外国人差別 | 平和フォーラム

2025年07月22日

【平和フォーラム声明】第27回参議院議員選挙の結果を受けて

平和フォーラムは7月22日、以下の声明を発表しましたので、お知らせします。

第27回参議院議員選挙の結果を受けて

7月20日に投開票を迎えた第27回参議院議員選挙は、自民党が13議席の減、公明党は6議席を減らし、与党の獲得議席数は47議席にとどまり、参議院の過半数を下回る結果となりました。

一方の野党は、立憲民主党が改選前の22議席と同議席数を獲得し、非改選議席数と合わせて38議席として野党第一党を維持しました。日本維新の会は2議席増、国民民主党は13議席増の17議席を獲得して非改選議席数と合わせて22議席として野党第二党となりました。

今選挙戦で「日本人ファースト」を重点政策に掲げた参政党は、14議席を獲得して非改選議席数と合わせて15議席と躍進しました。今選挙戦の「台風の目」とまで言われた参政党は、反グローバリズムや積極財政、選択的夫婦別姓やLGBTQの権利拡大反対など保守色の強い政策を前面に打ち出し、急進的な保守政党として徐々に存在感を示しながら、短い動画のインプレッション増加により、急速に知名度を高めていきました。

私たちが日常的に利用するSNSプラットフォームでのネット工作の規模と巧妙さは、これまでの常識をはるかに超え、より大きな影響を持つようになっていることを直視せざるを得ません。そこには一方的で誤った情報も多く存在します。デジタル技術やAI機能の進歩といった新しいネット環境を介した情報流通において、私たちはかつてないほどの利便性を手に入れた一方で、偽誤情報による弊害も加速度的に悪化しています。今やSNSなどが「怒り」や「憤り」など他者への攻撃性を増幅させる機能を有することに十分な警戒を要します。

自分と同じような意見を持つ人ばかりをフォローすることで、同じ意見が反響と増幅・強化を繰り返すエコーチェンバー現象がつくられます。「日本人ファースト」を掲げ、外国人が優遇されているという参政党の主張は、閉塞感に覆われた日本社会における市民の不安や不満の受け皿として、有力な選択肢となりました。こうした参政党の主張が、情報操作の海の中で何らかの意図により誘導されたものであるとすれば、私たちは一層の警戒を要するでしょう。また、こうした世論に対する介入・工作の手法が、改憲発議に向けて転用される可能性は高まっているとみるべきです。

参政党の排外主義の主張が一定受け入れられている情勢を受けた既成政党までが、外国人による不動産所有制限や社会保障制度の受給制限を公約に掲げ、支持を拡大しようとしました。社会保障制度や奨学金制度などで外国人が優遇されているという主張は事実無根です。外国人による日本の不動産取得が進むのは、円が弱くなったからに他ならず、「失われた30年」の経済政策の失敗の帰結です。「日本人ファースト」などのヘイトスピーチは、自公政権による失政を覆い隠すばかりか、外国人や外国ルーツの人々を苦しめ、誤った差別や憎悪の連鎖は、異なる国籍・民族間の対立から戦争への地ならしにつながる極めて危険なものです。

参政党の躍進は、極右の台頭という世界的な流れが日本にも漂着した感があります。既成政党離れで自民党などに投票していた保守層に加え、一定の無党派層まで、「政治はロックだ」などのスローガンの耳あたりの良さに加え、この間煽動されてきた外国人への差別・排撃する社会的風潮を巧みに取り込むことでつくりだされたものと思われます。

参政党の主張は歴史的事実や科学的知見に基づかないものばかりです。自民党の西田昌司参院議員が5月3日に那覇市内で開かれた憲法シンポジウムで、ひめゆりの塔の説明書きを「歴史の書き換え」などと発言した問題を巡り、参政党の神谷代表は、「本質的に彼が言っていることは間違っていない」、「何で本土の人間とか、日本の人たちが全国から行って沖縄を守ろうとしたのに、それを悪く言うような表記があるんですか」と述べ、戦後の歴史観がGHQの政策によって形成されたとの持論を展開して西田議員に同調しました。

基本的人権への無理解・敵対は5月に発表された「新日本憲法(構想案)」をみれば明らかです。また、選挙のさなかに飛び出した「核武装が最も安上がり」という発言は、戦争被爆国の政治家として到底許されない見識を内在化していることを示しています。

参議院においても過半数を失った自公政権は、当面、トランプ関税をめぐる交渉などを理由に、延命を図ろうとするでしょうが、私たち市民から選挙によって事実上の不信任を突き付けられたことを真摯に受け止めるべきです。自民党内において石破総裁下ろしの動きや、国会運営を乗り切るために野党の協力を得ようと、合従連衡の駆け引きも活発になるでしょう。

私たち平和フォーラムは、排外主義の扇動が参議院選挙戦で展開されていることに危機感をもち、7つの市民団体とともに「参議院選挙にあたり排外主義の扇動に反対するNGO緊急共同声明」を発出し、7月8日には記者会見を開きました。平和フォーラムを含む8団体の呼びかけにより7月13日時点で1035団体が声明への賛同を示していただいたことに大きな勇気を得ます。

