6月, 2021 | 平和フォーラム

2021年06月30日

核兵器国は、核不拡散条約(NPT)6条に沿って速やかに核軍縮を履行せよ

2021 年1 月、核兵器禁止条約(以下、TPNW) が発効した。核兵器の存在そのものを禁止する国際条約が初めてできたことで、核軍縮をめぐる論議はまさに「核の終わりの始まり」という新たなステージに入った。しかし、これによって自動的に「核のない世界」がやってくるわけではない。これまで、核軍縮をめぐる国際的な議論の舞台であった核不拡散条約(以下、NPT)再検討会議と国連総会第1 委員会が重要であることに変わりはない。ただ、同時に隔年開催のTPNW締約国会議が並行して行われる時代が始まったのである。

しかし核保有国は、安全保障環境の悪化を理由に核開発競争を繰り広げ、核兵器国・依存国と非核保有国との間の核軍縮をめぐる対立や意見の相違は強まっている。

そこで、本論文では、核兵器を禁止するTPNWが発効して新たなステージに入った今、改めてこれまでNPTの果たしてきた役割を整理し、当面の課題を考える。

1.NPTとは?

NPTは1968年に署名され、1970年に発効した。2020年1月の時点で191か国が加盟している。国連加盟国数は193か国であるから、世界のほとんどの国がNPTに加盟しているといっていい(NPT未加盟国はインド、パキスタン、イスラエルと、核保有国ではないが南スーダン。NPT加盟国だが、国連には未加盟なのが、バチカンとパレスチナ)。北朝鮮は2003年に脱退宣言をしたが、多くの国は承認していない。

この条約の目的は、核兵器が世界に拡散しないようにすることである。1960年代後半当時、核兵器の製造は技術的に困難ではなくなり、核保有国の数が増えていくことが懸念され、核兵器が使われる危険性も増していた。NPTは核保有国を増やさないことに関する米国とソ連の合意から始まり、この2か国が中心になって条文を起草して作られた。米ソの他に、すでにイギリス、フランス、中国も核兵器を持っていたので、当面はアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5か国を「核兵器国」と規定した。つまり、NPTは核兵器を5か国で独占しようとする条約であり、不平等条約である。

条約(注1)は11 条からなる簡単なものであるが、以下のように①「核不拡散」、②「核軍縮」、③「原子力の平和利用」の三本柱で構成されている。

①核不拡散

核拡散を防ぐために、第1条で、「核兵器国」は、核兵器国・非核兵器国を問わずに他の国に核爆発装置を譲渡したり、非核兵器国による核爆発装置の取得を援助、奨励したりしないこととする。そして、第2条で「非核兵器国」は、核爆発装置の開発、製造、取得を行わないこととする。

さらに核不拡散を実のあるものにするために、「原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するため」、「核の番人」といわれる国際原子力機関(以下、IAEA)が監視するシステムを設けている(これを「保障措置」という)。「非核兵器国」は、IAEA との間で保障措置協定を締結し、「協定に定められる保障措置を受諾することを約束する」とされる(第3条第1 項)。当然ながら、日本も定期的にIAEA の査察を受けている。これに対し、核軍縮に関しては、履行状況を監視する機関やシステムは存在しない。

②核軍縮

第6条は「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する」と核軍縮を進めることを規定している。ここには、「厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行う」と極めて困難な課題に挑戦することが盛り込まれている。

③原子力の平和利用

しかし、5か国が核兵器を独占するだけでは、非核兵器国にとってNPT はただただ不平等な条約のままである。そこで、第4 条ですべての締約国に対し、原子力の平和利用の権利を「奪い得ない権利」として認め、締約国は平和利用の促進のために国際的に協力することを定めている。核兵器を持たない国には、核兵器国が、原子力発電所の建設技術を教えたり、原子力発電所を建設したりすることができるようにした。

