審査会の上記の見出しについてはその通りでした。

公明党の北側一雄議員は議員任期延長の改憲論について「議論が相当に詰まっているのは間違いない」と発言した上で、立憲民主党が賛成しない場合、「賛成会派だけで条項案についてもやはり検討していくようなステージに入ってきていかざるを得ないんじゃないかな、その時期が近づいてきているように思う」などと発言しました。

公明党は立憲民主党を抜きにして、改憲5会派だけで改憲条文案づくりをすすめることを示唆しました。

日本維新の会の青柳仁士議員は、広報協議会の関係規定の議論について、立憲民主党・社民党と共産党を念頭に置き、改憲阻止のために「無為に遅らせる議論」を「工作」とした上で、「全会一致」でなく、「機が熟すれば多数決という民主的な手続でなされるべきです」と発言しました。

国民民主党の玉木雄一郎議員も「少なくとも4党1会派ではおおむね意見の集約が図れていると思います」と発言した上で、「議員任期の特例延長規定を創設するための憲法改正の条文案を作る作業部会の設置についてぜひお願いしたい」と発言しました。

2023年11月、新潟県で護憲大会が開かれました。

パネリストとして参加していた新垣邦男議員は、「国政に出る前は北中城村長を長くやっていたんですが、国会というところは格式高い、すごく高邁な議論をしているんだろうなと思っていたんです」と述べていました。

新垣議員が批判するように、衆議院憲法審査会ではレベルの低い主張がされています。

日本維新の会や国民民主党は「自民党の熱意と本気度がなかなか感じられない」(玉木雄一郎議員)などと自民党を批判しました。

公明党も強行的な憲法審査会の運営を示唆しました。

11月30日の憲法審査会の最期に発言したのが石破茂議員でした。

彼は、たとえば以下の主張をしました。

「なぜ〔参議院の〕緊急集会ではだめなのかという議論が私は十分だと思っていません」。

日米地位協定について、石破氏が防衛庁長官であった2004年に沖縄国際大学にCH53が墜落したときに日本の警察が全く入れなかったことなどを例に挙げ、「本当にそれが独立国家のあるべき姿か」と批判し、「地位協定の改定も含めて早急に議論しなければ、独立主権国家日本たり得ない」と発言しました。

私は折に触れ、「日本維新の会や国民民主党の主張を聞くと、自民党がまともに見える」と発言してきました。

たとえば日米地位協定や憲法に関する主張や結論、石破議員と私は根本的に違いますが、それでもきちんと現実を踏まえて丁寧な議論をしようとする姿勢はそれなりに感じられます。

一方、圧倒的多くの国民が求めてもいないのに憲法改正国民投票を「国民の権利」などと発言し、まだ十分な議論も尽くされていないのに公明党、日本維新の会、国民民主党は強行的な手続・手段を主張します。

こうした状況で改憲の条文案が作成され、改憲が進むことが本当に国民のためなのでしょうか?

【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

前回の衆院憲法審査会で自民党の中谷筆頭は、憲法改正や国民投票は、国民に理解していただくためにはプロセスや内容が非常に大事だと発言しました。その後、岸田首相は、来年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指す旨を答弁しました。

そもそも岸田首相は、憲法改正の期限にはこだわるものの、改正の内容についてはこだわりが見えません。22日の予算委員会でも、三木委員から緊急事態の際の議員の任期延長について憲法改正議論を進めることについて見解を問われ、答弁を避けました。

憲法改正の期限については自民党総裁の立場を持ち出して積極的に答弁しつつ、憲法改正の内容については内閣総理大臣の立場を持ち出して答弁を避ける、極めて御都合主義の姿勢です。

今に始まったことではありませんが、岸田首相は、ぶれずに一貫した言動を取るべきです。仮に内閣総理大臣の立場にこだわるのであれば、行政府のトップとして憲法尊重擁護義務を負う以上、憲法改正の期限に言及すべきではありません。他方、自民党総裁の立場にこだわるのであれば、憲法改正の内容を示さずに改正の期限だけを指定するのは、建築工事の発注において、設計図を示さずに完成時期を指定するようなものです。立ち位置が定まらない岸田氏の発言は百害あって一利なしだと指摘します。