平和フォーラムは、2025年第27回参議院議員選挙の結果を受け、「誰ひとり取り残さない」、「軍拡よりも安心で平和な市民生活」、「国籍や性別、信仰などで差別されない」そうした社会の実現に向けて、引き続き加盟団体のいっそうの結集と思いを共にする市民との連携を礎に、運動の先頭で精一杯奮闘することを表明します。

2025年7月22日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 染 裕之
共同代表 丹野 久

2025年07月08日

参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明

平和フォーラムは7月8日、外国人の人権問題にとりくむ諸団体とともに記者会見し、以下の声明を発表しましたので、お知らせします。

【参考】

「外国人優遇」はデマ 参院選で広がる排外主義に複数団体が反対声明
https://digital.asahi.com/articles/AST7835GCT78OXIE06FM.html

参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明

私たちは、外国人、難民、民族的マイノリティ等の人権問題に取り組むNGOです。

日本社会に外国人、外国ルーツの人々を敵視する排外主義が急速に拡大しています。NHK等が先月に実施した調査では、「日本社会では外国人が必要以上に優遇されている」という質問に「強くそう思う」か「どちらかといえばそう思う」と答えた人は64.0%にものぼります(1)。

外国人、外国ルーツの人々へのヘイトスピーチ、ヘイトクライムが止まりません。例えば2023年夏以降、埼玉県南部に居住するクルド人へのヘイトデモ、街宣が毎月のように行われ、インターネット上は連日大量のヘイトスピーチであふれる深刻な状況となっています。

6月の都議会選挙では、選挙運動として「日本人ファースト」等のヘイトスピーチが行われました。また、外国ルーツの候補者たちが「売国奴」などのヘイトスピーチによって攻撃されました。

来る参議院選挙でも「違法外国人ゼロ」「外国人優遇策の見直し」が掲げられるなど、各党が排外主義煽動を競い合っている状況です。政府も「ルールを守らない外国人により国民の安全安心が脅かされている社会情勢」として「不法滞在者ゼロ」政策を打ち出しています。

しかし、「外国人が優遇されている」というのは全く根拠のないデマです。日本には外国人に人権を保障する基本法すらなく、選挙権もなく、公務員になること、生活保護を受けること等も法的権利としては認められていません。医療、年金、国民健康保険、奨学金制度などで外国人が優遇されているという主張も事実ではありません。

「違法外国人」との用語は、「違法」と「外国人」を直結させ、外国人が「違法」との偏見を煽るものです。「不法滞在者」との用語も、1975年の国連総会決議は、全公文書において「非正規」等と表現するよう要請しています(2)。難民など様々事情があって書類がない人たちをひとくくりで「違法」「不法」として「ゼロ」すなわち問答無用で排斥する政策は排外主義そのものです。

本来政府、国会などの公的機関は、人種差別撤廃条約にもとづき、ヘイトスピーチをはじめとする人種差別を禁止し終了させ、様々なルーツの人々が共生する政策を行う義務があります。社会に外国人、外国ルーツの人々への偏見が拡大している場合には、先頭に立って差別デマを打ち消し、闘うべきなのに、偏見を煽る側に立つことは到底許されません。法務省もヘイトスピーチ解消法に則り、選挙運動にかこつけて行われるヘイトスピーチは許されないとの通知を出しています(3)。

ヘイトスピーチ、とりわけ排外主義の煽動は、外国人・外国ルーツの人々を苦しめ、異なる国籍・民族間の対立を煽り、共生社会を破壊し、さらには戦争への地ならしとなる極めて危険なものです。

私たちは、選挙にあたり、各政党・候補者に対し排外主義キャンペーンを止め、排外主義を批判すること、政府・自治体に対し選挙運動におけるヘイトスピーチが許されないことを徹底して広報することを強く求めます。また、有権者の方々には、外国人への偏見の煽動に乗せられることなく、国籍、民族に関わらず、誰もが人間としての尊厳が尊重され、差別されず、平和に生きる共生社会をつくるよう共に声をあげ、また、一票を投じられるよう訴えます。

(1)NHKウェブニュース「『外国人優遇』『こども家庭庁解体』広がる情報を検証すると…」(2025年6月28日)
(2) 「移住者と連帯する全国ネットワーク」HP「在留資格のない移民・難民を不法と呼ばず非正規や無登録と呼ぼう!」の頁参照。
(3) 法務省「事務連絡」(2019年3月12日)選挙運動,政治活動等として行われる不当な差別的言動への対応について

【呼びかけ団体】

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)/「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人種差別撤廃法」の制定を求める連絡会(外国人人権法連絡会)/外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)/人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)/全国難民弁護団連絡会議(全難連)/一般社団法人 つくろい東京ファンド/一般社団法人 反貧困ネットワーク/フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)

第2次の団体賛同募集中です

以下の賛同フォームより、賛同登録をお願いいたします。

https://forms.gle/SmBfg4cjQfh6xAJSA

なお、賛同締切は7月17日(木)です(7月18日に発表予定)。

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