図1は、上記の構図を非核兵器国の立場から捉えたものである。世界の大多数の国がこの条約に加盟している訳は、図1に示されている。非核兵器国は、自らの意志で核兵器を持たないことを誓約し(第2条)、それを検証するためにIAEAによる査察制度がある(第3条)。一方で非核兵器国は、核兵器国の核保有を容認しつつ、核兵器国の②核軍縮を約束させる(第6条)。かつ核兵器国は、非核兵器国に対して、③原子力の平和利用の権利を奪い得ないものとして認め、協力していく(第4条)としている。このようなある種の取引構造が多くの国をNPTに引き寄せているのである。こうしてNPTは国際社会において核拡散防止の強力な抑止力となってきた。

2.NPT再検討会議

NPTは、核不拡散や核軍縮が適切に履行されているか否かを評価し、それを推進する方法を考えるために「再検討会議」の開催を定めている。再検討会議は、1975年に最初の会議がジュネーブで開かれて以降、5年ごとにニューヨークの国連本部で開かれている。再検討会議では、参加国が話し合って、議論の結果をまとめた全会一致の合意文書を採択することを目指す。NPT締約国にとって合意文書(注2)は極めて重要な政治的誓約である。1995年、2000年、2010年の再検討会議では核軍縮を進める上で重要な成果があった。それらを含めて関連年表を表1に示す。

1995年の再検討・延長会議では、NPTを延長するのか、それとも失効させ、核廃絶へ向けて新たなステージに移るのかをめぐって、核兵器国と非核兵器国との間で激しい議論が繰り広げられた。まずNPTの無期限延長が決定された。その際に、「核不拡散と核軍縮の原則と目標」及び「再検討プロセスの強化」についても決定された。前者では、核兵器国は「核軍縮に関する効果的な措置につき誠実に交渉を行う、という誓約を再確認する」という第6条の前半を念頭に入れた表現が盛り込まれた。後者については、再検討会議を実効的なものにするために、5年の間に3回の準備委員会が開催されることになった。あらゆる空間での核実験を禁止することを目的とした包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する交渉を1996年までに完了することも合意された。NPTの無期限延長は核兵器国にとって核を独占し続けられる好都合なものであったが、核兵器国が核軍縮を進めることを約束したことによって折り合いをつけた形である。

2000年NPT再検討会議においては、新アジェンダ連合(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデン(当時))をはじめとした核軍縮に熱心な国々と核兵器国との激しい交渉の末、最終文書が採択された。ここには NPT 第6条義務を履行するための13項目の実際的措置を含む行動計画が含まれている。13項目の第 6 項には「すべての締約国が第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束をおこなうこと」という画期的な文言が盛り込まれた。

さらに2010年再検討会議は、2009年4月のオバマ大統領のプラハ演説を契機とする核軍縮に向けた機運の高まりの中で開催された。その結果、会議では3本柱にまたがる64項目の行動計画を含む最終文書が採択された。合意文書のⅠ.核軍縮、A 原則と目的の行動 1で、「すべての加盟国は、NPT 及び核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求することを誓約する」とした。さらに「A. 原則と目的」のⅴ . では「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国が、いかなる時も国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」とし、NPT 合意文書では初めて国際人道法の観点から核兵器の非人道性を確認した。またB.「核兵器の軍縮」ⅲで、NPT 合意文書では初めて「核兵器禁止条約についての交渉」に言及した。

3.不十分なNPT合意の履行

しかし、第6条の「約束」は義務規定ではなく、それを検証する機構やシステムは何一つ備えていない。そのため、再検討会議での核軍縮に関する合意の履行は、第3者により検証されることなく、見逃されてきているのが実態である。全会一致の国際合意は、政権が変わっても引き続き各国の合意事項であるはずなのだが、過去のNPTにおける合意は履行されないままになっている。ここでは、その具体例を列挙しておこう:

①米国の中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱と条約の失効は、2000年NPT再検討会議の最終文書にある、13項目の5「核軍縮、核およびその他の軍備管理と削減措置に適用されるべき、不可逆性の原則」に反する。

