入管法 | 平和フォーラム

2024年06月24日

【平和フォーラム声明】第213回通常国会閉会にあたって

平和フォーラムは6月24日付で、以下の声明を発表しましたので、お知らせします。

第213回通常国会閉会にあたって

23日に閉会した第213回通常国会は、自民党派閥の政治資金パーティー券収入による裏金づくりに国民の厳しい目が向けられる中、多くの問題法案が横暴な数の力により成立した。

政治への不信感を払しょくすると、岸田首相が意気込んだ政治資金規正法改正は、野党が求めた企業・団体献金の禁止は行われず、政治資金を監視する第三者機関の具体像も不明なままである。積み残された課題は今後の与野党協議に委ねられるが、議論の場さえ決まっていない。自民党議員からは「国会が閉会すればこの問題は終わり」と幕引きを目論む声も聞かれ、長期政権の緩みと驕りが端的に現れている。

1)憲法審査会について

第213回通常国会の最終局面の6月19日、岸田政権初となる党首討論が行われた。

立憲民主党・泉代表が、国民の政治不信を招いた岸田首相の責任を糾したことに対し、岸田首相は「(御党も)憲法改正について責任ある対応をお願いしたい。具体的な改正起案について議論を始めるよう協力をお願いしたい。」と応じた。憲法を守るべき国務大臣の長たる内閣総理大臣が、国会の党首討論の場で憲法改正に言及するなど決して許されるものではない。

参院憲法審査会は、緊急時における参院の緊急集会のあり方について議論が重ねられている一方、衆院憲法審査会では緊急事態条項の創設および議員任期の延長について、「議論は出尽くした。発議の条文化に着手するべき」と、改憲ありきの主張が改憲推進会派から主張されるなど、衆参の議論内容や温度差が明らかになっている。

13日、“首相、任期中の改憲断念”と報じられたが、衆院の改憲推進会派からは国会閉会中審査を求める意見が出されていることから、引き続き憲法審査会の動向を注視する必要がある。

2)防衛装備移転三原則の運用指針改定、次期戦闘機の第三国への輸出可能決定について

国家安全保障会議および閣議決定で防衛装備移転三原則の運用指針が改定されたことを踏まえ、日英伊共同開発の次期戦闘機の第三国への輸出を可能とすることが閣議決定された。

日本国憲法の平和主義を逸脱し、国際紛争を助長する恐れがある決定は、日本にとって取り返しのつかない選択となりかねない。軍需産業の存在感が強まれば、政治への影響力も大きくなり、さらなる武器輸出推進の声につながることも懸念される。

3)重要経済安保情報保護法について

経済安全保障上の機密情報を扱う民間人らを身辺調査する、適正評価制度の導入を柱とした重要経済安保情報保護法が成立した。

重要経済安保情報の漏洩は処罰の対象となるが、情報の範囲が不明確であるため様々な問題が生じ得る。適性評価については、本人の同意を得て実施するとされているが、同意しなければ人事考課や給与査定等で不利益を受ける可能性も否定できない。

公布から1年以内の同法の全面施行までに、同法の運用基準等の策定に向けた検討が始まり、パブリックコメントも実施されると言われている。同法の抜本的な見直しを求めつつ、同法による悪影響が最小限となるための具体的な方策が必要となる。

4)地方自治法の一部改正

感染症や災害など重大な事態が発生した場合に、国の自治体への指示権を拡大する地方自治法の一部改正が成立したが、指示権が発動できる基準が曖昧である。国会の承認も不要で、政府の閣議決定だけで指示権を行使できる。地方自治に対する国の不当な介入につながり、国と地方は対等とする地方分権改革に逆行し、上意下達的に国の考えに地方を従わせるものである。

問題点が明らかになるにつれて反対や批判の声は全国にひろがった。憲法をも逸脱する重大な問題を含んだ法案が、わずかな審議によって採決・成立が強行されたことに満腔の怒りをもって抗議する。

5)民法改正(共同親権の導入)について

法律の成立により離婚後も父母が共同で親権を持つことが可能になる。これまでは父母の一方だけに親権が認められていたが、話し合って共同親権にするか、どちらかの単独親権とするかを選ぶことが可能となり、合意できない時は家庭裁判所が決めるとされている。

配偶者からの暴力(DV)や子どもへの虐待がある場合、親権の行使を理由に接点が生まれ、被害が続く可能性が生じる。その結果、子どもに不利益が及ぶことが危惧される。子どもの利益が損なわれないような運用が行われなければならない。

6)自衛隊法の改正について

陸海空の各自衛隊を一元的に指揮する、常設の「統合作戦司令部」を設置することを盛り込んだ改正自衛隊法などが成立した。

4月の岸田首相のアメリカ訪問の共同声明では、「自衛隊と米軍の間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため」、「それぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」としている。

自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の創設は、米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれ、先制攻撃の一翼を担うことになる危険性をもつ。こうしたアメリカ追従の「岸田大軍拡」に対して、ストップをかけるたたかいを本格化させなければならない。