さて、憲法に関し国会が何を優先して議論すべきか。今年5月の朝日新聞の世論調査が参考になります。 それによると、7項目の中からの複数回答で、1位が憲法改正のための国民投票の在り方で46%、2位がデジタル時代における人権保障の在り方で44%、3位が敵基地攻撃能力の保有で43%です。緊急事態時の国会議員の任期延長は18%にすぎず、下から2番目です。

わが党は、国民が最も関心を持っている上位2つのテーマにつき、通常国会終了後にワーキングチームをつくり、私が座長となって検討を進めてきました。

デジタル時代における人権保障のあり方については、生成AIの急激な発達、普及や戦闘地域でのフェイク情報の拡散により、先ほどの世論調査の時点よりも更に国民の関心は高まっていると思います。

私たちは、インターネットとSNSの普及に加え、昨今のAIやデジタル技術の急速な進展が国民に多くの恩恵をもたらしていることを否定するものではありません。他方で、利用者の関心を引きつけることを重視するアテンションエコノミー、対象者の特性や個人情報を分析し、嗜好や行動パターンを推測して情報提供するマイクロターゲティングの悪影響は看過できません。そして、こうした手法などにより、個々人が自分の趣味、嗜好に合う情報だけに取り込まれてしまうフィルターバブルや、同じような意見を持つ者同士で議論を重ねて極端な考えに至るエコーチェンバーという現象が見られるようになっています。

また、誤情報、偽情報といった有害無益な情報や他者を傷つける情報が拡散し、周知されやすくなる一方、本来拡散、周知されるべき公共の利害に関わる重要な情報については、公権力による廃棄、隠蔽、改ざんや報道機関への圧力によって拡散、周知されにくくなっている状況が生じていることは極めて問題です。

これらの結果、社会の分断が進み、民主主義の前提たる建設的な議論が困難になるほか、個人の意思形成過程がゆがめられ、内心の自由が侵される憲法十九条の問題、本人に無断でその人物像が形成、利用され、個人の人格的自律が脅かされ憲法十三条の問題、匿名による無責任な誹謗中傷や個人情報の発信、拡散により名誉権やプライバシー権が侵害される同じく憲法13条の問題、国民が本来入手すべき情報を入手できないことにより言論の自由や取材、報道の自由が空洞化する憲法21条の問題などなど、数々の憲法問題が現に生じたり、将来生じたりする危険が高まっています。

以上の問題を解決する方法として、現状の憲法規範には手を加えず、法令で必要な措置を講じるべきか、それとも、憲法規範そのものを必要な範囲で見直すとともに、これを具現化する法令を制定していくべきか、両論あり得ると思いますが、議論に際しては、憲法が志向する国家観が大きく変容してきたことを念頭に置くべきと考えます。

すなわち、19世紀以前の憲法は夜警国家を志向し、国家の役割は極力限定して、国家からの自由を保障することが中心でした。しかしながら、産業資本主義と都市化、工業化の進展により、二十世紀の憲法は福祉国家を志向し、国家による自由を保障するようになりました。そして21世紀の今、金融資本主義とグローバル化、デジタル化の進展により、憲法は情報国家、つまり、国民の自己実現と自己統治にとって不可欠な思想、言論の自由市場を機能させるために国家が積極的な役割を果たす国家、これを志向する必要があるのではないでしょうか。

こうした歴史的視座に立った場合、情報国家にふさわしい憲法はどうあるべきかというテーマは極めて重要です。憲法改正という選択肢も視野に置きつつ、党派を超えて建設的な議論を行うべきです。

衆院憲法審査会では、これまで国会議員の任期を延長すべしという意見があちらからもこちらからも上がり、響き渡ってきました。これぞまさしくエコーチェンバーです。衆院憲法審査会が時代や民意から隔絶されたフィルターバブルに陥ることなく、国民が真に望む重要なテーマについて腰を落ち着けて虚心坦懐に議論する場となることを切に望みます。

(憲法審査会での発言から)

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