②いくつかの核兵器国の新型核兵器の開発、配備は、2010年行動計画、行動3「配備・非配備を含むあらゆる種類の核兵器を削減の努力」に反する。

③核弾頭数の増加は、2010年行動計画、行動3及び行動 5a「あらゆる種類の核兵器の世界的備蓄の総体的削減に速やかに向かう」に違反する。

④法的拘束力のある消極的安全保証(核兵器国が非核兵器国に対して核による攻撃や威嚇をしないことを誓約すること)に係る 2010年行動計画、行動7に基づく協議は、全く行なわれていない。

いくつもの NPT合意の履行がなされず、現在の世界は核軍縮が停滞していると言わざるを得ない状況である。むしろ、核兵器の近代化により、核兵器使用の敷居が下がっている。

4.2020 年 NPT 再検討会議へ向けて

NPT 体制は、多くの合意を作りながらも、合意履行の面で多くの課題を抱えている。NTP 体制の意義ある存続は、締約国が誓約を誠実に履行するか否かにかかっている。1996年に採択された CTBTは四半世紀を経てもなお未だに発効しておらず、発効に向けた具体的見込みも立っていない。核兵器国が NPTにおける国際合意を破り続けることはNPT体制の弱体化に直結する。NPTを意義あるものにするためには第 6 条に基づいた核廃絶を目指さなければならない。そもそも、NPTは核不拡散が主要な目的とはいえ、第 6 条により究極的には核兵器をなくしていくことを誓約しているのである。

コロナ禍で延期が続いている2020年NPT再検討会議においては、半世紀を超えるNPT 体制の下で蓄積されてきた合意文書を再確認し、その履行をどう進めていくのかを包括的に議論することが求められる。具体的には、例えば、以下のようなことがあげられる。

1.過去のNPTにおける全会一致の国際合意が破られていることを、具体例を挙げて示し、NPT体制そのものの信頼性の低下を招いていることを、再検討会議で指摘し、その上で、過去の合意の履行を改めて再確認すること。

2.NPT再検討会議において過去の合意の履行状況を各国が提出することが義務付けられた。しかし、明確な違反を具体的に指摘し対策を協議するシステムができていない。2020 年再検討会議においては、このようなシステムの必要性を提起し、可能ならば具体案を提案して検討すること。

これらを求めていく際、米国に登場したバイデン政権の核兵器政策が、トランプ政権とは異なる傾向を有していることを注視すべきであろう。バイデン政権は、核兵器の役割と数を減らしていく方向を目指すことがうかがえる。オバマ政権として一度は検討し、日本政府がこれに強く反対したとされる先行不使用の政策が打ち出されることも予想される。また北朝鮮政策においても、トランプ大統領が進めた 2018年のシンガポール米朝共同声明や南北板門店宣言を基礎として、「朝鮮半島の完全な非核化」を目指すとしており、これは、北東アジアの非核兵器地帯にもつながる可能性を秘めている。核兵器の役割低減は、2010年 NPT合意の行動 5 のc「あらゆる軍事及び安全保障上の概念、ドクトリン、政策における核兵器の役割と重要性を一層低減させる」に即した、具体的にNPT合意を履行していく道につながっている。

2020年8月に予定されていた2020年NPT再検討会議は、コロナ感染の継続により、再々延長され、当面、2022年1月開催の方向で調整が進んでいる。いずれにせよ、NPT再検討会議は異なる立場を持つ国が、一堂に会する場として重要である。核兵器国、核の傘依存国、そして他の非核兵器国の間でNPT合意の履行について意見交換し、方向性を議論することは、信頼関係の回復と核軍縮、及び核拡散のリスク減少のために効果的である。