7)出入国管理法の改正について

出入国管理法改正案と外国人技能実習法改正案が成立した。

技能実習の在留資格を廃止し、就労を通じた人材育成及び人材確保を目的とする新たな在留資格である「育成就労」の創設を主としているが、永住許可制度の適正化を理由として、税金や社会保険料を支払わない場合に永住許可を取り消せる規定が設けられるなど、外国人差別を助長する重大な問題を抱えた内容である。

税の滞納等へのペナルティは日本人と同様に扱うべきである。国籍や人種などで差別されない、真の多文化・共生社会の実現こそ求められている。

8)食料供給困難事態対策法について

異常気象や紛争などの影響で、米や小麦、畜産物など重要な食料が不足した場合への対応を盛り込んだ新たな法律が成立した。

食料が大幅に不足する予兆があった場合、内閣総理大臣をトップとする対策本部を設置し、関係する事業者に生産や出荷などに関する計画の提出や変更を指示できるとしているが、計画を提出しない事業者には20万円以下の罰金を科すことに懸念が残る。

(まとめ)

憲法前文には「国政は国民の厳粛な信託によるもの」と謳われている。「国民の厳粛な信託」とは、衆院の資料によると「国民からの信託に背かないように権力を行使する責任を負う」と説明されている。「国民の厳粛な信託」による政治とあまりにもかけ離れた、口先だけの政権運営を続ける自公政権には一刻も早く退陣してもらわなければならない。

抜け穴だらけで中途半端な政治資金規正法改正は、国民の政治不信をさらに高めただけである。かかる政治状況を招いた自民党政治を糾弾するとともに、一刻も早く国民の信を問うための衆院の解散・総選挙を強く求める。

第213回通常国会の閉会にあたって、平和フォーラムは生活者の視点で、国民が主役となる政治を取り戻すために、引き続き国会対策や大衆運動の展開を追求することを表明する。

2024年6月23日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 染 裕之
共同代表 丹野 久

2024年03月19日

署名「 #永住許可の取消しに反対します 」へのご協力をお願いします

岸田政権は、昨年の入管法の改悪に引き続き、永住許可制度を取消す制度を今国会において法制化しようとしています。労働力としての外国人活用を拡大しつつ、同時に生活者としての外国人の人権を制限しようとする政策は、私たちが求める多文化共生社会とは相容れないものです。

移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)が署名「 #永住許可の取消しに反対します 」を呼びかけています。平和フォーラムとしてもこのとりくみに協力していますので、以下の通りご紹介します。

#永住許可の取消しに反対します

日本政府は、「永住者」の在留資格を持つ外国籍住民が税や社会保険料を納めない場合等に、永住許可を取り消せるようにする入管難民法の改正案を今国会に提出する予定です。

日本に生活基盤を築いた外国籍住民が安心して生活していくためには、安定した在留資格が必要です。しかし、ほとんどの在留資格は、就労や留学等の在留資格であれば活動内容に変化が生じたときに、そして配偶者としての在留資格であれば死別や離別をした場合など、状況の変化によって更新できない不安定さがあります。そのため、日本を生活基盤とする外国籍住民にとって、更新の心配のない「永住者」となることは、安定した生活の基礎となるものです。

厳しい審査を経て永住許可を得た外国籍住民は、日本で働き、子どもを育て、日本を終の棲家と決めて暮らしている人たちです。

そのような人たちは最大限、日本国籍者と同等に扱われるべきです。税金や社会保険料の滞納や、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本国籍者に対するのと同様に、法律に従って督促、差押、行政罰や刑罰といったペナルティを課せば足りることです。日本で十分な生活基盤を築いて永住許可を受けたにも関わらず、外国籍者であるがゆえに在留資格が取消されるのだとすれば、これは外国籍住民に対する差別です。すでに帰る故郷を失っていることの多い永住者の、生活の基礎となる在留資格を奪うことは許されません。 いわんや、自治体職員などが入管に通報する制度を創設することは、「共生社会の実現」への逆行でしかありません。

このような永住許可の取消しに向けた議論がされること自体が、日本社会で生活基盤を築いてきた外国籍住民を「私は日本社会からいつ追放されるかわからない」という不安に陥れ、外国籍住民の尊厳を奪っています。

この社会を終の棲家と決めた外国籍住民、そして私たちの隣人、同僚、友人である外国籍住民に対して、一生、厳しい管理・監視を続け、いちばん安定した在留資格を取得した外国籍住民すら、その地位をはく奪しうるものとする永住許可取消し制度の導入に、私たちは強く反対します。

>>オンライン署名へすすむ(外部サイト)<<
https://change.org/2024-02-27

>>署名用紙はこちらからダウンロードしてください( PDF )<<

第一次集約:3月31日 第二次集約:4月20日

(署名用紙送付先:〒110-0005 東京都台東区上野1-12-6 3F NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク)

 

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