NPTは50年以上にわたり世界を安全にするために機能してきたし、締約国はこれからもそうなるようにする責任を負っている。全ての締約国が過去の再検討会議で合意された「核兵器使用の壊滅的人道上の結末」(2010年)の認識を共有し、「核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束をおこなう」(2000年)ことを再確認し、核軍縮に関して具体的な合意を作れるよう努力することで、核廃絶という目標に勢いをつけていかねばならない。(ドウブルー達郎、湯浅一郎)

 

注:

1.ピースデポアルナマック刊行委員会刊:『ピース・アルマナック2020』に全訳。

2.ピースデポアルマナック刊行委員会刊:『ピース・アルマナック2020』に抜粋訳。

2021年06月25日

関西生コン支部弾圧事件 大阪高裁に公正判決を求める署名を

全日建関西地区生コン支部によるストやビラまきなど、労働組合としての正当な活動が、威力業務妨害、強要未遂、恐喝未遂といった刑事事件に問われ、のべ81人の組合員が逮捕のうえ長期勾留、のべ66人が起訴されています。

「組合活動を理由とした刑事弾圧事件としては戦後最大規模」(労働法学者78人による2019年12月の抗議声明)に対して、平和フォーラムとして2019年4月に「関西生コンを支援する会」を結成し、大阪府警への早期保釈の申し入れ、東京と大阪での「関西生コン事件を考える」シンポジウムの開催などを開催してきました。

大阪、大津、京都、和歌山の4つの地方裁判所で8つの裁判に分けて審理が行われ、昨年、大阪ストライキ第2次事件で大阪地裁が、加茂生コン第1事件で京都地裁が、組合役員に対し懲役8カ月から2年という不当判決を下しました。これらの判決について、「産業別労働組合の活動に対する無知・無理解」(宮里邦雄弁護士)、「集団性と自力救済的活動を本義とする団結権の本質に対する無知」(吉田美喜夫・立命館大学名誉教授)など強く批判されています。これらの判決は、労働基本権を保障する憲法28条、「正当な組合活動は刑事罰の対象としない」とする労働組合法1条2項を形骸化させるものです。

「支援する会」は大阪1次、大阪2次、加茂第1の3件の控訴審において労働基本権保障を踏まえた公正判決を求める団体署名、個人署名を呼びかけています。
団体署名用紙はこちら
個人署名用紙はこちら
署名集約先 関西生コンを支援する会
      東京都千代田区神田駿河台3-2-11連合会館1階
      フォーラム平和・人権・環境気付

2021年06月21日

ニュースペーパー News Paper 2021.6

6月号もくじ

ニュースペーパーNews Parer2021.6PDF

*表紙 世界の核弾頭数の変遷1945~2021削減鈍り、再び増加へ?

*イギリスが核軍縮に逆行する保有数上限引き上げ

*原水禁エネルギープロジェクト2020提言

*軍拡競争はやめにしよう!武力による平和はない まずは専守防衛に立ち戻って考えよう

*過去に向き合え!

2021年06月16日

第204回通常国会の閉会にあたって(平和フォーラム見解)

2021年6月16日

フォーラム平和・人権・環境
事務局長 竹内 広人

 2021年1月18日から、150日間わたって開催された第204回通常国会が、6月16日、閉会された。野党から3か月の会期延長を要求されたにもかかわらず、与党はこれを拒否、内閣不信任案を提出され、それを否決した上での閉会となった。今国会では、コロナ禍の克服が最大の課題となる中で、基本的人権をないがしろにする、問題の多い法案が成立しており、今後に課題を残している。
 第一には、「国民投票法改正案」である。本法案については、立憲野党は8国会にわたって、改憲発議が可能な衆議院の3分の2をこえる自公政権のもとで、法案審議を継続させてきた。しかし、5月6日の衆議院憲法審査会において、立憲民主党の修正案をすべて了承し、法案を修正したうえで、可決されることとなった。修正の内容は、CM・ネット規制の問題や、政党への外資規制の問題、また、運動資金の透明化など、この法案のもつ明らかな欠陥について、「施行から3年を目途」に必要な改正を行う、としたものである。
 しかし、この「改正案」は、そもそも「投票しやすい環境を整える」ことが目的だったはずだ。にもかかわらず、「期日前投票の弾力的運用」や「繰延投票の告示期間の短縮」はかえって「投票環境」を悪くしかねないものである。また、「最低投票率」あるいは「最低得票率」の問題も未解決のままだ。そのうえ、CM・ネット規制の問題や、新型コロナウイルス等による自宅療養者の投票権の問題も残されている。
 参議院の憲法審査会では、これらのことが改めて議論されたが、明らかになったのは、本改正案の欠陥ばかりであった。6月2日に行われた参議院憲法審査会での参考人招致でも、与党推薦の参考人までが、議論が不足していることを指摘しており、本来であれば、廃案とすべきであった。しかし、本法案は6月9日の憲法審査会で可決、6月11日の参議院の本会議で、可決・成立した。審議不十分のまま、立法府としての責任を全く果たすことなく採決が行われたことに対して、強く抗議する。
 今後、菅自公政権は、改憲4項目、すなわち、「自衛隊明記」「緊急事態条項の導入」「教育の充実」「合区解消」などの自民党の改憲4項目の議論にはいることを目論んでいる。さらにその先には、改憲発議を視野に入れている。しかし、今後、法案本文である「附則」において、この法案が「欠陥法案」であることが明記されている以上、この法案の成立をもって、自民党などが主張するように「憲法改正の是非を問う国民投票の実施に向けた環境が整った」わけではない。引き続き国民投票のあり方についての議論を継続すべきである。立憲民主党も6月11日の「談話」において、「ルールの公正性に関しての結論が出ない以上、憲法改正の発議をさせないことを改めて確認」すると表明しており、このことを基本に、今後の憲法改正論議を注視していかねばならない。
 さらに、最も重要なことは、改憲勢力が3分の2以上を占める衆議院の状況を、来る総選挙で、逆転していくことである。そもそも、今、コロナ禍の克服と、それによる格差・貧困の問題の解決が最優先である今、憲法改正は焦眉の課題ではない。憲法に「緊急事態条項」に対する規定がないから、政府は適切な対応を打てないとする論があるが、これは詭弁であり、すでにある法律を使い切れていない政府の責任転嫁である。このような詭弁を打ち消していくためにも、総選挙における立憲野党の勝利によって、自民党が改憲発議を行うことができない状況をつくり出すことこそが、当面の最大の課題である。
 第二には「重要土地調査規制法案」である。本法案は、基地や原発などの周辺1kmについて、国が「注視区域」や「特別注視区域」に指定して、利用を規制できるとしたもので、「特別注視区域」では土地や建物の売買の際に事前に氏名や国籍の届け出などが義務づけられる。また、国は区域を指定した上で土地・建物の所有者を対象に氏名や国籍、利用状況などの個人情報を調査できるとされている。
 本法案は、3月26日に閣議決定されているにもかかわらず、ひと月以上も経った5月11日になってやっと衆議院で審議入り、わずか12時間の議論しか行われないまま、5月28日、与党が衆議院内閣委員会での採決を強行し、6月1日には衆議院本会議で可決された。
 この法案の最大の問題点は、法律に書かれていることがあまりに抽象的で、具体的内容の多くが、政令や告示で個別指定されることとなっている点にある。同法では、基地や原発などの施設機能を「阻害する行為」を「機能阻害行為」として規制対象とし、命令違反には懲役もしくは罰金刑の対象とされている。しかし、「機能阻害行為」とはなにか、ということについては、まったく明確な定義がなされていない。このため、時の権力の解釈次第で基地に対する反対運動や監視活動などの市民運動までが「機能阻害行為」に含まれる危険性があり、運動の弾圧に利用される恐れもある。
 また、内閣総理大臣が、調査のために必要がある場合、対象区域の利用者らの情報提供を求めることができるとされているが、これも、提供の対象となる情報や調査項目が、政令や告示で個別指定されることとなっており、調査内容が歯止めなく拡大する懸念がある。結果として、国家権力による違法な情報収集に法的裏付けを与えてしまう危険性がある。
 以上のように、本法案は日本国憲法第29条で保障された財産権を侵害しかねない内容となっているばかりでなく、個人情報の過度な調査によって、プライバシーの権利(憲法第13条)などの基本的人権そのものを侵害しかねないものであり、違憲の疑いが極めて濃い。参議院では「重要土地調査規制法案」の審議について、衆議院では行われなかった参考人招致が実現、あわせて4回の審議が行われた。しかし、「機能阻害行為」など、法案で具体的に何が規制対象とされるのか全く分からないまま、与党は審議を打ち切ろうとしたため、立憲民主党をはじめとした立憲野党はこれに反対、内閣委員長の解任決議を提出したが、否決、6月15日の参議院内閣委員会で、採決が強行された。こののちも、立憲野党は議事運営委員長の解任決議などで抗議したが、翌16日3時近く、参議院本会議で採決がされ、可決、成立となった。
 今後、この違憲の疑いの極めて濃い法律による市民監視、私権制限が現実のものとなる恐れがある。当面は、今後この法律に基づいて出される政令や告示のチェックを怠らない必要がある。また、ほぼ法律の体をなしていないこの法律そのものを廃止させるために、引き続き、取り組みを進めていかなければならない。
 このほかにも、今国会では、「デジタル改革関連法案」が、個人情報保護の仕組みが担保されないまま成立している。また、「入管法」の改悪案は廃案に追い込むことができたが、入管の収容施設内で死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんのビデオの開示と真相の究明と遺族への謝罪はまだ果たされていない。
 今国会最大の課題であったコロナ禍の克服についても、菅自公政権は、「変異株」の流入を防ぐ水際対策の不備や、一向に進まないPCR検査の拡充、後手に回ったワクチンの確保と接種体制の不備、病床数もなかなか拡大しない現状など、いっこうに有効な対策を講じることができていない。一方で、この間の新型コロナウイルス感染症の影響で仕事を失った人は、厚生労働省の調査で、製造業、小売業、飲食業、宿泊業を中心に10万人を超えている。実態はこの数字にとどまらないものと考えられ、この1年で、貧困と格差が急激に拡大している。この現状は、もはや人災であり、菅政権下での政治が機能していないことは明らかである。
 このようななか、政治と金をめぐる不祥事や菅総理の長男が関連した総務省に対する違法接待、日本学術会議会員の任命拒否問題など権力の私物化が進められている。さらに、菅総理は7月23日の開会式が予定されている東京オリンピック、そしてパラリンピックの開催を強行しようとしている。医療体制がひっ迫するなかでの医療従事者派遣要請や、選手へのワクチン優先接種に対して、否定的な意見が多くあがっており、市民の命を最優先するために、今夏のオリンピック、そしてパラリンピックの開催は行うべきではない。
 しかし、それでも菅総理が東京オリンピックを強行しようとしているのは、自らの政権の浮揚のためでしかない。今回の国会運営を見ても、「国民投票法改正案」や「重要土地調査規制法案」の成立にあくまでもこだわったのは、自民党内右派を意識した選挙対策であるともいわれている。国会審議の中でも、与党はまず成立ありきで、国民のために、立法府としての責任を果たそうとする意識は一切見られなかった。
このような、菅自公政権には、今すぐ退陣してもらわなければならない。
 今後、7月の都議選、そして衆議院の解散総選挙が予定されている。今後の秋までが「暮らしといのち」を守る政治の確立、立憲主義の回復などに向けた、大きなチャンスとなる。総選挙における立憲野党の勝利にむけて、平和フォーラムは、この機会を最大限に生かしながら、とりくみを進めていく。

以 上

2021年06月16日

朝鮮半島の平和をめざす7.6学習会のご案内(事前申込制)

平和フォーラムは、日本の植民地支配の反省に立ちながら、南北に分かれた朝鮮半島の平和を求め、1)日朝国交正常化、2)過去精算と歴史認識の共有、3)朝鮮戦争の終結と平和宣言、4)在日朝鮮人社会への差別克服などを基本にとりくみをすすめてきました。いまだに停戦中である米朝関係の修復、そして唯一国交を持たない朝鮮との国交回復は、朝鮮半島の平和構築と非核化への第一歩であると考えます。
朝鮮半島をめぐる情勢の基本認識を共有するために、朝鮮半島の平和をめざす7.6学習会を開催します。
※なお、コロナウイルス感染拡大防止の観点から、会場への入場者を70人に限定しますので、参加希望の方は、添付のチラシにある申込書を事前にFAXで送ってください。先着順となります。
朝鮮半島の平和をめざす7.6学習会チラシ

2021年06月03日

オスプレイ等米軍機の飛行について防衛省・外務省に10回目となる要請を行いました

オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会とフォーラム平和・人権・環境は6月2日、衆議院第2議員会館会議室で、オスプレイ等米軍機の飛行訓練にかかわる課題について、外務省、防衛省に対し10回目となる要請を行いました。
米軍機オスプレイの緊急着陸や事前情報がなく飛来する問題について防衛省は、「米軍から運用上の、安全上の理由から(飛来情報等の情報)提供は困難」だとし、航空法で適用除外となっていないフライトプランの情報開示についても、安全上の理由で情報を開示することはできないとしています。このことは、自治体の防災ヘリコプターの運用、今後拡大が見込まれる山間部でのドローン物流などにも影響を与えかねず、人名にもかかわる極めて重大な問題です。
また、米軍機の訓練空域にかかわり外務省は、訓練空域が提供されている根拠について、「施設区域の提供ということで地位協定第2条に基づいている」との見解を示しました。
東日本連絡会と平和フォーラムは、今回の要請行動での不明点をまとめ、引き続き外務省・防衛省を問いただしていいくとしています。

要請項目はこちら
質問事項はこちら

2021年06月02日

チラシ「重要土地調査規制法案の廃案を!」のご紹介

チラシ「重要土地調査規制法案の廃案を!」を作成しましたので、ここにご案内します。このチラシを活用していただき、「重要土地調査規制法案」の廃案を求めるとりくみをよりいっそう拡げていただけますと幸いです。

カラーバージョンとモノクロバージョンをそれぞれご用意しました。用途に応じてご利用ください。

チラシ「重要土地調査規制法案の廃案を!」

下記のリンクからダウンロードしてください

カラーバージョン( pdfファイル wordファイル

モノクロバージョン( pdfファイル ・ wordファイル

2021年06月01日

動画「危険!重要土地調査規制法案」のご紹介

現在、政府・与党が強行しようとしている「重要土地調査規制法案」。この危険性について、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)に解説していただきました。

「危険!重要土地調査規制法案」

https://www.youtube.com/watch?v=pk6QPBLag90

2021年06月01日

「重要土地調査規制法案」の廃案を求めるオンライン署名にご協力ください!

「重要土地等調査規制法案」が、十分な審議が尽くされないまま、5月28日、与党が衆議院内閣委員会での採決を強行し、さらに6月1日、衆議院本会議で可決されました。私たちは参議院段階でこの法案を廃案にすることを求め、「重要土地調査規制法案」の廃案を求めるオンライン署名を開始します。

下記のリンクから署名ができますので、ぜひご協力・ご紹介をお願いします。

http://chng.it/LQQjPbc6

解説動画「危険!重要土地調査規制法案」
https://www.youtube.com/watch?v=pk6QPBLag90

チラシ「重要土地調査規制法案の廃案を!」

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